(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態のレーザー照射装置1は、患者の頭部に装着可能なフェイスボウ10に取り付けられるものである。フェイスボウ10は、装着された患者の顎関節に対する上顎の位置を記録可能であり、咬合器60(図6、7参照)に歯型の模型61(図6、7参照)などを取り付ける際に、咬合器60に患者の顎関節に対する上顎の位置を再現するフェイスボウトランスファーを行うための器具である。
[フェイスボウ10の構成]
まず、図1を参照しつつ、フェイスボウ10の構成について説明する。図1に示すように、フェイスボウ10は、本体フレーム11、イヤーロッド13、バイトフォーク15、及び、リファレンスピン17を主に備えている。
本体フレーム11は、全体として略コの字型を有している。本体フレーム11は、一対の側方フレーム11aと、一対の側方フレーム11a同士を連結する連結フレーム11bとからなる。一対の側方フレーム11aは、いずれも一方向(図1中上下方向)に沿って延びており、且つ、互いに平行である。連結フレーム11bは、側方フレーム11aの伸延方向と直交する方向(図1中左右方向)に沿って延びており、一対の側方フレーム11aの一方側(図1中上方側)の端部同士を連結している。
フェイスボウ10が患者に装着された状態であるとき(図5参照)、一対の側方フレーム11aが患者の頭部の両側方にそれぞれ位置し、連結フレーム11bが患者の顔の前に位置する。以下の説明において、連結フレーム11bの伸延方向(図1中左右方向)を単に「左右方向」と称する。また、側方フレーム11aの連結フレーム11bが接続されている方の端部側(図1中上方側)を「前方」とし、連結フレーム11bが接続されている方とは反対の端部側(図1中下方側)を「後方」とする。すなわち、側方フレーム11aの伸延方向(図1中上下方向)は「前後方向」である。
イヤーロッド13は、本体フレーム11における一対の側方フレーム11aの後方側の端部にそれぞれ取り付けられている。イヤーロッド13は、棒状部材であり、その伸延方向が左右方向に沿うように本体フレーム11に取り付けられている。イヤーロッド13は、固定ネジ14によって本体フレーム11に固定されており、固定ネジ14を緩めることで左右方向に沿って移動可能となっている。図1中左方の側方フレーム11aに取り付けられたイヤーロッド13の右側端部、及び、右方の側方フレーム11aに取り付けられたイヤーロッド13の左側端部には、それぞれイヤーピース13aが装着されている。
イヤーロッド13は、フェイスボウ10を用いてフェイスボウトランスファーを行う際に、患者の後方基準点に合わせるものである。後方基準点を外聴道とする場合には、固定ネジ14を緩めてイヤーロッド13の左右方向の位置を調整することで、イヤーピース13aが装着された状態のイヤーロッド13を患者の外聴道に挿入する。また、後方基準点を平均的顆頭点とする場合には、固定ネジ14を緩めてイヤーロッド13の左右方向の位置を調整することで、イヤーピース13aを取り外した状態のイヤーロッド13を患者の平均的顆頭点に合わせる。
バイトフォーク15は、患者の口腔内に挿入可能な挿入部15aと、支持棒15bとからなる。支持棒15bは、その伸延方向の一端部が直角に折り曲げられており、全体として略L字型を有している。挿入部15aは、支持棒15bの折り曲げられた部分に取り付けられている。バイトフォーク15は、取付具16により、支持棒15bの伸延方向が前後方向とほぼ一致するように、本体フレーム11の連結フレーム11bに取り付け可能である。より詳細には、バイトフォーク15は、挿入部15aが配置されている側が後方となるように、本体フレーム11に取り付けられる。
リファレンスピン17は、棒状の部材であり、その伸延方向の一端部が尖っている。リファレンスピン17は、その伸延方向が左右方向と交わるように、取付具18により本体フレーム11の連結フレーム11bに取り付け可能である。より詳細には、リファレンスピン17は、尖っている方の端部が後方となるように、本体フレーム11に取り付けられる。リファレンスピン17は、フェイスボウ10を用いてフェイスボウトランスファーを行う際に、その先端を患者の前方基準点に合わせるものである。後方基準点を外聴耳とする場合には、前方基準点は内眼角から23mm下方の点、又は、上顎前歯切縁から45mm上方の点のいずれかとする。また、後方基準点を平均的顆頭点とする場合には、前方基準点は眼窩下点とする。
