JP2019182757A - 9糖シアリルオリゴ糖ペプチド及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】新規な9糖シアリルオリゴ糖ペプチド及びその製造方法を提供する【解決手段】下記式(1)で表される9糖シアリルオリゴ糖ペプチド。式1:【選択図】 なし

Description

本発明は、9糖シアリルオリゴ糖ペプチド及びその製造方法に関する。
非対称分枝型糖鎖ペプチドである9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを製造することが検討されている。例えば、特許文献1に記載の分枝型シアリルオリゴ糖鎖類等を原料として、非対称分枝型糖鎖ペプチドを製造する方法が考えられるが、位置選択的な糖鎖切断技術及び糖鎖導入技術が未だに確立されていないため、このような方法から非対称分枝型糖鎖ペプチドを製造することはできない。一方、天然物から非対称分枝型糖鎖ペプチドを精製する方法も考えられるが、この場合、生体内の糖鎖は、多様な構造を有し、その存在量も微量であり、タンパク質等と結合して存在することも多い。このため、このような方法であっても非対称分枝型糖鎖ペプチドを製造することはできない。
非特許文献1には、鶏卵卵黄におけるABEE(p−aminobenzoic ethyl ester)標識された9糖からなる糖鎖構造が開示されている。
非特許文献2には、鶏卵の可溶画分から抽出により得られる糖鎖ペプチド(SGP:シアリルグリコペプチド)が開示されている。このSGPは、11個の糖残基からなる対称型糖鎖構造を有する複合型糖鎖の還元末端に、アミノ酸6残基からなるペプチド鎖のペプチド残基が結合した化合物である。
特許文献2には、鶏卵由来脱脂卵黄から、対称型糖鎖構造を有する11糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法が開示されている。
非特許文献3には、粗精製卵黄中に含まれるSGPは、部分的に脱シアリルされた糖鎖ペプチドが含まれると記載されている。
非特許文献4及び非特許文献5には、それぞれ、鶏卵卵黄中に、9糖シアリルオリゴ糖ペプチドが存在することが記載されている。
国際公開第96/02255号パンフレット 特開2011−162762号公報
Mamoru Koketsu, Lekh Raji Juneja, Mujo Kim, Masaya Ohta, Fumito Matsuura, and Takehiko Ymamoto, Journal of Food Science, 1993, Vol.58, No.4, p743−747 Akira Seko, Mamoru Koketsu, Masakazu Nishizono, Yuko Enoki, Hisham R. Ibrahin, Lekh Raji Juneja, Mujo Kim, Takehiko Ymamoto, Biochim. Biophys. Acta, 1997, Vol.1335, p.23−32 Feng Tang, Lai−Xi Wang, Wei Huang, Nature Protocols, 2017, Vol.12 No.8, p1702−1721 公益財団法人 野口研究所時報, Vol.54, p44−48(2011.09.30) Lin Liu, Anthony R. Prudden, Gerlof P. Bosman, Geert−Jan Boons, Carbohydrate Research, 2017, 452, p122−128
非特許文献1には、糖鎖構造とペプチド鎖構造とを有する化合物について何ら開示されていない。非特許文献2及び特許文献2には、9糖鎖構造とペプチド鎖構造とを有する化合物について何ら開示されていない。非特許文献3には、上記糖鎖ペプチドの分子構造について何ら開示されていない。非特許文献4及び非特許文献5には、上記糖鎖ペプチドの単離方法及び上記糖鎖ペプチドの分子構造について何ら開示されていない。
従って、本発明は、新規な9糖シアリルオリゴ糖ペプチド及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、鳥類卵脱脂卵黄から新規な9糖シアリルオリゴ糖ペプチドが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される9糖シアリルオリゴ糖ペプチド。
式1:
[2]
請求項1記載の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法であって、
前記9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを鳥類卵脱脂卵黄から得る製造方法。
本発明によれば、新規な9糖シアリルオリゴ糖ペプチド及びその製造方法を提供可能である。
9糖シアリルオリゴ糖ペプチドのHPLC測定結果を示す。 実施例に記載の各サンプルのHPLC測定結果を示す。 実施例に記載の各サンプルのHPLC測定結果を示す。 実施例に記載の各サンプルのHPLC測定結果を示す。 実施例に記載の各サンプルのHPLC測定結果を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[9糖シアリルオリゴ糖ペプチド]
