JP2019181828A - 保護フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

保護フィルムおよびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019181828A
JP2019181828A JP2018076423A JP2018076423A JP2019181828A JP 2019181828 A JP2019181828 A JP 2019181828A JP 2018076423 A JP2018076423 A JP 2018076423A JP 2018076423 A JP2018076423 A JP 2018076423A JP 2019181828 A JP2019181828 A JP 2019181828A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meth
film
protective film
acrylate
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018076423A
Other languages
English (en)
Inventor
洋介 飯塚
Yosuke Iizuka
洋介 飯塚
英紀 宮内
Hideki Miyauchi
英紀 宮内
康之 大熊
Yasuyuki Okuma
康之 大熊
伊藤 功一
Koichi Ito
功一 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JNC Corp
Original Assignee
JNC Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JNC Corp filed Critical JNC Corp
Priority to JP2018076423A priority Critical patent/JP2019181828A/ja
Priority to PCT/JP2019/014531 priority patent/WO2019198559A1/ja
Priority to TW108112492A priority patent/TW202003745A/zh
Publication of JP2019181828A publication Critical patent/JP2019181828A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂を用いた保護フィルムであって、耐汚染性、耐衝撃性、施工性に優れ、さらに、貼り付け特性に優れ、かつ、糊残りが抑制された保護フィルムの提供。【解決手段】熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルム11と、基材フィルムの第一の面側に形成された耐衝撃性付与層15と、耐衝撃性付与層の基材フィルム面側と反対側に形成された粘着層13とを備える保護フィルム10であって、基材フィルムは、第一の面の反対側の第二の面側に、熱可塑性ポリウレタンと硬化性樹脂組成物が混在した表面層12を有し、硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、床材(フローリング)等の表面を保護するための保護フィルムに関する。特に熱可塑性ポリウレタンを用いた保護フィルムに関する。
高い耐衝撃強度を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、従来から保護フィルムなどの基材として利用されている。
熱可塑性ポリウレタンを用いた保護膜として、特許文献1には、表面を保護するために使用される多層膜、例えば、自動車、航空機、船などの乗り物の表面(例えば、塗面)を保護するために使用されるような膜が開示されている。より具体的には、感圧接着剤で裏加工され且つポリウレタン層を熱可塑性ポリウレタン層の最上部に有するような多層の表面保護膜(段落0001)が開示されている。
また、特許文献2には、熱可塑性ポリウレタンで形成された基材フィルムと該基材フィルムの片面に形成された粘着層とを備える表面保護フィルムが開示されている。前記熱可塑性ポリウレタンの表面には、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂を含有し、防汚性を有している。
これらの表面保護膜は、例えば、自動車等の塗装板表面への防汚性の付与、塗装板への貼り付け特性の向上、さらには、耐熱性、耐候性の向上に加えて、塗装板から引き剥がした際には、フィルム・糊が貼り付け箇所に残らないなど、自動車などの乗り物の塗面などの表面の保護を目的として検討されたことから、床材等の表面の保護に適した防眩性、防滑性などの特性を有してはいない。
また、耐衝撃性や施工性がより優れた保護フィルムが求められていた。
特表2008-539107号公報 国際公開第2016/010041号パンフレット
そこで、本発明は、熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂を用いた保護フィルムであって、耐汚染性、耐衝撃性、施工性に優れた保護フィルムを提供することを課題とする。さらに、本発明は、防眩性に優れた保護フィルムを提供することを課題とする。さらに、本発明は、貼り付け特性に優れ、かつ、糊残りが抑制された保護フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルムに浸透して形成される、フッ素化合物と硬化性樹脂組成物を含有する表面層と、耐衝撃性付与層と、貼り付け特性を向上させた粘着層であって剥がした際の糊残りのない粘着層とを組合せた積層体を保護フィルムとして用いることで、従来の保護フィルムにはない優れた効果(耐汚染性、耐衝撃性に優れるだけでなく、優れた施工性が得られる点)を有する保護フィルムとなることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の態様に係る保護フィルムは、熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルムと、前記基材フィルムの第一の面側に形成された耐衝撃性付与層と、前記耐衝撃性付与層の基材フィルム面側と反対側に形成された粘着層とを備える保護フィルムであって、
前記基材フィルムは、前記第一の面の反対側の第二の面側に前記熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂と硬化性樹脂組成物が混在した表面層を有し、
前記硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂を含有する。
本明細書において「面側に」とは接触して積層してもよく、または他の層を介して積層してよく、面の内側に層を有していてもよいことを意味する。「面上に」とは接触して積層することを意味する。
このように構成すると、フッ素化合物が表面層の表面(すなわち、第二の面)に集積し、熱可塑性ポリウレタンが持つ柔軟性を損なうことなく、基材フィルムの表面改質を行うことができ、防汚性、耐衝撃性に優れた保護フィルムとなる。また、耐衝撃性付与層により、耐衝撃性及び施工性に優れた保護フィルムとなる。
本発明の第2の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様に係る保護フィルムにおいて、耐衝撃性付与層がポリエステル樹脂、およびポリオレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有し、フルオロシルセスキオキサンまたはフルオロシルセスキオキサン重合体がかご型構造を有し、硬化性樹脂が(メタ)アクリロイルを有する少なくとも1種の化合物の樹脂を含有し、粘着層がアクリル系、ウレタン系、ゴム系、およびシリコーン系から選ばれた少なくとも1種の樹脂で構成される。
このように構成すると、耐衝撃性付与層として適した樹脂を用いた保護フィルムとなる。また、フッ素化合物は空気と固体の界面に集積しやすい性質を有し、空気と固体の界面に集まるスピードを高めた、保護フィルムとなる。さらに、硬化性樹脂が含有する(メタ)アクリロイルを有する化合物の樹脂が熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂の内部に浸透するため、従来の熱可塑性ポリウレタンが持つ柔軟性を損なうことなく、基材フィルムと一体化した表面層となる。そのため、通常2層構造の保護フィルムでは、低伸び率で容易にクラックが発生するが、本発明の保護フィルムは破断伸びが高く、伸び率を例えば100%とした場合でもクラックが発生しない。また、粘着層として適した樹脂を用いた保護フィルムとなる。
本発明の第3の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係る保護フィルムにおいて、前記フルオロシルセスキオキサン重合体は、少なくとも1つの付加重合性官能基を有するフルオロシルセスキオキサンの付加重合体であるか、または、少なくとも1つの付加重合性官能基を有するフルオロシルセスキオキサンと他の付加重合性単量体との付加共重合体である。
このように構成すると、フルオロシルセスキオキサン重合体として適した付加重合体を用いた保護フィルムとなる。
本発明の第4の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第3の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムにおいて、硬化性樹脂組成物の含有割合は、前記表面層の表面から基材フィルム内に向かって漸減するように構成されている。
フッ素化合物は空気と固体の界面に集積しやすい性質を有し、硬化性樹脂が熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂の内部に浸透するため、硬化性樹脂組成物の含有割合が、基材フィルムの表面層の表面から基材フィルム内に向かって漸減する。したがって、従来の熱可塑性ポリウレタンが持つ柔軟性を損なうことなく、基材フィルムと一体化した表面層となる。
本発明の第5の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第4の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムにおいて、前記基材フィルムの第二の面側のグロス値が20未満であるように構成されている。
このように構成すると、基材フィルムの第二の面は、凹凸形状を有し、基材フィルムの第二の面側のグロス値が20未満であることにより、床材等の表面保護に適した防眩性に優れた保護フィルムとなる。
本発明の第6の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第5の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムにおいて、基材フィルムの厚みが50〜300μmである。
このように構成すると、厚み50〜300μmを有する基材フィルムにより、機械的強度と施工性が優れた保護フィルムとなる。
本発明の第7の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第6の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムにおいて、耐衝撃性付与層の厚みが20〜300μmである。
このように構成すると、厚み20〜300μmを有する耐衝撃性付与層により、耐衝撃性と施工性が優れた保護フィルムとなる。
本発明の第8の態様に係る保護フィルムは、上記本発明の第1の態様〜第7の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムにおいて、粘着層の厚みが10〜100μmであり、粘着層の表面粗さが300〜800nmである。
このように構成すると、表面粗さ300〜800nmを有し、厚み10〜100μmを有する粘着層により、粘着性に優れた保護フィルムであって、保護フィルムを剥がした際の糊残りを抑制した保護フィルムとなる。なお、本明細書中で、「表面粗さ」は、特別に記載しない限り、算術平均粗さR(a)を意味する。
なお、粘着層は保護フィルムと被着体表面との緩衝層ともなり、粘着層を欠陥なく存在させることが上記のような用途の保護フィルム分野での被着体への衝撃事象の影響を軽減させることができる。
本発明の第9の態様に係る保護フィルム用積層体は、上記本発明の第1の態様〜第8の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムに対して、粘着層の基材フィルムと反対の面上に剥離フィルムが積層されており、剥離フィルムの粘着層に対する面の表面粗さは、350〜850nmである。
このように構成すると、保護フィルムの製造時には、表面粗さが350〜850nmである剥離フィルムにより、粘着層の表面粗さを300〜800nmとすることができる。また、製造後には、剥離フィルムにより、粘着層の粘着面を保護することができる。
本発明の第10の態様に係る保護フィルム用積層体は、上記本発明の第9の態様に係る
保護フィルム用積層体において、粘着層が、前記表面粗さを示す凹凸形状を、剥離フィルムを剥がした後から10〜120分の間保持する。
このように構成すると、対象となる被着体への貼り合わせ時に、隣接する未付着部の粘着層凹部を次々に使いながら急速に泡抜けが進行し、泡が抜けた粘着剤面が次々に被着体と合体粘着して行く。さらに貼り合わせ後は、凹凸形状は適用された圧力の援助も受けて容易に消え、被着体に追従して均一に貼り付けられる。
本発明の第11の態様に係る保護フィルム用積層体は、上記本発明の第9の態様または第10の態様に係る保護フィルム用積層体において、剥離フィルムには、粘着層に対する面に、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、および長鎖含有カルバメートから選ばれた少なくとも1種の剥離剤が塗布されている。
このように構成すると、粘着層から剥離フィルムを剥離し易くなる。
本発明の第12の態様に係る表面保護物品は、上記本発明の第1の態様〜第8の態様のいずれか1の態様に係る保護フィルムと、前記保護フィルムが粘着層により表面に貼付された物品とを備えた表面保護物品である。
このように構成すると、凹凸形状が消失して物品に追従して均一に貼り付けられた保護フィルムにより、物品表面の塗装を保護することができる。また、高い耐衝撃強度を有する熱可塑性ポリウレタンにより、キズ等から表面を保護することができる。さらに、基材フィルムの表面層に凹凸形状を有することにより、防眩性に優れ、物品の質感を損なわない。また、表面層により防汚性を向上させることができる。さらに、粘着層は、粘着性に優れると共に、耐熱性、耐候性に優れ剥がした後の糊残りがない。
本発明の第12の態様に係る保護フィルムの製造方法は、熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルムを提供する工程と、基材フィルムの第一の面側に耐衝撃性付与層を形成する工程と、前記耐衝撃性付与層の基材フィルム面側と反対側に粘着層を形成する工程と、基材フィルムの、前記第一の面とは反対側の第二の面上に硬化性樹脂組成物を塗布し、前記硬化性樹脂組成物を基材フィルムに浸透させる工程と、前記硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射又は加熱する工程とを備え、前記硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂とを含有する。
このように構成すると、接着性に優れた粘着層を形成することができる。さらに、熱可塑性ポリウレタンが持つ柔軟性を損なうことなく、基材フィルムの一部と硬化性樹脂組成物が混在した表面層を形成することができる。さらに、熱可塑性ポリウレタンが持つ柔軟性を損なうことなく、表面集積特性の優れたフッ素化合物で表面層を形成でき、表面層により防汚性を向上させることができる。また、耐衝撃性付与層により、耐衝撃性及び施工性に優れた保護フィルムとなる。
本発明の保護フィルムは、防汚性、および耐衝撃性を有することから、床材等の建築物等に保護フィルムを貼り付けることで、食器などの落下から床材等を守り、水周り等で付着した汚れを容易に拭き取ることができる。本発明の保護フィルムは、施工性に優れ、作業時間短縮ならびにコスト削減等ができる。また、本発明の保護フィルムは、表面のマット形状により外光 (太陽光等)などの映り込みを防止することができ、床材等本来の意匠性を損なうことがない。さらに保護フィルムが傷んだ場合には、フィルムを剥離すれば新品同様に綺麗な材となる。このとき、材を痛めることなく保護フィルムを剥がすことがで
きるため、保護フィルムの貼り替えの時間短縮ならびに床等の張り替えによるコスト削減等に繋がる。
