以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の真空バルブ用接点材料1を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、実施形態の真空バルブ用接点材料1(以下、単に接点材料1ともいう)は、導電性マトリックス2、ならびに導電性マトリックス2中に形成される第1耐弧性成分3、第2耐弧性成分4、および添加成分5から構成される。接点材料1は、導電性を有する銅(Cu)および耐弧性を有するクロム(Cr)を含むCu−Cr系の真空バルブ用接点材料である。
接点材料1のマトリックスである導電性マトリックス2は、接点材料1の導電性成分である。導電性マトリックス2は、Cuからなる。
接点材料1は、接点材料1の全体に対して導電性マトリックス2を構成するCuを質量比で、例えば5質量%以上90質量%以下、さらには25質量%以上70質量%以下含有する。接点材料1に含まれるCuの質量比が5質量%以上であると、接点材料1の導電特性は向上する。また、Cuの質量比が90質量%以下であると、接点材料1の耐電圧特性や遮断特性は向上する。
導電性マトリックス2中に形成される第1耐弧性成分3は、複数の粒子状の組織から構成され、導電性マトリックス2の内部に均一に分散している。また、第1耐弧性成分3は、第2耐弧性成分4の近傍および添加成分5の近傍に形成されない成分(以下、第1耐弧性成分3aともいう)、第2耐弧性成分4の近傍に形成される成分(以下、第1耐弧性成分3bともいう)、および添加成分5の近傍に形成される成分(以下、第1耐弧性成分3cともいう)からなる。
ここで、各成分の近傍に形成される第1耐弧性成分とは、各成分の周囲を取り囲む成分のことである。換言すると、第1耐弧性成分3bは、第2耐弧性成分4の周囲を取り囲む。第1耐弧性成分3cは、添加成分5の周囲を取り囲む。また、第1耐弧性成分3aは、第2耐弧性成分4の周囲および添加成分5の周囲を取り囲まず、導電性マトリックス2中に単独で均一に分散している。
微視的にみると、第1耐弧性成分3bは第2耐弧性成分4の周囲に集まり、第1耐弧性成分3cは添加成分5の周囲に集まるが、接点材料1を全体的にみると、第1耐弧性成分3a,3b,3cを合わせた全ての成分、すなわち第1耐弧性成分3は、導電性マトリックス2中に均一に分散している。
第1耐弧性成分3は、Crからなる。接点材料1は、接点材料1の全体に対して第1耐弧性成分3を構成するCrを質量比で、例えば5質量%以上50質量%以下、さらには10質量%以上40質量%以下含有する。接点材料1に含まれるCrの質量比が5質量%以上であると、接点材料1の耐弧性は増加する。また、Crの質量比が50質量%以下であると、Cuからなる導電性マトリックス2とCrからなる第1耐弧性成分3との相分離が抑制されて、第1耐弧性成分3が導電性マトリックス2中により均一に分散される。そのため、接点材料1の耐電圧特性や遮断特性は向上する。
なお、以下では、特に明記しない限り、各成分の平均粒径は、第1耐弧性成分3を構成する組織の平均粒径と同様に求めた。
導電性マトリックス2中に形成される第2耐弧性成分4は、複数の粒子状の組織から構成され、導電性マトリックス2の内部に均一に分散している。第2耐弧性成分4は、第1耐弧性成分3bを構成する複数の組織によって3次元的に取り囲まれる。
第2耐弧性成分4が第1耐弧性成分3bに囲まれることによって、接点材料1の機械的衝撃やアークの衝撃などに起因する、接点材料1からの第2耐弧性成分4の離脱や、接点材料1の表面における亀裂や欠けなどの発生は抑制される。そのため、接点材料1の耐電圧特性や遮断特性は向上する。
第2耐弧性成分4は、第1耐弧性成分3を構成するCrの融点よりも高い融点を有する。例えば、第2耐弧性成分4は、ニオブ(Nb)およびバナジウム(V)からなる群より選択される少なくとも1種の元素から構成される。また、第2耐弧性成分4は、上記した1種の元素から構成されてもよく、2種以上の元素から構成されてもよい。
接点材料1は、接点材料1の全体に対して第2耐弧性成分4を質量比で、例えば5質量%以上50質量%以下、さらには10質量%以上40質量%以下含有する。接点材料1に含まれる第2耐弧性成分4の質量比が5質量%以上であると、接点材料1の耐弧性は増加する。また、第2耐弧性成分4の質量比が50質量%以下であると、接点材料1からの第2耐弧性成分4の離脱や、接点材料1の表面における亀裂などの発生が効率的に抑制される。そのため、接点材料1の耐電圧特性や遮断特性が向上する。
導電性マトリックス2中に形成される添加成分5は、複数の粒子状の組織から構成され、導電性マトリックス2の内部に均一に分散している。添加成分5は、第1耐弧性成分3cを構成する複数の組織によって3次元的に取り囲まれる。
添加成分5が導電性マトリックス2中に存在することによって、第1耐弧性成分3cは添加成分5の近傍に形成される。換言すると、第1耐弧性成分3cは添加成分5の周囲を取り囲む。接点材料1を製造するときに用いられる第1耐弧性成分の原料粉末に比べて、第1耐弧性成分3cは微細化する。さらには、導電性マトリックス2と第1耐弧性成分3との相分離が抑制される。したがって、導電性マトリックス2中に形成される第1耐弧性成分3cは、微細化および均一化する。そのため、接点材料1の耐電圧特性や遮断特性は向上する。