[レーザー照射装置1の構成]
次に、図2〜図4を参照しつつ、レーザー照射装置1の構成について説明する。レーザー照射装置1は、上述のようなフェイスボウ10に取り付け可能なものである。より詳細には、レーザー照射装置1は、本体フレーム11の連結フレーム11b又はバイトフォーク15の支持棒15bに取り付け可能である。以下の説明において、フェイスボウ10における本体フレーム11の連結フレーム11b又はバイトフォーク15の支持棒15bのことを、「取付部分」と称することがある。
レーザー照射装置1は、フェイスボウ10に着脱可能な取付部20と、レーザー光を照射可能な照射部30と、取付部20及び照射部30を支持する支持部40と、の3つの部品を備えている。図2〜図4に示すように、照射部30及び支持部40はいずれも一方向に長尺な形状を有しており、照射部30と支持部40との長手方向は互いに直交している。以下の説明において、支持部40の長手方向を「X方向」、照射部30の長手方向を「Y方向」、「X方向」及び「Y方向」の両方に直交する方向を「Z方向」と定義する。
取付部20は、一方向(図2、3ではY方向、図4ではZ方向)に長尺な形状を有する本体21を備えている。取付部20は、後で詳述する通り、図2、3に示すように、本体21の長手方向がY方向となるように支持部40に支持される状態と、図4に示すように、本体21の長手方向がZ方向となるように支持部40に支持される状態とを取り得る。
以下、図2、3を参照しつつ、取付部20について説明する。本体21のY方向に関する一方側(図2中右側、図3中左斜め下側)の端部には、フェイスボウ10の棒状の取付部分を挿入するための切欠21aが形成されている。切欠21aはZ方向に本体21を貫通しており、且つ、Z方向から見てU字型を有している。切欠21aは、本体21のY方向に関する一方側の端面に開口している。したがって、レーザー照射装置1のZ方向をフェイスボウ10の取付部分の伸延方向と一致させた状態で、Y方向に関する一方側の端部から切欠21a内にフェイスボウ10の取付部分を挿入することができる。本体21のY方向に関する一方側の端部には、切欠21aの開口を被覆可能な蓋22が取り付けられている。すなわち、蓋22が取り付けられた状態では切欠21aの開口が塞がれ、切欠21aは貫通孔として機能する。よって、切欠21a内にフェイスボウ10の取付部分を挿入した状態で蓋22を本体21に取り付けることで、取付部20をフェイスボウ10の取付部分に取り付けることができる。
本体21は、Y方向に関して切欠21aが形成されている側とは反対の他方側(図2中左方側、図3中右斜め上側)の端部は略立方体形状を有しており、他方側の端部以外の部分は略円柱形状を有している。より詳細には、本体21の略立方体形状を有する部分は、X方向に直交する2つの面及びZ方向に直交する2つの面の合計4つの面からなる側面と、Y方向に直交する1つの面(本体21の他方側の端面)を有している。そして、図2に示すように、本体21の略立方体形状を有する部分には、互いに直交する2つのネジ穴21b(図2中破線で示す)、及びネジ穴21cが形成されている。ネジ穴21bはY方向に延びるネジ穴であって、本体21の他方側の端面、すなわちY方向に直交する面に開口している。ネジ穴21cはZ方向に延びるネジ穴であって、Z方向に直交する2つの側面の両方に開口している。すなわち、ネジ穴21cはZ方向に貫通している。
取付部20を本体フレーム11の連結フレーム11bに取り付ける場合には(図5〜図7参照)、後述の通り、ネジ穴21b及びネジ50を使用して、取付部20を支持部40に支持する。一方、取付部20をバイトフォーク15の支持棒15bに取り付ける場合には(図4参照)、後述の通り、ネジ穴21c及びネジ50を使用して、取付部20を支持部40に支持する。
