JP2023130815A - 液晶フォトマスク積層体及び露光装置 - Google Patents

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【課題】傾斜パターンを含むレジストパターンを良好な精度で形成できる液晶フォトマスク積層体を提供する。【解決手段】液晶フォトマスクと、前記液晶フォトマスクの光入射面側及び光出射面側のいずれか一方に積層された光拡散体とを備え、前記光拡散体は、第一の主面と、前記第一の主面とは反対側の第二の主面とを有し、前記第一の主面より前記第一の主面の法線方向に沿って直線光を入射し、前記第二の主面より出射する拡散光の分布を、前記第二の主面の法線方向角度を0°として測定したときに、前記拡散光の強度最大値の1/10値における角度幅が45°以下であり、ヘイズ値が55%以上であることを特徴とする液晶フォトマスク積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、液晶フォトマスク積層体及び露光装置に関する。
プリント基板及びフラットパネルディスプレイ(FPD)等の主要製造工程の1つとして、フォトリソグラフィ技術を用いた工程がある。この工程では、例えば、基板上に形成されたフォトレジスト膜に対し、所定のパターンを配したフォトマスクを介して紫外線等の光を照射することによってフォトレジスト膜を選択的に露光し、フォトレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。
従来、フォトマスクは、石英ガラス等の透明基板上に、遮光膜及びフォトレジスト膜を形成し、フォトレジスト膜を所定のパターンに対応して選択的に露光し、現像してレジストパターンを形成し、レジストパターンを介して遮光膜をエッチングすることにより製造されている。しかし、フォトマスクは、製造する回路設計毎にその都度デザインされ、1製品の作製に数枚から数十枚が必要となり、それらを全て作製するには大量の時間及び費用が掛かるという問題があった。
この問題に対し、液晶フォトマスクが検討されている(特許文献1~4)。液晶フォトマスクを露光装置に用いることで、フォトマスクの交換を行うことなく、電気的にそのパターンを書き換えることができる。
特開昭60-33530号公報 特開平4-137792号公報 特開平4-157466号公報 特開平6-301190号公報
しかし、液晶フォトマスクでは、主面の縦方向及び横方向に配列した複数の画素によって露光光の透過及び遮蔽が制御されるので、形成しようとするパターンが、画素の配列方向(縦方向及び横方向)に対して傾斜した方向に延びるラインパターン又はスペースパターン(以下、これらをまとめて「傾斜パターン」とも記す。)を含む場合(例えば図11)、液晶フォトマスクのパターン(マスクパターン)において、傾斜パターンが直線にならずジグザグになる(例えば図12)。この場合、形成されるレジストパターンにおいても、傾斜パターンがジグザグになり、パターンの精度が低下することがある。この問題は、パターンが高精細化するにつれて顕著となる。
本発明は、傾斜パターンを有するレジストパターンを良好な精度で形成できる液晶フォトマスク積層体及び露光装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕液晶フォトマスクと、前記液晶フォトマスクの光入射面側及び光出射面側のいずれか一方に積層された光拡散体とを備え、
前記光拡散体は、第一の主面と、前記第一の主面とは反対側の第二の主面とを有し、前記第一の主面より前記第一の主面の法線方向に沿って直線光を入射し、前記第二の主面より出射する拡散光の分布を、前記第二の主面の法線方向角度を0°として測定したときに、前記拡散光の強度最大値の1/10値における角度幅が45°以下であり、ヘイズ値が55%以上であることを特徴とする液晶フォトマスク積層体。
〔2〕前記光拡散体は、前記第一の主面の法線方向における直線透過率が40%以下である、〔1〕の液晶フォトマスク積層体。
〔3〕前記光拡散体は、入射光角度により光拡散性が変化する異方性拡散フィルムである、〔1〕又は〔2〕の液晶フォトマスク積層体。
〔4〕前記異方性拡散フィルムは、マトリックスと、マトリックスとは屈折率の異なる複数の柱状構造とを有し、前記複数の柱状構造は、前記異方性拡散フィルムの厚み方向に延在している、〔3〕の液晶フォトマスク積層体。
〔5〕前記異方性拡散フィルムの散乱中心軸角度が10°以下である、〔4〕の液晶フォトマスク積層体。
〔6〕前記複数の柱状構造は各々、前記柱状構造の延在方向に垂直な断面における長径と短径の比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1~10である、〔4〕又は〔5〕の液晶フォトマスク積層体。
〔7〕前記光拡散体は、前記液晶フォトマスクの光出射面側に積層されている、〔1〕~〔6〕のいずれかの液晶フォトマスク積層体。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれかの液晶フォトマスク積層体を用いた露光装置。
本発明によれば、傾斜パターンを含むレジストパターンを良好な精度で形成できる液晶フォトマスク積層体及び露光装置を提供できる。
液晶フォトマスク積層体の一例を示す模式断面図。 光拡散体の一例を示す模式断面図。 異方性拡散フィルムの散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示。 棒状の柱状構造を有する異方性拡散フィルムの構造と、この異方性拡散フィルムに入射した透過光の様子を示す模式図。 板状の柱状構造を有する異方性拡散フィルムの構造と、この異方性拡散フィルムに入射した透過光の様子を示す模式図。 異方性拡散フィルムの光拡散性の評価方法を示す説明図。 図4に示した棒状の柱状構造を有する異方性拡散フィルムにおける入射光角度と直線透過率との関係を示すグラフ。 液晶フォトマスク積層体の他の例を示す模式断面図。 液晶フォトマスク積層体の他の例を示す模式断面図。 傾斜パターンを含むパターンの一例を示す模式図。 図11に示したパターンを液晶フォトマスクに表示させた状態を示す模式図。 任意の工程(S3)を含む場合の異方性拡散フィルムの製造方法の一例を示す模式図。 任意の工程(S3)を含む場合の異方性拡散フィルムの製造方法の一例を示す模式図。
以下、本発明について、添付の図面を参照し、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、図1~13における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なることがある。また、以下の図面において、同一の構成については同一の語句及び符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶フォトマスク積層体1の模式断面図である。
液晶フォトマスク積層体1は、液晶フォトマスク2と、光拡散体3とを備える。光拡散体3は、液晶フォトマスク2の光出射面側(図中、下側)に、透明粘着層4を介して積層されている。
(液晶フォトマスク)
液晶フォトマスク2としては、特に制限は無く、公知のものを使用できる。
液晶フォトマスク2は、典型的には、縦方向及び横方向に所定のドット数の画素が配列されたドットマトリックス式の液晶表示装置として構成されている。各画素をそれぞれ適宜に駆動制御することにより、全体として所定のパターンの透過部分を構成し、透過光により画像を画成するようになっている。
液晶フォトマスク2には、液晶フォトマスク2を駆動制御する制御装置(図示略)が接続されている。制御装置には、種々のマスクパターンを電子式のパターンデータとして記憶する記憶装置(図示略)が接続されている。制御装置が、前もって記憶装置に記憶された種々のマスクパターンに対応するパターンデータから所望のマスクパターンに対応するパターンデータを読み出し、このパターンデータに基づいて液晶フォトマスク2を駆動制御することで、液晶フォトマスク2の各画素がそれぞれ駆動制御されて、全体として所望のマスクパターンをマトリックス画像として形成することになる。