添加成分5は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデン炭化物、およびタングステン炭化物からなる群より選択される少なくとも1種の物質から構成される。また、添加成分5は、上記した1種の物質から構成されてもよく、2種以上の物質から構成されてもよい。
接点材料1は、接点材料1の全体に対して添加成分5を質量比で、例えば0.1質量%以上10質量%以下、さらには1質量%以上5質量%以下含有する。接点材料1に含まれる添加成分5の質量比が0.1質量%以上であると、第1耐弧性成分3cの微細化および均一化が効率的に向上する。そのため、接点材料1の耐電圧特性や遮断特性は向上する。
なお、図1では、第2耐弧性成分4について、互いに集まって形成される複数の組織が第1耐弧性成分3bに取り囲まれる例について示しているが、互いに集まらずに単独で形成される一つの組織が第1耐弧性成分3bに取り囲まれてもよい。また、添加成分5についても同様であり、一つの組織が第1耐弧性成分3cに取り囲まれてもよい。
また、第1耐弧性成分3、第2耐弧性成分4、および添加成分5について、図1に示すように複数の粒子状の組織が独立して構成されているが、複数の粒子状の組織が連続して構成されることもある。ただし、接点材料1の全体に対して、独立的に構成される各成分3,4,5に比べて、連続的に構成される各成分の存在比は少ない。
次に、実施形態の真空バルブ用接点材料1の製造方法について説明する。
接点材料1の製造方法では、後述するように、少なくとも導電性材料の液相を生じる熱処理を行う。そして、接点材料1の製造方法は、こうした熱処理によって図1に示すような接点材料1を製造することができれば、特に限定されるものではない。以下に、接点材料1の製造方法をいくつか示す。
まず、液相焼結法による接点材料1の製造方法S10について以下に説明する。
液相焼結法による接点材料1の製造方法S10は、混合物を用意する工程S11(以下、用意工程S11ともいう)と、混合物の成形体を得る工程S12(以下、成形工程S12ともいう)と、混合物からなる成形体を熱処理する工程S13(以下、熱処理工程S13ともいう)とを有する。
まず、用意工程S11について説明する。
用意工程S11で用意する混合物は、Cuからなる導電性材料と、Crからなる第1耐弧性材料と、第2耐弧性材料と、添加材料とからなり、これらの材料を混合したものである。また、混合物は、各材料の市販品を混合することによって製造してもよいし、各材料の原料を粉砕および混合することによって製造してもよい。導電性材料、第1耐弧性材料、第2耐弧性材料、および添加材料は、それぞれ粒子状である。
導電性材料は、導電性を有するCuの複数の粒子からなる。導電性材料の平均粒径は、メジアン径(D50)で、例えば0.1μm以上150μm以下、さらには30μm以上70μm以下である。導電性材料の平均粒径が0.1μm以上であると、接点材料のガス含有量は抑制される。また、導電性材料の平均粒径が150μm以下であると、熱処理工程S13における導電性材料の分散性は増加する。そのため、接点材料1における導電性マトリックス2と第1耐弧性成分3との相分離は抑制される。
なお、以下では、特に明記しない限り、各材料の平均粒径はメジアン径(D50)で表す。メジアン径(D50)とは、個数基準の粒度分布から積算分布曲線の50%に相当する粒子径として算出されるメジアン径である。
第1耐弧性材料は、耐弧性を有するCrの複数の粒子からなる。第1耐弧性材料の平均粒径は、例えば0.1μm以上150μm以下、さらには0.1μm以上100μm以下である。第1耐弧性材料の平均粒径が0.1μm以上であると、接点材料のガス含有量は抑制される。また、第1耐弧性材料の平均粒径が150μm以下であると、熱処理工程S13における第1耐弧性材料の分散性は増加する。そのため、導電性マトリックス2と第1耐弧性成分3との相分離は抑制される。
第2耐弧性材料は、耐弧性を有し、Crの融点よりも高い融点を有する材料の複数の粒子からなる。例えば、第2耐弧性材料は、NbおよびVからなる群より選択される少なくとも1種の元素から構成される。また、第2耐弧性材料は、上記した1種の元素から構成されてもよく、2種以上の元素から構成されてもよい。
第2耐弧性材料の平均粒径は、例えば0.1μm以上150μm以下、さらには30μm以上70μm以下である。第2耐弧性材料の平均粒径が1μm以上であると、接点材料のガス含有量は抑制される。また、第2耐弧性材料の平均粒径が150μm以下であると、熱処理工程S13における第2耐弧性材料の分散性は増加する。そのため、第2耐弧性成分4は第1耐弧性成分3に取り囲まれやすくなる。
添加材料は、耐弧性を有する材料の複数の粒子からなる。例えば、添加材料は、Mo、W、モリブデン炭化物、およびタングステン炭化物からなる群より選択される少なくとも1種の物質から構成される。また、添加材料は、上記した1種の物質から構成されてもよく、2種以上の物質から構成されてもよい。
添加材料の平均粒径は、例えば0.1μm以上10μm以下、さらには0.5μm以上5μm以下であることがより好ましい。添加材料の平均粒径が0.1μm以上であると、接点材料のガス含有量は抑制される。また、添加材料の平均粒径が10μm以下であると、熱処理工程S13における添加材料の分散性が増加し、第1耐弧性成分3cは添加成分5の近傍に形成されやすくなる。そのため、導電性マトリックス2中に形成される第1耐弧性成分3cの微細化および均一化は向上する。
