本開示の実施形態について、単に例示として、添付の図面を参照して以下に説明する。実施形態において示す寸法、材料、その他の具体的な数値等は、開示内容の理解を容易とするための例示にすぎず、本開示を限定するものではない。尚、明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また、本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
気液接触部を形成する充填材として、並列する複数の平板を用いた場合、平板間を流れるガスの流通抵抗は比較的小さいので、ガス供給における圧力損失が少ない。従って、気液接触部を多段に構成しても、気液接触処理における消費エネルギーを低く抑えることが可能である。しかし、従来のように鉛直方向に積層させた縦型多段構造においては、重力負荷の観点から、段数の増加には限界がある。本開示では、気液接触部を、横方向に配列する多段構造に構成する、つまり、横型多段構造に構成することにより、高さの限界に関する問題を解消する。これにより、重力負荷の問題を回避しつつ、圧力損失が小さい気液接触部を多段階に構成することが可能であるので、処理対象のガスの状態に応じた適切な装置構成を設定可能である。また、回収装置の操業におけるエネルギー効率が良好で、好適に二酸化炭素を回収できる。
二酸化炭素の回収装置は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収装置と、吸収液に含まれる二酸化炭素を放出させて吸収液を再生する再生装置とを有し、吸収装置及び再生装置の何れも気液接触部を内部に有する。従って、吸収装置及び再生装置の何れを横型多段構造に構成してもよく、少なくとも一方を横型多段構造に構成することができる。つまり、吸収装置及び再生装置の一方を横型多段構造に構成し、他方を従来の縦型多段構造あるいは他の構造に構成して組み合わせることも可能である。以下において、横型多段構造に構成される吸収装置及び再生装置の実施形態を、図面を参照して、具体的に説明する。吸収装置及び再生装置は、吸収液を循環させる循環機構を用いてこれらを接続することによって、二酸化炭素の回収装置が構成され、吸収装置と再生装置の間で吸収液が循環して、二酸化炭素の吸収と吸収液の再生とが交互に繰り返される。尚、図面の理解を容易にするために、液体を供給する配管については、簡略化して実線で示す。
図1及び図2は、横型多段構造の吸収装置の一実施形態を示す。図において、吸収装置1は、基本構成として、気液接触部2と、液体供給機構3とを有する。具体的には、吸収装置1は、水平方向に細長く伸長した横長の容器21を有し、容器21内に気液接触部2が構成される。容器21は、長手方向に沿った天板21t、底板21b及び一対の側壁21sと、長手方向両端の端壁部21a,21dとを有する。容器21の形状は、略四角柱状であり、その長手方向に垂直な断面は略長方形である。容器21内の横長な空間に構成される気液接触部2は、容器21の長手方向に沿って横方向に配列するように割り当てられる複数の段2a,2b,2c,2dを有する。複数の段の各々において、充填材22として、間隔を空けて並列する複数の鉛直な平板P1が配設される。平板P1は、長方形の薄板であり、複数の平板P1を並列させることによって、全体として直方体形の気液接触空間が形成される。気液接触部2の各段は、従来構造における気液接触部の一段に相当し、各段において吸収液Lを上方から複数の鉛直な平板P1へ供給して流下させることによって、平板P1上に液膜が形成される。
尚、この実施形態において、気液接触部2には4つの段が割合てられているが、割り当てられる段の数は、2つ以上の何れの数であってもよい。必要に応じて、横方向に容器を延長して、配列する段数を増加することが可能であり、適切な数の段数に割り当てられる。また、この実施形態の気液接触部2において、段2a,2b,2c,2dは、実質的に均等に割り当てられ、同一寸法の平板P1が充填材22に用いられている。しかし、必要に応じて、気液接触部2における各段の長手方向の長さが異なるように、平板P1の幅(つまり、長手方向の長さ)を変更することも可能である。また、平板P1の厚さを変更して、並列する平板P1の間の空間の数又は幅を調整してもよい。
吸収装置1は、更に、吸収液Lを気液接触部2に供給して複数の段2a,2b,2c,2dを配列に沿って順次流通させる液体供給機構3を有する。液体供給機構3は、複数の段2a,2b,2c,2dの各々において上側に設けられる複数の液分配器31と、複数の段の各々において下側に設けられる複数の液回収口32と、複数の液分配器31と複数の液回収口32とを接続する配管33a〜33eとを有する。配管33a〜33eは、複数の段において1つの段の液回収口32と次に吸収液が供給される隣の段の液分配器31とが連通するように液分配器31と液回収口32とを接続する。容器21の底板21bは、段毎に中央が最も低くなるように傾斜した凹型に形成され、凹型の底部に液回収口32が設けられる。
吸収液Lは、配管33aを通じて段2a内の液分配器31に供給されると、液分配器31から平板P1へ供給される。平板P1の上方から平板P1の表面を伝って流下する吸収液Lは、底部に貯留され、液回収口32から配管33bへ排出される。配管33b〜33d上には、各々、1つの段の液回収口32と次の段の液分配器31との間にポンプ34が配置され、送液エネルギーを供給する動力源として作用する。ポンプ34の駆動によって、1つの段の液回収口32から次の段の液分配器31へ液体が送られる。従って、段2aの底部の液体は、次の段2bの液分配器31へ供給され、同様にして、後続の段2c,2dへの供給が順次行われる。このようにして、吸収液Lは、複数の段2a,2b,2c,2dを順次流通する。段2dの吸収液は、配管33eに設けられるポンプ34によって、液回収口32から外部に排出される。尚、配管33a〜33eを流れる吸収液の流量は、ポンプ34の駆動調整によって調節できるので、各段の底部に貯留される吸収液の量は、ポンプ34の駆動に基づいて調節可能である。しかし、必要に応じて、配管33b〜33eに流量調整弁を設置して、これを用いて吸収液の流量を調整してもよく、これにより調整精度が向上する。
また、吸収液Lの温度を調整するための冷却器35が、配管33b〜33d上に各々配置される。冷却器35として、冷媒との間接接触における熱移動を利用する熱交換を好適に利用可能であり、各種熱交換器から適宜選択して利用してよい。二酸化炭素の回収装置においては、概して、水を冷媒とする熱交換器である水冷式冷却器が用いられる。二酸化炭素の吸収は、発熱反応であるが、吸収液が段2aから段2dへ向かって順次流通する間に生じ得る吸収液の温度上昇は、冷却水等の冷媒を冷却器35に供給することによって解消される。冷却器35における冷却度の調整によって、供給する吸収液の温度を、段毎に、二酸化炭素の吸収処理に適した温度に調整することができる。尚、図1の実施形態では、配管33b〜33dに設置される冷却器35の数は、段数より1少ない数(段数−1)であり、段毎に吸収液の温度調整が行われる。このように、横型多段構造においては、配管33b〜33dを利用した熱交換器の配置によって、各段へ順次供給する吸収液の温度調整が容易に実施できる。縦型多段構造では設計的に難しい5段以上の気液接触部の温度制御も容易である。横型多段構造を利用することによって、例えば5〜20段程度のような極めて多段な気液接触部を的確に温度制御可能な吸収装置を提供することができる。吸収装置1に供給する吸収液Lの温度を予め調整するための冷却器を含めれば、最初の段を含む全段において供給する吸収液の温度が調整される。従って、段数と同数の冷却器によって、吸収液の温度を段毎に調整可能である。段毎の温度設定が可能であるので、気液接触部内において温度勾配を設けることも可能である。但し、冷却器35は、冷却の必要度に応じて使用すればよく、少なくとも1つの冷却器を用いて液体の温度調節を行うことができる。つまり、状況に応じて冷却器35を減数又は省略してもよい。
