JP2019178748A - 鉄道車両用パーキングブレーキ装置及びこれを備える鉄道車両用ブレーキシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】鉄道車両用パーキングブレーキ装置の製造コストを低減する。【解決手段】鉄道車両用パーキングブレーキ装置100は、車輪2に押し付けられることによってパーキングブレーキ力を生じる制輪子10と、圧縮空気が供給されると収縮して制輪子10を車輪2から離間させ、圧縮空気が排出されると伸長して制輪子10を車輪2に押し付けるアクチュエータ20と、を備え、アクチュエータ20は、車輪2の径方向に沿って車輪2の径方向外側に配置され、制輪子10は、アクチュエータ20と車輪2の踏面2bとの間に配置され、アクチュエータ20が伸長することにより車輪2の踏面2bに押し付けられる。【選択図】図1
Description
本発明は、鉄道車両用パーキングブレーキ装置及びこれを備える鉄道車両用ブレーキシステムに関するものである。
特許文献1には、鉄道車両の台車に固着される支持枠と、支持ピンを介して支持枠に摺動支持されるブレーキ本体部と、ブレーキ本体部に設けられた2本のアームと、2本のアームにそれぞれ保持される制輪子と、一方のアームに設けられ制輪子を車輪に押し付ける第1アクチュエータと、停留時に制輪子を車輪に押し付ける第2アクチュエータと、を備えた鉄道車両用ブレーキシステムが開示されている。
この鉄道車両用ブレーキシステムでは、減速するときには、第1アクチュエータに作動流体を供給して制輪子を車輪の側面に押し付けることで制動力を発生させ、車両をしばらく停留させるときには、第2アクチュエータから作動流体を排出させて制輪子を車輪の側面に押し付けることで制動力を発生させている。
特許文献1に記載される鉄道車両用ブレーキシステムにおいて、第2アクチュエータの推力は、梃子の原理によって増大され、制輪子を車輪に押し付ける力となる。このため、梃子を構成するリンク部材が必要になることで構造が複雑になるとともに、第2アクチュエータの推力を制輪子へと伝達する各部材の強度を確保する必要があることから、結果として鉄道車両用ブレーキシステムの製造コストが上昇するおそれがある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、鉄道車両用パーキングブレーキ装置の製造コストを低減することを目的とする。
第1の発明は、鉄道車両用パーキングブレーキ装置が、車輪に押し付けられることによってパーキングブレーキ力を生じる第1制輪部と、作動流体が供給されると収縮して第1制輪部を車輪から離間させ、作動流体が排出されると伸長して第1制輪部を車輪に押し付ける流体圧アクチュエータと、を備え、流体圧アクチュエータは、車輪の径方向に沿って車輪の径方向外側に配置され、第1制輪部は、流体圧アクチュエータと車輪の踏面との間に配置され、流体圧アクチュエータが伸長することにより車輪の踏面に押し付けられることを特徴とする。
第1の発明では、第1制輪部が、流体圧アクチュエータと車輪の踏面との間に配置され、流体圧アクチュエータが伸長したときに車輪の踏面に押し付けられる。このように第1制輪部は、流体圧アクチュエータによって直接的に車輪に押し付けられる。したがって、流体圧アクチュエータの推力を第1制輪部に伝達するために、梃子を構成するリンク部材等を設ける必要がない。
第2の発明は、流体圧アクチュエータが、作動流体が排出されたときに第1制輪部を車輪に押し付ける付勢力を生じる第1バネ部材を有することを特徴とする。
第2の発明では、第1制輪部を押し付ける流体圧アクチュエータの推力は、第1バネ部材の付勢力である。このため、圧縮空気のように加圧装置が停止することで圧力が徐々に低下する作動流体を流体圧アクチュエータの推力源とした場合と比較し、常に安定したパーキングブレーキ力を発生させることができる。
第3の発明は、流体圧アクチュエータが、シリンダ部と、シリンダ部内に摺動自在に収装され、第1バネ部材の付勢力を受けるとともに作動流体の圧力が作用するピストン部と、ピストン部に連動して進退し、第1制輪部を保持するロッド部材と、をさらに有することを特徴とする。
第3の発明では、ピストン部に連動して進退するロッド部材により第1制輪部が保持される。このように、第1制輪部は、流体圧アクチュエータによって直接保持される。したがって、流体圧アクチュエータの推力を第1制輪部に伝達するために、梃子を構成するリンク部材等を設ける必要がない。この結果、鉄道車両用パーキングブレーキ装置の製造コストを低減することができる。
第4の発明は、流体圧アクチュエータが、ロッド部材を車輪から離間させる付勢力を生じる第2バネ部材と、ピストン部とロッド部材とを連結可能なクランプ部と、をさらに有し、クランプ部は、作動流体が供給されピストン部が車輪から離れる方向に移動する際に、ピストン部とロッド部材との連結を解除可能であることを特徴とする。
第4の発明では、作動流体が供給されピストン部が車輪から離れる方向に移動する際に、クランプ部によるピストン部とロッド部材との連結が解除され、その後、再びクランプ部によりピストン部とロッド部材とが連結される。このため、第1制輪部を車輪の踏面に押し付ける際のロッド部材のストローク量を一定とすることが可能となる。この結果、常に安定したパーキングブレーキ力を発生させることができる。
第5の発明は、クランプ部が、車輪から離れるにつれて間隔が徐々に狭くなるクサビ空間をロッド部材の外周面との間で形成するクサビ面を有するクサビ部と、クサビ空間内に配置される転動体と、クサビ面に向けて転動体をロッド部材の軸方向に沿って押圧する第3バネ部材と、を有し、ピストン部とロッド部材とは、転動体がロッド部材の軸方向に沿ってクサビ面に押し付けられることにより連結されることを特徴とする。
第5の発明では、転動体がロッド部材の軸方向に沿ってクサビ面に押し付けられることによって、ピストン部とロッド部材とが連結される。このように、比較的簡素な構成によりピストン部とロッド部材との連結及び連結の解除を行うことができる。