本発明の第9の実施の形態に係る保護フィルム用積層体の構成を示す図である。Aは、表面に凹凸形状を有さないフィルム(フラットタイプ)の1例を示す。Bは、表面に凹凸形状を有するフィルム(マットタイプ)の1例を示す。 本発明の保護フィルムの製膜工程を示す図である。フィルム転写方式により得られる凹凸形状を有するフィルムの製造方法の1例を示す。 本発明の保護フィルムの製膜工程を示す図である。エンボスロール転写方式により得られる凹凸形状を有するフィルムの製造方法の1例を示す。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
[保護フィルム10]
本発明の第1の実施の形態に係る保護フィルム10は、図1に示すように、表面層12を備えた基材フィルム11と、耐衝撃性付与層15と粘着層13とを備える。保護フィルム10は、製造時には剥離フィルム14を備えるが、被着体である物品の表面へ貼り付ける際には剥離フィルム14を剥がして用いる。
[基材フィルム11]
基材フィルム11は、熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成されたフィルムである。
<熱可塑性ポリウレタン>
本発明に用いられる熱可塑性ポリウレタンとしては、好ましくは、ジオール成分である短鎖ジオールおよび長鎖ジオールと、ジイソシアネートとを主原料とし、必要に応じて鎖延長剤であるジアミンを重付加反応させることにより得られる分子構造中にウレタン結合を有するゴム弾性高分子のうち熱可塑性を有するものである。
短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
長鎖ジオールとしては、1分子中に2個の水酸基を有する分子量200〜10,000程度の化合物で、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリイカーボネートジオールなどが挙げられる。具体的には、ポリエーテルジオールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステルジオールとしては、二塩基酸とグリコールとの脱水縮合反応にて製造される縮合系ポリエステルジオール、ε−カプロラクトンの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイ
ソシアネートなどが挙げられ、これらの中でも、脂肪族ジイソシアネートは黄変しない熱可塑性ポリウレタンが要望される場合に好適に用いることができる。
また熱可塑性ポリウレタンのショア硬度は、ショアA硬度40以上、ショアD硬度65以下が好ましい。ショアA硬度40以上であれば、熱可塑性ポリウレタン自身が常温であっても粘着性を示すことがないためにフィルム状に巻き取ることが容易となり、一方、ショアD硬度65以下であれば、硬すぎず好ましい。
<樹脂>
基材フィルム11は、樹脂として熱可塑性樹脂で形成されたフィルムを用いることが望ましい。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン以外のポリウレタン系樹脂を含んでもよい。ポリウレタン系樹脂は硬度の低いものから硬度の高いものまで任意に選択でき、好適に用いることができる。
また、ポリウレタン系樹脂以外に、さらに別の熱可塑性樹脂を含んでもよく、ポリウレタン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリジエン系樹脂、金属イオンによる凝集力を利用した高分子体であるアイオノマー等の樹脂を挙げることができる。具体的には、ポリカプロラクトン(PCL)、アクリル酸重合体、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、または、これらの誘導体が好ましい。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組合せて用いてもよい。熱可塑性樹脂は、公知の手法により合成したもの又は市販のものを用いることができる。
熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性樹脂を組み合わせて用いる場合、本発明の効果を妨げない限り限定されず、その混合比としては、例えば、1:99〜99:1(重量比)、好ましくは50:50〜90:10(重量比)であってよい。
(任意成分)
尚、熱可塑性ポリウレタンはその物性を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、フェノール系熱安定剤、燐系熱安定剤、硫黄系熱安定剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。上記添加剤は、1種または2種以上を用いることができる。添加剤の割合としては、熱可塑性樹脂全量に対して0.1〜80重量%であり、0.1〜50重量%が好ましく、0.1〜30重量%がより好ましい。
<膜厚>
基材フィルム11の膜厚は特に制限するものではないが、基材フィルムの膜厚は好ましくは50〜300μmであり、より好ましくは100〜200μmである。基材フィルムの膜厚が50μm以上であると基材の機械的強度が充分であり、基材上に層を形成することが可能になる。また、膜厚が300μm以下であると、保護フィルムの厚みが厚くなりすぎることがない。
<マット性>
基材フィルム11の第二の面に凹凸形状を施すことにより、マット感を持たせることができる。これにより、保護フィルムを添付しても、物品本来の意匠性を損なうことがない。基材フィルム11における凹凸形状は、貼付する物品において求められる特性等に応じて変更可能であり、限定されないが、例えば、算術平均粗さR(a)として、通常0.1
〜100μmであり、好ましくは0.1〜50μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。なお、凹凸形状は、基材フィルムの表面側にエンボス加工等のマット処理(表面処理)を施すことによって得ることができる。
また、マット性は、貼付する物品において求められる特性等に応じて変更可能であり、限定されないが、例えば、マット性が求められる場合には、床板等の物品上に張り合わせた後の保護フィルムの表面の60°グロス値として、通常20未満、好ましくは15以下、10以下であってよい。60°グロス値の下限値は特に制限されないが、実用上、0.5以上とすることができ、典型的には1.0以上である。また、光沢性が求められる場合(マット性が求められない場合)には、床板等の物品上に張り合わせた後の保護フィルムの表面の60°グロス値として、通常20以上、好ましくは25以上、30以上であってよい。60°グロス値の上限値は特に制限されないが、実用上、100以下とすることができ、典型的には50以下である。60°グロス値は、市販の光沢計を用いて測定角60°の条件で測定することができる。
以下に、本発明に用いられるフィルム転写方式により得られる凹凸形状を有する樹脂フィルムの製造方法の1例を示す。
本発明に用いられるフィルム転写方式により得られる凹凸形状を有する樹脂フィルムは、フラットダイから押し出された溶融状態の樹脂の片面にセパレーター7とフィルム転写用のセパレーター(凹凸転写フィルム8)を添わせて冷却ロールを通過させることで製造することができる(図2)。
本発明に用いられるセパレーターとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや紙を用いることができる。セパレーターと樹脂とを押し出しラミネートして得られた積層フィルムから、セパレーターを容易に剥離できない場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムや紙の表面に剥離処理をしたものが好ましい。前記剥離処理の方法としては、その表面にシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート系の剥離剤を用いてコーティングする方法、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムをラミネートする方法が挙げられる。
本発明に用いられるフィルム転写用のセパレーターとしては、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムや熱可塑性プラスチックであるポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム)や紙を用いることができる。フィルム転写用のセパレーターの凹凸は、ポリエチレンテレフタレートフィルムにフィラー(例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなど)を練りこむ方法を用いることで表面に微細な凹凸を形成することができる。フィルム転写用のセパレーターと熱可塑性エラストマーとを押し出しラミネートして得られた積層フィルムから、セパレーターを容易に剥離できない場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムや紙の表面に剥離処理をしたものが好ましい。前記剥離処理の方法としては、その表面にシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート系の剥離剤を用いてコーティングする方法、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムをラミネートする方法が挙げられる。
また、本発明に用いられるフィルム転写用のセパレーターは、ポリエチレンテレフタレートフィルムや紙の表面にフィラー(例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなど)を含有させた前述の剥離剤をコーティングすることで、微細な凹凸を形成することができる。
さらに、本発明に用いられるフィルム転写用のセパレーターは、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムや熱可塑性プラスチックであるポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム)や、ポリプロピレンなどのポ
リオレフィンフィルムをラミネートされた紙の表面にサンドブラスト処理により、微細な凹凸を形成することができる。フィルム転写用のセパレーターと熱可塑性エラストマーとを押し出しラミネートして得られた積層フィルムから、セパレーターを容易に剥離できない場合は、フィルム転写用のセパレーターの表面に剥離処理をしたものが好ましい。前記剥離処理の方法としては、その表面にシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート系の剥離剤を用いてコーティングする方法が挙げられる。
また、本発明に用いられるフィルム転写用のセパレーターは、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムや熱可塑性プラスチックであるポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム)や、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムをラミネートされた紙の表面を、エンボスロールを使用した熱転写によって微細な凹凸を形成することができる。
以下に、本発明に用いられるエンボスロール転写方式により得られる凹凸形状を有する樹脂フィルムの製造方法の1例を示す。
本発明に用いられるエンボスロール転写方式により得られる凹凸形状を有する樹脂フィルムは、フラットダイから押し出された溶融状態の樹脂の片面にセパレーター7を添わせて冷却ロール3を通過する際、エンボスロール4を押し当ててエンボスロールの表面の凹凸を熱可塑性樹脂の片面に転写することで製造することができる(図3)。
凹凸形状を有さない樹脂フィルムの製造方法は、凹凸形状を施さない以外は、上記凹凸形状を有する樹脂フィルムの製造方法と同様に製造することができる。
[耐衝撃性付与層15]
<樹脂>
耐衝撃性付与層15は、図1に示すように、表面層12により防汚処理した(または防汚処理する)基材フィルム11の表面層と反対側に形成される。耐衝撃性付与層は、基材フィルム11の面上に直接形成してもよく、基材フィルム11との間に他層を介して積層してもよい。
耐衝撃性付与層15は、耐衝撃性を付与するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂で形成されたフィルムを用いることが望ましい。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂が挙げられる。樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。樹脂、及び樹脂で形成されたフィルムは、公知の手法により合成したもの又は市販のものを用いることができる。
(任意成分)
尚、耐衝撃性付与層はその物性を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、フェノール系熱安定剤、燐系熱安定剤、硫黄系熱安定剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などを挙げることができる。上記添加剤は、1種または2種以上を用いることができる。添加剤の割合としては、樹脂全量に対して0.1〜80重量%であり、0.1〜50重量%が好ましく、0.1〜30重量%がより好ましい。
<膜厚>
耐衝撃性付与層15の膜厚は特に制限するものではないが、好ましくは20〜300μmであり、より好ましくは50〜200μmである。耐衝撃性付与層の膜厚が20μm以上であると耐衝撃性が充分であり、保護フィルムの施工性が向上する。また、膜厚が300μm以下であると、保護フィルムの厚みが厚くなりすぎることがない。
耐衝撃性付与層15により、優れた耐衝撃性が得られる。さらに、保護フィルムにコシ(硬さ)が付与され、施工作業性が向上する。フィルムのコシは、貼付する物品等に応じて変更可能であり、限定されないが、例えば、ステフネス値として、通常20mN以上、好ましくは35mN以上であってよい。ステフネス値の上限値は特に制限されないが、実用上、250mN以下とすることができ、典型的には200mN以下である。ステフネス値は、市販のループステフネステスタを用いてループ状でのつぶれ抵抗値として測定することができる。
[表面層12]
表面層12を形成するには、まず硬化性樹脂組成物を含有するコーティング剤を基材フィルム11の面上に塗布する。
<コーティング剤>
硬化性樹脂組成物は基材フィルム11中に浸透し、基材フィルム11の一部と混合する。乾燥・硬化により、基材フィルム11の一部と硬化性樹脂組成物が一体化し、表面層12を形成する。表面層12では、硬化性樹脂組成物の含有割合が表面層12の表面から基材フィルム11中に向かって漸減するように構成される。そのため破断伸びが高い保護フィルムを形成することができ、保護フィルムを伸ばしてもクラックが発生しない。硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂を含有する組成物である。フッ素化合物及び硬化性樹脂は、公知の手法により合成したもの又は市販のものを用いることができる。なお、固形成分(有効成分)である硬化性樹脂組成物をそのまま、また溶剤等との混合物として、コーティング剤を調製することができる。
硬化性樹脂組成物は、フッ素化合物と硬化性樹脂との合計量を100重量%とすると、フッ素化合物を0.01〜20重量%含むとよい。フッ素化合物の含有量は、好ましくは、0.1〜10重量%であり、より好ましくは1〜5重量%である。0.01重量%以上であると、十分な防汚性を表面層12に付与することができる。また、本発明の効果を得るためには、フッ素化合物と硬化性樹脂100重量%に対して、フッ素成分(フッ素原子含有量として)を0.001〜4重量%含むとよい。好ましくは、0.01〜2重量%であり、より好ましくは0.1〜1重量%である。
硬化性樹脂組成物は、フッ素化合物と硬化性樹脂との合計量を100重量%とすると、硬化性樹脂を80〜99.9重量%含むとよい。硬化性樹脂の含有量は、好ましくは、90〜99.9重量%であり、より好ましく95〜99重量%である。
硬化性樹脂組成物を含有するコーティング剤のコーティングには、フッ素化合物と硬化性樹脂を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法としては、グラビアコート法やダイコート法等を用いることができる。
グラビアコート法は、表面に凸凹の彫刻加工が施されたグラビアロールを塗布液に浸し、グラビアロール表面の凸凹部に付着したコーティング剤をドクターブレードで掻き落とし凹部に液を貯めることで正確に計量し、基材に転移させる方式である。グラビアコート法により、低粘度の液を薄くコーティングすることができる。
ダイコート法は、ダイと呼ばれる塗布用ヘッドから液を加圧して押出しながらコーティングする方式である。ダイコート法により、高精度なコーティングが可能となる。さらに、塗布時に液が外気にさらされないため、乾きによるコーティング剤の濃度変化などが起こりにくい。
