JP2019192697A - 半導体基板及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】高品質な窒化物半導体を作製するための、下地層として使用できる半導体基板とその製造方法を提供する。【解決手段】半導体基板600は、極性を持たない単結晶バルクウェハ601上に、極性の制御された窒化物系膜積層体が形成された半導体基板であって、単結晶バルクウェハ上に直接設けられていると共に、極性を固定する第一の窒化物系薄膜602と、第一の窒化物系薄膜の上に設けられている第二の窒化物系膜603であって、第一の窒化物系薄膜の2/3以下のX線ロッキングカーブ半値幅を有する第二の窒化物系膜の成長層を含み、かつ、膜厚が第一の窒化物系薄膜の2倍よりも大きく5μmよりも小さい第二の窒化物系膜と、を備える。第一の窒化物系薄膜と第二の窒化物系膜とによって、窒化物系膜積層体を構成する。【選択図】図6

Description

本発明は、半導体基板とその製造方法に関する。特に、窒化物半導体基板及びその製造方法に関する。
二酸化炭素の排出量の削減や、消費電力削減等の社会的要請を背景に、電力制御用パワーデバイスや一般照明としての発光デバイスへの窒化物半導体の応用が益々期待されている。
しかしながら窒化物半導体は、窒素の蒸気圧が高く、融液からバルク結晶を成長することが難しいことから自立基板を入手するのが一般に困難である。そのため格子整合する初期基板が容易に用意できないことから、窒化物半導体結晶は、薄膜、バルク結晶に寄らずSapphire(α−Al)やSiC、Si、ScAlMgO等の異種バルク単結晶上に作製される場合が多い。また、基板の価格やサイズ、熱安定性の観点から光デバイス用途ではSapphire基板、電子デバイス用途ではSi基板が一般的に用いられている。
しかしながら、これらの基板材料は窒化物半導体と比較して格子定数が大きく異なることから、これらの基板上に直接、窒化物半導体結晶成長すると多量の結晶欠陥が結晶中に形成され、高効率で長寿命なデバイスを作製することができない。この問題を克服するために低温バッファ層を初期基板上に核形成層として形成し、300nmを超える膜厚の窒化物半導体を成長することで貫通転位を対消滅させ、高品質化が試みられている。その窒化物半導体結晶を下地基板としてデバイス構造を作製することで実際に高効率な発光素子や電子デバイスが作製されている。
窒化物半導体の最安定構造は、六方晶ウルツ鉱型構造である。六方晶ウルツ鉱型構造は、その面方位によって一般に極性面である(0001)面(以後、C面とする。)や、無極性面である(10−10)面、(11−20)面、半極性面である(10−11)面や(20−21)面といった面方位が知られている。光デバイスを作製する場合、発光効率向上の観点から六方晶ウルツ鉱型構造に由来する分極の影響によって不利であるため、無極性面や半極性面を発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)へと応用する研究が多くなされている。一方で、無極性面や半極性面は、極性面であるC面と比較して転位密度が低く、表面平坦性の高い結晶を成長させることが難しいことから、実際に光デバイスとして実用化している面方位はC面に限られているのが現状である(例えば、特許文献1参照。)。
次に、図1を参照しながら極性面であるC面について説明する。六方晶ウルツ鉱型結晶のC面は、結晶の対称性によりIII族原子の4個のボンドの内3個が基板側を向いた(0001)面(成長方位が<0001>方向であり、以後「III族極性面」という。)と、その逆の(000−1)面(成長方位が<000−1>方向であり、以後「N極性面」という。)とに大別される。Sapphire基板上にC面の窒化物半導体を結晶成長する場合、成長前処理によってIII族極性、N極性、あるいはそれぞれがC面面内で混在した状態となることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
次に、下記の表1を参照しながら六方晶ウルツ鉱型結晶におけるIII族極性面とN極性面の特徴について説明する。
Figure 2019192697
III族極性面は、結晶成長を行った際に原子レベルで平坦かつ高品質な結晶を得ることができ、酸素不純物の取り込みが少ないことが知られている。そのため発光デバイス、電子デバイスに寄らず、窒化物半導体を用いたデバイスはIII族極性面が用いられる場合が多い。一方で、N極性面は、結晶成長を行った際に、ヒロックと呼ばれる特徴的な六角錐のような表面形態が表れ、表面平坦性の優れた結晶成長が難しい事や、酸素不純物の取り込みが大きいといった問題があるため、一般にはデバイスの作製には用いられていない。
しかしながら最近ではIII族極性面と比較してN極性面は、熱耐性が高く、InGaNやInAlNを成長する際にIn組成の大きな結晶をより高温で成長しやすいことがわかってきた。また、N極性面は、電子デバイスを作製する際に二次元電子ガスの濃度が向上すること、また、超厚膜を成長する際に結晶サイズが拡大すること等の様々な利点が注目され、大学等では活発に研究が行われている。したがって、現在はIII族極性面にデバイスが作製されているものの、将来的にはN極性面を用いたデバイスが量産される可能性も十分考えることができる。そこで、III族極性面、N極性面を任意で制御して結晶成長する技術が求められている。
窒化物半導体の結晶成長の手法としては、有機金属気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハイドライド気相成長法(HVPE法)が一般に知られている。いずれの成長法によってもSapphire基板上に極性の制御された窒化物半導体を成長するためには、窒化物半導体の成長前処理を調整する必要がある。ここではMOCVD法を用いてN極性のGaNを成長するための典型的なプロセスについて図2を用いて説明する。なお、初期基板にはSapphire基板の(0001)面を使用した場合を想定している。
