JP2019187199A - 永久磁石回転子および回転電気機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電気機械のエアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる永久磁石回転子およびそのような永久磁石回転子を有する回転電気機械を提供する。
【解決手段】ロータコア11と、ロータコア11に埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石16,17,18とを有する永久磁石回転子10において、複数の永久磁石16,17,18は、それぞれロータコア11の内周側に向かって凸の弧形状を有し、ロータコア11の外周側から内周側に向かって、2層以上の層状に配列されており、各永久磁石16,17,18の弧形状の開角および/または残留磁束密度は、所定の関係性を満たす。
【選択図】図2

Description

本発明は、永久磁石回転子および回転電気機械に関し、さらに詳しくは、ロータコアに永久磁石が埋め込まれた永久磁石回転子およびそのような永久磁石回転子を有する回転電気機械に関するものである。
永久磁石埋め込み(IPM)モータ等、永久磁石回転子を用いた回転電気機械においては、運転時の振動や騒音につながるトルクリプルや、モータ効率を低下させる鉄損を低減することが求められる。そのためには、永久磁石回転子と固定子の間のエアギャップに形成される磁束密度分布の波形を、正弦波に近づけ、高調波成分を低減することが有効である。
例えば、特許文献1においては、ロータコアに永久磁石を磁極毎に複数層埋設してなる永久磁石回転子において、エアギャップにおける磁束密度分布を正弦波に近い分布形状とし、トルクリプルおよびコギングトルクを低減することを目的として、各層の永久磁石の寸法や残留磁束密度等の関係性を、規定している。一例として、ロータコアの最外周側の層を構成する永久磁石以外の永久磁石が埋設されるスリット部のそれぞれの一部に、ロータコアの外周側よりも内周側の方が大きくなる傾向で、永久磁石が埋設されない空スリット部を形成するとともに、回転電機に組み込まれた状態での各永久磁石層が発生する総磁束量を、ロータコアの外周側の層よりも内周側の層の方が大きくなるように構成する形態が挙げられている。また、別の例として、永久磁石の残留磁束密度を、ロータコアの外周側の層よりも内周側の層の方が小さくなるようにするとともに、回転電機に組み込まれた状態での各永久磁石層が発生する総磁束量を、ロータコアの外周側の層よりも内周側の層の方が大きくなるように構成する形態が挙げられている。
特開2002−78259号公報
上記のように、特許文献1では、ロータコアに層状に配置した永久磁石の長さや残留磁束密度を調整して、回転電機に組み込まれた状態での各永久磁石層が発生する総磁束量を、ロータコアの外周側の層よりも内周側の層の方が大きくなるように設定することで、エアギャップにおける磁束密度分布の波形の正弦波化を図っている。しかし、本発明者らの検討により、各永久磁石層の総磁束量の関係性を、そのように規定することでは達成できない、高調波成分のさらなる低減が可能であることが、明らかになった。
本発明が解決しようとする課題は、回転電気機械のエアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる永久磁石回転子およびそのような永久磁石回転子を有する回転電気機械を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明にかかる第一の永久磁石回転子は、ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、前記複数の永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの内周側に向かって凸の弧形状を有し、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、3層以上の層状に配列されており、前記ロータコアの外周側から1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の前記弧形状の開角を、それぞれθM1、θM2、θM3として、θM1、θM2、θM3が、以下の関係を満たすものである。
前記ロータコアの回転中心から前記1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の弧形状の焦点の平均位置までの距離をRθ、前記ロータコアの回転中心から前記ロータコアの外周までの距離をR、前記磁極の数をnとし、θ=180°/nとして、
θ<R(1+cosθ)/2cosθである場合に、θM3<θM2<θM1。
θ≧R(1+cosθ)/2cosθである場合に、θM3≦θM1<θM2。
ここで、前記ロータコアの外周側から1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の残留磁束密度を、それぞれBr1、Br2、Br3として、Br1、Br2、Br3が、以下の関係を満たすとよい。
θ<R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3<Br2<Br1。
θ≧R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3≦Br1<Br2。
また、本発明にかかる第二の永久磁石回転子は、ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、前記複数の永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの内周側に向かって凸の弧形状を有し、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、3層以上の層状に配列されており、前記ロータコアの外周側から1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の残留磁束密度を、それぞれBr1、Br2、Br3として、Br1、Br2、Br3が、以下の関係を満たすものである。
前記ロータコアの回転中心から前記1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の弧形状の焦点の平均位置までの距離をRθ、前記ロータコアの回転中心から前記ロータコアの外周までの距離をR、前記磁極の数をnとし、θ=180°/nとして、
θ<R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3<Br2<Br1。
θ≧R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3≦Br1<Br2。
また、本発明にかかる第三の永久磁石回転子は、ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、前記複数の永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの内周側に向かって凸の弧形状を有し、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、2層の層状に配列されており、前記ロータコアの外周側から1層目および2層目に配置された前記永久磁石の前記弧形状の開角を、それぞれθM1およびθM2として、θM2<θM1である。
ここで、前記ロータコアの外周側から1層目および2層目に配置された前記永久磁石の残留磁束密度を、それぞれBr1およびBr2として、Br2<Br1であるとよい。
また、前記複数の永久磁石の前記弧形状の焦点が、前記ロータコアの外周側に配置された永久磁石から内周側に配置された永久磁石の順に、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、相互に離れて配置されているとよい。
そして、前記複数の永久磁石は、金属磁石よりなるとよい。
本発明にかかる回転電気機械は、上記の永久磁石回転子と、前記永久磁石回転子との間にエアギャップを有して配置された固定子とを有するものである。
ここで、前記複数の永久磁石によって前記エアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、全高調波歪み率が23%以下であるとよい。
上記発明にかかる第一、第二、第三の永久磁石回転子においては、ロータコアに、複数の弧形状の永久磁石が層状に配置され、さらに、それら各層の永久磁石の開角および/または残留磁束密度が、所定の関係を満たしている。これにより、永久磁石回転子を回転電気機械に組み込んだ際に、固定子との間のエアギャップに永久磁石によって形成される磁束密度分布において、高調波成分が低減され、正弦波に近い波形が得られる。その結果、回転電気機械において、トルクリプルや鉄損を低減することができる。
また、複数の永久磁石の弧形状の焦点が、ロータコアの外周側に配置された永久磁石から内周側に配置された永久磁石の順に、ロータコアの外周側から内周側に向かって、相互に離れて配置されている場合には、永久磁石の層間の距離が、永久磁石の弧形状の長手方向に沿って、回転子d軸に近づくに従って大きくなる。その結果、永久磁石回転子に発生するリラクタンストルクが大きくなる。また、トルクリプルの低減にも効果を有する。
そして、複数の永久磁石が、金属磁石よりなる場合には、永久磁石の残留磁束密度を高くすることができ、永久磁石の厚みを薄くしても、大きなマグネットトルクを確保することができる。その結果、永久磁石を、リラクタンストルクの低減に効果を有する厚みよりも薄くでき、リラクタンストルクの低下を抑制できる。
上記発明にかかる回転電気機械は、上記発明にかかる第一、第二、第三の永久磁石回転子のいずれかを有するため、固定子との間のエアギャップに永久磁石によって形成される磁束密度分布において、高調波成分が低減され、正弦波に近い波形が得られる。その結果、トルクリプル、鉄損が低減され、振動や騒音が少なく、効率が良い回転電気機械となる。
