本発明の実施形態について、単に例示として、添付の図面を参照して以下に説明する。実施形態において示す寸法、材料、その他の具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、本発明を限定するものではない。尚、明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
並列する複数の鉛直な平板を充填材として有する気液接触相は、ガスの流通抵抗による圧力損失が少ない。従って、多数の気液接触相を積層して多段階に構成しても、気液接触処理における消費エネルギーを低く抑えることが可能である。しかし、従来のように鉛直方向に積層させた多段階構造においては、段数を増やして気液接触効率を高めるには限界がある。本発明は、複数の気液接触相を横方向に配列して多段階に構成することにより、高さの限界に関する問題を解消する。以下において、図面を参照して、気液接触装置の実施形態を具体的に説明する。尚、図面の理解を容易にするために、液体を供給する配管系については、簡略化して実線で示す。
図1は、気液接触装置の一実施形態を示す。図1において、気液接触装置1は、気液接触部2と、液体供給システム3と、ガス供給システム4とを有する。具体的には、気液接触装置1は、水平方向に長く伸長した横長の容器21を有し、容器21内に気液接触部2が構成される。容器21は、長手方向に沿った天板21t、底板21b及び1対の側壁21sと、長手方向両端の端壁21a,21dとを有し、容器21の形状は、長手方向に垂直な断面が略長方形になる略四角柱状である。容器21内の横長な空間に構成される気液接触部2は、容器21の長手方向に沿って横方向に配列するように割り当てられる複数の領域2a,2b,2c,2dを有する。複数の領域の各々において、充填材22として、間隔を空けて並列する複数の鉛直な平板Pが配設される。気液接触部2の各領域は、従来の一段の気液接触相に相当し、各領域において液体Lを上方から複数の鉛直な平板Pへ供給して流下させることによって、平板P上に液膜が形成される。尚、この実施形態において、気液接触部2には4つの領域が割合てられているが、割り当てられる領域の数は、2つ以上の何れの数であってもよく、必要に応じて、適切な数の領域に割り当てられる。又、この実施形態の気液接触部2において、複数の領域2a,2b,2c,2dは、実質的に均等に割り当てられ、同一寸法の平板Pが充填材22に用いられているが、必要に応じて、各領域の長手方向の長さが異なるように変更することも可能である。
気液接触装置1は、更に、液体Lを気液接触部2に供給して複数の領域2a,2b,2c,2dを配列に沿って順次流通させる液体供給システム3と、ガスGを気液接触部2に供給して複数の領域2a,2b,2c,2dを配列に沿って順次流通させるガス供給システム4とを有する。液体供給システム3は、複数の領域2a,2b,2c,2dの各々において上側に設けられる複数の液分配器31と、複数の領域の各々において下側に設けられる複数の液回収口32と、複数の領域において1つの領域の液回収口32と次に液体が供給される領域の液分配器31とが接続するように、複数の液分配器31と複数の液回収口32とを接続する配管系33とを有する。容器21の底板21bは、領域毎に中央が最も低くなるように傾斜した凹型に形成され、凹型の底部に液回収口32が接続される。配管系33を通じて領域2a内の液分配器31に供給される液体は、液分配器31から平板Pの上方へ供給されて平板Pの表面を伝って流下し、底部に貯留され、液回収口32から配管系33へ排出される。配管系33上には、1つの領域の液回収口32と次の領域の液分配器31との間に、各々、ポンプ34が配置され、送液エネルギーを供給する動力源として作用する。ポンプ34の駆動によって、1つの領域の液回収口32から次の領域の液分配器31へ液体が送られるので、領域2aの底部の液体は、次の領域2bの液分配器31へ供給される。同様にして、後続の領域2c,2dへの供給が順次行われるので、液体Lは、複数の領域2a,2b,2c,2dを順次流通する。尚、配管系33を流れる液体の流量は、ポンプ34の駆動調整によって調節できるので、各領域の底部に貯留される液体の量は、ポンプ34の調整によって調節可能である。しかし、必要に応じて、配管系33に流量調整弁を設置し、これを用いて液体の流量を調整しても良く、調整精度が向上する。
