JP2019181857A - 成形体の製造方法 - Google Patents

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【課題】不連続炭素繊維と、熱可塑性樹脂と、中空微粒子とを含む成形材料をコールドプレス成形して成形体を製造する方法に関するものであり、成形体の板厚が薄肉であっても、さまざまな形状に対応できる形状自由性に優れる成形体の製造方法を提供するものである。【解決手段】炭素繊維束A1を含む不連続炭素繊維Aと、中空微粒子と、熱可塑性樹脂とを含む成形材料を、コールドプレス成形して成形体を製造する方法であって、成形材料における中空微粒子の直径Dpと、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lとの関係がDp>Lである、成形体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、不連続炭素繊維と、中空微粒子と、熱可塑性樹脂とを含む成形材料を、コールドプレス成形して成形体を製造する方法に関する。
近年、強化繊維を含む成形材料を用いた成形体は、機械物性に優れており、自動車等の構造部材として注目されている。特許文献1には、軽量で強靭な成形体を提供することを目的に、繊維強化熱可塑性樹脂シートに中空微粒子を分散させた発明が記載されている。特許文献2には、ガラスマイクロバルーンと、強化繊維と、熱硬化性樹脂を用いて作成したシートモールディングコンパウンドが記載されている。
特開平4−168002号公報 特開2009−7464号公報
しかしながら特許文献1に記載の複合材料は、強化繊維として主にガラス繊維が用いられているため、成形材料を予熱した後の温度低下は問題となりにくい。一方、強化繊維として炭素繊維を用いた場合、ガラス繊維を用いた場合に比べて熱伝導率が高いため、成形材料の予熱後、コールドプレス成形するまでの温度低下勾配が大きい(成形材料の保熱力が少ない)。これは未だ解決されていない吃禁の課題であり、コールドプレス成形特有のものである。また、特許文献2に記載のシートモールディングコンパウンドではマトリクス樹脂として熱硬化性樹脂が用いられている。そのため、成形材料の予熱後、コールドプレス成形までの成形材料の過剰な温度低下という課題は、そもそも存在していない。
したがって本発明の目的は、不連続炭素繊維と、熱可塑性樹脂と、中空微粒子とを含む成形材料をコールドプレス成形して成形体を製造する方法に関するものであり、かかる従来技術の問題点を解消し、成形体の板厚が薄肉であっても、成形材料の熱伝達速度が低いことを利用して、さまざまな形状に対応できる形状自由性に優れる成形体の製造方法を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
1. 炭素繊維束A1を含む不連続炭素繊維Aと、中空微粒子と、熱可塑性樹脂とを含む成形材料を、コールドプレス成形して成形体を製造する方法であって、
成形材料における中空微粒子の直径Dpと、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lとの関係がDp>Lである、成形体の製造方法。
2. 成形材料を断面観察した際、炭素繊維束A1の外部に存在する中空微粒子の体積割合VPoutと、炭素繊維束A1の内部に存在する中空微粒子の体積割合VPinとの関係が、VPout>VPinである、前記1に記載の成形体の製造方法。
3. 成形材料を断面観察した際、炭素繊維束A1の外部に存在する中空微粒子の体積割合VPoutと、炭素繊維束A1の内部に存在する中空微粒子の体積割合VPinとの関係が、VPout×0.5>VPinである、前記1に記載の成形体の製造方法。
4. 成形材料を断面観察した際、中空微粒子全量のうち、少なくとも3%は炭素繊維束A1に接触している、前記1乃至3いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
5. 中空微粒子の粒子径Dpが7μm以上50μm以下であって、耐圧強度が50MPa以上である、前記1乃至4いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
6. 成形材料に含まれる炭素繊維の体積割合Vfが10Vol%以上60Vol%以下、中空微粒子の体積割合VPtotalが0超20Vol%未満である、前記1乃至5いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
7. 炭素繊維束A1の平均繊維数Naveが下記式aを満たす、
前記1乃至6いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
0.43×10/Df<Nave<6×10/Df 式a
ただし、Dfは不連続炭素繊維Aに含まれる単糸の平均繊維径μmである。
8. 成形体の最小板厚が3mm以下である、前記1乃至7いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
本発明では、成形材料に含まれる炭素繊維束同士の熱伝導を遮るように中空微粒子を配置したことで、成形材料の熱伝達速度を低下させ、成形材料の予熱後、コールドプレス成形するまでの温度低下を抑制できる。これにより、より薄肉で複雑な形状のコールドプレス成形体の製造が可能となり、またその外観が向上する。
本願発明の成形材料を断面観察した際の模式図。 炭素繊維束が用いられていない成形材料を断面観察した際の模式図。
[炭素繊維]
本発明に用いられる炭素繊維の種類に特に限定は無いが、引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維を用いることが好ましい。