その他のウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キ
スコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などを挙げることができる。コーティングする方法は、これらの方法から必要とする膜厚に応じて適宜選択することができる。さらに、ウェットコーティング法を用いることにより、毎分数十メートルのライン速度(例えば約20m/分)でコーティングできるため、大量に製造でき、生産効率を上げることができる。
<硬化性樹脂組成物>
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂組成物が含有する硬化性樹脂とは、紫外線照射、電子線照射、加熱などにより硬化する樹脂である。硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、フェノール樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂などが挙げられる。これらの硬化性樹脂の中で好ましくは、生産性上の観点から、活性エネルギー線により短時間で成膜硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂が好適である。ここで活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線をいう。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線などの光エネルギー線が挙げられる。より好ましくは、紫外線硬化性樹脂である。紫外線硬化性樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、例えば、各種のベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、フェニルケトン誘導体などが挙げられる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して、1〜10重量部とすることが好ましい。
硬化性樹脂の具体例として、(メタ)アクリレートモノマー、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂などのラジカル重合が可能な不飽和結合を有する樹脂を挙げることができる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組合せて用いてもよい。特に、1官能以上の(メタ)アクリロイルを有するものが好ましい。
(ラジカル重合が可能な不飽和結合を有する樹脂)
・(メタ)アクリレートモノマー
(メタ)アクリレートモノマーとしては、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物が挙げられる。例えば、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物で、官能基に(メタ)アクリレートを有する化合物も挙げられる。
・不飽和ポリエステル樹脂
不飽和ポリエステル樹脂としては、多価アルコールと不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を、重
合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記不飽和ポリエステルとしては、無水マレイン酸などの不飽和酸とエチレングリコールなどのジオールとを重縮合させて製造できる。具体的にはフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和結合を有する多塩基酸またはその無水物を酸成分とし、これとエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの多価アルコールをアルコール成分として反応させ、また、必要に応じてフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物も酸成分として加えて製造されるものが挙げられる。
・ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂としては、(1)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシルのポリエステルにα,β−不飽和カルボン酸エステルを含有するエポキシ化合物を反応して得られる(メタ)アクリレート、(2)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端カルボキシルのポリエステルに水酸基含有アクリレートを反応させて得られる(メタ)アクリレート、(3)飽和多塩基酸および/または不飽和多塩基酸と多価アルコールから得られる末端水酸基のポリエステルに(メタ)アクリル酸を反応して得られる(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートの原料として用いられる飽和多塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの重合性不飽和結合を有していない多塩基酸またはその無水物とフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの重合性不飽和多塩基酸またはその無水物が挙げられる。さらに多価アルコール成分としては、前記不飽和ポリエステルと同様である。
・エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、グリシジルを有する化合物と、アクリル酸などの重合性不飽和結合を有するカルボキシル化合物のカルボキシルとの開環反応により生成する重合性不飽和結合を持った化合物(ビニルエステル)を、重合性モノマーに溶解したものが挙げられる。
前記ビニルエステルとしては、公知の方法により製造されるものであり、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、各種エポキシ樹脂をビスフェノール(例えばA型)またはアジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸(ハリダイマー270S:ハリマ化成(株))などの二塩基酸で反応させ、可撓性を付与してもよい。
原料としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびその高分子量同族体、ノボラック型グリシジルエーテル類などが挙げられる。
・ウレタン(メタ)アクリレート樹脂
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、(メタ)アクリロイルを有し、かつ、ウレタン骨格をもつ活性エネルギー線硬化性樹脂であり、例えば紫外線硬化性樹脂を挙げることができる。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、硬化膜に屈曲性(柔軟性)を付与することができ特に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物を
反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマー、プレポリマー、ポリマーであってもよい。特に、多価アルコール類にポリカーボネート系ポリオール類を用いたポリカーボネート系ウレタンアクリレートが好ましい。ポリカーボネート系ウレタンアクリレートを用いることで、形成された硬化膜は優れた伸縮性と強靭性を供えることができる。
前記ポリイソシアネートとしては、具体的には2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD−750(商品名:DIC(株)製)、クリスボンNK(商品名:DIC(株)製)、デスモジュールL(商品名:住友バイエルウレタン(株)製)、コロネートL(商品名:日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネートD102(商品名:三井武田ケミカル(株)製)、イソネート143L(商品名:三菱化学(株)製)などが挙げられる。
前記ポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられ、具体的にはグリセリン−エチレンオキシド付加物、グリセリン−プロピレンオキシド付加物、グリセリン−テトラヒドロフラン付加物、グリセリン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン−テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトール−テトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトール−エチレンオキシド−プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記多価アルコール類としては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコールなどが挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、公知の方法で合成することが可能である。一例として、所定量の有機ポリイソシアネート(a)およびポリカーボネートポリオール(b)を70〜80℃の条件下で残存イソシアネート濃度が所定量になるまで反応させ、その後、さらに所定量の分子内に1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレート(c)を添加して、重合禁止剤(例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル)の存在下、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1重量%以下になるまで反応させることにより得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は3,000〜500,
000、好ましくは5,000〜200,000の範囲である。この範囲とすることで、硬化膜に柔軟性を付与することができる。3,000以上の場合、硬化膜中の架橋密度が高くなりすぎることがない。
硬化性樹脂組成物が含有する硬化性樹脂は、上記(メタ)アクリロイルを有する少なくとも1種の化合物の樹脂を含有することが好ましい。
(メタ)アクリロイルを有する化合物の樹脂の分子量は、50〜30,000であり、より好ましくは50〜5000である。分子量が50〜30,000の(メタ)アクリロイルを有する化合物は、熱可塑性ポリウレタンの内部に浸透し易く、熱可塑性ポリウレタンと一体化するが、従来の熱可塑性ポリウレタンが持つ柔軟性を損なうことがない。
硬化性樹脂組成物が含有する硬化性樹脂は、上記の樹脂とは別に(メタ)アクリロイルを有する化合物の樹脂を加えてもよく、または、分子量が適正範囲内であれば、(メタ)アクリロイルを有する化合物の樹脂のみからなる樹脂であってもよい。硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイルを有する化合物の樹脂の含有量は、40〜100重量%であり、好ましくは50〜100重量%である。
(ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂)
硬化性樹脂の具体例として、(メタ)アクリロイルを有する硬化性樹脂以外には、ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂である、活性エネルギー線硬化性または熱硬化性のカチオン重合性樹脂、アニオン重合性樹脂、重付加性樹脂、重縮合性樹脂、開環重合性樹脂、カチオン重合性以外の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組合せて用いてもよい。
・カチオン重合性樹脂、アニオン重合性樹脂
カチオン重合性樹脂、アニオン重合性樹脂としては、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、オキセタニル、オキシラニル、ビニルアリールなどのカチオン重合性官能基を有する基;およびビニルカルボキシル、シアノアクリロイルなどのアニオン重合性官能基を有する化合物が挙げられる。
さらに、カチオン重合性樹脂としては、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂や、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂が挙げられる。
重付加性樹脂、重縮合性樹脂、開環重合性樹脂としては、以下の例を挙げることができる。
・重付加性樹脂
重付加性樹脂としては、例えば重合によりポリウレタンを生成するような活性水素含有化合物として、例えば低分子量ジオール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど];ポリエーテルジオール[上記に例示した低分子量ジオールのアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)付加物、アルキレンオキシドの開環重合物(ポリテトラメチレングリコールなど)];ポリエステルジオール[脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、マレイン酸、二量化リノレイン酸など)または芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸など)と上記に例示した低分子量ジオールとの縮合ポリエステルジオール、ε−カプロラクトンの開環重合によるポリラクトンジオールなど];低分子量ジアミン(イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンなど)が挙げられる。また、ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、脂環式ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサ
ンなど)、脂肪族ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなど)などが挙げられる。3官能以上の活性水素含有化合物(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの多価アミン;トリエタノールアミンなどのアミノアルコールなど)および/または3官能以上のポリイソシアネート[トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの1対3付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体など]との組合せなどが挙げられる。
エポキシ化合物としては、フェノールエーテル系グリシジル化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのジグリシジルエーテル類など);エーテル系グリシジル化合物(ジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテルなど);エステル系グリシジル化合物[グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリルなど)との共重合体など];グリシジルアミン類(パラアミノフェノールのグリシジルエーテルなど)、非グリシジル型エポキシ化合物(エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油など)などを挙げることができる。
エポキシ硬化剤としては、ポリアミン類および(無水)ポリカルボン酸などを挙げることができる。
ポリアミン類としては、例えば脂肪族ポリアミン類(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン類、アルキルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミンなどのアルキルまたはヒドロキシアルキルアミン類、キシリレンジアミンなどの芳香環含有脂肪族アミン類、ポリオキシプロピレンポリアミンなどのポリエーテルポリアミン類など);脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン類(N−アミノエチルピペラジン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);芳香族ポリアミン類(フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど);ポリアミドポリアミン類(上記ポリアミン類とダイマー酸との縮合物);ベンゾグアナミンおよび/またはアルキルグアナミンおよびその変性物;およびジシアンジアミドなどを挙げることができる。