充填材22に液体Lを供給するための液分配器31としては、一般的に使用されるものから適宜選択して使用することができる。ドリップポイントの密度(面積当たりの液体の供給点数)が100〜3000点/m2程度の液分配器を用いて良好な気液接触処理を実施できる。ドリップポイントの密度が500〜3000点/m2の液分配器を利用すると好適である。液分配器は、概して、液体を各ドリップポイントへ誘導し分配するための分配管を主体として構成され、分配管の各ドリップポイントに、開口、細管ノズル、誘導爪等のような液体を落下させる手段が設けられる。このような何れのタイプの液分配器も利用可能であり、液分配器に供給される液体は、分配管を通じて各ドリップポイントへ分配され、自由落下して充填材22へ供給される。
又、液体の温度を調整可能な熱交換器35が、配管系33上に配置される。従って、熱媒又は冷媒を熱交換器35に供給することにより気液接触処理に適した温度に調整された液体を各領域に供給することができるので、液体が領域2aから領域2dへ向かって順次流通する間に気液接触を通じて生じる液体の温度変化は、熱交換器35を用いて解消することができる。尚、図1の実施形態では、配管系33に設置される熱交換器35の数は、(領域数−1)であり、領域毎に液体の温度調整が行われる。しかし、熱交換器35は、加熱又は冷却の必要度に応じて使用すればよく、少なくとも1つの熱交換器を用いて液体の温度調節を行うことができる。つまり、状況に応じて熱交換器35を減数又は省略して良い。
一方、ガス供給システム4として、気液接触装置1は、ガスが最初に流通する領域2dに接続される管状のガス導入部41と、ガスが最後に流通する領域2aに接続される管状のガス排出部42とを有する。ガス導入部41は、端壁21dの中央に設けられ、ガス排出部42は、端壁21a中央に設けられる。ガス排出部42から排出されるガスGに微小液滴が同伴排出されるのを防止するために、デミスタ43がガス排出部42に設置される。デミスタ43としては、金網、多孔板等の網状又は多孔質の部材が使用可能であり、一般的にデミスタとして利用されるものから適した開口寸法のものを選択すればよい。
図1の構成において、液体供給システム3及びガス供給システム4によって液体L及びガスGを気液接触装置1の気液接触部2に供給すると、複数の領域2a,2b,2c,2dの各々において、供給される液体Lが複数の鉛直な平板Pを流下すると共に、供給されるガスGが平板P間を横方向に流通して交差し、液体LとガスGとが接触する。この実施形態では、液体供給システム3によって供給される液体Lが、複数の領域2a,2b,2c,2dを流通する順序は、ガス供給システム4によって供給されるガスGが複数の領域2a,2b,2c,2dを流通する順序とは逆の順序であるので、液体L及びガスGの供給によって、気液接触部2全体として対向流接触が実施される。ガス導入部41及びガス排出部42の設置位置が逆になるように図1の実施形態を変更すると、液体L及びガスGは同じ順序で複数の領域に供給されるので、並行流接触を実施することが可能である。尚、図1の実施形態及び後述する実施形態において、ガスGの供給は、外部から供給されるガスGの流圧を利用して行うものとして、ガス供給用の動力源は特に記載されないが、必要に応じて、ポンプやファン等の送気手段を使用してよい。
ガスGと液体Lとを接触させる際のガスGの流通抵抗は、操業時の消費エネルギーを左右する。平板Pの厚さ及び間隔によって、充填材22における単位容積当たりの濡れ面積(気液接触面積)、ガス流量及びガスの流通抵抗が変化するので、これらを考慮して、好適な流通空間になるように並列する平板Pの数が設定される。平板Pの間隔は、例えば、スペーサーを介在させて固定することができる。ガスG及び液体Lの流動を妨げないように、スペーサーの寸法及び設置位置を適宜調整すればよい。複数の平板Pを纏めてユニットとして一体化させるための外枠を用いてもよく、平板がスペーサーを介して並列するように複数の平板Pの上端及び下端を外枠で固定すると、充填材22の装填作業が容易になる。