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドは、下記式(1)で表される。
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドは、9個の糖残基からなる複合型糖鎖(糖鎖部分)の還元末端にアミノ酸6残基からなるペプチド鎖が結合している糖ペプチドである。
上記糖ペプチドの9個の糖残基からなる糖鎖部分は、非還元末端に1つのシアリル基が含まれている。
式(1)で表される9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの上記糖鎖部分は、Lys−Val−Ala−Asn−Lys−Thr(配列番号:1)のAsn残基に結合している。Lys、Val、Ala、Asn、及びThrは、アミノ酸の3文字表記であり、それぞれ、リジン、バリン、アラニン、アスパラギン、及びスレオニンを意味する。
アミノ酸としては、L−アミノ酸であっても、D−アミノ酸であってもよく、ラセミ体であってもよい。アミノ酸がラセミ体である場合、アミノ酸は、これらの中でも、L−アミノ酸であることが好ましい。また、ここでいうアミノ酸は、アミノ酸誘導体も包含する概念をいう。
[9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法]
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」ともいう。)は、本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを鳥類卵脱脂卵黄から得る。
鳥類卵脱脂卵黄としては、市販の脱脂卵黄を用いてもよく、鳥類卵から公知の方法で調製した鳥類卵脱脂卵黄を用いてもよい。鳥類卵としては、特に限定されない。鳥類卵は、卵黄内に含まれる糖ペプチドの量が多い観点から、鶏卵であることが好ましい。
鳥類卵脱脂卵黄は、鳥類卵の全部、又は鳥類卵の卵黄を含む一部を、有機溶媒により脱脂処理することにより得られる。鳥類卵は、生の卵の形態であってもよく、乾燥して得られる粉末状の形態であってもよい。これらの中でも、鳥類卵は、生の鶏卵卵黄及び/又は粉末状の鶏卵卵黄であることが好ましい。脱脂処理する方法としては、特に限定されず、例えば、鳥類卵に有機溶媒を添加して、沈殿物と有機溶媒層とを分離する方法が挙げられる。
有機溶媒と沈殿物とを分離する方法の具体例としては、例えば、2,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離する方法が挙げられる。有機溶媒を用いた攪拌及び沈殿処理の回数は、特に限定されない。上記回数は、2〜6回であることが好ましい。
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ぺプチドの製造方法は、例えば、鳥類卵脱脂卵黄に水を添加して、鳥類卵脱脂卵黄から糖ペプチドの抽出液を得る抽出工程を含んでもよい。抽出工程における抽出方法としては、特に限定されず、例えば、公知の抽出方法が用いられる。抽出工程において、鳥類卵脱脂卵黄の使用量に対する水の使用量は、特に限定されず、例えば、質量比で、0.1〜50であってもよい。
抽出工程において、糖ペプチドの抽出液を得るための温度としては、特に限定されず、例えば、4〜25℃であってもよい。
抽出工程では、例えば、鳥類卵脱脂卵黄に水を添加した後、鳥類卵脱脂卵黄と水とを十分に撹拌する撹拌工程を含んでもよい。上記撹拌工程を含むことにより、鳥類卵脱脂卵黄に含まれる糖ペプチドの抽出液が効率よく得られる。
抽出工程において、水により抽出した抽出液(糖ペプチドを含有する抽出液)と、鳥類卵脱脂卵黄とを分離する方法の具体例としては、1,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離する方法が挙げられる。
水抽出処理の処理回数は、特に限定されない。上記処理回数は、2〜6回であることが好ましい。
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法は、上記糖ペプチドの抽出液と、除タンパク剤とを混合することにより抽出液からタンパク質成分を除去する混合工程を含んでもよい。この工程では、例えば、糖ペプチド以外のタンパク質成分を抽出液から除去するために、抽出液への除タンパク剤の添加、攪拌、及びタンパク質成分の除去操作を一回で行うことができるため短時間かつ少ない労力で糖ペプチドが精製される。この混合工程では、通常、有機溶媒を使用しない。