・重縮合性樹脂
重縮合性樹脂としては、例えば重合によりポリエステルを生成するような、脂肪族ジカルボン酸エステル類の重合体(ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなど);ポリカーボネート;並びにこれらの2種以上の共エステル化物やこれら重合体を構成する化合物とアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、3官能以上の低分子架橋剤(トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメリット酸など)との共重縮合物が挙げられる。
ポリアミド系としては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン等およびこれらの2種以上の共アミド化物やこれら重合体を構成する化合物とポリエステルを構成する化合物もしくはアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、3官能以上の低分子架橋剤(トリメリット酸など)との共重縮合物が挙げられる。
ポリイミド系としてはピロメリット酸と1,4−ジアミノベンゼンとの重縮合物;これらポリイミドを構成する化合物と上記ポリアミドを構成する化合物との共重縮合物、すなわちポリアミドイミドなどが挙げられる。これら、分子内に2つ以下の官能基を持つもの以外に、3つ以上の官能基をもつ、重合により架橋構造を形成するような、重合性化合物も含まれる。例えば、3官能以上の活性水素含有化合物(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの多価アミン;トリエタノールアミンなどのアミノアルコールなど)、トリメリット酸、および/または3官能以上のポリイソシアネート[トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、トリ
メチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの1対3付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体など]との組合せなどが挙げられる。
・開環重合性樹脂
開環重合性樹脂としては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類などが挙げられる。
さらに、ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂の一例として、下記式(A−1)〜(A−3)で示されるシルセスキオキサン誘導体が挙げられる。
式(A−1)〜(A−3)において、Rはそれぞれ独立して、水素、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、隣接しない−CH−が−O−もしくはシクロアルキレンで置き換えられてもよい炭素数が1〜45のアルキル、炭素数が4〜8のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールである。置換アリールのベンゼン環において、任意の水素は、炭素数が1〜10のアルキル、ハロゲン、またはフッ素で置き換えられてもよい。Rはそれぞれ独立して炭素数が1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルから選択される基である。少なくとも1つのXは水素あるいは重合性の官能基を有する基であり、残りのXはRと同様に定義される基である。Rが水素の場合には、一つのXだけが水素であってもよい。Xが重合性の官能基の場合には、少なくとも2つの
Xが重合性の官能基であることが好ましい。
これらの化合物は、公知の製造方法によって合成できる。例えば、特許第5050473号公報を参照できる。
なお、Xで表される重合性の官能基を有する基の重合性を有する基とは、付加重合、開環重合、または重縮合が可能な官能基であれば特に限定されず、オキシラニル、オキシラニレン、3,4−エポキシシクロヘキシル、オキセタニル、オキセタニレン、アクリルまたは(メタ)アクリル、アルケニル、アミン、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル等が例示される。なお、重合性の官能基が複数ある場合は、各々同じ基であってもよく、また異なる基であってもよい。
具体的には下記式(a)〜(h)で示される基を例示することができる。
式(a)〜(h)にいて、Rは炭素数1〜10のアルキレンであり、好ましくは炭素数1〜6のアルキレンである。このアルキレンにおける1つの−CH−は−O−または1,4−フェニレンで置き換えられてもよい。そして、Rは水素または炭素数1〜6のアルキルであり、好ましくは水素である。
・カチオン重合性以外の熱硬化性樹脂
カチオン重合性以外の熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン系樹脂、熱硬化性ポリイミドおよびシリコーン樹脂が挙げられる。これらの樹脂を単独で用いてもよいし、複数の樹脂を組合せて用いてもよい。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合エーテル化メラミン樹脂等のメラミン系樹脂、イソシアネート基を2個以上持ったポリイソシアネート化合物(O=C=N−R−N=C
=O)と、水酸基を2個以上持ったポリオール化合物(HO−R’−OH)、ポリアミン(HN−R’’−NH)、または水などの活性水素(−NH,−NH,−CONH−など)を持った化合物などとの反応により得ることができるウレタン系樹脂等が加工適性上好ましい。
エポキシ系樹脂は耐熱性、耐薬品性、メラミン系樹脂は耐熱性、硬度、透明性、ウレタン系樹脂は低温硬化性に優れており、適宜選択して使用することができる。
ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂としては、特にカチオン重合性樹脂が好ましい。カチオン重合を用いることで、硬化反応を早くすることができ、製造の際に好適である。また、使用するカチオン重合開始剤の種類によって、カチオン重合が光と熱のどちらで進むかを適宜選択することができる。
ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂の含有量は、樹脂の種類や硬化膜に付与したい特性により異なるものである。例えば、硬化膜を形成する硬化性樹脂組成物の総重量(100重量%)に対して、ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂の含有量は10〜90重量%であることが好ましい。より好ましくは、20〜70重量%である。ラジカル重合以外の反応により硬化する樹脂の含有量が10〜90重量%であると、硬化後の硬化膜は優れた硬度、強靭性、耐熱性を保持することができる。
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、特に限定しない。活性エネルギー線でラジカルを発生する開始剤であればよい。
活性エネルギー線重合開始剤として用いられる化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4′−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4′−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′,4′−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2′−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4′−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2′−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4′−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3′−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾー
ル、2,2′−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジ(メトキシカルボニル)−4,4′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4′−ジ(メトキシカルボニル)−4,3′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4′−ジ(メトキシカルボニル)−3,3′−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどである。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することも有効である。
光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性樹脂の総重量(100重量%)に対して0.01〜20重量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜10重量%である。
(カチオン重合開始剤)
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射や熱エネルギーによりカチオン重合を開始させる物質を放出することができる化合物であればよい。かかるカチオン重合開始剤の例としては、カルボン酸、アミン、酸無水物化合物や酸発生剤などが含まれ、好ましくはルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体である。
上記のカチオン重合開始剤の代表的なものとしては、下記式(1)で示される陽イオンと陰イオンの塩を挙げることができる。
[A]m+[B]m− (1)
式(1)において、陽イオン[A]m+はオニウムイオンであることが好ましく、例えば下記式(2)で示される。
[(α)Q]m+ (2)
式(2)において、αは炭素数が1〜60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでもよい有機基である。aは1〜5の整数である。a個のαは各々独立で、同一でも異なっていてもよい。また、少なくとも1つのαは、芳香環を有する有機基であることが好ましい。
Qは、S、N、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、F、N=Nからなる群から選ばれる原子あるいは原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a−qである(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
一方、陰イオン[B]m−は、ハロゲン化物錯体であるのが好ましく、例えば下記式(3)で示される。
[LXm− (3)
式(3)において、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coなどである。Xはハロゲン原子である。bは3〜7なる整数である。また、陰イオン[LXm−中のLの原子価をpとしたとき、m=b−pである。
式(3)で示される陰イオン[LXm−の具体例には、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)などが含まれる。
また陰イオン[B]m−としては、下記式(4)で示されるものも好ましく用いることができる。L、X、bは上記と同様である。
[LXb−1(OH)]m− (4)
陰イオン[B]m−の例には、さらに過塩素酸イオン(ClO、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CFSO、フルオロスルホン酸イオン(FSO、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオンなども含まれる。
本発明におけるカチオン重合開始剤は、このようなオニウム塩の中でも、下記の(イ)〜(ハ)に例示される芳香族オニウム塩であることがさらに好ましい。これらの中から、その1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのアリールジアゾニウム塩。
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジアリールヨードニウム塩。
(ハ)トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス(ジフェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、4−[4’−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−[4'−(ベンゾイル)フェニルチオ]フェニル−ジ−(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのトリアリールスルホニウム塩。
さらに、本発明におけるカチオン重合開始剤は、鉄アレーン錯体またはアルミニウム錯体と、トリフェニルシラノールなどのシラノール類との混合物であってもよい。
鉄アレーン錯体の例には、(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)〔(1,2,3,4,5,6−η)−(1−メチルエチル)ベンゼン〕−アイアン−ヘキサフルオロホスフェートなどが含まれ、アルミニウム錯体の例には、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウムなどが含まれる。
上記の中でも実用面の観点から、本発明の実施の形態におけるカチオン重合開始剤は、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄−アレーン錯体であることが好ましい。
紫外線照射によりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルゼネート塩が挙げられる。上記カチオン重合開始剤としては、例えば、UVACURE1590(商品名:ダイセル・サイテック(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(いずれも商品名:米国サートマー製)、イルガキュア264(商品名:BASF製)、CIT−1682(商品名:日本
曹達(株)製)などの市販品を使用することもできる。
加熱処理を施すことによりカチオン種を発生するカチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン−イオン錯体が挙げられる。上記カチオン重合開始剤としては、例えば、PP−33、CP−66、CP−77(いずれも商品名:(株)ADEKA製)、FC−509(商品名:スリーエム製)、UVE1014(商品名:G.E.製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−150L(いずれも商品名:三新化学工業(株)製)、CG−24−61(商品名:BASFジャパン製)等の市販品を好ましく使用することができる。さらに、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とトリフェニルシラノール等のシラノールとの化合物、または、アルミニウムやチタンなどの金属とアセト酢酸若しくはジケトン類とのキレート化合物とビスフェノールS等のフェノール類との化合物であってもよい。
特に、サンエイドSI-60Lは硬化の際の加温温度を比較的低温(80〜150℃)にすることができ、かつ保存安定性に優れるため、成膜性に優れ好ましい。
カチオン重合開始剤の含有量は、カチオン重合性樹脂の総重量(100重量%)に対して0.01〜20重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.2〜10重量%である。
(溶剤)
本発明のコーティング剤に用いるフッ素化合物、及び硬化性樹脂は、有機溶剤等の溶剤に溶解させて用いてもよい。本発明の効果を妨げない限り、溶剤は特に限定されない。一般的な有機溶剤等を使用できる。