液晶フォトマスクの画素サイズは、10μm~500μmが好ましく、20μm~200μmがより好ましい。画素サイズが前記下限値以上であれば、液晶パネルの製造コストが高く、製造困難となることなく製造できる傾向があり、前記上限値以下であれば、解像度が低すぎず、パターン形成に有利な傾向がある。
(光拡散体)
光拡散体3は、第一の主面3aと、第一の主面3aとは反対側の第二の主面3bとを有する。本実施形態では、光拡散体3は、第一の主面3a側を液晶フォトマスク2側に向けて配置されている。
光拡散体3は、第一の主面3aより第一の主面3aの法線方向に沿って直線光を入射し、第二の主面3bより出射する拡散光の分布を、第二の主面3bの法線方向角度を0°として測定したときに、拡散光の強度最大値の1/10値における角度幅(Full Width at Tenth Maximum、以降FWTMと表記する場合がある)が45°以下であり、40°以下であることが好ましく、35°以下であることがより好ましい。
FWTMは、光拡散体3の光拡散性の指標である。FWTMが前記下限値以上であれば、液晶フォトマスク2からの光が拡散されることで、形成されるレジストパターンにおいて傾斜部がジグザグになることを抑制できる。FWTMが前記上限値以下であれば、光が拡散されすぎてパターン精度が低下することを抑制できる。
光拡散体3は、ヘイズ値が55%以上であり、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。ヘイズ値が前記下限値以上であれば、液晶フォトマスク2からの光が拡散されることで、形成されるレジストパターンにおいて傾斜部がジグザグになることを抑制できる。ヘイズ値が前記上限値以下であれば、光が拡散されすぎてパターン精度が低下することを抑制できる。
ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準拠して測定される。
光拡散体3は、第一の主面3aの法線方向における直線透過率が40%以下であることが好ましく、2%~25%であることがより好ましい。法線方向における直線透過率が前記下限値以上であれば、光が拡散されすぎてパターン精度が低下することを抑制でき、前記上限値以下であれば、光拡散性がより優れる。
「直線透過率」とは、光拡散体に、ある入射光角度で光が入射した際の、直線方向の透過光量(直線透過光量)と、入射した光の光量(入射光量)との比率であり、下記式で表される。直線方向とは、入射する光の進行方向を示す。直線透過光量は、特開2015-191178号公報に記載された方法によって測定できる。
直線透過率(%)=(直線透過光量/入射光量)×100
光拡散体3は、露光時に露光光に影響を与えないように、露光光を吸収する成分を含まないことが好ましい。例えば、露光光が紫外光である場合、光拡散体3は、紫外線吸収剤等を含まないことが好ましい。
光拡散体3の厚さは、10μm~500μmが好ましく、15μm~250μmがより好ましく、20μm~100μmがさらに好ましい。光拡散体3の厚さが前記下限値以上であれば、光拡散性がより優れ、前記上限値以下であれば、光が拡散されすぎてパターン精度が低下することを抑制できる。
光拡散体3は、公知の光拡散体のなかから、上記半値幅等の特性を考慮して適宜選択できる。光拡散体3としては、例えば、等方性拡散フィルム及び異方性拡散フィルムが挙げられる。これらの中でも、拡散幅の制御及び光集行性の点から、異方性拡散フィルムが好ましい。
「等方性拡散フィルム」とは、入射光角度により光拡散性が変化しない光拡散フィルムである。等方性拡散フィルムとしては、公知のものを使用でき、例えば、マトリックスに、マトリックスとは屈折率の異なる複数の微粒子が分散したフィルムが挙げられる。
「異方性拡散フィルム」とは、入射光角度により光拡散性が変化する光拡散フィルムである。つまり入射光角度によって直線透過率が変化する、光拡散性の入射光角度依存性を有する光拡散フィルムである。異方性拡散フィルムとしては、公知のものを使用できる。
図2は、異方性拡散フィルムの一例を示す模式断面図である。この例の異方性拡散フィルム3Aは、マトリックス31と、マトリックス31とは屈折率の異なる複数の柱状構造32(「柱状構造」ともいう。)とを有する。複数の柱状構造32は、それぞれ、異方性拡散フィルム3Aの厚み方向に延在している。
異方性拡散フィルム3Aの複数の柱状構造32の延在方向(異方性拡散フィルム3A主面において、一方の面から他方の面にかけ、柱状構造32が配向している方向)と異方性拡散フィルム3Aの法線方向との成す角度(以降、「柱状構造延在角度」と表記する場合がある。)は、7°以下が好ましく、4°以下がより好ましく、2°以下が特に好ましく、0°が最も好ましい。柱状構造延在角度が前記範囲内であれば、方位による拡散性の差が生じにくく、均一な拡散効果が得られやすい。
なお、柱状構造延在角度は、異方性拡散フィルム3Aを製造する際に、シート状の光重合性化合物を含む組成物に照射する光線の方向を変えることで、所望の角度に調整することができる。
また、柱状構造延在角度は、異方性拡散フィルム3Aの厚さ方向断面を光学顕微鏡にて観察し、任意の10本の柱状構造について、柱状構造の延在方向が、異方性拡散フィルム3A主面の法線方向との成す角度を測定し、その平均値として算出した値が用いられる。
柱状構造32の延在方向に垂直な断面形状に特に制限はない。例えば、円形状、楕円形状、多角形状、不定形状、これらの入り混じっているもの等であってよい。
柱状構造32は、柱状構造32の延在方向に垂直な断面における長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~2であることがさらに好ましい。アスペクト比が前記上限値以下であれば、方位による拡散性の差が生じにくく、均一な拡散効果が得られる。
ここで、「長径」は、上記断面における最大径であり、「短径」は、長径方向と直交する方向における最大径である。
複数の柱状構造32それぞれの長径の平均値は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、長径の平均値は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。長径の平均値が前記下限値以上であれば、拡散性が向上する傾向にある。長径の平均値が前記上限値以下であれば、外観欠点の発生抑制が向上する傾向にある。
これら下限値及び上限値は、適宜組み合わせることができる。
複数の柱状構造32それぞれの短径の平均値は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、短径の平均値は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。短径の平均値が前記下限値以上であれば、拡散性が向上する傾向にある。短径の平均値が前記上限値以下であれば、外観欠点の発生抑制が向上する傾向にある。
これら下限値及び上限値は、適宜組み合わせることができる。
柱状構造32の延在方向に垂直な断面の形状は、光学顕微鏡で確認できる。
長径の平均値、短径の平均値はそれぞれ、任意に選択した10個の柱状構造32の延在方向に垂直な断面における長径、短径をそれぞれ測定し、平均した値である。
アスペクト比は、上記で求めた長径の平均値を短径の平均値で除した値が用いられる。
マトリックス31、柱状構造32それぞれの屈折率は、互いに異なっていればよい。それらの屈折率がどの程度異なるかは特に限定されず、相対的なものである。マトリックス31の屈折率が柱状構造32の屈折率よりも低い場合、マトリックス31は低屈折率領域となる。逆に、マトリックス31の屈折率が柱状構造32の屈折率よりも高い場合、マトリックス31は高屈折率領域となる。
ここで、マトリックス31と柱状構造32の界面における屈折率は漸増的に変化するものであることが好ましい。漸増的に変化させることで、入射光角度を変えた場合の拡散性の変化が極めて急峻となり、シンチレーションを生じやすくなる問題が発生し難くなる。マトリックス31と柱状構造32を光照射に伴う相分離によって形成することで、マトリックス31と柱状構造32の界面の屈折率を漸増的に変化させることができる。
異方性拡散フィルム3Aは、典型的には、光重合性化合物を含む組成物(光硬化型組成物)の硬化物からなる。この組成物を硬化する際に、屈折率の異なる領域が形成される。光硬化型組成物については後で詳しく説明する。
