以下、本発明に係る無線端末測定装置及び無線端末測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、ビーム方向を制御可能なアンテナ110を少なくとも1つ有するDUT100に対して、送受信特性の測定やビームフォーミング測定などを行うものである。例えば、無線端末測定装置1は、複数の円偏波アンテナ20が収容されたシールドボックス50と、測定部51と、表示部52と、操作部53と、を備えている。アンテナ110は、ビーム方向が制御可能であるフェイズドアレーアンテナを構成している。
DUT100は、例えば5G対応のミリ波通信を行うことができるスマートフォンなどの無線端末である。
アンテナ110は、垂直偏波や水平偏波などの直線偏波の電波を放射するようになっている。また、アンテナ110は、直線偏波の偏波方向を時間的に切り替えることが可能な構成であってもよい。
以下、円偏波アンテナ20の構成について説明する。図2から図6は、円偏波アンテナ20の基本構造を示している。
すなわち、図2は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す斜視図である。また、図3(a),(b)は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す正面図である。また、図4は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す背面図である。また、図5(a)は、図3(a)の4A−4A線拡大断面図である。また、図5(b)は、図3(a)の変形例における4B−4B線拡大断面図である。また、図6は、図3(a)の5−5線拡大断面図である。
本実施形態における円偏波アンテナ20は、基本的には、図2から図6に示すように、誘電体基板21と、誘電体基板21の一面21a側に重合される地板導体22と、誘電体基板21の反対面21bに形成され、所定の偏波の回転方向を有する円偏波型のアンテナ素子23と、を有している。なお、反対面21bを第1の面とも称し、一面21aを第2の面とも称する。
さらに、地板導体22を挟んだ誘電体基板21の反対側には、アンテナ素子23に励振信号を給電するための給電部26が形成されている。給電部26は、給電用誘電体基板27と、給電用誘電体基板27の地板導体22と反対側の表面に形成され、地板導体22をアースとするマイクロストリップ線路の給電ライン28と、を有する。
上記の誘電体基板21及び給電用誘電体基板27としては、準ミリ波帯で低損失のRO4003(Rogers社)などの材料を用いることができる。
この誘電体基板21及び給電用誘電体基板27の材質としては、低損失で誘電率が2〜5程度の材料であれば使用可能であり、例えば、ガラスクロステフロン基板や各種熱硬化樹脂基板が候補となる。例えば、図5(a)に示す構成では、誘電体基板21及び給電用誘電体基板27の誘電率をいずれも3.62とし、誘電体基板21の高さh1を1.1mm、給電用誘電体基板27の高さh2を0.3mmなどとすることができる。
アンテナ素子23は、誘電体基板21の反対面21b側に、例えば、パターン印刷技術によって形成された右巻き矩形スパイラル(図3(a)参照)又は左巻き矩形スパイラル(図3(b)参照)の不平衡型のアンテナである。
また、円偏波アンテナ20は、アンテナ素子23のスパイラル中心側の側端部(給電点)に一端が接続され、誘電体基板21をその厚さ方向に貫通して地板導体22の穴22aを非導通に通過し、更に給電部26を構成する給電用誘電体基板27を貫通してその表面に他端側を突出させる給電ピン(feed pin)25を有している。
なお、給電部26は、上記のマイクロストリップ線路の構成に限定されず、不平衡型の給電線、例えば、同軸ケーブルや、地板導体22をアースとするコプレーナ線路あるいはマイクロストリップ線路等により給電ピン25の他端側から給電される構成であればよい。図3(a)に示した構成の円偏波アンテナ20は、給電ピン25から給電されることにより、アンテナ素子23から主偏波の回転方向が左回りの円偏波(left hand circular polarization:LHCP)の電波を放射することができる。一方、図3(b)に示した構成の円偏波アンテナ20は、給電ピン25から給電されることにより、アンテナ素子23から主偏波の回転方向が右回りの円偏波(right hand circular polarization:RHCP)の電波を放射することができる。なお、図4以降の図面では、特に断りのない限り主偏波がLHCPの構成のみを示す。
ただし、これだけの構造のみによる円偏波アンテナでは、誘電体基板21の表面に沿った表面波が励振されるため、その表面波の影響によって円偏波アンテナとして所望の特性が得られない。
そこで、本実施形態の円偏波アンテナ20では、誘電体基板21の表面に沿った表面波の励振を抑制するための構造として、上記構造に加えて、図5(a)、図6に示しているように、複数の金属ポスト30によって構成されるキャビティ構造を採用している。
具体的には、例えば円柱状の複数の金属ポスト30は、それぞれの一端側が地板導体22に接続され、誘電体基板21をその厚さ方向に沿って貫通し、かつそれぞれの他端側が誘電体基板21の反対面21bまで延びて、アンテナ素子23を囲むように所定間隔で設けられることにより、キャビティを構成する。
さらに、本実施形態の円偏波アンテナ20は、上記キャビティ構造に加えて、誘電体基板21の反対面21b側に、複数の金属ポスト30の各他端側をその並び方向に沿って順次短絡し、かつ各金属ポスト30との接続位置からアンテナ素子23方向に所定距離延びて設けられる枠状導体32を備えている。
そして、本実施形態の円偏波アンテナ20では、このキャビティ構造と、枠状導体32との相乗効果によって、表面波を抑圧することができるようにしている。つまり、本実施形態の円偏波アンテナ20は、上記のキャビティ構造と枠状導体32とを備えることにより、従来の一般的な平面アンテナと比較して、アンテナ側面からの電波の漏れを大幅に抑制することができる。
