以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1及び図2はいずれも歩行車10を斜め前方から見た斜視図である。図1では、歩行車10の脚体部11が開脚されている状態を示し、図2では閉脚されている状態を示している。また、以下の説明では、歩行車10を移動させる際の移動方向を前後方向とし、その前後方向に対して直交する方向を左右方向とする。
図1に示すように、歩行車10は、左右方向に離間して設けられた一対の脚体部11と、それら脚体部11の間に設けられた座部12と、左右一対のハンドル14を有して構成される上部構成体13とを備える。
各脚体部11はそれぞれ、前脚フレーム15と後脚フレーム16とを有している。これら各脚フレーム15,16は、アルミニウム等の軽金属により形成されている。前脚フレーム15の下端部には前輪17が取り付けられ、後脚フレーム16の下端部には後輪18が取り付けられている。なお、詳しくは、前輪17は、前脚フレーム15の下端部に取付軸17aを介して取り付けられている。
前脚フレーム15は、その下端部から上方に向けて後方に傾斜するように延びている。一方、後脚フレーム16は、その下端部から上方に向けて前方に傾斜するように延びている。詳しくは、後脚フレーム16は、上下方向の中間部に折れ曲がり部16aを有しており、その折れ曲がり部16aよりも下側部分では傾斜しているのに対し、折れ曲がり部16aよりも上側部分16bでは鉛直方向に延びている。
各脚体部11において、前脚フレーム15の上端部にはブラケット19が固定され、後脚フレーム16の上端部にはブラケット21が固定されている。これら各ブラケット19,21はいずれも樹脂製であり、左右方向に延びる回動軸22を介して回動可能に連結されている。これにより、前脚フレーム15と後脚フレーム16とは回動軸22を中心として互いに回動可能となっており、その回動によって、脚体部11は、各脚フレーム15,16の下部が互いに離間する開脚状態(図1に示す状態)と、各脚フレーム15,16の下部が互いに接近する閉脚状態(図2に示す状態)とに移行可能となっている。また、閉脚状態では、各脚フレーム15,16の下部が接近することで、脚体部11が折り畳まれた状態となる。この折り畳み状態において歩行車10は自立可能となっている。
座部12は、前後に離間して設けられた2つの座部フレーム25,26により支持されている。各座部フレーム25,26は、左右方向に延びる金属製のパイプ材からなる。各座部フレーム25,26のうち、前側の座部フレーム25は、その両端部が各脚体部11の前脚フレーム15に固定されている。また、後側の座部フレーム26は、その両端部が各脚体部11の後脚フレーム16に固定されている。なお、各脚体部11の前脚フレーム15は、その下端部において連結フレーム27を介して連結されている。
座部12は、樹脂製のシート材からなり、各座部フレーム25,26に跨がって設けられている。座部12は、その前端部が座部フレーム25に固定され、後端部が座部フレーム26に固定されている。この場合、各脚体部11が開脚状態から閉脚状態に移行すると、各座部フレーム25,26が互いに接近し、それに追従して座部12が折り畳まれるように変形する(図2等参照)。
また、本実施形態では、座部12が多数の孔部(図示省略)を有するメッシュ状のシート材により形成されている。このため、使用者が歩行車10を移動させる際に、座部12の孔部を通じて歩行車10前方の段差の有無等を確認することが可能となっている。
続いて、上部構成体13について説明する。上部構成体13は、左右一対の支柱フレーム31と、それら各支柱フレーム31の上端部に取り付けられた一対の操作本体部32と、それら操作本体部32に跨がって延びるハンドルフレーム33とを有する。
各支柱フレーム31は金属製の棒材又はパイプ材からなり、上下方向に延びている。これら各支柱フレーム31は、各脚体部11の後脚フレーム16にそれぞれ取り付けられている。具体的には、後脚フレーム16は筒状をなしており、その後脚フレーム16の上側部分16bに支柱フレーム31が上方から挿入されている。そして、その挿入状態で支柱フレーム31が後脚フレーム16に取り付けられている。