気液接触部2の複数の領域2a,2b,2c,2dの境界位置において、仕切り壁23,24が、容器21の天板21t及び底板21bから鉛直に立設される。但し、仕切り壁23,24の高さは小さく、複数の領域2a,2b,2c,2dの境界面は、各々、ほぼ全面的に開放される。つまり、複数の領域2a,2b,2c,2dは、横方向に相互に連通する。図1において、ガスGがガス導入部41から供給されると、ガスGは、容器21の長手方向に沿って気液接触部2を流通し、領域2dから領域2aに向かって順に通過する。複数の領域2a,2b,2c,2dの各々において、複数の鉛直な平板Pは、ガスGが通過する方向に沿うように、容器21の長手方向に平行に配置されるので、ガス供給システムによって供給されるガスGは、平板P間の空間及び平板Pと容器21側部との間の空間を真っ直ぐに通過して、複数の領域2a,2b,2c,2dを横方向に直線的に貫通することができる。故に、流通抵抗によるガスGの圧力損失は低く抑えられる。
天板21t側の仕切り壁23は、ガスGが平板P間の空間を回避してその上方を流れるのを防止する役割をする。従って、仕切り壁23の高さは、少なくとも、その下端が平板Pの上端に達するように設定され、平板Pの角に接するように設けられるが、過度の高さはガスGの流通抵抗を高める。又、底板21b側の仕切り壁24は、ガスGの流れが平板Pの下方に逃れるのを防止する役割をする。平板Pから流下して底部に貯留する液体の液面レベルが平板Pの下端に達する(つまり、平板Pの下端が貯留液体に接触する)と、ガスGの流れが平板Pを回避して下方を流れるのを確実に防止することができるので、仕切り壁24の高さは、各領域に配置された平板Pの下端より高く、且つ、液体の貯留が確実に保持されるように設定するとよい。尚、平板P間の距離を適正に固定するスペーサーを使用する際に、仕切り壁23,24を利用してスペーサーを設置してもよい。或いは、平板Pの側端を嵌合可能な幅を有する浅い鉛直方向の溝を仕切り壁23,24の側面に形成すると、平板Pの側端を溝内で保持して位置決めすることが可能であるので、スペーサーとして機能する。
図1の実施形態においては、複数の領域2a,2b,2c,2dの各々には、個別に、複数の平板Pが配設される。しかし、複数の領域2a,2b,2c,2dは、相互に横方向に連通するので、複数の領域2a,2b,2c,2dにおいて共通の平板を使用するような変更も可能である。つまり、気液接触部2の長手方向長さ(=複数の領域2a,2b,2c,2dの長手方向の長さの合計)に等しい長さを有する複数の平板を、複数の領域2a,2b,2c,2dを貫通するように並設してもよい。従って、複数の鉛直な平板Pの各々として、複数の領域2a,2b,2c,2dを通して一体的に連続する横長な平板が使用できる。この際、必要に応じて、仕切り壁23,24を嵌め込むための切り欠きを各平板の上端及び下端に形成すると良好に設置することができる。或いは、仕切り壁23の下端及び仕切り壁24の上端に複数の切り欠きを形成して、平板を切り欠きに嵌め込むようにしてもよい。この場合、仕切り壁23,24及び切り欠きは、平板の位置決め手段としても作用し得る。
図1の実施形態における気液接触部2の各領域は、一列に並列する複数の平板による一段構造の充填材を用いて構成されるが、充填材の強度等の点において許容し得る範囲内で、多段構造の充填材を用いても良い。例えば、図2(a)のように、並列する平板を積載した複数段(図中では4段)構造の充填材22aを用いることができる。この場合、各段の間に、上段の平板を支持するための支持部材が介在する。図2(a)の例では、複数の細長い平板片Sを、平板Pに対して垂直方向に架け渡すように配置して上下段の間に介在させ、支持部材として使用する。このような平板片Sは、上段の平板Pから流下する液体を、平板Pに対して垂直な方向に再分配する機能を有する。液体の再分配によって、濡れ不良による濡れ面積の減少を好適に防止することができる。但し、平板片Sによって、ガスの流通抵抗が生じるので、ガス流れに垂直な面において平板片Sが占める面積比が20%未満となるように、高さが低い平板片を用いることが好ましい。或いは、このような平板片Sを架け渡す代わりに、薄い多孔板や網板を平板P上に載せて用いると、ガスの流通抵抗を小さく抑えつつ支持部材として好適に機能し、平板Pを安定的に積載することができる。
