本発明は、鋳枠およびパターンプレートを用いて鋳物砂から鋳型を造型する鋳型造型機において、パターンプレートに向けて離型剤を噴霧する離型剤噴霧装置および離型剤噴霧方法に関する。
従来、鋳型造型機において、パターンプレートに鋳物砂が付着しないようにするために、また、抜型性を維持するために鋳型造型機により形成される鋳型造型空間に離型剤を噴霧することは知られている(例えば、特許文献1参照)。
離型剤を噴霧する際に、噴霧量が適正でないと、しみつき(パターンプレートに鋳物砂が付着する現象)や抜型不良などの問題が発生する。したがって、噴霧量の管理は重要である。しかし従来、噴霧量の調整は目視で行われるのが一般的であり、噴霧ノズルの詰まり等により噴霧量が変化しても気付かないことが多いという問題があった。また、装置の配管経路や離型剤スプレーからの離型剤漏れがあっても気付かないことがあるという問題があった。
そこで、本発明は、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知し、離型剤の噴霧量を適正に管理することにより、しみつきや抜型不良などの発生を防止することができる離型剤噴霧装置および離型剤噴霧方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の離型剤噴霧装置は、例えば図1および図2に示すように、鋳枠10およびパターンプレート20を用いて鋳物砂Sから鋳型を造型する鋳型造型機において、パターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧装置1であって、パターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧ノズル30と、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給する離型剤供給配管40と、離型剤供給配管40を流れる離型剤Aの流量を計測する流量センサ42と、計測された流量から、離型剤Aの漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知するコントローラ90とを備える。
このように構成すると、離型剤噴霧ノズルに離型剤を供給する離型剤供給配管を流れる離型剤の流量を計測する流量センサと、計測された流量から、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知するコントローラとを備えるので、離型剤の流量に基づき、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合が検知でき、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第2の態様に係る離型剤噴霧装置は、例えば、図2に示すように、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給するガス供給配管32と、ガス供給配管32を流れるガスG1の圧力を計測する圧力センサ34とをさらに備え、コントローラ90は、計測された圧力から、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知する。このように構成すると、離型剤を噴霧するためのガスを供給するガス供給配管を流れるガスの圧力を計測する圧力センサと、計測された圧力から、ガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知するコントローラとを備えるので、ガスの圧力に基づき、ガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合が検知でき、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第3の態様に係る離型剤噴霧装置は、例えば、図2に示すように、離型剤Aを貯蔵する離型剤タンク44と、離型剤タンクAに加圧空気G2を供給し、離型剤Aを離型剤供給配管40を通じて離型剤噴霧ノズル30に供給する加圧空気供給装置49とをさらに備える。このように構成すると、離型剤を貯蔵する離型剤タンクと、離型剤タンクに加圧空気を供給し、離型剤を離型剤供給配管を通じて離型剤噴霧ノズルに供給する加圧空気供給装置とをさらに備えるので、加圧空気により離型剤を確実に離型剤噴霧ノズルに供給することができる。
また、本発明の第4の態様に係る離型剤噴霧装置では、コントローラ90は、計測された流量に基づいて、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aが噴霧される時間を調整する。このように構成すると、計測された流量に基づいて離型剤噴霧ノズルから離型剤が噴霧される時間をコントローラが調整するので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第5の態様に係る離型剤噴霧装置は、例えば図4に示すように、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aが噴霧されていることを検知するためのレーザセンサ60をさらに備える。このように構成すると、離型剤噴霧ノズルから離型剤が噴霧されていることを検知するためのレーザセンサをさらに備えるので、離型剤が適正に噴霧されていることを確認できる。