本発明において「光重合」と「光硬化」はいずれも、光重合性化合物が光により重合反応することを意味する。
異方性拡散フィルム3Aは、散乱中心軸を有する。異方性拡散フィルム3Aにおいて、複数の柱状構造32はそれぞれ、延在方向と散乱中心軸とが略平行になるように形成されている。したがって、同一の異方性拡散フィルム3Aにおける複数の柱状構造32は互いに略平行である。
柱状構造32の延在方向と散乱中心軸とが略平行であるとは、屈折率の法則(Snellの法則)を満たすものであればよく、厳密に平行である必要はない。Snellの法則は、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質の界面に対して光が入射する場合、その入射光角度θ1と屈折角θ2との間に、n1sinθ1=n2sinθ2の関係が成立するものである。例えば、n1=1(空気)、n2=1.51(異方性拡散フィルム)とすると、散乱中心軸の傾き(入射光角度)が30°の場合、柱状構造32の延在方向(屈折角)は約19°となるが、このように入射光角度と屈折角が異なっていてもSnellの法則を満たしていれば、本形態においては略平行の概念に包含される。特に異方性拡散フィルム3Aの法線方向角度を0°とし、その柱状構造32の延存方向角度が0°である場合、散乱中心軸角度も0°となり、散乱中心軸角度と、延在方向とが略平行ではなく完全な平行となる。
異方性拡散フィルム3Aに所定の入射光角度で入射した光は、入射光角度が柱状構造32の延在方向(配向方向)と略平行である場合には拡散が優先され、入射光角度が延在方向と略平行ではない場合には透過が優先される。そのため、異方性拡散フィルム3Aに入射する光の角度が変化すると、直線透過率も変化する。具体的には、異方性拡散フィルム3Aにおいては、法線方向(すなわち、柱状構造32の延在方向)及び法線方向に近い入射光角度範囲内(拡散領域)では入射光が強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲(非拡散領域)では拡散が弱まり直線透過率が高まる。
「散乱中心軸」とは、異方性拡散フィルムへの入射光角度を変化させた際に、光拡散性がその入射光角度を境に略対称性を有する光の入射光角度と一致する方向を意味する。ここで、「略対称性を有する」としたのは、散乱中心軸が異方性拡散フィルムの法線方向に対して傾きを有する場合には、光学特性(後述する光学プロファイル)が厳密には対称性を有しないためである。散乱中心軸は、当該光学プロファイルにおける、略対称性を有する入射光角度より確認することができる。
図3に、散乱中心軸(P)を説明するための3次元極座標表示を示す。3次元極座標表示において、異方性拡散フィルムの表面をxy平面とし、法線をz軸とすると、散乱中心軸は、極角θと方位角φとによって表現することができる。つまり、図3中のPxyが、異方性拡散フィルムの表面に投影した散乱中心軸の長さ方向ということができる。
本発明においては、異方性拡散フィルムの法線(図3に示すz軸)と散乱中心軸とのなす極角θ(0°≦θ<90°)を散乱中心軸角度と定義する。また、散乱中心軸角度の正負は、異方性拡散フィルムの面方向における所定の対称軸(例えば、異方性拡散フィルム3Aの重心を通るMD(Machine Direction、詳細は後述)の軸と、異方性拡散フィルムの法線方向の両方を通る平面に対して、散乱中心軸が一側に傾斜している場合を+、他側に傾斜している場合を-と定義することとする。
異方性拡散フィルムは、単一層中に、傾きの異なる柱状構造群(同一の傾きを有する柱状構造の集合)を複数有していてもよい。このように、単一層中に傾きの異なる柱状構造群が複数ある場合には、各柱状構造の群の傾きに対応して散乱中心軸も複数となる。
異方性拡散フィルム3Aの散乱中心軸角度は、10°以下が好ましく、5°以下がより好ましく、3°以下が特に好ましく、0°が最も好ましい。散乱中心軸角度が前記範囲内であれば、方位による拡散性の差が生じにくく、均一な拡散効果が得られる。
散乱中心軸角度、つまり極角θは、変角光度計により測定される。
散乱中心軸角度は、異方性拡散フィルム3Aを製造する際に、シート状の光重合性化合物を含む組成物に照射する光線の方向を変えることで、所望の角度に調整することができる。
異方性拡散フィルム3Aの最大直線透過率は、10%~75%であることが好ましく、15%~65%であることがより好ましく、20%~55%であることがさらに好ましい。異方性拡散フィルム3Aの最大直線透過率が前記範囲内であれば、拡散性と集光性のバランスがより優れる。
異方性拡散フィルム3Aの最小直線透過率は、25%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。異方性拡散フィルム3Aの最小直線透過率が前記上限値以下であれば、拡散性と集光性のバランスがより優れる。
「最大直線透過率」とは、直線透過率が最大となる入射光角度で入射した光の直線透過率である。「最小直線透過率」とは、直線透過率が最小となる入射光角度で入射した光の直線透過率である。最大直線透過率>最小直線透過率である。最小直線透過率は低くなるほど直線透過光量が減る(ヘイズ値が増大する)ことを示す。よって、最小直線透過率が低くなるほど拡散光量が増すことを示す。
ここで、図4~7を参照しながら、異方性拡散フィルム3Aの光拡散性についてより具体的に説明する。
ここでは、棒状の柱状構造(ピラー構造ともいう。)を有する異方性拡散フィルム3Bと、板状の柱状構造(ルーバー構造ともいう。)を有する異方性拡散フィルム3Cを例に挙げて説明する。図4及び図5は、異方性拡散フィルム3B、3Cそれぞれの構造と、これらの異方性拡散フィルムに入射した透過光の様子を示す模式図である。図4及び図5中の符号32Aはピラー構造、符号32Bはルーバー構造を示す。図6は、異方性拡散フィルム3Bの光拡散性の評価方法を示す説明図である。図7は、異方性拡散フィルム3Bにおける入射光角度と直線透過率との関係を示すグラフである。
光拡散性の評価方法は、以下のようにして行われる。まず、図6に示すように、異方性拡散フィルム3Bを、光源201と検出器202との間に配置する。本形態においては、光源201からの照射光Iが、異方性拡散フィルム3Bの法線方向から入射する場合を入射光角度0°とする。また、異方性拡散フィルム3Bは直線Lを中心軸として、任意に回転させることができるように配置され、光源201および検出器202は固定されている。
ここで、直線Lとは、異方性拡散フィルム製造の際の塗工時流れ方向をMD(以降同様)としたとき、MDに垂直な方向TD(以降同様、Traverse Direction)と同方向であり、且つ、異方性拡散フィルムの重心を通る直線である。ただし、ピラー構造を有し、且つ、そのピラー構造が傾斜している場合には、柱状構造の傾斜方位方向に直交する方向と同方向であり、且つ、異方性拡散フィルムの重心を通る直線となる。
この方法によれば、光源201と検出器202との間にサンプル(異方性拡散フィルム3B)を配置し、サンプル表面の直線Lを中心軸として角度を変化させながらサンプルを直進透過して検出器202に入る直線透過光量を測定し、直線透過率を出すことができる。
図7は、異方性拡散フィルム3Bを、図4のTDを図6に示す回転中心軸の直線Lに選んだ場合における光拡散性を評価し、得られた光拡散性の評価結果を示すものである。つまり、図6に示す方法を用いて測定した異方性拡散フィルム3Bの光拡散性(光散乱性)の入射光角度依存性を示すものである。図7の縦軸は、散乱の程度を示す指標である直線透過率(本形態では、所定の光量の平行光線を入射させたときに、入射方向と同じ方向に出射された平行光線の光量の割合、より具体的には、直線透過率=異方性拡散フィルム3Bがある場合の検出器202の検出光量/異方性拡散フィルム3Bがない場合の検出器202の検出光量)を示し、横軸は、異方性拡散フィルム3Bへの入射光角度を示す。入射光角度の正負は、異方性拡散フィルム3Bを回転させる方向が反対であることを示している。
なお、本発明において、「散乱」と「拡散」は同じ意味を示す。