容器21は、気液接触部2にガスを供給するための管状のガス導入口41と、気液接触部2からガスを排出するための管状のガス排出口42とを有する。ガス導入口41は、容器21の一端における端壁部21dの中央に設けられ、ガス排出口42は、容器21の他端における端壁部21a中央に設けられる。ガス導入口41から供給されるガスは、段2dから段2aへ向かって、気液接触部2の段2a〜2dを順次流通する。ガス排出口42から排出されるガスGに微小液滴が同伴されて排出されるのを防止するために、デミスタ43がガス排出口42の近くに設置される。デミスタ43としては、金網、多孔板等の網状又は多孔質の部材が使用可能であり、一般的にデミスタとして利用されるものから選択して、通気幅に適した寸法に加工して使用すればよい。
気液接触部2の複数の段2a,2b,2c,2dの境界位置において、仕切り壁23,24が、容器21の天板21t及び底板21bから鉛直に立設される。但し、仕切り壁23,24の高さは小さく、段2a,2b,2c,2dの境界面は、各々、ほぼ全面的に開放される。つまり、複数の段2a,2b,2c,2dは、横方向に相互に連通する。図1において、ガスGがガス導入口41から供給されると、ガスGは、容器21の長手方向に沿って気液接触部2を流通し、段2dから段2aに向かって順に通過する。複数の段2a,2b,2c,2dの各々において、鉛直な平板P1は、ガスGが通過する方向に沿うように、容器21の長手方向に平行に配置されるので、供給されるガスGは、平板P1間の空間、及び、平板P1と側壁21sとの間の空間を真っ直ぐに通過する。つまり、ガスGは、複数の段2a,2b,2c,2dを横方向に直線的に貫通することができる。故に、流通抵抗によるガスGの圧力損失は低く抑えられる。
天板21t側の仕切り壁23は、ガスGが平板P1間の空間を回避してその上方を流れるのを防止する役割をする。従って、仕切り壁23の高さは、少なくとも、その下端が平板P1の上端に達するように設定され、平板P1の角に接する位置に設けられる。但し、過度の高さはガスGの流通抵抗を高める。また、底板21b側の仕切り壁24は、ガスGの流れが平板P1の下方に逃れるのを防止する役割をする。平板P1から流下して底部に貯留する液体の液面レベルが平板P1の下端に達して、平板P1の下端が貯留する液体に接触すると、ガスGの流れが平板P1を回避して下方を流れるのを確実に防止することができる。従って、仕切り壁24の高さは、各段に配置された平板P1の下端より高く、且つ、液体の貯留が確実に保持されるように設定するとよい。
尚、平板P1間の距離を適正に固定するスペーサーを使用する際に、仕切り壁23,24を利用してスペーサーを設置してもよい。或いは、平板P1の側端を嵌合可能な幅の浅い鉛直方向の溝を仕切り壁23,24の側面に形成すると、平板P1の側端を溝内で保持して位置決めすることが可能であるので、スペーサーとして機能する。
図1,2の構成において、液体供給機構3によって吸収液Lを吸収装置1に供給すると共に、ガス導入口41からガスGを供給すると、複数の段2a,2b,2c,2dの各々において、供給される吸収液Lが複数の鉛直な平板P1を流下する。同時に、供給されるガスGが平板P1の間を横方向に流通して交差し、吸収液LとガスGとが接触する。この実施形態では、液体供給機構3によって供給される吸収液Lが、複数の段2a,2b,2c,2dを流通する順序は、ガスGが複数の段2a,2b,2c,2dを流通する順序とは逆である。故に、吸収液L及びガスGの供給によって、気液接触部2全体として向流接触が実施される。
尚、図1の実施形態及び後述する実施形態において、ガスGの供給は、外部から供給されるガスGの流圧を利用して行うものとして、ガス供給用の動力源は特に記載されないが、必要に応じて、ポンプやファン等の送気手段を使用することができる。ガスの供給は、従来の縦型多段構造の吸収装置におけるガス流速と同程度で実施することができる。低めのガス流速になるように設定すると、気液接触効率を最適化する上で好適であり、概して、0.5〜1m/s程度のガス流速に設定するとよい。
ガスGと吸収液Lとを接触させる際のガスGの流通抵抗は、操業時の消費エネルギーを左右する。平板P1の厚さ及び間隔によって、充填材22における単位容積当たりの濡れ面積(気液接触面積)、ガス流量及びガスの流通抵抗が変化するので、これらを考慮して、好適な流通空間になるように並列する平板P1の数及び厚さが設定される。平板P1の間隔は、例えば、スペーサーを介在させて固定することができる。ガスG及び吸収液Lの流動を妨げないように、スペーサーの寸法及び設置位置を適宜調整すればよい。複数の平板P1を纏めてユニットとして一体化させるための外枠を用いてもよく、スペーサーを介して並列させた複数の平板P1の上端及び下端を外枠で固定すると、充填材22の装填作業が容易になる。
吸収装置1は、更に、ガス導入口41と気液接触部2との間に配置される脱硫部4と、気液接触部2とガス排出口42との間に配置される洗浄部5とを容器21内に有する。脱硫部4及び洗浄部5は、各々、気液接触部2の各段と同様に、並列する複数の鉛直な平板P2又は平板P3を用いて構成される。つまり、これらの長手方向に垂直な断面において、平板P2又は平板P3が、図2と同様の形態に所定間隔で並列する。平板P2,P3の設置については、気液接触部2と同様に、スペーサー、外枠等を利用して固定及び設置するとよい。
脱硫部4は、平板P2の上側に設けられる液分配器31D、下側に設けられる液回収口32D、及び、配管33Dを有し、配管33Dは、液分配器31Dと液回収口32Dとを接続する。配管33Dにはポンプ34D及び冷却器35Dが配設され、ポンプ34Dの駆動によって、脱硫液Dが液分配器31Dから平板P2へ供給される。ガスGと接触した脱硫液Dは、液回収口32Dから配管33Dを通じて液分配器31Dへ循環し、その間に冷却器35Dによって適宜冷却される。脱硫液Dとして、硫黄酸化物を吸収可能なアルカリ液が使用され、液分配器31Dから散布される脱硫液Dは、脱硫部4におけるガスGとの接触によって、ガスから硫黄酸化物を除去する。
脱硫部4と気液接触部2の段2dの境界位置において、仕切り壁25が、容器21の底板21bから鉛直に立設される。仕切り壁25の高さは、気液接触部の仕切り壁24より高く、脱硫部4の脱硫液Dが気液接触部2の吸収液Lに混入するのを確実に防止可能な高さに設定される。脱硫部4と気液接触部2との境界には、デミスタ44も設置され、脱硫液Dの微小液滴がガスGに同伴されて気液接触部2に移動するのを防止する。デミスタ44としては、金網、多孔板等の網状又は多孔質の部材が使用可能である。デミスタ44の下端が仕切り壁25の側面と接触するように、デミスタ44の下端の高さは、仕切り壁25の頂部の高さと同程度又はそれより下であるように設定され、仕切り壁25より平板P2に近い位置にデミスタ44が設置される。これにより、デミスタ44が捕獲した液滴を確実に脱硫部側に落下させることができ、液滴がガスに同伴するのを確実に防止する上で好適である。
