JP2019178286A - 2液型の表面処理液、表面処理方法、及び液状組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】被処理体の表面を極薄い膜で被覆しながらも、被膜を被処理体の表面に強固に結合させることができる2液型の表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法と、当該表面処理方法において下層膜の形成に好ましく用いられる液状組成物とを提供すること。【解決手段】エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する第1液と、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する第2液とからなる、2液型の表面処理液を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、2液型の表面処理液、表面処理方法、及び液状組成物に関する。
従来より、種々の物品の表面の性質を改質するために、様々な表面処理液が使用されている。表面改質の中でも、物品の表面の親水化又は疎水化についての要求は大きく、親水化用又は疎水化用の薬剤や表面処理液について多数提案されている。
かかる表面処理用の薬剤に関して、例えば、被膜表面に親水性と防汚性とを付与できる表面調整剤として、少なくともアクリルアミドモノマーと、特定の骨格のシロキシ基含有モノ(メタ)アクリレートモノマーとが共重合された、重量平均分子量1500〜50000の共重合物を含む表面調整剤が提案されている(特許文献1)。
特許第5437523号公報
ところで、表面処理の対象物が、マイクロ流路デバイス等の、数nmから数十μm程度の寸法の凹凸をその表面に有する物品である場合も多い。しかしながら、このような物品を、特許文献1に記載の表面調整剤で表面処理する場合、微細な凹部が共重合物で埋まってしまったり、微細な凹部の寸法が著しく狭小化されてしまったりする問題がある。
例えば、表面処理後に、処理された表面を有機溶剤によりリンスすることにより、共重合物からなる膜を極薄くすることができる。しかし、この場合、共重合物からなる極薄い膜が剥離されやすいため、表面処理の効果が損なわれやすい問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、被処理体の表面を極薄い膜で被覆しながらも、被膜を被処理体の表面に強固に結合させることができる2液型の表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法と、当該表面処理方法において下層膜の形成に好ましく用いられる液状組成物とを提供することを目的とする。
本発明者らは、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する第1液と、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する第2液とからなる、2液型の表面処理液を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より詳細には、本発明は以下のものを提供する。
本発明の第1の態様は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する第1液と、
第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する第2液とからなる、2液型の表面処理液である。
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる2液型の表面処理液を用いる表面処理方法であって、
被処理体の表面に、第1液を塗布して第1層を形成することと、
第1層上に、第2液を塗布して第2層を形成することと、を含み、
第2液が酸発生剤を含む場合、第2液の塗布後に、酸発生剤から強酸を発生させることを、さらに含む、表面処理方法である。
本発明の第3の態様は、被処理体の表面に下層膜を形成するために用いられる液状組成物であって、
エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する液状組成物である。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、被処理体の表面を極薄い膜で被覆しながらも、被膜を被処理体の表面に強固に結合させることができる2液型の表面処理液と、当該表面処理液を用いる表面処理方法と、当該表面処理方法において下層膜の形成に好ましく用いられる液状組成物とを提供することができる。
≪2液型の表面処理液≫
2液型の表面処理液は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する第1液と、
第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する第2液とからなる。
以下、第1液、及び第2液について説明する。
<第1液>
前述の通り、第1液は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する。
以下、第1液に含まれ得る成分について、樹脂(A)と、その他の成分とについて説明する。
〔樹脂(A)〕
樹脂(A)の種類は、前述の所定の要件を満たす構成単位を含む限り特定に限定されない。樹脂(A)は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の縮合型の樹脂であってもよく、(メタ)アクリル系樹脂や、スチレン系樹脂のような付加重合型の樹脂であってもよい。
樹脂(A)は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。樹脂(A)において、エポキシ基及び/又はオキセタニル基同士の分子内反応が生じにくいことから、樹脂(A)はランダム共重合体であるのが好ましい。
所定の構成単位を含む樹脂の合成又は入手が容易であることや、構成単位の種類及び比率の調整が容易であることから、樹脂(A)は、付加重合型の樹脂であるのが好ましく、(メタ)アクリル酸誘導体を含む不飽和二重結合を有する単量体を共重合させた(メタ)アクリル系樹脂であるのがより好ましい。
以下、樹脂(A)が(メタ)アクリル系樹脂である場合について、構成単位(a1)、構成単位(a2)、構成単位(a3)、及びその他の構成単位について説明する。
(構成単位(a1))
樹脂(A)は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)を含む。このため、樹脂(A)を含む第1液を用いて形成される第1層上に、後述する樹脂(B)を含む第2液を用いて第2層を形成することにより、第1層が有するエポキシ基及び/又はオキセタニル基と、第2層が有する官能基とが反応することで、第1層と第2層とが化学的に結合する。その結果、被処理体の表面に堅牢な被膜が形成される。
構成単位(a1)は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する単量体に由来する構成単であれば特に限定されない。
また、構成単位(a1)は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体に由来する構成単位には限定されない。
樹脂(A)が、構成単位(a1)以外の構成単位として、(メタ)アクリル酸誘導体に由来する構成単位を含む場合、構成単位(a1)は、例えば、アリルグリシジルエーテルのような不飽和二重結合と、エポキシ基及び/又はオキセタニル基とを有する単量体に由来する構成単位であってもよい。
構成単位(a1)を与える単量体としては、入手や調製が容易であることや、第1液の保存安定性を損ないにくいことから、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。