なお、複数の金属ポスト30は、図5(b)に示すように、誘電体基板21を貫通する複数の穴301を形成し、この複数の穴301の内壁にメッキ加工(スルーホールメッキ)することによって複数の中空状の金属ポスト30′として実現することもできる。
この場合、スルーホールメッキによる複数の中空状の金属ポスト30′の下端部は、誘電体基板21の一面21a側にパターン印刷技術によって形成されるランド302を介して地板導体22に接続されるようになされている。
以下、上記のキャビティ構造と枠状導体32とによる表面波抑圧の効果を説明するために、各部の構造パラメータと、当該構造パラメータを変えて得られた円偏波アンテナ20の特性についてのシミュレーション結果について説明する。
まず、各部の構造パラメータとなり得る要素について説明する。
この円偏波アンテナ20の使用周波数はK及びKaバンド帯の18〜40GHzであり、アンテナ素子23の方形スパイラルは、基本長をa0とし、該a0並びにその任意倍数の長さの線路を90度の角度ごとに配置して構成する。
このような方形スパイラルの典型的な例を図7(a)に示す。すなわち、この例では、素子幅Wを0.25mm、基本長a0を0.45mmとし、以下、90度の角度ごとに2a0、2a0、3a0、3a0、4a0、4a0の線路長とし、最終線路長を3a0とし、全体で9巻き(nine−turn spiral)の方形スパイラルとしている。
また、図7(b)に示す方形スパイラルは、図7(a)における基本長a0よりも長くした基本長a0′とし、巻数を減らした場合である。
この例では、素子幅Wを0.25mm、基本長a0′を0.7mmとし、以下、90度の角度ごとに2a0′、2a0′、3a0′、3a0′、4a0′の線路長とし、最終線路長を約1.5a0′とし、全体で8巻き(eight−turn spiral)の方形スパイラルとしている。
この場合、最終線路長は、円偏波の軸比(axial ratio)や反射特性を最適化するように約1.5a0′に選んである。
なお、以下の説明及び実施形態では、円偏波アンテナ20に採用すべきアンテナ素子23として方形スパイラルの例を示している。
しかるに、図8に示すように、円偏波アンテナ20に採用すべきアンテナ素子23としては、方形スパイラルに代えて、円形スパイラルのアンテナ素子23を用いることもできる。
この図8に示す円形スパイラルのアンテナ素子23は、例えば、基準点からの半径初期値SR=0.2mm、素子幅W=0.35mm、スパイラル間隔d=0.2mm、巻き数2.125の円形スパイラルによるアンテナ素子23の場合であり、このような円形スパイラルによるアンテナ素子23を円偏波アンテナ20に用いた場合でも、上述した方形スパイラルのアンテナ素子23を用いた場合とほぼ同等の結果が得られている。
また、誘電体基板21の外形はアンテナ素子23のスパイラル中心を中心とする正方形で、図3(a),(b)に示すように、その一辺の長さをL(以下、外形長と記す)とし、キャビティの外形もこれと同心の正方形としている。
また、キャビティは、図5(a),(b)に示すように、その内寸をLwとしている。さらに、枠状導体32には、キャビティ内壁から内側へ延びる所定幅(以下、リム幅と記す)LRを有するリムが設けられている。
また、キャビティを形成する複数の金属ポスト30の直径は、それぞれ、0.3mmであり、各金属ポスト30の間隔は0.9mmである。
図9は、複数の金属ポスト30によるキャビティ及び枠状導体32を設けない場合における垂直面(図2、図3でyz面)の放射特性についてのシミュレーション結果を示している。
図9において、F1、F1′は、外形長L=18mmのときの主偏波(左回り円偏波:LHCP)と交差偏波(右回り円偏波:RHCP)の特性であり、F2、F2′は、外形長L=24mmのときの主偏波と交差偏波の特性である。
ここで、円偏波アンテナとして要求される放射特性は、主偏波については0°方向を中心として対称でブロードな単峰特性であり、交差偏波(完全な円偏波であればゼロである)については、広い角度範囲において主偏波より十分低い放射強度となる必要がある。
これに対し、図9の主偏波の特性F1、F2は、共に非対称で利得に大きな暴れがあり、また、交差偏波についてみれば、−60°、−40°の近傍で主偏波と同等又はそれに近い放射レベルになっていることが分かる。
このような放射特性の乱れは、前記した表面波の影響によって発生している。
図10は、複数の金属ポスト30によって内寸Lw=9mmのキャビティを設け、更にリム幅LR=1.2mmの枠状導体32を設けたときの、外形長L=18mm及びL=24mmにした場合の主偏波の特性F3、F4と交差偏波の特性F3′、F4′についてのシミュレーション結果を示している。
この図10から明らかなように、主偏波の特性F3、F4は、0°方向を中心として対称でブロードな単峰特性となり、交差偏波の特性F3′、F4′についても、広い角度範囲において主偏波F3、F4より十分低い放射強度で緩慢な変化となっており、前記した円偏波アンテナとして要求される所望の特性が得られていることが分かる。
また、各部の構造パラメータを変えて行った前記と同様の幾つかの各種の放射特性についてのシミュレーションの結果、枠状導体32が無い場合の放射特性は、誘電体基板21の外形長Lとキャビティ内寸Lwに対する依存性を示し、概略的な傾向を言えば、外形長Lが大きい(L=24,18mm)場合、キャビティ内寸Lwが3〜10mmまで大きくなるにつれて主偏波特性は3峰形から単峰形に近づくことが判明している。
また、誘電体基板21の外形長Lが比較的小さい(L=12mm)場合、キャビティ内寸Lwが3〜10mmまで間で大きくなるにつれて主偏波特性は双峰形から単峰形に近づくことが判明している。