洗浄部5は、平板P3の上側に設けられる液分配器31W、下側に設けられる液回収口32W、及び、液分配器31Wと液回収口32Wとを接続する配管33Wを有する。配管33Wにはポンプ34W及び冷却器35Wが配設され、ポンプ34Wの駆動によって、洗浄液Wが液分配器31Wから平板P3へ供給される。液分配器31Wから散布されてガスと接触した洗浄液Wは、液回収口32Wから配管33Wを通じて液分配器31Wへ循環し、その間に冷却器35Wによって適宜冷却される。洗浄液Wとして、吸収液Lの吸収剤成分であるアミノ化合物を取り込み可能な液が使用され、通常、水が使用される。洗浄部5における洗浄液Wとの接触によって、ガスが洗浄され、吸収剤の同伴が防止される。洗浄部5と気液接触部2の段2aの境界位置において、仕切り壁26,27が、容器21の天板21t及び底板21bから鉛直に立設される。天板21t側の仕切り壁26の高さは、その下端が平板P3の上端の高さと同じ又は近接するように設定され、ガスGが平板P3の上方を流れるのを抑制する。仕切り壁27の高さは、気液接触部の仕切り壁24より高く、気液接触部2の吸収液Lが洗浄部5に移行するのを防止する。
上記のように、この実施形態は、吸収液の流れとガスの流れが対向する向流の気液接触として構成されている。しかし、上記の吸収装置1は、必要に応じて並流型に構成してもよく、吸収液L及びガスGを同じ順序で複数の段に供給して並流の接触を実施することが可能である。その場合、吸収液Lを段2dから供給して、気液接触を経た吸収液L’を段2aから排出するように、液体供給機構3の配管33a〜33eの接続を変更すればよい。
充填材22に吸収液Lを供給するための液分配器31としては、一般的に使用されるものから適宜選択して使用することができる。ドリップポイントの密度(面積当たりの液体の供給点数)が100〜3000点/m2程度の液分配器を用いて良好な気液接触処理を実施できる。ドリップポイントの密度が500〜3000点/m2の液分配器を利用すると好適である。液分配器は、概して、液体を各ドリップポイントへ誘導し分配するための分配管を主体として構成され、分配管の各ドリップポイントに、開口、細管ノズル、誘導爪等のような液体を落下させる手段が設けられる。このような何れのタイプの液分配器も利用可能であり、液分配器に供給される液体は、分配管を通じて各ドリップポイントへ分配され、自由落下して充填材22へ供給される。脱硫液D又は洗浄液Wを供給するための液分配器31D,31Wについても、上記と同様である。
図1,2の実施形態においては、複数の段2a,2b,2c,2dの各々に、個別に、複数の平板P1が配設される。しかし、複数の段2a,2b,2c,2dは、相互に横方向に連通するので、段2a,2b,2c,2dにおいて共通の平板を使用するような変更も可能である。具体的には、気液接触部2の長手方向の長さ、つまり、複数の段2a,2b,2c,2dの長手方向の長さの合計に等しい長さを有する複数の平板を、複数の段2a,2b,2c,2dを貫通するように並列させてもよい。従って、鉛直な平板P1の各々として、複数の段2a,2b,2c,2dを通して一体的に連続する横長な平板を使用できる。この際、必要に応じて、各平板の上端及び下端に、仕切り壁23,24に嵌め込むための切り欠きを形成すると、良好に平板を設置することができる。或いは、仕切り壁23の下端及び仕切り壁24の上端に複数の溝を平行に形成して、平板を溝に嵌め込むようにしてもよい。この場合、溝を有する仕切り壁23,24は、平板の位置決め手段としても作用し得る。
図1,2の実施形態における気液接触部2の各段は、一列に並列する複数の平板による一段構造の充填材を用いて構成される。しかし、充填材の強度等の点において許容し得る範囲内で、縦型多段構造の充填材を用いることも可能である。例えば、図3のように、並列する平板Psを積載した複数段(図中では4段)構造の充填材22aを用いることができる。この場合、各段の間に、上段の平板Psを支持するための支持部材が介在する。
図3の例では、複数の細長い平板片Sを支持部材として使用し、平板Psに対して垂直方向に架け渡すように配置して上下の段の間に介在させる。このような平板片Sは、上段の平板Psから流下する液体を、下段の平板Psに対して垂直な方向に再分配する機能を有する。液体の再分配によって、濡れ不良による濡れ面積の減少を好適に防止することができる。但し、平板片Sによって、ガスの流通抵抗が生じるので、ガス流れに垂直な面において平板片Sが占める面積比が20%未満となるように、高さが低い平板片を用いることが好ましい。或いは、このような平板片Sを架け渡す代わりに、薄い多孔板や網板を平板Ps上に載せて用いると、ガスの流通抵抗を小さく抑えつつ支持部材として好適に機能し、平板Psを安定的に積載することができる。
次に、図1,2に示す気液接触部2と同様の気液接触部を有する横型多段構造の再生装置について説明する。図4は、横型多段構造の再生装置の一実施形態を示し、ガスから二酸化炭素を吸収した吸収液は、例えば、図4のような再生装置1Rによって再生することができる。図4において、再生装置1Rは、気液接触部2Rと、液体供給機構3Rとを有する。具体的には、再生装置1Rは、水平方向に細長く伸長した横長の容器21Rを有し、容器21R内に気液接触部2Rが構成される。容器21Rは、長手方向に沿った天板21u、底板21f及び一対の側壁(図示せず)と、長手方向両端の端壁部21a’,21d’とを有する。容器21Rの形状は、略四角柱状であり、その長手方向に垂直な断面は略長方形である。容器21R内の横長な空間に構成される気液接触部2Rは、吸収装置1と同様に、容器21Rの長手方向に沿って横方向に配列するように割り当てられる複数の段2a,2b,2c,2dを有する。
気液接触部2Rの複数の段の各々において、充填材として、間隔を空けて並列する複数の鉛直な平板P4が配設され、気液接触部2Rの長手方向に垂直な断面は、図1の吸収装置1と同様に、図2のような形態である。平板P4は、長方形の薄板であり、複数の平板P4を並列させることによって、全体として直方体形の気液接触空間が形成される。気液接触部2Rの各段において、吸収液L’を上方から複数の鉛直な平板P4へ供給して流下させることによって、平板P4上に液膜が形成される。尚、この実施形態において、気液接触部2Rには4つの段が割合てられているが、割り当てられる段の数は、2つ以上の何れの数であってもよく、必要に応じて段数を変更することが可能である。また、この実施形態の気液接触部2Rにおいて、段2a,2b,2c,2dは、実質的に均等に割り当てられ、同一寸法の平板P4が充填材に用いられているが、必要に応じて、各段の長手方向の長さが異なるように気液接触部2を変更することも可能である。各段の境界には、吸収装置1と同様に、仕切り壁23,24が設けられ、これらの具体構成は、吸収装置1のものと同様であるので、その説明は割愛する。更に、吸収装置1と同様に、再生装置1Rの充填材を、図3に示す充填材22aに変更してもよい。
再生装置1Rは、更に、吸収液L’を気液接触部2Rに供給して複数の段2a,2b,2c,2dを配列に沿って順次流通させる液体供給機構3Rを有する。液体供給機構3Rは、複数の液分配器31、複数の液回収口32、及び、配管33h〜33mを有し、配管33i〜33kは、複数の液分配器31と複数の液回収口32とを接続する。複数の液分配器31は、複数の段2a,2b,2c,2dの各々において平板P4の上側に設けられる。複数の液回収口32は、複数の段の各々において下側に設けられる。配管33h〜33mは、複数の段において1つの段の液回収口32と次に吸収液が供給される隣の段の液分配器31とが連通するように液分配器31と液回収口32とを接続する。容器21Rの底板21fは、段毎に中央が最も低くなるように傾斜した凹型に形成され、凹型の底部に液回収口32が設けられる。