本発明に用いられる炭素繊維は、表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。サイジング剤が付着している炭素繊維を用いる場合、当該サイジング剤の種類は、炭素繊維及びマトリクス樹脂の種類に応じて適宜選択することができるものであり、特に限定されるものではない。
[炭素繊維の繊維直径]
本発明に用いられる炭素繊維の単糸(一般的に、単糸はフィラメントと呼ぶ場合がある)の繊維直径は、炭素繊維の種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。平均繊維直径は、通常、3μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、4μm〜12μmの範囲内であることがより好ましく、5μm〜8μmの範囲内であることがさらに好ましい。炭素繊維が繊維束状である場合は、繊維束の径ではなく、繊維束を構成する炭素繊維(単糸)の直径を指す。炭素繊維の平均繊維直径は、例えば、JIS R7607:2000に記載された方法によって測定することができる。
[不連続炭素繊維Aの繊維長]
1.範囲
本発明に用いられる不連続炭素繊維Aの繊維長の範囲は3mm以上100mm以下で定義されることが好ましい。
2.不連続炭素繊維Aの重量平均繊維長
不連続炭素繊維Aの繊維長の範囲が3mm以上100mm以下で定義される場合、本発明に用いられる不連続炭素繊維Aの重量平均繊維長は3mm以上100mm以下であれば好ましく、5mm以上80mm未満がより好ましく、10mm以上50mm以下が更に好ましい。炭素繊維の繊維長は、コールドプレス成形前後で変化しないため、繊維長の測定は、成形材料又は成形体から炭素繊維の抽出すれば良い。
3.数平均繊維長と重量平均繊維長
一般的に、炭素繊維の平均繊維長は、例えば、成形材料(又は成形体)から無作為に抽出した100本の繊維の繊維長を、ノギス等を用いて1mm単位まで測定し、下記式(1)に基づいて求めることができる。平均繊維長の測定は、重量平均繊維長で測定できる。個々の炭素繊維の繊維長をLi、測定本数をjとすると、数平均繊維長と重量平均繊維長とは、以下の式(1)、(2)により求められる。
数平均繊維長=ΣLi/j・・・式(1)
重量平均繊維長=(ΣLi)/(ΣLi)・・・式(2)
繊維長が一定長の場合は数平均繊維長と重量平均繊維長は同じ値になる。
炭素繊維の抽出は、成形材料(又は成形体)に含まれる有機物を除去すれば良く、例えば、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を使用した成形材料(又は成形体)の場合、500℃×1時間程度の加熱処理を施し、炉内にて樹脂を除去することによって行うことができる。
また、成形前後において炭素繊維長は変化しないことから、成形材料をコールドプレス成形して得られた成形体を分析して不連続炭素繊維Aの重量平均繊維長を求めても良い。
[不連続炭素繊維Aの形態]
本発明における炭素繊維は炭素繊維束A1を含む不連続炭素繊維Aである。
1.炭素繊維束A1の平均繊維数Nave
本発明における炭素繊維束A1は、炭素繊維束A1の平均繊維数Naveが下記式aを満たすことが好ましい。ここで、Dfは不連続炭素繊維Aに含まれる単糸の平均繊維径(μm)である。
0.43×10/Df<Nave<6×10/Df ・・・式a
また、式aは下記式a’であることが好ましい。
0.6×10/Df<Nave<6×10/Df ・・・式a’
なかでも平均繊維数Naveは、3×10/Df未満であることが好ましく、6×10/Df未満であることがより好ましい。また、下限は0.6×10/Df以上であることが好ましく、0.7×10/Df以上であることが更に好ましい。
2.単糸
不連続炭素繊維Aには、炭素繊維束A1以外の炭素繊維単糸を含んでいても良い。具体的には、炭素繊維束A1は下記式bで定義される臨界単糸数未満の繊維束及び単糸と、臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束A1とを含んでなり、炭素繊維束A1について、成形材料に含まれる不連続炭素繊維A全量に対する割合が、1Vol%以上100Vol%未満であっても良い。炭素繊維束A1について、成形材料に含まれる不連続炭素繊維A全量に対する割合は、5Vol%以上99Vol%未満が好ましい。
臨界単糸数=600/Df ・・・式b
3.開繊
一般的に、炭素繊維は、数千本以上数万本以下の単糸(フィラメント)が集合した繊維束状となっている。炭素繊維がこの繊維束状のままで使用されると、繊維束の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉の成形材料を得ることが困難になる場合がある。これを避けるために、例えば、炭素繊維の繊維束を拡幅したり、又は繊維束を開繊したりして使用することが多い。
炭素繊維の開繊方法は、特に限定されるものではない。開繊方法としては、例えば、空気開繊や、水分散による抄紙方法が挙げられる。
不連続炭素繊維Aの開繊程度は、繊維束の開繊条件を調整することにより目的の範囲内とすることができる。例えば、開繊前の炭素繊維に空気を吹き付けて繊維束を開繊する場合は、繊維束に吹き付ける空気の圧力等をコントロールすることにより開繊程度を調整することができる。
4.成形材料又は成形体の分析
成形前後において炭素繊維束形態は大きくは変化しないことから、成形材料をコールドプレス成形して得られた成形体を分析して、炭素繊維束の形態を分析しても良い。
[繊維束の定義]