除タンパク剤としては、特に限定されないが、例えば、アガロースをベースとしたイオン交換担体が挙げられる。これらの中でも、除タンパク剤は、アガロース糖鎖を架橋したアガロース系のイオン交換担体であることが好ましい。上記担体は、高い強度を有し、かつ高い流速で溶出できる観点から、90μm程度の平均粒子径を有し、かつ架橋した多孔質構造を有することが好ましい。イオン交換担体の電荷は、導入されたイオン交換基により決定され、陰イオン交換体であることが好ましく、弱陰イオン交換体であることがより好ましい。弱陰イオン交換体中の官能基は、ジエチルアミノエチル基及び/又はジエチルアミノプロピル基が好ましい。除タンパク剤は、通常、固体であるため、反応終了後に静置又はろ過により簡便に除去でき、その結果、容易に糖ペプチドの抽出液を回収できる。ろ過に用いるフィルターとしては、特に限定されず、例えば、ろ紙、ガラスフィルター、及びメンブレンフィルターが挙げられる。ろ過の様式としては、特に限定されず、例えば、自然ろ過、吸引ろ過、及び加圧ろ過が挙げられる。
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法は、例えば、抽出液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチドを沈殿する沈殿工程を含んでもよい。沈殿工程は、抽出工程の後に、又は混合工程を行う場合には混合工程の後に行ってもよい。沈殿工程は、例えば、糖ペプチドの抽出液を水溶性有機溶媒に添加することにより、抽出液を濃縮し、更には精製度の向上した糖ペプチドを沈殿物として得る工程である。沈殿工程においては、抽出液に水溶性有機溶媒を添加して粗精製糖ペプチドとして、沈殿物を沈殿させてもよい。
水溶性有機溶媒としては、水と相溶性を有する有機溶媒であれば特に限定されない。水溶性有機溶媒としては、例えば、水と相溶性を有し、1〜5の炭素数を有する有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系、あるいはジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、あるいはアセトニトリル等のニトリル系、アセトン等のケトン系、ジメチルホルムアミド等のアミド系、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
水溶性有機溶媒は、これらの中でも、1〜5の炭素数を有するアルコールであることが好ましく、1〜3の炭素数を有するアルコールであることがより好ましく、メタノール、エタノール、及び2−プロパノール(イソプロパノール)からなる群より選択される1種以上であることが更に好ましく、特にエタノールである。アルコールが混合溶媒である場合には、例えば、メタノール及び2−プロパノールであって、メタノールの含有量に対する2−プロパノールの含有量の割合が、体積比で0.01〜50である混合溶媒であってもよく、エタノール及びアセトン、アセトニトリル又はジエチルエーテルであって、エタノールの含有量に対するアセトン、アセトニトリル又はジエチルエーテルの含有量の割合が0.01〜50である混合溶媒であってもよい。
以下では、水溶性有機溶媒として上記アルコールを用いた場合を例に挙げて沈殿工程を更に説明する。但し、以下の説明は、水溶性有機溶媒が上記アルコールであることに限定されない。水溶性有機溶媒の使用量、沈殿させる際の溶媒の温度等の条件は、溶媒ごとに適宜選択できる。
沈殿工程において、抽出液の使用量に対するアルコールの使用量の割合としては、特に限定されず、例えば、2〜20であってもよい。
沈殿工程では、抽出液をろ過することにより得られるろ液を用いてもよく、減圧濃縮することにより得られる減圧濃縮後の抽出液を用いてもよい。
沈殿工程において、糖ペプチドを分離する方法の具体例としては、1,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離する方法、及び4〜25℃で静置することにより分離する方法が挙げられる。
沈殿工程において、分離した糖ペプチドを、水又は塩溶液に溶解させて沈殿工程を繰り返し行ってもよい。沈殿工程を繰り返し行うことにより、本実施形態の製造方法は、糖ペプチドの精製度を向上できる。
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法は、例えば、沈殿工程により得られた粗精製糖ペプチドから塩を除去し、9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを精製するクロマトグラフ工程を含んでもよい。
クロマトグラフ工程のクロマトグラフ方法としては、特に限定されず、例えば、公知の方法が用いられる。具体的な方法としては、イオン交換樹脂、イオン交換膜、ゲルろ過、透析膜、限外ろ過膜又は逆浸透膜等を用いて脱塩する方法が挙げられる。クロマトグラフ工程は、例えば、沈殿工程により得られた沈殿物を樹脂へ保持させ、次いで、水により洗浄することにより脱塩する方法であってもよい。
沈殿物を樹脂へ保持させる方法としては、特に限定されず、例えば、吸着、担持等の公知の結合様式を利用した保持方法が挙げられる。この保持方法では、沈殿物を洗浄液である水により洗浄する際に、沈殿物が洗浄液とともに流出しない程度に、沈殿物が保持されていればよい。