第6の発明は、鉄道車両用パーキングブレーキ装置が、クランプ部によるピストン部とロッド部材との連結を解除させるリリース部をさらに備え、リリース部は、ロッド部材の外周に設けられ、転動体をクサビ面からロッド部材の軸方向に離間可能なスリーブと、スリーブを転動体から離れる方向に付勢する第4バネ部材と、を有することを特徴とする。
第6の発明では、スリーブによって転動体をクサビ面から離間させることで、ロッド部材をシリンダ部内に引き戻すことが可能である。このようにロッド部材をシリンダ部内に引き戻すことで、鉄道車両用パーキングブレーキ装置が台車に固定された状態においても第1制輪部を容易に交換することができる。
第7の発明は、第1から6の発明の何れかの鉄道車両用パーキングブレーキ装置と、車輪と共に回転するブレーキディスクを第2制輪部により挟持して制動する鉄道車両用ディスクブレーキ装置と、を備えた鉄道車両用ブレーキシステムにおいて、鉄道車両用パーキングブレーキ装置が、鉄道車両用ディスクブレーキ装置を台車に固定するブラケットを介して台車に支持されることを特徴とする。
第7の発明では、鉄道車両用ディスクブレーキ装置を台車に固定するブラケットに鉄道車両用パーキングブレーキ装置が固定される。このように、従来から鉄道車両に搭載されるディスクブレーキ装置にパーキングブレーキ装置が固定されるため、台車に対して設計変更を行うことなく、パーキングブレーキ装置を鉄道車両に搭載することができる。
第8の発明は、鉄道車両用ブレーキシステムが、鉄道車両用パーキングブレーキ装置に供給される作動流体の圧力を調整可能な圧力制御弁をさらに備え、鉄道車両用パーキングブレーキ装置に供給される作動流体の圧力を圧力制御弁により調整することによって、鉄道車両用パーキングブレーキ装置を車輪の踏面を清掃する踏面清掃装置として作動させることを特徴とする。
第8の発明では、鉄道車両用パーキングブレーキ装置が車輪の踏面を清掃する踏面清掃装置として作動する。このように、パーキングブレーキ装置を踏面清掃装置として作動させることにより、踏面を適度に粗して車輪の真円度を保つとともに、踏面に付着したゴミや砂利等を除去して踏面とレール間の粘着性を保つことで鉄道車両のブレーキ性能を向上させることができる。
本発明によれば、鉄道車両用パーキングブレーキ装置の製造コストを低減することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
まず、図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係る鉄道車両用ブレーキシステム1の全体構成について説明する。
鉄道車両用ブレーキシステム1は、鉄道車両の車輪2の回転を制動するものであり、鉄道車両用パーキングブレーキ装置100(以下、「パーキングブレーキ装置100」)と、鉄道車両用ディスクブレーキ装置200(以下、「ディスクブレーキ装置200」)と、の2つのブレーキ装置を備える。ディスクブレーキ装置200は、主に車両の速度を減速するときや一時的に停車する際に用いられ、ブレーキを作動させる作動流体として圧縮空気が用いられる空気圧式ブレーキである。一方、パーキングブレーキ装置100は、主に停車した鉄道車両をしばらくの間、停留させるときに用いられ、圧縮空気がブレーキを解除させる作動流体として用いられる機械式ブレーキである。なお、これらの作動流体としては、圧縮空気に代えて、作動油等が用いられてもよい。
ディスクブレーキ装置200は、車輪2と共に回転するブレーキディスク2aに摩擦力を付与することにより車輪2の回転を制動するものである。具体的には、図1及び図2に示すように、ディスクブレーキ装置200は、車輪2の両側から第2制輪部としての第1,第2ブレーキライニング103,104を、車輪2の両側面に形成されたブレーキディスク2aに押し付けて摺接させることでブレーキディスク2aに摩擦力を付与して車輪2の回転を制動している。なお、ブレーキディスク2aは、車輪2と一体的に形成されたものであってもよいし、車輪2とは別体で設けられたものであってもよい。
ディスクブレーキ装置200は、第1,第2ブレーキライニング103,104をそれぞれ支持する第1,第2キャリパアーム112,114を有するブレーキ本体110と、台車Cに取り付けられるブラケットとしての支持枠120と、支持枠120に支持されると共にブレーキ本体110を支持する第1,第2支持ピン121,122と、圧縮空気の圧力によって第1,第2ブレーキライニング103,104をブレーキディスク2aに押圧する押圧部130と、を備える。
ブレーキ本体110は、車輪2に跨るようにして延びる第1キャリパアーム112及び第2キャリパアーム114と、第1キャリパアーム112と第2キャリパアーム114とを連結するヨーク部113と、第1,第2支持ピン121,122を介して支持枠120に支持される第1,第2ブラケット部115,116と、を有する。
第1,第2支持ピン121,122は、車輪2の回転軸と平行に設けられると共に軸方向に移動可能に支持枠120に支持される。このため、ブレーキ本体110は、支持枠120によって第1,第2支持ピン121,122の軸方向へ移動自在に支持される。このように、ブレーキ本体110は、支持枠120によりフローティング支持されている。
押圧部130は、圧縮空気の圧力により第1ブレーキライニング103をブレーキディスク2aに押圧すると共にその反力によってブレーキ本体110を第1,第2支持ピン121,122の軸方向に移動させて第2ブレーキライニング104をブレーキディスク2aに押圧する。このように、ディスクブレーキ装置200は、ブレーキディスク2aを第1ブレーキライニング103と第2ブレーキライニング104とによって挟持することで車輪2を制動する制動力を生じている。