炭素繊維束は、後述するように「繊維束」の認識は、ピンセットで取り出すことが可能なものである。そして、ピンセットでつまんだ位置にかかわらず、一まとめの束の状態としてくっついている繊維束は、取り出したときに一まとめの束として取り出されるため、繊維束は明確に定義可能である。分析用の繊維試料を採取するために炭素繊維の集合体を観察すると、繊維試料をその長手側面の方向からだけでなく、様々な方向および角度から見ることにより、炭素繊維の集合体において、複数の繊維が一まとめになっている箇所がどこか、また、繊維がどのように堆積しているかを確認し、一まとめとして機能する繊維束がどれかを客観的かつ一義的に判別することができる。例えば繊維が重なり合っていた場合、交差部分で、構成単位である繊維の違う方向を向いているもの同士が絡み合っていないなら2つの繊維束であると判別できる。
[炭素繊維B]
本発明に用いられる不連続炭素繊維Aの繊維長を3mm以上100mm以下で定義する場合、繊維長3mm未満の炭素繊維Bを含んでも良い。すなわち、成形材料に炭素繊維の繊維長が複数種類混在している場合、繊維長3mm以上100mm未満のものを不連続炭素繊維Aと定義し、繊維長3mm未満のものを炭素繊維Bと定義すれば良い。
炭素繊維Bの重量平均繊維長に特に限定はないが、下限は0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.2mm以上が更に好ましい。炭素繊維Bの重量平均繊維長が0.05mm以上であると、機械強度が担保されやすい。
[成形材料に含まれる炭素繊維の体積割合]
本発明において、下記式(3)で定義される、成形材料に含まれる炭素繊維の体積割合(以下、本明細書において「Vf」と呼ぶことがある)に特に限定は無いが、炭素繊維の体積割合Vfは、10Vol%以上60Vol%以下であることが好ましく、20〜50Vol%であることがより好ましく、25〜45Vol%であればさらに好ましい。
炭素繊維の体積割合Vf=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積+中空微粒子の体積) ・・・式(3)
成形材料における炭素繊維の体積割合Vfが10Vol%以上の場合、所望の機械特性が得られやすい。一方で、成形材料における炭素繊維の体積割合Vfが60Vol%を超えない場合、プレス成形等に使用する際の流動性が良好で、所望の成形体形状を得られやすい。
また、Vfが10%以上である場合、本発明の課題である、成形材料を予熱した後の成形材料の保熱力が顕著に弱くになりやすい。炭素繊維の含有量が増えると、熱伝達速度が増加し、成形材料を加熱後の熱が成形材料の外に放熱されやすくなるためである。従って、Vfが大きい程、本発明の中空微粒子を用いる効果は大きくなる。
なお、成形材料に含まれる全体の炭素繊維の体積割合Vfは、炭素繊維A、Bなど、炭素繊維の種類に関係無く測定する。また、成形前後において炭素繊維の体積割合Vfは変化しないことから、成形体を分析して炭素繊維の体積割合Vfを求めても良い。
[熱可塑性樹脂]
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されるものではなく、所望の軟化点又は融点を有するものを適宜選択して用いることができる。上記熱可塑性樹脂としては、通常、軟化点が180℃〜350℃の範囲内のものが用いられるが、これに限定されるものではない。
[中空微粒子]
本発明における成形材料は中空微粒子を含み、成形材料における中空微粒子の直径Dpと、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lとの関係はDp>Lである。
1.中空微粒子の直径Dp
中空微粒子の断面が楕円形の場合、短径(最小径)をDpとする。不定形状の中空微粒子を使用する場合は、球体積相当径(等体積球相当径)を用いても良い。
2.平均炭素繊維単糸間距離L
炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lは、成形材料の断面観察により測定し、炭素繊維束A1に含まれる単糸間距離を100点測定したときの数平均で定義する。
なお、断面観察した際、異なる炭素繊維束に所属する炭素繊維単糸の断面形状は、その形状が異なって観察される。特に、炭素繊維束が成形材料内でランダムに分散している場合は、この傾向は顕著に現れ、真円な炭素繊維単糸断面や、楕円の炭素繊維単糸断面が観察される。当然ながら、同一形状の炭素繊維単糸断面は、同一の炭素繊維束に所属している。したがって、同じ炭素繊維束に属する単糸であるか、異なる炭素繊維束に属する単糸であるかは区別可能であり、炭素繊維束間(異なる炭素繊維束間の距離)を誤って「炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離L」として測定することは無い。
また、成形材料に含まれる炭素繊維束A1は、コールドプレス前後でほとんど形態は変化しないため、成形体に含まれる炭素繊維束A1を断面観察して平均炭素繊維単糸間距離Lを算出しても良い。
3.コールドプレス成形の課題
一般的に、繊維強化樹脂から成形して成形体を得る手法は様々あるが、一般的な手法としてオートクレーブ成形・RTM成形(レジン・トランスファー・モールディング)・ホットプレス成形・コールドプレス成形などが挙げられる。中でも炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂を含む複合材料を用いる場合、ホットプレス成形とコールドプレス成形があり、生産性の観点から速いサイクルで成形が可能なコールドプレス成形により成形体を製造することが好ましい。
しかしながら、前述の特許文献1に記載の方法で得られた繊維強化熱可塑性樹脂シートは、ガラス繊維が用いられているため、コールドプレス成形する際の成形材料の保熱力は、炭素繊維ほど大きな問題とならない。更に、特許文献1に記載の発明では、強化繊維マットを使用しているものの、不連続な強化繊維束を用いておらず、特許文献1に記載のガラス繊維を炭素繊維に置き換えても、その配置方法についての検討は十分でない。