芳香族基とエポキシ基とを有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2−グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(−O−CO−)中のオキシ基(−O−)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(−O−)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、4−グリシジルオキシ−n−ブチル(メタ)アクリレート、5−グリシジルオキシ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、6−グリシジルオキシ−n−ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(a1−1)〜(a1−15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a1−1)〜(a1−5)で表される化合物が好ましく、下記式(a1−1)〜(a1−3)で表される化合物がより好ましい。また、これら各化合物に関し、脂環に対するエステル基の酸素原子の結合部位はここで示されているものに限られず、一部位置異性体を含んでいてもよい。
Figure 2019178286
Figure 2019178286
Figure 2019178286
上記式中、Ra01は水素原子又はメチル基を示し、Ra02は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示す。Ra03は炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基を示し、tは0以上10以下の整数を示す。Ra02としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra03としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート(OXE−10(大阪有機化学工業株式会社製))、及び(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルメタクリレート(OXE−30(大阪有機化学工業株式会社製))等が挙げられる。
樹脂(A)の質量に対する構成単位(a1)の質量の比率は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。表面処理効果が良好である点と、被処理体表面から剥離しにくに被膜を形成しやすい点とから、樹脂(A)を構成する全構成単位に対する構成単位(a1)の比率は、例えば、20モル%以上80モル%以下が好ましく、25モル%以上80モル%以下がより好ましく、30モル%以上75モル%以下が特に好ましい。
なお、上記の構成単位(a1)の好ましい比率は、樹脂(A)が、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂である場合についても同様である。
(構成単位(a2))
構成単位(a2)は、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)を有する。樹脂(A)は、かかる構成単位(a2)を有することによって、被処理体の表面に水酸基やアミノ基等の活性水素基を有する官応基と結合し得る。
このため、第1液を被処理他の表面に塗布することにより、被処理体の表面に強固に結合した第1層を形成できる。
なお、被処理体の材質によって、上記のシリル基との反応を生じさせ得る官能基量が少ない場合がある。この場合、酸素プラズマや水蒸気プラズマ等によるプラズマ処理により、被処理体の表面に水酸基を導入し得る。
構成単位(a2)は、上記のシリル基を有する単量体に由来する構成単であれば特に限定されない。
また、構成単位(a2)は、上記のシリル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体に由来する構成単位には限定されない。
樹脂(A)が、構成単位(a2)以外の構成単位として、(メタ)アクリル酸誘導体に由来する構成単位を含む場合、構成単位(a2)は、例えば、アリルトリメトキシシランのような不飽和二重結合と、上記のシリル基とを有する単量体に由来する構成単位であってもよい。
構成単位(a2)を与える単量体としては、入手や調製が容易であることから、上記のシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
シリル基としては、下記式(a2−1):
−SiR01 02 (3−x)・・・(a2−1)
(式(a2−1)中、R01は有機基であり、R02は、水酸基、又は加水分解によりシラノール基を生成させる基であり、xは0、1、又は2である。)
で表される基であるのが好ましい。
01としての有機基について、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機基は、炭化水素基であっても、1以上のヘテロ原子を有する基であってもよい。有機基が有してもよいヘテロ原子としては、N、O、S、P、B、Si、及びハロゲン原子等が挙げられる。
構成単位(a2)を与える単量体の入手や調製が容易であることから、R01としての有機基は炭化水素基であるのが好ましい。
01としての炭化水素基としては、アルキル基、アラルキル基、又はアリール基が好ましい。R01がアルキル基である場合、その炭素原子数は1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2が好ましい。
01がアルキル基である場合の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、及びn−ブチル基が挙げられ、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
アラルキル基としては、ベンジル基、及びフェネチル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ナフタレン−1−イル基、及びナフタレン−2−イル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
02は、水酸基、又は加水分解によりシラノール基を生成させる基である。これらの基の中では、第1液の保存安定性の点から、加水分解によりシラノール基を生成させる基が好ましい。加水分解によりシラノール基を生成させる基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、及びイソシアネート基等が挙げられる。
これらの基の中では、構成単位(a2)を与える単量体の入手が容易であることや、第1液の保存安定性を過度に損なうことなく、且つ、被処理体の表面との反応性が良好である第1液を得やすいことから、アルコキシ基が好ましい。
アルコキシ基の炭素原子数は特に限定されない。アルコキシ基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
アルコキシ基の好適な例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、及びn−ブチルオキシ基が挙げられ、メトキシ基、及びエトキシ基がより好ましい。
構成単位(a2)を与える単量体の、好ましい具体例としては、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、1−ヘキセニルトリメトキシシラン,1−ヘキセニルトリエトキシシラン、1−オクテニルトリメトキシシラン、1−オクテニルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
樹脂(A)の質量に対する構成単位(a2)の質量の比率は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。被処理体の表面から剥離しにくく被膜を形成しやすい点から、樹脂(A)を構成する全構成単位に対する構成単位(a2)の比率は、例えば、0.5モル%以上20モル%以下が好ましく、0.7モル%以上15モル%以下がより好ましく、1モル%以上10モル%以上が特に好ましい。
なお、上記の構成単位(a1)の好ましい比率は、樹脂(A)が、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂である場合についても同様である。
(構成単位(a3))
樹脂(A)は、酸分解性基を有する構成単位(a3)を含む。酸分解性基とは、水酸基、カルボキシ基等の官能基が、酸解離性の保護基により保護された基である。
第2液について、樹脂(B)がスルホン酸基等の強酸性を示す基を有する場合や、第2液が、強酸、又は強酸を発生し得る酸発生剤を含む場合、第1液を用いて形成される第1層上に、第2液が塗布された場合に、第1層中の酸分解性基が分解される。