吸収装置から排出される吸収液L’は、配管33hを通じて気液接触部2Rの段2a内の液分配器31に供給されると、液分配器31から平板P4へ供給される。平板P4の上方から平板P4の表面を伝って流下する吸収液L’は、底部に貯留され、液回収口32から配管33iへ排出される。配管33i〜33k上には、各々、送液エネルギーを供給する動力源として作用するポンプ34が配置され、ポンプ34の駆動によって、1つの段の液回収口32から次の段の液分配器31へ液体が送られる。従って、段2aの底部の吸収液は、次の段2bの液分配器31へ供給され、同様にして、後続の段2c,2dへの供給が順次行われる。このようにして、吸収液L’は、複数の段2a,2b,2c,2dを順次流通する。配管33h〜33mを流れる吸収液の流量は、ポンプ34の駆動調整によって調節できるが、必要に応じて、配管33h〜33mに流量調整弁を設置し、これを用いて吸収液の流量を調整してもよい。
再生装置1Rは、吸収液に再生熱を外部から供給するスチームヒーター36を有し、スチームヒーター36は、容器21Rの一端側に配置される。更に、配管33mから分岐する配管37が、ポンプ34’及びスチームヒーター36を介して、容器の一端の端壁部21d’に設けられる供給口38に連通するように接続される。従って、気液接触部2Rの段2dに貯留される吸収液は、ポンプ34’の駆動により配管37を通じて循環する間に、スチームヒーター36によって加熱され、概して110〜120℃程度の高温の吸収液が、気液接触部2Rの段2dに還流される。この結果、気液接触部2Rの段2dにおいて吸収液の再生が進行し、二酸化炭素が水蒸気と共に放出される。放出される二酸化炭素及び水蒸気によって、気液接触部2Rが加熱され、高温の吸収液は、気液接触部を加熱する加熱源としても機能する。再生装置1Rの容器21Rは、気液接触部2Rから放出される二酸化炭素を排出するための管状のガス排出口42Rを有する。ガス排出口42Rは、容器21Rの他端、つまり、スチームヒーター36と反対側における端壁部21a’の中央に設けられる。
加熱された吸収液から放出される二酸化炭素Cは、気液接触部2Rの段2dから段2aへ向かって、段2a〜2dを順次流通して、ガス排出口42Rから排出され、適宜回収される。排出される二酸化炭素Cに微小液滴が同伴し排出されるのを防止するために、デミスタ43がガス排出口42Rの近くに設置される。デミスタ43としては、金網、多孔板等の網状又は多孔質の部材が使用可能であり、一般的にデミスタとして利用されるものから選択して、通気幅に適した寸法に加工して使用すればよい。
図4の実施形態においては、吸収液の加熱源として、外部のスチームヒーター36を使用し、リボイラとして構成されるが、これに限定されない。例えば、容器21Rの内部にヒーターを設置する、或いは、投げ込みヒーター等のような移動可能な加熱手段を付設して、吸収液を直接加熱してもよい。
再生装置1Rは、更に、気液接触部2Rとガス排出口42Rとの間に配置される洗浄部5Rを容器21R内に有する。洗浄部5Rは、気液接触部2Rの各段と同様に、並列する複数の鉛直な平板P5を用いて構成される。平板P5の設置については、気液接触部2Rと同様に、スペーサー、外枠等を利用して設置するとよい。
洗浄部5Rの構成は、吸収装置1の洗浄部5と実質的に同じである。即ち、平板P5の上側に設けられる液分配器31W、下側に設けられる液回収口32W、及び、液分配器31Wと液回収口32Wとを接続する配管33Wを有する。配管33Wにはポンプ34W及び冷却器35Wが配設され、ポンプ34Wの駆動によって、洗浄液Wが液分配器31Wから平板P5へ供給される。二酸化炭素Cと接触した洗浄液Wは、液回収口32Wから配管33Wを通じて液分配器31Wへ循環し、その間に冷却器35Wによって適宜冷却される。洗浄液Wとして、吸収液Lの吸収剤成分を取り込み可能な液が使用され、通常、水が使用される。洗浄部5Rにおいて、二酸化炭素Cは洗浄され、吸収液の成分である吸収剤の同伴が防止される。更に、洗浄部5Rは、冷却手段としても機能し、洗浄液Wは、二酸化炭素C及び水蒸気を冷却するので、水蒸気は凝縮し、二酸化炭素Cと共にガス排出口42Rから排出される水蒸気は減少する。凝縮水によって洗浄液Wの量は増加し得るので、必要に応じて洗浄液Wを抜き出すとよい。これは、吸収液Lの濃度変動の補整に利用することができる。
洗浄部5と気液接触部2の段2aの境界位置において、仕切り壁26,27が、容器21Rの天板21u及び底板21fから鉛直に立設される。天板21u側の仕切り壁26の高さは、その下端が平板P5の上端の高さと同じ又は近接するように設定され、二酸化炭素Cが平板P5の上方を流れるのを抑制する。仕切り壁27の高さは、気液接触部の仕切り壁24より高く、気液接触部2Rの吸収液が洗浄部5Rに移行するのを防止する。
また、配管33h〜33kに熱交換器39が各々配置され、これらの熱交換器39を流れる吸収液は、配管33mを通じて気液接触部2Rの段2dから排出される吸収液Lとの熱交換によって順次加熱される。つまり、気液接触部2Rに供給される吸収液の温度は、段2aから段2dに向かって高くなり、温度に応じて吸収液の再生が進行して二酸化炭素が放出される。配管33mを流れる吸収液Lの温度は、熱交換を経る毎に低下し、吸収装置から供給される吸収液の温度に近い温度で吸収装置へ還流することができる。
尚、図4の実施形態では、配管33h〜33mに設置される熱交換器39の数は、気液接触部2Rの段数と同じであり、段毎に液体の温度が上昇する。しかし、熱交換器39の設置数は、必要度に応じて変更してもよく、熱交換器39の配分によって気液接触部2Rの温度分布を調節できる。熱交換器には、スパイラル式、プレート式、二重管式、多重円筒式、多重円管式、渦巻管式、渦巻板式、タンクコイル式、タンクジャケット式等の様々な種類がある。何れのタイプを使用してもよいが、装置の簡素化及び清掃分解の容易さの点ではプレート式が優れている。
図1に示す吸収装置1と、図4に示す再生装置1Rとを組み合わせると、吸収装置及び再生装置の両方が横型多段構造に構成された二酸化炭素の回収装置が得られる。具体的には、供給流路と還流流路とを有する吸収液の循環機構によって吸収装置1と再生装置1Rとが接続されるように構成する。循環機構の供給流路は、吸収装置1の液体供給機構3から再生装置1Rの液体供給機構3Rへ吸収液を供給する流路であり、吸収装置1の配管33eと再生装置1Rの配管33hとを配管で接続することによって構成される。還流流路は、再生装置の液体供給機構から吸収装置の液体供給機構へ吸収液を還流させる流路であり、再生装置1Rの配管33mと吸収装置1の配管33aとを配管で接続することによって構成される。
上述のように供給流路及び還流流路を構成することによって、吸収装置1の気液接触部2の段2dから配管33eを通じて排出される吸収液L’は、再生装置1Rの気液接触部2Rの段2aへ配管33hを通じて供給され、再生される。再生装置1Rの気液接触部2Rの段2dから配管33mを通じて排出される吸収液Lは、吸収装置1の気液接触部2の段2aへ配管33aを通じて供給される。つまり、吸収装置1の配管33e、及び、再生装置1Rの配管33hは、供給流路の一部を構成し、再生装置1Rの配管33m、及び、吸収装置1の配管33aは、還流流路の一部を構成する。再生装置1Rの液体供給機構3Rにおいて、配管33h〜33kと配管33mとの間で熱交換する熱交換器39は、還流流路の吸収液から熱を回収して再生装置1Rへ供給する役割をする。