各支柱フレーム31は、後脚フレーム16への挿入状態において、上下方向にスライド移動可能となっている。そして、本歩行車10では、各支柱フレーム31の上下方向へのスライド移動により、上部構成体13の高さ位置を調整することが可能となっている(図9も参照)。各支柱フレーム31は、上部構成体13が高さ位置調整された位置で後脚フレーム16にハンドル付きのねじ部材35を用いて固定されるようになっている。詳しくは、支柱フレーム31には、上下方向に所定の間隔で複数のねじ孔部36が設けられ、それら各ねじ孔部36のうちいずれかにねじ部材35をねじ込むことで支柱フレーム31が後脚フレーム16に固定されるようになっている。これにより、上部構成体13の高さ位置を段階的に調整することが可能となっている。なお、ねじ部材35は、後脚フレーム16のブラケット21に回転可能な状態で取り付けられている。
操作本体部32は、硬質樹脂により形成されている。各操作本体部32は、概ね所定の厚みを有する板状とされ、左右方向に互いに対向して配置されている。詳しくは、操作本体部32は、上方に開放された凹部32aを有し、その凹部32aにより側面視略U字状をなしている。
ハンドルフレーム33は、金属製のパイプ材をアーチ状(略コ字状)に折り曲げることで形成されている。ハンドルフレーム33は、各操作本体部32にそれぞれ取り付けられ前後方向に延びる一対のサイドフレーム部33aと、それらサイドフレーム部33aを前端側で連結し左右方向に延びるフロントフレーム部33bとを有する。詳しくは、ハンドルフレーム33においてサイドフレーム部33aとフロントフレーム部33bとは円弧部を介して接続されている。
サイドフレーム部33aは、操作本体部32における凹部32aを挟んだ前後両側部分をそれぞれ貫通して延びており、その貫通状態で操作本体部32に取り付けられている。これにより、サイドフレーム部33aにおいて上記両側部分の間は把持部43となっている。この把持部43は、段差等で歩行車10を持ち上げる際に把持される部分となっており、支柱フレーム31の真上に配置されている。
各サイドフレーム部33aにおいて操作本体部32よりも後方に延出した部分はハンドル14となっている。ハンドル14は、使用者が歩行車10を移動させる際に把持する部分である。上述したように、上部構成体13は各脚体部11に対して上下位置調整が可能となっているため、その上下位置調整によりハンドル14の高さ位置(ハンドル高さ)を調整することが可能となっている。また、本実施形態では、ハンドル14の高さ位置が標準高さ位置(出荷時高さ位置)に設定されている。
各ハンドル14の下方にはブレーキレバー38が設けられている。ブレーキレバー38は、操作本体部32に取り付けられている。ブレーキレバー38は、操作本体部32の内部でブレーキワイヤ39と接続され、ブレーキワイヤ39は、後脚フレーム16の下端側に設けられたブレーキ作動部41と接続されている。ブレーキレバー38が操作されるとブレーキワイヤ39を介してブレーキ作動部41が作動し、それにより後輪18に制動力(ブレーキ力)が付与される。
上部構成体13には、各脚体部11を開脚状態から閉脚状態に移行させるための操作部51が設けられている。操作部51は、各脚体部11とワイヤ52を介して連結されている。操作部51は、各ワイヤ52を所定方向に引っ張る引張操作を行うもので、かかる引張操作により各脚体部11を開脚状態から閉脚状態に移行させることが可能となっている。本歩行車10ではかかる点に特徴を有しており、以下においては、その特徴的構成について説明する。
まず脚体部11側の構成について図1及び図2に加え図3を用いて説明する。図3は、脚体部11の上部周辺を示す側面図である。なお、図3では、脚体部11の開脚状態を示している。
図1〜図3に示すように、各脚体部11には、前脚フレーム15と後脚フレーム16とを連結するリンク部44が設けられている。リンク部44は、直線状に延びる金属製の一対のリンク45,46と、それら各リンク45,46の端部側を連結する回動軸47とを有している。回動軸47は左右方向に延びる軸であり、その回動軸47を中心として各リンク45,46が互いに回動可能とされている。