ここで、複数の永久磁石によってエアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、全高調波歪み率が23%以下である場合には、永久磁石回転子における各層の永久磁石の開角や残留磁束密度の関係性を上記のように規定することで、磁束密度分布における高調波成分が、十分に低減されており、回転電気機械の振動や騒音を効果的に低減することができる。
本発明の一実施形態にかかる永久磁石回転子および回転電気機械の構成を示す横断面図である。 図1の断面図の一部を抜き出した拡大図である。 永久磁石の配置および形状を規定するパラメータを説明する図である。 磁束密度分布波形の検討に用いる波形パラメータを説明する図である。波形は、実施例において初期波形として想定しているものである。 αおよびβを変化させた際の全高調波歪み率の分布を示す図である。 αおよびγを変化させた際の全高調波歪み率の分布を示す図である。 AおよびBを変化させた際の全高調波歪み率の分布を示す図である。 モデル1について、(a)永久磁石の配置と(b)磁束密度分布波形を示す図である。 モデル2について、(a)永久磁石の配置と(b)磁束密度分布波形を示す図である。 モデル3について、(a)永久磁石の配置と(b)磁束密度分布波形を示す図である。 モデル1〜3で、無負荷鉄損を比較する図である。 永久磁石の円弧形状の中心の位置を変更した際に、高調波の寄与の少ない磁束密度分布波形を与える磁石配置を示す図である。(a)から(e)の順に、円弧形状の中心が、ロータコアの外側に離れた位置に設けられている。 各種磁石配置を有するロータコアのモデルを示す図である。(a)一層V字配置1、(b)一層V字配置2、(c)一層V字配置3、(d)二層V字配置、(e)▽配置、(f)三層円弧配置を示している。 上記各モデルにおける磁束密度分布の波形を示す図である。 図14の各波形における基本波および各高調波成分の含有率を示す図である。 図14の各波形における全高調波歪み率の比較を示す図である。 上記各モデルについて、無負荷鉄損における基本波および各高調波成分の寄与を示す図である。 上記各モデルにおける無負荷鉄損の比較を示す図である。
以下、本発明の一実施形態にかかる永久磁石回転子および回転電気機械について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[回転電気機械の構成]
本発明の一実施形態にかかる回転電気機械の概略を、図1に示す。回転電気機械1は、本発明の一実施形態にかかる永久磁石回転子10を有している。本明細書においては、回転電気機械1がモータである場合を中心に説明するが、発電機である場合にも、同様の構成を適用することができる。
回転電気機械1は、永久磁石埋め込み(IPM)モータとして構成されている。モータ1は、中空筒状のステータ(固定子)30と、ステータ30の中空部内に、同軸状に、軸回転可能に支持されたロータ(永久磁石回転子)10と、を有している。
ステータ30は、ステータコア31と、コイル(図略)とを有している。ステータコア31は、複数層の電磁鋼板を積層してなるものであり、円環形状のバックヨーク部31aと、バックヨーク部31aから円環形状の内側に向かって突出した複数のティース31bを、一体に備えている。そして、各ティース31bの外周に、コイルが巻き回されている。
ロータ10は、略円柱状の外形を有するロータコア11と、ロータコア11に埋設された複数の永久磁石16,17,18とを有している。ロータコア11の中心には、駆動軸40を挿通可能な中空部12が貫通されている。ロータ10をステータ30の中空部12に同軸状に収容した状態で、ステータコア31のティース31bとロータコア11の外周面11aの間には、エアギャップ(空隙)50が確保される。ロータ10の構成の詳細について、次に説明する。
[永久磁石回転子の構成の概略]
上記のように、ロータ(永久磁石回転子)10は、ロータコア11と、永久磁石16,17,18とを有している。ロータ10の構成を、図1,2に示す。図2は、ロータ10の磁極1つ分を示したものであり、永久磁石16,17,18の極性を磁極ごとに交互に変えながら、複数(ここでは8個)の磁極を回転対称に連続的に配置したものが、図1のようなロータ10の全体構造となる。なお、以下では、「周方向」「内周」「外周」「径方向」等、回転体における方向を示す語は、特記しないかぎり、ロータコア11についての方向を指すものとする。
ロータコア11は、複数の電磁鋼板を積層して構成されており、略円柱形状の外周面11aを有している。ロータコア11には、軸方向に貫通または陥没した空隙として、スロット13,14,15と、フラックスバリア20とが形成される。スロット13,14,15には、それぞれ、永久磁石16,17,18が埋設される。
スロット13,14,15は、ロータコア11の内周側(回転中心側)に向かって凸の弧形状を有している。そして、各スロット13,14,15に埋め込まれる永久磁石16,17,18も、スロット13,14,15の形状に対応して、ロータコア11の内周側に向かって凸の弧形状を有している。スロット13,14,15および永久磁石16,17,18は、ロータ10の横断面において、ロータコア11の内周側に向かって凸な弧形状、つまりロータコア11の外周側から内周側に向かう凸部を1つのみ有するなだらかな曲線形状を有していれば、具体的な形状は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、スロット13,14,15および永久磁石16,17,18は、それぞれ、略円弧形状を有している。
スロット13,14,15および永久磁石16,17,18は、外周側から内周側に向かって、2層以上の層状に配置されていれば、特に、層数を限定されるものではないが、本実施形態においては、3層としている。つまり、ロータコア11の外周側から順に、スロットが、第一層13、第二層14、第三層15と配置され、それぞれに、永久磁石が、第一層16、第二層17、第三層18と埋設されている。1つの磁極を構成する永久磁石16,17,18は、同じ極性を有している。
第一層13、第二層14、第三層15の各層を構成するスロットは、ロータコア11の周方向に、それぞれ2つに分割されている。そして、それぞれ2つに分割された各スロット13,14,15に、各層あたり2つに分割された永久磁石16,17,18が埋設されている。第一層および第二層においては、それぞれ2つに分割されたスロット13,14が、ブリッジ21を介して、ロータコア11の周方向に隣接しており、第三層においては、2つに分割されたスロット15の間の位置に、フラックスバリア20が形成されている。本実施形態においては、各層のスロット13,14,15、および、永久磁石16,17,18や、フラックスバリア20をはじめ、ロータ10の各構成要素が、ロータコア11の径方向に沿った回転子d軸(図中d’にて表示)に関して、対称に形成されている。
なお、各層を構成するスロット13,14,15および永久磁石16,17,18は、必ずしも2つに分割されていなくてもよく、層ごとに、スロット13,14,15および永久磁石16,17,18が、1つに連続していてもよい。その場合には、以下で、開角θM1〜θM3および焦点c1〜c3の位置等、分割された永久磁石16,17,18に対して規定している各パラメータを、それぞれ1つに連続した永久磁石16,17,18の全体に対して、同様に規定すればよい。
永久磁石16,17,18の組成は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、永久磁石16,17,18は、金属磁石よりなっている。つまり、表面近傍を除き、金属酸化物や有機化合物を意図的には含まず、金属磁石材料の連続体よりなっている。
各スロット13,14,15の外縁には、スロット13,14,15の内側に突出した突起部(15a等)が設けられており、永久磁石16,17,18の端面に当接して、永久磁石16,17,18を、スロット13,14,15内に位置決めし、固定している。第二層および第三層においては、スロット14,15の回転子d軸側の端部に、永久磁石17,18に占められない空隙22が確保されている。これらの空隙22は、永久磁石17,18の発生磁束を有効利用し、リラクタンストルクを向上させる役割を果たす。
分割された第三層のスロット15の間に設けられたフラックスバリア20は、永久磁石を埋設されず、空隙のままで維持される。あるいは、非磁性体が充填される。フラックスバリア20は、ロータ10において、d軸磁束経路の磁気抵抗を増大させることにより、ロータ10に発生するリラクタンストルクを向上させる役割を果たす。なお、フラックスバリア20は必須に設けられるものではなく、また、設けられる場合にも、具体的な形状は限定されない。
また、ロータコア11においては、各スロット13,14,15および各フラックスバリア20の内周側の部位と外周側の部位との間をつなぐブリッジ21が、ロータコア11の各所に、ロータコア11と一体に形成されている。各ブリッジ21は、ロータ10を軸回転させた際に、遠心力の作用によって、ロータコア11の外周側の部位が内周側の部位から分離すること、またスロット13,14,15に埋設した永久磁石16,17,18が飛散することを防止する役割を果たす。
ロータコア11の外周面11aには、回転子d軸に対し、電気角で90°隔てた軸(以降、q’軸と称する;図中q’で表示)の近傍、つまり第三層のスロット15の外周側の位置の近傍に、内周側に溝状に窪んだ凹部(ディンプル)11bが設けられている。凹部11bは、必須に設けられるものではないが、設ける場合の影響について、後に述べる。
[永久磁石の構成]
本実施形態にかかるロータ10においては、弧形状の永久磁石16,17,18を複数層で配置し、かつ各層を構成する永久磁石16,17,18の形状および配置、残留磁束密度が、所定の関係性を満たすように規定することにより、モータ1のステータ30とロータ10の間に設けられたエアギャップ50に、永久磁石16,17,18によって形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる。後の実施例で示すように、複数層の弧形状の永久磁石16,17,18を所定の配置とすることで、高調波成分を低減しうる永久磁石の配置として提唱されてきた、V字配置や▽配置等を採用する場合よりも、高調波成分低減を効果的に達成することができる。