また、添加材料の平均粒径は、第1耐弧性材料の平均粒径よりも小さいことが好ましく、添加材料の平均粒径と第1耐弧性材料の平均粒径との比(添加材料の平均粒径/第1耐弧性材料の平均粒径)は、1/10以下であることがより好ましい。
次に、成形工程S12について説明する。
成形工程S12では、用意工程S11で用意した混合物を成形して、混合物の成形体を得る。成形方法は、成形体を得ることができれば、特に限定されるものではない。例えば、所定の形状を有する金型に混合物を入れて、所定の圧力で混合物を加圧することによって、混合物の圧粉体である成形体を製造することができる。
次に、熱処理工程S13について説明する。
熱処理工程S13では、混合物からなる成形体を、導電性材料であるCuの融点TCu(1083℃)より100℃低い温度(TCu−100℃)以上TCuより200℃高い温度(TCu+200℃)以下に加熱する。成形体の熱処理は、例えば真空雰囲気などの非酸化性雰囲気中で行われる。
成形体を上記した温度範囲で加熱すると、Cuからなる導電性材料が融けて、Cuの液相が生じる。このとき、第1耐弧性材料の少なくとも一部は、Cuの融液に固溶する。また、第2耐弧性材料および添加材料は融けない。そして、成形体を冷却することによって、融液に固溶していた第1耐弧性成分3は、第2耐弧性成分4の周囲、添加成分5の周囲、ならびに第2耐弧性成分4および添加成分5の周囲以外の融液中に析出し、Cuが固化される。その結果、図1に示すような、導電性マトリックス2、ならびに導電性マトリックス2中に形成される第1耐弧性成分3、第2耐弧性成分4、および添加成分5から構成される接点材料1を製造することができる。
このように、成形体を熱処理することによって、導電性材料は接点材料1における導電性マトリックス2、第1耐弧性材料は第1耐弧性成分3、第2耐弧性材料は第2耐弧性成分4、添加材料は添加成分5になる。
ここで、成形体の加熱温度がTCu−100℃以上であると、第1耐弧性材料は導電性材料に固溶しやすくなる。成形体の加熱温度がTCu+200℃以下であると、加熱時において、成形体の形状は維持される。
上記した加熱温度における成形体の加熱時間は、例えば0.5時間以上10時間以下であることがより好ましい。成形体の加熱時間が0.5時間以上であると、第1耐弧性材料は導電性材料に十分に固溶する。
次に、焼結溶浸法による接点材料1の製造方法S20について以下に説明する。
焼結溶浸法による接点材料1の製造方法S20は、混合物を用意する工程S21(以下、用意工程S21ともいう)と、混合物の成形体を得る工程S22(以下、成形工程S22ともいう)と、成形体に導電性材料を溶浸する工程S23(以下、溶浸工程S23ともいう)とを有する。
まず、用意工程S21について説明する。
用意工程S21で用意する混合物は、Crからなる第1耐弧性材料と第2耐弧性材料と添加材料とを含有する材料を混合したものである。用意工程S11と同様に、用意工程S21で用意する混合物は、市販品を混合して製造してもよいし、原料を粉砕および混合して製造してもよい。
次に、成形工程S22について説明する。
成形工程S22では、用意工程S21で得られた混合物を成形して成形体を得る。成形工程S12と同様に、成形工程S22の成形方法は特に限定されるものではない。
次に、溶浸工程S23について説明する。
溶浸工程S23では、Cuからなる導電性材料の融液を成形体に溶浸する。
導電性材料の溶浸方法は、接点材料を製造することができれば、特に限定されるものではない。例えば、導電性材料と成形体とが接触するように、成形体の上面および下面の少なくともいずれか一方の面に、板状や粒子状などの導電性材料を設置する。続いて、導電性材料および成形体を、上記した熱処理工程S13と同様に、TCu−100℃以上TCu+200℃以下に加熱する。溶浸における導電性材料および成形体の熱処理は、例えば非酸化性雰囲気中で行われる。
導電性材料および成形体を上記した温度範囲で加熱すると、導電性材料が融けて、Cuの液相が生じる。Cuの融液は、成形体に存在する気孔に入り込む。このとき、第1耐弧性材料の少なくとも一部は、Cuの融液に固溶する。また、第2耐弧性材料および添加材料は融けない。そして、成形体を冷却することによって、Cuが固化されて、接点材料1が得られる。
上記した加熱温度における導電性材料および成形体の加熱時間は、例えば0.5時間以上10時間以下である。導電性材料の加熱時間が0.5h以上であると、導電性材料の融液が成形体中に十分に浸み込み、第1耐弧性材料は導電性材料に十分に固溶する。
なお、ここでは、焼結溶浸法による製造方法S20において、導電性材料が用意工程S21で用意する混合物に含まれない例について説明したが、導電性材料は混合物に含まれてもよい。
次に、溶解法による接点材料1の製造方法S30について以下に説明する。
溶解法による接点材料1の製造方法S30は、用意工程S11と、混合物を熱処理する工程S32(以下、熱処理工程S32ともいう)とを有する。
製造方法S30の用意工程S11は、上記した製造方法S10の用意工程S11と同様である。
次に、熱処理工程S32について説明する。