一方、パーキングブレーキ装置100は、車輪2の踏面2bに摩擦力を付与することにより車輪2の回転を制動するものである。具体的には、図1及び図3に示すように、パーキングブレーキ装置100は、例えば、鉄道車両が停車し車輪2が回転していない状態において、車輪2の径方向外側から第1制輪部としての制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付け、制輪子10と踏面2bとの間に生じる摩擦力によって車輪2が回転することを阻止している。
パーキングブレーキ装置100は、車輪2の踏面2bに押し付けられることによってパーキングブレーキ力を生じる制輪子10と、圧縮空気が給排される流体圧アクチュエータとしてのアクチュエータ20と、を備える。
制輪子10は、車輪2の径方向に沿って車輪2の径方向外側に配置されるアクチュエータ20と、車輪2の踏面2bと、の間に配置される。このため、制輪子10は、アクチュエータ20が伸長することにより車輪2の踏面2bに押し付けられる。このように、制輪子10は、アクチュエータ20によって直接的に車輪2に押し付けられる。したがって、アクチュエータ20の推力を制輪子10に伝達するために、梃子を構成するリンク部材等をアクチュエータ20と制輪子10との間に設ける必要がない。
アクチュエータ20は、シリンダ部30と、シリンダ部30内に配置される第1バネ部材としてのブレーキスプリング40と、シリンダ部30内に摺動自在に収装されるピストン部50と、制輪子10を保持しピストン部50に連動して進退するロッド部材60と、を有する。
シリンダ部30は、ピストン部50が摺動する摺動孔31aが形成された有底筒状の本体部31と、本体部31の開口端を閉塞するとともにロッド部材60を摺動支持するシリンダヘッド32と、本体部31の底部31c側に設けられた開口を閉塞するエンドキャップ35と、を有する。
シリンダヘッド32は、ロッド部材60を摺動支持する摺動孔32aが中央に貫通して形成された円環状部材であり、外周には本体部31の摺動孔31aに挿入される筒状の挿入部32bが設けられる。また、挿入部32bの先端の内周寄りの部分には、ピストン部50の移動を規制する突起32cがピストン部50に向けて突出して形成される。突起32cは、挿入部32bの先端に周方向に間隔をあけて複数配置される。車輪2側へのピストン部50の移動は、これらの突起32cによって制限される。
本体部31は、シリンダヘッド32に設けられた突起32cと径方向において対向する位置に径方向に貫通して形成される貫通孔31bを有する。シリンダ部30内には、この貫通孔31bを通じて圧縮空気が給排される。貫通孔31bは突起32cと対向する位置に開口しているため、ピストン部50が突起32cに当接した状態にあっても、貫通孔31bは閉塞されず、突起32cの間を通じてシリンダ部30内に圧縮空気を導くことが可能である。
また、本体部31には、貫通孔31bと連通する給排孔34aを有するコネクタ34が結合される。本体部31は、コネクタ34を介して、圧縮空気の給排を切り換える作動切換弁91に接続される。給排孔34aは、作動切換弁91の切り換え位置に応じて、エアーポンプ等の圧力供給源92または大気と連通する。
本体部31は、さらに、ブレーキスプリング40の一端が係止される底部31cと、底部31cからロッド部材60の軸方向に沿ってピストン部50側へと延びる筒状の規制部31dと、を有する。規制部31dは、車輪2側とは反対側へのピストン部50の移動を規制するために設けられる。なお、規制部31dの径方向内側には、ロッド部材60が挿入されるため、底部31cには、ロッド部材60が挿通する孔が開口している。エンドキャップ35は、この孔を閉塞するために設けられる。
また、本体部31の外周面には、図1に示すように、アクチュエータ20を支持枠120に固定するための支持部33が突出して形成される。このようにパーキングブレーキ装置100は、ディスクブレーキ装置200を台車Cに固定する支持枠120を介して台車Cに支持される。このため、台車Cに対して設計変更を行うことなくパーキングブレーキ装置100を鉄道車両に搭載させることが可能である。また、パーキングブレーキ装置100は、ディスクブレーキ装置200とは別に設けられているため、パーキングブレーキ装置100のメンテナンスを容易に行うことができる。
ブレーキスプリング40は、ピストン部50と本体部31の底部31cとの間に圧縮された状態で介装されたコイルスプリングであり、圧縮空気がシリンダ部30内から排出されたときに制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付ける付勢力を生じる。ブレーキスプリング40は、要求されるパーキングブレーキ力に応じて、外径やばね定数等の諸元が設定される。ブレーキスプリング40は、単一のコイルスプリングに限定されず、二重コイルスプリングであってもよい。
ピストン部50は、外周面51aが本体部31の摺動孔31aに摺接し内周面51bがロッド部材60の外周面60aに摺接する円環状のピストン本体51と、後述のクランプ部70を保持するハウジング52と、を有する。
ピストン本体51は、本体部31、シリンダヘッド32及びロッド部材60とともに、圧縮空気が給排される圧力室38をシリンダ部30の内部に画定している。このため、ピストン部50には、上述のブレーキスプリング40の付勢力が作用するとともに、圧力室38に供給される圧縮空気の圧力に応じた付勢力が作用する。
ハウジング52は、ピストン本体51に結合される円環状の結合部52aと、結合部52aの内周側からロッド部材60の軸方向に沿ってピストン本体51とは反対側に延びる筒状の保持部52bと、保持部52bの先端に設けられる当接部52cと、を有する。
ハウジング52は、ピストン本体51に図示しないボルト等の締結手段によって固定される。なお、ハウジング52とピストン本体51との締結は嵌合によって行われてもよい。また、ハウジング52とピストン本体51とを結合することなく、ブレーキスプリング40の付勢力によってハウジング52がピストン本体51に常に押し付けられた状態としてもよい。この場合、ハウジング52とピストン本体51とが離れることを防止するために、ピストン本体51をハウジング52に対して押し付けるためのスプリングを別途設けることが好ましい。