以下に、上記で説明したように、永久磁石16,17,18を3層で設ける場合を中心に、永久磁石の構成の詳細について、主に図2,3を参照しながら説明する。本実施形態にかかるロータ10においては、上記のように、極数を8としているが、極数は4以上の偶数であれば、特に限定されるものではなく、4極または6極である場合を例示することができる。しかし、以下で、各層の永久磁石16,17,18の弧形状の開角や磁束密度の関係性を、極数nに依存するものとして規定している。
(1)永久磁石の開角
本実施形態にかかるロータ10においては、3層の永久磁石16,17,18の弧形状の開角θM1,θM2,θM3が、所定の関係を有している。ここで、第一層16、第二層17、第三層18を構成する永久磁石のそれぞれの開角θM1,θM2,θM3とは、永久磁石16,17,18の弧形状を円弧に近似した際の、円弧の中心角を指す。つまり、各永久磁石16,17,18の弧形状を円弧に近似して、各円弧の中心(焦点)c1,c2,c3と、各永久磁石16,17,18の長手方向両端縁とを直線で結んだ際に、2本の直線がなす角度を指す。
図2に示した形態では、各永久磁石16,17,18の弧形状の中心(焦点)c1,c2,c3が相互に離れているが、まず、図3に示すように、3層の永久磁石16,17,18の弧形状の中心(焦点)cが一致している形態に対して、説明を行う。
図3に示すように、ロータコア11の回転中心Oから永久磁石16,17,18の弧形状の中心cまでの距離を、Rθとする。そして、ロータコア11の回転中心Oから外周面11aまでの距離、つまりロータコア11の半径をRとする。また、ロータ10における磁極の数をnとし、θ=180°/nとする。本実施形態においては、n=8,θ=22.5°である。θは、磁極1つ分の中心角の半分の角度に対応する。
さらに、R0=R(1+cosθ)/2cosθとして、境界R0を設定する。図3に示すように、ロータコア11の中央を通る軸(回転子d軸)上で、回転中心Oから距離R0の点rは、磁極の端を通るロータコア11の外接線上の点r’と、ロータコアの外周上の点との中点に相当する。
本実施形態にかかるロータ10において、各永久磁石16,17,18の開角θM1、θM2、θM3は、以下の関係を満たす。つまり、
θ<R0である場合には、式(1)の関係を満たす。
θM3<θM2<θM1 (1)
θ≧R0である場合には、式(2)の関係を満たす。
θM3≦θM1<θM2 (2)
本実施形態にかかるロータ10においては、永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3が、中心cの位置に応じて、上記式(1)または式(2)の関係をとることで、他の関係をとる場合よりも、全永久磁石16,17,18によってモータ1のエアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる。つまり、磁束密度分布の波形を、正弦波に近づけることができる。
ここで、エアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形は、ロータ10の電気角の関数として表され、電気角で360°、機械角で360°/[極対数]を1周期とする正弦波が基本波となる。極対数は、磁極数nの半分の数であり、本実施形態においては4である。ロータ10において、永久磁石16,17,18が、層状に埋設されていることにより、図4等に示すように、磁束密度分布は階段状の波形となる。この波形において、正弦波の基本波および各次数の高調波の含有率を、フーリエ変換等の周波数分析計算によって見積もることができる。高調波成分が低減されているとは、波形における全高調波の寄与が小さくなった状態を指す。高調波成分の寄与は、例えば全高調波歪み率(THD)を指標として、評価することができる。全高調波歪み率は、波形における基本波の含有率と全高調波の含有率の合計に占める、全高調波の含有率の合計値の割合として、算出される。全高調波歪み率が小さいほど、高調波成分の寄与が少ないことになる。
式(1),(2)によって各永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3の関係を規定することで、エアギャップ50の磁束密度分布において高調波成分を低減できる理由は、以下のように説明することができる。各永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3が大きいほど、永久磁石16,17,18の弧形状の長手方向に沿った長さが大きくなり、永久磁石16,17,18の残留磁束密度と断面積の積によって表される磁束が大きくなる。つまり、エアギャップ50における磁束密度分布への寄与が大きくなる。
磁極の正面に相当する電気角、つまり、回転子d軸方向に相当する電気角において、エアギャップ50の磁束密度分布は極値をとる。この電気角でエアギャップ50に形成される磁束密度においては、第一層の永久磁石16からの磁束の寄与が最も大きく、第二層17、第三層18と内層側に向かうに従って、永久磁石からの磁束の寄与が小さくなる。一方、電気角が回転子d軸方向から離れると、それに従って、徐々に、第二層の永久磁石17からのからの寄与が増加し、さらに電気角が回転子d軸方向から離れると、第三層の永久磁石18からの寄与も増加する。
θ<R0のように、各永久磁石16,17,18の中心cが、ロータコア11の外周に近い、比較的内側の位置に存在する場合には、各永久磁石16,17,18の弧形状の曲率が大きく、また層間の曲率の差も大きい。このような場合には、第一層の永久磁石16の曲率が特に大きくなり、ロータコア11の外周に対して大きな角度を有して配置されることになるので、第一層の永久磁石16からの磁束がエアギャップ50の磁束密度分布に寄与しにくくなる。第一層の永久磁石16をエアギャップ50の磁束密度分布に十分に寄与させるためには、開角θM1を大きくし、第一層の永久磁石16が発する磁束の量を大きくする必要がある。また、電気角が回転子d軸方向から離れた際に、第二層の永久磁石17や第三層の永久磁石18が、エアギャップ50における磁束密度分布に大きく寄与しやすい。よって、上記式(1)のように、第一層16、第二層17、第三層18と内側に向かうにつれ、開角θM1、θM2、θM3を小さくしておくことで(θM3<θM2<θM1)、エアギャップ50の磁束密度波形が、回転子d軸から離れるに従って値が徐々に小さくなる、正弦波に近い挙動をとりやすくなる。
一方、Rθ≧R0のように、各永久磁石16,17,18の中心cが、ロータコア11の外周から遠い、比較的外側の位置に存在する場合には、各永久磁石16,17,18の弧形状の曲率が小さくなり、また層間の曲率の差も小さくなる。このような場合には、電気角が回転子d軸方向から離れた際に、第二層の永久磁石17や第三層の永久磁石18が、エアギャップ50における磁束密度分布に寄与しにくく、第二層の永久磁石17や第三層の永久磁石18の開角θM2,θM3が小さいと、電気角が回転子d軸からある程度離れると、急激に磁束密度が落ち込むことになる。
しかし、正弦波においては、極値近傍で、値の変化量が最も小さくなる。エアギャップ50の磁束密度分布において、そのような挙動を実現するためには、回転子d軸方向近傍での磁束密度の急激な変化を抑える必要がある。そのためには、回転子d軸からある程度離れた電気角において磁束密度分布に寄与する、第二層の永久磁石17からの磁束を、第一層の永久磁石16からの磁束との比較において、大きくしておけばよい。つまり、θM1<θM2としておけばよい。一方、正弦波においては、極値の中間に相当する変曲点近傍で、値の変化量が最も大きくなる。エアギャップ50の磁束密度分布において、そのような波形を実現するためには、回転子d軸方向から90°離れたq’軸方向近傍の電気角で磁束密度分布への寄与を増す、第三の永久磁石18からの磁束を、第二層の永久磁石17からの磁束との比較において、小さく抑えておけばよい。つまり、θM3<θM2とすればよい。
また、第一層の永久磁石16および第三層の永久磁石18においては、厚み方向(ロータコア11の径方向)の一方側には、他の永久磁石が配置されていないのに対し、第二層の永久磁石17においては、厚み方向の両側に、他の永久磁石16,18が配置されている。よって、第二層の永久磁石17が発する磁束は、エアギャップ50に向かって永久磁石17から出る経路と、永久磁石17に戻る経路の両方で、ロータコア11上の狭い磁路を通過する必要がある。よって、第二層の永久磁石17からの磁束が、エアギャップ50の磁束密度分布に十分に寄与できるように、開角θM2を大きくしておく必要がある。なお、上記Rθ<R0の場合のように、永久磁石16,17,18の中心cがロータコア11の外周に近い場合には、そのように、第二層の永久磁石17の開角θM2を大きくして、エアギャップ50の磁束密度分布への第二層の永久磁石17の寄与を確保することよりも、第一層の永久磁石16の開角θM1を大きくして、第一層の永久磁石16の寄与を確保することの方が、優先される。
このように、Rθ≧R0となっており、各永久磁石16,17,18の中心cがロータコア11の外周から遠い場合には、永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3が、θM3≦θM1<θM2という式(2)の関係を有していることで、エアギャップ50の磁束密度分布において、第二層の永久磁石17の寄与が、相対的に大きくなる。その結果、磁束密度分布の波形において、回転子d軸(d’軸)方向から離れるに従って、最初は磁束密度が大きくは変化せず、その後回転子d軸(d’軸)方向をさらに離れてq’軸方向に近づくにつれて磁束密度が大きく変化する、正弦波に近い挙動が得られるようになる。
なかでも、Rθ≧R/cosθである場合には、永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3を、式(2)の関係を満たすように設定することで、エアギャップ50の磁束密度分布において高調波を低減する効果に、特に優れる。なお、Rθ=R/cosθとなる位置は、図3中に点r’として示した、磁極の端を通るロータコア11の外接線上の点に相当する。