異方性拡散フィルム3Bに所定の入射光角度で入射した光の方向が、マトリックスとは屈折率の異なる領域の配向方向(ピラー構造32Aの延在方向)と略平行である場合には拡散が優先され、当該方向に平行でない場合には透過が優先される。そのため異方性拡散フィルム3B、3Cは、図7に示すように、当該異方性拡散フィルムへの入射光角度によって直線透過率が変化する光拡散性の入射光角度依存性を有する。ここで、図7のように光拡散性の入射光角度依存性を示す曲線を以下、「光学プロファイル」と称する。光学プロファイルは、光拡散性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね光拡散性を示しているといえる。
通常の等方性拡散フィルムでは、0°付近をピークとする山型の光学プロファイルを示すが、異方性拡散フィルム3Bでは、ピラー構造32Aの散乱中心軸方向の入射光角度を0°(柱状構造の延在方向も0°)とした場合、0°入射する場合の直線透過率と比較して、±5~±20°の入射光角度で一旦直線透過率が極小値になり、その入射光角度(の絶対値)が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなり、±40~±60°の入射光角度で直線透過率が極大値となる谷型の光学プロファイルを示す。
ルーバー構造32Bを有する異方性拡散フィルム3Cも、異方性拡散フィルム3Bと同様に、所定の入射光角度で入射した光の方向が、マトリックスとは屈折率の異なる領域の配向方向(ルーバー構造32Bの高さ方向)と略平行である場合には拡散が優先され、当該方向に平行でない場合には透過が優先される。そのため、異方性拡散フィルム3Bと同様に、光拡散性の入射光角度依存性を有しており、谷型の光学プロファイルを示す。
このように、異方性拡散フィルム3B、3Cは、入射光が散乱中心軸方向に近い入射光角度範囲では強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。
以下、最大直線透過率と最小直線透過率との中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の角度範囲を拡散領域(この拡散領域の幅を「拡散幅」)と称し、それ以外の入射光角度範囲を非拡散領域(透過領域)と称する。
図7に示す光学プロファイルの場合を例に挙げて拡散領域と非拡散領域について詳しく説明する。この光学プロファイルでは、最大直線透過率が約52%、最小直線透過率が約9%であり、それらの中間値の直線透過率が約30%である。この中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の間(図7に示す光学プロファイル上の2つの破線間の内側(入射光角度0°を含む)の入射光角度範囲が拡散領域となり、それ以外の入射光角度範囲が非拡散領域(透過領域)となる。
一方で、ピラー構造32Aを有する異方性拡散フィルム3Bでは、図4の投影面における透過光の様子に示すように、透過光は略円形状となっており、MDとTDとで略同一の光拡散性を示している。すなわち、ピラー構造32Aを有する異方性拡散フィルム3Bでは、拡散は等方性を有する。また、図7に示すように、入射光角度を変えても光拡散性(特に非拡散領域と拡散領域との境界付近における光学プロファイル)の変化が比較的緩やかである。
これに対し、ルーバー構造32Bを有する異方性拡散フィルム3Cでは、図5の投影面における透過光の様子に示すように、透過光は略針状となっており、MDとTDとで光拡散性が大きく異なる。すなわち、ルーバー構造32Bを有する異方性拡散フィルム3Cでは、拡散は異方性を有する。具体的には、図5に示す例では、MDではピラー構造の場合よりも拡散が広がっているが、TDではピラー構造の場合よりも拡散が狭まっている。
(透明粘着層)
透明粘着層4としては、特に限定されず、OCA(光学透明粘着剤)等として公知の透明粘着層を用いることができる。
透明粘着層4は一般に、ベース樹脂を含み、必要に応じて任意成分をさらに含む。透明粘着層4のベース樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。光学的透明性が高いこと、比較的安価なこと等から、アクリル系樹脂が好ましい。
透明粘着層4の厚さは、例えば5μm~50μm程度である。
透明粘着層4の全光線透過率(JIS K7361-1:1997)は、例えば60%~100%が好ましく、80%~100%がより好ましく、90%~100%がさらに好ましい。
(液晶フォトマスク積層体の製造方法)
液晶フォトマスク積層体1は、例えば、液晶フォトマスク2の光出射面に、透明粘着層4を介して光拡散体3を貼り合わせることにより製造できる。
貼り合わせの方法は特に制限はなく、公知の方法により実施できる。
液晶フォトマスク2は、市販の液晶フォトマスクを用いることができる。公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
透明粘着層4は、市販の透明粘着シートを用いることができる。公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
光拡散体3は、市販のものを用いることができる。公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。例えば異方性拡散フィルム3Aは、特開2005-265915号公報、特開2006-119241号公報、国際公開第2014/084361号、特開2015-191178号公報等に開示された方法を参考とし、光硬化型組成物の加熱温度、光硬化型組成物の層の厚さ、マスクや窒素雰囲気下による酸素阻害の調整、光硬化型組成物に照射する光線方向等を適宜調整することにより得ることができる。また、等方性拡散フィルムは、国際公開第2018/051639号に開示された方法を参考とし、塗料に添加する樹脂微粒子の量を適宜調整することにより得ることができる。
以下に、異方性拡散フィルム3Aの製造方法の一例を説明する。
この例の製造方法は、主に、以下の工程を有する。
(S1)光重合性化合物を含む組成物(以下、「光硬化型組成物」とも記す。)の層を基体上に設ける工程。
(S2)光源から平行光線を得る工程。
(S3)必要に応じて、平行光線を指向性拡散素子に入射させ、指向性を持った光線を得る工程(任意工程)。
(S4)光線(工程(S2)で得た平行光線又は工程(S3)で得た指向性を持った光線)を光硬化型組成物の層に入射させ、光硬化型組成物の層を硬化させる工程。
<光硬化型組成物>
光硬化型組成物は、光の照射により重合・硬化する材料であり、典型的には光重合性化合物と光開始剤とを含む。光としては、例えば紫外線(UV)、可視光線等が挙げられる。
光硬化型組成物としては、例えば、次のような組成物が使用可能である。
(1)単独の光重合性化合物と光開始剤とを含むもの。
(2)複数の光重合性化合物と光開始剤とを含むもの。
(3)単独又は複数の光重合性化合物と、光重合性を有しない高分子化合物と、光開始剤とを含むもの。
上記いずれの組成物においても、光照射により異方性拡散フィルム3A中に、屈折率の異なるミクロンオーダーの微細な構造が形成される。
異方性拡散フィルム3Aを形成する光重合性化合物が1種類であっても、密度の高低差ができることによって屈折率差が生ずる。光の照射強度が強い部分は硬化速度が早くなるため、その硬化領域周囲に重合・硬化材料が移動し、結果として屈折率が高くなる領域と屈折率が低くなる領域が形成されるからである。
したがって、上記(1)の組成物においては、光重合の前後における屈折率変化が大きい光重合性化合物を用いることが好ましい。上記(2)、(3)の組成物においては、屈折率の異なる複数の材料を組み合わせることが好ましい。なお、ここでの屈折率変化や屈折率の差とは、具体的には、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上の変化や差を示すものである。
光重合性化合物としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有する化合物(マクロモノマー、ポリマー、オリゴマー、モノマー等)が挙げられる。
ラジカル重合性の官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等の不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。カチオン重合性の官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等が挙げられる。