図1の気液接触装置1において、各領域に図2(a)の充填材22aを設置すると、ガスの流通方向は、横方向(水平方向)であり、液体の流下方向(鉛直方向)と垂直に交差する。しかし、この充填材22aは、ガスGが鉛直方向に流通するような形態で使用することも可能であり、充填材22aを用いて並行流又は対向流の気液接触を行うことができる。一方、図2(b)のように、上段側の平板Pと下段側の平板Pとが互いにねじれの位置で垂直になるように平板を積載すると、支持部材を介在させずに多段構造の充填材22bを構成することができる。この充填材22bも、上段の平板Pから流下する液体を下段の平板Pに対して垂直な方向に再分配する機能を有する。充填材22bでは、水平方向のガス流れについては流通抵抗が大きいが、鉛直方向のガス流通については、ガスGは容易に平板P間を通過し、流通抵抗は少ない。従って、この充填材22bは、並行流又は対向流の気液接触を行うのに適している。並行流又は対向流の気液接触が可能な構造を有する気液接触装置について、以下に記載する。
図3は、並行流又は対向流の気液接触を行う気液接触装置の一実施形態を示す。尚、図3の気液接触装置11は、気液接触部2の各領域に、図1と同様の充填材22を装填する形態で記載されるが、前述から理解されるように、図2(a),(b)の充填材22a,22bの何れか又は両方を気液接触装置11に装填して使用してもよい。
図3の気液接触装置11は、図1の気液接触装置1と同様の液体供給システム3を有する。気液接触部2には、同様に、4つの領域2a,2b,2c,2dが割り当てられ、液体供給システム3の配管系33を通じて気液接触部2の領域2aから領域2dへ向かって液体Lが順次供給される。各領域において、液分配器31から供給される液体Lは、平板P上を流下して液回収口32から回収され、ポンプ34によって次の領域へ送られる間に、熱交換器35によって温度調整される。一方、ガス供給システム4aは、ガスGの流通が、領域毎に上昇及び下降を交互に繰り返すように構成される。
具体的には、図3においては、図1における仕切り壁24の一部は誘導壁25に置換される。仕切り壁24が残される位置と、誘導壁25に置換される位置は、複数の領域の境界において交互に配置される。又、誘導壁25が設けられる境界においては、図1の仕切り壁23は除去され、仕切り壁24が残る境界においては、図1の仕切り壁23は誘導壁26に置換される。従って、誘導壁25及び誘導壁26は、気液接触部2の複数の領域2a,2b,2c,2dの境界において、交互に配置される。誘導壁25は、容器21の底板21bから上方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、上端と容器21の天板21tとの間に所定の間隔を空けるように設定される。従って、隣接する2つの領域の境界の大部分は、誘導壁25によって遮断され、2つの領域は、誘導壁25の上方の空間によって部分的に連通する。誘導壁26は、容器21の天板21tから下方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、下端と仕切り壁24の上端との間に所定の間隔を空けるように設定される。従って、隣接する2つの領域の境界の大部分が、誘導壁26によって遮断され、2つの区間は、誘導壁26の下方の空間によって部分的に連通する。
誘導壁25及び誘導壁26は、複数の領域2a,2b,2c,2dの境界に交互に設けられるので、隣接する2つの領域を相互に連通する空間は、気液接触部2の上側及び下側に交互に形成される。従って、ガス導入部41aから供給されるガスGは、気液接触部2を流れる間に、領域毎に上昇と下降とを交互に繰り返すように上下に蛇行し、その後、ガス排出部42aから排出される。つまり、気液接触部2全体としての液体LとガスGとの気液接触形態は、対向流気液接触であるが、領域毎には、対向流気液接触と並行流気液接触が交互に行われる。