図1,2に示す吸収装置1、及び、図4の再生装置1Rにおける気液接触部2,2Rは、平板P1による充填材22,又は、図3の平板Psによる充填材22aを用いて構成することができる。各段におけるガスの流通方向は、横方向(水平方向)で、液体が流下する方向(鉛直方向)と垂直に交差する。充填材22及び充填材22aは、縦方向及び横方向の何れにもガスを流通させることができるので、ガスGが鉛直方向に流通するような形態で使用することも可能である。
一方、図5のように、上段側の平板Psと下段側の平板Psとが互いにねじれの位置で垂直になるように平板を積載すると、支持部材を介在させずに多段構造の充填材22bを構成することができる。但し、充填材22bは、水平方向のガス流れについては流通抵抗が大きいので、鉛直方向に並流型又は向流型の気液接触を行うのに適している。充填材22bも、充填材22aと同様に、液体の再分配する機能を有し、鉛直方向のガス流れの流通抵抗は少ないので、有用な部材である。
そこで、並流型又は向流型の気液接触が可能な横型多段構造を有する吸収装置の実施形態について、図6〜10を参照して、以下に説明する。これらの実施形態においては、充填材22,22a,22bの何れを用いても気液接触部2を構成できる。尚、以下の実施形態においては、吸収装置は、図1の吸収装置1と同様に、脱硫部4及び洗浄部5を有し、その構造及び機能は実質的に吸収装置1と同様であるので、それらに関する説明は省略する。また、以下の実施形態における気液接触部の構造は、再生装置においても利用可能である。例えば、図4の再生装置1Rの気液接触部2Rを図7に示す構造の気液接触部に変更して、同様に、並流型又は向流型の気液接触が可能な横型多段構造の再生装置を構成することができる。
図6は、気液接触部の各段において並流型又は向流型の気液接触を行う吸収装置の一実施形態を示す。尚、図6の吸収装置11は、気液接触部2の各段に図1と同様の充填材22を装填する形態で記載される。しかし、前述から理解されるように、図3の充填材22a及び図5の充填材22bの何れか、又は、両方を適宜配分して、吸収装置11の気液接触部2の各段に装填して使用してもよい。
図6の吸収装置11は、図1の吸収装置1と同様に、4つの段2a,2b,2c,2dが割り当てられた気液接触部2と、吸収装置1と同様の液体供給機構3を有する。従って、液体供給機構3の配管33a〜33eを通じて気液接触部2の段2aから段2dへ向かって吸収液Lが順次供給される。各段において、液分配器31から供給される吸収液Lは、平板P1上を流下して液回収口32から回収され、ポンプ34によって隣の段へ送られる間に、冷却器35によって冷却されて適正な温度に調整される。
一方、ガスGの流通は、段毎に上昇及び下降を交互に繰り返すように構成される。具体的には、図1における仕切り壁24の一部は、図6において、伸長されて誘導壁24gに変更される。仕切り壁24が残される位置と、誘導壁24gに変更される位置は、複数の段の境界において交互に配置される。また、誘導壁24gが設けられる境界においては、図1の仕切り壁23は除去され、仕切り壁24が維持される境界においては、図1の仕切り壁23は、伸長されて誘導壁23gに変更される。従って、誘導壁23g及び誘導壁24gは、気液接触部2の複数の段2a,2b,2c,2dの境界において、交互に配置される。
誘導壁24gは、容器21の底板21bから上方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、上端と容器21の天板21tとの間に所定の間隔を空けるように設定される。従って、隣接する2つの段の境界の大部分は、誘導壁24gによって遮断され、2つの段は、誘導壁24gの上方の空間によって部分的に連通する。誘導壁23gは、容器21の天板21tから下方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、下端と仕切り壁24の上端との間に所定の間隔を空けるように設定される。従って、隣接する2つの段の境界の大部分が、誘導壁23gによって遮断され、2つの区間は、誘導壁23gの下方の空間によって部分的に連通する。
誘導壁23g及び誘導壁24gは、複数の段2a,2b,2c,2dの境界に交互に設けられるので、隣接する2つの段を相互に連通する空間は、気液接触部2の上側及び下側に交互に形成される。従って、ガス導入口41aから供給されるガスGは、気液接触部2を流れる間に、段毎に上昇と下降とを交互に繰り返して上下に蛇行し、その後、ガス排出口42aから排出される。つまり、気液接触部2全体としての吸収液LとガスGとの気液接触形態は、向流の気液接触であるが、段毎には、向流の気液接触と並流の気液接触が交互に行われる。更に、図6においては、図1の仕切り壁25,27を、鉛直方向に長く伸長する誘導壁25g、27gに変更しており、脱硫部4及び洗浄部5においても、気液接触部2におけるガスGの上下蛇行が連続するように構成している。
図1の吸収装置1においては、ガスGは横方向に流れるので、ガス導入口41及びガス排出口42は、各々、端壁部21d,21aの中央に設けられて、ガス流れの最上流位置の段2dから最下流位置の段2a迄のガス流れができる限り均等になるように構成される。これに対し、図6の吸収装置11は、ガス流れの最上流位置の脱硫部4においてガスGが上昇する構造であるので、ガスGを下方から脱硫部4へ供給するために、ガス導入口41aは、脱硫部4の端面(容器21の端壁部21d’)の下端に設けられる。また、最下流位置の洗浄部5におけるガスGは下降する構造であるので、ガスGを洗浄部5の下方から排出するために、ガス排出口42aも、洗浄部5の端面(端壁部21a’)の下端に設けられる。
誘導壁23g,24gの配置が逆になるように変更すると、ガスGの上昇/下降は逆転する。このような場合は、ガスGを上方から供給及び排出するために、ガス導入口41a及びガス排出口42aを端壁部21a’,21d’の上端に設けるように変更するとよい。この際、脱硫部4との境界、及び、洗浄部5との境界においても、天板21tから誘導壁を伸長して境界の下側で連通するように変更する。また、気液接触部2の段数を変更すると、ガスGの導入/排出位置の上下が変わる。図6の実施形態における気液接触部2の段数は偶数であるので、ガス導入口41aの配置とガス排出口42aの設置高さは一致する。気液接触部2の段数が奇数であるように変更する場合は、ガス導入口41a及びガス排出口42aの一方を端壁の上端に配置し、他方を下端に配置するように変更される。つまり、誘導壁23g,24gによって誘導されるガスGの流れに応じて、ガス導入口41a及びガス排出口42aの設置高さは適宜変更される。
尚、平板P1の側端を保持可能な鉛直方向の浅い溝を誘導壁23g,24gの側面に設けて平板P1の位置決めを可能にすると、図1の仕切り壁23,24と同様に、スペーサーとしての機能を付与できる。
図7は、気液接触部2の全段において向流の気液接触を行う吸収装置の一実施形態を示す。図7の吸収装置12も、気液接触部2の各段に、図1と同様の充填材22を装填する形態で記載されるが、前述したように、図3及び図5の充填材22a,22bの何れか、又は、両方を適宜配分して、装填して使用することができる。