溶剤の具体例としては、炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエンなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼンなど)、ハロゲン化炭化水素系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなど)、ニトリル系溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート系溶媒(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ハイドロクロロフルオロカーボン系溶媒(HCFC−141b、HCFC−225)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)系溶媒(炭素数2〜4、5および6以上のHFCs)、パーフルオロカーボン系溶媒(パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン)、脂環式ハイドロフルオロカーボン系溶媒(フルオロシクロペンタン、フルオロシクロブタン)、酸素含有フッ素系溶媒(フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロケトン、フルオロアルコール)、芳香族系フッ素溶媒(α,α,α−トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン)、水が含まれる。これらを単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
溶剤の含有量は、硬化膜を形成する硬化性樹脂組成物の総重量(100重量部)に対して20〜500重量部である。好ましくは、50〜300重量部である。
(任意成分)
コーティング剤には、上記の他に添加剤を添加してもよい。例えば、膜の硬度、耐擦傷
性を付与するために、フィラーを添加してもよい。塗工性を上げるために、レベリング剤を添加してもよい。その他、耐候剤、消泡剤等の添加剤を添加してもよい。
より詳細には、コーティング剤により形成される硬化膜が有する効果に悪影響をおよぼさない範囲において、活性エネルギー線増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、シリカやアルミナに代表される無機フィラー、有機フィラーなど、任意の成分をさらにコーティング剤に含有させてもよい。
レベリング剤の例として、市販品としてアクリル系表面調整剤BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−356、BYK−381、BYK−392、BYK−394、BYK−3441、BYK−3440、BYK−3550(いずれも商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
耐候剤の例として、ベンゾトリアゾール類、ヒドロキシフェニルトリアジン類、ベンゾフェノン類、サリシレート類、シアノアクリレート類、トリアジン類、または、ジベンゾイルレゾルシノール類が挙げられる。これらの紫外線吸収剤を単独で用いてもよいし、複数の紫外線吸収剤を組合せて用いてもよい。紫外線吸収剤は、吸収したい紫外線の波長に基づいて種類や組合せを適宜選択することが好ましい。
コーティング剤には、表面改質成分としてケイ素化合物を添加してもよい。
例えば、シリコーン化合物を主成分とした一般的な表面改質剤を用いることができる。シリコーン化合物としては、BYK−UV3500、BYK−UV−3570(いずれも商品名:ビックケミー・ジャパン(株)製)、TEGO Rad2100、2200N、2250、2500、2600、2700(いずれも商品名:エボニックデグサジャパン(株)製)、X−22−2445、X−22−2455、X−22−2457、X−22−2458、X−22−2459、X−22−1602、X−22−1603、X−22−1615、X−22−1616、X−22−1618、X−22−1619、X−22−2404、X−22−2474、X−22−174DX、X−22−8201、X−22−2426、X−22−164A、X−22−164C(いずれも商品名:信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
コーティング剤には、その他の樹脂成分を添加してもよい。例えば、熱可塑性樹脂、ゴムを挙げることができる。
その他の樹脂として、熱可塑性樹脂、ゴムを添加することにより、樹脂本来の特性(力学物性、表面・界面特性、相溶性など)を改質することができる。
コーティング剤に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば以下のようなものがある。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、超高分子量ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート(Uポリマー:ユニチカ(株)商品名、ベクトラ:ポリプラスチックス(株)商品名、など)、ポリイミド(カプトン:東レ(株)商品名、AURUM:三井化学(株)商品名、など)、ポリエーテルイミドおよびポリアミドイミド。
ナイロン6、ナイロン6,6ナイロン6,10、ナイロンMXD6、ナイロン6,T(いずれも商品名:デュポン(株)製)などのポリアミド。
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナ
フタレンジカルボキシラートなどのポリエステル。
さらに、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂。
表面層12に用いる硬化性樹脂は、基材フィルム上に塗布するためにコーティング剤として用いる。そのため、コーティング剤は液状であることが好ましい。硬化性樹脂が固体である場合には、既述したように、溶剤に溶解してコーティング剤として用いればよい。
コーティング剤中の硬化性樹脂の濃度は、コーティング剤の粘度がウェットコーティング法等のコーティング方法に応じた粘度になるように選択することができる。前記濃度は、1〜80重量%が好ましく、より好ましくは、3〜60重量%である。コーティング剤中の硬化性樹脂の濃度は、溶剤を用いることで調整することができる。溶剤には、上記のとおり、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の一般的な有機溶剤を用いることができる。なお、硬化性樹脂組成物に含まれるフッ素化合物が有するフルオロアルキル基の長さにより、溶剤への溶解性が低下した場合には、フッ素系の有機溶剤を用いてもよい。また、上記のとおり、コーティング剤には、必要に応じて公知の他の添加剤、例えば、界面活性剤などのレベリング剤を添加してもよい。レベリング剤を添加すると、コーティング剤の表面張力をコントロールすることができ、ハジキ、クレーター等の層形成時に生ずる表面欠陥を抑制することができる。
硬化性樹脂を硬化させるための硬化処理としては、紫外線照射、加熱、電子線照射等の硬化処理が挙げられる。なお、塗膜に溶剤を含む場合には、通常、70〜200℃の範囲内で数分〜数十分、塗膜を加熱し、塗膜中に残留している溶剤を除いた後に、硬化処理を行うことが好ましい。紫外線照射による硬化としては、UVランプ(例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ)から200〜400nmの波長の紫外線を塗布液に短時間(数秒〜数十秒の範囲内)照射すればよい。また、加熱による硬化としては、例えば、通常、180〜250℃、好ましくは200〜250℃の温度で加熱すればよい。このとき、オーブンを用いた場合には、30〜90分間、ホットプレートを用いた場合には、5〜30分間加熱すればよい。また、電子線照射による硬化としては、300keV以下の自己遮蔽型の低エネルギー電子加速器から低エネルギー電子線を塗布液に照射すればよい。
表面層12は、基材フィルム11の一部と硬化性樹脂組成物とが一体化して形成される。すなわち、基材フィルムの第二の面側に硬化性樹脂組成物を含有する。硬化性樹脂組成物の濃度は、基材フィルム11内に向かって漸減するため、基材フィルム11の、硬化性樹脂組成物と混在する部分と混在しない部分との境界は不明確となる。よって一例として、表面層12へのコーティング剤の塗量は、硬化性樹脂組成物(有効成分)が、0.5〜20g/mが好ましく、より好ましくは、1.0〜10g/mである。
表面層12は、フッ素化合物及び硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成され、フッ素化合物を含み、さらに硬化性樹脂を含む。フッ素化合物は、疎水性雰囲気下(例えば空気中)において、空気と固体の界面に集積しやすい性質を有する。これは、フッ素基を含むフッ素化合物は、樹脂よりも高い疎水性を有するため、空気側に引き寄せられることによると考えられる。このため、コーティングの過程において、フッ素化合物が表面層12の表面付近に集積し、フッ素化合物の濃度は表面側に偏る。この結果、表面層12の表面付近は、フッ素化合物の濃度の傾斜構造を形成する。
また、フッ素化合物は、防汚材料として優れた特性を有するため、表面層12の表面の防汚性を高めることができる。
<フッ素化合物>
フッ素化合物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体
からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物を含む。
(フルオロシルセスキオキサン)
シルセスキオキサンとは、[(R−SiO1.5)n]で示される(Rは任意の置換基である)ポリシロキサンの総称である。このシルセスキオキサンの構造は、そのSi−O−Si骨格に応じて、一般的にランダム型構造、ラダー型構造、かご型構造に分類される。さらに、かご型構造は含まれるSiの数に応じてT8、T10、T12型などに分類される。
本発明の保護フィルムに用いるフルオロシルセスキオキサンは、フッ素原子を有するシルセスキオキサンであって、疎水性雰囲気下(例えば、空気中)において、空気と固体の界面に集積しやすい性質を有するものであればよい。界面に集積するフルオロシルセスキオキサンであれば、本発明の効果を十分に発揮することができる。
このようなフルオロシルセスキオキサンの優れた表面集積特性により、少量かつ効果的に表面層12の表面改質を行うことができる。
中でも、一例として下記式(I)に示される分子構造を有するフルオロシルセスキオキサンが特に好ましい。
すなわち、シルセスキオキサンの構造であるランダム型構造、ラダー型構造、かご型構造のうち、特にかご型構造であることが好ましい。かご型構造のフルオロシルセスキオキサンを用いると、界面に集積するスピードを他の構造のものに比べ高めることができる。
入手のし易さを考慮すると、T8型、T10型、T12型のいずれか1の型であることが好ましい。
前述の式[(R−SiO1.5)n]における置換基(R)は、フルオロアルキル基(R)であることが好ましい。溶剤への溶解性を考慮すると、Rの炭素数は、1〜8であることが好ましい。Rは、直鎖の基であってもよく、分岐した基であってもよい。具体的には、直鎖の基として、−CHCHCF、−CHCHCFCF、−CHCHCFCFCF、−CHCHCFCFCFCF、−CHCHCFCFCFCFCF、−CHCHCFCFCFCFCFCF、分岐した基として、−CHCHCF(CF、−CHCH(CF)CFCF、−CH(CF)CHCFCF、−CHC(CFCF、−C(CFCHCF−CHCHCFCF(CF、−CHCHCF(CF)CFCF、−CHCHC(CFCF等を例示することが
できる。なお、Rは、それぞれ相違する基であっても、すべて同一の基であってもよい。
上記式(I)には、1つのSiに「3−(メタクリロイルオキシ)プロピル」を有するフルオロシルセスキオキサンを例示しているが、この官能基に限られるものではない。例えば、「3−(メタクリロイルオキシ)プロピル」の位置をZとした場合、この位置を他の官能基に置き換えることができる。具体的には、Zとして、水素、水酸基、アルケニル、またはハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素)、アルコキシ、フェノキシ、ポリアルキレンオキシ、−COOH、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル、アルコキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、オキシラニル、3、4−エポキシシクロヘキシル、オキセタニル、オキセタニレン、−NH−、−NH、−CN、−NCO、アルケニル、アルキニル、シクロアルケニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、ウレタンアクリロイル、ウレタンメタクリロイル、−SHおよび−PHのいずれかの基とすることができる。さらに、Zとして、アルキレンを介した上記Zの具体例として挙げた基としてもよい。Siに結合するアルキレンは特に限定されないが、炭素数が1〜8のアルキレンが好ましく、炭素数が3のプロピレンが特に好ましい。但し、選択範囲には、アルカノイルオキシを有する基、ハロゲン化スルフォニルを有する基およびα−ハロエステル基を有する基は含まれない。
(フルオロシルセスキオキサン重合体)
硬化性樹脂組成物が含有するフルオロシルセスキオキサン重合体は、官能基が重合性の基である場合には、フルオロシルセスキオキサンの単一重合体とすることができるし、他の一般的な単量体(例えば、付加重合性単量体)との共重合体とすることもできる。異なる重合性の基を有するフルオロシルセスキオキサン同士の共重合体としてもよい。このとき、重合の方法は公知の方法のいずれであっても採用できる。このように、本発明の保護フィルムに用いるフルオロシルセスキオキサンは、フルオロシルセスキオキサン重合体であってもよい。
すなわち、上記式(I)のフルオロシルセスキオキサンは、Zとして付加重合性官能基を有してもよい。または、Zとしてアルキレンを介して付加重合性官能基を有してもよい。付加重合性官能基の例としては、末端オレフィン型または内部オレフィン型のラジカル重合性官能基を有する基;ビニルエーテル、プロペニルエーテルなどのカチオン重合性官能基を有する基;およびビニルカルボキシル、シアノアクリロイルなどのアニオン重合性官能基を有する基が含まれるが、好ましくはラジカル重合性官能基が挙げられる。
上記のラジカル重合性官能基には、ラジカル重合する基であれば特に制限はなく、例えばメタクリロイル、アクリロイル、アリル、スチリル、α−メチルスチリル、ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルアミド、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、N−置換マレイミドなどが含まれ、中でも(メタ)アクリルまたはスチリルを含む基が好ましい。ここに(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。以下、同様とする。
上記の(メタ)アクリルを有するラジカル重合性官能基の例には、以下の式(II)に示される基が含まれる。式(II)においてYは、炭素数2〜10のアルキレンを示し、好ましくは炭素数2〜6のアルキレンを示し、さらに好ましくはプロピレンを示す。またXは、水素または炭素数1〜3のアルキルを示し、好ましくは水素またはメチルを示す。
また、上記のスチリルを有するラジカル重合性官能基の例には、以下の式(III)に
示される基が含まれる。式(III)においてYは、単結合または炭素数1〜10のアルキレンを示し、好ましくは単結合または炭素数1〜6のアルキレンを示し、より好ましくは単結合またはエチレンを示す。またビニルは、ベンゼン環のいずれかの炭素に結合しており、好ましくはYに対してパラ位の炭素に結合している。
(付加重合性単量体)
付加重合性単量体には、架橋性官能基を有するものと架橋性官能基を有さないものがある。
・架橋性官能基を有する付加重合性単量体
前記の架橋性官能基を有する付加重合性単量体は、1つまたは2つ以上の付加重合性二重結合を有する化合物であればよく、例えば、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物のいずれでもよく、さらに具体的には、(メタ)アクリル酸化合物またはスチレン化合物などが例示される。
上記の(メタ)アクリル酸化合物の例には、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの他、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリロニトリルなどが含まれる。