熱処理工程S32では、用意工程S11で得られた混合物を、第1耐弧性材料であるCrの融点TCr以上に加熱する。混合物の熱処理は、例えば非酸化性雰囲気中で行われる。
混合物を上記した温度範囲で加熱すると、導電性材料および第1耐弧性材料が融けて、CuおよびCrの液相が生じる。このとき、Crの少なくとも一部は、Cuの融液に固溶する。また、第2耐弧性材料および添加材料は融けない。
続いて、融液を冷却することによって、Cuの融液に固溶していたCrが第2耐弧性成分の周囲、添加成分の周囲、ならびに第2耐弧性成分4および添加成分5の周囲以外のCuの融液中に析出し、Cuが固化されて、接点材料1が得られる。
ここで、混合物の加熱温度がTCr以上であると、第1耐弧性材料が確実に融けるため、第1耐弧性材料はCuの融液に固溶しやすくなる。
上記した加熱温度における混合物の加熱時間は、例えば0.5時間以上10時間以下である。混合物の加熱時間が0.5時間以上であると、混合物に含まれる気体が減少するため、接点材料のガス含有量が低下する。
また、製造方法S30は、熱処理工程S32の後に、接点材料を加熱する工程S33(以下、加熱工程S33ともいう)をさらに有してもよい。
加熱工程S33は、熱処理工程S32で得られた接点材料を、TCu以下、好ましくはTCuより400℃低い温度(TCu−400℃)以上TCuより20℃低い温度(TCu−20℃)以下に加熱する。接点材料1を上記した温度範囲で加熱すると、接点材料の残留応力が低下するため、接点材料の絶縁破壊電圧は増加する。接点材料の熱処理は、例えば非酸化性雰囲気中で行われる。
また、加熱工程S33の加熱温度における接点材料の加熱時間は、例えば0.5時間以上10時間以下である。接点材料の加熱時間が0.5時間以上であると、接点材料の残留応力が十分に低下する。
次に、焼結と焼結体の加圧とを繰り返す液相焼結法による接点材料1の製造方法S40について以下に説明する。
製造方法S40は、用意工程S11と、成形工程S12と、成形体を焼結する工程S43(以下、焼結工程S43ともいう)と、焼結体を加圧する工程S44(以下、加圧工程S44ともいう)と、加圧した焼結体を熱処理する工程S45(以下、熱処理工程S45ともいう)とを有する。
製造方法S40の用意工程S11および成形工程S12は、上記した製造方法S10の用意工程S11および成形工程S12とそれぞれ同様である。
次に、焼結工程S43について説明する。
焼結工程S43では、成形工程S12で得られた成形体を加熱することによって、成形体を焼結し、焼結体を得る。成形体の焼結方法は、焼結体を得ることができれば、特に限定されるものではない。成形体の焼結は、例えば非酸化性雰囲気中で行われる。
成形体の加熱温度は、例えば800℃以上1300℃以下、さらには1000℃以上1250℃以下である。成形体の加熱温度が800℃以上であると、焼結性が向上する。成形体の加熱温度が1300℃以下であると、成形体を構成する各材料が融けずに、成形体は焼結する。
また、上記した加熱温度における成形体の加熱時間は、例えば0.5時間以上10時間以下である。成形体の加熱時間が0.5時間以上であると、焼結性が向上する。
次に、加圧工程S44について説明する。
加圧工程S44では、焼結工程S43で得られた焼結体を加圧する。焼結体を加圧することによって、焼結体は圧縮する。そのため、加圧前の焼結体に比べて、加圧後の焼結体の大きさは小さい。焼結体の加圧方法は、焼結体を圧縮することができれば、特に限定されるものではない。例えば、加圧成形機で焼結体を加圧することによって、圧縮した焼結体を得ることができる。
焼結体を加圧する力は、例えば0.1t/cm2以上15t/cm2以下、さらには1t/cm2以上10t/cm2以下である。焼結体を加圧する力が0.1t/cm2以上であると、焼結体が圧縮され、焼結体に含まれる気孔が減少する。焼結体を加圧する力が15t/cm2以下であると、加圧による焼結体の破損が抑制される。
次に、熱処理工程S45について説明する。
熱処理工程S45では、加圧工程S44によって加圧した焼結体を熱処理する。この熱処理では、混合物からなる焼結体を、TCu−100℃以上TCu+200℃以下、に加熱する。なお、熱処理工程S45と上記した熱処理工程S13との違いは、熱処理工程S45が焼結体を熱処理するのに対して、熱処理工程S13は成形体を熱処理することである。
熱処理工程S45では、加圧して圧縮した焼結体、すなわち気孔率の低下した焼結体を熱処理する。そのため、接点材料について、電気伝導度は増加し、ガス含有量は低下する。
なお、製造方法S40では、焼結工程S43と加圧工程S44とを複数回繰り返してもよい。すなわち、加圧工程S44で加圧した焼結体を、焼結工程S43で再度焼結してもよい。このように焼結工程S43と加圧工程S44とを複数回繰り返すことによって、接点材料の電気伝導度はさらに増加し、ガス含有量はさらに低下する。
このように、接点材料は、様々な製造方法によって製造することができる。そして、求められる接点材料の特性や接点材料の製造に使用する材料の種類などに応じて、接点材料の製造方法を適宜選択することができる。
次に、実施形態の真空バルブ用接点材料1(1a,1b)を備える真空バルブについて説明する。
図2は、実施形態の真空バルブ用接点材料1a,1bを備える真空バルブ21を模式的に示す断面図である。図3は、実施形態の真空バルブ用接点材料1a,1bを備える真空バルブ21の接点構成を模式的に示す拡大断面図である。