以上のように、各層の永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3が、中心cの位置に応じて、式(1)または式(2)の関係を満たすことで、エアギャップ50における磁束密度分布において、高調波成分を低減し、波形を正弦波に近づけることができる。磁束密度分布の高調波成分は、モータ1におけるトルクリプルの発生要因となり、振動や騒音を発生させる。また、ロータコア11における鉄損を上昇させる。よって、磁束密度分布の高調波成分を低減することで、トルクリプルや鉄損を低減し、モータ1の振動や騒音を抑制することが可能となる。例えば、後にシミュレーションによって示すように、全高調波歪み率が23%以下となる程度まで、磁束密度分布における高調波成分を低減することができる。
θ<R0として、つまり永久磁石16,17,18の弧形状の中心cを比較的内側に設けて、開角θM1,θM2,θM3が上記式(1)の関係を満たすようにするか、Rθ≧R0として、つまり永久磁石16,17,18の弧形状の中心cを比較的外側に設けて、開角θM1,θM2,θM3が上記式(2)の関係を満たすようにするかは、モータ1の具体的な仕様等に応じて、適宜選択すればよい。Rθ≧R0のように、永久磁石16,17,18の弧形状の中心cが外側に存在する場合には、モータ1のリラクタンストルクが大きくなる。Rθ≧R0の領域で、リラクタンストルクを、永久磁石16,17,18の弧形状の中心cの距離Rθの関数として表すと、リラクタンストルクは、極大を有する挙動を示す。極大を迎えるまでは、中心cが外側に存在するほど、永久磁石16,17,18の曲率半径が大きくなり、永久磁石16,17,18の磁路が、q軸磁束の形状に沿ったものとなりやすいため、リラクタンストルクが大きくなる。Rθ≧R/cosθの場合には、リラクタンストルクが特に大きくなる。ただし、中心cの位置がさらに外側に存在する場合には、極大を超え、かえってリラクタンストルクが低下することになるので、概ね、Rθ<R(3−2cosθ)/cosθ、さらにはRθ<R(2−cosθ)/cosθとすることが好ましい。なお、Rθ=R(3−2cosθ)/cosθとなる点、およびRθ=R(2−cosθ)/cosθとなる点は、ロータコア11の外周から、図3中の点r’(磁極の端を通るロータコア11の外接線上の点)の、それぞれ3倍または2倍の距離だけ離れた点に相当する。
また、Rθ<R0である場合に、ロータコア11の内周側に向かって凸の弧形状を有する永久磁石16,17,18が、ロータコア11の外周側から内周側に向かって層状に配列された状態を、余裕をもって確保するために、Rθ>0.8Rとすることが好ましい。さらには、Rθ>R、つまり、永久磁石16,17,18の弧形状の中心cが、ロータコア11の外側に位置することが好ましい。
以上では、図3のように、3層の永久磁石16,17,18の弧形状の中心cが一致している場合について説明したが、後に述べるように、3層の永久磁石16,17,18の弧形状の中心c1,c2,c3を相互にずらすことで、リラクタンストルクを向上させることができる。そのように、中心c1,c2,c3の位置がずれている場合には、3層の永久磁石16,17,18の弧形状の中心c1,c2,c3の平均位置を中心cとして、ロータコア11の回転中心Oからの距離をRθを算出し、境界R0を設定したうえで、上記式(1)または式(2)の関係を適用すればよい。次に述べる式(4),(5)の残留磁束密度Br1,Br2,Br3の関係についても、同様に、中心c1,c2,c3の平均位置を中心cとして、境界R0を設定すればよい。
ここまで、永久磁石16,17,18が3層に配置され、それら3層の開角θM1,θM2,θM3の関係が規定される形態について説明したが、上にも記載したとおり、永久磁石の層数は、2層以上であれば、限定されるものではない。永久磁石が4層以上配置される場合については、ロータコア11の外周側から3層目までの永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3が中心cの位置に応じて、式(1)または式(2)の関係を満たせばよい。4層目およびそれよりも内周側の永久磁石については、任意の開角としておいても、エアギャップ50の磁束密度分布において、十分に高調波成分を低減することができる。内周側の永久磁石ほど、エアギャップ50における磁束密度への寄与が小さく、外周側の永久磁石が所定の開角の関係を満たしていれば、内周側の永久磁石の開角をどのように設定したとしても、磁束密度分布の波形に大きくは影響しないからである。
一方、永久磁石の層数が2層のみである場合には、ロータコア11の外周側から1層目および2層目の永久磁石の弧形状の開角をそれぞれθM1,θM2として、下の式(3)の関係が成り立つようにすれば、上記3層の開角θM1,θM2,θM3を規定する場合ほどではないが、エアギャップ50の磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる。なお、この場合には、各永久磁石の弧形状の中心位置によらず、式(3)が成り立つようにすればよい。
θM2<θM1 (3)
本実施形態にかかるロータ10においては、ロータコア11の外周面11aに、凹部11bが設けられている。この凹部11bも、エアギャップ50における磁束密度分布の高調波成分を低減する役割を果たす。エアギャップ50の幅(ロータ10とステータ30の間の距離)を長くすることで、高調波成分の増大につながる磁束密度の飽和を抑制できるからである。しかし、凹部11bを設けることで、等価エアギャップ長が増大し、トルクの低下にもつながりうる。本実施形態にかかるロータ10においては、式(1)および式(2)による永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3の関係の規定による効果に加えて、高調波成分のさらなる低減を達成するために、ロータコア11の外周面11aに凹部11bを設けてもよいが、式(1)および式(2)の関係を満たすことによって効果的に高調波成分の低減を達成することができるので、トルクの低下を回避する観点から、凹部11bを設けない構成としてもよい。
(2)永久磁石の残留磁束密度
上記のように、永久磁石16,17,18のそれぞれが発生する磁束は、その永久磁石の残留磁束密度と断面積の積によって表されるので、全永久磁磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3が相互に等しい場合に、永久磁石16,17,18の断面積を定める開角θM1,θM2,θM3の関係を上記式(1)および式(2)によって規定しておくことで、エアギャップ50における磁束密度分布の高調波成分を低減することができる。また、各永久磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3が、任意の関係性をとって相互に異なっている場合にも、開角θM1,θM2,θM3の関係を式(1)および式(2)によって規定しておくことで、式(1)および式(2)を満たさない場合と比較して、エアギャップ50における磁束密度分布の高調波成分を低減することができる。
しかし、式(1)および式(2)によって永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3の関係性を規定することの代わりに、各永久磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3が、式(1)および式(2)の開角θM1,θM2,θM3と同じ序列を満たすように構成することによっても、エアギャップ50の磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる。あるいは、式式(1)および式(2)によって永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3の関係性を規定することに加えて、各永久磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3が、式(1)および式(2)の開角θM1,θM2,θM3と同じ序列を満たすように構成することによって、式(1)および式(2)によって開角θM1,θM2,θM3の関係性のみを規定する場合よりもさらに効果的に、エアギャップ50の磁束密度分布の波形における高調波成分を低減することができる。
つまり、第一層16、第二層17、第三層18を構成する永久磁石の残留磁束密度をそれぞれ、Br1,Br2,Br3として、式(1)および式(2)の代わりに、あるいは式(1)および式(2)に加えて、下の式(4)および式(5)の関係が成り立つようにすればよい。
θ<R0である場合には、式(4)の関係を満たす。
Br3<Br2<Br1 (4)
θ≧R0である場合には、式(5)の関係を満たす。
Br3≦Br1<Br2 (5)
このように、各層の永久磁石16,17,18の弧形状の中心cの位置に応じて、上記式(4)または(5)のように、残留磁束密度Br1,Br2,Br3の関係性を規定しておけば、エアギャップ50における磁束密度分布において、電気角θの変化に対する波形が、上記式(1)または(2)によって開角θM1,θM2,θM3の関係性を規定する場合と同様の挙動を示す。すると、エアギャップ50における磁束密度分布において、高調波成分を低減し、波形を正弦波に近づけることができる。その結果、モータ1におけるトルクリプルや鉄損を低減し、振動や騒音を抑制すること、またモータ効率を向上させることが可能となる。
ここまで、永久磁石16,17,18が3層に配置され、それらの3層の残留磁束密度Br1,Br2,Br3の関係が規定される形態について説明したが、永久磁石が4層以上配置される場合については、ロータコア11の外周側から3層目までの永久磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3が、中心cの位置に応じて、式(4)または式(5)の関係を満たせばよい。4層目、および、それよりも内周側の永久磁石については、エアギャップ50における磁束密度分布への寄与が小さいため、任意の残留磁束密度としておいても、エアギャップ50の磁束密度分布の波形において、十分に高調波成分を低減することができる。