また、一般的に射出成形の場合には、混練直後に成形型へ成形材料が挿入されるため、コールドプレス成形する際の課題である、「予熱後の保熱力低下」は存在していない。
4.中空微粒子の作用
中空微粒子の直径Dpと、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lとの関係がDp>Lである。Dp>Lを満たすには、平均炭素繊維単糸間距離Lよりも中空微粒子の直径が大きいものを利用すれば良い。例えば、平均単糸間距離が1.5μmの場合、中空微粒子の大きさが1.5μm以上、好ましくは10μm以上の、例えば3M社製のグラスバブルiM30K、S60HS、i16K等を用いれば良い。反対に、例えば特開2016‐68037に記載の0.05μm〜1μmの中空微粒子では本発明の構成の成形材料は作成できない。
また、成形材料を作成する際、熱可塑性樹脂を炭素繊維束に含浸させるために圧力を加えた場合、その圧力により炭素繊維束内に中空微粒子が押し込まれる可能性がある。そのため、成形材料作成時の圧力によって中空微粒子が炭素繊維束内部へ入り込まないようにするため、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lとの関係は、Dp>L×2が好ましく、Dp>L×5が更に好ましく、Dp>L×10がより一層好ましい。
Dp>Lであると、炭素繊維束A1の内部に中空微粒子は入りにくくなり、中空微粒子は炭素繊維束A1の束間に偏在することとなる。すなわち、炭素繊維の熱伝導を、炭素繊維束間で局所的に防ぐことで、成形材料全体として、より顕著に冷却速度を低下できることを、本発明者らは見出した。
この効果によりコールドプレス成形する際に熱可塑性樹脂の溶融状態での保熱力が向上し、成形材料を予熱してから成形型に配置するまでの成形材料の温度低下を飛躍的に抑制することが可能となる。
本発明における成形材料は、成形材料を断面観察した際、炭素繊維束A1の外部に存在する中空微粒子の体積割合VPoutと、炭素繊維束A1の内部に存在する中空微粒子の体積割合VPinとの関係が、VPout>VPinであることが好ましい。中空微粒子の体積割合VPinとの関係は、VPout×0.5>VPin
であることがより好ましく、VPout×0.3>VPinであることが更に好ましく、VPout×0.1>VPinであることがより一層好ましい。
Dp>Lを満たしていても、成形材料作成時に高圧で熱可塑性樹脂を含浸させると、一部は炭素繊維束A1内部に中空微粒子は入り込むものの、VPout>VPinとなるように含浸する際の圧力を調整すれば、効率的に成形材料全体としての熱伝達速度を低下させることができる。
また、成形材料を断面観察した際、中空微粒子全量のうち、少なくとも3%は炭素繊維束A1に接触していることが好ましい。中空微粒子全量のうち、5%以上が炭素繊維束A1に接触していることがより好ましく、10%以上が炭素繊維束A1に接触していることが更に好ましく、15%以上が炭素繊維束A1に接触していることがより一層好ましい。炭素繊維束に中空微粒子が接触していることで、炭素繊維束間での熱伝導を局所的に抑制することができるためである。
5.成形体の分析
成形材料に含まれる炭素繊維束と中空微粒子の位置関係は、コールドプレス前後でほとんど形態は変化しないため、成形体に含まれる炭素繊維束と中空微粒子を断面観察して炭素繊維束A1の外部に存在する中空微粒子の体積割合VPoutと、炭素繊維束A1の内部に存在する中空微粒子の体積割合VPinとの関係を計測しても良い。炭素繊維束に接触している中空微粒子を計測する場合でも同じである。
[好ましい中空微粒子の存在場所]
以下、好ましい中空微粒子の配置場所と、その効果について述べる。
1.表層領域
製造される成形体の外観が求められる場合、中空微粒子全量のうち50%超が、成形材料の表層領域に存在することが好ましい。ただし、表層領域とは、成形材料板厚100%に対して成形材料表面から20%以内の領域である。
成形体の表面にシボを設けて意匠性を改良する場合、成形型上型が最初に接触した場所は急速冷却されるため、成形材料の表層領域は流動(表層流動)しにくいが、中空微粒子を表層に設けることで、この課題を解決できる。
成形材料の表層に中空微粒子を存在させるためには、成形材料を製造する際、不連続炭素繊維Aを、熱可塑性樹脂と中空微粒子を含む複合組成物で挟み込めばよい。複合組成物のうち、熱可塑性樹脂は加熱されて炭素繊維束A1に含浸され、中空微粒子は表面に残留する。中空微粒子全量のうち70%超が、成形材料の表層領域に存在するとより好ましく、80%超であると更に好ましい。
2.中央領域
成形材料を流動させて成形体を製造する場合、中空微粒子全量のうち50%超が、成形材料の中央領域に存在することが好ましい。ただし、中央領域とは、成形材料板厚100%に対して成形材料中央部から20%以内の領域(上半分10%と、下半分10%の合計20%以内の領域)である。
成形時の圧力によって、成形材料を内部流動させて成形する場合、成形型上型が最初に接触した場所は、成形材料表面が急速冷却されほとんど流動しないため、成形材料内部を流動させる必要がある(コールドプレス成形の場合、成形材料よりも成形型の温度の方が低い)。この時、中空微粒子の50%超が、成形材料の中央領域に存在していれば、中央領域の温度が下がらず、効率的に内部流動できる。中空微粒子全量のうち70%超が、成形材料の中央領域に存在するとより好ましく、80%超であると更に好ましい。
3.熱可塑性樹脂への分散
成形材料を厚み方向500μm×幅方向1mmの範囲で合計10箇所観察し、中空微粒子の数を平均したときの変動係数CVが5%以上50%未満であることが好ましい。変動係数CVが5%以上であれば、炭素繊維束内部に存在する中空微粒子が少ないことを意味し、成形材料全体の熱伝達速度を効率的に低下できる。反対に、変動係数CVが50%未満であれば、炭素繊維束A1の各間に均一に中空微粒子を存在させることができるため好ましい。より好ましくは変動係数CVが10%以上45%未満であり、更に好ましくは15%以上40%未満である。