図7の吸収装置12は、図1の吸収装置1と同様に、4つの段2a,2b,2c,2dが割り当てられた気液接触部2と、液体供給機構3を有する。液体供給機構3の配管33b〜33dを通じて、気液接触部2の段2aから段2dへ向かって吸収液Lが順次供給される。各段において、液分配器31から供給される吸収液Lは、平板P1上を流下して液回収口32から回収され、ポンプ34によって次の段へ送られる間に、冷却器35によって温度調整される。一方、ガスGの流れは、気液接触部2の全段において上昇し、向流の気液接触を行うように構成される。更に、脱硫部4及び洗浄部5においても、気液接触部2と同様にガスGが上昇するように構成されている。
具体的には、図7においては、複数の段2a,2b,2c,2dの境界の各々において、平行な誘導壁28及び誘導壁29が、容器21の長手方向と垂直に設けられ、誘導壁28と誘導壁29との間に一定幅の連通路30が形成される。誘導壁28は、容器21の底板21bから上方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、上端と容器21の天板21tとの間に所定の間隔を空けるように設定される。誘導壁29は、容器21の天板21tから下方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、下端と容器21の底板21bとの間に所定の間隔を空けるように設定される。連通路30は、誘導壁28と天板21tとの間の空間、及び、誘導壁29と底板21bとの間の空間において両隣りの段と連通する。従って、ガス導入口41bから供給されて段2dの平板P1の間を上昇するガスGは、誘導壁28の上方から連通路30を通って、次にガスが流通する隣の段2cの下部へ誘導される。
同様にして、後続の段の各々において、下方からのガス供給と上方からのガス排出が繰り返され、その間に、各段において平板P1の間を上昇するガスGと流下する吸収液Lとの気液接触が行われる。更に、脱硫部4及び洗浄部5の境界においても、気液接触部2の各段と同様に、誘導壁28,29が底板21b及び天板21tから立設され、ガスGが平板P2又は平板P3の間を上昇して連通路を下降する。つまり、この構造は、6段の気液接触部を形成して、両端の段を脱硫部4及び洗浄部5に割り当てる構造に相当する。但し、気液接触部2と洗浄部5との境界においては、吸収液Lと洗浄液Wとを分離するために、誘導壁29の下方において、底板21bに仕切り壁27が設けられる。
また、段2aの液分配器31から散布される吸収液Lがガス排出口42b側に流出した場合に吸収液Lが段2aの底部へ流れるように、段2aのガス排出口42b側に設けられる誘導壁28の根元には、連絡孔45が設けられる。洗浄部5においても、同様に、誘導壁28の根元に連絡孔46が設けられる。
図7の実施形態では、連通路30が、ガス流れの上流側の段の上部と下流側の段の下部とを接続するように形成されるので、ガス導入口41bは、脱硫部4の端面(端壁部21d’)の下端部に設けられる。一方、段2aの上部から排出されるガスG’は、洗浄部5を経て、誘導壁28と端壁部21a’との間の空間を下降するので、ガス排出口42bは、端壁部21a’の下端に設けられる。但し、この実施形態は、洗浄部5と端壁部21a’との間の誘導壁28を省略して、端壁部21a’と平板P3の間の連通路を省略してもよい。その場合、ガス排出口42bは、端壁部21a’の上端に設けられ、洗浄部5の上部から排出されるガスG’は容器21の上部から排出される。
また、図7の実施形態において、ガス導入口41b及び脱硫部4と、ガス排出口42b及び洗浄部5の配置を逆に変更すると、ガスGが、気液接触部2の各段において平板P1の間を下降するように流れて、吸収液LとガスGの並流の気液接触が行われる。この場合、ガスGは、段2aから段2dへ向かって流れるので、気液接触部2全体としても、ガスGと吸収液Lとの接触は、並流の気液接触となる。或いは、図7の実施形態において、誘導壁28及び誘導壁29の設置位置を逆にして、ガスGが気液接触部2の各段を下降するように変更することも可能である。この場合も、連通路30は、ガス流れの上流側の段の下部と下流側の段の上部とを接続するので、各段において、下降するガスGと液分配器31から流下する吸収液Lとの並流の気液接触が行なわれる。この変更形態では、ガス導入口41b及びガス排出口42bは、端壁部21d’,21a’の上端部に設ければよい。尚、平板P1の側端を保持可能な鉛直方向の浅い溝を誘導壁28,29の側面に設けて平板P1の位置決めを可能にすると、図1の仕切り壁23,24と同様に、スペーサーとしての機能を付与可能である。
図1の吸収装置1においては、ガスGは横方向に流れるので、充填材の上方に位置する液分配器31は、ガス供給の圧力損失には関与しない。図6,7の吸収装置11,12においては、ガスGの流れは、液分配器31付近で蛇行するので、やはり、ガス供給の圧力損失にはさほど関与しない。従って、気液接触部2が横長に構成された吸収装置では、液分配器31による圧力損失をあまり考慮しなくてもよいという利点がある。
上述の吸収装置1,11,12及び再生装置1Rは、状況に応じて好適な気液接触条件を設定するために、様々な変更を施すことが可能である。以下に、吸収装置における変更例を幾つか挙げて説明する。再生装置においても同様の変更を行うことができる。
上述の吸収装置1,11,12においては、装置に供給される吸収液が平板P1を流下する回数は、気液接触部2に割り当てられる段の数に対応する。この点は、例えば、図8に示す吸収装置11’のように変更すると、1つの段の液回収口32から回収される吸収液の一部が、次の段へ供給されずに元の段へ還流する。具体的には、配管33b〜33dから各々分岐して元の段の液分配器に接続する分岐管51a〜51cを設け、これにより、吸収液の一部は、同一段を繰り返し流れる。従って、吸収液Lが装置内に滞留する時間が長くなり、吸収液LとガスGとの接触時間が延長される。つまり、割り当てる段の数を増加するのと類似の効果が得られる。分岐管51a〜51cの各々に流量調整弁52を設けると、元の段へ還流する吸収液の割合の調整が可能になる。還流する吸収液の割合を増加するに従って、吸収液Lが装置内に滞留する時間を長くすることが可能である。尚、図8においては、図6の吸収装置11に分岐管51及び流量調整弁52を設ける変更例を記載するが、勿論、図1の吸収装置1又は図7の吸収装置12において同様の変更を行ってもよい。また、図4の再生装置1Rにおいて上記の変更を行ってもよい。
図8のように吸収液の一部が次の段へ供給されずに元の段へ還流する吸収液の供給は、他の形態によっても可能である。例えば、図9は、図1の実施形態において吸収液の一部の還流を可能にした変更例を示す。図9の吸収装置13においては、図8に示す分岐管は使用せず、段間の境界に設けられる仕切り壁24sの高さの設定によって、底部に貯留する吸収液の液面レベルを所望のレベルに維持可能な構造を利用する。つまり、液面レベルが仕切り壁24sの高さに達すると、吸収液の供給によって貯留する吸収液が溢れて隣の段へ移行する性質を利用して、吸収液を段2aから段2dへ向かって段階的に移行させる。これに伴って、図1の配管33b〜33dは、各段において底部に貯留する吸収液がその段の液分配器31に還流する配管に変更される。つまり、気液接触部2の各段、脱硫部4及び洗浄部5における液体の流通形態は、同様であり、液体を循環させて平板上を繰り返し流下させる。