照射部30は、Y方向に長尺な略円筒形状を有している。照射部30のY方向に関する一方側(図2、4中右方、図3中左斜め下方)の端部には、レーザー光が出射される照射孔31が設けられている。照射孔31からは、Y方向に向けて十字型のレーザー光が出射される。より詳細には、図3に示すように、照射孔31から出射されるレーザー光は、いずれも照射部30の長手方向(Y方向)に沿う面であり、且つ、互いに直交する面である2つの仮想平面P、Qに沿って放射される。図3においては、仮想平面PはX方向に直交する面であり、仮想平面QはZ方向に直交する面である。仮想平面P及び仮想平面Qは、照射部30のレーザー光の照射方向(Y方向)に沿う中心軸L上で互いに交わっている。
照射部30のY方向に関して照射孔31が設けられている側とは反対の他方側(図2、4中左方、図3中右斜め上方)の端部には、照射孔31からのレーザー光の照射をON/OFFするためのスイッチ32が設けられている。スイッチ32は、「ON」状態で保持可能に構成されている。すなわち、操作者がスイッチ32を操作して一旦「ON」状態にした後は、操作者がスイッチ32から手を放しても「ON」状態で保持される。操作者が再度スイッチ32を操作して「OFF」状態とするまでは、「ON」状態のままである。
照射部30は、レーザー光の照射方向(Y方向)に沿う中心軸Lを中心とした回転方向に関する位置を調整可能である。照射部30を中心軸Lを中心に回転させることで、レーザー光の十字の向きを変えることができる。すなわち、レーザー光が放射される2つの仮想平面P、Qの向きを変更することができる。図3においては、仮想平面PはX方向に直交しており、仮想平面QはZ方向に直交しているが、照射部30を中心軸Lを中心に回転させることで、仮想平面PQも中心軸Lを中心に回転する。
支持部40は、X方向に長尺な板形状を有している。図3に示すように、支持部40には、取付部20を支持するための開口41と、照射部30を支持するための開口42とが、X方向に並んで形成されている。
取付部20を支持するための開口41は、Y方向に貫通しており、且つ、X方向に延びている。上述のように取付部20は、ネジ穴21bを使用して支持部40に支持される態様と(図2、3参照)、ネジ穴21cを使用して支持部40に支持される態様(図4参照)とを取り得る。
ここで、ネジ穴21bを使用して取付部20を支持部40に支持する場合について説明する。この場合は、図2に示すように、まず、支持部40のY方向に関して一方側(図2中右方)に、ネジ穴21bの開口(本体21の端面)が開口41と対向するように取付部20の本体21を配置する。そして、支持部40を挟んで本体21とは反対側から開口41を介してネジ穴21bにネジ50を差し込み締め付けることで、取付部20を支持部40に支持させることができる。取付部20は、ネジ50が緩められた状態において、開口41の長手方向に沿ってX方向に関してスライド可能である。このとき、取付部20の切欠21aの貫通方向(Z方向)と、照射部30によるレーザー光の照射方向(Y方向)との間の角度は90度である。
次に、図4を参照しつつ、ネジ穴21cを使用して取付部20を支持部40に支持する場合について説明する。まず、支持部40のY方向に関して一方側(図4中右方)に、ネジ穴21cの開口(本体21の側面)が開口41と対向するように取付部20の本体21を配置する。すなわち、本体21の長手方向がZ方向に一致するように配置する。そして、支持部40を挟んで本体21とは反対側から開口41を介してネジ穴21cにネジ50を差し込み締め付けることで、取付部20を支持部40に支持させることができる。取付部20は、ネジ50が緩められた状態において、開口41に長手方向に沿ってX方向に関してスライド可能である。このとき、取付部20の切欠21aの貫通方向と、照射部30によるレーザー光の照射方向とは、いずれもY方向となり、これらの間の角度は0度である。
図3に示すように、照射部30を支持するための開口42は、支持部40のX方向に関して一方(図3中右斜め下方)の端部近傍に形成されている。開口42は、Y方向に貫通しており照射部30を挿通可能になっている。開口42に挿通された照射部30を開口42内で回転させることで、照射部30の中心軸Lを中心とした回転方向に関する位置を調整可能である。