第1層において、樹脂(A)中の酸分解性基が分解されると、樹脂(A)が有するエポキシ基及び/又はオキセタニル基の周囲における立体障害が緩和される。その結果、第1層におけるエポキシ基及び/又はオキセタニル基と、第2層における構成単位(b1)が有するアミノ基やフェノール性水酸基等の官能基との反応が生じやすい。
また、第1層において、樹脂(A)中の酸分解性基が分解されると、立体障害の緩和による第1層の緊密化に加え、第1層と第2層との間に水素結合が形成されやすいことにより、第1層と第2層とからなる堅牢な被膜が形成される。
また、酸分解性基を有する構成単位(a3)は、酸分解性基の立体障害によって、樹脂(A)における、構成単位(a1)中のエポキシ基及び/又はオキセタニル基同士の反応を抑制する。このため、樹脂(A)を含む第1液を用いて、被処理体の表面において、第1層を形成した場合、第1層の表面に、第2層における構成単位(b1)が有するアミノ基やフェノール性水酸基等の官能基と反応し得るエポキシ基及び/又はオキセタニル基が豊富に存在する。このため、樹脂(A)を含む第1液を用いて形成された第1層上には、
第2液に含まれる樹脂(B)が均一に結合しやすい。
このような理由から、所定の組成の第1液と、後述の第2液とを用いて表面処理を行う場合、被処理体の表面を均一に処理しやすい。
構成単位(a3)が有する酸分解性基について、酸解離性の保護基により保護された基であれば特に限定されない。酸分解性基としては、酸解離性の保護基により保護されたカルボキシ基、又は酸解離性の保護基により保護されたフェノール性水酸基が好ましい。
酸分解性基としては、例えば、下記式(a−I)、又は下記式(a−II)で表される基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、ビニルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、又はトリアルキルシリル基が挙げられる。
Figure 2019178286
上記式(a−I)、及び式(a−II)中、Ra1、及びRa2は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。Ra3は、炭素原子数1以上10以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表す。Ra4は、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表す。oは0又は1を表す。
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、及びネオペンチル基等が挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
ここで、上記式(a−I)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基等が挙げられる。
また、上記式(a−II)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ−tert−ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素原子数が1以上6以下の基が挙げられる。
構成単位(a3)としては、酸分解性基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する、下記式(a−III)〜(a−V)で表される構成単位が好ましい。
Figure 2019178286
上記式(a−III)〜(a−V)中、Ra5、Ra9、及びRa12は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。Ra10、Ra11、Ra13、及びRa14は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表す。Ra6〜Ra8は、それぞれ独立に炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基、又は炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基を表す。Ra7及びRa8は互いに結合して、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5以上20以下の炭化水素環を形成してもよい。Yは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表す。pは0以上4以下の整数を表す。qは0又は1を表す。
なお、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものである。
脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
上記Ra7及びRa8が互いに結合して炭化水素環を形成しない場合、上記Ra6、Ra7、及びRa8としては、炭素原子数2以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。上記Ra10、Ra11、Ra13、及びRa14としては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
上記Ra7及びRa8は、両者が結合している炭素原子とともに炭素原子数5以上20以下の脂肪族環式基を形成してもよい。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
さらに、上記Ra7及びRa8が形成する脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
上記Yは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
さらに、上記Yの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、当該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素原子数1以上4以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
また、Yがアルキル基である場合、炭素原子数1以上20以下、好ましくは6以上15以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基等が挙げられる。
上記式(a−III)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(a−III−1)〜(a−III−33)で表される構成単位を挙げることができる。
Figure 2019178286
上記式(a−III−1)〜(a−III−33)中、Ra15は、水素原子又はメチル基を表す。
上記式(a−IV)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(a−IV−1)〜(a−IV−26)で表される構成単位を挙げることができる。
Figure 2019178286
上記式(a−IV−1)〜(a−IV−26)中、Ra15は、水素原子又はメチル基を表す。
以上説明した構成単位の中では、前述の式(a−III−1)、式(a−III−2)、式(a−III−4)、式(a−III−5)、式(a−III−26)、又は式(a−III−27)で表される構成単位が構成単位(a3)として好ましい。
樹脂(A)を構成する全構成単位に対する構成単位(a3)の比率は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。樹脂(A)を構成する全構成単位に対する構成単位(a3)の比率は、例えば、5モル%以上80モル%以下が好ましく、7モル%以上70モル%以下がより好ましく、10モル%以上60モル%以上が特に好ましい。
なお、上記の構成単位(a3)の好ましい比率は、樹脂(A)が、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂である場合についても同様である。
(その他の構成単位)
重合体(A)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、構成単位(a1)、構成単位(a2)、及び構成単位(a3)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ペンチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びクロルスチレン等の単量体に由来する構成単位が挙げられる。
