JP2019179203A - 異方性光学フィルム - Google Patents

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【課題】拡散範囲を狭くすることが可能であり、且つ、集光性能を高めた異方性光学フィルムの提供。【解決手段】一方の表面から入射する光の入射角に依存して、他方の表面から出射する光の拡散性が変化する異方性光学フィルム100であって、異方性光学フィルム100は、マトリックス領域111と、マトリックス領域とは絶対屈折率の異なる、複数の柱状領域113とを含み、複数の柱状領域113は、異方性光学フィルム100の一方の表面から他方の表面に向かって延在しており、異方性光学フィルム100の少なくとも一方の表面に、凹凸パターン150として、下記(1)及び(2)の構造の内、少なくとも一つの構造を設ける。(1)複数の凸部及び/又は凹部を含むドット構造、(2)平行に設けられた複数の溝を含む溝構造【選択図】図5

Description

本発明は、異方性光学フィルムに関する。
光拡散性を有する部材(光拡散部材)は、照明器具や建材の他、表示装置においても使用されている。この表示装置としては、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL)等がある。光拡散部材の光拡散発現機構としては、表面に形成された凹凸による散乱(表面散乱)、マトリックス樹脂とその中に分散された微粒子間の屈折率差による散乱(内部散乱)、及び表面散乱と内部散乱の両方によるものが挙げられる。但し、これらの光拡散部材は、一般にその拡散性能は等方的であり、入射光角度を少々変化させても、その透過光の拡散特性が大きく異なることはなかった。
一方、一定の角度領域の入射光は強く拡散し、それ以外の角度の入射光は透過する、すなわち、入射光角度に応じて直線透過光量を変化させることが可能な、異方性光学フィルムが知られている。このような異方性光学フィルムとしては、光重合性化合物を含む組成物の硬化物からなる樹脂層の内部に、全て所定の方向Pに対して平行に延在する複数の棒状硬化領域の集合体を形成した異方性拡散媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、以後、本明細書において、特許文献1に記載されたような、所定の方向Pに対して平行に延在する複数の棒状硬化領域の集合体を形成した異方性光学フィルムの構造を「ピラー構造」と称する。
かかるピラー構造の異方性光学フィルムにおいては、当該フィルムに対してその上方から下方に向けて光が入射された場合、フィルム製造工程での流れ方向(以下、「MD方向」と称する。)と、MD方向に垂直なフィルムの幅方向(以下、「TD方向」と称する。)とで、同一の拡散を示す。すなわち、ピラー構造の異方性光学フィルムでの拡散は、等方性を示す。したがって、ピラー構造の異方性光学フィルムでは、輝度の急激な変化やギラツキが生じにくい。
一方、異方性光学フィルムとして、上記ピラー構造ではなく、光重合性化合物を含む組成物の硬化物からなる樹脂層の内部に、1又は複数の板状硬化領域の集合体を形成した異方性光学フィルム(例えば、特許文献2を参照)を用いることで、非拡散領域における直線透過率を向上させ、拡散幅を広くすることができる。なお、以後、本明細書において、特許文献2に記載されたような、1又は複数の板状硬化領域の集合体を形成した異方性光学フィルムの構造を「ルーバー構造」と称する。
これに対して、ピラー構造の異方性光学フィルムとルーバー構造の異方性光学フィルムの問題を解決し、光の透過と拡散において良好な入射光角度依存性を有するとともに、拡散領域の幅を広くするため、例えば、特許文献3には、ピラー構造(特許文献3における「カラム構造」に相当)の異方性光拡散層とルーバー構造の異方性光拡散層を積層させた異方性光学フィルムが開示されている。
特開2005−265915号公報 特許第4802707号公報 特開2012−141593号公報
しかしながら、上述した異方性光学フィルムは、拡散範囲を狭くすることが困難であり、集光性能が十分ではない場合があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡散範囲を狭くすることが可能であり、且つ、集光性能を高めた異方性光学フィルムを提供することである。
本発明者らが鋭意検討を行ったところ、異方性光学フィルムに特定の構造を設けることで上記課題を解決可能であることを発見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
本発明は、
一方の表面から入射する光の入射角に依存して、他方の表面から出射する光の拡散性が変化する異方性光学フィルムであって、
前記異方性光学フィルムは、マトリックス領域と、前記マトリックス領域とは絶対屈折率の異なる、複数の柱状領域とを含み、
前記複数の柱状領域は、前記異方性光学フィルムの一方の表面から他方の表面に向かって延在しており、
前記異方性光学フィルムの少なくとも一方の表面に、凹凸パターンとして、下記(1)及び(2)の構造の内、少なくとも一つの構造が設けられていることを特徴とする、異方性光学フィルムである。
(1)複数の凸部及び/又は凹部を含むドット構造
(2)平行に設けられた複数の溝を含む溝構造
ここで、前記ドット構造において、前記凸部及び/又は凹部の、最大幅が、1μm〜50μm、高さ又は深さが、1μm〜50μmであってもよい。
前記溝構造において、前記溝の高さが、1μm〜50μm、ピッチが、1μm〜50μmであってもよい。
前記異方性光学フィルム表面において、前記複数の柱状領域の平均短径と平均長径との長さの比であるアスペクト比が、1〜20であってもよい。
前記異方性光学フィルム表面において、前記複数の柱状領域の平均短径と平均長径との長さのであるアスペクト比が、20超であってもよい。
前記異方性光学フィルムの前記溝構造の溝方向に対して垂直な断面において、前記複数の柱状領域の軸方向が、前記異方性光学フィルム表面の法線方向に対して傾斜していてもよい。
前記異方性光学フィルム表面において、前記複数の柱状領域の最長径方向が、前記溝構造の溝方向に対し、平行に配列していてもよい。
前記異方性光学フィルムの最大厚みが、20μm〜100μmであってもよい。
前記複数の柱状領域の軸方向が、前記異方性光学フィルム表面の法線方向に対し、前記異方性光学フィルムの一方の表面から他方の表面に向かって、0°〜70°傾斜していてもよい。
ピラー構造及びルーバー構造の柱状領域を有する異方性光学フィルムの構造と、これらの異方性光学フィルムに入射した透過光の様子の一例を示す模式図である。 異方性光学フィルムの光拡散性の評価方法を示す説明図である。 図1に示したピラー構造及びルーバー構造の異方性光学フィルムへの入射光角度と直線透過率との関係を示すグラフである。 拡散領域と非拡散領域を説明するためのグラフである。 本形態に係る異方性光学フィルム100の構成の一例を示す概念断面図である。 本形態に係る異方性光学フィルム100の一例を示す概念上面図{(A1)、(B1)}及び概念断面図{(A2)、(B2)}である。 本形態に係る異方性光学フィルム100における、凹部の形状の一例を示す概念図である。 本形態に係る異方性光学フィルム100における、溝の断面形状の一例を示す概念断面図である。 本形態に係る異方性光学フィルム100における、溝構造の一例を示す概念上面図である。 本形態に係る異方性光学フィルム100における、ドット構造の一例を示す概念上面図{(C1)}及び概念断面図{(C2)}である。 本形態に係る異方性光学フィルム100の製造方法の一例を示す概念図である。