(1)まず始めにSapphire基板の温度を1050℃まで昇温し、水素雰囲気で10分程度アニールを行う(工程I)。
(2)次に、アンモニアを炉内に導入し、Sapphire基板表面の窒化処理を行う(工程II)。この窒化処理によってSapphire基板表面に薄いN極性のAlNが形成される。
(3)次に、500℃まで基板温度を降温し、トリエチルガリウム(TEG)とアンモニアを成長炉に供給し、GaNを20〜50nm程度の膜厚で低温バッファ層を形成する(工程III)。
(4)最後に1050℃まで基板温度を昇温し、再びTEGとアンモニアを成長炉内へ導入しGaNの厚膜成長を行う(工程IV)。
なお、III族極性面のGaNを成長する場合には、窒化処理を行わず窒化物半導体を成長することで実施される。HVPE法、MBE法も基本的にはN極性の窒化物半導体を成長するプロセスは同様で、Sapphire基板の窒化処理を窒化物半導体結晶の成長前に導入することで作製される。
特許第5099763号公報
R. Togashi et al., Journal of Crystal Growth, 360 (2012) 197
前述したように、異種基板上に高品質な窒化物半導体結晶を作製するためには、第一にIII族極性、あるいはN極性のいずれかの単一極性に制御し、第二に転位密度の小さな窒化物半導体結晶を作製する必要がある。
MOCVD法やHVPE法、MBE法における極性の制御は、インプロセスで行われる窒化処理によって行われるので簡便で有用な手法である。しかし、上記方法による極性制御では、温度や時間、圧力、原料濃度といった様々な条件を最適化し、基板面内全体で均一に極性を固定しなければならない。条件が最適化されない場合には面内でIII族極性とN極性とがまだら状に存在し、アンチフェーズドメインや各極性間の粒界において欠陥の発生原因となるため、デバイス効率や寿命を大きく劣化させるといった問題がある。
また、完全なN極性の窒化物半導体を形成するために過度な窒化を行うと基板表面が熱分解し、平坦な窒化物半導体結晶を得ることが出来ないといった課題もある。
さらに、MOCVD法やHVPE法、MBE法は、装置構造が複雑かつ高価であり、結晶成長に使用する原料ガスは、可燃性や毒性を持つことが多く、排ガス処理装置も必要であることから生産コストを大きく増加させるといった課題もある。
本発明は、上述したような従来法の課題を解決するものであり、窒化物半導体の結晶成長に適した下地層を提供することを目的とする。具体的にはSapphire基板のC面に代表される、III族極性、N極性の窒化物半導体を成長可能な基板上に、任意の極性に制御され、高品質な窒化物半導体結晶を成長するための半導体基板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る半導体基板は、極性を持たない単結晶バルクウェハ上に、極性の制御された窒化物系膜積層体が形成された半導体基板であって、
前記単結晶バルクウェハ上に直接設けられていると共に、極性を固定する第一の窒化物系薄膜と、
前記第一の窒化物系薄膜の上に設けられている第二の窒化物系膜であって、前記第一の窒化物系薄膜の2/3以下のX線ロッキングカーブ半値幅を有する前記第二の窒化物系膜の成長層を含み、かつ膜厚が前記第一の窒化物系薄膜の2倍よりも大きく5μmよりも小さい第二の窒化物系膜と、
を備え、前記第一の窒化物系薄膜と前記第二の窒化物系膜とによって前記窒化物系膜積層体を構成する。
また、本発明に係る半導体基板の製造方法は、スパッタリング装置の真空チャンバー内に単結晶バルクウェハと、ターゲット材と、を用意するステップと、
前記真空チャンバー内に窒素を30%以上含むガスを導入し、0.1Pa以上0.5Pa以下の圧力とし、前記単結晶バルクウェハの温度が25℃以上1000℃以下とし、0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の電力を前記ターゲット材に印加することによってプラズマを生成し、前記プラズマによる反応性スパッタリング法によって前記単結晶バルクウェハ上に極性を固定するための第一の窒化物系薄膜を形成するステップと、
前記第一の窒化物系薄膜を形成する際に設定した直流電源の電力設定値と異なる値で、かつ0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の範囲で前記ターゲット材に電力を印加することでプラズマを生成し、第二の窒化物系膜を成膜するステップと、
を含み、
前記単結晶バルクウェハの上に、前記第一の窒化物系薄膜と前記第二の窒化物系膜とによって構成される窒化物系薄膜積層体を成膜する。
本発明に係る半導体基板及びその製造方法によって、単結晶バルクウェハ上に、極性が制御され、かつ転位密度を下げるために十分な膜厚を持つ窒化物系膜が積層された半導体基板を提供できる。また、上記製造方法では、安価なスパッタリング法によって半導体基板を作製できる。これによって、極性が制御され、高品質な窒化物半導体結晶を成長するための下地基板を提供できる。なお、III族極性、N極性の窒化物半導体が成長可能な単結晶バルクウェハとしては、例えばサファイア基板を利用できる。
窒化物半導体結晶の最安定構造であるウルツ鉱型の結晶構造を表す図である。 MOCVD法を用いてSapphire(0001)基板上にN極性の窒化物半導体結晶を成長させる工程の一例である。 実施の形態1に係るスパッタリング装置の構成を示す概略図である。 2段階の階段状のパルス形状を示す概略図である。 1段階のパルスと2段階の階段状のパルスでプラズマ放電を行った時の窒素ラジカル密度と時間の関係を表す概略図である。 本発明に係る半導体基板の断面図である。 印加電力密度WとAlNの堆積速度の関係を表す図である。 印加電力密度Wを変化させて成長したAlNにおいてKOHエッチングを行う前後の断面SEM像を示す図である。 印加電力密度Wを2段階で変化させて成膜したAlNにおいてKOHエッチングを行う前後の断面SEM像を示す図である。