ラジカル重合性の官能基を有する化合物(ラジカル重合性化合物)としては、分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有する化合物が挙げられる。具体例としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2-エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変成トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。メタクリレートも同様に使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が、光重合速度が速いので好ましい。
カチオン重合性の官能基を有する化合物(カチオン重合性化合物)としては、分子中にエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。ただしこれらに限定されるものではない。
2-エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類;
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)-4,5-エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物。
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
オキセタン基を有する化合物としては、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-オキセタン等が挙げられる。
以上のカチオン重合性化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。また、上記光重合性化合物を低屈折率化して充分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物にフッ素原子(F)を導入してもよい。上記光重合性化合物を高屈折率化して充分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物に硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入してもよい。さらに、特表2005-514487号公報に開示されるように、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化錫(SnO)等の高屈折率の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基やメタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を上述の光重合性化合物に添加することも有効である。
光重合性化合物は、シリコーン骨格を有する光重合性化合物を含んでもよい。シリコーン骨格を有する光重合性化合物は、その構造(主にエーテル結合)に伴い配向して重合・硬化し、低屈折率領域、高屈折率領域、又は低屈折率領域及び高屈折率領域を形成する。なお、マトリックス31及び柱状構造32のいずれか一方が低屈折率領域に相当し、他方が高屈折率領域に相当する。
低屈折率領域において、シリコーン骨格を有する光重合性化合物の硬化物であるシリコーン樹脂が相対的に多くなることが好ましい。シリコーン樹脂は、シリコーン骨格を有さない化合物に比べ、ケイ素(Si)を多く含有するため、このケイ素を指標として、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を使用することによってシリコーン樹脂の相対的な量を確認することができる。
シリコーン骨格を有する光重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、マクロモノマーのいずれであってもよい。ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基の種類と数に特に制限はないが、官能基が多いほど架橋密度が上がり、屈折率の差が生じやすいため好ましいことから、多官能のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有することが好ましい。また、シリコーン骨格を有する化合物はその構造から他の化合物との相溶性において不十分なことがあるが、そのような場合にはウレタン化して相溶性を高めることができる。このような化合物としては、末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシリコーン・ウレタン・(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明において「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートのどちらであってもよいことを意味する。
シリコーン骨格としては、例えば、下記式(1)で示されるものが挙げられる。式(1)において、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、メチル基、アルキル基、フルオロアルキル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ポリエーテル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等の官能基を有する。式(1)中、nは1~500の整数であることが好ましい。
Figure 2023130815000002
シリコーン骨格を有する光重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、500~50,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲にあることにより、十分な光硬化反応が起こりやすくなる。
シリコーン骨格を有する光重合性化合物と、シリコーン骨格を有さない化合物とを併用してもよい。これにより、低屈折率領域と高屈折率領域が分離して形成されやすくなり、異方性の程度が強くなる。
シリコーン骨格を有さない化合物としては、光重合性化合物のほかに熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂を用いることができ、これらを併用することもできる。
光重合性化合物としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーを使用することができる(ただし、シリコーン骨格を有していないものである)。
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂とその共重合体や変性物が挙げられる。熱可塑性樹脂を用いる場合においては熱可塑性樹脂が溶解する溶剤を使用して溶解し、塗布、乾燥後に紫外線でシリコーン骨格を有する光重合性化合物を硬化させて異方性光拡散層を成形する。
熱硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステルとその共重合体や変性物が挙げられる。熱硬化型樹脂を用いる場合においては、紫外線でシリコーン骨格を有する光重合性化合物を硬化させた後に適宜加熱することで、熱硬化型樹脂を硬化させて異方性光拡散層を成形する。
シリコーン骨格を有さない化合物として最も好ましいのは光重合性化合物であり、低屈折率領域と高屈折率領域が分離しやすいことと、熱可塑性樹脂を用いる場合の溶剤が不要で乾燥過程が不要であること、熱硬化型樹脂のような熱硬化過程が不要であることとなど、生産性に優れている。
光硬化型組成物がシリコーン骨格を有する光重合性化合物とシリコーン骨格を有さない化合物とを含む場合、それらの化合物の比率は質量比で、15:85~85:15の範囲にあることが好ましく、30:70~70:30の範囲にあることがより好ましい。当該範囲にすることによって、低屈折率領域と高屈折率領域の相分離が進みやすくなる。