第1液中の、樹脂(A)の濃度は、第1液を用いて所望する膜厚の第1層を形成できる限り特に限定されない。所望する膜厚の第1層を形成しやすいことから、第1液中の、樹脂(A)の濃度は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
〔その他の成分〕
第1液は、樹脂(A)以外に、通常溶媒を含む。第1液に含まれる溶媒は、樹脂(A)との反応性を持たず、樹脂(A)を良好に溶解させる溶媒であれば特に限定されない。溶媒としては、通常有機溶剤を含有する溶媒が用いられる。溶媒は、有機溶剤であっても、有機溶剤の水溶液であってもよい。
有機溶剤の好適な例としては、アルコールが挙げられる。該アルコールとしては、脂肪族アルコールが挙げられ、炭素原子数1以上3以下のアルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。該アルコールは1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。第1液に含まれる溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つのアルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。
有機溶剤のその他の好ましい具体例としては、
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;
ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;
ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−i−プロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸−i−ブチル、ぎ酸−n−ペンチル、酢酸−i−ペンチル、プロピオン酸−n−ブチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸−i−プロピル、酪酸−n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸−n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;
β−プロピロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−ペンチロラクトン等のラクトン類;
n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、メチルオクタン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類;
p−メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;等が挙げられる。
また、第1液は、第1層の良好な形成を妨げない範囲で、種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の例としては、熱重合禁止剤、光重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、及び粘度調整剤等が挙げられる。
それぞれ所望する量の以上説明した成分を、均一に混合、溶解させることにより、第1液が得られる。
<第2液>
前述の通り、第2液は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する。樹脂(B)が有する上記の官能基は、前述の第1液を用いて形成される樹脂(A)を含む第1層が有するエポキシ基及び/又はオキセタニル基と反応する。かかる反応により、第1液を用いて形成される第1層と、第2液を用いて形成される第2層とが、両者の界面に置いて化学的に結合する。
また、構成単位(b1)が備える上記の官能基は一般的に親水性を有する。このため、第1液を用いて被処理体の表面に第1層を形成した後に、第2液を用いて第1層上に第2層を形成することによって、被処理体の表面が親水化される。
以下、第2液に含まれ得る成分について、樹脂(B)と、その他の成分とについて説明する。
〔樹脂(B)〕
樹脂(B)の種類は、樹脂(A)と同様に、前述の所定の要件を満たす構成単位を含む限り特定に限定されない。樹脂(B)は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の縮合型の樹脂であってもよく、(メタ)アクリル系樹脂や、スチレン系樹脂のような付加重合型の樹脂であってもよい。
樹脂(B)は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。樹脂(B)が有する上記の所定の官能基と、樹脂(A)が有するエポキシ基及び/又はオキセタニル基とが反応する確率を高めやすいことから、樹脂(B)はランダム共重合体であるのが好ましい。
所定の構成単位を含む樹脂の合成又は入手が容易であることや、構成単位の種類及び比率の調整が容易であることから、樹脂(B)は、付加重合型の樹脂であるのが好ましく、(メタ)アクリル酸誘導体を含む単量体を共重合させた(メタ)アクリル系樹脂であるのがより好ましい。
以下、樹脂(B)が(メタ)アクリル系樹脂である場合について、構成単位(b1)、及びその他の構成単位について説明する。
〔構成単位(b1)〕
構成単位(b1)は、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位である。
構成単位(b1)を与える単量体としては、不飽和二重結合と上記の所定の官能基とを有する単量体であれば特に限定されない。
樹脂(B1)は、1種類の構成単位(b1)のみからなるホモポリマーであってもよく、2種以上の構成単位(b1)からなるコポリマーであってもよく、1種以上の構成単位(b1)と、構成単位(b1)以外のその他の構成単位とからなるコポリマーであってもよい。
第一級アミノ基を有する構成単位(b1)を与える単量体としては、(メタ)アクリルアミドと、下記式(B−I):
CH=CRb02−CO−X−Rb01・・・(B−I)
(式(B−I)中、Rb01は、第一級アミノ基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、Rb02は水素原子又はメチル基であり、Xは、−O−又は−NH−である。)
で表される化合物と、が挙げられる。
b01の好適な具体例としては、下記の基が挙げられる。
Figure 2019178286
構成単位(b1)が第二級アミノ基を有する場合、構成単位(b1)を与える単量体としては、不飽和二重結合と第二級アミノ基とを有する単量体であれば特に限定されない。
構成単位(b1)が第二級アミノ基を有する場合、構成単位(b1)を与える単量体の好ましい例としては、前述した、第一級アミノ基を有する構成単位(b1)を与える好適な化合物の、N−モノアルキル置換体、N−モノアリール置換体、及びN−モノアラルキル置換体が挙げられる。
N−モノアルキル置換体について、第二級アミノ基を構成するアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が好ましい。炭素原子数1以上4以下のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基,n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基が挙げられる。
N−モノアリール置換体について、第二級アミノ基を構成するアリール基としては、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましい。炭素原子数6以上10以下のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、ナフタレン−1−イル基、及びナフタレン2−イル基が挙げられる。
N−モノアラルキル置換体について、第二級アミノ基を構成するアラルキル基としては、炭素原子数7以上10以下のアラルキル基が好ましい。炭素原子数7以上10以下のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、及びフェネチル基が挙げられる。
構成単位(b1)がカルボキシ基を有する場合、構成単位(b1)を与える単量の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類等が挙げられる。