一対のリンク45,46のうち、一方のリンク45は前脚フレーム15に軸部48を介して回動可能に連結され、他方のリンク46は後脚フレーム16に軸部49を介して回動可能に連結されている。これらの軸部48,49はいずれも回動軸47と同じく左右方向に延びている。より詳しくは、前脚フレーム15にはリンク受け部15aが設けられ、そのリンク受け部15aにリンク45が回動軸47とは反対側の端部において軸部48を介して連結されている。また、後脚フレーム16にはリンク受け部16cが設けられ、そのリンク受け部16cにリンク46が回動軸47とは反対側の端部において軸部49を介して連結されている。
脚体部11の開脚状態では、リンク部44の各リンク45,46が前後に展開された状態となっている。これにより、脚体部11の展開状態では、前脚フレーム15及び後脚フレーム16が互いの下部同士をさらに離間させる側へと回動されることが規制されている。そして、かかる規制により、脚体部11が開脚状態に保持されるようになっている。
なお、リンク45には、その中間部に下方に開放された凹部45cが形成されている。この凹部45cは、リンク部44の各リンク45,46が折り畳まれた際に、リンク45が軸部49と干渉するのを回避するために設けられている(図8(b)参照)。
各脚体部11のリンク部44にはそれぞれワイヤ52が連結されている。各ワイヤ52は可撓性を有する金属製又は樹脂製のワイヤとなっている。また、各ワイヤ52は、非伸縮性又は低伸縮性の材料により形成されている。
各ワイヤ52には、その端部(詳しくは操作部51側とは反対側の端部)に円柱状のタイコ71が固定され、そのタイコ71がリンク部44に取り付けられている。具体的には、リンク部44のリンク45には、軸部48側とは反対側の端部にタイコ71を挿入するための挿入孔45aが形成されている。この挿入孔45aは、リンク45において回動軸47よりも反軸部48側に延出した延出部45bに形成されている。そして、この挿入孔45aにタイコ71が挿入され、その挿入状態でタイコ71がリンク45に取り付けられている。
各ワイヤ52はリンク部44に連結された一端部から上方に延びており、その他端部が操作部51に接続されている。各ワイヤ52は、その一部がガイドチューブ53の内部に挿通されている。各ワイヤ52のガイドチューブ53は樹脂材料により形成され、可撓性を有している。
各ガイドチューブ53は、その一端部が脚体部11の前脚フレーム15に固定されている(図1参照)。詳しくは各前脚フレーム15のブラケット19にはガイドチューブ53を差し込み可能な筒部64が固定されている。筒部64は、リンク部44の上方(詳しくは真上)に配置され、その筒部64にガイドチューブ53の一端部が差し込まれて固定されている。また、各ガイドチューブ53は、その他端部が操作部51を取り付けるためのケース54(その詳細は後述)に固定されている。
続いて、操作部51に関する構成について図4〜図6に基づいて説明する。図4は、操作部51の周辺を示す斜視図である。図5は、図4において一部の部材(詳しくは後述するケース構成部54b)を取り外した状態で示した斜視図である。なお、図4及び図5ではいずれも操作部51周辺を斜め前方から見ている。また、図6は、操作部51の周辺を示す正面図であり、図5と同様、一部の部材を取り外した状態で示している。
図4〜図6に示すように、上部構成体13においてハンドルフレーム33のフロントフレーム部33bには、操作部51を取り付けるためのケース54(取付部に相当)が取り付けられている。ケース54は、フロントフレーム部33bの長手方向(左右方向)に延びており、上記長手方向に延びる筒状(詳しくは円筒状)の筒状部55と、その筒状部55の両端部に設けられた円板状の壁部56,57とを有している。各壁部56,57は、筒状部55の両端開口を塞ぐように設けられ、各壁部56,57のうち壁部56が左側に配置され、壁部57が右側に配置されている。
各壁部56,57には、ハンドルフレーム33のフロントフレーム部33bを挿通させる挿通孔部59が形成されている。挿通孔部59は、各壁部56,57の中心部に形成されている。ケース54は、各壁部56,57の挿通孔部59にフロントフレーム部33bを挿通させた状態で当該フロントフレーム部33bに取り付けられている。