しかし、いずれの場合でも、交差偏波の暴れが大きく使用角度範囲内いずれかにおいて主偏波成分との差が小さくなり、偏波選択性が低く、上記図10のような所望の特性には至らないことが判明している。
なお、リム幅LRの1.2mmは、誘電体基板21の表面に沿って伝播する表面波の波長のほぼ1/4に相当している。つまり、このリム幅LR=1.2mmの部分は、その先端側からポスト壁側を見たとき、表面波に対してインピーダンスが無限大となるλg/4(λgは管内波長)の長さの伝送路を形成する。
したがって、誘電体基板21の表面に沿った電流が流れないことになり、この電流阻止作用によって表面波の励振が抑圧され、放射特性の暴れを防いでいることになる。
よって、円偏波アンテナ20を上記した以外の他の周波数帯に適用する場合には、その周波数に応じてリム幅LRを変更設定すればよい。
ところで、本実施形態の円偏波アンテナ20は、誘電体基板21に、複数の金属ポスト30によるキャビティと枠状導体32を設けることによって共振器を構成し、この共振器をアンテナ素子23で励振していると考えることができる。
本実施形態の円偏波アンテナ20は、共振器を構成しているので、共振周波数が存在し、その共振周波数では円偏波アンテナ20の入力インピーダンスが非常に大きくなり、放射をしなくなる。
この場合、共振器の共振周波数は、共振器と円偏波のアンテナ素子23との構造パラメータで決まる。
この構造パラメータは、前述したように、キャビティの内寸Lw、リム幅LRのほか、アンテナ素子23の巻数、アンテナ素子23の基本長a0、アンテナ素子23の素子幅Wなどである。
したがって、アンテナ利得の周波数特性は、前記共振周波数付近で急激に深い落ち込み(ノッチ)が生じることになる。この共振周波数は、上記の構造パラメータを調整することにより、所望の値に設定することが可能である。
以下、シールドボックス50の構成について説明する。図11及び図12に示すように、シールドボックス50は、DUT100を周囲の電磁波からシールドするものであり、筐体120と、トレー121と、アンテナ保持部122と、を主に備えている。
筐体120のサイズは、例えば、幅が560mm、奥行きが620mm、高さが560mmである。筐体120は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮やこれらの合金などの導電性の金属からなっており、外部に対して電磁波シールド機能を有する。筐体120は、これらの材質の金属の板に対して折り曲げなどの加工を行うことによって製造できるが、軽量化、省資源化のためにこれらの材質の板にパンチングによる穴あけを行なってもよい。あるいは、始めから板の代わりに網状の材料を採用してもよい。なお、穴や網目の大きさは、DUT100が出力する被測定信号の電波の波長よりも十分に小さければ(例えば1/10波長以下)、シールドボックスとしての遮蔽性能を保つことができる。
なお、シールドボックス50においては、DUT100のアンテナ110又は円偏波アンテナ20で発生する電磁波のシールドボックス50内での反射を抑制するとともに、これらの電磁波がシールドボックス50の外に漏洩するのを防止するための電波吸収体が、その内壁面に沿って設けられている。
トレー121は、DUT100を載置するための引き出し状の部材であり、少なくともDUT100が載置される箇所の厚さ方向全体にわたって、比誘電率が比較的低く誘電損失の少ないポリエチレン、ポリアセタール(POM)やテフロン(登録商標)などの合成樹脂で形成されている。
トレー121は、筐体120の両側方に設置された2つのエアシリンダ130に取り付けられており、エアシリンダ130のY軸方向の往復運動によって、筐体120から引き出されて載置面121aにDUT100を載置可能な状態と、載置面121aにDUT100が載置された状態で筐体120の内部に収容される状態と、を取ることが可能になっている。載置面121aに載置可能なDUT100のサイズは、例えば、幅が38mm〜221mm、高さが123mm〜306mm程度である。
図12及び図13に示すように、アンテナ保持部122は、例えば、X軸方向に延伸する2つのアンテナガイド123と、Y軸方向に延伸する2つのアンテナガイド124と、からなり、シールドボックス50内において複数の円偏波アンテナ20を保持するようになっている。各アンテナガイド123,124は、比誘電率が比較的低く誘電損失の少ないポリエチレン、ポリアセタール(POM)やテフロン(登録商標)などの合成樹脂で形成されている。
アンテナ保持部122は、シールドボックス50内において、例えばDUT100の上方と下方に配置される。このアンテナ保持部122により、DUT100がシールドボックス50内に収容された際に、DUT100のアンテナ110と複数の円偏波アンテナ20との位置関係が固定されるようになっている。
図13は、DUT100とDUT100の上方に配置されたアンテナ保持部122との位置関係を示している。図13に示すように、X軸方向に延伸する2つのアンテナガイド123は、例えば、側方(Y軸方向)から円偏波アンテナ20を挿入可能な間隙123aと、円偏波アンテナ20の放射面を露出するための開口部123bを有している。同様に、Y軸方向に延伸する2つのアンテナガイド124は、例えば、側方(X軸方向)から円偏波アンテナ20を挿入可能な間隙124aと、円偏波アンテナ20の放射面を露出するための開口部124bを有している。円偏波アンテナ20は、放射面側(すなわち、反対面21b側)がDUT100の一面に対向するように配置されている。
アンテナ保持部122は、アンテナガイド123,124の任意の箇所に任意の個数の円偏波アンテナ20を配置することが可能である。既に述べたように、円偏波アンテナ20は、アンテナ側面からの電波の漏れが非常に少ないため、各アンテナガイド123,124において近接配置することも可能である。