構成単位(b1)がフェノール性水酸基を有する場合、構成単位(b1)を与える単量体の具体例としては、2−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−ヒドロキシ−α−エチルスチレン、3−ヒドロキシ−α−エチルスチレン、4−ヒドロキシ−α−エチルスチレン、2−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
以上説明した構成単位(b1)を与える単量体の中では、入手が容易であることと、エポキシ基及び/又はオキセタニル基との反応性が良好であることと、親水化の効果が良好であることと、から、(メタ)アクリルアミドが好ましい。
樹脂(B)を構成する全構成単位に対する構成単位(b1)の比率は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。樹脂(B)を構成する全構成単位に対する構成単位(b1)の比率は、例えば、1モル%以上100モル%以下が好ましく、2モル%以上90モル%以下がより好ましく、3モル%以上70モル%以下がさらに好ましく、5モル%以上50モル%以下が特に好ましい。
樹脂(B)が、かかる範囲内の比率で構成単位(b1)を含むことにより、第2液を用いて形成される第2層を、第1層に良好に結合させることができ、且つ、被処理体の表面を良好に親水化することができる。
なお、上記の構成単位(b1)の好ましい比率は、樹脂(B)が、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂である場合についても同様である。
(構成単位(b2))
第2液は、下記(i)及び(ii):
(i)樹脂(B)が、スルホン酸基を有する構成単位(b2)を含む。
(ii)pKaが2以下の強酸、及び/又はpKaが2以下の強酸を発生させ得る酸発生剤を含む。
の条件の少なくとも1つを満たすのが好ましい。
以下、樹脂(B)が含み得る好ましい構成単位である、構成単位(b2)について説明する。強酸、及び酸発生剤については後述する。
構成単位(b2)に含まれるスルホン酸基は、第1液を用いて形成される、樹脂(A)からなる第1層が有するエポキシ基及び/又はオキセタニル基と、樹脂(B)に含まれる構成単位(b1)が有する官能基との間の反応を促進させる。
また、構成単位(b2)に含まれるスルホン酸基は、樹脂(A)中の構成単位(a3)が備える酸分解性基を分解させる。
第1層において、樹脂(A)中の酸分解性基が分解されると、樹脂(A)が有するエポキシ基及び/又はオキセタニル基の周囲における立体障害が緩和される。その結果、第1層におけるエポキシ基及び/又はオキセタニル基と、第2層における構成単位(b1)が有する官能基との反応が生じやすい。
また、第1層において、樹脂(A)中の酸分解性基が分解されると、立体障害の緩和による第1層の緊密化に加え、第1層と第2層との間に水素結合が形成されやすく、第1層と第2層とからなる堅牢な被膜が形成される。
スルホン酸基を有する構成単位(b2)を与える単量体としては、不飽和二重結合と、スルホン酸基とを有する化合物であれば特に限定されない。
スルホン酸基を有する構成単位(b2)を与える単量体としては、2−ビニルベンゼンスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、及び3−ビニルベンゼンスルホン酸等のビニルベンゼンスルホン酸類と、下記式(B−II):
CH=CRb02−CO−X−Rb03・・・(B−II)
(式(B−II)中、Rb02と、Xとは、式(B−I)と同様である。Rb03は、スルホン酸基で置換された炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。)
で表される化合物と、が挙げられる。
b03の好適な具体例としては、下記の基が挙げられる。
Figure 2019178286
樹脂(B)を構成する全構成単位に対する構成単位(b2)の比率は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。樹脂(B)を構成する全構成単位に対する構成単位(b2)の比率は、例えば、5モル%以上99モル%以下が好ましく、20モル%以上95モル%以下がより好ましく、50モル%以上90モル%以下がさらに好ましい。
樹脂(B)が、かかる範囲内の比率で構成単位(b2)を含むことにより、第2液を用いて形成される第2層を、第1層に良好に結合させることができ、且つ、被処理体の表面を良好に親水化することができる。
なお、上記の構成単位(b2)の好ましい比率は、樹脂(B)が、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂である場合についても同様である。
(構成単位(b3))
樹脂(B)は、表面処理による親水化効果をさらに高める目的で、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基以外の親水性基を有する構成単位(b3)を含んでいてもよい。
かかる親水性基としては、一般的に親水性基であると当業者に認識される基であって、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基以外であれば特に限定されない。
親水性基の具体例としては、ポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダム結合したポリオキシアルキレン基等)、及びアルコール性水酸基が好ましい。
また、アニオン部と、樹脂(B)に結合するカチオン部とからなるカチオン性基も親水性基として好ましい。カチオン性基を構成するカチオン部としては、含窒素カチオン部、含イオウカチオン部、含ヨウ素カチオン部、及び含リンカチオン部等が挙げられる。
アニオン部を構成するアニオンとしては特に限定されない。アニオンの価数は特に限定されず、1価アニオン又は2価アニオンが好ましく、1価アニオンがより好ましい。
アニオン部としての1価アニオンの好適な例としては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、種々の有機カルボン酸又は有機スルホン酸に由来する有機酸イオン等が挙げられる。これらの中では、ハロゲン化物イオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオンがより好ましく、塩化物イオン、及び臭化物イオンがさらにより好ましく、塩化物イオンが特に好ましい。
カチオン性基の好ましい例としては、4級アンモニウム塩基を含む基、含窒素芳香族複素環基の塩を含む基、スルホニウム塩基を含む基、ヨードニウム塩基を含む基、ホスホニウム塩基を含む基等が挙げられる。
これらのカチオン性基の中では、樹脂(B)への導入が容易であることや、親水化の効果が高いこと等から、4級アンモニウム塩基を含む基が好ましい。
カチオン性基としての4級アンモニウム塩基としては、下記式(B−IV):
−Rb08−Nb05b06b07・X・・・(B−IV)
(式(B−IV)中、Rb05、Rb06、及びRb07は、それぞれ独立にNに結合する炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、Rb05、Rb06、及びRb07のうちの2つは互いに結合して環を形成してもよく、Rb08は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基であり、Xは1価のアニオンである。)
で表される基が好ましい。
b05、Rb06、及びRb07としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。Rb05、Rb06、及びRb07の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びn−ブチル基が挙げられる。
b08としての炭素原子数1以上4以下のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。Rb08の好適な具体例としては、メチレン基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、及びブタン−1,4−ジイル基が挙げられる。
の好適な例は、前述のアニオン部を構成するアニオンの好適な例と同様である。