ケース54は、径方向詳しくは前後方向に二分割(半割)された一対のケース構成部54a,54bを有している。ケース54は、それらケース構成部54a,54bが互いに組み合わせられることにより構成されている。これらケース構成部54a,54bのうち、ケース構成部54aが後側に配置され、ケース構成部54bが前側に配置されている。なお、図5及び図6では、前側のケース構成部54bを取り外した状態で示している。また、以下では、ケース構成部54aを構成する各部の符号にaを付し、ケース構成部54bを構成する各部の符号にbを付す。
各ケース構成部54a,54bはそれぞれ、壁部56を構成する壁構成部56a,56bと、壁部57を構成する壁構成部57a,57bとを有している。各壁構成部56a,56bには挿通孔部59を構成する半円状の凹部59a,59bが形成され、各壁構成部57a,57bには挿通孔部59を構成する半円状の凹部59a,59bが形成されている。各ケース構成部54a,54bは、フロントフレーム部33bを各々の凹部59a,59bに配設した状態でボルト等の締結具58により互いに固定されている。これにより、各ケース構成部54a,54b(つまりケース54)はフロントフレーム部33bを挟んだ状態で当該フロントフレーム部33bに固定されている。なお、各ケース構成部54a,54bには、締結具58が挿通される挿通孔61が形成されている。
ケース54には、その筒状部55に操作部51が取り付けられている。操作部51は樹脂材料により帯状に形成され、変形可能とされている。なお、操作部51が変形可能であれば、操作部51を皮や布等、樹脂材料以外の素材で形成してもよい。
筒状部55には、その上端部に操作部51を挿通させるための挿通口66が形成されている。挿通口66は、筒状部55においてその長手方向(換言すると左右方向)に所定の間隔をおいて2つ設けられている。各挿通口66は前後に延びるスリット状の孔部となっており、各ケース構成部54a,54bに跨がって形成されている。
操作部51は、その両端側が各挿通口66を介してケース54の内部に挿入されている。操作部51は、かかる挿入状態において環状をなすように配置されている。この場合、操作部51の両端側はケース54の内部において同じ左右方向に延びるように配置されている。具体的には、操作部51の両端側のうち一端側(以下、一端側部分51aという)については、その先端(自由端)が右側を向くように配置され、他端側(以下、他端側部分51bという)については、その先端(自由端)が左側を向くように配置されている。また、一端側部分51aと他端側部分51bとは互いに上下に重ならないよう前後方向(換言すると操作部51の幅方向)にずらした(並んだ)状態で配置されている。本実施形態では、一端側部分51aが前側、他端側部分51bが後側に位置するように配置されている。また、一端側部分51a及び他端側部分51bは、ケース54の内部においてフロントフレーム部33bの上方に配置されている。
操作部51においてケース54の内部に挿入されていない中間部分、つまりケース54の内部から上方に引き出された部分は把持部51cとなっている。この把持部51cは、使用者がワイヤ52を引っ張る引張操作を行う際に把持する部分となっている。把持部51cは左右方向に延びる向きで配置され、歩行車10における左右方向の中央部に位置している。
操作部51の一端側部分51a及び他端側部分51bにはそれぞれワイヤ52が連結されている。これら各ワイヤ52のうち、一方のワイヤ52(以下、ワイヤ52Aという)は右側の脚体部11(詳しくはリンク部44)に連結されているもので、ガイドチューブ53(以下、ガイドチューブ53Aという)を通じてケース54の内部に導かれている。ガイドチューブ53Aは、その端部がケース54の壁部57の下部に形成された孔部(図示略)に壁部57外側から挿し込まれており、その挿込状態で壁部57に固定されている。また、ガイドチューブ53Aは、その端部開口がケース54内部に開放されており、その端部開口を介してワイヤ52Aがガイドチューブ53Aからケース54内部に導出されている。そして、このワイヤ52Aが一端側部分51aに連結されている。