図1の気液接触装置1においては、ガスGは横方向に流れるので、ガス導入部41及びガス排出部42は、各々、端壁21d,21aの中央に設けられて、ガス流れの最上流位置の領域2dから最下流位置の領域2a迄のガス流れができる限り均等になるように構成される。これに対し、図3の気液接触装置11は、ガス流れの最上流位置の領域2dにおいてガスGが上昇する構造であるので、ガスGを下方から領域2dへ供給するために、ガス導入部41aは、領域2dの端面(容器21の端壁21d)の下端に設けられる。又、最下流位置の領域2aにおけるガスGは下降する構造であるので、ガスGを領域2aの下方から排出するために、ガス排出部42aも、領域2aの端面(端壁21a)の下端に設けられる。誘導壁25,26の配置が逆になるように変更すると、ガスGの上昇/下降構造は逆転するので、この場合は、ガスGを上方から供給及び排出するために、ガス導入部41a及びガス排出部42aを端壁21a,21dの上端に設けるように変更するとよい。又、図3の実施形態における気液接触部2の領域数は偶数であるので、ガス導入部41aの配置とガス排出部42aの設置高さは一致する。気液接触部2の領域数が奇数であるように変更する場合は、ガス導入部41a及びガス排出部42aの一方を端壁の上端に配置し、他方を下端に配置するように変更される。つまり、誘導壁26,25によって誘導されるガスGの流れに応じて、ガス導入部41a及びガス排出部42aの設置高さは適宜変更される。尚、平板Pの側端を保持可能な浅い鉛直方向の溝を誘導壁25,26の側面に設けて平板Pの位置決めを可能にすると、図1の仕切り壁23,24と同様に、スペーサーとしての機能が付与可能である。
図4は、気液接触部の全領域において対向流気液接触を行う気液接触装置の一実施形態を示す。図4の気液接触装置12も、気液接触部2の各領域に、図1と同様の充填材22を装填する形態で記載されるが、前述したように、図2(a),(b)の充填材22a,22bの何れか又は両方を装填して使用することができる。
図4の気液接触装置12は、図1の気液接触装置1と同様の液体供給システム3を有する。気液接触部2には、同様に、4つの領域2a,2b,2c,2dが割り当てられ、液体供給システム3の配管系33を通じて、気液接触部2の領域2aから領域2dへ向かって液体Lが順次供給される。各領域において、液分配器31から供給される液体Lは、平板P上を流下して液回収口32から回収され、ポンプ34によって次の領域へ送られる間に、熱交換器35によって温度調整される。一方、ガス供給システム4bは、気液接触部2の全領域において、ガスGの流れが上昇して対向流気液接触を行うように構成される。
具体的には、図4においては、複数の領域2a,2b,2c,2dの境界の各々において、平行な誘導壁27及び誘導壁28が設けられ、誘導壁27と誘導壁28との間に一定幅の連通路29が形成される。誘導壁27は、容器21の底板21bから上方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、上端と容器21の天板21tとの間に所定の間隔を空けるように設定される。誘導壁28は、容器21の天板21tから下方へ向かって鉛直方向に長く延伸し、その高さは、下端と容器21の底板21bとの間に所定の間隔を空けるように設定される。連通路29は、誘導壁27と天板21tとの間の空間、及び、誘導壁28と底板21bとの間の空間において両隣りの領域と連通するので、ガス導入部41bから供給されて領域2dの平板P間を上昇するガスGは、誘導壁27の上方から連通路29を通って、次にガスが流通する領域2cの下部へ誘導される。同様にして、後続の領域の各々において、下方からのガス供給と上方からのガス排出が繰り返され、その間に、各領域において平板P間を上昇するガスGと流下する液体Lとの気液接触が行われる。尚、領域2aの液分配器31から供給される液体Lがガス排出部42b側に流出した場合に液体Lが領域2aの底部へ流れるように、領域2aのガス排出部42b側に設けられる誘導壁27の根元には、連絡孔30が設けられる。
図4の実施形態では、連通路29が、ガス流れの上流側の領域の上部と下流側の領域の下部とを接続するように形成されるので、ガス導入部41aは、最上流位置の領域2dの端面(端壁21d)の下端部に設けられる。一方、ガス流れの最下流位置の領域2aは、平板Pの下流側を誘導壁27で遮断され、領域2aの上部から排出されるガスGは、誘導壁27と端壁21aとの間の空間を下降するので、ガス排出部42bは、端壁21aの下端に設けられる。但し、この実施形態は、領域2aの下流側の誘導壁27を省略して端壁21aと平板Pの間の空間を無くすように変更しても良い。その場合、ガス排出部42bは、端壁21aの上端に設けられ、領域2aの上部から排出されるガスGは容器21の上部から排出される。