上記課題を解決するために、本発明の第6の態様の離型剤噴霧方法は、例えば図1、図2および図3に示すように、鋳枠10およびパターンプレート20を用いて鋳物砂Sから鋳型を造型する鋳型造型機において、離型剤噴霧ノズル30からパターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧方法であって、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給する工程S10と、離型剤噴霧ノズル30からパターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する工程S50と、離型剤Aが供給される流量を計測する工程S20と、計測された流量から、離型剤Aの漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤Aを噴霧するための機器の不具合を検知する工程S202、S204、S206、S220,S222、S224、S242とを備える。
このように構成すると、離型剤噴霧ノズルからパターンプレート20に向けて噴霧される離型剤が供給される流量を計測し、計測された流量から、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤を噴霧するための機器の不具合を検知する工程とを備えるので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第7の態様に係る離型剤噴霧方法は、例えば図2および図3に示すように、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給する工程S30と、ガスG1の圧力を計測する工程S40と、計測された圧力から、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、機器の不具合を検知する工程S100、S120、S130とを備える。このように構成すると、離型剤を噴霧するためのガスを供給するガス供給配管を流れるガスの圧力を計測し、計測された圧力から、ガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知するので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第8の態様に係る離型剤噴霧方法は、例えば図3に示すように、計測された流量に基づいて、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aが噴霧される時間を調整する工程S300をさらに備える。このように構成すると、計測された流量に基づいて離型剤噴霧ノズルから離型剤が噴霧される時間を調整する工程を備えるので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第9の態様に係る離型剤噴霧方法は、例えば図4に示すように、噴霧する工程S50において、離型剤噴霧ノズル30を移動しながら、離型剤噴霧ノズル30からパターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する。このように構成すると、離型剤噴霧ノズルを移動しながらパターンプレートに向けて離型剤を噴霧するので、パターンプレートの広い範囲に離型剤を噴霧することができる。
本発明によれば、離型剤の流量に基づき、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合が検知でき、離型剤の噴霧量を適正に管理することにより、しみつきや抜型不良などの発生を防止することができる。
図1は、離型剤噴霧装置を備えた鋳型造型機の一例の要部を示す側面断面図である。
図2は、離型剤噴霧装置の離型剤および離型剤を噴霧するためのガスを供給するための一実施形態のブロック図である。
図3は、離型剤の流量および離型剤を噴霧するためのガスの圧力に基づき、離型剤またはガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知する方法の一例のフロー図である。なお、一のフロー図を(a)および(b)の2枚に分割して示す。
図4は、図1に示す鋳型造型機の変形例として、離型剤噴霧ノズルを移動しながら離型剤を噴霧すると共に、離型剤が噴霧されていることを検知するレーザセンサを備える鋳型造型機の要部を示す側面断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。図1を参照して、鋳型造型機の鋳型を造型する鋳枠10、パターンプレート20等について説明する。図1は、鋳枠10、盛枠12、枠状フレーム16、パターンプレート20、パターンキャリア22、スクイズ部材54、鋳物砂ホッパ50等を含む鋳型造型機の要部の側面断面図である。なお本書では、パターンプレート20には、上下鋳型を同時に造型するためのマッチプレートも含むものとする。そして、以下の説明では、鋳枠付き鋳型を製造する鋳型造型機を例として説明するが、本発明は、抜枠造型機にも同様に用いることができる。
鋳型造型機では、パターンプレート20はパターンキャリア22に載置される。パターンプレート20の外周を包囲する枠状フレーム16の上に、鋳枠10および盛枠12が順に重ねられる。枠状フレーム16は、パターンキャリア22に形成された穴部に挿入されるガイドピン18を介して、図示されない昇降シリンダにより昇降されるようになっている。盛枠12の内部にスクイズ部材54が上方から挿入される。パターンプレート20、枠状フレーム16、鋳枠10、盛枠12およびスクイズ部材54で囲まれた空間が造型空間となる。
盛枠12の上部に鋳物砂ホッパ50が配置される。鋳物砂ホッパ50は鋳物砂Sを貯留し、下部に設けられた鋳物砂充填ノズル52を通じて、造型空間内に鋳物砂Sを供給する。なお、鋳物砂ホッパ50には、上部に設けられた砂供給シュート56を介して鋳物砂Sが供給される。