具体的には、図9の吸収装置13の配管は、導入管33I、還流管33’及び導出管33Eによって構成される。導入管33Iは、最初に吸収液Lが供給される段2aの液分配器31に接続され、液分配器31から平板P1に供給される吸収液は、段2aの底部に流下する。還流管33’は、各段における液回収口32と液分配器31とが連通するように、複数の液分配器31と複数の液回収口32とを各々接続する。従って、還流管33’のポンプ34が駆動すると、液回収口32から回収される吸収液は、液分配器31に還流され、各段の平板P1に繰り返し散布される。導入管33Iからの吸収液Lの供給によって、段2aの底部に貯留する吸収液が増加し、仕切り壁24sの高さに達すると、新たな供給に対応する分量の吸収液が、段2aの底部から隣りの段2bへ溢れ出る。従って、各段に留まる吸収液は所定量に規制され、これを超えた時に超過分の吸収液が、次に吸収液が供給される段の底部に順次供給される。故に、次の段へ供給される吸収液と元の段へ還流する吸収液との割合は、仕切り壁24sの高さによって設定及び変更することができる。
吸収装置13は、吸収装置1と同様に、容器21の端壁部21dと段2dとの間に脱硫部4を有し、仕切り壁25によって脱硫部4と気液接触部2とが区画される。仕切り壁25と段2dの平板P1との間にも仕切り壁24sが設けられ、この仕切り壁24sを超えて溢れる吸収液を排出するための液回収口32’が、仕切り壁24sと仕切り壁25との間に設けられる。液回収口32’には、導出管33Eが接続される。従って、段2dにおいて底部に貯留する吸収液は、仕切り壁24sを超えて溢れ出ると、液回収口32’から導出管33Eを通って排出される。尚、図9においては、液回収口32’は、容器21の底部に設けられているが、容器の側壁に設けるように変更してもよい。その場合、液回収口32’を設ける高さによって、段2dの底部に貯留する吸収液の量を設定してもよく、液回収口32’の高さに到達した吸収液が溢れ出る。これにより、仕切り壁24sを省略できるので、仕切り壁25を段2dの平板P1に近づけて、気液接触部2の長手方向の長さを短縮できる。
図10は、図1の実施形態において吸収液の一部の還流を可能にした他の変更例を示す。図10の吸収装置14において、液体供給機構は、図1と同様の複数の液回収口32、及び、配管33a〜33eを有し、配管33b〜33dは、複数の液分配器と複数の液回収口とを接続する。但し、各段に設けられる液分配器31a〜31dについては、図10のように、設置位置が変更される。具体的には、液分配器31b,31c,31dの設置位置は、設置される段とその前の段の2つの段に跨って吸収液を供給可能なように変更している。これに伴い、仕切り壁の設置位置についても、図10の仕切り壁23mのように平板P1上に変更され、仕切り壁23mの高さは、平板P1の上端に当接する高さに設定される。
図10の形態において、複数の段2a〜2dの各々に設けられる複数の液分配器31a〜31dのうち、最初に吸収液が供給される段2aに設けられる液分配器31aは、長手方向(段の配列方向)の長さが図1の液分配器31より短い。他方、最後に吸収液が供給される段2dに設けられる液分配器31dは、長手方向の長さが長く、液分配器31aの短縮と液分配器31dの伸長は等しい。吸収液の供給順序が最初と最後の段を除いた段2b、2cの液分配器31b,31cは、図1の液分配器31と同じ長さである。つまり、最初に吸収液が供給される段を除く他の段の各々において、液分配器31b〜31dの各々は、設置される段とその前の段の2段に跨って吸収液を供給可能な位置に配置されている。従って、ポンプ34の駆動によって1つの段の液回収口32から配管33b〜33dを通じて次の段の液分配器へ吸収液が供給される点は、図1の実施形態と同様である。但し、液分配器へ供給される吸収液は、次の段の平板P1と、元の段の平板P1とに分配して供給される。
液分配器31b〜31dは、2つの段に跨って吸収液を供給するので、天板21tに設けられる仕切り壁23mの位置は、段の境界から外れている。仕切り壁23mの役割は、ガスGが平板P1間の空間から逃れて上部を通過するのを防止することであるので、その設置位置は、液分配器の位置変更に伴って、2つの液分配器の間の位置に変更される。
尚、図1、図9及び図10に示す吸収装置及び図4の再生装置の実施形態において、仕切り壁23,23mの設置数を増加すると遮蔽効果が増す。天板21tと液分配器との間を遮断するような形態の仕切り壁も有用である。
また、上述の実施形態におけるガスの導入形態は、必要に応じて他の形態への変更が可能である。図1及び図6〜10においては、ガス導入口41,41a,41bは、容器の長手方向に沿ってガスを導入するようにガス導入口が端壁部に設けられるが、これに限定されず、例えば、図11に示すように変更してもよい。図11は、図1の吸収装置において、ガス導入口41の代わりに円管状のガス導入管41pを用いて、容器21’の側壁21sから内部へガスを供給するように変更した例を示す。
図11において、ガス導入管41pは、容器21’の側壁21sを垂直に貫通して容器の中心軸に向かって延伸し、その先端が湾曲する。ガス導入管41pの先端部は、容器の中心軸に沿うように端壁部21e側に湾曲し、端壁部21eの中央に向かって開口する。従って、ガス導入管41pを通じて供給されるガスGは、容器21’の長手方向と垂直に容器21’の末端の内部空間に導入され、容器21’の中心軸に沿って端壁部21eの中央に向かって放出される。放出されたガスGは、端壁部21eに衝突した後、壁面に沿って中央から周辺へ拡がりつつ反転し、脱硫部4の平板P2間を長手方向に流通する。このように、ガスが容器21’の中心軸に沿って放出されるように、ガス導入管41pの開口位置及び放出方向を設定することにより、端壁部21eから反転するガスの流れは、比較的均等に拡がる。従って、並列する平板P2の全体にガスを均等に供給することができる。尚、容器の中心軸は、容器の内部空間の中心軸を意味するが、内部構造の複雑さ等を考慮せずに、ガスが流通する合理的な空間として、充填材の充填空間に単純化した中心軸であってもよい。これに基づいて、適宜修正が可能である。
図11に記載されるガス導入管41pは、容器内部にガスを導入する形態に関して変更することができる。例えば、ガス導入管41pが容器の上方から鉛直方向に天板21tを貫通するように変更してもよい。また、側壁21s又は天板21tに対して傾斜するように貫通してもよい。ガス導入管41pの先端部の位置及び開口方向が図11と同じであれば、ガスの導入形態を変更しても、同様に、ガスを均等に充填材に供給することができる。従って、外部から容器内部へガスを導入する方向は、必要に応じて変更することができ、吸収装置とガスの供給源との位置関係に応じて設計変更すればよい。
加圧又は減圧状態での気液接触を行う場合、通常、圧力に対応するために、圧力の作用が分散するように丸い形状の装置に設計される。吸収装置及び再生装置の横長な容器21,21Rは、様々な軸性形状に変更することができる。例えば、上述の吸収装置の実施形態において、圧力への対応を目的として、容器21が円柱形や楕円柱形のような丸い形状であるように変更してもよい。但し、この場合、容器の周状の側壁と平板P1の側端との間に弓形断面の空間が生じるので、ガスGが平板間の空間を回避して両横の空間を流れるのを防止するための遮断壁を、気液接触部の段の境界毎に設けるとよい。
尚、上述の点に関し、図3及び図5に示すような多段構造の充填材22a,22bにおいては、中段における平板Psの数又は横幅を最上段及び最下段より増加させることで、充填材の各段における横幅をある程度変動させることが可能である。従って、図3及び図5のような多段構造の充填材22a,22bを用いて、容器の側壁と充填材との空間がある程度減少するように変更することが可能である。この場合、多段構造の充填材の中段における平板Psにも吸収液を供給可能なように、液分配器のノズルや誘導爪等の長さ及び形状を改良するとよい。また、この場合も、容器の側壁と平板Psとの間をガスGが流れるのを防止する遮断壁を併用することができる。上述の点は、脱硫部4及び洗浄部5や、再生装置の気液接触部2R及び洗浄部5Rについても同様であり、充填材として使用される平板P2〜P5を図3のような形態に変更して対応することができる。