結合部52aは、ロッド部材60の軸方向において底部31cと対向する位置に配置され、ブレーキスプリング40の他端が係止されるスプリングシートとして機能する。当接部52cは、ロッド部材60の軸方向において規制部31dと対向する位置に配置され、当接部52cと規制部31dとが当接することによって車輪2側とは反対側へのピストン部50の移動が制限される。
ロッド部材60は、シリンダヘッド32及びピストン本体51を挿通する円筒状部材であり、シリンダヘッド32から突出した一端側において制輪子10を保持することが可能である。ロッド部材60とシリンダヘッド32との間には、シリンダ部30内にダストが侵入することを防止するゴム製のブーツ61が取り付けられる。なお、図1及び図3を除き、ブーツ61の図示は省略する。
アクチュエータ20は、さらに、ロッド部材60を車輪2から離間させる付勢力を生じる第2バネ部材としてのリターンスプリング65と、ピストン部50とロッド部材60とを連結可能なクランプ部70と、を有する。
リターンスプリング65は、ロッド部材60内に形成された非貫通孔である収容孔60b内に収容されたコイルスプリングである。リターンスプリング65は、エンドキャップ35から収容孔60b内に向けて延出する支持棒62の先端部に設けられた第1スプリングシート63と、収容孔60bの内周面に係止された第2スプリングシート64と、の間に圧縮された状態で収装される。
リターンスプリング65は、ロッド部材60がシリンダ部30から退出するにつれて圧縮される。このため、ロッド部材60とピストン部50とが連結されていない場合、ロッド部材60は、リターンスプリング65の付勢力によって、収容孔60bの底面60cに支持棒62の先端面が当接するまでシリンダ部30内へと引き戻されることになる。
次に、クランプ部70について、図4A及び図4Bを参照して説明する。図4A及び図4Bは、図3のIV部で示される部分を拡大して示した図であり、図4Aは、ロッド部材60とピストン部50とが連結された状態を示し、図4Bは、ロッド部材60とピストン部50との連結が解除された状態を示している。
クランプ部70は、車輪2から離れるにつれて間隔が徐々に狭くなるクサビ空間をロッド部材60の外周面60aとの間で形成するクサビ面71aを有するクサビ部71と、クサビ空間内に配置される転動体72と、転動体72を保持する保持孔74aが形成されたホルダ部74と、クサビ面71aに向けて転動体72をロッド部材60の軸方向に沿って押圧する第3バネ部材としてのクランプスプリング73と、を有する。
クサビ部71は、内周側にクサビ面71aとなるテーパ面が形成された円環状部材であり、ハウジング52の保持部52bの内周側に圧入固定される。なお、保持部52bの先端に設けられる当接部52cをロッド部材60側に向けて形成することで、当接部52cをクサビ部71の位置決めに用いることができる。なお、クサビ部71は、ハウジング52に直接形成されていてもよい。
転動体72は、球状に形成され、ロッド部材60の外周面60aとクサビ面71aとの両方に接触可能である。なお、転動体72は、球状に限らず円筒形状に形成されてもよい。また、図4Aでは、単一の転動体72を図示しているが、転動体72の数はこれに限らず、周方向に間隔をおいて複数設けられてもよい。
ホルダ部74は、径方向に貫通する保持孔74aが形成された円環状部材であり、ロッド部材60の外周面60aに摺接するように設けられる。保持孔74aは、転動体72の直径よりもわずかに大きい内径を有し、転動体72の数と同数設けられる。
クランプスプリング73は、ロッド部材60の外周側に配置されたコイルスプリングであり、一端がホルダ部74によって係止され、他端がスプリングシート75により係止される。スプリングシート75の位置は、保持部52bに係止されるスナップリング76により位置決めされる。
また、スプリングシート75とクサビ部71との間には、保持部52bの内周に挿入される円環状の抜け止め部77が設けられる。抜け止め部77は、クサビ部71が保持部52bから抜け出ることを防止するとともに、クサビ部71の位置決めを行うものである。なお、クサビ部71が保持部52bに直接形成される場合には、抜け止め部77は設けられない。
続いて、クランプ部70の作動について説明する。
図4Aに示すように、クランプスプリング73の付勢力によって、ホルダ部74がロッド部材60の軸方向に沿って押圧されると、転動体72は、クサビ空間において幅が徐々に狭くなる部分(図4A中の左側)に向けて押し込まれる。このとき、転動体72は、クサビ部71のクサビ面71aとロッド部材60の外周面60aとに食い込んだ状態となる。このように転動体72がロッド部材60の外周面60aにわずかに食い込むと、ピストン部50とロッド部材60とは、クランプ部70により連結された状態、すなわち、ピストン部50の移動に伴ってロッド部材60も移動する状態となる。
なお、クランプスプリング73がホルダ部74を押圧していない場合であっても、クサビ部71を転動体72に向けて押圧する力が働くと、転動体72は、クサビ空間において幅が徐々に狭くなる部分(図4A中の左側)に入り込むことになることから、このような場合もピストン部50とロッド部材60とは、クランプ部70により連結された状態となる。
一方、図4Bに示すように、クサビ面71aから転動体72が離れるような力がホルダ部74に作用すると、転動体72は、ロッド部材60の外周面60aからも離れた状態となる。このように、転動体72がロッド部材60の外周面60aから離れると、ピストン部50とロッド部材60とは、非連結状態、すなわち相対的に移動することが可能な状態となる。
次に、上記構成のパーキングブレーキ装置100の作動について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、圧力室38から圧縮空気が排出され、制輪子10が車輪2の踏面2bに押し付けられた状態を示しており、図6は、圧力室38に圧縮空気が供給され、制輪子10が車輪2の踏面2bから離間した状態を示している。