構成単位(b3)を与える単量体としては、不飽和二重結合と、第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基以外の親水性基とを有する化合物であれば特に限定されない。
構成単位(b3)を与える単量体としては、下記式(B−III):
CH=CRb02−CO−X−Rb04・・・(B−III)
(式(B−III)中、Rb02と、Xとは、式(B−I)と同様である。Rb04は、水酸基、又は前述の式(B−IV)で表される基である。)
で表される化合物と、が挙げられる。
b04の好適な具体例としは、以下の基が挙げられる。
Figure 2019178286
Figure 2019178286
樹脂(B)を構成する全構成単位に対する構成単位(b3)の比率は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。樹脂(B)を構成する全構成単位に対する構成単位(b3)の比率は、例えば、0.1モル%以上99モル%以下が好ましく、1モル%以上50モル%以下がより好ましく、2モル%以上30モル%以下がさらに好ましい。
樹脂(B)が、かかる範囲内の比率で構成単位(b3)を含むことにより、被処理体の表面を良好に親水化することができる。
なお、上記の構成単位(b3)の好ましい比率は、樹脂(B)が、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂である場合についても同様である。
(その他の構成単位)
重合体(B)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、構成単位(b1)、構成単位(b2)、及び構成単位(b3)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。
その他の構成単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ペンチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及びクロルスチレン等の単量体に由来する構成単位が挙げられる。
第2液中の、樹脂(B)の濃度は、第2液を用いて所望する膜厚の第2層を形成できる限り特に限定されない。所望する膜厚の第2層を形成しやすいことから、第2液中の、樹脂(B)の濃度は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
〔強酸、又は酸発生剤〕
前述の通り、第2液は、pKaが2以下の強酸、及び/又はpKaが2以下の強酸を発生させ得る酸発生剤を含む。なお、pKaは水中での値である。
強酸、又は酸発生剤が発生させる強酸は、構成単位(b2)中のスルホン酸基と同様の効果をもたらす。
(強酸)
強酸としては、上記のpKaを示す酸であれば特に限定されない。強酸は、有機酸であっても、無機酸であってもよい。
強酸の好適な例としては、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フッ素化脂肪族カルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸等)、フルオロスルホン酸、炭素原子数1以上30以下のアルカンスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等)、アリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)、炭素原子数1以上30以下のフルオロアルカンスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸及びトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)、ビススルホニルイミド化合物、2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホニルイミド化合物、及びN−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミド等が挙げられる。
これらの強酸が、フルオロアルキル基、又はフルオロアルキレン基を含む場合、これらの基は、部分的にフッ素化されたフルオロアルキル基、又はフルオロアルキレン基であってもよく、完全にフッ素化されたパーフルオロアルキル基、又はパーフルオロアルキレン基であってもよい。
これらの強酸の中では、フルオロスルホン酸、炭素原子数1以上30以下のアルカンスルホン酸、炭素原子数1以上30以下のフルオロアルカンスルホン酸、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド酸、2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホンイミド酸、及びN−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミドが好ましく、炭素原子数1以上30以下のフルオロアルカンスルホン酸、ビススルホニルイミド化合物、2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホニルイミド化合物、及びN−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミドが好ましい。
炭素原子数1以上30以下のフルオロアルカンスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、及びノナフルオロブタンスルホン酸等が好ましい。
ビススルホニルイミド化合物としては、下式(B1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2019178286
式(B1)中、X及びXは、それぞれ独立に、少なくとも1つの電子吸引性基で置換された炭化水素基を表す。炭化水素基は、式(B1)で表される化合物の強酸性が損なわれない範囲で、電子吸引性基以外の種々の基で置換されていてもよい。X及びXの炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上7以下が特に好ましい。
電子吸引性基で置換された炭化水素基としては、フッ素化アルキル基、ニトロ基を有するアリール基が好ましい。フッ素化アルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でも、環状でもよい。フッ素化アルキル基は、完全にフッ素化されたパーフルオロアルキル基であるのが好ましい。ニトロ基を有するアリール基としては、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、及びp−ニトロフェニル基が好ましく、p−ニトロフェニル基がより好ましい。
式(B1)で表される化合物の好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
Figure 2019178286
2つのスルホニル基がフルオロアルキレン基で連結された環状スルホニルイミド化合物としては、下式(B2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2019178286
式(B2)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。Xの炭素原子数は、2以上6以下が好ましく、3以上5以下がより好ましく、3が特に好ましい。
式(B2)で表される化合物の好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
Figure 2019178286
N−アシルフルオロアルカンスルホン酸アミドとしては、下式(B3)で表される化合物が好ましい。
Figure 2019178286
式(B3)中、Xは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。Xの炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上7以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。
は、炭化水素基である。炭化水素基について、前述のRの基の主骨格を構成する炭化水素基と同様である。
式(B3)で表される化合物の好適な具体例としては、下式の化合物が挙げられる。
Figure 2019178286