前記の付加重合性単量体の(メタ)アクリル酸化合物の例として架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートがある。かかる架橋性官能基の例には、グリシジルおよびエポキシシクロヘキシルなどのエポキシ、オキセタニル、イソシアナト、酸無水物、カルボキシル、ならびにヒドロキシルなどが含まれるが、好ましくはグリシジルなどのエポキシやオキセタニルである。上記の架橋性官能基を有する(メタ)アクリレートの具体例には、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ含有(メタ)アクリレート;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ含有(メタ)アクリレート;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタニル含有(メタ)アクリレート;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート;γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン;(メタ)アクリレート−2−アミノエチル、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート;1−(メタ)アクリロキシ−2−フェニル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ)エタン、1−(4−((4−(メタ)アクリロキシ)エトキシエチル)フェニルエトキシ)ピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート;などが含まれる。
上記の1つの付加重合性二重結合を有するスチレン化合物の例には、架橋性官能基を有するスチレン化合物がある。かかる架橋性官能基の具体例には、グリシジルなどのエポキシ、オキセタニル、ハロ、アミノ、イソシアナト、酸無水物、カルボキシル、ヒドロキシル、チオール、シロキシなどが含まれる。
架橋性官能基を有するスチレン化合物の例には、o−アミノスチレン、p−スチレンクロロスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその塩、ビニルフェニルメチルジチオカルバメート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)スチレン、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)スチレン、1−(2−((4−ビニルフェニル)メトキシ)−1−フェニルエトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンや、下記式に示される化合物が含まれる。
前記の付加重合性単量体に加え、硬化性樹脂との相溶性、レベリング性、共重合体中の架橋性官能基量などをコントロールするため、必要に応じて前記付加重合性単量体以外の付加重合性単量体も併用することができる。
・架橋性官能基を有さない付加重合性単量体
架橋性官能基を有さない付加重合性単量体としては、1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル酸化合物および1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さないスチレン化合物が挙げられる。かかる(メタ)アクリル酸化合物の具体例には、;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアリールアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物;などが含まれる。
上記の1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル酸化合物の具体例には、さらに、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジパーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、および2−パーフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートなどのフルオロアルキル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
さらに、1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル酸化合物の例には、シルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリル酸化合物がある。かかるシルセスキオキサン骨格を有する(メタ)アクリル酸化合物の具体例には、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチル−ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メ
タ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレートなどが含まれる。上記の1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さないスチレン化合物の具体例には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン;などが含まれる。
上記の1つの付加重合性二重結合を有し、架橋性官能基を有さないスチレン化合物の例としては、さらに、シルセスキオキサンを含むスチレン化合物が含まれる。かかるシルセスキオキサンを含むスチレン誘導例には、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、および1−(4−ビニルフェニル)−3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサンなどの、4−ビニルフェニル基を有するオクタシロキサン(T8型シルセスキオキサン);および、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−(3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタエチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタイソオクチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレン、および3−((3,5,7,9,11,13,15−ヘプタフェニルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン−1−イルオキシ)ジメチルシリル)エチルスチレンなどの、4−ビニルフェニルエチル基を有するオクタシロキサン(T8型シルセスキオキサン);などが含まれる。
さらに、前記付加重合性単量体以外の付加重合性単量体として、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン、およびアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどから誘導された主鎖を有し、一つの重合性二重結合を有するマクロ単量体も例示される。
付加重合性単量体の例には、二つの付加重合性二重結合を有する化合物も含まれる。二つの付加重合性二重結合を有する化合物の例には、1,3−ブタンジオール=ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール=ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール=ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール=ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール=ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール=ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン=ジ(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕ビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクリロイルオキシエトキシ〕テトラブロモビスフェノールA、ビス〔(メタ)アクリロキシポリエトキシ〕ビスフェノールA、1,3−ビス(ヒドロキシエチル)5,5−ジメチルヒダントイン、3−メチルペンタンジオール=ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール化合物のジ(メタ)アクリレートおよびビス〔(メタ)アクリロイルオキシプロピル〕テトラメチルジシロキサン等のジ(メタ)アクリレート系単量体、ジビニルベンゼンが含まれる。
さらに、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン、およびアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどから誘導された主鎖を有し、二つの重合性二重結合を有するマクロ単量体も例示される。
付加重合性単量体の例には、付加重合性二重結合を三つ以上有する化合物も含まれる。付加重合性二重結合を三つ以上有する化合物の例には、トリメチロールプロパン=トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール=トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール=テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール=モノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアネート)=トリ(メタ)アクリレート、トリス(ジエチレングリコール)トリメリート=トリ(メタ)アクリレート、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタエチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソブチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタイソオクチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、3,7,14−トリス[(((メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ)]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタフェニルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、オクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサンおよびオクタキス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)オクタシルセスキオキサンが含まれる。
さらに、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン、およびアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどから誘導された主鎖を有し、重合性二重結合を三つ以上有するマクロ単量体も例示される。
付加重合性単量体は、好ましくは(メタ)アクリル酸化合物であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸の、低級アルキル(例えば炭素数1〜3)エステルや、架橋性官能基を有するエステルなどである。
フルオロシルセスキオキサン重合体は、フルオロシルセスキオキサンの付加重合体または、他の付加重合性単量体との付加共重合体であり、共重合体である場合は、ブロック共重合などの定序性共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよいが、好ましくは
ランダム共重合体である。また、重合体は架橋構造を有していてもよく、グラフト共重合体であってもよい。
[粘着層13/剥離フィルム14]
粘着層13は、図1に示すように、耐衝撃性付与層15の基材フィルム11面側と反対側に粘着剤を塗布して形成される。粘着層は、耐衝撃性付与層15の面上に直接形成してもよく、耐衝撃性付与層15との間に他層を介して積層してもよい。
<粘着剤>
粘着層13に用いる粘着剤としては、本発明の効果を妨げない限り限定されないが、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを使用することが可能である。これらの粘着剤を単独で用いてもよいし、複数の粘着剤を組合せて用いてもよい。粘着剤は、公知の手法により合成したもの又は市販のものを用いることができる。製品設計の面から長期間の耐久性を必要とする用途では耐熱性・耐候性に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
本発明の粘着層13では、被着体となる物品への貼り付け特性の面から、粘着剤表面に凹凸を設ける。
・アクリル系粘着剤
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルを主体とするモノマー成分にカルボキシル基やヒドロキシル基などの官能基を有するモノマー成分を共重合したアクリル系共重合体を含むアクリル系粘着剤を挙げることができる。
アクリル酸エステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種または2種以上を用いることができる。
上記アルキル(メタ)アクリレートに下記モノマー成分を共重合することができる。共重合可能なモノマー成分としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アク
リルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルピロリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素モノマー、スチレンやスチレンの誘導体、酢酸ビニル等のモノマー等が挙げられる。これらのモノマーを必要に応じて、1種または2種以上を、(メタ)アクリル酸エステルに共重合させて使用することができる。
本発明に用いられる粘着剤は、例えば、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルからなる群から選ばれた少なくとも1種類と、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれた少なくとも1種類のカルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。
本発明に用いられる粘着剤は、耐熱性・耐候性の向上に、例えば、アクリル酸メチルおよび酢酸ビニル等の硬質成分を添加しガラス転移温度(Tg)を上げた。このようなガラス転移温度の調整に用いる硬質成分としては、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルが挙げられる。
なお、耐候性等の各種物性のさらなる向上のため、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤等を添加してもよい。
硬質成分の割合としては、粘着剤全量に対して10〜80重量%であり、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万〜200万であり、10万〜150万が好ましく、15万〜100万がより好ましい。
数平均分子量(Mn)は1万〜50万であり、1万〜40万が好ましく、1万〜30万がより好ましい。
分散値は1〜20であり、1〜15が好ましく、2〜10がより好ましい。
ガラス転移温度は−70〜0℃であり、−40〜0℃が好ましく、−30〜0℃がより好ましく、−20〜0℃が特に好ましい。
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、グラフト天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体を挙げることができる。
ウレタン系粘着剤としては、イソシアネート基とヒドロキシル基をもつ化合物同士を縮合し得られるポリウレタンからなる粘着剤を挙げることができる。イソシアネート基を持つ化合物(イソシアネート)としては、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、NDI(ナフタレンジイソシアネート)等が挙げられる。ヒドロキシル基を持つ化合物(ポリオール)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアゼラエートグリコール、ポリカプロラクトングリコール等が挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、過酸化物硬化型と付加型のどちらの型も使用することができる。