オペレータによりパーキングブレーキの作動が操作されると、作動切換弁91の位置が圧力室38と大気とを連通する位置に切り換えられ、圧力室38から圧縮空気が排出される。圧力室38から圧縮空気が排出されると、ブレーキスプリング40の付勢力によりピストン部50は車輪2に向けて押圧される。このとき、クランプ部70のクサビ部71も車輪2に向かって押圧されるため、転動体72は、図4Aで示したように、ロッド部材60の外周面60aに食い込んだ状態となる。
クランプ部70によってピストン部50と連結されたロッド部材60は、制輪子10が車輪2の踏面2bに当接するまでシリンダ部30から退出する。そして、図5に示すように、ピストン部50及びロッド部材60を介して、ブレーキスプリング40の付勢力が制輪子10に作用し、制輪子10が車輪2の踏面2bに押し付けられた状態になる。このとき、制輪子10と踏面2bとの間に生じる摩擦力が、車輪2の回転を阻止するパーキングブレーキ力となる。
一方、オペレータによりパーキングブレーキの解除が操作されると、作動切換え弁の位置が圧力室38と圧力供給源92とを連通する位置に切り換えられ、圧力室38に圧力供給源92から圧縮空気が供給される。圧力室38に圧縮空気が供給されると、ピストン部50はブレーキスプリング40の付勢力に抗して、車輪2から離れる方向へと移動する。このとき、クランプ部70のクサビ部71も車輪2から離れる方向へと移動する。このため、転動体72は、図4Bで示したように、クサビ面71aから離れた状態となる。
クランプ部70による連結が解除されると、ピストン部50とロッド部材60とは、相対的に移動することが可能となる。このため、ピストン部50は、ブレーキスプリング40の付勢力と圧力室38に供給された圧縮空気の圧力に応じた付勢力とに応じて車輪2から離れる方向へと移動する一方、ロッド部材60は、リターンスプリング65の付勢力に応じて車輪2から離れる方向へと移動する。
このようにピストン部50とロッド部材60とが別々に移動する間に、クランプスプリング73によってホルダ部74が押圧されることにより、転動体72は、再び、図4Aで示したように、ロッド部材60の外周面60aに食い込んだ状態となる。
したがって、図6に示すように、ピストン部50は、規制部31dに当接するまで移動するのに対して、ロッド部材60は、最もシリンダ部30内に引き込まれた状態、すなわち、収容孔60bの底面60cに支持棒62の先端面が当接した状態となる前に、クランプ部70によりピストン部50に連結させることが可能である。
つまり、クランプ部70を設けることによって、車輪2の踏面2bに当接した図6に破線で示される制輪子10の位置から制輪子10を引き戻す量、すなわち、ロッド部材60のストローク量Sを所望の大きさとすることができる。
ここで、ロッド部材60のストローク量Sが小さい方が制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付ける力であるブレーキスプリング40の付勢力が大きくなるため、十分なパーキングブレーキ力を確保することが可能となる。一方でロッド部材60のストローク量Sが小さすぎると、走行中の振動等によって制輪子10が車輪2にぶつかり、制輪子10が破損してしまうおそれがある。
このため、ロッド部材60のストローク量Sは、車両に応じて適切な大きさに設定される。ここで、ロッド部材60のストローク量Sは、クランプ部70によりピストン部50とロッド部材60とが連結されるタイミングで変化するが、このタイミングは、ピストン部50、ロッド部材60及び転動体72の移動速度を決定するブレーキスプリング40、リターンスプリング65及びクランプスプリング73のそれぞれの諸元と圧力室38に供給される圧縮空気の圧力の大きさによって変化する。
例えば、ピストン部50とロッド部材60とをクランプ部70により連結するタイミングは、クランプスプリング73が、ホルダ部74を押圧し、転動体72がクサビ面71aに押し付けられるタイミングである。したがって、クランプスプリング73のばね定数を大きくし、このタイミングを早めれば、ロッド部材60のストローク量Sは小さくなり、反対に、クランプスプリング73のばね定数を小さくし、このタイミングを遅くすれば、ロッド部材60のストローク量Sは大きくなる。
このように、ブレーキスプリング40、リターンスプリング65及びクランプスプリング73のそれぞれの諸元と圧力室38に供給される圧縮空気の圧力の大きさを適宜変更することによって、ロッド部材60のストローク量Sを任意の大きさに設定することが可能である。
そして、図6に示すように、ピストン部50とロッド部材60とがクランプ部70により連結される位置は、ロッド部材60の端面60dから所定の第1距離L1だけ離れた位置となる。この位置が作動毎に変わらなければ、作動時におけるブレーキスプリング40の長さが毎回同じ長さとなるため、制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付ける力であるパーキングブレーキ力を安定した大きさで生じさせることができる。
続いて、制輪子10が摩耗した場合について、図6及び図7を参照して説明する。図7は、図6に対して制輪子10が摩耗した状態を示している。
制輪子10が摩耗した場合にも、ピストン部50とロッド部材60とがクランプ部70により連結される位置が、制輪子10が摩耗していないときと同じであると、制輪子10が摩耗した分だけ作動時におけるブレーキスプリング40の長さが長くなる。このため、制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付ける力は、制輪子10が摩耗するにつれて低下することになってしまう。
これに対して、上記構成のパーキングブレーキ装置100では、上述のように、制輪子10が車輪2の踏面2bに当接した位置から制輪子10を引き戻す量を一定の大きさとすることが可能である。