又、図4の実施形態において、ガス導入部41bとガス排出部42bの配置を逆に変更すると、ガスGは、気液接触部2の各領域において、平板P間を下降するように流れ、液体LとガスGの並行流気液接触が行われる。この場合、ガスGは、領域2aから領域2dへ向かって流れるので、気液接触部2全体としても、ガスGと液体Lとの接触は、並行流気液接触となる。或いは、図4の実施形態は、誘導壁27,28の設置位置によって、ガスGが気液接触部2の各領域を下降するように変更することも可能である。つまり、誘導壁27と誘導壁28の設置位置を逆にすると、連通路29は、ガス流れの上流側の領域の下部と下流側の領域の上部とを接続するように変更される。これにより、各領域において、下降するガスGと液分配器31から流下する液体Lとの並行流気液接触が行なわれる。この変更形態では、ガス導入部41bは、端壁21dの上端部に設ければよい。尚、平板Pの側端を保持可能な浅い鉛直方向の溝を誘導壁27,28の側面に設けて平板Pの位置決めを可能にすると、図1の仕切り壁23,24と同様に、スペーサーとしての機能を付与可能である。
図1の気液接触装置1においては、ガスGは横方向に流れるので、充填材の上方に位置する液分配器31は、ガス供給の圧力損失には関与しない。又、図3,4の気液接触装置11,12においては、ガスGの流れは、液分配器31付近で蛇行するので、やはり、ガス供給の圧力損失にはさほど関与しない。従って、気液接触部2が横長に構成された気液接触装置では、液分配器31による圧力損失を考慮しなくてもよいという利点がある。
上述の気液接触装置1,11,12は、状況に応じて好適な気液接触条件を設定するために、様々な変更を施すことが可能である。以下に、変更例を幾つか挙げて説明する。
上述の気液接触装置1,11,12においては、装置に供給される液体が平板Pを流下する回数は、気液接触部2に割り当てられる領域の数に対応する。しかし、例えば、図5に示す気液接触装置11'のように、1つの領域の液回収口32から回収される液体の一部が、次の領域へ供給されずに元の領域へ還流するように配管系33から分岐して元の領域の液分配器に接続する分岐管51を設けると、液体の一部は、同一領域を繰り返し流れる。従って、液体Lが装置内に滞留する時間が長くなり、液体LとガスGとの接触時間が延長される。つまり、割り当てる領域の数を増加するのと類似の効果が得られる。分岐管51に流量調整弁52を設けると、元の領域へ還流する液体の割合の調整が可能になる。還流する液体の割合を増加するに従って、液体Lが装置内に滞留する時間が長くなる。尚、図5においては、図3の気液接触装置11に分岐管51及び流量調整弁52を設ける変更例を記載するが、勿論、図1の気液接触装置1又は図4の気液接触装置12において同様の変更を行ってもよい。
図5のように液体の一部が次の領域へ供給されずに元の領域へ還流する液体供給は、他の形態によっても可能である。例えば、図6は、図1の実施形態において液体の一部還流を可能にした変更例を示す。図6の気液接触装置13においては、図5に示す分岐管は使用せず、領域間の境界に設けられる仕切り壁24’の高さの設定によって、底部に貯留する液体の液面レベルを所望のレベルに維持可能な構造を利用する。つまり、液面レベルが仕切り壁24’の高さに達すると、液体量の増加によって液体が溢れて隣の領域へ移行する性質を利用して、液体を領域2aから領域2dへ向かって段階的に移行させる。これに伴って、図1の配管系33は、各領域において底部に貯留する液体がその領域の液分配器31に還流するように変更される。