一方、永久磁石の層数が2層のみである場合には、ロータコア11の外周側から1層目および2層目の永久磁石の残留磁束密度をそれぞれBr1,Br2として、下の式(6)の関係が成り立つようにすれば、上記3層の残留磁束密度Br1,Br2,Br3を規定する場合ほどではないが、エアギャップ50の磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減することができる。なお、この場合には、各永久磁石の弧形状の中心位置によらず、式(6)が成り立つようにすればよい。
Br2<Br1 (6)
2層の永久磁石の開角θM1,θM2が、式(3)の関係を満たす代わりに、残留磁束密度Br1,Br2の関係が、式(6)を満たすようにすればよい。あるいは、開角θM1,θM2が、式(3)の関係を満たすことに加えて、残留磁束密度Br1,Br2の関係が、式(6)を満たすようにすればよい。
各永久磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3は、上記式(4)または式(5)、あるいは式(6)の関係を満たしている限りにおいて、絶対値は特に指定されるものではない。しかし、各永久磁石16,17,18の残留磁束密度Br1,Br2,Br3の値が大きいほど、永久磁石16,17,18の厚み(弧形状の外周側端縁と内周側端縁の間の寸法)を小さくしても、モータ1において、所望のマグネットトルクを得ることができる。永久磁石16,17,18の厚みを小さくすることで、q軸磁束経路の幅が広くなり、モータ1のリラクタンストルクを大きくすることができ、マグネットトルクと合わせて、大きな出力トルクが得られる。
上記のように、本実施形態においては、永久磁石16,17,18は金属磁石よりなっている。特許文献1に記載されるように、従来一般の永久磁石埋め込み型のロータにおいては、永久磁石として、ボンド磁石が用いられることが多いが、金属磁石はボンド磁石よりも高い残留磁束密度を有する。よって、金属磁石を用いることで、大きなマグネットトルクを維持しながら、永久磁石16,17,18の厚みを小さくし、リラクタンストルクを向上させることができる。特に、ロータ10が高速で回転される高い弱め界磁領域において、リラクタンストルクを効果的に向上させることができ、モータ1の高速高出力化を達成することが可能となる。
(3)永久磁石の焦点位置
図2に示した実施形態にかかるロータ10においては、3層の永久磁石16,17,18の焦点、つまり略円弧形状の中心c1,c2,c3が、回転子d軸に沿って、相互に異なる位置に設けられている。具体的には、第一層の永久磁石16の中心c1、第二層の永久磁石17の中心c2、第三の永久磁石18の中心c3が、この順に、回転子d軸上で、ロータコア11の外周側から内周側に向かって、相互に離れた位置に配置されている。
そのように、3層の永久磁石16,17,18の中心(焦点)c1,c2,c3の位置が順にずれていることにより、相互に隣接した永久磁石16,17,18の層間の距離L1,L2が、永久磁石16,17,18の弧形状の長手方向に沿って、変化している。具体的には、層間距離L1,L2が、回転子d軸(d’軸)に近い側で大きく、回転子d軸から離れ、q’軸に近づく側で小さくなっている。
このように、永久磁石16,17,18の層間距離L1,L2が、永久磁石16,17,18の長手方向に沿って変化していることにより、ロータ10において、d軸磁束経路とq磁束経路の間の磁束密度に差が生じやすくなり、ロータコア11に生じるリラクタンストルクを大きくすることができる。また、各層の永久磁石16,17,18の間隔が、急激に狭くなる位置が存在すると、ロータコア11における局所磁束集中によって、永久磁石16,17,18の不可逆減磁が起こりやすくなるが、本実施形態にかかるロータ10においては、層間距離L1,L2が、永久磁石16,17,18の弧形状に沿って緩やかに変化していることで、局所磁束集中が起こりにくくなっている。
なお、上記実施形態においては、3層の永久磁石16,17,18の中心c1,c2,c3が、いずれも回転子d軸上に位置しているが、中心c1,c2,c3の位置は、第一層から第三層へと、ロータコア11の外周側から内周側に向かって相互にずれていれば、回転子d軸から外れていてもよい。また、3層の永久磁石16,17,18が略円弧形状でない場合でも、それらの弧形状を円弧に近似した場合の焦点(中心)の位置、または楕円弧に近似した場合の焦点の位置を、上記のように相互にずらすように構成すればよい。
ここまで、永久磁石16,17,18が3層に配置され、3層の焦点c1,c2,c3の位置がいずれも異なっている形態について説明したが、永久磁石の層数が2層のみである場合には、ロータコア11の外周側から1層目の永久磁石16の焦点c1が、2層目の永久磁石17の焦点c2よりも、周方向外側に位置するようにすればよい。また、永久磁石が4層以上配置される場合については、外周側から2層目、あるいは、3層目までの永久磁石の焦点が、外周側に配置された永久磁石から内周側に配置された永久磁石の順に、ロータコア11の外周側から内周側に向かって相互に離れて配置されていれば、4層目およびそれよりも内周側の永久磁石については、エアギャップ50における磁束密度への寄与が小さいため、任意の焦点位置をとっていても、トルクリプル低減およびリラクタンストルク向上の効果を十分に得ることができる。しかし、4層目以降の永久磁石についても、内周側に配置された永久磁石ほど、焦点がロータコア11の内周側に位置するようにすれば、それらの効果を大きく得ることができる。
(4)永久磁石の形状および配置等の構成に関するその他のパラメータ
・永久磁石の厚み
3層の永久磁石16,17,18の具体的な寸法は、特に限定されるものではない。しかし、3層の永久磁石16,17,18の厚み(ロータコア11の外周側の端縁と内周側の端縁の間の寸法)は、第一層の永久磁石16の厚みをT1、第二層の永久磁石17の厚みをT2、第三層の永久磁石18の厚みをT3とした場合に、T1≦T2≦T3の関係を満たすことが好ましい。T1≦T2<T3、またT1<T2<T3の関係を満たすと、より好ましい。
永久磁石が2層である場合には、外側の永久磁石の厚みをT1、内側の永久磁石の厚みをT2とした場合に、T1≦T2、さらにはT1<T2の関係を満たすことが好ましい。永久磁石が4層以上である場合には、外周側から3層目までの永久磁石の厚みがT1≦T2≦T3、T1≦T2<T3、T1<T2<T3のいずれかの関係を満たしていればよい。あるいは、さらに内周側の永久磁石についても、内周に配置されたものほど、厚みが大きくなるようにすればよい。
上記のように、ロータ10においては、永久磁石16,17,18の間の位置で、ロータコア11における局所磁束集中が発生し、永久磁石16,17,18の不可逆減磁が起こる可能性がある。そのような局所磁束集中は、ロータコア11の径方向内側の位置で特に起こりやすい。そこで、径方向内側の層の永久磁石の厚みを大きくしておくことで、不可逆減磁を起こりにくくすることができる。
・永久磁石の層間距離
永久磁石が3層で設けられる場合に、第一層の永久磁石16と第二層の永久磁石17の間の距離L1と、第二層の永久磁石17と第三層の永久磁石18の間の距離L2は、相互に等しくてもよいが、L1の方がL2より大きくなっている形態が好ましい(L1>L2)。これは、層間距離L1およびL2が、それぞれ、図3に示す第一層の永久磁石16と第二層の永久磁石17の中心角θ1とθ2の差、および第二層の永久磁石17と第三層の永久磁石18の中心角θ2とθ3の差によって定まるからである。後に説明するように、中心角θ1,θ2,θ3は、階段状の磁束密度分布波形の段差の機械角(α,β,γ)におおむね対応するものであり、エアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形を正弦波に近づけるためには、θ1とθ2の間の差の方が、θ2とθ3の間の差よりも大きいことが好ましい。この場合に、L1>L2となる。
上記のように、3層の永久磁石16,17,18の中心(焦点)c1,c2,c3の位置が相互にずれている場合には、永久磁石16,17,18の層間の距離L1,L2が、永久磁石16,17,18の長手方向に沿って変化するが、そのような場合にも、距離L1と距離L2のそれぞれの平均値が、L1>L2の関係を満たしているとよい。また、永久磁石が4層以上で設けられる場合には、外周側から3層目の永久磁石までの層間距離が、L1>L2の関係を満たしていればよい。あるいは、さらに内周側の永久磁石についても、内周側ほど隣接する永久磁石の層間距離が小さくなるようにすればよい。
・永久磁石の磁化方向
永久磁石16,17,18は、ラジアル配向の磁化方向を有していることが好ましい。つまり、永久磁石16,17,18のそれぞれの磁化方向が、焦点から放射状に広がっているとよい。さらに、永久磁石16,17,18のそれぞれについて、磁化方向の焦点が、形状の焦点、つまり弧形状の焦点(中心)c1,c2,c3と一致していることが好ましい。これらの場合には、モータ1の出力トルクを高く維持しつつ、エアギャップ50における磁束密度分布波形の高調波成分を低減しやすくなる。さらに、コイルの界磁磁束による磁石への逆磁界に対し、ラジアル配向とした磁石磁化方向と逆磁界が90度に近い角度で交差することから、磁石の減磁耐力が向上する。永久磁石16,17,18の磁化方向は、製造時の結晶方向制御により、制御することができる。
[永久磁石の構成に基づく磁束密度分布波形の評価]
上記のように、本実施形態にかかるロータ10においては、エアギャップ50の磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減する観点から、永久磁石16,17,18の形状や配置、残留磁束密度等の構成パラメータを規定している。磁束密度分布の波形において、高調波成分を効果的に低減するためには、永久磁石16,17,18の構成パラメータを適切に設定することに加え、永久磁石16,17,18の構成パラメータと、磁束密度分布の波形の相関を正確に評価することも、重要となる。