粘着層13となる組成物を剥離フィルム14または基材フィルム11に塗布するには、通常行われているグラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ホットメルトコート法、カーテンコート法等で行うことができる。
粘着層13の厚みは、貼り付け後の密着性の面から10μm〜100μmであり、15μm〜50μmが好ましく、25μm〜45μmがより好ましい。
粘着層13は、凹凸が形成された剥離フィルム14を貼り合わせて、凹凸を転写することで、物理的に表面凹凸を形成する。貼り付け特性の良好な粘着層13の表面凹凸としては、算術平均粗さR(a)=300nm〜800nmであり、350nm〜750nmが好ましく、400nmから700nmがより好ましい。
剥離フィルム14としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などのプラスチックフィルム、セロハン、グラシン紙などの目止処理された紙を用いることができる。さらに、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤を片面または両面にコーティングした、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンの樹脂フィルム等を用いることができる。剥離フィルムは、公知の手法により合成したもの又は市販のものを用いることができる。
剥離フィルムの厚さは使用する材料によって多少異なるが、通常は10〜250μmであり、20〜200μmが好ましい。
剥離フィルム14に形成する表面凹凸は、算術平均粗さR(a)=350〜850nmであり、400〜800nmが好ましく、450〜750nmがより好ましい。凹凸を形成する方法は、公知の方法を用いることができる。
なお、算術平均粗さR(a)とは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さ(下記式中Lの小文字)だけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値である。一つの傷が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果が得られるため、好ましい。
本発明の粘着層は、剥離フィルムから剥離された後にも、短時間(剥がした直後から10〜120分、好ましくは20〜90分、特に好ましくは30〜60分)の間、凹凸形状と寸法を保持でき、その後、対象となる被着体との貼り付けが開始された後には、この形状は適用された圧力の援助も受けて容易に消え、被着体に追従して均一に貼り付けがなされる。この貼り付けのもう1つの特徴は、上記のような表面粗さを持たない剥離フィルムを用いた場合には、凹凸形状の崩れが早すぎて被着体との付着に均一性がなくなり、気泡・水疱の抜け性にも支障をきたす。
本発明の粘着層を有する保護フィルムでは、貼り合わせ時に、隣接する未付着部の粘着層凹部を次々に使いながら急速に泡抜けが進行している(泡が抜けた粘着剤面が次々に被着体と合体粘着して行く)。
また、このような貼り付け法を使用した場合には、貼り付け完成後に長期使用に向かったときにも、泡が次第に発展することが極めて少なく、この保護フィルムが実際に用いら
れる被着体と粘着層との間に泡による局部的な物理的欠陥部や空気(酸素)を含んだ化学的欠陥部を発展させることもなく、長時間使用時にも、初期力学性質(耐チッピング性、耐衝撃性)、初期耐熱性、初期耐候性、さらに初期剥離性(糊残りなし)がほぼ維持され、新規で画期的な保護フィルムが見出されている。
[保護フィルム]
本発明の保護フィルムは、表面層により高い撥水性・防汚性を有するとともに、粘着層によりフローリングなどの床材等の物品に対する高い貼り付け特性を有する。また、基材フィルムに凹凸を施すことにより、反射率を抑えられ、テカリを抑え、マット感を持たせることができる。さらに、硬化性樹脂が熱可塑性ポリウレタンの内部に浸透し、基材フィルムの一部と一体化した表面層を形成する。そのため、破断伸びが高く、被着体としての物品の表面が曲面を有する等の複雑な形状であっても、容易に貼りつけることができる。また、優れた耐衝撃性及び施工性を有する。さらに、粘着面の表面粗さをコントロールすることにより、被着体に対する貼り付け特性(水、空気の泡抜け)を著しく向上させている。さらに、粘着層は、耐熱性、耐候性に優れるため、剥がした後であっても糊残りがない。
[保護フィルム用積層体]
本発明の保護フィルム用積層体は、被着体に貼りつけるまでは、粘着層の粘着面は剥離性の高い剥離フィルムにより保護されるため、粘着性を劣化させることなく流通、運搬することができる。
[表面保護物品]
本発明の第2の実施の形態に係る表面保護物品について説明する。本発明の保護フィルムは上記のとおり、防汚性、耐衝撃性、防眩性、貼り付け特性に優れているため、塗面保護が求められる各種被着体(物品)に添付することにより、物品の意匠性を損なわず、物品の保護が可能である。本発明の保護フィルムを貼付する被着体(物品)としては、限定されないが、例えば、建築材等、建築物(床面、壁面、天井等の内装材等)、ディスプレイ等を挙げることができる。本発明の保護フィルムを貼付する被着体(物品)としては、好ましくは、床材である。
[保護フィルムの製造方法]
本発明の第2の実施の形態に係る保護フィルムの製造方法について説明する。
本発明の保護フィルムの製造方法は、熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルムを提供する工程と、基材フィルムの第一の面側に耐衝撃性付与層を形成する工程と、前記耐衝撃性付与層の基材フィルム面側と反対側に粘着層を形成する工程と、基材フィルムの、第一の面とは反対側の第二の面上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化性樹脂組成物を基材フィルムに浸透させる工程と、硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射又は加熱する工程とを備え、硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂とを含有する。
本発明の保護フィルムの製造方法の各工程は、保護フィルムが上記特定の構成を有する以外は、公知の方法及び本明細書に記載の方法に基づいて行うことができる。
以下、本発明を、実施例を参照してさらに詳細に説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されることはない。
以下に保護フィルムの特性評価結果を示す。
[製造例1:重合体A−1の合成]
還流器、滴下漏斗を取り付けた窒素シールされた4口丸底フラスコ中に化合物A(25
g)、サイラプレーンFM0721(6.25g、JNC(株)製)、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル(18.75g)、メタクリル酸メチル(12.5g)、メチルエチルケトン(61.97g)を加え、オイルバスを用い15分還流・脱気させた後、アゾビスイソブチロニトリル(0.477g)、メルカプト酢酸(0.054g)をメチルエチルケトン(4.78g)に溶解させた溶液を投入し、重合を開始させた。重合開始3時間後にアゾビスイソブチロニトリル(0.477g)をメチルエチルケトン(4.29g)に溶解させ添加し、5時間熟成させ得られた共重合体の溶液を得た。さらに重合禁止剤としてパラメトキシフェノール(0.16g)、ジラウリル酸ジブチルスズ(0.154g、昭和電工(株)製)をメチルエチルケトン(1.54g)に溶解させ添加した後、カレンズAOI(26.43g)を液温35℃から50℃となるように滴下漏斗を用いて滴下し、滴下後3時間45℃で熟成させた。
その後メタノール(9g)を添加し処理した後、さらにパラメトキシフェノール(0.16g)を加え、これをメチルイソブチルケトン(107.34g)で希釈することで目的とする重合体A−1の30重量%溶液を得た。
得られた重合体A−1は、重量平均分子量:Mw42,000、多分散指数:Mw/Mn1.9であった。重量平均分子量、多分散指数は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、型番:アライアンス2695、ウォーターズ社製、カラム:Shodex GPC KF−804L x 2本(直列)、ガードカラム:KF−G)を用いて測定した。
化合物Aは、下記式(IV)に示される分子構造を有する。
[製造例2:コーティング剤Aの調製]
重合体A−1(2.22g)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(57.46g)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(3.19g)、ウレタンアクリレート官能基を有するウレタンアクリレートオリゴマー(6.02g)、α−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤(3.19g)、メチルイソブチルケトン(97.91g)、酢酸エチル(56.67g)を0.5Lスケールのステンレス製ボトルに加え、攪拌羽にて1時間攪拌し、固形成分(有効成分)30重量%のコーティング剤Aを得た。
[製造例3:粘着剤Aの調製]
アクリル酸ブチル40〜55重量部、アクリル酸メチル40〜55重量部、酢酸ビニル1〜15重量部およびカルボキシル基含有アクリル酸化物0.1〜3重量部を含む共重合体であるアクリル粘着剤Aに酢酸エチル30重量部を加え、撹拌羽で30分、23℃で撹拌し、固形分23重量%、粘度1000CPSに調整した。粘着剤Aの重量平均分子量(Mw)は55万、ガラス転移温度は−16℃である。
[製造例4:熱可塑性ポリウレタンフィルムAの調製]
熱可塑性ポリウレタンフィルム用の原料として、ESTAN ALR CL87A−V(ルーブリゾール社製 MI:5.0g/10min)を用い、小型二軸混練押し出し装置(テクノベル社製 KZW15TW)でフィルムに加工した。この装置は、押出機、供給部およびダイスから構成された。押出機は、L/D45のスクリューを具備した。ダイスは、幅150mm、リップ隙間が0.1〜1.0mmで調整可能な開口を有した。
押出機のヘッドの温度を200℃にセットした。ダイスの出口で、水を使用し、かつ鏡面仕上げの20℃の金属冷却ロールにフィルムを巻き取とった。その際に、反対面にポリエチレンテレフタラート製保護剥離フィルムを挟み、エンボス加工されたゴムロールを押し当てることにより、片面がシボ加工(表面粗さ1μm)されたシートを形成させた(図3)。その後、20℃に冷却させる事で厚み100μmの熱可塑性ポリウレタンフィルムAを得た。
[製造例5:熱可塑性ポリウレタンフィルムBの調製]
熱可塑性ポリウレタンフィルム用の原料として、ESTAN ALR CL87A−V(ルーブリゾール社製 MI:5.0g/10min)を用い、小型二軸混練押し出し装置(テクノベル社製 KZW15TW)でフィルムに加工した。この装置は、押出機、供給部およびダイスから構成された。押出機は、L/D45のスクリューを具備した。ダイスは、幅150mm、リップ隙間が0.1〜1.0mmで調整可能な開口を有した。
押出機のヘッドの温度を200℃にセットした。ダイスの出口で、水を使用し、かつ鏡面仕上げの20℃の金属冷却ロールにフィルムを巻き取とった。その際に、反対面にポリエチレンテレフタラート製保護剥離フィルムを挟み、表面研磨加工されたゴムロールを押し当てることにより、表面が平滑なシートを形成させた。その後、20℃に冷却させる事で厚み100μmの熱可塑性ポリウレタンフィルムBを得た。
[製造例6:PET積層体熱可塑性ポリウレタンA]
製造例4で得られた熱可塑性ポリウレタンフィルムA基材のポリエチレンテレフタラート製保護剥離フィルムを剥がし、剥がした面側上に、ウレタン樹脂系接着剤(アイカ工業製;主剤(5g)、硬化剤(0.50g)、酢酸エチル(5g)で混合調製)を、その面にコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)で塗工し、80℃、2分乾燥をおこなった。その後、100μm PETフィルム(東洋紡製PET;A4300)を、ゴムローラーを用いて圧着し、40℃、3日間養生させてPET積層体熱可塑性ポリウレタンAを得た。
[製造例7:PET積層体熱可塑性ポリウレタンB]
製造例5で得られた熱可塑性ポリウレタンフィルムB基材のポリエチレンテレフタラート製保護剥離フィルムを剥がし、剥がした面側上に、ウレタン樹脂系接着剤(アイカ工業製;主剤(5g)、硬化剤(0.50g)、酢酸エチル(5g)で混合調製)を、その面にコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)で塗工し、80℃、2分乾燥をおこなった。その後、100μm PETフィルム(東洋紡製PET;A4300)を、ゴムローラーを用いて圧着し、40℃、3日間養生させてPET積層体熱可塑性ポリウレタンBを得た。
[製造例8:PET積層体熱可塑性ポリウレタンC]
製造例4で得られた熱可塑性ポリウレタンフィルムA基材のポリエチレンテレフタラート製保護剥離フィルムを剥がし、剥がした面側上に、ウレタン樹脂系接着剤(アイカ工業製;主剤(5g)、硬化剤(0.50g)、酢酸エチル(5g)で混合調製)を、その面にコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)で塗工し、80℃、2分乾燥をおこなった。その後、50μm PETフィルム(東レ製PET;ルミラー)
を、ゴムローラーを用いて圧着し、40℃、3日間養生させてPET積層体熱可塑性ポリウレタンCを得た。
[製造例9:PET積層体塩化ビニル樹脂基材A]
シボ加工された半透明塩化ビニル製シート(商品名:EA911AG、エスコ社製、厚み300μm)に、ウレタン樹脂系接着剤(アイカ工業製;主剤(5g)、硬化剤(0.50g)、酢酸エチル(5g)で混合調製)を、その面にコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)で塗工し、80℃、2分乾燥をおこなった。その後、100μmPETフィルム(東洋紡製PET;A4300)を、ゴムローラーを用いて圧着し、40℃、3日間養生させてPET塩化ビニル樹脂基材Aを得た。
[実施例1:積層体1の調製]
調製したPET積層体熱可塑性ポリウレタンフィルムAのシボ加工された面とは反対面上に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、シボ加工された面上にコーティング剤AをコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体1を得た。
[実施例2:積層体2の調製]
調製したPET積層体熱可塑性ポリウレタンフィルムBに、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、粘着剤を塗布した面とは反対面上にコーティング剤AをコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体2を得た。
[実施例3:積層体3の調製]
調製したPET積層体熱可塑性ポリウレタンフィルムCのシボ加工された面とは反対面上に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、シボ加工された面上にコーティング剤AをコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体3を得た。
[比較例1:積層体4の調製]
調製したPET積層体熱可塑性ポリウレタンフィルムAのシボ加工された面とは反対面上に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、シ
ボ加工された面上に希釈溶媒として酢酸エチルで固形成分(有効成分)30重量%に調整したフォルシード300C(紫外線硬化形アクリル樹脂塗料;中国塗料製)をコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体4を得た。
[比較例2:積層体5の調製]
調製した熱可塑性ポリウレタンフィルムAのポリエチレンテレフタラート製保護剥離フィルムを剥がし、剥がした面側上にダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、シボ加工された面上にコーティング剤AをコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体5を得た。
[比較例3:積層体6の調製]
製造例9で調製したPET積層体塩化ビニル樹脂基材Aのシボ加工された面とは反対面上に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、シボ加工された面上にコーティング剤AをコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体6を得た。
[比較例4:積層体7の調製]