第1の態様に係る半導体基板は、極性を持たない単結晶バルクウェハ上に、極性の制御された窒化物系膜積層体が形成された半導体基板であって、
前記単結晶バルクウェハ上に直接設けられていると共に、極性を固定する第一の窒化物系薄膜と、
前記第一の窒化物系薄膜の上に設けられている第二の窒化物系膜であって、前記第一の窒化物系薄膜の2/3以下のX線ロッキングカーブ半値幅を有する前記第二の窒化物系膜の成長層を含み、かつ膜厚が前記第一の窒化物系薄膜の2倍よりも大きく5μmよりも小さい第二の窒化物系膜と、
を備え、前記第一の窒化物系薄膜と前記第二の窒化物系膜とによって前記窒化物系膜積層体を構成する。
第2の態様に係る半導体基板は、上記第1の態様において、前記第一の窒化物系薄膜は、前記第二の窒化物系膜との界面に<0001>方向の成長方位を有するIII族極性面を有し、
前記第二の窒化物系膜は、前記第一の窒化物系薄膜の前記III族極性面の上に形成されており、その成長層は、前記第一の窒化物系薄膜の極性と同じIII族極性面であり、前記成長層のX線ロッキングカーブ半値幅は、500arcsec以下であってもよい。
第3の態様に係る半導体基板は、上記第1の態様において、前記第一の窒化物系薄膜は、前記第二の窒化物系膜との界面に<000−1>方向の成長方位を有するN極性面を有し、
前記第二の窒化物系膜は、前記第一の窒化物系薄膜の前記N極性面の上に形成されており、その成長層は、前記第一の窒化物系薄膜の極性と同じN極性面であり、前記成長層のX線ロッキングカーブ半値幅は、1200arcsec以下であってもよい。
第4の態様に係る半導体基板は、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記窒化物系膜積層体は、Al、Ga、Inの内、1種類以上の金属元素が窒化された2元もしくは3元以上の元素から構成されてもよい。
第5の態様に係る半導体基板は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記窒化物系膜積層体において、前記第二の窒化物系膜の上に、前記第二の窒化物系膜よりも成長層のX線ロッキングカーブ半値幅の小さな第三の窒化物系膜が形成されていてもよい。
第6の態様に係る半導体基板は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記窒化物系膜積層体は、Sapphire(α―Al)もしくはSiから成る前記単結晶バルクウェハ上に形成されていてもよい。
第7の態様に係る半導体基板の製造方法は、スパッタリング装置の真空チャンバー内に単結晶バルクウェハと、ターゲット材と、を用意するステップと、
前記真空チャンバー内に窒素を30%以上含むガスを導入し、0.1Pa以上0.5Pa以下の圧力とし、前記単結晶バルクウェハの温度が25℃以上1000℃以下とし、0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の電力を前記ターゲット材に印加することによってプラズマを生成し、前記プラズマによる反応性スパッタリング法によって前記単結晶バルクウェハ上に極性を固定するための第一の窒化物系薄膜を形成するステップと、
前記第一の窒化物系薄膜を形成する際に設定した直流電源の電力設定値と異なる値で、かつ0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の範囲で前記ターゲット材に電力を印加することでプラズマを生成し、第二の窒化物系膜を成膜するステップと、
を含み、
前記単結晶バルクウェハの上に、前記第一の窒化物系薄膜と前記第二の窒化物系膜とによって構成される窒化物系薄膜積層体を成膜してもよい。
第8の態様に係る半導体基板の製造方法は、上記第7の態様において、前記ターゲット材と前記ガスとを反応させて前記単結晶バルクウェハの上に第一の窒化物系薄膜及び第二の窒化物系膜を形成する反応性スパッタリングを行う際に、
プラズマを発生させるために直流電流を周波数1kHz以上100kHz以下で、電力を印加しない時間割合が5%以上80%以下となるように0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下で電力パルスを2段階以上の階段状となるように組み合わせて印加してプラズマを発生させるステップと、
を含んでもよい。
以下、図面を参照しながら、実施の形態に係る半導体基板及びその製造方法について詳細に説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
(実施の形態1)
<スパッタリング装置>
図3は、実施の形態1に係るスパッタリング装置300の構成を示す概略図である。始めに、実施の形態1に係る窒化物系膜積層体を形成するためのスパッタリング装置300について説明する。このスパッタリング装置300は、真空チャンバー301と、真空ポンプ302と、ガス供給源304と、バッキングプレート308と、直流電源330と、パルス化ユニット332と、制御部の一例として機能する電源制御器340と、パルス制御器341と、基板ホルダー305と、を備えている。
真空チャンバー301は、ゲートバルブ303を介して接続された真空ポンプ302で排気することによって、真空状態への減圧を行うことができる。
ガス供給源304は、スパッタリングに必要なガスを真空チャンバー301へ一定速度で供給することができる。ガス供給源304で供給するガスは、例えば窒素又は酸素など目的の材料と反応性を持ったガス、又は、反応性を持ったガスと不活性なアルゴンなどの希ガスとの混合ガスなどが選択できる。
ゲートバルブ303は、その開閉率を変化させることで、真空チャンバー301内の真空度を所望のガス圧力に制御することができる。
図3において、真空チャンバー301の上部内には、ターゲット材307が配置されている。ターゲット材307は、任意のスパッタ材料であるが、例えば窒化物を形成する金属材料又は半導体材料などの無機材料である。本実施の形態1の場合は、高純度(6N:99.9999%)のAlである。