なお、図13に示した例においては、開口部123b,124bが円偏波アンテナ20の放射面と反対側の一面21a側にも設けられているが、この一面21a側の開口部を設けずに円偏波アンテナ20の一面21a側を全て覆うような構成としてもよい。
また、DUT100の下方に配置されたアンテナ保持部122も、DUT100の上方に配置されたアンテナ保持部122と同様の構成であり、円偏波アンテナ20を放射面側(すなわち、反対面21b側)がDUT100に対向するように保持する。
なお、図13において、DUT100の各アンテナ110から円偏波アンテナ20に向かう矢印は、ビームの方向の一例を示している。
図14は、図13のA−A線断面図である。図14に示すように、アンテナ保持部122は、円偏波アンテナ20をDUT100のアンテナ110の放射面に対して所定の傾斜角度θだけ傾けて保持するようになっている。ここで、θは例えば5°である。
なお、X軸方向に延伸する2つのアンテナガイド123は、Y軸方向にそれぞれ平行移動させることが可能になっている。同様に、Y軸方向に延伸する2つのアンテナガイド124は、X軸方向にそれぞれ平行移動させることが可能になっている。さらに、DUT100の上方及び下方に配置されたアンテナ保持部122全体をZ軸方向にそれぞれ平行移動させることも可能になっている。
このため、DUT100をトレー121の載置面121aに載置する際に厳密な位置決めを行わなくても、DUT100の載置位置やサイズに合わせて、アンテナガイド123,124の位置を移動させることにより、アンテナ保持部122に保持された複数の円偏波アンテナ20をDUT100の複数のアンテナ110に対して所望の位置に配置することが可能である。例えば、DUT100の各アンテナ110の真上に円偏波アンテナ20を配置することなども可能である。
例えば、図15(a)に示すようにDUT100がトレー121の載置面121aの中心に載置された状態、図15(b)に示すようにDUT100がトレー121の載置面121aの中心から外れた位置に載置された状態、図15(c)に示すようにサイズの大きなDUT100がトレー121の載置面121aに載置された状態のいずれの状態であっても、DUT100の載置位置に合わせてアンテナガイド123,124の位置を移動させることが可能である。
図1に示すように、測定部51は、信号送信部60と、信号受信部61と、結合器62と、SW63と、ビーム方向制御部64と、解析処理部65と、記憶部66と、測定制御部67とを備えており、DUT100に対して送信電波の出力レベルや受信感度などに関する送受信特性の測定や、ビームフォーミング測定を行うようになっている。
信号送信部60は、シールドボックス50に収容されたDUT100の各アンテナ110に向けて、各円偏波アンテナ20から試験信号を出力するようになっている。
信号受信部61は、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号を、複数の円偏波アンテナ20を介して受信するようになっている。
なお、上記の試験信号は、本実施形態の無線端末測定装置1に対してDUT100を呼接続状態とするなどの、DUT100の通信規格に対応した各種制御を行うための制御信号を含むものとする。また、上記の被測定信号は、本実施形態の無線端末測定装置1から出力された試験信号に対するDUT100からの応答信号や、後述するビーム方向制御部64により振幅及び位相が制御された信号などである。
結合器62は、信号送信部60から出力される試験信号の出力周波数を通過させる広帯域の方向性結合器であり、例えばウィルキンソン型の分配器で構成される。結合器62は、円偏波アンテナ20と同軸ケーブルで接続されており、信号送信部60から出力された試験信号を円偏波アンテナ20に入力するとともに、各円偏波アンテナ20で受信されたDUT100からの被測定信号を信号受信部61に入力することが可能となっている。
SW63は、信号受信部61の出力側を後述する送受信特性測定部68に接続する状態、又は、信号受信部61の出力側を後述するビームフォーミング測定部69に接続する状態のいずれかの状態を取るように構成されている。
ビーム方向制御部64は、シールドボックス50の制御端子40を介して、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号のビームの形状及び方向を制御するための制御信号をDUT100に出力するようになっている。例えば、ビーム方向制御部64は、操作部53により設定されたビームの形状及び方向を実現するように、被測定信号の振幅及び位相を制御することが可能になっている。ビーム方向制御部64によりビーム方向が所望の方向に制御された被測定信号は、複数の円偏波アンテナ20を介して信号受信部61に受信される。
解析処理部65は、信号受信部61により受信された被測定信号に対して解析処理を行うようになっており、送受信特性測定部68と、ビームフォーミング測定部69と、を含む。
ここで、円偏波アンテナ20から放射される電磁界の領域のうち、円偏波アンテナ20に近接する領域は、放射に寄与しない電磁界成分が主となるリアクティブ近傍界領域と呼ばれ、円偏波アンテナ20の放射面からの距離によって指向性の変化がない領域は放射遠方界領域と呼ばれる。また、リアクティブ近傍界領域と放射遠方界領域の間の領域は放射近傍界領域と呼ばれる、距離に応じて指向性が変化する領域である。
放射近傍界領域は、円偏波アンテナ20の開口長Dに対し、円偏波アンテナ20の放射面から下記の式(1)を満たす距離R離れた位置として規定される。ここで、λは自由空間波長である。
例えば、円偏波アンテナ20の開口長Dが13mmであるとすると、例えば28GHzにおける放射近傍界領域の範囲Rは、式(1)より8.9mm〜31.6mmとなる。