具体的には、図6の気液接触装置13の配管系は、導入管33I、還流管33’及び導出管33Eによって構成される。導入管33Iは、最初に液体が供給される領域2aの液分配器31に接続され、液分配器31から平板Pに供給される液体は、領域2aの底部に流下する。還流管33’は、各領域における液回収口32と液分配器31とが連通するように、複数の液分配器と複数の液回収高とを各々接続する。従って、還流管33’上のポンプ34が駆動すると、液回収口32から回収される液体は、液分配器31に還流され、各領域の平板Pに繰り返し供給される。導入管33Iからの液体供給によって、領域2aの底部に貯留する液体量が増加し、仕切り壁24’の高さに達すると、新たな供給量に対応する分の液体が、領域2aの底部から隣りの領域2bへ溢れ出る。従って、各領域に留まる液体量は所定量に規制され、これを超えた時に超過分の液体が、次に液体が供給される領域の底部に供給される。故に、次の領域へ供給される液体と元の領域へ還流する液体との割合は、仕切り壁24’の高さによって設定及び変更することができる。
気液接触装置13は、容器21の端壁21dと領域2dとの間にも液回収口32’を有するように容器21の長さが伸長され、領域2dと液回収口32’との境界にも仕切り壁24”が設けられる。液回収口32’には、導出管33Eが接続される。従って、領域2dにおいて底部に貯留する液体は、仕切り壁24”を超えて溢れ出ると、液回収口32’から導出管33Eを通って排出される。尚、 図6においては、液回収口32’は、容器21の底部に設けられているが、容器の側壁21s又は端壁21dに設けるように変更しても良い。その場合、領域2dの底部において所望の液面レベルを超える分の液体が液回収口32’から溢れ出るように、液回収口32’を設ける高さを設定すると良く、それにより、仕切り壁24”を省略し、装置の長手方向の長さの延長を回避することができる。
図7は、図1の実施形態において液体の一部還流を可能にした他の変更例を示す。図7の気液接触装置14において、液体供給システムは、図1と同様の複数の液回収口32、及び、複数の液分配器と複数の液回収口とを接続する配管系33を有する。しかし、各領域に設けられる液分配器については、図7のように、液分配器31b,31c,31dが、設置される領域とその前の領域の2つの領域に跨って液体を供給可能なように変更している。これに伴い、仕切り壁の設置位置も、図7の仕切り壁23’のように変更され、仕切り壁23’の高さは、平板Pの上端に当接する高さに設定される。
図7の形態において、複数の領域2a〜2dの各々において上側に設けられる複数の液分配器31a〜31dのうち、最初に液体が供給される領域2aに設けられる液分配器31aは、長手方向(領域の配列方向)の長さが図1の液分配器31より短い。他方、最後に液体が供給される領域2dに設けられる液分配器31dは、長手方向の長さが長く、液分配器31aの減寸量と液分配器31dの増寸量は等しい。液体の供給順序が最初と最後の領域を除いた領域2b、2cの液分配器31b,31cは、図1の液分配器31と同じ長さである。つまり、最初に液体が供給される領域を除く他の領域の各々において、液分配器は、設置される領域とその前の領域の2つの領域に跨って液体を供給可能な配置になっている。従って、ポンプ34の駆動によって1つの領域の液回収口32から配管系33を通じて次の領域の液分配器へ液体が供給する点は、図1の実施形態と同様であるが、液分配器へ供給される液体は、次の領域の平板Pと、元の領域の平板Pとに分配して供給される。液分配器は、2つの領域に跨って液体を供給するので、天板21tに設けられる仕切り壁23’の位置は、領域の境界から外れているが、仕切り壁23’の役割は、ガスGが平板P間の空間から逃れて上部を通過するのを防止することであるので、その設置位置は、領域の境界に限らず、適宜変更して良い。又、図1〜図7に示す気液接触装置の実施形態において、仕切り壁23,23’の設置数を増加すると遮蔽効果が増す。仕切り壁は、天板21tと液分配器との間を遮断するような形態の仕切り壁も有用である。