バッキングプレート308は、真空チャンバー301の上部内に配置されて、後述する基板ホルダー305に対向するように、ターゲット材307を支持している。
直流電源330は、パルス化ユニット332とバッキングプレート308とを介して、ターゲット材307に電気的に接続され、ターゲット材307に電圧を印加することができる。パルス化ユニット332は、直流電源330によって発生した直流電流を、内蔵するコンデンサ等に蓄積し、内蔵する半導体スイッチング素子等によりオン又はオフして、パルス化することができる。なお、パルス化ユニット332は、パルス制御器341によって制御され、直流電源330及びパルス制御器341は、電源制御器340によって制御される。また、直流電源330からパルス化ユニット332への電流は電流計331によって計測され、計測された電流値が電源制御器340にフィードバックされる。つまり、電源制御器340において、電流計331で計測した電流値が所定の値となるように直流電源330をフィードバック制御する。
マグネット309及びヨーク310は、真空チャンバー301の上部内のバッキングプレート308の裏面に配置され、ターゲット材307の表面に磁場を発生させることができる。マグネット309は1つ以上であればよい。なお、マグネット309は、永久磁石、電磁石のいずれであってもよい。ヨーク310は、マグネット309の一端と接続されており、磁気回路を構成し、ターゲット材307と反対側への不要な磁場の漏洩を抑制できる。
図3において、真空チャンバー301の下部内には、基板306を支持する基板ホルダー305が配置されている。基板ホルダー305は、基板306の下部に配置され、バッキングプレート308で支持されたターゲット材307の表面に基板306の表面が対向するように、基板306を支持する。
<第一の窒化物系薄膜の極性制御>
次に、実施の形態1に係る、極性を固定するために形成される第一の窒化物薄膜の成膜条件を明らかにするために、前記スパッタリング装置300を用いて窒化物系薄膜の成膜を行う。成膜手順、膜厚の測定及び極性判定手法について説明する。
(1)まず始めにスパッタリング装置300に基板投入を行う。前述の図3の基板306の位置に、成膜しようとする基板306、例えばSapphire(0001)基板(「単結晶バルクウェハ」)を設置する。基板306の設置については、真空チャンバー301を大気開放して直接手で設置する場合、又は、大気開放せずに、ロードロックチャンバーからロボットアーム等を用いて機械で設置する場合もある。
(2)続いて、真空ポンプ302を作動させて真空チャンバー301内が真空状態になるように減圧を行い、所定の真空度に到達した後、ガス供給源304からガスを導入し、所定のガス圧力となるようにゲートバルブ303の開度を調整する。
(3)ガス流量と圧力が安定すると、電力を印加し、プラズマを発生させ、成膜を開始する。成膜条件としては、例えば、真空チャンバー内に窒素を30%以上含むガスを導入し、0.1Pa以上0.5Pa以下の圧力、基板の温度は25℃以上1000℃以下である。ターゲット材に印加する電力密度は0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下となるように設定する。
ターゲット材に電力を階段状のパルスで印加する場合、以下の条件で行う。例えば、周波数1kHz以上100kHz以下、電力を印加しない時間割合が5%以上80%未満、ターゲット材に印加する電力密度が0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下となる階段状の電力パルスをターゲット材に印加してプラズマを発生させる。図4に示したように周期Tの2段階の階段状のパルスでターゲット材に電力を印加する場合には、時間Tの間、電力密度Wだけターゲット材に電力を印加する。次いで、一度もターゲット材に印加する電力を0にすることなく、時間のTの間、電力密度Wだけターゲット材に印加する。その後、時間Tの間ターゲット材に印加する電力密度を0にする。このときT=T+T+Tである。この時、それぞれ周期TのうちTが占める割合は0.1%以上30%未満、Tが周期Tに占める割合が20%以上50%未満、Tが周期Tに占める割合が5%以上75%未満であることが望ましい。また、ターゲット材に印加する電力は、WよりもWの方が小さく、さらにWは放電が維持できる程度に小さく設定することが望ましい。ただし階段状に電力を印加するのは2段階に限る必要はなく、多段階であってもよいし、Wを印加した後、徐々に電力を下げるような直角三角形のようなパルスでもよい。なお、電力を印加しない時間Tを5%以上75%未満確保することが望ましい。
階段状のパルス形状でターゲット材に電力を印加すると、図5の実線501に示したように、一段階の矩形波パルスで電力を供給した場合502(破線)と比較して、窒素ラジカルを長時間、より高密度に真空チャンバ内に供給することができる。これは第一のパルスにおいて放電開始時の過渡現象において安定な窒素分子を乖離させ、活性な窒素ラジカルを高密度に生成することに加え、続けて印加する第二のパルスで放電が維持することでも窒素プラズマが生成するためである。この時、金属元素は、階段状の第一のパルスのみでスパッタリング現象が起こるように印加する電力Wを設定することが重要である。このように電力Wを設定することで、より高濃度の窒素ラジカルを基板306に輸送することができ、より高品質な窒化膜を形成することができる。窒化反応は、真空チャンバ内の窒素ラジカルと金属元素との化学反応によって進行する。このため、窒素ラジカルが高密度、長時間存在することによって窒化反応は促進され、より低欠陥密度の窒化膜を形成することができる。
以上の条件下において、所望の膜厚となるように任意の時間だけ周期Tを繰り返して成膜した後、基板を取り出して一連の第一の窒化物系薄膜の成膜動作は終了する。