つまり、図7に示されるように、制輪子10が摩耗した場合であっても、制輪子10が摩耗していない場合と同様に、制輪子10が車輪2の踏面2bに当接した位置からロッド部材60が所定のストローク量Sだけ戻った位置において、クランプ部70によってロッド部材60をピストン部50に連結させることができる。
制輪子10が摩耗した場合、図7に示すように、ピストン部50とロッド部材60とがクランプ部70により連結される位置は、ロッド部材60の端面60dから所定の第2距離L2だけ離れた位置となる。この第2距離L2は、図6に示される第1距離L1よりも短く、第1距離L1と第2距離L2との差分は制輪子10の摩耗量に相当する。つまり、ロッド部材60は、制輪子10の摩耗量が大きくなるにつれて、車輪2側に進出した状態でピストン部50と連結されることとなる。
このように、制輪子10の摩耗量に応じて、ピストン部50とロッド部材60とがクランプ部70により連結される位置は変わるものの、ロッド部材60のストローク量Sは変化しない。このため、作動時におけるブレーキスプリング40の長さは、制輪子10の摩耗の有無に関わらず一定となり、制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付ける力であるパーキングブレーキ力を常に一定の大きさで生じさせることができる。
次に、図8及び図9を参照して、制輪子10の交換について説明する。
上述のように制輪子10は徐々に摩耗するため、定期的に交換する必要がある。しかしながら、ピストン部50とロッド部材60とは、制輪子10が摩耗するにつれてロッド部材60が車輪2側へと徐々に進出した状態でクランプ部70により連結される。このため、単に制輪子10を交換するとロッド部材60のストローク量Sを確保することができなくなったり、制輪子10を交換するスペースを確保することができなかったりするおそれがある。
このため、パーキングブレーキ装置100は、クランプ部70による連結を解除し、ロッド部材60をシリンダ部30内に引き戻した状態とするリリース機構80をさらに備える。
リリース機構80は、図8に示すように、パーキングブレーキ装置100に組み込まれるリリース部81と、リリース部81を作動させる治具85と、を有する。
リリース部81は、転動体72をクサビ面71aからロッド部材60の軸方向に離間可能なスリーブ82と、スリーブ82を転動体72から離れる方向に付勢する第4バネ部材としてのリリーススプリング83と、を有する。
スリーブ82は、ロッド部材60の外周に設けられた筒状部材であり、一方の端部には、リリーススプリング83の一端を係止するとともに治具85に押圧されるフランジ部82aが径方向外側に向けて突出して形成され、他方の端部には、転動体72を保持するホルダ部74とロッド部材60の軸方向において対向する当接部82bが設けられる。
リリーススプリング83は、フランジ部82aと本体部31に形成された段部との間に圧縮された状態で収装され、当接部82bをホルダ部74から引き離す方向にスリーブ82を付勢している。
治具85は、円環状の基部85aと、基部85aから延出しエンドキャップ35に形成された貫通孔35aに挿入される複数の押棒85bと、を有する。
上記形状の治具85を、図8に示される状態から、図9に示されるように、リリーススプリング83を圧縮するようにロッド部材60の軸方向に沿って移動させると、スリーブ82が押棒85bによってロッド部材60の軸方向に押し込まれ、やがて、スリーブ82の当接部82bがホルダ部74に当接し、転動体72がクサビ面71aから離される。この結果、クランプ部70によるピストン部50とロッド部材60との連結が解除される。
ピストン部50との連結が解除されたロッド部材60は、リターンスプリング65の付勢力により、収容孔60bの底面60cに支持棒62の先端面が当接するまでシリンダ部30内へと引き戻される。
このようにロッド部材60がシリンダ部30内に引き込まれた状態とすることにより、制輪子10を容易に交換することができるとともに、制輪子10を交換した後にパーキングブレーキ装置100を作動させる際のロッド部材60のストローク量Sを確保することが可能となる。
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を生じる。
パーキングブレーキ装置100では、制輪子10が、アクチュエータ20と車輪2の踏面2bとの間に配置され、アクチュエータ20が伸長したときに車輪2の踏面2bに押し付けられる。このように、制輪子10は、アクチュエータ20によって直接的に車輪2に押し付けられる。したがって、アクチュエータ20の推力を制輪子10に伝達するために、梃子を構成するリンク部材等を設ける必要がない。この結果、パーキングブレーキ装置100の製造コストを低減することができる。
次に、上記実施形態の変形例について、図10を参照し説明する。
上記実施形態に係るパーキングブレーキ装置100では、作動切換弁91を通じてアクチュエータ20に所定の圧力の圧縮空気が圧力供給源92から供給される。これに代えて、図10に示すように、作動切換弁91に代えて供給圧力を調整可能な圧力制御弁93を設け、圧力供給源92からアクチュエータ20に供給される圧縮空気の圧力を調整可能としてもよい。
この場合、圧力制御弁93によって、車両が走行している際の圧力室38内の圧力を、制輪子10が車輪2の踏面2bに摺接する程度の圧力に調整することで、パーキングブレーキ装置100を車輪2の踏面2bを清掃する踏面清掃装置として作動させることが可能となる。このように、パーキングブレーキ装置100を踏面清掃装置として作動させることにより、踏面2bを適度に粗して車輪2の真円度を保つとともに、踏面2bに付着したゴミや砂利等を除去して踏面2bとレール間の粘着性を保つことで鉄道車両のブレーキ性能を向上させることができる。また、鉄道車両をしばらく停留させるときにしか用いられないパーキングブレーキ装置100を走行時にも踏面清掃装置として有効利用することができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