半透明のポリエチレンテレフタレート製シート(商品名:PET ∪4 帝人社製、厚み200μm)に、ダイコートにより調製した粘着剤Aを塗布し、70℃×3分の条件で乾燥し、38μmの粘着層を形成させた。さらに、粘着層面上にシリコーン樹脂で剥離処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(剥離フィルムA、表面粗さ716nm)を、ゴムローラーを用いて圧着させ、45℃の環境で1日間養生を行った。その後、粘着剤を塗布した面とは反対面上にコーティング剤AをコーティングロッドNo.6(R.D.S.Webster社製)を用いて塗布し、90℃×3分の条件で乾燥に付した。その後、フュージョン製H−Bulbを備えたコンベアー式紫外線照射装置を用いて(積算光量:850mJ/cm)光硬化させ、積層体7を得た。
[比較例5]
評価用に使用する住宅用フローリング板を、比較例5とした。
[試験方法]
(1)耐油性(耐マジックインキ)
積層体の表面層を黒色油性マーカー(Sharpie製)で描画し、油性インキのはじき、およびダスパーK−3(小津産業(株)製)での拭き取り性を評価した。
(2)耐アルカリ&耐酸性
(i)耐酸性評価
積層体の表面層上に10%クエン酸水溶液を十分に含浸させた脱脂綿を置き、時計皿で覆い、18時間放置した。18時間後、その表面を脱脂綿で拭き取った後の表面状態を観察し、未処理のものと比較した。
(ii)耐アルカリ性評価
積層体の表面層上に5%次亜塩素酸ナトリウム溶液(商品名:ハイター(登録商標)、花王株式会社製)を十分に浸透させた脱脂綿を置き、耐酸性評価と同様にして耐アルカリ性評価を行った。
(3)フローリング板
評価用に使用する住宅用フローリング板として、基材に合板、その上に木目調に印刷を施した化粧単板を貼り合わせた複層フローリング板を用いた。
(4)モンキーレンチ落下打痕試験
水1Lをスプレーにて積層体から剥離フィルムを引き剥がした保護フィルムの粘着層面側、およびフローリング板(幅50mm、縦150mm、厚み12mm)上へ吹きつけ、積層体の粘着層面をゴム製のスキージで、水を押し出しながら、フローリング板に貼り付けた。その後、室温下で18h放置し、落下試験をした。
モンキーレンチ(TRUSCO製375mm、重量1.27kg)を100cm高さから落下させた際の凹みを測定。(JIS A 1408に準拠)
積層体を剥がした後のフローリング材表面の打痕の有無を観察し、打痕がないものを○、打痕があるものを×とした。
(5)テーバー磨耗
上記(4)と同様の手法でフローリング板の上に、積層体から剥離フィルムを引き剥がした保護フィルムを貼り合わせし、テーバー磨耗評価をおこなった。テーバー摩耗強度は、JIS K5400に準じて測定した。具体的には、総回転数2000rpm後の時点で、床材の表面まで磨耗が及び始めたかどうかを、目視により評価し、磨耗していないものを○、摩耗しているものを×とした。
その際の評価条件は以下の通りで行った。
装置 : (株)安田精機製作所 TaberABRASER
磨耗輪 : CS−0+S−42(粗目ペーパー)× 2
荷重 : 500g
回転速度 : 60rpm
バキューム距離: 3mm
備考 : 500回転毎に磨耗輪を新品に交換
測定環境 : 23℃ 50%RH
試験に使用するサンプルは23℃×50%RHの恒温恒湿機にて24時間調湿したものを用いた。
(6)粘着力
幅25mm、長さ200mmの大きさに裁断した積層体から剥離フィルムを引き剥がした保護フィルムを、SUS304板(幅50mm、縦150mm、厚み1.2mm 表面研磨済)上へ、2kgのゴムローラーを用いて、移動速度5mm/秒の速さで1往復圧着した。23±2℃、50±5%RHの環境下で24時間保管したのち、塗装板に貼り付けられた保護フィルムの粘着力を、引張試験機(ストログラフVG、(株)東洋精機製作所製)を用い、クロスヘッド荷重100N、クロスヘッド速度300mm/分の条件で測定した。
(7)マット感の評価
上記(4)に記載の手順によりフローリング板に保護フィルムを貼り付け後、JIS Z 8741−1997に準じて、60°の光沢度(グロス値)を、光沢計(VG 2000、日本電色製)測定した。
(8)フローリング板の木目調のみやすさ
20代〜40代の成人男女10人が住宅用フローリング板の上に実施例及び比較例で作製した保護フィルムを貼り合わせした後に、フローリング板の木目調の外観を損なっていないかを目視にて評価した。評価基準は、次の通りである。成人男女7人以上が感じたものを○、3〜6人であるものを△、2人以下であるものを×とした。
(9)糊残り
上記(4)と同様にフローリング板(幅50mm、縦150mm、厚み1.2mm)上へ保護フィルムを貼り付けた。その後、室温下で1日放置した後80℃に設定されたオーブン中で24時間加熱し、室温下で1時間以上放置した後塗装板に貼り付けられた保護フィルムを引き剥がし、塗装板の状態を目視にて観察した。判定は以下の基準にて判定をおこなった。
○:塗装面に糊残りなし。
△:塗装面にわずかに糊残りがある。
×:塗装面に全面に糊残りがある。
(10)コシ
床へ施工する際には、フィルムのコシ(硬さ)が必要となる。フィルムのコシの付与は、施工作業性が大幅に向上する。フィルムのコシの指標として、ループ状にしてループステフネステスタ(東洋精機株式会社製)を使用し、試料の幅を3mm、有効長さを80mmとし、圧縮速度3.5mm/秒で、ループを10mm押しつぶすのに要するつぶれ抵抗値(ステフネス値)を測定した。
ステフネス値が、30mN以上であれば、施工性の大幅な改善が認められる。
実施例1のコーティング剤Aを、フッ素化合物を含まないコーティング剤に置換した比較例1は、耐汚染性(耐油性、耐酸性、耐アルカリ性)が不十分であった。また、外観は、クラックが認められ、マット感が不十分でフローリング表面の外観が損なわれていた。これは、基材フィルムへのコーティング剤の浸透が不十分で基材フィルム上に蓄積されたことにより、防眩性が損なわれたことによると考えられる。
実施例1の耐衝撃性付与層を使用しない比較例2は、耐衝撃性(打痕試験)、コシが不十分であった。これは、耐衝撃性付与層を含まないことによると考えられる。
実施例1の基材フィルムをポリ塩化ビニルに置換した比較例3は、耐衝撃性(打痕試験)が不十分であった。これは、基材フィルムがポリウレタン樹脂のものに比較し、耐衝撃性に劣ることによると考えられる。また、耐汚染性(耐油性、耐酸性、耐アルカリ性)が不十分であった。これは基材フィルムにコーティング剤が多く浸透し、硬化性樹脂組成物の含有割合が、表面層の表面から基材フィルム内に向かって漸減するような構成にならなかったためと考えられる。
実施例1の基材フィルムをPET製シートに置換し、耐衝撃性付与層を使用しない比較例4は、耐衝撃性(打痕試験)および耐衝撃性(テーバー摩耗)が不十分であった。これは、基材フィルムがポリウレタン樹脂のものに比較し、耐衝撃性に劣ること、耐衝撃性付与層を含まないことによると考えられる。
保護フィルムを含まない比較例5に対し実施例1は、耐汚染性、耐衝撃性に優れ、フローリング表面と同様の外観を呈していた。また、耐衝撃性付与層(PET層)の厚みが、実施例1より50μm薄い実施例3についても、実施例1と同様に耐汚染性、耐衝撃性に優れ、フローリング表面と同様の外観を呈していた。実施例2は、実施例1と同様に耐汚染性、耐衝撃性に優れているが、表面に光沢感を呈していた。
また、実施例1及び2および3の保護フィルムは、コシが十分で施工性も優れていた。さらに、粘着性にも優れ、糊残りも少なかった。
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明
細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の変更および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
1 押出機
2 フラットダイ
3 冷却ロール
4 エンボスロール
5 プレッシャーロール
6 ピンチロール
7 セパレーター
8 凹凸転写フィルム
9 凹凸形状を有するフィルム
10 保護フィルム
11 基材フィルム
12 表面層
13 粘着層
14 剥離フィルム
15 耐衝撃性付与層
s1 表面
ss フッ素化合物

Claims (13)

  1. 熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルムと、
    前記基材フィルムの第一の面側に形成された耐衝撃性付与層と、前記耐衝撃性付与層の基材フィルム面側と反対側に形成された粘着層とを備える保護フィルムであって、
    前記基材フィルムは、前記第一の面の反対側の第二の面側に、前記熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂と硬化性樹脂組成物が混在した表面層を有し、
    前記硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂を含有する、
    保護フィルム。
  2. 前記耐衝撃性付与層は、ポリエステル樹脂、およびポリオレフィン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有し、
    前記フルオロシルセスキオキサンまたは前記フルオロシルセスキオキサン重合体は、かご型構造を有し、
    前記硬化性樹脂は、(メタ)アクリロイルを有する少なくとも1種の化合物の樹脂を含有し、
    前記粘着層は、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、およびシリコーン系から選ばれた少なくとも1種の樹脂で構成される、
    請求項1に記載の保護フィルム。
  3. 前記フルオロシルセスキオキサン重合体は、少なくとも1つの付加重合性官能基を有するフルオロシルセスキオキサンの付加重合体であるか、又は、少なくとも1つの付加重合性官能基を有するフルオロシルセスキオキサンと付加重合性単量体との付加共重合体である、
    請求項1又は2に記載の保護フィルム。
  4. 前記硬化性樹脂組成物の含有割合は、前記表面層の表面から基材フィルム内に向かって漸減するように構成されている、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルム。
  5. 前記基材フィルムの第二の面側のグロス値が20未満である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護フィルム。
  6. 前記基材フィルムの厚みは、50〜300μmである、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の保護フィルム。
  7. 前記耐衝撃性付与層の厚みは、20〜300μmである、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の保護フィルム。
  8. 前記粘着層の厚みは、10〜100μmであり、
    前記粘着層の表面粗さは、300〜800nmである、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の保護フィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の保護フィルムに対して、
    前記粘着層の前記基材フィルムと反対の面上に剥離フィルムが積層されており、
    前記剥離フィルムの前記粘着層に対する面の表面粗さは、350〜850nmである、
    保護フィルム用積層体。
  10. 前記粘着層は、前記表面粗さを示す凹凸形状を、前記剥離フィルムを剥がした後から10〜120分の間保持する、
    請求項9に記載の保護フィルム用積層体。
  11. 前記剥離フィルムは、前記粘着層に対する面に、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、および長鎖含有カルバメートから選ばれた少なくとも1種の剥離剤が塗布されている、
    請求項9又は10に記載の保護フィルム用積層体。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の保護フィルムと、
    前記保護フィルムが前記粘着層により表面に貼付された物品とを備えた、
    表面保護物品。
  13. 熱可塑性ポリウレタンを含む樹脂で形成された基材フィルムを提供する工程と、
    前記基材フィルムの第一の面側に耐衝撃性付与層を形成する工程と、
    前記耐衝撃性付与層の基材フィルム面側と反対側に粘着層を形成する工程と、
    前記基材フィルムの、前記第一の面とは反対側の第二の面上に硬化性樹脂組成物を塗布し、前記硬化性樹脂組成物を前記基材フィルムに浸透させる工程と、
    前記硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射又は加熱する工程とを備え、
    前記硬化性樹脂組成物は、フルオロシルセスキオキサン及びフルオロシルセスキオキサン重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のフッ素化合物と、硬化性樹脂とを含有する、
    保護フィルムの製造方法。
JP2018076423A 2018-04-11 2018-04-11 保護フィルムおよびその製造方法 Pending JP2019181828A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018076423A JP2019181828A (ja) 2018-04-11 2018-04-11 保護フィルムおよびその製造方法
PCT/JP2019/014531 WO2019198559A1 (ja) 2018-04-11 2019-04-01 保護フィルムおよびその製造方法
TW108112492A TW202003745A (zh) 2018-04-11 2019-04-10 保護膜及其製造方法、保護膜用積層體、表面保護物品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018076423A JP2019181828A (ja) 2018-04-11 2018-04-11 保護フィルムおよびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019181828A true JP2019181828A (ja) 2019-10-24

Family

ID=68338220

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018076423A Pending JP2019181828A (ja) 2018-04-11 2018-04-11 保護フィルムおよびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019181828A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6197117B2 (ja) 積層体、表面保護物品、積層体の製造方法
JP6241571B2 (ja) コーティング剤、皮膜、積層体、表面保護物品
WO2017047600A1 (ja) プラスチック修復用フィルム、表面保護物品、プラスチック修復用フィルムの製造方法
CN107207920B (zh) 半导体加工用粘合片
WO2018179475A1 (ja) 保護膜形成用複合シート
JP6298226B1 (ja) 保護膜形成用複合シート
JP2008074891A (ja) 熱硬化性または活性エネルギー線硬化性の組成物およびフィルム
JP6528259B2 (ja) 表面保護フィルム
JP2016186039A (ja) ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
JP2019181826A (ja) 保護フィルムおよびその製造方法
WO2015186717A1 (ja) ハードコート剤、硬化膜、成形物
WO2019198559A1 (ja) 保護フィルムおよびその製造方法
JP2019181828A (ja) 保護フィルムおよびその製造方法
JPWO2008026751A1 (ja) キャスト成形フィルム用組成物及びそれを用いてなるフィルム
WO2021125153A1 (ja) 粘着シート
JPWO2020067494A1 (ja) 表面保護用粘着シート
JP2020185731A (ja) 保護フィルムおよび表面保護物品
JP2017002104A (ja) ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及び積層フィルム
TW201940541A (zh) 活性能量射線硬化性樹脂組成物、硬化物及薄膜
TW202103955A (zh) 多層片材及轉印材
JP2019070123A (ja) 表面保護フィルム
JP2017002103A (ja) ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及び積層フィルム