開口42のX方向に関する一方側には、XY平面に平行な切込42aが形成されている。切込42aは、開口42を画定する壁面のX方向に関する一方側の部分から、支持部40のX方向に関する一方側の端面まで延びている。開口42は、XY平面に平行な切込42aが形成されていることにより、Z方向に関して両側に広げることができる。また、支持部40のX方向に関する一方側(図3中右斜め下方側、図4中紙面手前側)の端部と、開口42との間には、Z方向に延びるネジ穴43が形成されている。ネジ穴43は、切込42aをZ方向に貫くように形成されている。したがって、開口42をZ方向に関して両側に広げた状態で照射部30を開口42に挿通すると共に、中心軸Lを中心とした回転方向に関して照射部30の位置を調整する。その後、ネジ穴43にネジ51を差し込んで締め付けることで、支持部40に照射部30を支持することができる。
次に、図5〜図7を参照しつつ、本実施形態のレーザー照射装置1が取り付けられたフェイスボウ10を用いてフェイスボウトランスファーを行うことで咬合器60(図6、7参照)に模型61(図6、7参照)を取り付け、総義歯を作製する手順の一例について説明する。
まず、患者の口の中の型取りを行い、その型の中に石膏を流し入れて模型61(図6、7参照)を作製する。次に、模型61を用いて義歯作製の土台となるベースプレート71(図6、7参照)を作製する。さらに、ベースプレート71の上にワックスによりロウ堤72(図6、7参照)を作製する。ロウ堤72は、義歯の高さを合わせるためのものであり、人工歯はこの部分に並べられる。これにより、ベースプレート71とロウ堤72とからなる咬合床70(図6、7参照)が完成する。咬合床70は、上顎用及び下顎用の両方を作製する。さらに、バイトフォーク15の挿入部15aを、上顎用の咬合床70のロウ堤72に焼き込み固定する。
次に、図5に示すようにフェイスボウ10を患者に装着する。より詳細には、フェイスボウ10のイヤーロッド13を患者の後方基準点(外聴道、平均的顆頭点など)に合わせ、且つ、リファレンスピン17の尖っている方の端部を患者の前方基準点(内眼角から23mm下方の点、上顎前歯切縁から45mm上方の点、眼窩下点など)に合わせる。また、上顎用の咬合床70が取り付けられた状態のバイトフォーク15の挿入部15aと、下顎用の咬合床70とを患者の口腔内に挿入する。この状態でバイトフォーク15及びリファレンスピン17を本体フレーム11に対して固定しておく。
なお、図5に示す例では、レーザー照射装置1は本体フレーム11の連結フレーム11bに取り付けられている。そして、支持部40の長手方向である「X方向」と、照射部30の長手方向である「Y方向」との両方に直交する「Z方向」が、フェイスボウ10の左右方向に一致している。照射部30は取付部20の上方に位置しており、照射部30の照射孔31が後方を向いている。
ここで、レーザー照射装置1の照射部30のスイッチ32を「ON」として、照射孔31から患者の顔面に向けて十字型のレーザー光を出射する。より詳細には、照射孔31から出射されるレーザー光は、いずれも照射部30の長手方向に沿う面であり、且つ、互いに直交する面である2つの仮想平面P、Q(図3参照)に沿った線を顔面に表示する。このとき、2つの仮想平面のうちの一方の平面が垂直となり、残りの平面が水平となり、且つ、垂直な平面が患者の正中と一致するように、すなわち十字型のレーザー光の縦線が患者の正中と一致するように、レーザー光の照射態様を調整する。
本実施形態のレーザー照射装置1は、以下の4つの方法でレーザー光の照射態様を変更することができる。まず1つ目は、レーザー照射装置1の連結フレーム11bへの取付位置を変更することである。取付位置は、連結フレーム11bを中心とした回転方向に関する位置と左右方向に関する位置とのそれぞれについて変更可能である。これにより、照射孔31から患者の顔面に向けて出射されるレーザー光の照射位置を、連結フレーム11bを中心とした回転方向及び左右方向の各方向に関して変更することができる。2つ目は、取付部20を支持部40の開口41の長手方向に沿ってスライドさせることである。これにより、照射孔31から患者の顔面に向けて照射されるレーザー光の上記長手方向に関する照射位置を変更することができる。3つ目は、支持部40の開口42に挿通された照射部30を、その長手方向(レーザー光の照射方向)に沿って移動させることである。これにより、照射孔31から患者の顔面までの距離が変化するため、顔面に表示される十字型の大きさを変更できる。4つ目は、照射部30を、中心軸L(図2〜図4参照)を中心に回転させることである。これにより、照射孔31から患者の顔面に向けて出射されるレーザー光の十字型の縦線及び横線の方向を変更することができる。