また、各ワイヤ52のうち、他方のワイヤ52(以下、ワイヤ52Bという)は左側の脚体部11(詳しくはリンク部44)に連結されているもので、ガイドチューブ53(以下、ガイドチューブ53Bという)を通じてケース54の内部に導かれている。ガイドチューブ53Bは、その端部がケース54の壁部56(詳しくは壁構成部56a)の下部に形成された孔部65に壁部56外側から挿し込まれており、その挿込状態で壁部56に固定されている。また、ガイドチューブ53Bは、その端部開口がケース54内部に開放されており、その端部開口を介してワイヤ52Bがガイドチューブ53Bからケース54内部に導出されている。そして、このワイヤ52Bが他端側部分51bに連結されている。
続いて、各ワイヤ52A,52Bの一端側部分51a及び他端側部分51bに対する接続構成について説明する。
操作部51の一端側部分51aにはワイヤ52Aを挿通させるための挿通孔67aが設けられ、他端側部分51bにはワイヤ52Bを挿通させるための挿通孔67bが設けられている。各挿通孔67a,67bは、左右方向において挿通孔67aが右側、挿通孔67bが左側に位置するように配置されている。この場合、挿通孔67aは、左右方向において挿通孔67bよりも一端側部分51aの先端(自由端)寄りに配置され、挿通孔67bは、左右方向において挿通孔67aよりも他端側部分51bの先端(自由端)寄りに配置されている。
ワイヤ52Aにおいてガイドチューブ53Aからケース54内部に導出された導出部分には、その途中に折り返し部69aが設けられている。ワイヤ52Aは、その折り返し部69aにおいて挿通孔67aに挿通されている。ワイヤ52Aは、その折り返し部69aが挿通孔67aに係合され、その係合により一端側部分51aと接続されている。なお、挿通孔67aが「係合部」に相当する。
ワイヤ52Aは、折り返し部69aにおいて一端側部分51aの先端側(自由端側)に向けて折り返されている。ワイヤ52Aにおいて折り返し部69aを挟んだ両側部分のうち一方はガイドチューブ53Aに入り込んでおり、他方には円柱状のタイコ68aが固定されている。タイコ68aは、ワイヤ52Aの端部(詳しくは脚体部11側とは反対側の端部)に固定され、ケース構成部54bの壁構成部57bに形成された孔部(図示略)に挿入されている。孔部は、ケース構成部54aに向けて開口しており、その孔部の奥側にタイコ68aが挿入されている。また、孔部には、ケース構成部54aに設けられた突部63aがさらに挿入され、その突部63aによりタイコ68aが孔部から脱落しない状態で壁部57に固定されている。また、タイコ68aは、壁部57の上部に固定され、壁部57の下部に固定されたガイドチューブ53Aの端部の真上に配置されている。
ワイヤ52Bにおいてガイドチューブ53Bからケース54内部に導出された導出部分には、その途中に折り返し部69bが設けられている。ワイヤ52Bは、その折り返し部69bにおいて挿通孔67bに挿通されている。ワイヤ52Bは、その折り返し部69bが挿通孔67bに係合され、その係合により他端側部分51bと接続されている。なお、挿通孔67bが「係合部」に相当する。
ワイヤ52Bは、折り返し部69bにおいて他端側部分51bの先端側(自由端側)に向けて折り返されている。ワイヤ52Bにおいて折り返し部69bを挟んだ両側部分のうち一方はガイドチューブ53Bに入り込んでおり、他方には円柱状のタイコ68bが固定されている。タイコ68bは、ワイヤ52Bの端部(詳しくは脚体部11側とは反対側の端部)に固定され、ケース構成部54aの壁構成部56aに形成された孔部62aに挿入されている(図6参照)。孔部62aは、ケース構成部54bに向けて開口しており、その孔部62aの奥側にタイコ68bが挿入されている。また、孔部62aには、ケース構成部54bに設けられた突部(図示略)がさらに挿入され、その突部によりタイコ68bが孔部62aから脱落しない状態で壁部56に固定されている。また、タイコ68bは、壁部56の上部に固定され、壁部56の下部に固定されたガイドチューブ53Bの端部の真上に配置されている。
続いて、操作部51によりワイヤ52を引っ張る引張操作を行う際の作用について図7に基づいて説明する。図7は、かかる引張操作が行われている際の様子を示す正面図である。なお、図7では、図6と同様、ケース構成部54bを取り外した状態で示している。