予め熱可塑性樹脂中に中空微粒子を分散させて複合組成物を準備し、これを不連続炭素繊維Aに含浸させれば製造効率が高い。この観点でも、中空微粒子は、成形材料の熱可塑性樹脂(マトリクス領域)に分散しているとが好ましい。
また、成形材料及び成形体の厚みについては後述するが、厚みが薄くなる場合、表層又は中央層をそれぞれ設けて中空微粒子を設けるのが難しくなるため、熱可塑性樹脂中に均一分散させることが好ましい。
また、中空微粒子を成形材料中に均一分散すれば、個々の中空微粒子が束へ接触する点が増加するため、炭素繊維束間の熱伝導率を抑制し、成形材料の熱伝達速度をより効果的に抑制することができる。
4.成形体における観察
成形材料を成形して成形体を得る場合、成形前後において、非流動部の炭素繊維形態はほとんど変化しない。したがって、断面観察は、製造された成形体の断面(特に非流動部の断面)を観察し、中空微粒子の存在場所を確認しても良い。
[中空微粒子の種類、大きさ]
本発明における中空微粒子はに特に限定は無く、中空ガラス球微粒子、シラスバルーン、黒曜石バルーン、カーボンバルーンや、フェノール樹脂バルーン等の有機質中空微粒子が例示されるが、中空ガラス球微粒子が好ましい。
中空ガラス球微粒子を用いる場合、耐圧強度(90%残存)が70MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、150MPa以上である事が更に好ましい。
中空微粒子の粒子径Dpは、7μ以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下が更に好ましく、14μm以上20μm未満がより一層好ましい。なお、中空微粒子の粒子径Dpとはメジアン径d50で定義する。
中空微粒子の熱伝導率は0.01〜0.50W/mKが好ましく、0.05〜0.20W/mKがより好ましい。
[中空微粒子の体積割合]
下記式(4)で示される、成形材料に含まれる中空微粒子の体積割合VPtotalは、成形材料中0Vol%超20Vol%未満であることが好ましい。
中空微粒子の体積割合VPtotal=100×中空微粒子の体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積+中空微粒子の体積) ・・・式(4)
また、成形材料に含まれる炭素繊維の体積割合が10Vol%以上であると、本発明の課題であるコールドプレス成形する際の成形材料の保熱力が弱くなりやすいため、中空微粒子の体積割合VPtotalが0超20Vol%未満であることが好ましい。中空微粒子の体積割合VPtotalは、0超15Vol%未満がより好ましく、1%超10Vol%が更に好ましく、3%超8%未満がより一層好ましい。
コールドプレス前後で中空微粒子の添加量は変化しないため、成形体に含まれれる中空微粒子の体積割合を分析しても良い。
[中空微粒子の重量計測]
成形材料を500℃×1時間程度、窒素雰囲気下で炉内にて処理して熱可塑性樹脂を除去し、残った炭素繊維と中空微粒子を重量測定した後、中空微粒子を水で流して除去し、残った炭素繊維重量を測定することで中空微粒子の重量を計算できる。
中空微粒子としてガラス中空微粒子を用いる場合には、成形材料を500℃×1時間程度、窒素雰囲気下で炉内にて処理して熱可塑性樹脂を除去し、残った炭素繊維と中空微粒子を重量測定した後、空気雰囲気下で炭素繊維を焼き飛ばして、残ったガラス中空微粒子の重量を測定しても良い。
[成形材料]
本発明における成形材料はシート状であり、シート状とは、繊維強化プラスチックの大きさを示す3つの寸法(例えば、長さ、幅、厚みである。)の内、最も小さい寸法を厚みとし、最も大きい寸法を長さとした場合、この長さが厚みに対して、10倍以上あるような、平面状の形状のものを意味する。
本発明において、成形材料とは成形体を作成するための材料であり、成形材料はコールドプレス成形されて成形体となる。したがって、本発明における成形材料は平板形状であるが、成形体は賦形されており、3次元形状の形あるものである。なお、プレス成形は圧縮成形とも呼ぶ。
[プレス成形]
本発明における成形材料は、コールドプレス成形して成形体を製造するためのものである。以下、コールドプレス成形について説明する。
コールドプレス成形法は、例えば、第1の所定温度に加熱した成形材料を第2の所定温度に設定された成形型内に投入した後、加圧・冷却を行う。
具体的には、成形材料を構成する熱可塑性樹脂が結晶性である場合、第1の所定温度は融点以上であり、第2の所定温度は融点未満である。熱可塑性樹脂が非晶性である場合、第1の所定温度はガラス転移温度以上であり、第2の所定温度はガラス転移温度未満である。すなわち、コールドプレス法は、少なくとも以下の工程A−1)〜A−2)を含んでいる。
工程A−1)成形材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上分解温度以下、非晶性の場合はガラス転移温度以上分解温度以下に加温する工程。
工程A−2)上記工程A−1)で加温された成形材料を、熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点未満、非晶性の場合はガラス転移温度未満に温度調節された成形型に配置し、加圧する工程。
これらの工程を行うことで、成形材料の成形を完結させることができる。
上記の各工程は、上記の順番で行う必要があるが、各工程間に他の工程を含んでもよい。他の工程とは、例えば、工程A−2)の前に、工程A−2)で利用される成形型と別の賦形型を利用して、成形型のキャビティの形状に予め賦形する賦形工程等がある。また、工程A−2)は、成形材料に圧力を加えて所望形状の成形体を得る工程であるが、このときの成形圧力については特に限定はしないが、成形型キャビティ投影面積に対して20MPa未満が好ましく、10MPa以下であるとより好ましい。