パーキングブレーキ装置100は、車輪2に押し付けられることによってパーキングブレーキ力を生じる制輪子10と、圧縮空気が供給されると収縮して制輪子10を車輪2から離間させ、圧縮空気が排出されると伸長して制輪子10を車輪2に押し付けるアクチュエータ20と、を備え、アクチュエータ20は、車輪2の径方向に沿って車輪2の径方向外側に配置され、制輪子10は、アクチュエータ20と車輪2の踏面2bとの間に配置され、アクチュエータ20が伸長することにより車輪2の踏面2bに押し付けられる。
この構成では、制輪子10が、アクチュエータ20と車輪2の踏面2bとの間に配置され、アクチュエータ20が伸長したときに車輪2の踏面2bに押し付けられる。このように、制輪子10は、アクチュエータ20によって直接的に車輪2に押し付けられる。したがって、アクチュエータ20の推力を制輪子10に伝達するために、梃子を構成するリンク部材等を設ける必要がない。この結果、パーキングブレーキ装置100の製造コストを低減することができる。
また、この構成では、アクチュエータ20は、車輪2の径方向に沿って車輪2の径方向外側に配置される。このため、アクチュエータ20の径方向のサイズを比較的大きくすることが可能となる。この結果、制輪子10を押し付けるアクチュエータ20の推力を向上させることが容易となり、十分なパーキングブレーキ力を確保することができる。
また、この構成では、パーキングブレーキ装置100が、ディスクブレーキ装置200とはまったく別に設けられているため、パーキングブレーキ装置100のメンテナンスを容易に行うことが可能である。
また、アクチュエータ20は、圧縮空気が排出されたときに制輪子10を車輪2に押し付ける付勢力を生じるブレーキスプリング40を有する。
この構成では、制輪子10を押し付けるアクチュエータ20の推力は、ブレーキスプリング40の付勢力である。このため、圧縮空気のように加圧装置が停止することで圧力が徐々に低下する作動流体をアクチュエータ20の推力源とした場合と比較し、常に安定したパーキングブレーキ力を確実に発生させることができる。また、ブレーキスプリング40の諸元を変更することで、パーキングブレーキ装置100が生じるパーキングブレーキ力を容易に変更することが可能である。
また、アクチュエータ20は、シリンダ部30と、シリンダ部30内に摺動自在に収装され、ブレーキスプリング40の付勢力を受けるとともに圧縮空気の圧力が作用するピストン部50と、ピストン部50に連動して進退し、制輪子10を保持するロッド部材60と、をさらに有する。
この構成では、ピストン部50に連動して進退するロッド部材60により制輪子10が保持される。このように、制輪子10は、アクチュエータ20によって直接保持される。したがって、アクチュエータ20の推力を制輪子10に伝達するために、梃子を構成するリンク部材等を設ける必要がない。この結果、パーキングブレーキ装置100の製造コストを低減することができる。
また、アクチュエータ20は、ロッド部材60を車輪2から離間させる付勢力を生じるリターンスプリング65と、ピストン部50とロッド部材60とを連結可能なクランプ部70と、をさらに有し、クランプ部70は、圧縮空気が供給されピストン部50が車輪2から離れる方向に移動する際に、ピストン部50とロッド部材60との連結を解除可能である。
この構成では、圧縮空気が供給されピストン部50が車輪2から離れる方向に移動する際に、ピストン部50とロッド部材60との連結が一時的に解除され、その後、再びクランプ部70によってピストン部50とロッド部材60とが連結される。このため、制輪子10の摩耗の有無に関わらず、制輪子10を車輪2の踏面2bに押し付ける際のロッド部材60のストローク量を一定とすることが可能となる。この結果、制輪子10が車輪2の踏面2bに当接した際のブレーキスプリング40の付勢力、すなわち、パーキングブレーキ力を安定して生じさせることができる。
また、クランプ部70は、車輪2から離れるにつれて間隔が徐々に狭くなるクサビ空間をロッド部材60の外周面60aとの間で形成するクサビ面71aを有するクサビ部71と、クサビ空間内に配置される転動体72と、クサビ面71aに向けて転動体72をロッド部材60の軸方向に沿って押圧するクランプスプリング73と、を有し、ピストン部50とロッド部材60とは、転動体72がロッド部材60の軸方向に沿ってクサビ面71aに押し付けられることにより連結される。
この構成では、転動体72がロッド部材60の軸方向に沿ってクサビ面71aに押し付けられることによって、ピストン部50とロッド部材60とが連結される。このように、比較的簡素な構成によりピストン部50とロッド部材60との連結及び連結の解除が行われるため、クランプ部70を備えたパーキングブレーキ装置100の製造コストを低減することができる。
また、クランプ部70によるピストン部50とロッド部材60との連結を解除させるリリース部81をさらに備え、リリース部81は、ロッド部材60の外周に設けられ、転動体72をクサビ面71aからロッド部材60の軸方向に離間可能なスリーブ82と、スリーブ82を転動体72から離れる方向に付勢するリリーススプリング83と、を有する。
この構成では、スリーブ82によって転動体72をクサビ面71aから離間させることで、ロッド部材60をシリンダ部30内に引き戻すことが可能である。このようにロッド部材60をシリンダ部30内に引き戻すことで、パーキングブレーキ装置100が台車Cに固定された状態においても制輪子10を容易に交換することができる。
また、鉄道車両用ブレーキシステム1のパーキングブレーキ装置100は、ディスクブレーキ装置200を台車Cに固定する支持枠120を介して台車Cに支持される。