(4)基板を劈開し、走査電子顕微鏡(SEM)によって膜厚や表面形態を観察する。
(5)劈開した基板の一部を水酸化カリウム(KOH)水溶液に浸漬し、成膜した窒化物系薄膜をエッチングすることで極性の判定を行う。<0001>方向の成長方位を有するIII族極性の窒化物半導体は、KOH水溶液に対してエッチングされないため、エッチング前の結晶表面が鏡面であれば表面の変化がないため容易に判定でき、SEMで観察した際には平坦な結晶表面が観察される。一方、<000−1>方向の成長方位を有するN極性である場合にはKOH水溶液によってエッチングされ、エッチング前の結晶表面が鏡面であれば、表面が白く濁り容易に判定できる。また、エッチング後の結晶表面をSEMで観察した際には表面に(10−1−1)面から成るファセットが観察される。膜厚が十分厚い場合には摂氏80度(80℃)に加熱した10mol/lのKOH水溶液をエッチングに用いることが一般的であるが、今回作製した試料は膜厚が厚い場合でも数100nm程度であるため、室温下で1.0mol/lのKOHを用いて10秒間エッチングを実施する。
(5)エッチングした基板を任意の場所で劈開し、断面や表面をSEMによって観察し、表面形態を観察することで極性の判定を行う。
<半導体基板>
図6を主として参照しながら、実施の形態1に係る半導体基板600について説明する。図6は、単結晶バルクウェハ601上に、極性を固定するために直接形成された第一の窒化物系薄膜602と、その上に形成される転位密度を減少させるために形成される第一の窒化物系薄膜602よりも膜厚の大きな第二の窒化物系膜603とを示している。なお、第一の窒化物系薄膜602と第二の窒化物系膜603とによって窒化物系膜積層体を構成している。
<窒化物系膜積層体の製造方法>
次に、本実施の形態1による半導体基板の製造方法、つまり、半導体基板の成膜手順を説明する。
(1)まず始めに基板投入を行う。前述の図3の基板306の位置に、成膜しようとする基板306、例えばSapphire(0001)基板(「単結晶バルクウエハ」)を設置する。基板306の設置については、真空チャンバー301を大気開放して直接手で設置する場合、又は、大気開放せずに、ロードロックチャンバーからロボットアーム等を用いて機械で設置する場合もある。
(2)続いて、真空ポンプ302を作動させて真空チャンバー301内が真空状態になるように減圧を行い、所定の真空度に到達した後、ガス供給源304からガスを導入し、所定のガス圧力となるようにゲートバルブ303の開度を調整する。
(3)極性を固定するための第一の窒化物系薄膜の成膜を行う。ガス流量と圧力が安定すると、電力を印加し、プラズマを発生させ、成膜を開始する。成膜条件としては、例えば、真空チャンバー内に窒素を30%以上含むガスを導入し、0.1Pa以上0.5Pa以下の圧力とする。また、基板の温度は25℃以上1000℃以下である。ターゲット材に印加する電力密度が0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の電力を印加する。
2段階の階段状のパルスでターゲット材に電力を印加する際には、以下の条件で行う。例えば、周波数1kHz以上100kHz以下で電力を印加しない時間の割合が5%以上80%未満、ターゲット材に印加する電力密度が0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下となる電力パルスを印加してプラズマを発生させている。このとき電力密度WはWより小さくプラズマ放電が維持できる以上の電圧であればよく、できるだけ小さい電圧であることが望ましい。以上の条件下において、所望の膜厚となるように任意の時間だけ周期Tを繰り返して成膜を行った後、電力印加を一度止め、成膜を一時停止する。
(4)続いて、転位密度を減少させるための第二の窒化物系膜の成膜を行う。ガス流量と圧力が安定すると、電力を印加し、プラズマを発生させ、成膜を開始する。成膜条件としては、例えば、真空チャンバー内に窒素を30%以上含むガスを導入し、0.1Pa以上0.5Pa以下の圧力とする。また、基板の温度は25℃以上1000℃以下である。ターゲット材に印加する電力密度が0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の電力を印加する。
2段階の階段状のパルスでターゲット材に電力を印加する際には、以下の条件で行う。例えば、周波数1kHz以上100kHz以下で電力を印加しない時間の割合が5%以上80%未満、ターゲット材に印加する電力密度が0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下となる電力パルスを印加してプラズマを発生させている。このときの電力密度Wは、(3)で用いた設定値とは異なる値かつ0.005kW/cm以上0.4kW/cmの範囲で設定する。また、(3)で成膜した第一の窒化物系薄膜がIII族極性であれば0.04kW/cm以上0.4kW/cm未満、N極性であれば0.005kW/cm以上0.03kW/cm未満で設定することが望ましい。この理由は実施例1で詳細を記すが、Wが0.03kW/cm以上0.04kW/cm未満の範囲で成膜した窒化物系薄膜の極性が変化するためである。このときも電力密度WはWより小さくプラズマ放電が維持できる以上の電圧であればよく、できるだけ小さい電圧であることが望ましい。以上の条件下において、所望の膜厚となるように任意の時間だけ周期Tを繰り返して成膜を行った後、基板を取り出して一連の動作を終了する。
以上によって、単結晶バルクウェハである基板306への窒化物系膜積層体を成膜し、半導体基板の作製を行うことができる。
(実施例1)
<窒化物系薄膜の極性制御>