また、当然のことであるが、プレス成形時に種々の工程を上記の工程間に入れてもよく、例えば真空にしながらプレス成形する真空プレス成形を用いてもよい。
[成形体]
本発明における成形体は、最小板厚が3mm以下であることが好ましい。成形体の厚みは薄ければ薄いほど、部品を軽量化できる。しかしながら、成形体を薄肉化するために成形材料を薄くすると、コールドプレス成形する際の成形材料の保熱力が弱くなりやすい。そのため、最小板厚が3mm以下の成形体を製造する場合、本発明を用いれば、より一層本発明の効果を奏する。成形体の最小板厚は2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましく、1.5mm以下がより一層好ましい。
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.以下の製造例、実施例で用いた原料は以下の通りである。なお、分解温度は、熱重量分析による測定結果である。
(PAN系炭素繊維)
帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)UTS50−24K(平均繊維径7μm、繊維束幅10mm、密度1.78g/cm
(熱可塑性樹脂)
・ポリアミド6 ユニチカ株式会社製「A1030BRF―BA」 結晶性樹脂、融点225℃、密度1.13g/cm、分解温度(空気中)300℃、 以下、PA6と略する場合がある。
(中空微粒子)
スリーエム社製 iM30K メジアン径18μm、耐圧強度(90%残存) 186MPa、密度0.60g/cm
2.本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)成形材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長の分析
以下、成形材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長の測定について述べるが、成形材料を成形して得られた成形体に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長についても同様の方法で測定することができる。
成形材料に含まれる炭素繊維の重量平均繊維長は、500℃×1時間程度、窒素雰囲気下で、炉内にて熱可塑性樹脂を除去した。熱可塑性樹脂を除去した後、無作為に抽出した炭素繊維100本の長さをノギスおよびルーペで1mm単位まで測定して記録し、測定した全ての炭素繊維の長さ(Li、ここでi=1〜100の整数)から、次式により重量平均繊維長を求めた。
重量平均繊維長=(ΣLi)/(ΣLi)・・・式(2)
(2)束の測定方法
(2−1) 成形材料から100mm×100mmのサンプルを5枚切り出し、その後、サンプルを500℃に加熱した電気炉の中で窒素雰囲気下で、1時間程度加熱してマトリクス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却した後に残った炭素繊維の質量を測定した後に、それぞれのサンプル(6枚)に含まれる炭素繊維から、5mm以上100mm以下の不連続炭素繊維Aをピンセットでランダムに200本ずつ取り出し、6枚のサンプルから合計1200個抽出した。
(2−2) 抽出した全ての炭素繊維束について、1/100mgまで測定が可能な天秤を用いて、個々の炭素繊維束の幅と長さを測定した。炭素繊維束の束数(I)および重量(Wi)を測定した。
炭素繊維束の長さから計算した炭素繊維束の繊維長と、使用している炭素繊維の繊維径Dに基づいて、炭素繊維束A1、炭素繊維束A1以外の不連続炭素繊維Aに分け、それぞれΣWiA1、及びWA1以外を測定する。炭素繊維束A1の不連続炭素繊維A全量に対する体積割合(VfA1)は、炭素繊維の密度(ρcf)を用いて式(5)により求められる。
VfA1=Σ(WiA1/ρcf)×100/((ΣWiA1+WA1以外)/ρcf) ・・・式(5)
(2−3)測定本数については、許容誤差ε3%、信頼度μ(α)95%、母比率ρ=0.5(50%)で、以下の式(5)から導き出されるn値から求められる。
n=N/[(ε/μ(α))×{(N−1)/ρ(1−ρ)}+1] 式(5)
n:必要サンプル数
μ(α):信頼度95%のとき1.96
N:母集団の大きさ
ε:許容誤差
ρ:母比率
ここで、100mm×100mm×厚み3mmのサンプルを切り出して焼き飛ばした場合、母集団の大きさNは、炭素繊維の体積割合Vf=35%の成形材料には、(100mm×100mm×厚み3mm×Vf35%)÷((Di/2μm)×π×繊維長×繊維束に含まれる単糸数)で求められる。繊維径Diを7μm、繊維長を20mm、繊維束に含まれる単糸数の設計を1000本とすると、N≒13600本となる。
このNの値を上記式(5)に代入して計算すると、約990本となる。本実施例においては、信頼度を高めるため、990本よりもやや多めの1200本抽出して測定することとした。
(3)体積割合
成形材料を25mm×25mmでサンプルを切出し、切出した全サンプルの気中重量を、電子天秤を用いて測定した後、当該サンプルを500℃×1時間窒素雰囲気下で熱可塑性樹脂を燃焼除去し、処理後サンプルの重量を秤量することによって熱可塑性樹脂の重量を算出した。その後、残った炭素繊維と中空微粒子との混合物を水で流して中空微粒子を除去し、残った炭素繊維の重量を測定することで、炭素繊維と中空微粒子の重量をそれぞれ測定した。
次に、各成分の比重を用いて、炭素繊維、熱可塑性樹脂、中空微粒子の体積割合を、式(3)式(4)により算出した。
炭素繊維の体積割合Vf=100×炭素繊維体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積+中空微粒子の体積割合) 式(3)