上述の実施形態において、吸収装置及び再生装置の容器21,21Rは、水平な横方向に伸長し、気液接触部2の複数の段2a,2b,2c,2dの配列方向は水平である。しかし、気液接触部2の段が配列する方向は、水平方向に限らず、傾斜した横方向であってもよい。具体的には、隣接する段間に段差を設けて階段状に複数の段が配列する構造であってもよい。この場合、吸収液が最上段に位置する段から最下段に位置する段に向かって順次流通するように液体供給機構を構成すると、エネルギー効率がよい。このような傾斜した配置は、傾斜地を利用した装置の設置において利用してもよい。
また、上述の実施形態における気液接触部の段の配列は直線状であり、容器21,21Rの形状は横方向に直線状に延伸する形状であるが、これに限定されない。例えば、気液接触部の段の配列方向を徐々に変化させて容器の形状を緩やかに湾曲させる、或いは、角度を設けて屈曲させるような形状でもよい。このような変形は、例えば、気液接触部の段間に適宜空間を設け、この空間を利用して各段の配列方向を変化させることによって可能である。このような手法によって、L字状、Z字状等の屈曲形状、U字状、S字状、円又は楕円に沿った湾曲形状、或いは、これらを組み合わせた形状に延伸する吸収装置及び再生装置を構成することができる。また、このような吸収装置及び再生装置を近接して設置すると、吸収液の循環機構としてこれらを接続する配管の短縮が可能である。
或いは、上述の横型多段構造の吸収装置及び再生装置は、Y字状に分岐した形状に構成することも可能である。例えば、吸収装置においては、供給するガス量に比べて吸収装置から排出されるガス量は少なく、気液接触部の各段における気液接触の比率が、ガスの流れ方向に従って変化する。このため、Y字状に分岐する形状に吸収装置を設計して、2つのガス供給口からガスを供給して、1つのガス排出口から処理後のガスを排出するように構成すると、上記の点を改善することができる。同様に、再生装置においても、再生される吸収液から発生する二酸化炭素の流量は、ガス排出口42Rに向かって増加するので、再生装置をY字状に設計して、2つのガス排出口から二酸化炭素を排出するように構成することができる。
更に、上述の実施形態においては、容器内に脱硫部を有するように吸収装置を構成しているが、脱硫部を吸収装置から除去してもよい。その場合、脱硫部は、別体として他の容器内に設けて吸収装置に接続するとよい。或いは、従来使用されている脱硫塔を利用してもよい。洗浄部についても、別体として他の容器内に設けて、吸収装置又は再生装置に接続することができる。また、処理するガスが高温である場合には、吸収装置のガス導入口と脱硫部の間に、更に、冷却部を設けて、ガスを所望の温度に冷却するように吸収装置を構成してもよい。その場合、冷却部についても、洗浄部と同様に平板を用いて構成して冷却水とガスを気液接触させるとよい。これにより、通常は40〜50℃程度で供給されるガスについて、これ以上の温度でも受け入れが可能になる。このように、横型多段構造の吸収装置及び再生装置においては、必要に応じて、気液接触部の段数を容易に増減できるので、他の機能の追加や構造の簡略化を行う上で有利である。
平板で構成される充填材は、製造加工コストを低く抑えることができる。また、流通抵抗を少なく抑えて操業費用を削減することができる。従って、上述のような吸収装置及び再生装置は、大容量の処理及び高速での処理が求められる二酸化炭素の回収装置として有用である。
上述のような二酸化炭素の回収装置によって処理されるガスGとして、例えば、化学プラントや火力発電所等の設備内で発生した廃ガス(排ガス)や反応ガスが挙げられる。二酸化炭素だけでなく、窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性ガスの処理も可能である。上述の吸収装置においては、脱硫部4が容器内に併設されており、硫黄酸化物がガスから除去される。
二酸化炭素の回収又は除去においては、吸収液Lとして、二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が一般的に用いられる。吸収剤としては、環状アミン化合物やアルカノール系アミン、フェノール系アミン、アルカリ金属塩等のアルカリ剤の水溶液が使用可能であり、アルカノールアミンやアルコール性水酸基を有するヒンダードアミンなどが屡々用いられる。具体的には、アルカノールアミンとして、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等を例示することができる。アルコール性水酸基を有するヒンダードアミンとしては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)等を例示できる。通常、モノエタノールアミン(MEA)の使用が好まれる。上記のような化合物の複数種を混合して使用してもよい。吸収液の吸収剤濃度は、処理対象とするガスに含まれる二酸化炭素量や処理速度等に応じて適宜設定することができ、吸収液の流動性や消耗損失の抑制などの点を考慮すると、概して、10〜50質量%程度の濃度が適用される。
脱硫部4における硫黄酸化物の除去には、脱硫液Dとしてアルカリ液が使用され、アルカリ剤の水性液が一般的に用いられる。アルカリ剤としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属並びにその化合物がある。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等などの水酸化物や、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
二酸化炭素の回収装置を構成する各部は、上述したようなガスGの成分や、吸収液L、脱硫液Dに含まれる化学薬剤などに対して耐性を有する素材で製造される。そのような素材として、例えば、ステンレス綱、アルミニウム、ニッケル、チタン、炭素鋼、真鍮、銅、モネル、銀、スズ、ニオブ等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等の樹脂が挙げられる。充填材を構成する平板P1〜P5,Psも、少なくとも表面が、上述のような、処理するガスG及び使用する吸収液Lとの反応(腐食)を生じない耐食性の素材で構成される。素材は、やすりがけ、サンドブラスト処理、紫外線オゾン処理、プラズマ処理などの表面加工によって表面に微小な凹凸を形成して表面粗さを付与したものであってもよい。また、コーティング等による表面の改質によって、上述のような使用条件に合うように調製した素材であってもよい。
平板P1〜P5,Ps及び平板片Sは、厚さが均一な平板又は薄層材であり、気液接触を行う条件に応じて、好適な強度を保持し得るように素材及び厚さを適宜選択することができる。金属線を用いた金網やパンチングメタル板、エキスパンドメタル板等の網板は、単体で自立可能な程度に強度を保持しつつ重量を減少させることが可能な板材であり、吸収液の濡れ広がりにおいても優れた性質を示す。従って、極めて目が細かい場合には、平板と同様の取り扱いが可能であり、気液接触部の充填材22,22a,22bを構成するために用いてもよい。