加圧又は減圧状態での気液接触を行う場合、通常、圧力に対応するために、圧力の作用が分散するように丸い形状の装置に設計される。気液接触装置の横長な容器21は、様々な軸性形状に変更することができ、上述の気液接触装置の実施形態において、圧力対応を目的として、容器21が円柱形や楕円柱形のような丸い形状であるように変更してもよい。但し、この場合、容器の周状の側壁と平板Pの側端との間に弓形断面の空間が生じるので、ガスGが平板P間を回避して両横の空間を流れるのを防止するための遮断壁が、気液接触部の領域の境界毎に設けられる。尚、この点に関し、図2に示すような多段構成の充填材22a,22bにおいては、中段における平板Pの数又は横幅を最上段及び最下段より増加させて、充填材の各段における横幅をある程度変動させることが可能である。従って、図2(a),(b)のような多段構成の充填材22a,22bを用いて、容器の側壁と充填材との空間がある程度減少するように変更することが可能である。この場合、多段構成の充填材の中段における平板Pにも液体を供給可能なように、液分配器の液体落下手段(ノズル、誘導爪等)の長さや形状を改良するとよい。又、この場合も、容器の側壁と平板Pとの間をガスGが流れるのを防止する遮断壁を併用することができる。
上述の実施形態において、気液接触装置の容器21は、水平な横方向に伸長し、気液接触部2の複数の領域2a,2b,2c,2dの配列方向は水平である。しかし、気液接触部2の複数の領域が配列する方向は、水平方向に限らず、傾斜した横方向であっても良い。具体的には、隣接する領域間に段差を設けて階段状に複数の領域が配列する構造であっても良い。この場合、液体が最上段に位置する領域から最下段に位置する領域に向かって順次流通するように液体供給システム3を構成すると、エネルギー効率がよい。
平板で構成される充填材は、製造加工コストを低く抑えることができる。又、流通抵抗を少なく抑えて操業費用を削減することができる。従って、上述のような気液接触装置は、大容量の処理及び高速での処理が求められる気体−液体接触装置として有用である。
上述のような気液接触装置によって処理されるガスGとして、例えば、化学プラントや火力発電所等の設備内で発生した廃ガス(排ガス)や反応ガスが挙げられ、屡々、二酸化炭素や、窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性ガスが特定成分として処理される。ガスGから除去する特定成分に応じて、吸収液として使用する液体Lが選択され、例えば、二酸化炭素の回収除去には、環状アミン化合物やアルカノール系アミンやフェノール系アミン、アルカリ金属塩等のアルカリ剤の水溶液が屡々用いられ、硫黄酸化物の除去には、カルシウム化合物、マグネシウム化合物などのアルカリ剤の水性液が一般的に用いられる。二酸化炭素の回収において屡々用いられるモノエタノールアミン(MEA)水溶液では、二酸化炭素との反応によって、カルバミン酸塩・アミン塩(カーバメート)、炭酸塩、重炭酸塩等が生じる。
このため、気液接触装置を構成する各部は、上述したようなガスGの成分や液体Lに含まれる化学薬剤に対して耐性を有する素材で製造される。そのような素材として、例えば、ステンレス綱、アルミニウム、ニッケル、チタン、炭素鋼、真鍮、銅、モネル、銀、スズ、ニオブ等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等の樹脂が挙げられる。充填材を構成する平板Pも、少なくとも表面が、上述のような、処理するガスG及び使用する液体Lとの反応(腐食)を生じない耐食性の素材で構成される。素材は、やすりがけ、サンドブラスト処理、紫外線オゾン処理、プラズマ処理などの表面加工によって表面に微小な凹凸を形成して表面粗さを付与したものであっても良く、また、コーティング等による表面の改質によって、上述のような使用条件に合うように調製した素材であってもよい。平板Pは、厚さが均一な平板又は薄層材であり、気液接触を行う条件に応じて、好適な強度を保持し得るように素材及び厚さを適宜選択することができる。金属線を用いた金網やパンチングメタル板、エキスパンドメタル板等の網板は、単体で自立可能な程度に強度を保持しつつ重量を減少させることが可能な板材であり、液体の濡れ広がりにおいても優れた性質を示す。従って、極めて目が細かい場合には、平板と同様の取り扱いが可能であり、気液接触装置の充填材22,22a,22bを構成するために用いても良い。
又、気液接触装置は、上述のような特定成分を吸収・分離・除去するための気液接触装置に限らず、種々の化学プラントのプロセスに含まれる冷却、加熱、放散等において使用される装置(冷却塔、加熱塔、放散塔(再生塔)等)に適用することも可能である。