第2液中の強酸の含有量は、表面処理を良好に行うことが出来る限り特に限定されない。第2液中の強酸の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下が特に好ましい。
(酸発生剤)
酸発生剤としては、熱や光等のエネルギーによって酸を発生させる酸発生剤であれば特に限定されない。第2液中での安定性等から、酸発生剤としては光酸発生剤が好ましい。
光酸発生剤としては、以上説明した好ましい強酸を発生させることができる化合物が好ましい。
かかる化合物としては、上記の強酸に由来するアニオンと、オニウムイオンとからなるオニウム塩化合物が好ましい。オニウムイオンとしては、ヨードニウムイオン及びスルホニウムイオンが好ましく、スルホニウムイオンがより好ましい。
第2液中の酸発生剤の含有量は、表面処理を良好に行うことが出来る限り特に限定されない。第2液中の強酸の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下が特に好ましい。
〔その他の成分〕
第2液は、樹脂(B)以外に、通常溶媒を含む。第2液に含まれる溶媒は、樹脂(B)との反応性を持たず、樹脂(B)を良好に溶解させる溶媒であれば特に限定されない。溶媒としては、通常有機溶剤を含有する溶媒が用いられる。溶媒は、有機溶剤であっても、有機溶剤の水溶液であってもよく、有機溶剤の水溶液が好ましい。
有機溶剤の水溶液が使用される場合、有機溶剤の水溶液における水の含有量は、有機溶剤の水溶液の質量に対して、1質量%以上90質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下が好ましい。
有機溶剤の好適な例としては、アルコールが挙げられる。該アルコールとしては、脂肪族アルコールが挙げられ、炭素原子数1以上3以下のアルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、及びイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。該アルコールは1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。第2液に含まれる溶媒としては、具体的には、水と、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも1つのアルコールとの混合溶媒を用いることが好ましく、水とメタノールとの混合溶媒、水とエタノールとの混合溶媒、水とイソプロピルアルコールとの混合溶媒を用いることがより好ましく、水と2種以上のアルコールを含有する混合溶媒を用いてもよい。
上記の他の好ましい有機溶剤の例は、第1液に含まれ得る有機溶剤の好適な例と同様である。
また、第2液は、第2層の良好な形成を妨げない範囲で、種々の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の例としては、熱重合禁止剤、光重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、及び粘度調整剤等が挙げられる。
それぞれ所望する量の以上説明した成分を、均一に混合、溶解させることにより、第2液が得られる。
≪表面処理方法≫
表面処理方法は、前述の2液型の表面処理液を用いて行われる。
表面処理方法は、
被処理体の表面に、前述の第1液を塗布して第1層を形成することと、
第1層上に、前述の第2液を塗布して第2層を形成することと、
を含む。
表面処理方法は、第2液が酸発生剤を含む場合、第2液の塗布後に、酸発生剤から強酸を発生させることを、さらに含む。
かかる表面処理方法によれば、第1層が被処理体表面に良好に結合し、且つ、第1層と、第2層とが良好に結合する。このため、被処理体の表面を極薄い膜で被覆しながらも、表面処理液を用いて形成される被膜を被処理体の表面に強固に結合させることができる。その結果、表面処理された被処理体に摩擦等が加えられても、被膜が容易に剥離せず、表面処理効果が低下しにくい。
<第1層の形成>
第1液の塗布方法は特に限定されない。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法等が挙げられる。被処理体が基板である場合、基板の表面に、均一な膜厚の第1層をむらなく形成しやすいことから、塗布方法としてスピンコート法が好ましい。
被処理体の第1が塗布される面の材質は特に限定されず、有機材料であっても、無機材料であってもよい。
有機材料としては、PET樹脂やPBT樹脂等のポリエステル樹脂、各種ナイロン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、(メタ)アクリル樹脂等、種々の樹脂材料が挙げられる。
また、種々のレジスト材料に含まれる感光性の樹脂成分や、アルカリ可溶性の樹脂成分も有機材料として好ましい。
無機材料としては、ガラス、シリコンや、銅、アルミニウム、鉄、タングステン等の種々の金属が挙げられる。金属は、合金であってもよい。
第1液に含まれる樹脂(A)は、典型的には被処理体の表面の水酸基と結合する場合が多い。
このため、第1層を形成させる前には、第1層の形成を良好に進行させる目的で、被処理体の表面に水酸基を導入する処理を行ってもよい。かかる処理の好適な例としては、酸素プラズマや水蒸気プラズマ等によるプラズマ処理が挙げられる。
被処理体の形状は特に限定されない。被処理体は平坦な基板であってもよく、例えば、球状や、柱状等の立体形状であってもよい。また、被処理体の表面は、平滑であっても、規則的又は不規則な凹凸を有していてもよい。規則的又は不規則な凹凸を有する被処理体としては、例えばマイクロ流路デバイス等が挙げられる。
第1液を被処理体の表面に塗布した後は、周知の乾燥方法により、必要に応じて、第1液からなる塗布膜から溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
第1層の膜厚は、所望する表面処理効果が得られる限り特に限定されない。第1層の膜厚と、第2層の膜厚との合計は、例えば10nm以下が好ましく、0.1nm以上10nm以下がより好ましい。第1層の膜厚は、0.1nm以上5nm以下が好ましく、0.1nm以上5nmがより好ましい。
第1層の膜厚が上記の範囲内であると、被処理体の表面を第1層によりむらなく被覆しやすく、また、被処理体の表面に第1層を介して第2層を強固に保持しやすい。
かかる膜厚の第1層を設けるためには、第1液を被処理体の表面に塗布した後に、有機溶剤、又は水によるリンスを行うのが好ましい。リンスを行うことにより、被処理体の表面や、第1液からなる塗布膜中で遊離している状態の樹脂(A)が洗い流され、例えば、膜厚0.1nm以上5nm以下の薄い第1層を形成しやすい。
上記のようにして第1層を形成した後、前述の第2液を用いて、第1層上に第2層を設ける。
<第2層の形成>
第2層の形成は、前述の第2液を用いることの他は第1層の形成と同様に行われる。また、第2層の膜厚は、第1層と同様の膜厚であるのが好ましい。
第2液が、酸発生剤を含む場合、酸発生剤の種類に応じて、第2層に対して、露光又は加熱を行うのが好ましい。露光条件、及び加熱条件はそれぞれ特に限定されず、酸発生剤から酸を発生させるのに好ましい条件が選択される。
上記の方法に従い第1層と、第2層とを形成した後に、第1層及び第2層を加熱することが好ましい。そうすることにより、第1層において樹脂(A)が有する構成単位(a1)中のエポキシ基及び/又はオキセタニル基と、第2層において樹脂(B)が有する構成単位(b1)中の官能基との反応を促進できる。
従って、第1層と、第2層とを形成した後に、第1層及び第2層とを加熱することにより、第2層の摩擦による第1層からの剥離を抑制できる。結果として、摩擦により表面処理効果が低下しにくい、堅牢な被膜が被処理体の表面に形成される。
第1層及び第2層を加熱する条件は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。第1層及び第2層を加熱する条件としては、例えば、60℃以上250℃以下が好ましく、100℃以上200℃以下がより好ましい。加熱時間としては、1分以上60分以下が好ましく、5分以上30分以下がより好ましい。
以上の方法により、前述の2液型の表面処理液を用いて被処理体の表面処理を行うことにより、被処理体の表面を、ムラなく良好に親水化することができる。
表面処理された被処理体の表面の水の接触角の、3点以上の測定結果から求められる標準偏差は1以下であるのが好ましい。
また、前述の2液型の表面処理液を用いて形成される被膜は堅牢であるため、表面処理された被処理体の表面をスポンジやスチールウール等で摩擦しても、表面処理効果が損なわれにくい。