中空微粒子の体積割合VPtotal=100×中空微粒子の体積/(炭素繊維体積+熱可塑性樹脂体積+中空微粒子の体積割合) 式(4)
(4)断面観察
(4−1)炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離L
成形材料を断面観察すると、炭素繊維の単糸断面形状は様々なものが観察できる。単糸断面形状が同一のものは、同一の炭素繊維束A1に所属する。
i)単糸が出来るだけ真円に観察できる炭素繊維束A1を選択し、
ii)同一の炭素繊維束A1に所属する、隣接する炭素繊維単糸の中心間距離を測定し、ここから炭素繊維単糸直径を差し引いたものを、単糸間距離とした。
iii)ii)の作業を100回繰り返して、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lを算出した。
(4−2)炭素繊維束A1の外部又は内部に存在する中空微粒子の体積割合
成形材料を厚み方向500μm×幅方向1mmの範囲で合計10箇所観察し、炭素繊維束A1の外部又は内部に存在する中空微粒子をカウントし、炭素繊維束A1の外部又は内部に存在する中空微粒子の体積割合をそれぞれ算出した。
(4−3)炭素繊維束A1に接触している中空微粒子の割合
(4−2)と同様にして、成形材料を断面観察し、中空微粒子全量のうち、炭素繊維束A1に接触している中空微粒子の割合を算出した。
(4−4)中空微粒子の配置場所
・実施例1、2
成形材料を断面観察し、成形材料板厚100%に対して成形材料表面から20%以内の領域と、それ以外の領域を観察し、中空微粒子の存在場所を観察した。
・実施例3
成形材料を厚み方向500μm×幅方向1mmの範囲で合計10箇所観察し、中空微粒子の数を平均したときの変動係数CVを算出した。
(5)成形材料の保熱力の測定
各実施例・比較例で作成した成形材料の中央部にドリルで径1mmの穴をあけ、熱電対を挿入した。成形材料を熱電対が300℃を示すまでIR加熱機で加熱し、20度の環境に取出して自然冷却し、取り出してから20秒後と40秒後に示す熱電対の温度を測定した。
[実施例1]
1.熱可塑性樹脂と中空微粒子のドライブレンド
熱可塑性樹脂として、ナイロン6樹脂(ユニチカ株式会社製「A1030BRF―BA」)に対し、中空微粒子としてスリーエム社製 iM30Kをドライブレンドしたものを用意した。このとき、後に作成する成形材料の炭素繊維の体積割合が35vol%、ポリアミド6が61vol%、中空微粒子が4vol%となるようにポリアミド6と中空微粒子の配合割合を計算して用意した。
2.炭素繊維の準備
炭素繊維として、帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)UTS50−24K(平均繊維直径7μm、単糸数24,000本、炭素繊維のストランド厚み180μm(ノギス測定))を使用し、エポキシ系サイジング剤を連続的に浸漬させ、130℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥・熱処理し、厚さ0.1mm、幅約12mmの炭素繊維束を得た。これを拡幅して20mm幅とし、5mm間隔でスリットした後、長さ20mmにカットして不連続炭素繊維束を作成した。続いて、不連続炭素繊維束をテーパー管内に導入し、空気を不連続炭素繊維束に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、不連続炭素繊維束をテーパー管出口の下部に設置した、テーブル上に散布した。この時の不連続炭素繊維の状態は、単糸状態の炭素繊維と、繊維束の状態の不連続炭素繊維束A1とからなる炭素繊維マットであった。
3.成形材料の作製
得られた炭素繊維マットを、熱可塑性樹脂と中空微粒子をドライブレンドしたもので両側から挟み込み、これを260℃に加熱したプレス装置にて、0.5MPaにて3分間加熱し、厚み2.5mmの成形材料を得た。
得られた成形材料の不連続炭素繊維Aを分析したところ、不連続炭素繊維Aの繊維長は固定長20mm、炭素繊維A1の束割合は85Vol%、平均繊維数Naveは900本であった。成形材料を断面観察すると、中空微粒子全量のうち99%以上が、成形材料の表層領域に存在していた。その他の結果を表1に示す。
なお、厚み2.5mmの成形材料をコールドプレスして、2.5mmの板厚の成形体が作成できることも確認した。
[実施例2]
成形材料に含まれる中空微粒子の添加量を、表1にあるように調整したこと以外は、実施例1と同様に成形材料を作成した。実施例2で得られた成形材料の不連続炭素繊維Aを分析したところ、不連続炭素繊維Aの繊維長は固定長20mm、炭素繊維A1の束割合は85Vol%、平均繊維数Naveは900本であった。成形材料を断面観察すると、中空微粒子全量のうち99%以上が、成形材料の表層領域に存在していた。その他の結果を表1に示す。
[比較例1]
成形材料に中空微粒子を含まなかったこと以外は、実施例1と同様に成形材料を作成した。結果を表1に示す。
[実施例3]
1.成形材料の製造工程1.熱可塑性樹脂と中空微粒子のコンパウンド
熱可塑性樹脂として、ナイロン6樹脂(ユニチカ株式会社製「A1030BRF―BA」)に対し、中空微粒子としてスリーエム社製 iM30Kを2軸押し出し機でコンパウンドしたものを用意した。このとき、後に加える炭素繊維の体積割合が35Vol%、ポリアミド6が62Vol%、中空微粒子が3Vol%となるようにポリアミド6と中空微粒子の配合割合を用意した。
2.複合材料の製造工程2.複合材料前駆体の製造