実施の形態1の実施例1における極性を固定するために製膜する窒化物系薄膜の条件検討の結果を以下に記す。実施例1では、スパッタ法を用い、ターゲット材としてAlを使用し、反応性ガスとして窒素を用いて成膜を行った。成膜圧力は0.23Paとなるように1:1で混合した窒素ガスとアルゴンガスの流量を制御し、ランプ加熱によって基板温度は400℃に一定に保った。プラズマ放電のためにターゲット材に2段階でパルス状に電力を印加した。パルスの条件は、周期Tを100マイクロ秒、第一のパルス条件はTを5マイクロ秒、T2を20マイクロ秒、Tを75マイクロ秒として設定した。電力を印加する第一の印加電力密度Wは0.02kW/cmから0.18kW/cm、第二の印加電力密度Wは0.005kW/cmで一定として窒化アルミニウム(AlN)を成膜し、SEMによって成膜速度、KOH水溶液を用いたエッチングによりAlNの極性を確認した。
ここで成膜圧力はプラズマ放電が起こる圧力であればよく、0.1Pa以上1Pa以下であればよい。望ましくは0.1Pa以上0.5Pa以下である。0.1Pa未満ではプラズマ放電を維持するのが難しく、放電不良を生じる場合がある。1Paを越える場合、反応性ガスによる窒化反応が不十分となり金属Alが析出する等、膜質が劣化する場合がある。上記窒素ガスとアルゴンガスを1:1で混合したガスを用いて成膜を行っているが、供給されるガス種中の窒素が30%以上100%以下の範囲が望ましい。窒素の割合が30%未満では窒化反応が不十分となり、窒化不良によって金属Alの析出や成膜後の試料取り出し時の酸化等の問題が引き起こされる。基板温度については25℃以上1000℃以下であればよいが、望ましくは25℃以上600℃以下の範囲である。なお、下限温度の25℃は室温の目安であり、室温であればこれより低くてもよい。
また、プラズマ放電のためにターゲット材に印加する電力のパルスの周波数について、低周波側、例えば1kHz未満の条件では、本発明者の検討においては、プラズマ放電が極めて不安定となる。また、高周波側は、例えば100kHzを超えると、一周期が10マイクロ秒程度となり、電源装置の制約などでデューティー比を所望の値まで下げることができない。そのため、周波数については、1kHz以上でかつ100kHz以下が適当であると考える。
また、瞬間的に大電力を印加し、解離エネルギーの高い窒素ガスを反応性の高い原子状窒素、またはラジカル状態の窒素を生成する目的の達成のためには、階段状のパルスにおいて第一のパルスで電力を印加する時間は、短時間であることが望ましい。しかし、周期Tに対して電力を印加する時間Tの割合が、0.1%未満においては、電力の立ち上がりの途中であり、設定の電力に達するための時間が不十分である。またデューティー比30%を越えた付近から、前述の窒素ガスが解離されてできる原子状窒素又はラジカル状態の窒素が減少し、デューティー比50%程度になると通常の直流スパッタと変わらない状況となる。従って、第一のパルスにおける電力を印加する時間の割合については、デューティー比0.1%以上30%以下が適切である。階段状のパルスにおいて第二のパルスは窒素プラズマの放電が維持される程度の小さな電力であり、今回は0.005kW/cmに設定した。この値は装置構造に依存するためプラズマが維持できる下限と成るように変更してよい。周期Tに対して電力を印加する時間Tの割合は20%以上90%以下が望ましい。短すぎると窒素ラジカルの濃度を維持することができず、窒化膜の欠陥密度が増加する。90%以上となる場合には電力を印加しない時間Tを十分確保することができず、次の周期の第一のパルスによって窒素ラジカルを生成するための過渡現象を起こしづらくなるため、窒素ラジカルの生成が不十分となり窒化膜の欠陥密度が増加する。
ターゲット材に電力を印加しない時間Tは、周期Tに対して5%以上80%未満が適切である。5%以下ではプラズマ放電が継続し、次の周期のパルスによって過渡現象による大量の窒素ラジカル生成が起こらない。80%以上では第二のパルスを印加する時間Tを十分確保することが出来ず、窒化膜の欠陥密度が増加する。
図7は、上記条件で成膜したAlN成膜における印加電力密度Wと堆積速度との関係を表す図である。ターゲット材に対する印加電力密度を増加させるに従って堆積速度(成膜速度)は増加する。堆積速度が早いほど厚い膜厚を成膜するのに有利であるが、一般に成膜速度が早いほど結晶品質劣化することが知られている。上記表1に示したように、III族極性の結晶は成膜速度が早い場合でも結晶品質を維持することができる。一方、N極性の場合には高速成膜を行うと平坦な結晶を得ることが出来ず、高品質な結晶を成膜することが難しいので、出来る限り遅い速度で成膜することが望ましい。
図8は、上記条件で成膜したAlN成膜において極性を判定した結果のうち、0.03kW/cm(図8(a)、図8(b))、0.04kW/cm(図8(c)、図8(d))、0.06 kW/cm(図8(e)、図8(f))で成膜したAlNの断面SEM像である。上段(図8(a)、図8(c)、図8(e))がKOHエッチング前、下段(図8(b)、図8(d)、図8(f))がKOHエッチング後の断面SEM像を示している。図8(b)に示すように、0.03kW/cm以下で成膜したAlNは、KOHによってエッチングされず、III族極性となることがわかった。一方、図8(d)及び(f)に示すように、0.04kW/cm以上で成膜したAlNは、KOHによってエッチングされた。この場合、(10−1−1)面から形成されるファセットで覆われた表面が表れたことからN極性であることがわかった。
低欠陥密度のAlNを成長するためには長時間成膜して厚膜化することでも達成できる。しかしながら上述したように、III族極性のAlNが成膜できる条件はターゲット材に印加する電力密度が小さいために成膜速度が非常に遅く、低欠陥密度化するのに十分な膜厚のAlNを成膜するには時間がかかり生産上の課題がある。一方、N極性のAlNが成膜できる条件はターゲット材に印加する電力密度が大きいために成膜速度が非常に早いが、N極性のAlN成膜は高速成長すると表面荒れや結晶品質の低下を招くことから、厚膜化すると結晶品質の劣化が引き起こされ、高品質な窒化物半導体結晶を成長するための下地層として使用できない。
(実施例2)
<窒化物系膜積層体による半導体基板>