図7に示すように、引張操作に際しては、操作部51の把持部51cが使用者により把持された状態で上方に引き上げられる。すると、把持部51cの引き上げに伴い、操作部51の一端側部分51aが左側に変位し、他端側部分51bが右側に変位する。そして、それら各部分51a,51bの変位によって、一端側部分51aに接続されたワイヤ52Aが左側に引っ張られ、他端側部分51bに接続されたワイヤ52Bが右側に引っ張られる。この場合、これら各ワイヤ52A,52Bが左右に引っ張られることで、各ワイヤ52A,52Bはリンク部44との連結部においてはそれぞれ上方に引っ張られる(変位する)ことになる。
次に、上述した操作部51による引張操作により各ワイヤ52A,52Bが引っ張られることに基づき、各脚体部11が開脚状態から閉脚状態に移行する際の作用について図8に基づき説明する。図8は、脚体部11が開脚状態から閉脚状態へ移行する際の様子を示す側面図であり、(a)が開脚状態から閉脚状態へ移行する移行途中の状態を示し、(b)が閉脚状態を示している。
図8(a)に示すように、操作部51に対する引張操作により各ワイヤ52A,52Bが上方に向けて引っ張られると、それに伴い各ワイヤ52A,52Bに連結されたリンク部44がそれぞれ上方に引き上げられる。この際、リンク部44は、ワイヤ52A、52Bが連結されたリンク45の延出部45bにおいて上方に引き上げられ、それにより各リンク45,46が上方に折れ曲がるように回動軸47を中心として回動する。そして、各リンク45,46の折れ曲がりに伴って、それら各リンク45,46に連結された前脚フレーム15及び後脚フレーム16が、互いの下部同士が接近する側へと回動する。
図8(b)に示すように、操作部51による引張操作により各ワイヤ52A,52Bがさらに上方へ引っ張られると、各リンク部44は各リンク45,46が折り畳まれた折り畳み状態となる。リンク部44が折り畳み状態になると、リンク部44に連結された前脚フレーム15及び後脚フレーム16がさらに接近し前後に折り畳まれた状態となる。これにより脚体部11が閉脚状態とされる。なお、本実施形態では、リンク部44と軸部48,49とを有して「閉脚手段」が構成されている。
各脚体部11を閉脚状態から開脚状態に移行させる際には、各ハンドル14を持ってそれらハンドル14に下向きの荷重を加える。この場合、その下向き荷重により、脚体部11の前脚フレーム15及び後脚フレーム16が互いに離間する側へ回動し、それにより脚体部11が開脚状態へ移行する。
ここで、本歩行車10では、上述したように、脚体部11に対して上部構成体13を上下移動させることでハンドル14の高さ位置を調整することが可能となっている。そして、その上下移動可能とされた上部構成体13に操作部51が設けられている。この場合、上部構成体13の上下移動に際し操作部51が上下に変位するため、操作部51に接続されているワイヤ52が操作部51の変位に追従して撓み変形することになる。そこで以下においては、かかる場合のワイヤ52の撓み変形の様子について図9を用いながら説明する。図9は、上部構成体13の上下移動に伴いワイヤ52及びガイドチューブ53が撓み変形する様子を示す側面図である。なお、図9(a)ではハンドル14が標準高さ位置に設定された場合を示しており、図9(b)ではハンドル14が標準高さ位置よりも下方の位置に設定された場合を示している。また、図9(a)及び(b)ではいずれも脚体部11が開脚状態とされている。
図9(a)に示すように、ハンドル14が標準高さ位置に設定されている場合、各ワイヤ52はガイドチューブ53に挿通されている挿通部分52aがガイドチューブ53とともに撓んだ状態となっている。その一方で、各ワイヤ52においてガイドチューブ53から下方に導出されリンク部44に連結されている導出部分52bについては、直線状に延びるように配設されている。詳しくは、各ワイヤ52の導出部分52bは、ガイドチューブ53の下端からリンク部44に至る全域に亘って直線状に延びている。つまり、導出部分52bは、直線状に張った状態で配設されている。