上記樹脂としては、通常、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂が挙げられる。逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂としては、通常、シリカゲル系樹脂、及びポリマー系樹脂が挙げられる。シリカゲル系樹脂としては、化学結合型シリカゲル樹脂が挙げられる。ポリマー系樹脂としては、ポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)ポリマーゲル樹脂、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリヒドロキシメタクリレート樹脂、スチレンビニルベンゼン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、及びポリメタクリレート樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂は、これらの中でも、化学結合型シリカゲル樹脂であることが好ましい。
化学結合型シリカゲル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、多孔性シリカゲルにジメチルオクタデシルクロロシラン等のシランカップリング剤を反応させて得られるODS樹脂シリカゲルに対し、同様の手法で異なるシリル化剤を用いることにより、オクタデシル(C18)基、トリメチルオクタデシル基、ジメチルオクチル基、オクチル(C8)基、トリエチル基、トリメチル基、フェニル基、シアノプロピル基、及びアミノプロピル基からなる群から選択される1種以上の基を化学結合することにより得られる樹脂上記基は、22の炭素数を有する炭化水素基又は30の炭素数を有する炭化水素基であってもよい。
本実施形態のクロマトグラフ工程は、脱塩した後に樹脂に保持されている9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを有機溶媒水溶液により溶出する溶出工程を含んでもよい。この溶出工程を繰り返すことにより9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの純度を向上できる。
溶出工程に用いる有機溶媒水溶液としては、例えば、アセトニトリル、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒の水溶液であることが好ましい。有機溶媒水溶液の濃度は、0.1〜20%(v/v)であり、好ましくは0.1〜15%(v/v)であり、より好ましくは10%(v/v)以下、さらに好ましくは5%(v/v)以下である。
クロマトグラフ工程を行うための温度としては、特に限定されず、4〜40℃であってもよい。
クロマトグラフ工程では、例えば、粗精製糖ペプチドを保持させるためのODS樹脂等のシリカゲル樹脂の使用量に対し、質量で、1〜50倍の水又は有機溶媒水溶液を用いることにより、樹脂を洗浄して糖ペプチドの脱塩を行った後に、有機溶媒水溶液により溶出させることにより目的とする9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを得ることができる。
溶出工程では、水から徐々に濃度を上げていき、有機溶媒水溶液である溶出液にグラジエントをかけて溶出を行ってもよい。溶出された9糖シアリルオリゴ糖ペプチドは、有機溶媒水溶液の減圧濃縮及び凍結乾燥等の操作を行うことにより、粉末状の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを得ることができる。
[用途]
本実施形態の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの用途としては、例えば研究試薬、工業用原料、医薬品添加剤、食品添加剤等が挙げられる。糖ペプチド製品として製造される場合、9糖シアリルオリゴ糖ペプチドは、製品形態に応じた状態(凍結乾燥粉末、溶液等)に処理され、適切な容器に封入され、包装され、製品として製造される。9糖シアリルオリゴ糖ペプチドは糖鎖合成の前駆体又は医薬原料としても有用である。
以下、本実施の形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる測定方法は以下のとおりである。
[HPLC分析]
カラム(Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)を備えたGLサイエンス製HPLC GL−7400システムを用いて、以下の測定条件によりHPLC分析を行った。
測定条件(1):
Buffer A: 100mM AcOHaq.−Et3N (pH 4.0)
Buffer B: Buffer A containing 0.5% of 1−BuOH
グラジエント;10−50% 20min and then 70% 5min of B
カラム温度:40℃
流速;0.2mL / min
UV;235nm
FL;Ex320nm Em400nm
測定条件(2):
Buffer A: 0.2% HCOOHaq.−NH3aq. (pH 4.4)
Buffer B: 0.2% HCOOH in CH3CN
グラジエント;40−70% 20min and then 100% 5min of B
カラム温度:40℃
流速;0.2mL / min
FL;Ex320nm Em400nm