ラジカル重合性化合物を重合させるための光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ジ-η(5)-シクロペンタジエニルビス[2,6‐ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル]チタン(IV)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
カチオン重合性化合物を重合させるための光開始剤は、光照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF 、PF 、AsF 、SbF 等のアニオンが用いられる。具体例としては、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
光硬化型組成物中、光開始剤の含有量は、光重合性化合物100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~7質量部がより好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上であれば光硬化性が良好である。10質量部を以下であれば、柱状構造が良好に形成される。また、表面だけが硬化して内部の硬化性が低下したり、着色したりすることを抑制できる。
光重合性を有しない高分子化合物としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの高分子化合物と光重合性化合物とは、光硬化前は充分な相溶性を有していることが必要であるが、この相溶性を確保するために各種有機溶剤や可塑剤等を使用することも可能である。なお、光重合性化合物としてアクリレートを使用する場合、光重合性を有しない高分子化合物としては、相溶性の点から、アクリル樹脂が好ましい。
光開始剤は、通常粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。
溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。
光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化をさらに促進し完全なものにすることが期待できる。
<工程(S1)>
工程(S1)では、光硬化型組成物の層を基体上に設ける。
基体としては、特に限定されず、例えば石英ガラスやソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)、セロファン、芳香族ポリアミド等の樹脂フィルム等が挙げられる。
光硬化型組成物の層を基体上に設ける手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。光硬化型組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に光硬化型組成物をキャストすることもできる。この堰の高さを調整することで、光硬化型組成物の層の厚さを調整することができる。
光硬化型組成物の層を設けた後、光硬化型組成物の酸素阻害を防止して、柱状構造32を効率良く形成させるために、光硬化型組成物の層の光照射側に、光の照射強度を局所的に変化させるマスクを積層してもよい。マスクの材質としては、カーボン等の光吸収性のフィラーをマトリックス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものが好ましい。このようなマトリックスとしては、PET、TAC、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、PVA、アクリル樹脂、ポリエチレン等の透明プラスチックや、ガラス、石英等の無機物や、これらのマトリックスを含むシートに紫外線透過量を制御するためのパターニングや紫外線を吸収する顔料を含んだものであっても構わない。このようなマスクを用いない場合には、窒素雰囲気下で光照射を行うことで、光硬化型組成物の酸素阻害を防止することも可能である。また、通常の透明フィルムを光硬化型組成物の層上に積層するだけでも、酸素阻害を防ぎ柱状構造32の形成を促す上で有効である。
<工程(S2)>
工程(S2)では、光源から平行光線を得る。
光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。
光硬化型組成物の層に対して、所望の散乱中心軸と平行な光線を照射し、該光硬化型組成物を硬化させると、該光硬化型組成物の層中に、平行光線の照射方向に沿って延在する複数の柱状の硬化領域(柱状構造)が形成される。
このような平行光線を得る方法としては、点光源を配置して、この点光源と光硬化型組成物の層との間に、平行光線を照射するためのフレネルレンズ等の光学レンズを配置する方法、線状光源を配置して、この線状光源と光硬化型組成物の層との間に筒状物の集合を介在させ、この筒状物を通して光照射を行う方法(特開2005-292219号公報参照)等が挙げられる。線状光源を使用すると連続生産を行うことができるため好ましい。
線状光源としては、ケミカルランプ(紫外線を出す蛍光灯)を使用することができる。ケミカルランプは、直径20~50mm、発光長100~1500mm程度のものが市販されており、作成する異方性拡散フィルム3Aの大きさに合わせて適宜選択することができる。
<工程(S3)>
工程(S3)は任意工程である。工程(S3)では、工程(S2)で得た平行光線を指向性拡散素子に入射させ、指向性をもった光線を得る。
図13、図14を参照して、工程(S3)を含む場合の上記異方性拡散フィルムの製造方法について説明する。図13、図14に示すように、光源300からの平行光線Dが、指向性拡散素子301,302に入射して指向性を持った光Eとなり、この指向性を持った光Eが、光硬化型組成物の層303に入射し、光硬化型組成物の層303を硬化させる。
工程(S3)で用いられる指向性拡散素子301,302は、光源300から入射した平行光線Dに指向性を付与するものであればよい。
図13、図14においては、指向性をもった光Eが、X方向に多く拡散し、Y方向にはほとんど拡散せずに、光硬化型組成物の層303に入射する態様を示している。
このように指向性をもった光Eを得るためには、例えば、指向性拡散素子301,302内に、アスペクト比の高い針状フィラーを含有させるとともに、当該針状フィラーをY方向に長軸方向が延存するように配向させる方法を採用することができる。指向性拡散素子301,302に針状フィラーを使用する方法以外に、種々の方法を使用することができる。
ここで、指向性をもった光Eのアスペクト比は、2~20とすることが好ましい。当該アスペクト比にほぼ対応した、アスペクト比を有する柱状構造が形成される。上記アスペクト比の上限値は、10以下であることがより好ましく、5以下であることがより好ましい。アスペクト比が上限値以下であることで、干渉虹やギラツキを抑制することができる。光Eのアスペクト比は、光硬化型組成物の層303の光入射面における光Eの長径と短径との比(長径/短径)で表される。
工程(S3)においては、指向性をもった光Eの広がりを調整することにより、形成される柱状構造の大きさ(アスペクト比、短径SA、長径LA等)を適宜定めることができる。例えば、図13、図14のいずれにおいても、本形態の異方性拡散フィルムを得ることができる。図13と図14で異なるのは、指向性をもった光Eの広がりが、相対的に、図13では大きいのに対し図14では小さいことである。指向性をもった光Eの広がりの大きさに依存して、柱状構造の大きさが異なることとなる。
指向性をもった光Eの広がりは、主に指向性拡散素子301及び302の種類と、光硬化型組成物の層303との距離に依存する。当該距離を短くするにつれ柱状構造の大きさは小さくなり、長くするにつれ柱状構造の大きさは大きくなる。従って、当該距離を調整することにより、柱状構造の大きさを調整することができる。
<工程(S4)>