図16は、ホーンアンテナをDUT100のアンテナ110に見立てて、このホーンアンテナから放射された電波を円偏波アンテナ20で受信した場合のS21の測定結果を示すグラフである。この測定結果において、ホーンアンテナと円偏波アンテナ20との距離が5cmと10cmの場合のS21の曲線はほぼ同様の形状であり、パワーリニアリティが取れていることが分かる。このことから、少なくともホーンアンテナと円偏波アンテナ20との距離が5cm以上の領域は、放射遠方界領域であるとみなすことができる。
送受信特性測定部68は、SW63により信号受信部61の出力側が接続された状態で、例えば、変調精度(EVM)、送信パワーレベル、送信スペクトラムマスク、エラーベクトル振幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射の測定などを行うようになっている。さらに、送受信特性測定部68は、MIMOの受信試験に関する解析処理として、最小入力感度、最大入力レベル、隣接チャネル除去、非隣接チャネル除去などを実行することができる。この送受信特性測定部68による測定は、主に放射近傍界領域又はリアクティブ近傍界領域で行われる。
ビームフォーミング測定部69は、電力測定部69aと、ビーム方向推定部69bと、ビーム方向判定部69cと、を含む。このビームフォーミング測定部69による測定は、主に放射遠方界領域で行われる。
電力測定部69aは、SW63により信号受信部61の出力側が接続された状態で、各円偏波アンテナ20を介して信号受信部61により受信された被測定信号の電力を測定するようになっている。さらに、電力測定部69aは、円偏波アンテナ20ごとに測定した電力を、その円偏波アンテナ20の位置の関数として記憶部66に記憶させるようになっている。
ビーム方向推定部69bは、電力測定部69aにより円偏波アンテナ20ごとに測定された電力に基づいて、アンテナ110から送信された被測定信号のビームの形状及び方向を推定するようになっている。この推定は、例えば、記憶部66に記憶された円偏波アンテナ20の位置の関数としての電力を任意の補間法で補間することにより行われる。
ビーム方向判定部69cは、ビーム方向推定部69bにより推定された被測定信号のビームの方向が、ビーム方向制御部64により制御されたビームの方向に一致しているか否かを判定するようになっている。
測定制御部67は、例えばCPU、記憶部66を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、測定部51を構成する上記各部の動作を制御する。
なお、信号送信部60、信号受信部61、SW63、ビーム方向制御部64、及び解析処理部65は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、あらかじめ記憶部66に記憶された所定のプログラムが測定制御部67により実行されることによりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、信号送信部60、信号受信部61、SW63、ビーム方向制御部64、及び解析処理部65は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。なお、測定制御部67は、新たなプログラム、あるいはバージョンを変更したプログラムを外部から受けて、記憶部66への追加又は更新を行うこともできる。
表示部52は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、測定制御部67からの制御信号に基づいて、測定結果の表示や、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
操作部53は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部52の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部53は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。また、操作部53は、リモートコマンドなどによる遠隔制御を行う外部制御装置で構成されてもよい。操作部53による入力操作は、測定制御部67により検知されるようになっている。ユーザは、操作部53を用いて、複数の通信規格の中からDUT100が対応している通信規格を選択したり、アンテナ保持部122における円偏波アンテナ20の位置を入力したり、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号のビームの形状及び方向を設定したりすることが可能になっている。
図17(a),(b)は、本実施形態の無線端末測定装置1における複数の円偏波アンテナ20とDUT100の複数のアンテナ110との位置関係の一例を示している。ここでは、アンテナ保持部122の図示を省略している。なお、以下では、DUT100の一面側と他面側にそれぞれアンテナ110が設置されている場合を例に挙げて説明するが、DUT100の一面側又は他面側のみにアンテナ110が設置されている構成も本発明の範囲に含まれる。
複数の円偏波アンテナ20は、DUT100の一面に対向する位置に配置されて、DUT100の一面側に設置されたアンテナ110に空間的に結合される第1円偏波アンテナ20aと、DUT100の他面に対向する位置に配置されて、DUT100の他面側に設置されたアンテナ110に空間的に結合される第2円偏波アンテナ20bと、に分類される。なお、DUT100が一面側のみにアンテナ110を有するものである場合には、第2円偏波アンテナ20bは省略可能である。同様に、DUT100が他面側のみにアンテナ110を有するものである場合には、第1円偏波アンテナ20aは省略可能である。
すなわち、第1円偏波アンテナ20aは、その反対面21bがDUT100のアンテナ110の放射面110aとDUT100の一面に対向する。また、第2円偏波アンテナ20bは、その反対面21bがDUT100のアンテナ110の放射面110aとDUT100の他面に対向する。