実施の形態1の実施例2において、極性を固定するために成膜される第一の窒化物系薄膜と、結晶品質を改善するために成膜される第一の窒化物系薄膜よりも厚い第二の窒化物系膜との条件検討の結果を以下に示す。
実施例2では、スパッタ法を用い、ターゲット材としてAlを使用し、反応性ガスとして窒素を用いて成膜を行った。成膜圧力は0.23Paとなるように1:1で混合した窒素ガスとアルゴンガスの流量を制御し、ランプ加熱によって基板温度は400℃に一定に保った。プラズマ放電のために2段階の階段状のパルス形状でターゲット材に電力を印加した。パルスの条件は、周期Tを100マイクロ秒、第一のパルス条件は、Tを5マイクロ秒、Tを20マイクロ秒、Tを75マイクロ秒として設定した。
III族極性の場合:
III族極性のAlN薄膜積層体の成膜では、上記の結果に基づいて、極性を固定するために成膜される第一のAlN薄膜を成膜する条件として、第一のパルスとしてターゲット材に印加する電力密度を0.02kW/cmを選択し、5分間、厚さ34nm相当のIII族極性のAlNを成膜した。III族極性のAlNは、高速成膜においても高品質で平坦性の高いAlNが成長できるため、続けてターゲット材に電力密度0.18kW/cmで電力を印加することで第一のAlN層よりも580mn相当の厚い、AlN膜成膜を試みた。第二のパルスの電力密度は0.005kW/cmで一定とした。
第一の窒化物系薄膜として成長した厚さ34nmのAlNと、第一の窒化物系薄膜を成膜した後に第二の窒化物系膜を成膜したAlNとの結晶品質を測定するためにX線回折装置を用いてAlN(0002)面のX線ロッキングカーブ(XRC)半値幅の測定を行った。具体的には、第一の窒化物系薄膜のAlNの成長層及び第2の窒化物系膜のAlNの成長層のXRC半値幅を算出した。XRC半値幅は、結晶のモザイク性を表しており、そのピーク幅が狭いほど転位密度が小さく、高品質な結晶であることを示している。第一の窒化物系薄膜である厚さ34nm相当のAlN(0002)のXRC半値幅は、750arcsec程度であった。これに対し、その上に成長した第二の窒化物系膜である厚さ580nm相当のAlN(0002)のXRC半値幅は240arcsecとおよそ1/3の値となることがわかった。これは厚膜を成長することによってAlN結晶中を伝搬する転位がAlNの成長と共に対消滅し、転位密度が減少したことを反映していると考えられる。
N極性の場合:
N極性のAlN薄膜積層体の成膜では、上記の結果に基づいて、極性を固定するために第一のAlN薄膜が成膜される。この第一のAlN薄膜の成膜では、第一のパルスとしてターゲット材に電力密度0.18kW/cmで電力を印加し、2分間、厚さ58nm相当のN極性のAlNを成膜した。続けて45分間、ターゲット材に電力密度0.02kW/cmで電力を印加することで第一のAlN層よりも厚い、300nm相当のAlN膜を成膜した。第二のパルスの電力密度は0.005kW/cmで一定とした。
第一の窒化物系薄膜として成長した厚さ58nmのAlNと、第一の窒化物系薄膜を成膜した後に第二の窒化物系膜を成膜したAlNとの結晶品質を測定するためにX線回折装置を用いてAlN(0002)面のX線ロッキングカーブ(XRC)半値幅の測定を行った。具体的には、第一の窒化物系薄膜のAlNの成長層及び第2の窒化物系膜のAlNの成長層についてXRC半値幅を算出した。XRC半値幅は、結晶のモザイク性を表しており、そのピーク幅が狭いほど転位密度が小さく、高品質な結晶であることを示している。第一の窒化物系薄膜である厚さ58nm相当のAlN(0002)のXRC半値幅はピークが3000arcsec以上であった。これに対し、その上に成長した第二の窒化物系膜である厚さ300nm相当のAlN(0002)のXRC半値幅は、1039arcsecとなることがわかった。これは厚膜を成長することによってAlN結晶中を伝搬する転位がAlNの成長と共に対消滅し、転位密度が減少したことを反映していると考えられる。
成膜後、それぞれの検討によって得られたAlN積層体を劈開し、KOHを用いたエッチングによって極性を判定した。
図9は、印加電力密度Wを2段階で変化させて成膜したAlNにおいてKOHエッチングを行う前後の断面SEM像を示す図である。図9(a)及び(b)は、III族極性のAlNが形成される条件でAlN成膜を行い、極性を固定した後に、N極性が成膜される条件でAlNを成膜、その後KOH水溶液でエッチングを行い、極性判定を行った前後のAlN積層体の断面SEM像を示している。図9(c)及び(d)は、N極性のAlNが形成される条件でAlNを成膜、極性を固定した後に、III族極性が成膜される条件でAlNの成膜を行い、その後KOH水溶液でエッチングを行い、極性判定を行った前後のAlN積層体の断面SEM像を示している。
図9(b)に示されるように、Sapphire基板上にIII族極性でAlNを成膜した後にN極性が成膜される条件で成膜したAlNはエッチングされていない。この場合、N極性に反転することなくIII族極性を引き継いだままAlNの結晶成長が進行していることがわかる。
一方、図9(d)に示されるように、Sapphire基板上にN極性でAlNを成膜した後にIII族極性が成膜される条件で成膜したAlNは表面が激しくエッチングされ、(10−1−1)面に一致した角度のファセットが表れた。このため、III族極性に反転することなくN極性を引き継いだままAlNの結晶成長が進行していることがわかった。
以上の実施の形態によれば、スパッタ法を用いて極性を持たない単結晶バルク基板上に極性を固定するために形成される第一の窒化物系薄膜と、その上に形成される転位密度を減少させるために形成される第一の窒化物系薄膜よりも厚い膜厚を持った第二の窒化物系膜を形成している。これによって、第一の窒化物系薄膜についてIII族極性、N極性が制御され、転位密度を下げるために十分な膜厚を持つ第二の窒化物系膜を設けている。そこで、第一の窒化物系薄膜と第二の窒化物系膜とから構成される窒化物系膜積層体を単結晶バルクウェハ上に設けた半導体基板とその製造方法を提供することが可能となる。