<<<主な用語の定義>>>
「絶対屈折率の異なる」とは、本発明に係る異方性光学フィルムを構成する材料の局所的な屈折率の高低差により形成される領域であって、他方に比べて屈折率が低いか高いかを示した相対的なものである。なお、「マトリックス領域」と、「マトリックス領域とは絶対屈折率の異なる、複数の柱状領域」とは、通常、異方性光学フィルムを形成する材料が硬化する際に、相分離することで形成される。
「散乱中心軸」とは、異方性光学フィルムへの入射光角度を変化させた際に光拡散性がその入射光角度を境に略対称性を有する光の入射光角度と一致する方向を意味する。「略対称性を有する」としたのは、散乱中心軸がフィルムの法線方向に対して傾きを有する場合には、光学特性(後述する「光学プロファイル」)が厳密には対称性を有しないためである。散乱中心軸は、異方性光学フィルムの断面の傾きを光学顕微鏡によって観察することや、異方性光学フィルムを介した光の投影形状を、入射光角度を変化させて観察することにより確認することができる。
又、直線透過率とは、一般に、異方性光学フィルムに対して入射した光の直線透過性に関し、ある入射光角度から入射した際に、直線方向の透過光量と、入射した光の光量との比率であり、下記式で表される。
直線透過率(%)=(直線透過光量/入射光量)×100
又、本発明においては、「散乱」と「拡散」の両者を区別せずに使用しており、両者は同じ意味を示す。更に、「光重合」及び「光硬化」の意味を、光重合性化合物が光により重合反応することとし、両者を同義語で用いることとする。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面においては、同一の符号が付された構成要素は、実質的に同一の構造又は機能を有するものとする。
<<<従来技術に係る異方性光学フィルムの構造と特性>>>
図1〜図4を参照しながら、本形態に係る異方性光学フィルムについて説明する前提として、従来技術に係る単層の異方性光学フィルムの構造と特性について説明する。
図1は、ピラー構造及びルーバー構造の柱状領域を有する単層の異方性光学フィルムの構造と、これらの異方性光学フィルムに入射した透過光の様子の一例を示す模式図である。図2は、異方性光学フィルムの光拡散性の評価方法を示す説明図である。図3は、図1に示したピラー構造及びルーバー構造の異方性光学フィルムへの入射光角度と直線透過率との関係を示すグラフである。図4は、拡散領域と非拡散領域を説明するためのグラフである。
<<異方性光学フィルムの基本的な構造>>
異方性光学フィルムとは、フィルムの膜厚方向に、フィルムのマトリックス領域とは屈折率の異なる領域が形成されたフィルムである。屈折率の異なる領域の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、図1(a)に示すように、マトリックス領域11中に、短径と長径のアスペクト比の小さな柱状(例えば、棒状)に形成された屈折率の異なる柱状領域13が形成された異方性光学フィルム(ピラー構造の異方性光学フィルム)10や、図1(b)に示すように、マトリックス領域21中に、アスペクト比の大きな柱状(例えば、略板状)に形成された屈折率の異なる柱状領域23が形成された異方性光学フィルム(ルーバー構造の異方性光学フィルム)20等がある。
<<異方性光学フィルムの特性>>
上述した構造を有する異方性光学フィルムは、当該フィルムへの入射光角度により光拡散性が異なる光拡散フィルム、すなわち入射光角度依存性を有する光拡散フィルムである。この異方性光学フィルムに所定の入射光角度で入射した光は、屈折率の異なる領域の配向方向(例えば、ピラー構造における柱状領域13の延在方向(配向方向)やルーバー構造における板状領域23の高さ方向)と略平行である場合には拡散が優先され、当該方向に平行でない場合には透過が優先される。
ここで、図2及び3を参照しながら、異方性光学フィルムの光拡散性についてより具体的に説明する。ここでは、上述したピラー構造の異方性光学フィルム10と、ルーバー構造の異方性光学フィルム20の光拡散性を例に挙げて説明する。
光拡散性の評価方法は、以下のようにして行う。まず、図2に示すように、異方性光学フィルム10、20を、光源1と検出器2との間に配置する。本形態においては、光源1からの照射光Iが、異方性光学フィルム10、20の法線方向から入射する場合を入射光角度0°とした。又、異方性光学フィルム10、20は直線Lを中心として、任意に回転させることができるように配置され、光源1及び検出器2は固定されている。すなわち、この方法によれば、光源1と検出器2との間にサンプル(異方性光学フィルム10、20)を配置し、サンプル表面の直線Lを中心軸として角度を変化させながらサンプルを直進透過して検出器2に入る直線透過率を測定することができる。
異方性光学フィルム10、20を、それぞれ、図1のTD方向(異方性光学フィルムの幅方向の軸)を図2に示す回転中心の直線Lに選んだ場合における光拡散性を評価し、得られた光拡散性の評価結果を図3に示した。図3は、図2に示す方法を用いて測定した図1に示す異方性光学フィルム10、20が有する光拡散性(光散乱性)の入射光角度依存性を示すものである。図3の縦軸は、散乱の程度を示す指標である直線透過率(本形態では、所定の光量の平行光線を入射させたときに、入射方向と同じ方向に出射された平行光線の光量の割合、より具体的には、直線透過率=(異方性光学フィルム10、20がある場合の検出器2の検出光量/異方性光学フィルム10、20がない場合の検出器2の検出光量)×100)を示し、横軸は異方性光学フィルム10、20への入射光角度を示す。図3中の実線は、ピラー構造の異方性光学フィルム10の光拡散性を示し、破線は、ルーバー構造の異方性光学フィルム20の光拡散性を示している。なお、入射光角度の正負は、異方性光学フィルム10、20を回転させる方向が反対であることを示している。
図3に示すように、異方性光学フィルム10、20は、入射光角度によって直線透過率が変化する光拡散性の入射光角度依存性を有するものである。ここで、図3のように光拡散性の入射光角度依存性を示す曲線を以下、「光学プロファイル」と称する。光学プロファイルは、光拡散性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね光拡散性を示しているといえる。通常の等方的な光拡散フィルムでは、0°付近をピークとする山型の光学プロファイルを示すが、異方性光学フィルム10、20では、柱状領域13、23の中心軸(厚み)方向、すなわち、散乱中心軸方向(この方向の入射光角度を0°とする。)で入射する場合の直線透過率と比較して、−20°〜+20°の入射光角度で一旦直線透過率が極小値になり、その入射光角度(の絶対値)が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなり、−60°〜−25°及び+25°〜+60°の入射光角度で直線透過率が極大値となる谷型の光学プロファイルを示す。