光硬化型組成物の層に照射する光線は、光重合性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要で、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。この波長帯を使って異方性拡散フィルム3Aを作製する場合、照度としては0.01~100mW/cmの範囲であることが好ましく、0.1~20mW/cmの範囲がより好ましい。光の照射時間は特に限定されないが、10~180秒間が好ましく、30~120秒間がより好ましい。
上述の如く低照度の光を比較的長時間照射することにより光硬化型組成物層中に特定の内部構造が形成されるが、このような光照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm以上の高照度の光を追加照射して残存モノマーを重合させることができる。このときの光照射はマスクを積層した側の逆側から行ってもよい。
その後、基体を剥離することで、異方性拡散フィルム3Aを得ることができる。
(用途)
液晶フォトマスク積層体1は、露光装置に用いられる。液晶フォトマスク積層体1を用いた露光装置は、例えば、フォトリソグラフィ法により基板表面にレジストパターンを形成するために用いられる。
液晶フォトマスク積層体1を用いた露光装置の構成は、従来のフォトマスクの代わりに液晶フォトマスク積層体1を備える以外は、公知の露光装置の構成と同様であってよい。露光装置の一例として、特開2004-85955号公報に記載されるような、光源を含み、光を照射する照明光学系と、照明光学系からの照明光の光路中に配置されたフォトマスクを含む露光制御系と、フォトマスクを通過した照明光が照射されるように、表面にフォトレジスト膜が形成された基板を保持する露光光学系とを備える露光装置が挙げられる。
光源としては、主に紫外線等が挙げられる。
液晶フォトマスク積層体1を用いた露光装置により形成するレジストパターンとしては、本発明の有用性から、図12に示すような、傾斜パターンを含むパターンが好ましい。
傾斜パターンは、液晶フォトマスク2の画素の配列方向(縦方向(図中の上下方向)及び横方向(図中の左右方向))に対して傾斜した方向(縦方向を0°方向としたとき、0°超90°未満の方向)に延びるラインパターン又はスペースパターンである。
(作用効果)
以上説明した液晶フォトマスク積層体1にあっては、液晶フォトマスク2に光拡散体3が積層されているので、液晶フォトマスク2から出射した光が光拡散体3によって適度に拡散される。そのため、液晶フォトマスク2に表示されるパターンが傾斜パターンを含んでいても、形成されるレジストパターンの傾斜パターンがジグザグになることを抑制でき、レジストパターンの精度が良好となる。
特に光拡散体3が異方性拡散フィルムである場合、特定方向(例えば正面方向)への光の集光性を有する為、意図しない露光を抑制することができ、精度がより向上する。
(他の実施形態)
以上、本発明について実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
例えば、図8に示す液晶フォトマスク積層体1Aのように、透明粘着層4を有さず、液晶フォトマスク2と光拡散体3とが直接積層された構成としてもよい。このような液晶フォトマスク積層体は、例えば液晶フォトマスク2の主面に光拡散体3を直接形成することで得られる。
図9に示す液晶フォトマスク積層体1Bのように、液晶フォトマスク2の光入射面側(図中、上側)に光拡散体3が積層された構成としてもよい。この場合、液晶フォトマスク2に入射する光が光拡散体3によって適度に拡散されて、ジグザグを抑制できる。光拡散体3は、液晶フォトマスク積層体1Bのように、透明粘着層4を介して積層されてもよく、直接積層されてもよい。
露光用平行光が液晶フォトマスクを透過した後で光拡散をさせる方が、液晶フォトマスクの遮光及び露光を正しく制御させることができる為、液晶フォトマスク2の光出射面側に光拡散体3が積層されることが好ましい。
以下に本発明について、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(光拡散体の拡散光の強度最大値の1/10値における角度幅(FWTM))
ゴニオフォトメーター(ジェネシア社製、Gonio/Far Field Profiler)を用いて、光拡散体の一方の主面の法線方向から直線光を入射し、反対側の主面より光拡散体を出射(透過)した拡散光の強度の分布(角度毎の透過率)を、他方の面の法線方向角度を0°として法線方向に垂直な直線上で-75°~+75°の範囲で測定し、拡散光の強度最大値の1/10値を示す2点の角度幅でFWTMを算出した。
ただし、光拡散体が測定する方位によりFWTMが異なる場合には、FWTMが最大となる方位でのFWTMとFWTMが最小となる方位でのFWTMとの平均値とした。
(光拡散体の主面の法線方向の直線透過率、最大直線透過率、最小直線透過率、散乱中心軸角度)
ゴニオフォトメーター(ジェネシア社製、Gonio/Far Field Profiler)を用いて、上述の図6に示した方法に従い、光拡散体の一方の主面の法線方向(面法線方向)から直線光を入射し、光拡散体の反対側の主面より出射(透過)した直線光を測定し、直線透過率を算出し、この直線透過率を角度ごとにプロットして光学プロファイルを作成した。
なお、直線透過率の測定は、視感度フィルターを用いて可視光領域の波長において測定した。
以上の様な測定の結果得られた光学プロファイルに基づき、直線透過率の最大値(最大直線透過率)及び最小値(最小直線透過率)と、当該プロファイルにおける、略対称性を有する入射光角度である散乱中心軸角度とを求めた。
(光拡散体のヘイズ値)
ヘイズ値(Hz)は、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-7000)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
(異方性拡散フィルムの柱状構造延在角度)
複数の柱状構造を持つ異方性拡散フィルムのとき、柱状構造の延在方向とフィルム法線方向との成す角度である柱状構造延在角度は、異方性拡散フィルムの厚さ方向断面を光学顕微鏡にて観察し、任意の10本の柱状構造について、柱状構造の延在方向(異方性拡散フィルム主面において、一方の面から他方の面にかけ、柱状構造が配向している方向)が、異方性拡散フィルム主面の法線方向との成す角度を測定し、その平均値として算出した。
(異方性拡散フィルムの柱状構造のアスペクト比)
複数の柱状構造を持つ異方性拡散フィルムのとき、長径の平均値、短径の平均値はそれぞれ、光学顕微鏡で柱状構造の延在方向に垂直な断面を観察し、任意に選択した10個の柱状構造32の断面形状の長径、短径をそれぞれ測定し、その平均として算出した値とした。
算出した長径の平均値を、算出した短径の平均値で除した値をアスペクト比とした。
(等方性拡散フィルムの作製)
特開2002-122714号公報を参考に、以下に示す方法で等方性拡散フィルムを作製した。
屈折率1.47のアクリル系粘着剤(商品名:SKダインTM206、全固形分濃度18.8%、溶剤:酢酸エチル、メチルエチルケトン、綜研化学社製)100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(商品名:L-45、綜研化学社製)0.5部と、エポキシ系硬化剤(商品名:E-5XM、綜研化学社製)0.2部を添加したベース塗料に、粘着剤と屈折率の異なる微粒子としてシリコーン樹脂微粒子(トスパール145、屈折率1.43、粒子径4.5μm)を所定量添加し、アジターで30分間撹拌して微粒子を分散させ、等方性拡散フィルム用塗料aを調製した。
シリコーン樹脂微粒子の添加量を変えた以外は上記と同様にして、等方性拡散フィルム用塗料bを調製した。
同様にシリコーン樹脂微粒子の添加量を変えた以外は上記と同様にして、等方性拡散フィルム用塗料cを調製した。
比較のために、シリコーン樹脂微粒子を添加しなかった以外は上記と同様にして透明粘着フィルム用塗料dを調製した。
調製した等方性拡散フィルム用塗料a~c又は透明粘着フィルム用塗料dを、厚さ38μmの離型PETフィルム(リンテック社製、商品名:38C)に、コンマコーターを用いて、溶剤乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗工し、乾燥して等方性拡散フィルムa~c又は透明粘着フィルムdを形成し、その上に厚さ38μmの離型PETフィルム(リンテック社製、商品名:3801)をラミネートした。