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
本実施の形態に係る半導体基板及びその製造方法は、GaNをはじめとしたAlN、InNおよびそれらの混晶から成る窒化物半導体をMOCVDやHVPE法によって成長するための下地層及びその製造方法として利用できる。また、上記製造方法で用いるスパッタリング法は、有毒なガスを使用しないため装置コストやランニングコストが安価で、大面積な基板に膜厚分布よく生産することが可能であるため有用である。
300 スパッタリング装置
301 真空チャンバー
302 真空ポンプ
303 ゲートバルブ
304 ガス供給源
305 基板ホルダー
306 基板
307 ターゲット材
308 バッキングプレート
309 マグネット
310 ヨーク
330 直流電源
331 電流計
332 パルス化ユニット
340 電源制御器
341 パルス制御器
501 2段階の階段状のパルスを用いて放電を行った時の窒素ラジカル密度の推移
502 1段階のパルスを用いて放電を行った時の窒素ラジカル密度の推移
600 半導体基板
601 単結晶バルク基板
602 第一の窒化物系薄膜
603 第二の窒化物系膜

Claims (8)

  1. 極性を持たない単結晶バルクウェハ上に、極性の制御された窒化物系膜積層体が形成された半導体基板であって、
    前記単結晶バルクウェハ上に直接設けられていると共に、極性を固定する第一の窒化物系薄膜と、
    前記第一の窒化物系薄膜の上に設けられている第二の窒化物系膜であって、前記第一の窒化物系薄膜の2/3以下のX線ロッキングカーブ半値幅を有する前記第二の窒化物系膜の成長層を含み、かつ膜厚が前記第一の窒化物系薄膜の2倍よりも大きく5μmよりも小さい第二の窒化物系膜と、
    を備え、前記第一の窒化物系薄膜と前記第二の窒化物系膜とによって前記窒化物系膜積層体を構成する、半導体基板。
  2. 前記第一の窒化物系薄膜は、前記第二の窒化物系膜との界面に<0001>方向の成長方位を有するIII族極性面を有し、
    前記第二の窒化物系膜は、前記第一の窒化物系薄膜の前記III族極性面の上に形成されており、その成長層は、前記第一の窒化物系薄膜の極性と同じIII族極性面であり、前記成長層のX線ロッキングカーブ半値幅は、500arcsec以下である、請求項1に記載の半導体基板。
  3. 前記第一の窒化物系薄膜は、前記第二の窒化物系膜との界面に<000−1>方向の成長方位を有するN極性面を有し、
    前記第二の窒化物系膜は、前記第一の窒化物系薄膜の前記N極性面の上に形成されており、その成長層は、前記第一の窒化物系薄膜の極性と同じN極性面であり、前記成長層のX線ロッキングカーブ半値幅は、1200arcsec以下である、請求項1に記載の半導体基板。
  4. 前記窒化物系膜積層体は、Al、Ga、Inの内、1種類以上の金属元素が窒化された2元もしくは3元以上の元素から構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体基板。
  5. 前記窒化物系膜積層体において、前記第二の窒化物系膜の上に、前記第二の窒化物系膜よりも成長層のX線ロッキングカーブ半値幅の小さな第三の窒化物系膜の形成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体基板。
  6. 前記窒化物系膜積層体は、Sapphire(α―Al)もしくはSiから成る前記単結晶バルクウェハ上に形成された、請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体基板。
  7. スパッタリング装置の真空チャンバー内に単結晶バルクウェハと、ターゲット材と、を用意するステップと、
    前記真空チャンバー内に窒素を30%以上含むガスを導入し、0.1Pa以上0.5Pa以下の圧力とし、前記単結晶バルクウェハの温度を25℃以上1000℃以下とし、0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の電力を前記ターゲット材に印加することによってプラズマを生成し、前記プラズマによる反応性スパッタリング法によって前記単結晶バルクウェハ上に極性を固定するための第一の窒化物系薄膜を形成するステップと、
    前記第一の窒化物系薄膜を形成する際に設定した直流電源の電力設定値と異なる値で、かつ0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下の範囲で前記ターゲット材に電力を印加することでプラズマを生成し、第二の窒化物系膜を成膜するステップと、
    を含み、
    前記単結晶バルクウェハの上に、前記第一の窒化物系薄膜と前記第二の窒化物系膜とによって構成される窒化物系薄膜積層体を成膜する、半導体基板の製造方法。
  8. 前記半導体基板の製造方法において、前記ターゲット材と前記ガスとを反応させて前記単結晶バルクウェハの上に第一の窒化物系薄膜及び第二の窒化物系膜を形成する反応性スパッタリングを行う際に、
    プラズマを発生させるために直流電流を周波数1kHz以上100kHz以下で、電力を印加しない時間割合が5%以上80%未満となるように0.005kW/cm以上0.4kW/cm以下で電力パルスを2段階以上の階段状となるように組み合わせて印加してプラズマを発生させるステップと、
    を含む、請求項7に記載の半導体基板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022176422A1 (ja) * 2021-02-19 2022-08-25 株式会社ジャパンディスプレイ 窒化ガリウム膜の製造方法

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