このように、異方性光学フィルム10、20は、入射光が散乱中心軸方向に近い−20°〜+20°の入射光角度範囲では強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。以下、最大直線透過率と最小直線透過率との中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の角度範囲を拡散領域(この拡散領域の幅を「拡散幅」)と称し、それ以外の入射光角度範囲を非拡散領域(透過領域)と称する。ここで、図4を参照しながら、ルーバー構造の異方性光学フィルム20を例に挙げて拡散領域と非拡散領域について説明する。図4は、図3のルーバー構造の異方性光学フィルム20の光学プロファイルを示したものであるが、図4に示すように、最大直線透過率(図4の例では、直線透過率が約78%)と最小直線透過率(図4の例では、直線透過率が約6%)との中間値の直線透過率(図4の例では、直線透過率が約42%)に対する2つの入射光角度の間(図4に示す光学プロファイル上の2つの黒点の位置の2つの入射光角度の内側)の入射光角度範囲が拡散領域となり、それ以外(図4に示す光学プロファイル上の2つの黒点の位置の2つの入射光角度の外側)の入射光角度範囲が非拡散領域となる。
ピラー構造の異方性光学フィルム10では、図1(b)の透過光の様子を見ればわかるように、透過光は略円形状となっており、MD方向とTD方向とで略同一の光拡散性を示している。すなわち、ピラー構造の異方性光学フィルム10では、拡散は等方性を有する。又、図3の実線で示すように、入射光角度を変えても光拡散性(特に、非拡散領域と拡散領域との境界付近における光学プロファイル)の変化が比較的緩やかであるため、輝度の急激な変化やギラツキを生じないという効果がある。しかしながら、異方性光学フィルム10では、図3の破線で示されたルーバー構造の異方性光学フィルム20の光学プロファイルと比較すればわかるように、非拡散領域における直線透過率が低いため、表示特性(輝度やコントラスト等)がやや低下してしまうという問題もある。又、ピラー構造の異方性光学フィルム10は、ルーバー構造の異方性光学フィルム20と比較して、拡散領域の幅も狭い、という問題もある。
他方、ルーバー構造の異方性光学フィルム20では、図1(a)の透過光の様子を見ればわかるように、透過光は、略針状となっており、MD方向とTD方向とで光拡散性が大きく異なる。すなわち、ルーバー構造の異方性光学フィルム20では、拡散は異方性を有する。具体的には、図1に示す例では、MD方向ではピラー構造の場合よりも拡散が広がっているが、TD方向ではピラー構造の場合よりも拡散が狭まっている。又、図3の破線で示すように、入射光角度を変えると、(本形態の場合、TD方向において)光拡散性(特に、非拡散領域と拡散領域との境界付近における光学プロファイル)の変化が極めて急峻であるため、異方性光学フィルム20を表示装置に適用した場合、輝度の急激な変化やギラツキとなって現れ、視認性を低下させるおそれがあった。加えて、ルーバー構造の異方性光学フィルムは光の干渉(虹)が生じやすい、という問題もある。しかしながら、異方性光学フィルム20では、非拡散領域における直線透過率が高く、表示特性を向上させることができるという効果がある。
<<<異方性光学フィルム>>>
本形態に係る異方性光学フィルム100の構成について説明する。図5は、本形態に係る異方性光学フィルム100の構成の一例を示す概念断面図である。
本形態に係る異方性光学フィルム100は、マトリックス領域111と、マトリックス領域111とは絶対屈折率の異なる、複数の柱状領域113とを含み、異方性光学フィルム100の少なくとも一方の表面に、凹凸パターン150が形成されている。以下、マトリックス領域、柱状領域、及び、凹凸パターン150について説明する。
なお、図5は単なる概念図であり、凹凸パターン150と柱状領域113とは、そのスケールが全く異なる場合がある。従って、異方性光学フィルム100の断面において、実際に凹凸パターン150と柱状領域113とを同時に観察することが困難な場合があることを付言する。
<<マトリックス領域及び柱状領域>>
本発明は、異方性光学フィルム100の表面に特定の構造(凹凸パターン)を設けることにより、異方性光学フィルム100の性質を改変させ、従来有した集光性を、より強調するためのものである。従って、異方性光学フィルムの厚み部分の構造(マトリックス領域111及び柱状領域113)に関しては、以下に何ら限定されず、従来の異方性光学フィルムで用いられた公知の構造に関しても適用可能である。
図5に示すように、異方性光学フィルム100は、マトリックス領域111と、マトリックス領域111とは屈折率が異なる複数の柱状領域113とを有する。また、入射光角度により直線透過率が変化する光拡散性を有している。
柱状領域113の配向方向(延在方向)Pと散乱中心軸とは通常平行となり、異方性光学フィルム100が所望の直線透過率及び拡散性を有するように適宜定められている。なお、柱状領域の配向方向と散乱中心軸とが平行であるとは、屈折率の法則(Snellの法則)を満たすものであればよく、厳密に平行である必要はない。
Snellの法則は、屈折率nの媒質から屈折率nの媒質の界面に対して光が入射する場合、その入射光角度θと屈折角θとの間に、nsinθ=nsinθの関係が成立するものである。
例えば、n=1(空気)、n=1.51(異方性光学フィルム)とすると、入射光角度が30°の場合、柱状領域の配向方向(屈折角)は約19°となるが、このように入射光角度と屈折角が異なっていてもSnellの法則を満たしていれば、本形態においては平行の概念に包含される。
マトリックス領域111の絶対屈折率は、柱状領域113の絶対屈折率と異なっていればよいが、これらの絶対屈折率がどの程度異なるかは特に限定されず、相対的なものである。
マトリックス領域111の絶対屈折率が柱状領域113の絶対屈折率よりも低い場合、マトリックス領域111は低屈折率領域となる。
逆に、マトリックス領域111の絶対屈折率が柱状領域113の絶対屈折率よりも高い場合、マトリックス領域111は高屈折率領域となる。
本発明においては、1層の異方性光学フィルム100の厚さ方向に渡って、柱状領域113とマトリックス領域111の界面が途切れることなく連続して存在する構成を有することが好ましい。
柱状領域113とマトリックス領域111の界面がつながった構成を有することで、光の拡散と集光が異方性光学フィルム100を通過する間、連続して生じやすくなり、光の拡散と集光の効率が上がる。一方、異方性光学フィルム100の断面において、柱状領域113及びマトリックス領域111が、まだらに存在するものが主になると、集光性が得にくくなるため好ましくない。
ここで、柱状領域113の、異方性光学フィルム100の表面(又は、柱状領域配向方向に垂直な断面)における平均短径と平均長径のアスペクト比(=平均長径/平均短径)が、1〜20以下の場合(所謂ピラー構造)と、20超の場合(所謂ルーバー構造)と、のいずれであってもよい。
なお、これらの平均長径及び平均短径は、異方性光学フィルム100の表面(紫外線照射時の照射光の反対側)を光学顕微鏡で観察し、任意の100個の柱状領域の長径及び短径を測定して得られたものである。
柱状領域の形状(フィルム表面に平行な断面形状、又は、フィルム表面の形状)は、円形状又は楕円形状であることが好ましいが、それ以外の形状であってもよい。