[LC/MS測定]
以下の測定条件でLC/MS測定を行った。用いたLC及びMSのシステムは以下のとおりである。
LC:アジレント製1100シリーズ
カラム:Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)
カラム温度:40℃
流速;0.2mL/min
UV:262nm
グラジエント;40%→100%(30min)、CH3CN in 0.05%Formic acid solution
MS:サーモエレクトロン製LCQ
イオン化:ESI
モード:Positive
スキャンレンジ m/z 800−2000
(9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの調製)
鶏卵卵黄20個にエタノール800mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで15分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することにより沈殿物を得た。得られた沈殿物にエタノール400mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を除去する操作を3回繰り返して、沈殿物として脱脂卵黄300gを得た。
得られた上記脱脂卵黄250gに水400mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで15分遠心分離し、デカンテーションにより上清を得た。デカンテーションにより得られた沈殿物に水300mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を回収する操作を3回繰り返した。回収した上清に脱イオン水にて洗浄済みのイオン交換担体(GE Healthcaare製、DEAE Sepharose Fast Flow 10mL)を加え、攪拌後、セライトを敷いたグラスフィルターにてろ過した後回収した。次いで、ろ過後のろ液を200mLまで減圧濃縮することにより濃縮溶液を得た。濃縮溶液をエタノール2Lに徐々に添加し、8,000rpmで10分間遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することにより、沈殿物を回収した。次いで、沈殿物を200mLの水に溶解し、2Lエタノールに徐々に添加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することにより粗精製糖ペプチド1.9gを得た。ODS樹脂として、和光純薬工業株式会社製品のシリカゲル樹脂「Wakogel」(100C18)200gをカラムに充填した後、上記シリカゲル樹脂をメタノールにより洗浄し、水で置換した。次いで、粗精製糖ペプチド1.5gが水5mLに溶解した水溶液を、水で置換した後の上記シリカゲル樹脂が充填したカラム内に添加した。次いで、カラム内のシリカゲル樹脂を水により十分に洗浄した後、4%アセトニトリル溶液を溶出液として用いることにより糖ペプチドを溶出させた。ここで、まずは、11糖シアリルオリゴ糖ペプチドが溶出し、次いで9糖シアリルオリゴ糖ペプチドが溶出した。この9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを含む溶出液を凍結乾燥することにより、9糖シアリルオリゴ糖ペプチド(Sug9-peptide)を14mg得た。
(HPLC測定)
測定条件(1)における9糖シアリルオリゴ糖ぺプチドのHPLC測定結果を図1に示す。
(LC/MS測定)
得られた9糖シアリルオリゴ糖ペプチド1.2mgを、10mM重曹水−アセトン(2/3:体積比)0.5mL溶媒中で1.3mgのFmoc−OSu(N−(9−Fluorenylmethoxy carbonyloxy)succinimide(株式会社ペプチド研究所製品)と反応させた。次いで、反応液をゲルろ過精製(GE Healthcare製、Sephadex G−15)することにより、Fmoc基が導入された反応生成物1.0mgを得た。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のFmoc基が導入された推定分子量3077.2の化合物であり、糖ペプチドの糖鎖数が9であることが分かった。
(構造の同定)
以下の方法により、得られた9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの構造を同定した。
(ピリジルアミノ標識糖鎖(Sug9−PA)の調製)