各円偏波アンテナ20の反対面21bは、DUT100の各アンテナ110の放射面110aに対して平行ではなく、既に述べたように傾斜角度θだけ傾いている。つまり、複数のアンテナ110が設置されたDUT100の一面又は他面の法線と、各円偏波アンテナ20の反対面21bの法線は交差している。
ここで、各アンテナ110の放射面110aの法線N2と、複数のアンテナ110が設置されたDUT100の一面又は他面の法線とは平行である。また、各アンテナ110の放射方向は、各アンテナ110の放射面110aの法線方向である。
また、各円偏波アンテナ20の反対面21bの法線N1と、各円偏波アンテナ20の放射面の法線は平行である。また、各円偏波アンテナ20の放射方向は、各円偏波アンテナ20の放射面の法線方向である。
すなわち、図17(a)に示すように、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号の放射方向は、円偏波アンテナ20の反対面21bの法線方向N1に対して平行ではない。このため、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号は、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間で反射されてシールドボックス50の内壁面50aに向かい、内壁面50aで吸収される。このようにして、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間での被測定信号の多重反射が抑制される。
同様に、図17(b)に示すように、円偏波アンテナ20のアンテナ素子23から放射される試験信号の放射方向は、アンテナ110の放射面110aの法線方向N2に対して平行ではない。このため、円偏波アンテナ20から放射される試験信号は、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間で反射されてシールドボックス50の内壁面50aに向かい、内壁面50aで吸収される。このようにして、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間での試験信号の多重反射が抑制される。
円偏波アンテナ20は、アンテナ110から送信される被測定信号の直線偏波の偏波方向がいかなる方向であっても、被測定信号を良好に受信することができるように構成されている。また、円偏波アンテナ20は、自身と偏波の回転方向が異なる円偏波アンテナからの信号を受信しにくい特性がある。
本実施形態においては、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとでは偏波の回転方向が異なっている。例えば、第1円偏波アンテナ20aの主偏波をRHCP、第2円偏波アンテナ20bの主偏波をLHCPとすることができる。あるいは、逆に、第1円偏波アンテナ20aの主偏波をLHCP、第2円偏波アンテナ20bの主偏波をRHCPとすることができる。
このように、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとで偏波の回転方向を異ならせることにより、図17(b)に示すように、ある円偏波アンテナ20から送信された試験信号がDUT100を挟んで対向する他の円偏波アンテナ20で受信されることを抑制することができる。
なお、シールドボックス50内での円偏波アンテナ20の配置箇所及び個数は、図12、図13、及び図17に示した例に限定されない。
以下、本実施形態における円偏波アンテナ20のS11とS21の測定結果について説明する。以降に示す測定結果は、放射遠方界領域に比べて伝搬損失の小さい放射近傍界領域又はリアクティブ近傍界領域で行われたものである。
図18(a)に示すように、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20を、給電ライン28の延伸方向が揃う向きにアンテナ素子23が形成された面(すなわち、誘電体基板21の反対面21b)を平行に向かい合わせた状態(以下、「0°の対向状態」とも称する)において、信号分析装置70を用いてS11とS21を測定した結果を図19及び図20に示す。
また、図18(b)に示すように、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20を、給電ライン28の延伸方向が垂直になる向きにアンテナ素子23が形成された面(すなわち、誘電体基板21の反対面21b)を平行に向かい合わせた状態(以下、「90°の対向状態」とも称する)において、信号分析装置70を用いてS11とS21を測定した結果を図21及び図22に示す。
ここで、信号分析装置70は、例えばネットワークアナライザ、又は、トラッキングジェネレータ機能付シグナルアナライザにより構成される。ここでのS11とS21の測定は、2つの円偏波アンテナ20間の距離を2cmにした状態で計5回行われたものである。ただし、1回の測定が終わるごとに2つの円偏波アンテナ20を無限大とみなせる距離だけ離した後に、次の回の測定が行われている。
図19〜図22から、5回の測定で得られたS11とS21の周波数特性はグラフ上でほぼ重なっており、S11とS21のいずれについても再現性の高い測定結果が得られたことが分かる。なお、図22の90°の対向状態では28GHz付近のS21の凹みが見られるが、これは2つの円偏波アンテナ20間で逆位相の信号成分同士が打ち消し合うような多重反射が発生したことにより、振幅誤差が現れたものと考えられる。
図23及び図24は、0°の対向状態において、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離と傾斜角度θを変化させた場合のS21の測定結果を示すグラフである。ここで、2つの円偏波アンテナ20間の距離とは、各円偏波アンテナ20の誘電体基板21の反対面21bにおいて給電ピン25の中心軸が交わる位置間の距離であるとする。