図2に示すように、筒状の真空絶縁容器22の両端開口面には、固定側の封着金具23a、および可動側の封着金具23bが、それぞれろう付けによって設けられている。固定側の封着金具23aには、固定側の通電軸24aが貫通固定されている。
図3に示すように、固定側の通電軸24aの下端部には、固定側の電極25aがろう材26aによって固着されている。また、固定側の電極25aの下面には、固定側の接点材料1aがろう材27aによって固着されている。なお、固定側の電極25aは、固定側の通電軸24aにかしめ等によって圧着接続されてもよい。
また、固定側の接点材料1aに対向して接離自在に、可動側の接点材料1bがろう材27bによって可動側の電極25bの上面に固着されている。可動側の電極25bは、ろう材26bによって、可動側の通電軸24bの上端部に固着されている。なお、可動側の電極25bは、可動側の通電軸24bにかしめ等によって圧着接続されてもよい。
また、図2に示すように、可動側の通電軸24bは、可動側の封着金具23bの中央開口部を移動自在に貫通する。可動側の通電軸24bと可動側の封着金具23bの開口部との間には、伸縮自在のベローズ28がろう付けによって設けられている。
また、固定側の接点材料1aおよび可動側の接点材料1bを包囲する筒状のアークシールド29の外周には、支持部材30がろう付けされている。支持部材30は、真空絶縁容器22の内面から突き出た突出部22aに固定されている。
真空バルブ21がこのような構成を有することによって、真空絶縁容器22内を真空に保ちながら、可動側の接点材料1aが固定側の接点材料1bと接離することができる。
真空バルブ21は、例えば真空遮断器に適用することができる。耐電圧特性や遮断特性を向上させた接点材料1a,1bが真空遮断器の開閉器に使用されると、真空遮断器の特性は向上する。
上記したように、実施形態の接点材料および接点材料の製造方法によれば、接点材料は、第1耐弧性成分に取り囲まれる第2耐弧性成分および添加成分を含む。第2耐弧性成分が第1耐弧性成分に取り囲まれることによって、接点材料からの第2耐弧性成分の離脱や、接点材料の表面における亀裂などの発生は抑制される。また、添加成分が第1耐弧性成分に取り囲まれることによって、導電性マトリックス中に形成される第1耐弧性成分の微細化および均一性は向上する。そのため、接点材料の耐電圧特性や遮断特性は向上する。
以上説明した実施形態によれば、優れた耐電圧特性を有すると共に、耐弧性を向上させる物質を含有しても、電流遮断時の衝撃などによる当該物質の離脱や表面の亀裂の発生を抑制できる、真空バルブ用接点材料および真空バルブ用接点材料の製造方法を提供することができる。
以下、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されない。
(実施例1)
実施例1では、液相焼結法によってCu−30Cr−15Nb−1Moの接点材料E1を製造した。なお、元素記号の前の数字は質量%を示す。以下に、接点材料E1の製造方法を示す。
まず、平均粒径70μmのCu粒子と平均粒径100μmのCr粒子と平均粒径50μmのNb粒子と平均粒径1μmのMo粒子とを質量比54:30:15:1で混合して、Cu粒子とCr粒子とNb粒子とMo粒子とからなる混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、10t/cm2の圧力で混合物を加圧して、成形体を得た。
続いて、水素雰囲気中で、成形体を1200℃で5時間加熱して、Cuを溶融した。なお、このときの加熱温度1200℃は、TCuより117℃高い温度であった。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料E1を得た。
図4は、接点材料E1の断面のSEM画像である。また、図5は、接点材料E1の断面におけるCu元素をマッピングした画像であり、図6は、接点材料E1の断面におけるCr元素をマッピングした画像であり、図7は、接点材料E1の断面におけるMo元素をマッピングした画像である。
具体的には、製造した接点材料E1を切断し、接点材料E1の切断面をSEMで観察した画像を図4に示す。また、図4のSEM画像についてEPMA(電子線マイクロアナライザ)による元素マッピングを行った画像を図5〜7に示す。図5〜7について、観察した部分における各元素の濃度が高いほど、当該部分は白色(淡色)になり、各元素の濃度が低いほど、当該部分は黒色(濃色)になる。
図5〜7から、Crからなる第1耐弧性成分およびMoからなる添加成分は、Cuからなる導電性マトリックス中に形成され、添加成分は、第1耐弧性成分に取り囲まれていた。また、図には示していないが、Nbからなる第2耐弧性成分は、導電性マトリックス中に形成され、第1耐弧性成分に取り囲まれていた。また、第2耐弧性成分および添加成分を取り囲まずに、導電性マトリックス中に単独に分散している第1耐弧性成分も形成していた。
また、接点材料E1の硬さを測定した。具体的には、製造した接点材料E1を切断し、接点材料E1の切断面のロックウェル硬さ(HRB)を測定した。その結果、接点材料E1のHRBは30であった。