次に、図9(b)に示すように、上部構成体13を各脚体部11に対して下方に移動させることでハンドル14の高さ位置を標準高さ位置からそれよりも下方位置に設定すると、それに伴い操作部51が下方に変位し、それにより操作部51に接続されているワイヤ52が操作部51の変位に追従して撓み変形する。
詳しくは、上部構成体13の下方への移動に際し、一端部が脚体部11の前脚フレーム15に固定されかつ他端部がケース54(ひいては上部構成体13)に固定されたガイドチューブ53が上部構成体13の移動に追従して撓み変形し、その撓み変形に伴いワイヤ52においてガイドチューブ53に挿通されている挿通部分52aが撓み変形する。より詳しくは、この場合、ワイヤ52においてガイドチューブ53への挿通部分52aのみが撓み変形し、ワイヤ52においてガイドチューブ53から導出された導出部分については上部構成体13の移動に追従して変形することがない。つまり、かかる導出部分については、上部構成体13の移動に際して同じ形態を保持することになる。したがって、ワイヤ52においてガイドチューブ53から下方に導出されている導出部分52bについては直線状に張った状態を保持することになり、また、図示は省略するがワイヤ52においてガイドチューブ53からケース54内部に導出された部分についても同じ形態を保持することになる。
このように、本歩行車10では、上部構成体13の上下移動によりハンドル14の高さ位置がいずれの位置に設定されても、ワイヤ52においてガイドチューブ53から導出された導出部分については同じ形態を保持することができるため、操作部51によるワイヤ52の引張操作の際、ワイヤ52を同じように引っ張ることが可能となる。そのため、ハンドル14の高さ位置にかかわらず、引張操作により脚体部11を閉脚状態に移行させることが可能となる。
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
脚体部11に可撓性を有するワイヤ52を連結し、そのワイヤ52を操作部51に連結した。そして、操作部51によりワイヤ52を引っ張る引張操作を行うことで、脚体部11を開脚状態から閉脚状態へと移行させる閉脚手段を設けた。ワイヤ52は可撓性を有するため、ワイヤ52の配設経路についてはその途中で曲げ部を設けるなど、比較的自由に設定することができる。これにより、ワイヤ52に接続される操作部51について、その配置に関する自由度を高めることができる。
操作部51を、各ハンドル14を有する上部構成体13に設けたため、ハンドル高さがいずれの高さに設定されていても、操作部51をハンドル14の高さ付近に位置させることができ、それにより操作部51による脚体部11の閉脚操作をハンドル14付近でそれ程屈むことなく行うことができる。
また、上部構成体13の上下移動に伴い操作部51が上下に変位する際には、操作部51に連結されているワイヤ52が操作部51の変位に追従して撓むことになるため、操作部51がリンク機構により脚体部11と連結されている構成と異なり、上部構成体13の上下移動を許容しながら、操作部51を上部構成体13に配置することが可能となる。
操作部51に各ワイヤ52A,52Bを接続することで、操作部51の引張操作によりそれら各ワイヤ52A,52Bをそれぞれ引っ張るようにした。この場合、かかる引張操作により左右の各脚体部11を一挙に閉脚状態に移行させることができる。
帯状の操作部51において、その両端側に各ワイヤ52A,52Bが挿通される挿通孔67a,67bを設け、その中間部に把持部51cを設けた。そして、各挿通孔67a,67bに各ワイヤ52A,52Bの折り返し部69a,69bを挿通し係合させ、その係合により各ワイヤ52A,52Bを操作部51に接続した。この場合、引張操作の際、把持部51cが把持された状態で上方に引き上げられることで、操作部51の両端側(一端側部分51a、他端側部分51b)がそれぞれ変位し各ワイヤ52が引っ張られる。また、操作部51の両端側には各ワイヤ52A,52Bの折り返し部69a,69bが係合されているため、引張操作の際に、操作部51が変位する変位量(換言すると把持部51cを引く量)に対するワイヤ52A,52Bの引張量(引張長さ)を大きくすることができる。このため、かかる引張操作を好適に行うことができる。