なお、上述のレーザー光の照射態様を変更する4つの方法のうち、2つ目の「取付部20を支持部40の開口41の長手方向に沿ってスライドさせる」、3つ目の「照射部30をレーザー光の照射方向に沿って移動させる」、及び4つ目の「照射部30を中心軸Lを中心に回転させる」により、照射部30の取付部20に対する相対的な位置を変更することができる。
上述のような方法で、十字型のレーザー光の縦線が患者の正中と一致する状態とし、レーザー照射装置1の連結フレーム11bへの取付位置、及び、レーザー照射装置1を構成する取付部20、照射部30及び支持部40の3つの部品の位置関係を固定し、フェイスボウ10を患者から取り外す。
続いて、図6に示すように、咬合器60にフェイスボウ10を取り付ける。より詳細には、イヤーロッド13を咬合器60に固定した後、リファレンスピン17の先端が咬合器60のインディケータ62に接するように咬合器60に対するフェイスボウ10の位置合わせを行う。この状態で、上顎用の模型61を、バイトフォーク15に取り付けられた上顎用の咬合床70に適合するように、咬合器60に取り付ける。その後、図7に示すように、下顎用の模型61を下顎用の咬合床70と共に咬合器60に取り付ける。
この状態で図7に示すように、レーザー照射装置1の照射部30から模型61に向けてレーザー光を照射することで、患者の正中を模型61上に再現することができる。このとき、照射部30から照射される十字型のレーザー光の垂直方向に延びる縦線が患者の正中を示している。また、十字型のレーザー光の横線は、水平方向に延びている。技工士は、正中を示すレーザー光の垂直方向に延びる縦線を基準として、ロウ堤72に人工歯を並べる作業を行う。また、正中を示す垂直な縦線に加えて、水平方向を示す横線も模型61上に示されているので、技工士は水平方向も容易に確認できる。
上述のように、レーザー照射装置1は、バイトフォーク15の支持棒15bに取り付けることもできる。この場合は、図4に示すように、支持棒15bにレーザー照射装置1を取り付けた状態のバイトフォーク15を取付具16により本体フレーム11に装着し、上述と同様にフェイスボウトランスファーを行うことができる。また、挿入部15aを咬合床70などの歯科技工物に取り付けた状態のバイトフォーク15単体(本体フレーム11から取り外された状態)を患者に装着させて、咬み合わせの調整などを行うことがある。このような場合には、レーザー照射装置1をバイトフォーク15に取り付け、バイトフォーク15を装着した患者の顔面に十字型のレーザー光を照射して、レーザー光の照射方向を患者の正中に合わせる。これにより、バイトフォーク15に取り付けられた歯科技工物上に患者の正中を再現できる。
以上のように本実施形態のレーザー照射装置1は、フェイスボウ10に着脱可能な取付部20と、フェイスボウ10が装着された患者の顔面に向けて、平面に沿った線を顔面に表示するレーザー光を照射可能な照射部30とを備えている。照射部30は、取付部20に対する相対的な位置を変更することでレーザー光の照射の照射態様を変更可能である。したがって、レーザー照射装置1を取り付けた状態のフェイスボウ10を患者の頭部に装着し、フェイスボウ10で患者の顎関節に対する上顎の位置を記録すると共に、照射部30の取付部20に対する相対的な位置を変更することでレーザー光の照射態様を変更し、レーザー光を照射することによって患者の顔面に表示される平面に沿った線を患者の顔面の正中に一致させることができる。これにより、患者の顔面の正中を記録することができる。したがって、フェイスボウ10で記録された患者の上顎の位置に適合して配置された歯科技工物上にレーザー光を照射することで、比較的正確に正中を再現することができる。