また、接点材料E1について、耐電圧特性の試験を行った。具体的には、耐電圧特性の試験は、図2に示す真空バルブを模擬した真空チャンバに、直径20mmおよび厚さ3mmの円柱状に加工した接点材料E1を1mmのギャップを介して対向配置し、絶縁破壊電圧を10回測定し、10個の測定値の算術平均値を絶縁破壊電圧として算出した。後述する比較例1の接点材料C1の絶縁破壊電圧を1(基準)として、接点材料E1の絶縁破壊電圧は1.2倍であり、接点材料E1の耐電圧特性は向上した。
(実施例2)
実施例2では、焼結溶浸法によってCu−30Cr−15Nb−1Moの接点材料E2を製造した。以下に、接点材料E2の製造方法を示す。
まず、平均粒径70μmのCu粒子と平均粒径100μmのCr粒子と平均粒径50μmのNb粒子と平均粒径1μmのMo粒子とを質量比23.4:50:25:1.6で混合して、Cu粒子とCr粒子とNb粒子とMo粒子とからなる混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、混合物を加圧して、相対密度59〜61%(60±1%)の成形体を得た。
続いて、成形体の上面に板状のCu片を設置した。そして、水素雰囲気中で、成形体およびCu片を1200℃で加熱して、Cu片を溶融することによって、Cuが成形体に溶浸した。その後、Cuを溶浸した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料E2を得た。
接点材料E2をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料E2では、接点材料E1と同様の組織がみられた。
また、実施例1と同様に、接点材料E2の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料E2のHRBは35であった。また、後述する接点材料C1の絶縁破壊電圧を基準として、接点材料E2の絶縁破壊電圧は1.3倍であり、接点材料E2の耐電圧特性は向上した。
(比較例1)
比較例1では、固相焼結法によってCu−30Cr−15Nb−1Moの接点材料C1を製造した。以下に、接点材料C1の製造方法を示す。
まず、実施例1と同様にして、混合物を得て、成形体を得た。
続いて、水素雰囲気中で、成形体を1050℃で1時間加熱して、成形体を焼結した。なお、このときの加熱温度1050℃は、TCuより33℃低い温度であった。また、この熱処理では、Cu粒子の液相は生じなかった。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料C1を得た。
接点材料C1をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料C1では、Nbからなる第2耐弧性成分およびMoからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれておらず、第1耐弧性成分と第2耐弧性成分と添加成分とがCuからなる導電性マトリックス中に分散していた。また、第1耐弧性成分の組織は、原料であるCr粒子の形状および大きさとほぼ同様であり、第2耐弧性成分の組織は、Nb粒子の形状および大きさとほぼ同様であり、添加成分の組織は、Mo粒子の形状および大きさとほぼ同様であった。
また、実施例1と同様に、接点材料C1の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料C1のHRBは20であった。
このように、第1耐弧性成分が第2耐弧性成分の周りを覆っていることによって、接点材料C1に比べて、接点材料E1〜E2の硬さが向上した。そのため、接点材料E1〜E2からの第2耐弧性成分の離脱や、接点材料E1〜E2の表面における亀裂などの発生は抑制された。また、第1耐弧性成分が添加成分の周りを覆っていることによって、接点材料C1に比べて、第1耐弧性成分が微細かつ均一に析出された。そのため、接点材料E1〜E2の耐電圧特性は向上した。
(実施例3)
実施例3では、溶解法によってCu−25Cr−5Nb−1Mo2Cの接点材料E3を製造した。以下に、接点材料E3の製造方法を示す。
まず、平均粒径50μmのCu粒子と平均粒径100μmのCr粒子と平均粒径50μmのNb粒子と平均粒径1μmのMo2C粒子とを質量比69:25:5:1で混合して、Cu粒子とCr粒子とNb粒子とMo2C粒子とからなる混合物を得た。
続いて、混合物3kgをアルミナ製のルツボ内に入れた。そして、400Torrに減圧したアルゴン雰囲気中で、混合物を約1800℃で加熱した。その後、融液を鋳型に流し込んで急冷した。こうして、接点材料E3を得た。
接点材料E3をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、Nbからなる第2耐弧性成分およびMo2Cからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれていた。また、第2耐弧性成分および添加成分を取り囲まずに、Cuからなる導電性マトリックス中に単独に分散している第1耐弧性成分も形成していた。
また、実施例1と同様に、接点材料E3の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料E3のHRBは35であった。また、後述する比較例2の接点材料C2の絶縁破壊電圧を基準として、接点材料E3の絶縁破壊電圧は1.4倍であり、接点材料E3の耐電圧特性は向上した。