等方性拡散フィルムa~cのFWTM、面法線方向の直線透過率、最大直線透過率、最小直線透過率、ヘイズ値(Hz)を表1に示す。
(レンズ拡散板)
レンズ拡散板として、LSD1°、LSD5°、LSD30°及びLSD60°(いずれもオプティカルソリューションズ社製。)を用意した。
各レンズ拡散板のFWTM、面法線方向の直線透過率、最大直線透過率、最小直線透過率、ヘイズ値(Hz)を表1に示す。
(異方性拡散フィルムの作製)
特開2006-119241号公報及び国際公開第2014/084361号を参考に、以下に示す方法で異方性拡散フィルムを作製した。
以下の各成分を混合して紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
・シリコーン・ウレタン・アクリレート(RAHN社製、商品名:00-225/TM18、屈折率:1.460、重量平均分子量:5,890)20質量部。
・ネオペンチルグリコールジアクリレート(ダイセルサイテック社製、商品名Ebecryl145、屈折率:1.450)30質量部。
・ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(ダイセルサイテック社製、商品名:Ebecyl150、屈折率:1.536)15質量部。
・フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学製、商品名:ライトアクリレートPO-A、屈折率:1.518)40質量部。
・2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(BASF社製、商品名:Irgacure651)4質量部。
厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:A4300)の縁部全周に、ディスペンサーを使い、硬化性樹脂で高さ50μmの隔壁を形成した。この中に上記紫外線硬化樹脂組成物を滴下し、別のPETフィルムでカバーした。
この両面がPETフィルムで挟まれた厚さ50μmの紫外線硬化樹脂組成物の液膜に対し、UVスポット光源(浜松ホトニクス社製、商品名:L2859-01)の落射用照射ユニットから、照射強度30mW/cmの平行光線である紫外線を1分間照射して、複数の柱状構造を多数有する50μmの膜厚の7種類のPET付き単層の異方性拡散フィルムe~kを得た。各異方性拡散フィルムe~kのFWTM、面法線方向の直線透過率、最大直線透過率、最小直線透過率、ヘイズ値(Hz)、柱状構造の延在方向、アスペクト比を表1に示す。
なお、各異方性拡散フィルムの光学特性である、最大直線透過率及び散乱中心軸角度(異方性拡散フィルムの法線方向に対する)と、各柱状構造のアスペクト比とは、紫外線硬化樹脂組成物による液膜の加熱温度と、照射する紫外線の光線方向との調整に加え、平行光線のアスペクト比を変更できる指向性拡散素子を、異方性拡散フィルムと落射用照射ユニット間に配置の有無と、指向性拡散素子を使用する場合、指向性拡散素子の配置を調整する(異方性拡散フィルムに近づける又は遠ざける)ことを行うことで、7種類の異方性拡散フィルムを得ることができた。
指向性拡散素子は、入射した平行光線に指向性を付与するものであり、本実施例では指向性拡散素子内にアスペクト比の高い針状微粒子を含有したものを使用した。柱状構造のアスペクト比は、指向性拡散素子によって変更された平行光線のアスペクト比にほぼ対応した形で形成された。
Figure 2023130815000003
(実施例1~6、比較例1~9)
187ppi(pixel per inch)の液晶ディスプレイの光出射面側に、表2に示す光拡散体を夫々積層し、実施例1~6、比較例1~9の各液晶フォトマスク積層体を作製した。
(液晶フォトマスク積層体のジグザグ消し効果、画像ボケ)
実施例及び比較例の各液晶フォトマスク積層体に対し、液晶フォトマスク積層体内液晶ディスプレイ画面上に、左上から斜め右下にかけて45°の斜め線を境界に、一方を黒表示、他方を白表示となる様に表示させた。
この境界を倍率30倍のルーペを用いて目視観察し、境界部分の画素によるジグザグが消えている(スムージングされている)かどうか、また境界に画像ボケが生じていないかどうかを目視にて判定した。
評価結果を表2に示した。
<評価基準>
表2における評価の評価基準は以下の通りである。
「ジグザグ消し効果」
◎ ジグザグが確認できない。
〇 極めてわずかにジグザグが確認できるが、実用上全く問題のないレベルである。
△ ジグザグが少し確認できるが、実用上問題のないレベルである。
× ジグザグがある。
「画像ボケ」
◎ 画像ボケなし。
〇 画像ボケが少し感じられるが、実用上問題のないレベルである。
× 画像ボケがある。
Figure 2023130815000004
実施例1~6で使用した等方性拡散フィルムa、異方性拡散フィルムe~iは、高いヘイズ値を有する為、液晶フォトマスク積層体とした際、画素に起因するジグザグをスムージングする効果が高かった。また同時に、FWTMがある程度狭い為、画像ボケも抑えられていた。
一方で、光拡散体を用いてない比較例1や、ヘイズ値の低い等方性拡散フィルムb、c、異方性拡散フィルムj、k、レンズ拡散体(LSD1°、5°)を使用した比較例2~6、9では、拡散が十分でない為に、画素に起因するジグザグを十分にスムージングすることができなかった。また、ヘイズ値は高いもののFWTMが広いレンズ拡散体(LSD30°、60°)を使用した比較例7、8では、画素に起因するジグザグを実用上問題なくスムージングすることはできているものの、FWTMが広すぎる為、画像ボケが確認された。
1 液晶フォトマスク積層体、2 液晶フォトマスク、3 光拡散体、3A,3B,3C 異方性拡散フィルム、3a 第一の主面、3b 第二の主面、4 透明粘着層、31 マトリックス、32 柱状構造、32A 棒状の柱状構造(ピラー構造)、32B 板状の柱状構造(ルーバー構造)

Claims (8)

  1. 液晶フォトマスクと、前記液晶フォトマスクの光入射面側及び光出射面側のいずれか一方に積層された光拡散体とを備え、
    前記光拡散体は、第一の主面と、前記第一の主面とは反対側の第二の主面とを有し、前記第一の主面より前記第一の主面の法線方向に沿って直線光を入射し、前記第二の主面より出射する拡散光の分布を、前記第二の主面の法線方向角度を0°として測定したときに、前記拡散光の強度最大値の1/10値における角度幅が45°以下であり、ヘイズ値が55%以上であることを特徴とする液晶フォトマスク積層体。
  2. 前記光拡散体は、前記第一の主面の法線方向における直線透過率が40%以下である、請求項1に記載の液晶フォトマスク積層体。
  3. 前記光拡散体は、入射光角度により光拡散性が変化する異方性拡散フィルムである、請求項1又は2に記載の液晶フォトマスク積層体。
  4. 前記異方性拡散フィルムは、マトリックスと、マトリックスとは屈折率の異なる複数の柱状構造とを有し、前記複数の柱状構造は、前記異方性拡散フィルムの厚み方向に延在している、請求項3に記載の液晶フォトマスク積層体。
  5. 前記異方性拡散フィルムの散乱中心軸角度が10°以下である、請求項4に記載の液晶フォトマスク積層体。
  6. 前記複数の柱状構造は各々、前記柱状構造の延在方向に垂直な断面における長径と短径の比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1~10である、請求項4又は5に記載の液晶フォトマスク積層体。
  7. 前記光拡散体は、前記液晶フォトマスクの光出射面側に積層されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の液晶フォトマスク積層体。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶フォトマスク積層体を用いた露光装置。
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