磁束密度分布の波形と永久磁石16,17,18の構成パラメータとの相関を考慮しながら、エアギャップ50における磁束密度波形の高調波成分を低減できるロータ10の構成を規定するには、例えば、まず、高調波成分が所定の水準に低減された磁束密度分布の波形を、目標波形として想定すればよい。そして、永久磁石16,17,18の弧形状の開角θM1,θM2,θM3や中心c1,c2,c3の位置等、各層の永久磁石16,17,18の構成パラメータを設定し、そのような構成パラメータを有する永久磁石16,17,18によってエアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形をシミュレーションし、シミュレーションによって得られる波形が、想定していた目標波形を再現しているかどうかを確認する。もし、目標波形が再現されない場合には、目標波形に近づけるように、永久磁石16,17,18の構成パラメータを調整する。このように、シミュレーションに基づいて、永久磁石16,17,18の構成パラメータと、磁束密度分布波形とを対応付け、目標とする波形に近づけるように、各構成パラメータの具体的な値や相互関係を設定することで、高調波成分が効果的に低減された磁束密度分布を得ることができる。
シミュレーションは、例えば、有限要素法(FEM)を用いた電磁界解析によって行うことができる。シミュレーションにおいては、永久磁石16,17,18の磁束の漏れ(ブリッジ21を通るロータコア11内での磁束の短絡)を考慮したうえで、エアギャップ50における磁束密度分布を見積もる。
このように、シミュレーションを利用して、永久磁石16,17,18の構成パラメータを見積もるに際し、まず、エアギャップ50における磁束密度分布について、目標波形を設定する必要がある。エアギャップ50における磁束密度分布は、図4に示すように、電気角で360°、機械角で360°/[極対数](ここでは90°)を1周期とし、減少と増加を周期的に繰り返す関数となるが、ロータ10において、永久磁石16,17,18が3層の層構造をとって埋設されていることに対応して、3層の階段状の構造をとりながら、増加、減少する。
以降、磁束密度分布の波形において、縦軸に示すエアギャップ50の磁束密度(Bg)の値は、振幅を1として規格化して示す。ここで、階段構造において、段差に対応する角度を、上段側から、θ=α,β,γとする。そして、各段の高さを、上段側から、Bg=1,A,B,0とする。
磁束密度の波形を規定する波形パラメータであるα,β,γ,A,Bの値の組み合わせを変化させることで、ギャップ磁束密度の波形が様々に変化する。得られた波形に対して、フーリエ変換を行うことで、基本波および各次数の高調波の含有率を見積もることができる。そして、全高調波歪み率(THD)を、基本波の含有率と全高調波の含有率の合計に占める、全高調波の含有率の合計値の割合として、算出することができる。このようにして得られるTHDが、最小値をとるように、あるいは所定の上限値以下になるように、波形パラメータα,β,γ,A,Bの好適な組み合わせを探索すればよい。この際、後の実施例に示すように、ある程度THDが小さくなるα,β,γ,A,Bの組み合わせの見当をつけたうえで、その周囲で、α,β,γ,A,Bそれぞれの値を変化させながら、THDの値を算出して、マッピングすればよい。そして、極小点、あるいは所定の上限値以下となる領域を特定し、その極小点または領域に、目標波形を設定すればよい。
次に、永久磁石16,17,18の構成パラメータ(形状、配置、残留磁束密度等)を仮定し、ロータ10のモデルを作成する。永久磁石16,17,18の構成パラメータとしては、図3に示すように、中心角θ1,θ2,θ3、開角θM1,θM2,θM3、中心位置c1,c2,c3(図3の形態では中心cに一致)、半径R1,R2,R3、厚みT1,T2,T3(図3の形態では全て等しい)を挙げることができる。
このようにして作成したロータ10のモデルに対して、電磁界解析によるシミュレーションを行い、エアギャップ50における磁束密度波形を見積もる。そして、見積もられた波形と、想定している目標波形を比較して、目標波形に近い波形が得られているかを評価する。評価は、例えば、シミュレーションで得られた波形と目標波形とでTHDを比較することで行うことができる。目標波形に近い波形が得られていない場合には、永久磁石16,17,18の構成パラメータを調整して再度シミュレーションを行い、目標波形に近づいたかを確認する。このようにして、目標波形に近い磁束密度分布を与える永久磁石16,17,18の構成パラメータを特定することができる。
目標波形において、段差の角度を表すα,β,γを機械角で表現したものが、おおむね、永久磁石16,17,18の中心角θ1,θ2,θ3、つまり、回転子d軸から、各永久磁石16,17,18の外周側端縁の長手方向外側の端部までの角度と一致する。また、段差の高さを表す1,A,Bの差が、おおむね、永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3に対応する。これらを指標として、シミュレーションに用いる永久磁石16,17,18の初期配置を設定したうえで、その初期配置を基礎として、永久磁石16,17,18の各構成パラメータを調整すればよい。
このように、正弦波に近い目標波形を設定し、その目標波形を再現するように、永久磁石16,17,18の構成パラメータを見積もることで、後の実施例に示すように、目標波形を再現できる永久磁石16,17,18の開角θM1,θM2,θM3の関係性が、中心cの位置によって異なることが見出される。つまり、中心cの位置に応じて、上記式(1)または式(2)の関係をとるように、開角θM1,θM2,θM3を設定することで、正弦波に近い目標波形を再現することができる。
以上のように、各永久磁石16,17,18の構成パラメータを適切に規定するとともに、それらに基づいて、エアギャップの磁束密度分布の波形をシミュレーションによって見積もって、永久磁石16,17,18の構成パラメータの設定に反映させることで、磁束密度分布波形における高調波成分を効果的に低減することができる。また、シミュレーションを利用して、永久磁石16,17,18の構成パラメータと磁束密度分布との関係性を評価することで、磁束密度分布との相関を解析的に定式化することが困難なパラメータに関しても、磁束密度分布への影響を評価することができる。
ただし、永久磁石の構成パラメータと磁束密度分布の関係性を、解析的に見積もることも可能ではある。例えば、3層の永久磁石16,17,18とエアギャップ50を有する磁気等価回路を想定し、閉磁路方程式を解くことで、永久磁石16,17,18の構成パラメータを解析的に見積もることができる。磁気等価回路において、開角θM1,θM2,θM3は、永久磁石16,17,18の磁気抵抗に、中心角θ1,θ2,θ3は、エアギャップ50の磁気抵抗に取り込まれる。
なお、特許文献1においては、請求項7等に、各永久磁石層が発生する総磁束量を定式化して表現しているのをはじめ、永久磁石の総磁束量(φ)を指標として、磁束密度分布の正弦波化を図っている。しかし、エアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形を正確に評価するためには、各永久磁石16,17,18の磁束の寄与を、総磁束量(φ)ではなく、磁束密度(B)の形で評価する必要がある。上記のように、1層目、2層目、3層目の各永久磁石16,17,18の中心角を、それぞれθ1、θ2、θ3とし、ロータコア11の半径をR、厚み(図3の紙面に垂直な方向の寸法)をLとすると、各永久磁石16,17,18の総磁束量がφ1、φ2、φ3である場合に、磁束密度への寄与B1、B2、B3は、以下のようになる。
B1=φ1/(R・θ1・L)
B2=φ2/(R・(θ2−θ1)・L)
B3=φ3/(R・(θ3−θ2)・L)
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(1)磁束密度分布波形と永久磁石の構成パラメータの関係
本発明の実施形態にかかるロータにおいては、弧形状の永久磁石を複数層で配置して、さらに、開角等、永久磁石の構成パラメータについて、層間での関係性を規定することによって、エアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分の低減を達成している。ここでは、正弦波に近い目標波形を想定して、その目標波形を再現する磁束密度分布を与えうる永久磁石の構成パラメータを例示することで、磁束密度分布波形と永久磁石の構成パラメータの関係の検討について、説明する。
(1−1)目標波形の設定
上記のように、ロータコアに3層の永久磁石を埋設する場合には、磁束密度の波形が、3段の階段状になる。そこで、基本波の正弦波にある程度近い階段状の波形として、図4に示す初期波形を想定する。ここでは、波形を規定する波形パラメータを、(α,β,γ,A,B)=(35°,57°,79°,0.73,0.39)としている。
次に、α,β,γ,A,Bの各パラメータの値を、上記初期波形における値の周囲で、変化させる。そして、得られた波形に対して、全高調波歪み率(THD)を見積もる。この際、全てのパラメータを同時に変化させてもよいが、結果の可視化を容易とする観点から、ここでは、パラメータを2つずつ組にして変化させる。
図5〜7に、各パラメータを変化させた際のTHDの挙動を、代表的な波形とともに表示する。図5ではαとβの組、図6ではαとγの組、図7ではAとBの組に対して、THDの挙動を示している。
図5〜7のいずれの波形パラメータの組においても、上記初期波形における値が、THDが極小値をとる領域の近傍に存在しており、初期波形における波形パラメータの組が、正弦波に近い階段状の波形を与えるものとして、適切であったことが確認できる。また、THDが極小値をとる領域から、いずれかのパラメータが外れると、THDの値が大きくなり、波形が正弦波から大きく歪むことが確認される。
図5〜7の結果より、波形を規定するパラメータが以下の適正領域にある時に、THDを小さくし、正弦波に近い波形を得られることが分かる。
・α:25°〜45°
・β:55°〜65°
・γ:75°〜85°
・A:0.58〜0.78
・B:0.25〜0.45
(1−2)目標波形を与える永久磁石の構成パラメータ
次に、上記(1−1)で得られた適正領域の波形パラメータによって表現される正弦波に近い磁束密度分布波形を与えるような、永久磁石の構成パラメータを見積もる。