炭素繊維として、帝人株式会社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)UTS50−24K(平均繊維直径7μm、単糸数24,000本、炭素繊維のストランド厚み180μm(ノギス測定))を使用し、エポキシ系サイジング剤を連続的に浸漬させ、130℃の乾燥炉に約120秒間通し、乾燥・熱処理し、厚さ0.1mm、幅約12mmの炭素繊維束を得た。これを拡幅して20mm幅とし、5mm間隔でスリットした後、長さ20mmにカットして不連続炭素繊維束とした。
続いて、不連続炭素繊維束と、前記コンパウンドしたポリアミド6、中空微粒子とをテーパー管内に導入し、空気を不連続炭素繊維束に吹き付けて繊維束を部分的に開繊しつつ、ポリアミド6及び中空微粒子とともに不連続炭素繊維束をテーパー管出口の下部に設置したテーブル上に散布した。この時の不連続炭素繊維の状態は、単糸状態の炭素繊維と、繊維束の状態の不連続炭素繊維とからなるものであった。
テーブル上に散布された繊維および樹脂を、テーブル下部よりブロワにて吸引し、定着させ成形材料前駆体を得た。
3.成形材料の製造工程3.成形材料の製造
得られた成形材料前駆体を260℃に加熱したプレス装置にて、0.5MPaにて3分間加熱し、厚み2.5mmの成形材料を得た。得られた成形材料の不連続炭素繊維Aを分析したところ、不連続炭素繊維Aの繊維長は固定長20mm、炭素繊維A1の束割合は85Vol%、平均繊維数Naveは900本であった。また、成形材料を厚み方向500μm×幅方向1mmの範囲で合計10箇所観察し、中空微粒子の数を平均したときの変動係数CVは30%であった。その他の結果を表1に示す。
Figure 2019181857
[中空微粒子と、スプリングバック効果との共同作用]
不連続な炭素繊維を用いた複合材料をコールドプレスするために加熱した場合、炭素繊維は剛性が高く、スプリングバックを起こして複合材料が膨らみ、複合材料中に空孔を発生させる。(ここで言うスプリングバックとは、圧縮されて固定された不連続な炭素繊維が絡み合った集合体において、その固定が失われ又は弱められたときに、圧縮前の状態に戻ろうとする現象のことである。)本来、スプリングバックにより複合材料が膨らむ現象は欠点として捉えられやすいが、スプリングバックにより生じた空孔が、コールドプレスする際の成形材料の保熱力の向上に寄与するため、この観点からスプリングバックによる成形材料の膨張に注目すると、必ずしも欠点ではない。
このスプリングバック現象による成形材料予熱後の保熱力を考えた場合、本発明者らは、中空微粒子混入による成形材料の保熱力向上への貢献は少ないものだと当初予測した。しかしながら、中空微粒子を炭素繊維束間に設ければ、スプリングバックによる成形材料の保熱力向上と共同できることを見出した。
炭素繊維束が存在しない成形材料であれば、一定割合の空隙が存在すれば、それ以上空隙を増加させても成形材料の保熱力向上効果は少ない。
実施例3と比較例1をみると、比較例1の「ピーク温度から20秒経過後の温度低下」は24℃であるのに対し、中空微粒子を入れた場合には13℃であり、その差11℃が中空微粒子の効果として示された。これは単純に空隙を増やした効果ではなく、炭素繊維束間に中空微粒子を配置することによる、極めて異質な効果である。
本発明の製造方法で得られた成形体は、各種構成部材、例えば自動車の構造部材、また各種電気製品、機械のフレームや筐体等、衝撃吸収が望まれるあらゆる部位、特に好ましくは、自動車部品として利用できる成形体の製造に用いることができる。
101 成形材料
102 炭素繊維束A1
103 炭素繊維単糸
104 中空微粒子
201 成形材料
202 炭素繊維単糸
203 中空微粒子

Claims (8)

  1. 炭素繊維束A1を含む不連続炭素繊維Aと、中空微粒子と、熱可塑性樹脂とを含む成形材料を、コールドプレス成形して成形体を製造する方法であって、
    成形材料における中空微粒子の直径Dpと、炭素繊維束A1に含まれる単糸の平均炭素繊維単糸間距離Lとの関係がDp>Lである、成形体の製造方法。
  2. 成形材料を断面観察した際、炭素繊維束A1の外部に存在する中空微粒子の体積割合VPoutと、炭素繊維束A1の内部に存在する中空微粒子の体積割合VPinとの関係が、VPout>VPinである、請求項1に記載の成形体の製造方法。
  3. 成形材料を断面観察した際、炭素繊維束A1の外部に存在する中空微粒子の体積割合VPoutと、炭素繊維束A1の内部に存在する中空微粒子の体積割合VPinとの関係が、VPout×0.5>VPinである、請求項1に記載の成形体の製造方法。
  4. 成形材料を断面観察した際、中空微粒子全量のうち、少なくとも3%は炭素繊維束A1に接触している、請求項1乃至3いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  5. 中空微粒子の粒子径Dpが7μm以上50μm以下であって、耐圧強度が50MPa以上である、請求項1乃至4いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  6. 成形材料に含まれる炭素繊維の体積割合Vfが10Vol%以上60Vol%以下、中空微粒子の体積割合VPtotalが0Vol%超20Vol%未満である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  7. 炭素繊維束A1の平均繊維数Naveが下記式aを満たす、
    請求項1乃至6いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
    0.43×10/Df<Nave<6×10/Df 式a
    ただし、Dfは不連続炭素繊維Aに含まれる単糸の平均繊維径μmである。
  8. 成形体の最小板厚が3mm以下である、請求項1乃至7いずれか1項に記載の成形体の製造方法。
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