図23(a)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1cmとし、傾斜角度θを0°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すように25.5GHz付近に振幅誤差による凹みが見られる。
図23(b)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1cmとし、傾斜角度θを5°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すようにθ=0°の場合に見られた25.5GHz付近の凹みが大幅に改善していることが分かる。
図24(a)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1.5cmとし、傾斜角度θを0°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すように27.3GHz付近に振幅誤差による凹みが見られる。
図24(b)は、主偏波がRHCPの2つの円偏波アンテナ20間の距離を1.5cmとし、傾斜角度θを5°とした場合のS21の測定結果であり、図中の楕円で囲んで示すようにθ=0°の場合に見られた27.3GHz付近の凹みが消失していることが分かる。同様の効果はθ=4°〜10°の範囲においても得られている。
図25は、主偏波の回転方向が同一である2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21と、主偏波の回転方向が異なる2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21を信号分析装置70を用いて測定した結果を示すグラフである。
ここでのS21の測定は、2つの円偏波アンテナ20間の距離と傾斜角度をそれぞれ2cmと5°にした状態で行われたものである。また、図18(a)に示すように、2つの円偏波アンテナ20は、給電ライン28の延伸方向が揃う向きにアンテナ素子23が形成された面(すなわち、誘電体基板21の反対面21b)が向かい合った状態となっている。
図25のグラフから、主偏波が共にRHCPである2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21(実線)と比較して、主偏波がRHCPとLHCPである2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21(破線)は、23GHz以上の周波数範囲で20dB程度低く、良好なアイソレーション性能を示していることが分かる。
本実施形態の無線端末測定装置1においては、主偏波の回転方向が異なる第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bがDUT100を挟んで対向しているため、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとの間で更に良好なアイソレーション性能を得ることができる。
さらに、図18(a)に示した測定系において、2つの円偏波アンテナ20間の距離と傾斜角度をそれぞれ2cmと5°にした場合の28.5GHzにおける残留EVMは図26に示すようになった。すなわち、測定系A,Bのように2つの円偏波アンテナ20の主偏波がいずれもRHCPである場合には、2つの円偏波アンテナ20をシールドボックス50内に入れて測定した場合と、シールドボックス50外で測定した場合とで、残留EVMの値に変化は見られなかった。また、測定系C,Dのように2つの円偏波アンテナ20の一方の主偏波がLHCPであり、他方の主偏波がRHCPである場合にも、2つの円偏波アンテナ20をシールドボックス50内に入れて測定した場合と、シールドボックス50外で測定した場合とで、残留EVMの値に変化は見られなかった。
さらに、測定系A〜Dにおいて2つの円偏波アンテナ20間の伝送特性S21を測定したところ、2つの円偏波アンテナ20をシールドボックス50内に入れて測定した場合と、シールドボックス50外で測定した場合とで、伝送特性S21に変化は見られなかった。
以上のことから、本実施形態の無線端末測定装置1のシールドボックス50内においても、複数の円偏波アンテナ20による反射波が振幅誤差をもたらさないことが分かる。
以下、本実施形態に係る無線端末測定装置1を用いる無線端末測定方法について、図27のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。なお、ここでは、SW63により信号受信部61の出力側がビームフォーミング測定部69に接続されているとする。
まず、ユーザによりDUT100がトレー121の載置面121aに載置され、操作部53の操作によりトレー121上に載置されたDUT100がシールドボックス50に収容される(ステップS1)。
次に、ユーザによる操作部53の操作により、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号のビームについて、所望の形状及び方向が入力される(ステップS2)。
次に、ビーム方向制御部64は、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号のビームの形状及び方向を、ステップS2により入力された状態に制御する(ビーム方向制御ステップS3)。
次に、信号受信部61は、ステップS3により制御された被測定信号を複数の円偏波アンテナ20を介して受信する(信号受信ステップS4)。
次に、ビームフォーミング測定部69は、ステップS4により受信された被測定信号に対して、以下のステップS5〜S7の解析処理を行う(解析処理ステップ)。