なお、異方性光学フィルム100としては、柱状領域113の配向方向(軸方向)がフィルムの膜厚方向(法線方向)と一致しないものであってもよい。この場合、異方性光学フィルム100においては、入射光が法線方向から所定角度傾いた方向(すなわち、柱状領域113の配向方向)に近い入射光角度範囲(拡散領域)では強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲(非拡散領域)では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。
より詳細には、柱状領域113の軸方向が、異方性光学フィルム100表面の法線方向に対し、異方性光学フィルム100の一方の表面から他方の表面に向かって、70°以下で傾斜していてもよい。
また、このような傾斜構造とする場合、傾斜角度が、30°〜70°であることが好ましい。
なお、柱状領域113が膜厚に沿ってまっすぐに配向せず、途中で折れ曲がっている形態や歪んでいる形態も存在する。このような場合、柱状領域113を直線や長方形で近似し、その直線や長方形の傾きをもって、傾斜角度とすることができる。
ここで、柱状領域113は、アスペクト比が異なる柱状領域が混在してもよいし、また、高さの異なる柱状領域113が混在してもよい。例えば、異方性光学フィルムの厚み全体亘って形成されたアスペクト比が1〜20の範囲である複数の柱状領域と、異方性光学フィルム100の厚みの半分の高さとなるように形成されたアスペクト比が20超の複数の柱状領域と、が混在する異方性光学フィルム等も、本発明の範囲内である。
<<凹凸パターン>>
凹凸パターン150は、異方性光学フィルム100の表面に直接設けられた凹凸構造である。以下、図6〜図10に基づき、異方性光学フィルム100の凹凸パターン150について説明する。
凹凸パターン150は、下記(1)及び(2)の構造の内、少なくとも一つの構造である。
(1)複数の凸部及び/又は凹部を含むドット構造{例えば、図6(A1)及び図6A2)に示される構造}
(2)各々が平行に設けられた複数の溝を含む溝構造{例えば、図6(B1)及び図6(B2)に示される構造}
より詳細には、図6(A1)は、凹凸パターン150としてドット構造を有する異方性光学フィルム100の概念上面図であり、図6(A2)は、当該異方性光学フィルム100の概念断面図である。当該図に示されるように、異方性光学フィルム100の表面には、複数の凸部151が設けられることで、凹凸パターン150が形成される。
また、図6(B1)は、凹凸パターン150として溝構造を有する異方性光学フィルム100の概念上面図であり、図6(B2)は、当該異方性光学フィルム100の概念断面図である。当該図に示されるように、異方性光学フィルム100の表面には、複数の溝152が設けられることで、凹凸パターン150が形成される。
なお、異方性光学フィルム100において、ドット構造及び溝構造の両方の凹凸パターン150が設けられていてもよい。この場合、溝と溝との間にドット構造が形成されている構造や、ドット構造と溝構造とが別の領域として完全に区分された構造(例えば、異方性光学フィルム100の左半分がドット構造を有する領域であり、右半分が溝構造を有する領域となる構造)等であってもよい。
また、凹凸パターン150は、異方性光学フィルム100の両面に設けられていてもよい。
なお、凹凸パターン150は、異方性光学フィルム100表面の特定の領域のみに形成されていてもよい。即ち、異方性光学フィルム100表面の一部の領域が、凹凸パターン150を有しない構造(例えば、単なる平滑構造)であってもよい。
以下、ドット構造、及び、溝構造の其々について詳述する。
<ドット構造>
ドット構造は、複数の凸部及び/又は凹部が繰り返し設けられた構造である。
凹部及び凸部の形状としては特に限定されず、凹部形状の一例として、例えば図7(a)〜(g)に示すような形状が挙げられる。なお、図7(a)〜(g)に示されるような凹部形状を、フィルム表面を基準として高さ方向に反転させたような形状を凸部形状とすることができる。
これらの凹部及び凸部の形状としては、単独の形状が用いられてもよく、複数の形状を組み合せて用いられてもよい。
また、凹部及び凸部の両方を有するドット構造である場合、凹部及び凸部が滑らかに連続していてもよいし、連続していなくてもよい。
また、凹部及び凸部の配列は特に限定されず、これらがランダムに配置されても規則的に配置されてもよい。更に、異方性光学フィルム100の一方の側から他方の側に向かうに従い、凸部及び/又は凹部の分布密度が高くなるよう、配置してもよい。
ここで、凸部及び/又は凹部は、最大幅が1μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましい。また、凸部及び/又は凹部は、高さ又は深さが1μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましい。
上記のようなドット構造を採用することで、凹凸形状が目視では視認しにくいため、表示装置として用いた場合、画質を低下することがなく、本発明の機能を発現することが可能となる。
なお、ここで示す凸部の幅及び高さ(凹部の幅及び深さ)とは、ある凸部(凹部)の垂直断面において、その凸部(凹部)を形成する開始点から終了点を結ぶ最短幅が、幅であり、開始点から終了点までの範囲内における当該垂直断面形状に対し、当該垂直断面形状における垂直と平行な直線の最大値が、凸部の高さ又は凹部の深さを示す。
なお、ドット構造は、異方性光学フィルム100表面において、50個/mm〜500個/mm存在することが好ましく、300個/mm〜500個/mm存在することがより好ましい。
<溝構造>
溝構造は、複数の溝が平行となるように繰り返し設けられた構造である。
なお、本発明における溝とは、異方性光学フィルムの幅(フィルム表面上の一端から他端にかけての長さ)の、90%以上、95%以上、又は100%に亘って存在しているものを特に指す。また、ここで示す異方性光学フィルムの幅とは、所望の光学特性を付与したい領域における幅を示す。例えば、異方性光学フィルムを別の部材に備え付けることを想定すると、異方性光学フィルムの外枠が単なる固定箇所として取り扱われる場合がある。このような場合、この外枠には光学特性を付与する必要はないため、上述した異方性光学フィルムの幅の範囲に含まれずともよい。
溝の形状としては特に限定されないが、溝の断面形状として、例えば図8(a)〜(h)に示すような形状が挙げられる。より具体的には、溝の形状(フィルム断面における形状)は、図8(a)〜(c)に示すように、多角形状であってもよいし、図8(d)〜(e)に示すように、円形状又は楕円形状であってもよいし、図8(f)〜(g)に示すように、直線や曲線の組み合わせで表現される複雑な形状であってもよい。また、各溝は、図8(h)に示されるように、各々が滑らかに連続していてもよい。
また、溝全体の形状(異方性光学フィルム100の表面における溝の外観)も特に限定されず、図6(B1)に示されるような細長い四角形状の他にも、図9(a)に示されるような曲線で構成された形状や、直線や曲線の組み合わせで表現される複雑な形状等であってもよい。
更に、溝構造は、全ての溝が完全に平行である必要はなく、全体として複数の溝が平行の関係となっていればよい。従って、溝構造は、図9(b)に示されるように、各々が平行に存在する複数の溝(溝152A)と、当該溝(溝152A)と非平行であり、且つ、各々が平行に存在する複数の溝(溝152B)と、を含む構造等であってもよい。