操作部51を環状をなして配置したため、操作部51をコンパクトに配置することができる。また、ワイヤ52A,52Bの挿通孔67a,67bが設けられた操作部51の両端側を互いに重ならないよう幅方向にずらして配置したため、それら両端側のうちの一方が他方の挿通孔に挿通されたワイヤ52と干渉するのを抑制することができる。これにより、ワイヤ52の引張操作が妨げられるのを抑制しつつ、操作部51をコンパクトに配置することができる。
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
・上記実施形態では、操作部51の両端側に形成された挿通孔67a,67bに各ワイヤ52の折り返し部69a,69bを挿通し係合させることで、各ワイヤ52を操作部51に接続(連結)したが、操作部51に対する各ワイヤ52の接続の仕方は必ずしもこれに限らない。例えば、操作部51の両端側にそれぞれ各ワイヤ52のタイコ68a,68bを取り付け、それにより各ワイヤ52を操作部51に接続するようにしてもよい。この場合にも、操作部51による引張操作により各ワイヤ52をそれぞれ引っ張ることが可能となる。
・上記実施形態では、操作部51を環状をなすように配置したが、操作部51の配置態様は必ずしもこれに限らない。例えば、操作部51において一端側部分51aと他端側部分51bとが左右方向に互いに離間して配置されるようにしてもよい。この場合、一端側部分51aが左側、他端側部分51bが右側に配置されるため、一端側部分51aにワイヤ52Bを接続し、他端側部分51bにワイヤ52Aを接続するようにすればよい。
・上記実施形態では、操作部51を帯状に形成したが、これを変更して、操作部51を紐等により線状に形成してもよい。この場合、操作部51の両端側にフック等の係合部を設け、それら各係合部に各ワイヤ52の折り返し部69a,69bを係合させることが考えられる。この場合、それら係合部への係合によって各ワイヤ52が操作部51と接続されることになる。
・上記実施形態では、操作部51をハンドルフレーム33のフロントフレーム部33bに設けたが、例えば操作部51をサイドフレーム部33aに設けてもよい。この場合、ケース54をサイドフレーム部33aに沿って前後に延びる向きで取り付け、そのケース54に操作部51を取り付けることが考えられる。したがって、この場合、操作部51は把持部51cが前後方向に延びる向きで取り付けられることになる。このように、操作部51の位置や取付向きが変わっても、操作部51の位置や向きに応じてワイヤ52の配設経路を設定することで、操作部51の各種配置態様に対応することが可能となる。
・操作部51の構成は必ずしも上記実施形態のものに限定されない。例えば操作部を硬質樹脂製又は金属製とし、上部構成体13に回動可能に設ける。そして、その操作部にワイヤ52を接続し、操作部を回動操作(引張操作に相当)することでワイヤ52を所定方向に引っ張る構成とすることが考えられる。この場合にも、操作部の回動操作によりワイヤ52を引っ張ることで、脚体部11を閉脚状態に移行させることができる。
・上記実施形態では、一の操作部51に各ワイヤ52A,52Bをそれぞれ接続したが、例えば操作部を各ワイヤ52A,52Bごとに2つ設け、一方の操作部にワイヤ52Aを接続し、他方の操作部にワイヤ52Bを接続するようにしてもよい。この場合、一方の操作部を右側のハンドル14付近に設け、他方の操作部を左側のハンドル14付近に設けることが考えられる。かかる構成では、各操作部による引張操作により各ワイヤ52A,52Bをそれぞれ引っ張ることになる。
・上記実施形態では、操作部51を上部構成体13に設けたが、例えば操作部51を脚体部11側に設けてもよい。この場合にも、操作部51と脚体部11とがワイヤ52を介して連結されているため、操作部51の配置に関する自由度を高めることができる。また、この場合、ガイドチューブ53を不具備としてもよい。
・上記実施形態では、上部構成体13の上下移動によりハンドル14の高さ調整が可能とされた歩行車10に本発明を適用したが、ハンドル高さの調整ができない歩行車に本発明を適用してもよい。この場合にも、操作部51の配置自由度を高めるという上述の効果を得ることができる。