まず、電力測定部69aは、ステップS4により受信された被測定信号の電力を測定する(電力測定ステップS5)。
次に、ビーム方向推定部69bは、ステップS5により測定された電力に基づいて、アンテナ110から送信された被測定信号のビームの形状及び方向を推定する(ビーム方向推定ステップS6)。
次に、ビーム方向判定部69cは、ステップS6により推定された被測定信号のビームの方向が、ステップS3により制御されたビームの方向に一致しているか否かを判定する(ビーム方向判定ステップS7)。
次に、表示部52は、ステップS7による判定結果を表示する(ステップS8)。
なお、DUT100にビーム方向を制御可能なアンテナ110が複数備えられている場合には、測定制御部67は、全てのアンテナ110についてステップS7による判定処理が行われたか否かを判定する(ステップS9)。否定判定の場合にはステップS2からステップS8までの処理が繰り返され、各アンテナ110についてそれぞれ被測定信号のビームの形状及び方向が算出される。肯定判定の場合には処理が終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100と測定用アンテナとしての複数の円偏波アンテナ20との位置関係を固定した状態で、DUT100に対するビームフォーミング測定を含む測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナガイド123,124の高さを変化させることにより、放射近傍界領域又はリアクティブ近傍界領域での送受信特性の測定と、放射遠方界領域でのビームフォーミング測定とを行うことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100がトレー121の載置面121aに載置された位置に合わせてアンテナ保持部122を移動させることができるため、載置面121aにおけるDUT100の位置決めを厳密に行う必要がなく、大きさや形状が異なる各種のDUT100のセッティングを容易に行うことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナガイド123,124の任意の箇所に任意の個数の円偏波アンテナ20を配置することが可能であるため、DUTと測定用アンテナとしての円偏波アンテナ20との位置関係が固定された状態であってもビームフォーミング測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100を挟んで対向する第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとで偏波の回転方向が異なっているため、対向する円偏波アンテナ20間にシールド材などの信号を遮断する物体を設置することなく、対向する円偏波アンテナ20間のアイソレーション性能を保つことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号の放射方向が、円偏波アンテナ20の反対面21bの法線方向に対して平行ではないため、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間における被測定信号の多重反射を低減することができる。すなわち、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間で発生する多重反射に起因した振幅誤差を抑制して、DUT100に対する測定を行うことができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、円偏波アンテナ20のアンテナ素子23から放射される試験信号の放射方向が、アンテナ110の放射面の法線方向に対して平行ではないため、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間における試験信号の多重反射を低減することができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、円偏波アンテナ20の反対面21bが、アンテナ110の放射面に対して平行ではないため、アンテナ110と円偏波アンテナ20との間における被測定信号及び試験信号の多重反射を低減することができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1が備える円偏波アンテナ20では、誘電体基板21を貫通する金属ポスト30を、アンテナ素子23を囲むように並べてキャビティ構造とし、さらに、この金属ポスト30の先端を並び方向に沿って短絡し、かつアンテナ素子23方向に所定距離延びた枠状導体32を設けている。これにより、円偏波アンテナ20は、表面波の発生を抑制でき、アンテナの放射特性を所望の特性にすることができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、各円偏波アンテナ20の表面波の発生を抑制できるため、各円偏波アンテナ20が他の円偏波アンテナ20の影響を受けることなく、アンテナ110の放射特性を測定することができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、測定用アンテナとして円偏波アンテナ20を用いているため、アンテナ110から放射される被測定信号の直線偏波(例えば、垂直偏波や水平偏波)の向きに関わらず精度の良い測定が可能である。さらに、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、トレー121の載置面121aに載置されたDUT100の水平方向の設置角度に対する入出力パワーの変動を少なくすることができる。
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、近接での測定を行うものであるため、電波暗室(チャンバー)を使用しなくても精度の良い測定が可能である。