得られた9糖シアリルオリゴ糖ペプチド3.6mgをPBS 400μLに溶解させ、この溶液に、10μLのPNGase F (New ENGLAND BioLabs製)を添加し、反応温度37℃にて終夜反応させた。次いで、この反応液をゲルろ過精製(Sephadex G−15)し、凍結乾燥することにより2.5mgの糖鎖を得た。次いで、この糖鎖1.0mgをガラス製反応容器「リアクティバイアル(Thermo −scientific.Inc社製品)に添加した。2−アミノピリジン(和光純薬工業株式会社製品)105.1mgに対して塩酸80μLを添加することにより調製した2AP・HCL溶液30μLを、上記ガラス製反応容器に添加し、アルミブロックに加熱温度90℃の条件で15分間加熱することにより、糖鎖を2AP・HCL溶液中で溶解させた。次いで、この反応溶液に、ジメチルアミン−ボラン(和光純薬工業株式会社製品)21.9mgに対して上記2AP・HCL溶液44μLと精製水55μLを添加して調製したジメチルアミンボラン・HCL溶液30μLを添加し、アルミブロックに加熱温度90℃の条件で15分間加熱した。次いで、反応溶液をゲルろ過精製(Sephadex G−15)し、凍結乾燥することにより0.6mgのピリジルアミノ標識糖鎖(Sug9−PA)を得た。
(対照サンプルの調製)
増田化学工業株式会社製品の10pmol/μLのStandard PA−Sugar Chain PA−025(以下、「PA−025」ともいう。)1μLを、50mMのクエン酸ナトリウム含有100mMのNaClバッファー溶液(pH 6.0)20μLに希釈し、次いで、β−1,4−ガラクトシダーゼ(New ENGLAND BioLabs.Inc製品。8000U/mL)を5μL添加し、反応温度37℃にて終夜反応させることにより、対照サンプルとして反応液Aを得た。
(HPLC測定)
測定条件(1)における下記のサンプルのHPLC測定を行った。分析結果を図2に示す。図2中のa、b、及びcは以下の通りである。
a)「Standard PA−Sugar Chain PA−024(以下、「PA−024」ともいう。)」及び「Standard PA−Sugar Chain PA−025」(いずれも増田化学工業株式会社製品)
b)反応液Aの終夜反応を行っている際の反応途中にサンプリングとした液(「反応液Aの途中液」ともいう。)
c)ピリジルアミノ標識糖鎖(Sug9−PA)
なお、上記「PA−024」及び「PA−025」の構造は以下の通りである。
b)のHPLC溶出プロファイル(PA−025における反応液Aの途中液)は、PA−025由来のピークが減少し、Sug9−PAに相当する保持時間に新たなピークが増大して出現することがわかった。また、このような傾向は、反応時間に比例して増大することがわかった。以上の結果より、PA−025及びβ−1−4ガラクトシダーゼの反応により生成する糖鎖構造と、Sug9−PAが有する糖鎖構造は同一であることがわかった。すなわちSug9−Peptideの糖鎖構造は、式(1)中の糖鎖構造であることがわかった。
(サンプルAの調製)
次いで、PA−025のβ−1,4−ガラクトシダーゼ処理終了後の反応液Aをゲルろ過精製(Sephadex G−15)し、凍結乾燥し、サンプルAを得た。
(HPLC測定)
測定条件(2)における下記のサンプルのHPLC測定を行った。分析結果を図3に示す。図3に示すd及びeは以下の通りである。
d)サンプルA
e)ピリジルアミノ標識糖鎖(Sug9−PA)
図3に示すように、HPLC溶出プロファイルd及びeの主ピーク溶出時間は一致していることがわかった。
(対照サンプルの調製)
増田化学工業株式会社製品の10pmol/LのPA−02410μLを、ゲルろ過カラム(GE Healthcare.Inc製、PD−10)を用いて精製し、その後凍結乾燥することによりピリジルアミノ標識糖鎖PA−024を得た。次いで、50mMのクエン酸ナトリウム含有100mMのNaClバッファー溶液(pH 6.0)20μLに希釈し、次いでβ−1,4−ガラクトシダーゼ(New ENGLAND BioLabs.Inc製品。8000U/mL)を5μL添加し、反応温度37℃にて終夜反応させることにより、対照サンプルとして反応液Bを得た。
測定条件(2)における下記のサンプルのHPLC測定を行った。分析結果を図5に示す。図5中のf、g、h、及びiは以下の通りである。
f)「PA−024」及び「PA−025」
g)反応液Aの途中液
h)反応液Bの終夜反応を行っている際の反応途中にサンプリングとした液(以下、「反応液Bの途中液」ともいう。)
i)ピリジルアミノ標識糖鎖(Sug9−PA)
HPLC分析結果においては、gの反応液Aの途中液ではPA−024由来のピークが減少したが、Sug9−PAに相当する保持時間に新たなピークの出現が確認できず、保持時間の明らかに異なる位置に新たなピークが出現し増加した。よって、PA−024に対してβ−1,4−ガラクトシダーゼ処理することにより得られる糖鎖構造は、Sug9−PAの有する糖鎖構造と同一ではないことがわかった。

Claims (2)

  1. 下記式(1)で表される9糖シアリルオリゴ糖ペプチド。
    式1:
  2. 請求項1記載の9糖シアリルオリゴ糖ペプチドの製造方法であって、
    前記9糖シアリルオリゴ糖ペプチドを鳥類卵脱脂卵黄から得る製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023058527A1 (ja) * 2021-10-05 2023-04-13 国立研究開発法人理化学研究所 細胞溶解物中のngly1活性を測定する方法及びそれに用いられるプローブ

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