ここでは、シミュレーションに用いるロータのモデルとして、モデル1,2,3の3種類を準備した。そして、各モデルに対して、有限要素法(FEM)を用いた電磁界解析によるシミュレーションを行い、エアギャップに形成される磁束密度分布の波形を見積もった。
ここでは、全てのモデルにおいて、ロータコアの半径Rを83mmとした。極数は8とした。また、全ての永久磁石について、厚みTを3.0mmとし、残留磁束密度も同じとした。永久磁石の円弧形状の中心点cは、いずれのモデルでも、3層全ての永久磁石について一致させ、Rθ=85mmとした。いずれもモデルにおいても、ロータコアにフラックスバリアは設けていない。また、永久磁石は、各スロットの長手方向外側に寄せて配置した。各永久磁石の磁化方向はラジアル配向とし、磁化方向の焦点を形状の焦点と一致させた。
シミュレーションに用いた条件を、下の表1にまとめる。
図8〜10に、モデル1〜3において採用した永久磁石の配置と、シミュレーションによって得られた磁束密度分布の波形を示す。また、表2に、各モデルで採用した永久磁石の構成パラメータのうち、主要なものをまとめる。表2には、シミュレーションによって得られた波形から読み取られる波形パラメータ(α,β,γ,A,B)も、併せて示す。
図8(b)のように、モデル1においては、シミュレーションによって得られた磁束密度分布の波形が、極値近傍で緩やかに変化し、極値の中間点の近傍で比較的大きく変化する正弦波に近いものとなっている。そして、表2に示されるとおり、α,β,γ,A,Bの各波形パラメータが、上記(1−1)で得られたTHDを小さくできる適正領域の範囲に収まっている。特に、α,β,γは、適正範囲のほぼ中央の値をとっている。
ここで、上記のように、R=83mm、Rθ=85mmとしており、R0=R(1+cosθ)/2cosθ=86.4mmなので、上記モデル1においては、永久磁石の円弧形状の中心位置は、Rθ<R0となっている。モデル1において、各層の永久磁石の開角の関係は、表2に示されるとおり、θM3<θM2<θM1となっており、Rθ<R0の場合に満たすべき上記(1)の関係式を満たしている。
一方、モデル2においては、図9(b)のように、磁束密度分布の波形が、極値近傍で突出した形状となっている。また、モデル3においては、、磁束密度分布の波形が、図10(b)のように、平坦な領域と急激に変化する領域とを備えた形状となっている。このように、モデル2,3においては、磁束密度分布の波形が、正弦波から遠い形状をとっている。そして、表2に示すように、モデル2においては、波形パラメータのうち、α,β,γ,Bが、上記(1−1)で得られた適正領域に収まっておらず、モデル3においては、α,β,γ,A,Bの全てが、その適正領域に収まっていない。
各層の永久磁石の開角の関係は、モデル2においては、θM1=θM2<θM3となっている。モデル3においては、θM1<θM2<θM3となっている。いずれも、Rθ<R0の場合に満たすべき上記(1)の関係式を満たしていない。
以上のように、開角をはじめとする永久磁石の構成パラメータを適切に設定して、シミュレーションによって得られる磁束密度分布波形において、α,β,γ,A,Bの各波形パラメータが、上記(1−1)で見積もった適正範囲に入るようにすることで、高調波が低減された磁束密度分布波形を与える永久磁石の配置を、決定することができる。そして、そのような永久磁石の配置は、Rθ<R0の場合に、上記式(1)に規定される開角の関係を満たすものとなる。なお、R≧R0の場合についても、同様に、各波形パラメータが適正範囲に入るような永久磁石の配置をとる場合に、上記式(2)に規定される開角の関係を満たすことを、確認している。
さらに、上記モデル1〜3のロータについて、モータに組み込んだ際の鉄損を、シミュレーションによって見積もった。図11に、各ロータを13000rpmの回転速度で回転させた際の無負荷鉄損の比較を示す。ここでは、モデル1の値を1とするように規格化して、各モデルの値を示している。
図11によると、鉄損は、モデル1において、モデル2およびモデル3よりも小さくなっている。最も鉄損が大きいモデル2と比較すると、モデル1の鉄損は、70%程度に抑えられている。このことは、モデル1のように、高調波の寄与の少ない磁束密度分布波形を与えるように、永久磁石の構成パラメータを選択することで、モータの鉄損を低減し、モータ効率を向上させられることを示している。
(1−3)永久磁石の開角と中心位置
次に、永久磁石の弧形状の中心の位置と、各層の永久磁石の開角の関係性との相関について、確認した。
具体的には、永久磁石の円弧形状の中心の位置を変化させながら、エアギャップにおける磁束密度分布波形のシミュレーションを行った。そして、上記(1−1)で見積もった適正範囲に入る波形パラメータが得られるように、各層の永久磁石の開角θM1,θM2,θM3を設定した。3層の永久磁石の円弧形状の中心の位置cは同じとし、3層いずれについても、ロータコアの回転中心Oから弧形状の中心cまでの距離をRθとした。
この際、永久磁石の円弧形状の中心cの位置によらず、上記(1−2)の場合と同様に、ロータコアの半径Rを83mmとした。極数は8とした。また、全ての永久磁石について、厚みTを3.0mmとし、残留磁束密度も同じとした。また、永久磁石の円弧形状の中心cの位置によらず、各永久磁石の中心角を、θ1=8.7°,θ2=14.5°,θ3=18.8°とし、円弧形状の半径を、R1=16.0mm,R2=24.3mm,R3=30.45mmとした。
図12に、ロータコアの回転中心Oから永久磁石の円弧形状の中心cまでの距離Rθを、Rθ=85.0mm,87.5mm,90.0mm,92.5mm,95.0mmとした場合について、波形パラメータが適正範囲に入ることが確認された永久磁石配置を示す。また、表3に、それぞれの場合の3層の永久磁石の開角θM1,θM2,θM3の値をまとめる。
ここで、シミュレーションを行った各モデルにおいて、R0=R(1+cosθ)/2cosθ=86.4mmとなる。Rθ<R0であるRθ=85.0mmの場合には、各層の永久磁石の開角の関係が、θM3<θM2<θM1となっている。一方、Rθ≧R0であるRθ=87.5〜95.0mmの場合には、各層の永久磁石の開角の関係が、θM3≦θM1<θM2となっている。
以上より、永久磁石の円弧形状の中心の位置に応じて、各永久磁石の開角の関係性を規定することで、モータのエアギャップの磁束密度分布において、高調波の寄与が低減された波形を得ることができる。つまり、各永久磁石の開角の関係性を、下記のように規定すればよいことが分かる。
θ<R0である場合:θM3<θM2<θM1 (1)
θ≧R0である場合:θM3≦θM1<θM2 (2)
(2)他種の磁石配置との比較
上記のように、本発明の実施形態にかかるロータにおいては、弧形状の永久磁石を複数層で配置し、かつ、永久磁石の構成パラメータを適切に規定することで、エアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分の低減を達成している。一方、これまでに、磁束密度分布波形の高調波成分を低減するためのロータコアの構成として、種々の形態が提唱されている。そこで、各形態による高調波成分低減の効果について、比較を行う。
ここでは、以下のように、図13に形状を示した6つのロータコアのモデルを想定する。
・(a)一層V字配置1:厚みの大きい平板状永久磁石を一層のV字形に配置している。さらにロータコアにフラックスバリアを設けている。ロータコアの外周面には凹部を設けている。
・(b)一層V字配置2:上記(a)のモデルで、ロータコアの外周面に凹部を設けない形態としている。
・(c)一層V字配置3:厚みの小さい平板状永久磁石を一層のV字形に配置している。フラックスバリアおよびロータコア外周の凹部は設けていない。
・(d)二層V字配置:上記(c)の永久磁石の外周側に、V字配置の平板状永久磁石を追加し、2層のV字形配置としている。
・(e)▽配置:上記(c)のV字形配置をとる2つの永久磁石の間の位置に、2つの永久磁石の間を渡すように、永久磁石を1つ追加し、3つの永久磁石が三角形の配置をとるようにしている。
・(f)三層円弧配置:上記本発明の実施形態にかかる配置としている。磁束密度は全永久磁石において同じとしている。
各モデルにおける永久磁石の量は、永久磁石磁束の磁束鎖交数が、モデル間でほぼ同じになるように設定している。
各モデルに対して、上記で説明した有限要素法を用いたシミュレーションにより、エアギャップの磁束密度分布の波形を見積もった。シミュレーションに用いた条件を下の表4にまとめる。各永久磁石の磁化方向はラジアル配向とし、磁化方向の焦点を形状の焦点と一致させた。
シミュレーションの結果を図14に示す。ここで、シミュレーションにおいては、ティースの間が一体に連結された閉スロット型のステータを想定している。図14によると、モデルに応じて波形が異なっており、少なくとも、(b)一層V字配置2、(c)一層V字配置3、(e)▽配置において、波形が正弦波から大きく逸脱しているのが明らかである。
さらに、図14の各波形をフーリエ変換して、基本波および各次数の高調波の含有率を解析した結果を図15に示す。ここでは、各次数(n)の波の磁束密度(Bn)を基本波(n=1)の磁束密度(B1)で規格化した値として、各次数の含有率を示している。これによると、上記の(b)一層V字配置2、(c)一層V字配置3、(e)▽配置においては、他の配置に比べて、顕著に高調波成分の含有率が大きくなっている。さらに、(a)一層V字配置1および(d)二層V字配置においても、(f)三層円弧配置と比較して、比較的低次の高調波、つまり、3次および5次の高調波の含有率が大きいことが分かる。
さらに、図16に、図15の結果から算出した全高調波歪み率を示す。全高調波歪み率は、全次数の高調波(n≧2)の含有率の合計値を、基本波(n=1)の含有率との合計に占める割合として算出している。図16によると、全てのモデルの中で、(f)三層円弧配置の場合において、全高調波歪み率が最も小さくなっていることが分かる。その値は約20%である。次に全高調波歪み率が低いのは、(a)一層V字配置1であるが、それを基準とした場合に、(f)三層円弧配置において、全高調波歪み率が約40%も低くなっている。