また、上述の実施形態では、照射部30及び取付部20を支持する支持部40をさらに備えており、取付部20、照射部30、及び、支持部40は、互いに位置関係を変更可能である。このように、取付部20、照射部30、及び、支持部40の3つの部品の位置関係を変更可能であるので、レーザー光の照射態様をより細かに変更することができる。したがって、レーザー光を照射することよって患者の顔面に表示される平面に沿った線を患者の顔面の正中に一致させる作業を、より正確に行うことができる。
加えて、上述の実施形態では、レーザー光の照射方向に沿う中心軸Lを中心とした回転方向に関して照射部30の位置を変更可能である。したがって、レーザー光を照射することよって患者の顔面に表示される平面に沿った線の向きを変更することができる。よって、レーザー光を照射することよって患者の顔面に表示される平面に沿った線を、より正確に患者の顔面の正中に合わせることができる。
さらに、上述の実施形態では、支持部40には一方向に延びる開口41が形成されており、取付部20は支持部40の開口41に沿って一方向にスライド可能である。したがって、取付部20を支持部40の開口41に沿ってスライドさせることで、取付部20に対する支持部40の位置を変更し、レーザー光を照射することよって患者の顔面に表示される平面に沿った線を患者の顔面の正中に一致させる作業を行うことができる。
また、上述の実施形態では、照射部30はレーザー光の照射方向に沿う方向にスライド可能に支持部40に支持されている。したがって、照射部30を照射方向に沿う方向にスライドさせることで、支持部40に対する照射部30の位置を変更し、レーザー光を照射することよって患者の顔面に表示される平面に沿った線の大きさを変更することができる。
また、上述の実施形態では、フェイスボウ10の棒状の取付部分が通る切欠21aが取付部20に形成されており、切欠21aの貫通方向とレーザー光の照射方向との間の角度が90度となるように取付部20が支持部40に支持される状態と、切欠21aの貫通方向とレーザー光の照射方向との間の角度が0度となるように取付部20が支持部40に支持される状態とを取り得る。したがって、取付部20に形成されたフェイスボウ10の取付部分が通る切欠21aの貫通方向とレーザー光の照射方向との間の角度が変更可能であるので、取付部20はフェイスボウ10の伸延方向が異なる2箇所の棒状部分(すなわち、本体フレーム11の連結フレーム11b、及び、バイトフォーク15の支持棒15b)に取り付け可能である。
(第2実施形態)
次に、図8を参照しつつ、本発明の第2実施形態にかかるレーザー照射装置101について説明する。第1実施形態のレーザー照射装置1が、取付部20、照射部30、及び支持部40の3つの部品で構成されていたのに対して、本実施形態のレーザー照射装置101は、取付部120及び照射部130の2つの部品で構成されている。
照射部130は、一方向(図8中上下方向)に長尺な本体131と、本体131の長手方向の中央部分から一方向と直交する方向に延びる支持体132からなる。すなわち、照射部130は、全体として略T字型を有している。以下の説明においては、照射部130の本体131の長手方向を「Y方向」、支持体132の長手方向を「X方向」、「X方向」及び「Y方向」の両方に直行する方向を「Z方向」と定義する。
本体131の構成は、第1実施形態の照射部30の構成とほぼ同じであり、Y方向に関する一方側(図8中上側)の端部には、レーザー光が出射される照射孔133が設けられており、Y方向に関して照射孔133が設けられている側とは反対の他方側(図8中下側)の端部には、照射孔133からのレーザー光の照射をON/OFFするためのスイッチ134が設けられている。
取付部120は、一方向に長尺な略円筒形状を有している。取付部120には、その長手方向と直交する方向に貫通する貫通孔121が形成されている。取付部120の貫通孔121には、照射部130の支持体132が挿通されている。支持体132を貫通孔121内で回転させたり、支持体132を取付部120に対してX方向にスライドさせたりすることで、照射部130の取付部120に対する相対的な位置を変更することができる。以下の説明においては、取付部120の長手方向が照射部130の本体131の長手方向(Y方向)と一致している状態で説明する。