(実施例4)
実施例4では、溶解法によってCu−25Cr−5Nb−1Mo2Cの接点材料E4を製造した。以下に、接点材料E4の製造方法を示す。
まず、実施例3と同様にして、接点材料E3を得た。
続いて、水素雰囲気中で、接点材料E3を800℃で加熱した。なお、このときの加熱温度800℃は、TCuより283℃低い温度であった。その後、加熱した接点材料を自然に冷却した。こうして、接点材料E4を得た。
接点材料E4をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料E4では、接点材料E3と同様の組織がみられた。
また、実施例1と同様に、接点材料E4の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料E4のHRBは33であった。また、後述する接点材料C2の絶縁破壊電圧を基準として、接点材料E4の絶縁破壊電圧は1.5倍であり、接点材料E4の耐電圧特性は向上した。
(比較例2)
比較例2では、固相焼結法によってCu−25Cr−5Nb−1Mo2Cの接点材料C2を製造した。以下に、接点材料C2の製造方法を示す。
まず、実施例3と同様にして、混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、10t/cm2の圧力で混合物を加圧して、成形体を得た。
続いて、水素雰囲気中で、成形体を1050℃で1時間加熱して、成形体を焼結した。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料C2を得た。
接点材料C2をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料C2では、Nbからなる第2耐弧性成分およびMo2Cからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれておらず、第1耐弧性成分と第2耐弧性成分と添加成分とがCuからなる導電性マトリックス中に分散していた。
また、実施例1と同様に、接点材料C2の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料C2のHRBは33よりも低かった。
このように、第1耐弧性成分が第2耐弧性成分の周りおよび添加成分の周りを覆っていることによって、接点材料C2に比べて、接点材料E3〜E4の硬さおよび耐電圧特性は向上した。さらに、接点材料E3を熱処理することによって得られた接点材料E4では、残留応力が低下したため、耐電圧特性はさらに向上した。
(実施例5)
実施例5では、焼結と焼結体の加圧とを繰り返す液相焼結法によってCu−20Cr−10V−0.5Wの接点材料E5を製造した。以下に、接点材料E5の製造方法を示す。
まず、平均粒径50μmのCu粒子と平均粒径100μmのCr粒子と平均粒径50μmのV粒子と平均粒径0.1μmのW粒子とを質量比69.5:20:10:0.5で混合して、Cu粒子とCr粒子とV粒子とW粒子とからなる混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、3t/cm2の圧力で混合物を加圧して、成形体を得た。
続いて、真空雰囲気中で、成形体を1000℃で2時間加熱して、成形体を焼結した。なお、このときの加熱温度1000℃は、TCuより83℃低い温度であった。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、焼結体を得た。
続いて、10t/cm2の圧力で焼結体を加圧して圧縮した。
続いて、真空雰囲気中で、加圧した焼結体を1250℃で2時間加熱して、Cuを溶解した。なお、このときの加熱温度1250℃は、TCuより167℃高い温度であった。その後、加熱した焼結体を自然に冷却した。こうして、接点材料E5を得た。
接点材料E5をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、Vからなる第2耐弧性成分およびWからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれていた。また、第2耐弧性成分および添加成分を取り囲まずに、Cuからなる導電性マトリックス中に単独に分散している第1耐弧性成分も形成していた。また、添加成分を取り囲む第1耐弧性成分の組織の大きさと、単独に分散している第1耐弧性成分の組織の大きさとは、ほぼ同じであった。
また、実施例1と同様に、接点材料E5の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料E5のHRBは30であった。また、後述する比較例3の接点材料C3の絶縁破壊電圧を基準として、接点材料E5の絶縁破壊電圧は1.6倍であり、接点材料E5の耐電圧特性は向上した。
(比較例3)
比較例3では、固相焼結法によってCu−20Cr−10V−0.5Wの接点材料C3を製造した。以下に、接点材料C3の製造方法を示す。
まず、実施例5と同様にして、混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、10t/cm2の圧力で混合物を加圧して、成形体を得た。