エアギャップの磁束密度分布の波形における高調波の含有率は、ロータコアにおける鉄損と密接な関係を有している。そこで、図17に、シミュレーションによって見積もられた無負荷鉄損の値を、基本波および各高調波の寄与に分けて示す。なお、基本波(一次波)の寄与は、図中に数値で記入している。
図17によると、基本波の寄与による鉄損は、(f)三層円弧配置において、(c)一層V字配置3の次に大きくなっている。しかし、高調波の寄与による鉄損に着目すると、(f)三層円弧配置においては、他の各モデルと比べて、顕著に鉄損が少なくなっている。
図18に、無負荷鉄損の値をモデル間で比較したものを示す。ここで示す無負荷鉄損の値には、基本波および全高調波の寄与が含まれている。モデル間で、図18において無負荷鉄損が大きくなっている序列と、図16において全高調波歪み率が高くなっている序列が一致しており、無負荷鉄損が、磁束密度分布の波形における高調波の含有率と高い相関性を有していることが確認される。
そして、(f)三層円弧配置において、最も全高調波歪み率が低いことと対応して、無負荷鉄損が最も小さくなっている。その無負荷鉄損は、次に小さい(a)二層V字配置1の無負荷鉄損と比較して、約9%低減されている。
以上より、(f)三層円弧配置、つまり、円弧形状の永久磁石を3層に配置することにより、エアギャップの磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減できることが示された。そして、そのような永久磁石の形状および配置による高調波成分の低減は、鉄損をはじめ、トルクリプル等、高調波によって引き起こされる現象の抑制につながる。
なお、(a)一層V字配置1で用いられているようなロータコア外周部への凹部の形成や、(e)▽配置の採用も、高調波の低減に効果を有するものではあるが、それらは、ロータにおける出力トルクの低下にもつながりやすい。つまり、ロータコア外周部に凹部を形成すると、等価エアギャップ長の増大に伴って、リラクタンストルクが低下しやすい。また、▽配置においては、ロータ内で局所磁気飽和が起こり、リラクタンストルクが低下しやすくなる。これらに対し、(f)三層円弧配置を採用することで高調波成分を低減する場合には、リラクタンストルクを大きく維持しながら、磁束密度分布の波形における高調波成分を低減することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
なお、本発明の実施形態にかかる永久磁石回転子10においては、ロータコア11と、ロータコア11に埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石16,17,18とを有する永久磁石回転子10において、複数の永久磁石16,17,18が、それぞれロータコア11の内周側に向かって凸の弧形状を有し、ロータコア11の外周側から内周側に向かって、2層以上の層状に配列されており、各永久磁石16,17,18の弧形状の開角θM1,θM2,θM3および/または残留磁束密度Br1,Br2,Br3が、所定の関係性を満たすようにすることで、エアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減する効果を得ている。しかし、各永久磁石16,17,18の弧形状の開角θM1,θM2,θM3および/または残留磁束密度Br1,Br2,Br3がそれら所定の関係を満たす場合に限らず、ロータコア11と、ロータコア11に埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石16,17,18とを有する永久磁石回転子10において、複数の永久磁石16,17,18が、それぞれロータコア11の内周側に向かって凸の弧形状を有し、ロータコア11の外周側から内周側に向かって、2層以上、特に3層の層状に配列された永久磁石回転子において、永久磁石16,17,18がラジアル配向の磁化方向を有する構成とすることで、さらには、永久磁石16,17,18の磁化方向の焦点を、形状の焦点と一致させることでも、エアギャップ50に形成される磁束密度分布の波形において、高調波成分を低減する効果を得ることができる。
1 モータ(回転電気機械)
10 ロータ(永久磁石回転子)
11 ロータコア
11a ロータコアの外周面
11b 凹部
12 中空部
13 第一層のスロット
14 第二層のスロット
15 第三層のスロット
16 第一層の永久磁石
17 第二層の永久磁石
18 第三層の永久磁石
20 フラックスバリア
21 ブリッジ
22 空隙
30 ステータ(固定子)
50 エアギャップ
c 各永久磁石の中心(焦点)
c1 第一層の永久磁石の中心(焦点)
c2 第二層の永久磁石の中心(焦点)
c3 第三層の永久磁石の中心(焦点)
d’ 回転子d軸
q’ 回転子d軸に対して電気角で90°隔てた軸(q’軸)
L1,L2 層間の距離
θM1 第一層の開角
θM2 第二層の開角
θM3 第三層の開角

Claims (9)

  1. ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、
    前記複数の永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの内周側に向かって凸の弧形状を有し、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、3層以上の層状に配列されており、
    前記ロータコアの外周側から1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の前記弧形状の開角を、それぞれθM1、θM2、θM3として、θM1、θM2、θM3が、以下の関係を満たすことを特徴とする永久磁石回転子。
    前記ロータコアの回転中心から前記1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の弧形状の焦点の平均位置までの距離をRθ、前記ロータコアの回転中心から前記ロータコアの外周までの距離をR、前記磁極の数をnとし、θ=180°/nとして、
    θ<R(1+cosθ)/2cosθである場合に、θM3<θM2<θM1。
    θ≧R(1+cosθ)/2cosθである場合に、θM3≦θM1<θM2。
  2. 前記ロータコアの外周側から1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の残留磁束密度を、それぞれBr1、Br2、Br3として、Br1、Br2、Br3が、以下の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の永久磁石回転子。
    θ<R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3<Br2<Br1。
    θ≧R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3≦Br1<Br2。
  3. ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、
    前記複数の永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの内周側に向かって凸の弧形状を有し、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、3層以上の層状に配列されており、
    前記ロータコアの外周側から1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の残留磁束密度を、それぞれBr1、Br2、Br3として、Br1、Br2、Br3が、以下の関係を満たすことを特徴とする永久磁石回転子。
    前記ロータコアの回転中心から前記1層目、2層目、3層目に配置された前記永久磁石の弧形状の焦点の平均位置までの距離をRθ、前記ロータコアの回転中心から前記ロータコアの外周までの距離をR、前記磁極の数をnとし、θ=180°/nとして、
    θ<R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3<Br2<Br1。
    θ≧R(1+cosθ)/2cosθである場合に、Br3≦Br1<Br2。
  4. ロータコアと、前記ロータコアに埋設され、磁極を構成する複数の永久磁石とを有する永久磁石回転子において、
    前記複数の永久磁石は、それぞれ前記ロータコアの内周側に向かって凸の弧形状を有し、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、2層の層状に配列されており、
    前記ロータコアの外周側から1層目および2層目に配置された前記永久磁石の前記弧形状の開角を、それぞれθM1およびθM2として、
    θM2<θM1であることを特徴とする永久磁石回転子。
  5. 前記ロータコアの外周側から1層目および2層目に配置された前記永久磁石の残留磁束密度を、それぞれBr1およびBr2として、
    Br2<Br1であることを特徴とする請求項4に記載の永久磁石回転子。
  6. 前記複数の永久磁石の前記弧形状の焦点が、前記ロータコアの外周側に配置された永久磁石から内周側に配置された永久磁石の順に、前記ロータコアの外周側から内周側に向かって、相互に離れて配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
  7. 前記複数の永久磁石は、金属磁石よりなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の永久磁石回転子。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の永久磁石回転子と、
    前記永久磁石回転子との間にエアギャップを有して配置された固定子とを有することを特徴とする回転電気機械。
  9. 前記複数の永久磁石によって前記エアギャップに形成される磁束密度分布の波形において、全高調波歪み率が23%以下であることを特徴とする請求項8に記載の回転電気機械。
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