取付部120のY方向に関する一端部(図8中下端部)には、フェイスボウ10の取付部分が挿入される切欠121aが形成されている。切欠121aはZ方向に貫通しており、且つ、Z方向から見てU字型を有している。切欠121aは、取付部120のY方向に関する一方側の端面に開口している。また、取付部120のY方向に関する一方側の端部には、切欠121aの開口を被覆可能な蓋122が取り付けられている。すなわち、蓋122が取り付けられた状態では切欠121aの開口が塞がれ、切欠121aは貫通孔として機能する。よって、切欠121a内にフェイスボウ10の取付部分を挿入した状態で蓋122を取付部120に取り付けることで、取付部120をフェイスボウ10の取付部分に取り付けることができる。
取付部120のY方向に関して切欠121aが形成されている側とは反対側(図8中上側)には、ネジ150が挿し込まれている。ネジ150を締め付けることで、照射部130の支持体132を取付部120に対して固定することができる。
本実施形態のレーザー照射装置101では、ネジ150を緩めて支持体132を貫通孔121内で回転させることで、照射部130の取付部120に対する相対的な位置を変更することができる。すなわち、フェイスボウ10の棒状の取付部分が挿入される切欠121aの貫通方向と、照射部130によるレーザー光の照射方向(Y方向)との間の角度を0度から360度の間で変更可能である。また、支持体132を取付部120に対してX方向にスライドすることで、照射部130の取付部120に対する相対的な位置を変更することもできる。
以上のように、本実施形態のレーザー照射装置101は、第1実施形態のレーザー照射装置1と同様に、レーザー照射装置101を取り付けた状態のフェイスボウ10を患者の頭部に装着し、フェイスボウ10で患者の顎関節に対する上顎の位置を記録すると共に、照射部130の取付部120に対する相対的な位置を変更することでレーザー光の照射態様を変更し、レーザー光を照射することによって患者の顔面に表示される平面に沿った線を患者の顔面の正中に一致させることができる。これにより、患者の顔面の正中を記録し、歯科技工物上に比較的正確に正中を再現することができる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
上述の第1及び第2実施形態においては、照射部30(130)が十字型のレーザー光を照射可能である場合について説明したが、これには限定されない。照射部30(130)から照射されるレーザー光は、レーザー光が照射される照射体の表面と交わる少なくとも1つの平面に沿った線を、照射体の表面に表示可能であればよい。すなわち、例えば、照射体の表面に1本の線を表示するようなレーザー光であってもよいし、3本以上の線を放射状に表示するようなレーザー光であってもよい。
また、上述の第1実施形態においては、取付部20は支持部40の一方向に延びる開口41に沿って一方向にスライド可能である場合について説明したが、取付部20を一方向にスライドさせる機構はこれに限定されるものではない。例えば、支持部40に一方向に延びる溝を形成し、この溝に取付部20を係合させて一方向にスライドさせてもよい。
さらに、上述の第1及び第2実施形態においては、取付部20(120)にフェイスボウ10の棒状の取付部分が挿入される切欠21a(121a)が形成されており、切欠21a(121a)の貫通方向と、照射部130によるレーザー光の照射方向(Y方向)との間の角度を変更可能である場合について説明したが、これら切欠21a(121a)の貫通方向とレーザー光の照射方向との間の角度は変更可能でなくてもよい。
また、上述の実施形態では、レーザー照射装置1が取り付けられたフェイスボウ10を利用して総義歯を作製する場合について説明したが、本発明は、ブリッジ、部分入れ歯、インプラントなどの補綴装置や、矯正装置を作製する際に適用することもできる。