これらの溝の形状としては、単独の形状が用いられてもよく、複数の形状を組み合せて用いられてもよい。
ここで、溝の高さは、1μm〜50μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましい。また、溝のピッチは、1μm〜50μmであることが好ましく、20μm〜40μmであることがより好ましい。溝の幅は、5μm〜20μmであることが好ましい。
上記のような溝構造を採用することで、溝の形状が目視では視認しにくいため、表示装置として用いた場合、画質を低下することがなく、本発明の機能を発現することが可能となる。
なお、ここで示す溝の高さとは、溝方向に垂直な断面において、その凸部(凹部)を形成する開始点から終了点までの範囲内における当該垂直断面形状に対し、当該垂直断面形状における垂直と平行な直線の最大値が、凸部の深さ又は凹部の深さである、溝の高さとなる。また、溝のピッチとは、フィルム断面において、ある溝の高さ又は深さが最低となる箇所(又は溝の中心)と、当該ある溝と隣接する溝の高さ又は深さが最低となる箇所(又は溝の中心)と、の幅を示す。
溝構造は、各溝の幅、高さ、及び、ピッチが同一であってもよいし、相違していてもよい。
なお、図10に示されるように、複数の溝が交差することで、四方が溝152で区切られた凸部151が形成される場合がある。このような構造に関しては、ドット構造として取り扱うものとする。
<<物性及び性質>>
異方性光学フィルム100の最大厚みが、20μm〜100μmであることが好ましく、30μm〜50μmであることがより好ましい。
異方性光学フィルム100の長さ及び幅は、用途に応じて変更可能であり特に限定されないが、例えば、50mm〜1000mm、50mm〜100mm等とすればよい。
<<材料>>
次に、異方性光学フィルム100の材料について説明する。
異方性光学フィルム100は、適宜の原料及び後述する製造方法等に則って製造される。即ち、異方性光学フィルム100は、所定の樹脂組成物の硬化物ともいえる。
以下、異方性光学フィルム100を製造するために用いられる好ましい原料として、光重合性化合物及び光開始剤について説明し、配合量、その他の成分、溶媒等について説明する。
<光重合性化合物>
光重合性化合物は、従来公知のものを使用可能であり、単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するマクロモノマー、ポリマー、オリゴマー、モノマーから選択され、光開始剤と共に使用されることで、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより重合・硬化する材料である。
ラジカル重合性化合物は、主に分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有するもので、具体的には、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2−エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。
なお、同様にメタクリレートも使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が、光重合速度が速いので好ましい。
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が使用できる。エポキシ基を有する化合物としては、2−エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としてはさらに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
オキセタン基を有する化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)−オキセタン等が使用できる。
光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。また、光重合性化合物には、フッ素原子(F)、硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入しても良い。
さらに、特表2005−514487号公報に開示されるように、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化錫(SnO)等の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基やメタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を光重合性化合物に添加してもよい。
<光開始剤>
光開始剤は、従来公知のものを使用可能であり、単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
カチオン重合性化合物の光開始剤は、光照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。
オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF4−、PF6−、AsF6−、SbF6−等のアニオンが用いられる。
具体例としては、4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5−イソプロピルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<配合量>
光開始剤は、光重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部、好ましくは0.1質量部〜7質量部、より好ましくは0.1質量部〜5質量部程度配合される。
<その他の成分>
光開始剤は、通常粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。
このような溶剤としては光重合性であることがさらに好ましく、具体的には炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
また、光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。さらに、光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化をさらに促進し完全なものにすることが期待できる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、光重合性化合物と光重合性を有しない高分子樹脂とを混合してもい。
ここで使用できる高分子樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
光重合性化合物を含む組成物を調製する際の溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等を使用することができる。
<<異方性光学フィルムの形成工程>>
次に、本発明に係る異方性光学フィルムの形成工程の一例について詳述する。