続いて、水素雰囲気中で、成形体を1050℃で1時間加熱して、成形体を焼結した。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料C3を得た。
接点材料C3をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料C3では、Vからなる第2耐弧性成分およびWからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれておらず、第1耐弧性成分と第2耐弧性成分と添加成分とがCuからなる導電性マトリックス中に分散していた。
また、実施例1と同様に、接点材料C3の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料C2のHRBは30よりも低かった。
このように、第1耐弧性成分が第2耐弧性成分の周りおよび添加成分の周りを覆っていることに加えて、添加成分を取り囲む第1耐弧性成分の組織と単独に形成している第1耐弧性成分の組織とがほぼ同じ大きさであることによって、接点材料C3に比べて、接点材料E5の硬さおよび耐電圧特性は向上した。
(実施例6)
実施例6では、液相焼結法によってCu−25Cr−10V−2WCの接点材料E6を製造した。以下に、接点材料E6の製造方法を示す。
まず、平均粒径50μmのCu粒子と平均粒径70μmのCr粒子と平均粒径30μmのV粒子と平均粒径10μmのWC粒子とを質量比63:25:10:2で混合して、Cu粒子とCr粒子とV粒子とWC粒子とからなる混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、15t/cm2の圧力で混合物を加圧して、成形体を得た。
続いて、水素雰囲気中で、成形体を1100℃で0.5時間加熱して、Cuを溶融した。なお、このときの加熱温度1100℃は、TCuより17℃高い温度であった。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料E6を得た。
接点材料E6をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、Vからなる第2耐弧性成分およびWCからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれていた。また、第2耐弧性成分および添加成分を取り囲まずに、Cuからなる導電性マトリックス中に単独に分散している第1耐弧性成分も形成していた。
また、実施例1と同様に、接点材料E6の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料E6のHRBは32であった。また、後述する比較例4の接点材料C4の絶縁破壊電圧を基準として、接点材料E6の絶縁破壊電圧は1.4倍であり、接点材料E6の耐電圧特性は向上した。
(実施例7)
実施例7では、実施例6における平均粒径10μmのWC粒子を、平均粒径1μmのWC粒子にした以外は、実施例6と同様の方法によって、Cu−25Cr−10V−2WCの接点材料E7を製造した。
接点材料E7をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料E7では、接点材料E6と基本的に同様の組織がみられた。具体的には、接点材料E6に比べて、接点材料E7では、WCからなる添加成分の組織は微細であり、添加成分の周りを取り囲む第1耐弧性成分の組織は微細であった。
また、実施例1と同様に、接点材料E7の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料E7のHRBは35であった。また、後述する接点材料C4の絶縁破壊電圧を基準として、接点材料E7の絶縁破壊電圧は1.6倍であり、接点材料E7の耐電圧特性は向上した。
(比較例4)
比較例4では、固相焼結法によってCu−25Cr−10V−2WCの接点材料C4を製造した。以下に、接点材料C4の製造方法を示す。
まず、実施例6と同様にして、混合物を得た。
続いて、内径25mmの金型内に混合物を入れた。そして、10t/cm2の圧力で混合物を加圧して、成形体を得た。
続いて、水素雰囲気中で、成形体を1050℃で1時間加熱して、成形体を焼結した。その後、加熱した成形体を自然に冷却した。こうして、接点材料C4を得た。
接点材料C4をSEMおよびEPMAで観察した。その結果、接点材料C4では、Vからなる第2耐弧性成分およびWCからなる添加成分は、Crからなる第1耐弧性成分に取り囲まれておらず、第1耐弧性成分と第2耐弧性成分と添加成分とがCuからなる導電性マトリックス中に分散していた。
また、実施例1と同様に、接点材料C4の硬さの測定および耐電圧特性の試験を行った。その結果、接点材料C4のHRBは35よりも低かった。
このように、第1耐弧性成分が第2耐弧性成分の周りおよび添加成分の周りを覆っていることによって、接点材料C4に比べて、接点材料E6〜E7の硬さおよび耐電圧特性は向上した。さらに、接点材料E7で用いたWC粒子の平均粒径をCr粒子の平均粒径の1/10以下にすることによって、接点材料E7の耐電圧特性はさらに向上した。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。