≪液状組成物≫
液状組成物は、被処理体の表面に下層膜を形成する表面処理を行うために用いられる液状組成物である。かかる液状組成物の組成は、前述の第1液と同様である。
つまり、液状組成物は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する。
液状組成物に含まれる得る樹脂(A)以外の成分は、第1液と同様である。また、液状組成物に含まれる各成分の好ましい比率も、第1液と同様である。
かかる液状組成物を用いて、被処理体の表面に表面処理を施すことにより、被処理体の表面に前述の樹脂(A)からなる下層膜が形成される。樹脂(A)は、前述の構成単位(a2)を有するため被処理体の表面に良好に密着し、且つ、前述の構成単位(a1)を有するため、下層膜上にさらなる表面処理を施す場合に、下層膜上に接触する表面処理剤と良好に結合しやすい。
つまり、上記の液状組成物を用いる表面処理は、下層膜(下地層)を形成することによって、下層膜の表面にさらに適用される表面処理剤に対する密着性の増強や、表面処理効果の向上を行う表面処理であると言える。
また、液状組成物は、樹脂(A)を含むため、液状組成物の保存安定性が良好である。
上記の液状組成物を用いて形成される下層膜上には、膜形成性でない表面処理剤がさらに結合されてもよく、1層以上の上層膜が設けられてもよい。好ましくは、液状組成物を用いて形成される下層膜上には、液状の表面処理剤を塗布して1層以上の上層膜として形成される。
表面処理剤の種類は特に限定されないが、典型的には、エポキシ基及び/又はオキセタニル基との反応性を有する物質を含む表面処理剤が好ましい。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜10、及び比較例5〕
被処理体として、シリコンウエハーを用いた。シリコンウエハーに、PGMEA/IPA(1/1:質量比)からなる混合溶媒中に、樹脂(A)を濃度1質量%で含む第1液をスピンコート法により塗布した後、アセトンによるリンスを行い、膜厚1nmのプライマー層を形成した。
樹脂(A)としては、表1及び表2に記載の種類の構成単位を、表1及び表2に記載の比率で含む(メタ)アクリル系樹脂を用いた。
なお、比較例1については、樹脂(A)ではなく、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを単量体の形態で用いた。表2中、比較例1について、便宜的に樹脂(A)の組成欄に、下記構成単位A1−1の比率が100モル%である旨記載する。
表1及び表2に記載の構成単位は、以下の通りである。
Figure 2019178286
第1層上に、水/IPA(1/9:質量比)からなる混合溶媒中に、樹脂(B)を濃度1質量%で含む第2液をスピンコート法により塗布し、150℃5分間ホットプレートで加熱した後、水によるリンスを行い、膜厚2nmの第2層を形成した。
樹脂(B)としては、以下の構成単位からなる(メタ)アクリル系樹脂を用いた。なお、下記式において、括弧の右下の数字は、樹脂中の全構成単位に対する各構成単位の比率(モル%)を表す。
Figure 2019178286
実施例1〜10、及び比較例1〜5で得た表面処理された直後のシリコンウエハーと、表面処理後に2cm角のスコッチブライト抗菌ウレタン(スリーエム製)を用いて、荷重2kgで10往復の耐擦傷試験を行った後のシリコンウエハーについて、以下の方法に従って、接触角評価を行った。これらの評価結果を表1及び表2に記す。
<接触角評価>
Dropmaster700(協和界面科学株式会社製)を用いシリコンウエハーの表面処理された表面に純水液滴(2.0μL)を滴下して、滴下10秒後における接触角として、水の接触角を測定した。シリコンウエハー上の3点の水の接触角の平均値を、表1及び表2に記す。
また、表面処理された直後のシリコンウエハー上の3点の水の接触角の測定値から、標準偏差を求めた。標準偏差の値を表1及び表2に記す。
Figure 2019178286
Figure 2019178286
表1によれば、それぞれ所定の要件を満たす構成単位(a1)、構成単位(a2)、及び構成単位(a3)を含む樹脂(A)を含有する第1液を用いて第1層を形成した後、所定の要件を満たす構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する第2液を用いて、第1層上に第2層を形成する場合、シリコンウエハーの表面が均一且つ良好に親水化されることが分かる。また、初期の水接触角と、摩擦後の水接触角との比較から、上記の第1液と、第2液とを用いて形成された被膜は、摩擦により剥離しにくい堅牢な被膜であることが分かる。

Claims (12)

  1. エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する第1液と、
    第一級アミノ基、第二級アミノ基、カルボキシ基、及びフェノール性水酸基から選択される1種以上の基を有する構成単位(b1)を含む樹脂(B)を含有する第2液とからなる、2液型の表面処理液。
  2. 前記シリル基が、下記式(a2−1):
    −SiR01 02 (3−x)・・・(a2−1)
    (式(a2−1)中、R01は有機基であり、R02は、水酸基、又は加水分解によりシラノール基を生成させる基であり、xは0、1、又は2である。)
    で表される基である、請求項1に記載の2液型の表面処理液。
  3. 前記酸分解性基が、酸解離性の保護基により保護されたカルボキシ基、又は酸解離性の保護基により保護されたフェノール性水酸基である、請求項1又は2に記載の2液型の表面処理液。
  4. 前記第2液が、下記(i)及び(ii):
    (i)前記樹脂(B)が、スルホン酸基を有する構成単位(b2)を含む。
    (ii)pKaが2以下の強酸、及び/又はpKaが2以下の強酸を発生させ得る酸発生剤を含む。
    の条件の少なくとも1つを満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の2液型の表面処理液。
  5. 前記樹脂(A)を構成する全構成単位対する前記構成単位(a1)の比率が、20モル%以上80モル%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2液型の表面処理液。
  6. 前記樹脂(A)を構成する全構成単位対する前記構成単位(a2)の比率が、0.5モル%以上20モル%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の2液型の表面処理液。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の2液型の表面処理液を用いる表面処理方法であって、
    被処理体の表面に、前記第1液を塗布して第1層を形成することと、
    前記第1層上に、前記第2液を塗布して第2層を形成することと、を含み、
    前記第2液が前記酸発生剤を含む場合、前記第2液の塗布後に、前記酸発生剤から前記強酸を発生させることを、さらに含む、表面処理方法。
  8. 前記第1層の厚さと、前記第2層の厚さとの合計が10nm以下である、請求項7に記載の表面処理方法。
  9. 前記第1層と、前記第2層とを形成した後に、前記第1層及び前記第2層とを加熱することを含む、請求項7又は8に記載の表面処理方法。
  10. 被処理体の表面に下層膜を形成するために用いられる液状組成物であって、
    エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位(a1)と、シラノール基又は加水分解によりシラノール基を生成させる基を含むシリル基を有する構成単位(a2)と、酸分解性基を有する構成単位(a3)とを含む樹脂(A)を含有する液状組成物。
  11. 前記シリル基が、下記式(a2−1):
    −SiR01 02 (3−x)・・・(a2−1)
    (式(a2−1)中、R01は有機基であり、R02は、水酸基、又は加水分解によりシラノール基を生成させる基であり、xは0、1、又は2である。)
    で表される基である、請求項10に記載の液状組成物。
  12. 前記酸分解性基が、酸解離性の保護基により保護されたカルボキシ基、又は酸解離性の保護基により保護されたフェノール性水酸基である、請求項10又は11に記載の液状組成物。
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