異方性光学フィルムの形成工程は、以下の工程を含む。
(工程1)基材上に、異方性光学フィルム形成用組成物を塗工し、塗工膜を設ける塗工工程
(工程2)塗工膜上にマスクフィルムを積層するマスクフィルム積層工程(任意)
(工程3)塗工膜上で、光照射により組成物の硬化を行う異方性光学フィルム構造領域形成工程
<塗工工程>
上述の光重合性化合物を含む組成物(以下、「光硬化性組成物」と称する場合がある。)を透明PETフィルムのような適当な基材(基体)上に塗布し又はシート状に設け、成膜して光硬化性組成物層である塗工膜を設ける。
ここで、基材の光硬化性組成物を塗布する面に所望の凹凸パターンを設けることで、製造される異方性光学フィルムの表面に凹凸パターンを形成することができる。
この光硬化性組成物層を、必要に応じて乾燥し溶剤を揮発させた上で、光硬化性組成物層上に光を照射することで、異方性光学フィルムを作製することができる。
光重合性化合物を含む組成物を基材上にシート状に設ける手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。
具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に組成物をキャストすることもできる。
<マスクフィルム積層工程>
工程2において、光硬化性組成物層の酸素阻害を防止して、柱状領域を効率良く形成させるために、光硬化性組成物層の光照射側に密着して光の照射強度を局所的に変化させるマスクフィルム(以下、単にマスク等とする。)を積層することが好ましい。
マスクの材質としては、特に限定されず、例えば、通常の透明プラスチックフィルム等を用いればよいが、カーボン等の光吸収性のフィラーをマトリクス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものでもよい。
このようなマトリクスとしては、PET、TAC、PVAc、PVA、アクリル、ポリエチレン等の透明プラスチックや、ガラス、石英等の無機物や、これらのマトリクスを含むシートに紫外線透過量を制御するためのパターニングや紫外線を吸収する顔料を含んだものであっても構わない。
このようなマスクを用いない場合には、窒素雰囲気下で光照射を行うことで、光硬化性組成物層の酸素阻害を防止することも可能である。
また、通常の透明フィルムを光硬化性組成物層上に積層するだけでも、酸素阻害を防ぎ柱状領域の形成を促す上で有効である。
このようにマスクや透明フィルムを介した光照射は、本形態に係る異方性光学フィルムの作製に有効である。
<<異方性光学フィルム構造領域形成工程>>
次に、図11に基づいて、異方性光学フィルム構造領域形成工程にて使用する装置の説明を行い、異方性光学フィルムの具体的な形成プロセスについて説明する。
<装置>
先ず、異方性光学フィルムの製造には、図11に示すように、主に、光源(図示せず)と、遮光板65と、移動ステージ(図示せず)とを用いる。
移動ステージは、塗工膜を所定の速度で移動させるためのものである。移動ステージは、ステッピングモータやリニアモータ(図示せず)などによって駆動され、モータドライバによって移動速度や移動方向などが制御される。より具体的には、図11において、移動ステージに乗った塗工膜64が、それぞれ状態(a)に示す位置から状態(e)に示す位置まで連続的に移動可能となっている。
光源は、発せられた光を塗工膜上に照射し、相分離を生じさせることで構造領域を形成しつつ硬化させて、異方性光学フィルムを形成するためのものである。複数の構造体形成過程の詳細については後述する。
光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。
製造する異方性光学フィルムの構造に応じて、光硬化性組成物層上に対して、所望の散乱中心軸Qと平行な光線を照射してもよい。
このような平行光Dを得るためには、点光源を配置して、この点光源と光硬化性組成物層の間に平行光Dを照射するための反射ミラーやフレネルレンズ等の光学レンズを配置すればよい。このような光学レンズを介することによって、光源から発せられた光が平行光Dに変換され、塗工膜上、又は、指向性拡散素子上に平行光Dを照射することができる。
光重合性化合物を含む組成物に照射する光線は、前記光重合性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要であり、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。
この波長帯を使って異方性光学フィルムを作製する場合、照度としては0.01W/cm〜100mW/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1W/cm〜20mW/cmの範囲である。照度が0.01mW/cm未満であると硬化に長時間を要するため、生産効率が悪くなる場合があり、100mW/cmを超えると光重合性化合物の硬化が速すぎて構造体形成を生じず、目的の異方性拡散特性を発現できなくなる場合があるからである。
また、製造する異方性光学フィルムの所望する構造に応じて、更に指向性拡散素子を介する光照射を行ってもよい。このような指向性拡散素子の具体例としては、レンチキュラーレンズなどが挙げられる。指向性拡散素子は、入射した平行光線に指向性を付与するものであればよく、例えば、指向性をもった光が、X方向に多く拡散し、Y方向にはほとんと拡散しない態様が挙げられる。このような指向性をもった光を得るためには、例えば指向性拡散素子内に、アスペクト比の高い針状フィラーを含有させるとともに、当該針状フィラーをY方向に長軸方向が延存するように配向させる方法を採用することができる。指向性拡散素子は、針状フィラーを使用する方法以外に、種々の方法を使用することができる。
この様に指向性をもった光の広がりを調整することにより、形成される柱状領域の大きさ(アスペクト比、短径SA、長径LA等)を適宜定めることができる。指向性をもった光Eの広がりの大きさに依存して、柱状領域の大きさが異なることとなる。
指向性をもった光の広がりは、主に指向性拡散素子の種類と、塗工膜との距離に依存する。当該距離を短くするにつれ柱状領域の大きさは小さくなり、長くするにつれ柱状領域の大きさは大きくなる。したがって、当該距離を調整することにより、柱状領域の大きさを調整することができる。
製造時の配置としては、マスクフィルムを積層していた場合はさらにより光源側に、積層しない場合でも光源側に配置する。
遮光板は、光源から発せられた光を遮り、光重合性化合物を含む組成物に光が照射されないようにするためのものである。遮光板の材料や大きさや厚みなどは、光源から発せられる光の波長や強度に応じて適宜に定めればよい。
以下、領域AR1〜領域AR2に区分された各領域における具体的な異方性光学フィルムの形成プロセスについて説明する。
<領域AR1の工程>
AR1領域の工程では、塗工膜の全体が未だ遮光板によって覆われており、光源から発せられた光は塗工膜上に照射されていない。この段階では、塗工膜の全てが、領域AR1に位置している。
従って、図11の状態(a)に示すように、構造領域は形成されず、塗工膜の全体が未硬化の状態である。
<領域AR2の工程>
移動ステージの駆動によって、塗工膜がある程度の距離を移動すると、塗工膜は領域AR1から領域AR2に移動する。