この構成では、ディスクブレーキ装置200を台車Cに固定する支持枠120にパーキングブレーキ装置100が固定される。このように、従来から鉄道車両に搭載されるディスクブレーキ装置200にパーキングブレーキ装置100が固定されるため、台車Cに対して設計変更を行うことなく、パーキングブレーキ装置100を鉄道車両に搭載することができる。
また、鉄道車両用ブレーキシステム1は、パーキングブレーキ装置100に供給される圧縮空気の圧力を調整可能な圧力制御弁93をさらに備え、パーキングブレーキ装置100に供給される圧縮空気の圧力を圧力制御弁93により調整することによって、パーキングブレーキ装置100を車輪2の踏面2bを清掃する踏面清掃装置として作動させる。
この構成では、パーキングブレーキ装置100が車輪2の踏面2bを清掃する踏面清掃装置として作動する。このように、パーキングブレーキ装置100を踏面清掃装置として作動させることにより、踏面2bを適度に粗して車輪2の真円度を保つとともに、踏面2bに付着したゴミや砂利等を除去して踏面2bとレール間の摩擦係数の低下を抑制し踏面2bとレールとの粘着性を保つことで鉄道車両のブレーキ性能を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
1・・・鉄道車両用ブレーキシステム、100・・・鉄道車両用パーキングブレーキ装置、200・・・鉄道車両用ディスクブレーキ装置、2・・・車輪、2a・・・ブレーキディスク、2b・・・踏面、10・・・制輪子(第1制輪部)、20・・・アクチュエータ(流体圧アクチュエータ)、30・・・シリンダ部、38・・・圧力室、40・・・ブレーキスプリング(第1バネ部材)、50・・・ピストン部、60・・・ロッド部材、65・・・リターンスプリング(第2バネ部材)、70・・・クランプ部、71・・・クサビ部、71a・・・クサビ面、72・・・転動体、73・・・クランプスプリング(第3バネ部材)、81・・・リリース部、82・・・スリーブ、83・・・リリーススプリング(第4バネ部材)、103・・・第1ブレーキライニング(第2制輪部)、104・・・第2ブレーキライニング(第2制輪部)、120・・・支持枠(ブラケット)
Claims (8)
- 鉄道車両用パーキングブレーキ装置であって、
車輪に押し付けられることによってパーキングブレーキ力を生じる第1制輪部と、
作動流体が供給されると収縮して前記第1制輪部を前記車輪から離間させ、作動流体が排出されると伸長して前記第1制輪部を前記車輪に押し付ける流体圧アクチュエータと、を備え、
前記流体圧アクチュエータは、前記車輪の径方向に沿って前記車輪の径方向外側に配置され、
前記第1制輪部は、前記流体圧アクチュエータと前記車輪の踏面との間に配置され、前記流体圧アクチュエータが伸長することにより前記車輪の前記踏面に押し付けられることを特徴とする鉄道車両用パーキングブレーキ装置。 - 前記流体圧アクチュエータは、作動流体が排出されたときに前記第1制輪部を前記車輪に押し付ける付勢力を生じる第1バネ部材を有することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用パーキングブレーキ装置。
- 前記流体圧アクチュエータは、
シリンダ部と、
前記シリンダ部内に摺動自在に収装され、前記第1バネ部材の付勢力を受けるとともに作動流体の圧力が作用するピストン部と、
前記ピストン部に連動して進退し、前記第1制輪部を保持するロッド部材と、
をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用パーキングブレーキ装置。 - 前記流体圧アクチュエータは、
前記ロッド部材を前記車輪から離間させる付勢力を生じる第2バネ部材と、
前記ピストン部と前記ロッド部材とを連結可能なクランプ部と、をさらに有し、
前記クランプ部は、作動流体が供給され前記ピストン部が前記車輪から離れる方向に移動する際に、前記ピストン部と前記ロッド部材との連結を解除可能であることを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用パーキングブレーキ装置。 - 前記クランプ部は、
前記車輪から離れるにつれて間隔が徐々に狭くなるクサビ空間を前記ロッド部材の外周面との間で形成するクサビ面を有するクサビ部と、
前記クサビ空間内に配置される転動体と、
前記クサビ面に向けて前記転動体を前記ロッド部材の軸方向に沿って押圧する第3バネ部材と、を有し、
前記ピストン部と前記ロッド部材とは、前記転動体が前記ロッド部材の軸方向に沿って前記クサビ面に押し付けられることにより連結されることを特徴とする請求項4に記載の鉄道車両用パーキングブレーキ装置。 - 前記クランプ部による前記ピストン部と前記ロッド部材との連結を解除させるリリース部をさらに備え、
前記リリース部は、前記ロッド部材の外周に設けられ、前記転動体を前記クサビ面から前記ロッド部材の軸方向に離間可能なスリーブと、
前記スリーブを前記転動体から離れる方向に付勢する第4バネ部材と、を有することを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両用パーキングブレーキ装置。 - 請求項1から6の何れかに記載の鉄道車両用パーキングブレーキ装置と、前記車輪と共に回転するブレーキディスクを第2制輪部により挟持して制動する鉄道車両用ディスクブレーキ装置と、を備えた鉄道車両用ブレーキシステムであって、
前記鉄道車両用パーキングブレーキ装置は、前記鉄道車両用ディスクブレーキ装置を台車に固定するブラケットを介して前記台車に支持されることを特徴とする鉄道車両用ブレーキシステム。 - 前記鉄道車両用パーキングブレーキ装置に供給される作動流体の圧力を調整可能な圧力制御弁をさらに備え、
前記鉄道車両用パーキングブレーキ装置に供給される作動流体の圧力を前記圧力制御弁により調整することによって、前記鉄道車両用パーキングブレーキ装置を前記車輪の前記踏面を清掃する踏面清掃装置として作動させることを特徴とする請求項7に記載の鉄道車両用ブレーキシステム。
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