領域AR2の工程では、移動ステージの駆動によって、塗工膜64が遮光65から徐々に露出する。ここで塗工膜64は、領域AR1と領域AR2との2つの領域に位置する。塗工膜64が遮光板65から露出するに従って、領域AR1から領域AR2に移動する。
平行光又は拡散光が塗工膜上に照射されることで、塗工膜の上面から相分離が始まる。平行光又は拡散光の照射によって、塗工膜64の上面から複数の各構造体63が形成され始め徐々に成長していく。
複数の各構造体63の形成に伴って各マトリックス領域61も形成される。
より具体的には、図11の状態(b)に示すように、塗工膜64の上面から相分離が始まり、相分離によって複数の各構造体63及び各マトリックス領域61が上面から下面に向かって形成され始める。
この時点では、図11の状態(b)〜(d)に示すように、複数の各構造体63及び各マトリックス領域61は、下面まで到達しておらず、塗工膜64の上面と下面との間の中間位置まで形成されている状態である。
なお、中間位置とは、上面と下面との中央や中心の位置に限られず、上面と下面とに挟まれた領域の任意の位置を示す。
図11の状態(b)から(e)に示すように、複数の各構造体63及びマトリックス領域61は、塗工膜64の上面から下面まで順に形成される。
ここで、拡散光を用いる場合、拡散光の照射強度及び広がりを調整することにより、形成される構造体のアスペクト比等を適宜定めることができる。
なお、本異方性光学フィルム形成工程において、合計の光の照射時間は特に限定されないが、10秒間〜180秒間、より好ましくは10秒間〜120秒間である。
本形態の異方性光学フィルム60及び異方性光学フィルム70は、上述の如く低照度の光を比較的長時間照射することにより光硬化性組成物層中に特定の内部構造が形成されることで得られるものである。
そのため、このような光照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm以上の高照度の光を追加照射して残存モノマーを重合させることができる。
このときの光照射は、塗工膜64の異方性光学フィルムを形成させるための最初に行う光線とは逆側の面となる下面側(例えば、マスクを積層した側の逆側)から行ってもよい。
なお、上述の製造方法においては、凹凸パターンの形成方法として、(1)予め凹凸パターンを設けた基材を使用することで、得られる異方性光学フィルムに凹凸パターンを形成する方法を例示したが、凹凸パターンの形成方法はこれには何ら限定されない。凹凸パターンの形成方法としては、上記(1)の方法の他にも、(2)マスクフィルム積層工程におけるマスクに凹凸パターンを設け、凹凸パターンを光硬化性組成物層に転写する方法、(3)異方性光学フィルム構造領域形成工程の前、異方性光学フィルム構造領域形成工程の後(光硬化性組成物層の硬化が完了する前)、又は、異方性光学フィルム構造領域形成工程と同時に、所定の凹凸パターンを設けたロール等を光硬化性組成物層に押し当てることにより、凹凸パターンを光硬化性組成物層に転写する方法、(4)凹凸パターンを有しない異方性光学フィルムを製造した後にフィルム表面に凹凸パターンを形成する方法(具体的には、異方性光学フィルムを熱可塑性とした上で、凹凸パターンが設けられた器具を加熱し、異方性光学フィルムに押し付ける方法等)、等が挙げられる。
<<用途>>
本発明の異方性光学フィルムの用途は、特に限定されないが、照明や導光板、各種表示装置等の光拡散フィルムとして好ましく用いることができる。
なお、本発明の異方性光学フィルム100は単層のフィルムであるが、通常の光学フィルムの分野で使用されるその他の層を更に積層して使用してもよい。
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
(金型の作製)
エポキシ樹脂を使用し、下記3種類のパターンを形成して3種の樹脂マスターを作製した。続いて電解めっき法を使用して、3種の樹脂マスターより、3種類のニッケル合金電柱金型を作製した。
パターンA:
直径10μm、高さ5μm、半球状で凸形状のドットパターンがピッチ50μmにて縦横に整列、ドットパターン密度約400個/mm
パターンB:
直径10μm、高さ5μm、半球上で円錐形状のドットパターンがピッチ40μm以上のスペースを介してランダムに配置、ドットパターン密度約500個/mm
パターンC:
深さ5μm、幅10μmの直線状の溝、ピッチ40μmの間隔で平行に整列
ニッケル合金電柱金型は、樹脂マスターのパターンを転写して得られるため、この金型から更に転写して得られる樹脂フィルムの表面形状パターンは、樹脂マスターのパターンと同等となる。
(異方性光学フィルムの作製)
以下の方法に従って、本発明の異方性光学フィルムを作製した。
(実施例1〜5の異方性光学フィルム1〜5の作製)
実施例に使用する異方性光学フィルムを、以下の方法により作製した。
上記で作製したニッケル合金電柱金型のパターン面の縁部全周に、ディスペンサーを使い、硬化性樹脂で高さ50μmの隔壁を形成した。この中に下記の紫外線硬化樹脂組成物を滴下し、滴下した液膜の表面を、厚さ100μmの離型PETフィルムの離形面が接するようにカバーすることにより、50μmの厚さの未硬化樹脂組成物層の液膜を作製した。
なお、本実施例の未硬化樹脂組成物層の組成は、全て同じものを使用した。
紫外線硬化樹脂組成物:
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(屈折率:1.460、重量平均分子量:5,890) 20質量部
(RAHN社製、商品名:00−225/TM18)
・ネオペンチルグリコールジアクリレート(屈折率:1.450) 30質量部
(ダイセルサイテック社製、商品名Ebecryl145)
・ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(屈折率:1.536) 15質量部
(ダイセルサイテック社製、商品名:Ebecyl150)
・フェノキシエチルアクリレート(屈折率:1.518) 40質量部
(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO−A)
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 4質量部
(BASF社製、商品名:Irgacure651)
続いて未硬化樹脂組成物層の液膜を、加熱されたホットプレートの上に離型PET表面が上になるように載せて加温した。UVスポット光源(浜松ホトニクス社製、商品名:L2859−01)の落射用照射ユニットから、照射強度5mW/cmの平行光線である紫外線を、直接又は指向性拡散素子を介し、1分間照射した。さらに、紫外線硬化樹脂を完全に硬化するため、UVスポット光源の照射強度を50mW/cmにして、1分間照射を追加した。離形PETおよび金型を剥離することで、複数の柱状領域を有し、片方の表面には金型のパターンを転写した表面凹凸を有する単層の実施例1〜5の異方性光学フィルム1〜5を作製した。
具体的には、実施例1〜3の異方性光学フィルム1〜3の作製においては、順に、パターンA〜Cより得られた金型を使用し、平行光線である紫外線を、未硬化樹脂組成物層の液膜の法線方向から直接照射した。
実施例4の異方性光学フィルム4の作製においては、パターンCより得られた金型を使用し、平行光線である紫外線を、未硬化樹脂組成物層の液膜の法線方向から30°傾斜した角度から直接照射した。その際、パターンCの溝方向と直角となる方向に傾斜させた。
実施例5の異方性光学フィルム5の作製においては、パターンCより得られた金型を使用し、指向性拡散素子を使用して作製した。指向性拡散素子の配置は、指向性拡散素子の光拡散方向が、パターンCの溝構造に平行となるように配置した。
作製した異方性光学フィルム1〜5の作製条件を表1に示した。
(比較例1〜3の表面凹凸形状フィルム1〜3の作製)
比較例1〜3に使用する表面凹凸形状フィルム1〜3を、以下の方法により作製した。
実施例1〜3の異方性光学フィルムの作製において、UVスポット光源から落射照射ユニットを取り外し、照射するUV光線を、等方性の拡散光線にして、紫外線を照射することにより、異方性及び拡散性を有しない、透明な比較例1〜3の表面凹凸形状フィルム1〜3を得た。
具体的には、比較例1〜3の表面凹凸形状フィルム1〜3の作製においては、順にパターンA〜Cより得られた金型を使用し、等方性の拡散光線である紫外線を、未硬化樹脂組成物層の液膜の法線方向から直接照射した。
比較例1〜3の表面凹凸形状フィルム1〜3の未硬化樹脂組成物層の組成は、実施例1〜5と同じものを使用した。
作製した表面凹凸形状フィルム1〜3の作製条件を表1に示した。
(比較例4の異方性光学フィルム6の作製)
厚さ100μmの離型PETフィルム1の縁部全周に、ディスペンサーを使い、硬化性樹脂で高さ50μmの隔壁を形成した。この中に上記実施例1〜5の作製で使用した紫外線硬化樹脂組成物を滴下し、滴下した液膜の表面を、PETフィルム1よりも剥離力が高い離型PETフィルム2でカバーすることにより、50μmの厚さの未硬化樹脂組成物層の液膜を作製した。
続いて未硬化樹脂組成物層の液膜を、ホットプレート上で加熱し、UVスポット光源の落射用照射ユニットから、照射強度5mW/cmの平行光線である紫外線を、直接、1分間照射した。さらに、紫外線硬化樹脂を完全に硬化するため、UVスポット光源の照射強度を50mW/cmにして、1分間照射を追加した。両面の離形PETを剥離することで、複数の柱状領域を有する単層の比較例4の異方性光拡散フィルム6を作製した。
具体的には、比較例4の異方性光学フィルム6の作製においては、UVスポット光源を未硬化樹脂組成物層の液膜の法線方向から直接に入射した。このようにして、表面に凹凸形状のない比較例4の異方性光学フィルム6を得た。
作製した異方性光学フィルム6の作製条件を表1に示した。
(比較例5の表面凹凸形状フィルム1と異方性光学フィルムと6の積層体の作製)
比較例1の表面凹凸形状フィルム1と、比較例4の異方性光学フィルム6との積層体を、作製した。具体的には、表面凹凸形状フィルム1の平滑面に、公知の透明性アクリル粘着剤による粘着層(厚み25μm)を貼り合わせた後、異方性光学フィルム6を貼り合わせて、比較例5の積層体を得た。
Figure 2019179203
(拡散性・集光性評価)
得られた実施例1〜5、比較例1〜5のフィルム及び積層体の表面凹凸を有さない側の表面に対し、入射する直線の平行光線の拡散状態を、ゴニオフォトメーター(ジェネシア製ファー・ゴニオ・プロファイラー)にて測定した。入射する光量を100%としたときの各拡散角度における出射光量を百分率で算出した。算出した数値から0°及び30°の場所の透過率と、最大透過率の1/2の透過率となる角度範囲を拡散幅とした場合における拡散性を評価した。
得られた結果を表2に示した。
Figure 2019179203
表2に示されるとおり、本発明実施例1〜5では、比較例1〜5に対し、拡散幅が30°以上となり、優れた拡散性能を有していることが分かる。特に、比較例1及び2は、ほとんど拡散性を示していないことが分かる。比較例3〜5では、実施例ほどではないが拡散性を示すものの、UV光線の各入射角における透過率は、UV光線入射角度と等しい角度の透過率を見ていくと、実施例に対し、低い値となっていることから、本発明実施例1〜5が、優れた集光性を有していることが分かる。
以上より、本発明の異方性光学フィルムを用いることで、拡散性と、集光性とを両立した優れたフィルムとすることが可能であり、表示装置などに用いた場合には、高い輝度とコントラスト及び広い視野角を実現することが可能である。さらに、このようなフィルムは透明導光板のような拡散性と集光性の両立が必要な技術にも用いることが可能である。

Claims (9)

  1. 一方の表面から入射する光の入射角に依存して、他方の表面から出射する光の拡散性が変化する異方性光学フィルムであって、
    前記異方性光学フィルムは、マトリックス領域と、前記マトリックス領域とは絶対屈折率の異なる、複数の柱状領域とを含み、
    前記複数の柱状領域は、前記異方性光学フィルムの一方の表面から他方の表面に向かって延在しており、
    前記異方性光学フィルムの少なくとも一方の表面に、凹凸パターンとして、下記(1)及び(2)の構造の内、少なくとも一つの構造が設けられていることを特徴とする、異方性光学フィルム。
    (1)複数の凸部及び/又は凹部を含むドット構造
    (2)平行に設けられた複数の溝を含む溝構造
  2. 前記ドット構造において、前記凸部及び/又は凹部の、最大幅が、1μm〜50μm、高さ又は深さが、1μm〜50μmであることを特徴とする、請求項1記載の異方性光学フィルム。
  3. 前記溝構造において、前記溝の高さが、1μm〜50μm、ピッチが、1μm〜50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の異方性光学フィルム。
  4. 前記異方性光学フィルム表面において、前記複数の柱状領域の平均短径と平均長径との長さの比であるアスペクト比が、1〜20であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の異方性光学フィルム。
  5. 前記異方性光学フィルム表面において、前記複数の柱状領域の平均短径と平均長径との長さのであるアスペクト比が、20超であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の異方性光学フィルム。
  6. 前記異方性光学フィルムの前記溝構造の溝方向に対して垂直な断面において、前記複数の柱状領域の軸方向が、前記異方性光学フィルム表面の法線方向に対して傾斜していることを特徴とする、請求項4又は5に記載の異方性光学フィルム。
  7. 前記異方性光学フィルム表面において、前記複数の柱状領域の最長径方向が、前記溝構造の溝方向に対し、平行に配列していることを特徴とする、請求項5に記載の異方性光学フィルム。
  8. 前記異方性光学フィルムの最大厚みが、20μm〜100μmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の異方性光学フィルム。
  9. 前記複数の柱状領域の軸方向が、前記異方性光学フィルム表面の法線方向に対し、前記異方性光学フィルムの一方の表面から他方の表面に向かって、0°〜70°傾斜していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の異方性光学フィルム。
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