造型空間に鋳物砂Sが充填されると、鋳物砂ホッパ50およびスクイズ部材54が下降し、鋳枠10の内部空間にてパターンプレート20との間で鋳物砂Sをスクイズし、鋳型(不図示)を造型する。その際に、枠状フレーム16が下降することにより、鋳物砂Sがパターンプレート20側からもスクイズされ、均一にスクイズされた鋳型となる。その後、鋳物砂ホッパ50およびスクイズ部材54が上昇し、鋳型とスクイズ部材54が分離され、さらに盛枠12も上昇する。また、枠状フレーム16を上昇させ、鋳型とパターンプレート20が分離された後、鋳枠10がさらに上昇される。造型された鋳型は、鋳枠10に保持された状態で次の工程に送られる。
鋳型とパターンプレート20とを分離し易くするために、図1の状態でパターンプレート上に離型剤が噴霧される。離型剤は、油性、水溶性など、市販の離型剤でよい。本実施の形態では、盛枠12を貫通するスリット14を形成し、スリット14に離型剤噴霧ノズル30を挿入し、離型剤噴霧ノズル30から造型空間内に離型剤を噴霧する。パターンプレート20、枠状フレーム16、鋳枠10、盛枠12およびスクイズ部材54で囲まれた造型空間に離型剤を噴霧するので、大気中に飛散することが防止され、環境的にも経済的にも好的である。また、離型剤噴霧ノズル30が盛枠12に設置されるので、鋳型の造型時、すなわち、スクイズ部材54で鋳物砂Sをスクイズする際に障害にならない。なお図では、離型剤噴霧ノズル30は水平に設置されているが、パターンプレート20に向けて下方に傾斜されてもよい。また、離型剤噴霧ノズル30の設置場所は、上記には限られず、たとえばスクイズ部材54など、パターンプレート20に離型剤を噴霧できる場所であればよい。
図2に、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧装置1のブロック図の一例を示す。離型剤噴霧装置1は、離型剤噴霧ノズル30に加え、離型剤Aを貯留する離型剤タンク44と、離型剤Aの噴霧をコントロールするコントローラ90を有する。また、離型剤噴霧装置1は、離型剤タンク44から離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給する離型剤供給配管40、離型剤Aを噴霧するためのガスG1を離型剤噴霧ノズル30に供給するガス供給配管32を有する。また、離型剤タンク44から離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給するための圧縮空気G2を離型剤タンク44に供給する離型剤供給用圧縮空気配管46を備える。このように、圧縮空気G2を離型剤タンク44に供給して圧力で離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給するので、確実に、すなわち一定流量で、離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給することができる。しかし、離型剤タンク44から離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給するのは、圧縮空気G2の圧力以外の手段でもよく、例えば、重力流れであっても、ポンプであってもよい。なお、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するためのガスG1は、空気でもよく、また、離型剤タンク44から離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給するための圧縮空気G2は、空気以外のガス、たとえば窒素等の不活性ガスであってもよい。これらのガスG1あるいは圧縮空気G2は、不図示のガス供給源あるいは圧縮空気供給源から送られる。
離型剤供給配管40には、離型剤噴霧ノズル30に供給される離型剤Aの流量を計測する流量センサ42が設置されている。ガス供給配管32には、離型剤噴霧ノズル30に供給されるガスG1の圧力を計測する圧力センサ34が設置されている。離型剤供給用圧縮空気配管46には、離型剤タンク44から離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給するための圧縮空気G2の圧力を計測する圧力センサ48が設置されている。なお、離型剤供給用圧縮空気配管46、圧力センサ48および圧縮空気供給源(不図示)などは加圧空気供給装置49を構成する。なお、圧縮空気供給源(不図示)は、コンプレッサやブロワでもよく、あるいは、他の設備から供給される加圧空気を貯留する加圧タンク、ボンベ等でもよい。そして、流量センサ42、圧力センサ34、圧力センサ48による計測値はケーブル92を介してコントローラ90に送信される。流量センサ42、圧力センサ34、圧力センサ48とコントローラ90とはケーブル92ではなく、無線で連結されてもよい。なお、コントローラ90は、加圧空気供給装置49、圧縮空気供給源等を含む離型剤噴霧装置1の運転を制御してもよい。さらに、コントローラ90は、専用のコントローラであっても、パソコンに組み込まれても、鋳型造型機のコントローラと一緒であっても、その他の装置あるいはシステムのコントローラと一緒であってもよく、鋳型造型機から遠隔の地に置かれていてもよい。
次に、図3を参照して、離型剤噴霧装置1の運転と不具合を検知する方法について説明する。図3は、離型剤Aの流量およびガスG1の圧力に基づき、離型剤AまたはガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知する方法の一例のフロー図である。なお、一のフロー図を(a)および(b)の2枚に分割し、接続する点を丸で囲んだ数字1〜5で示す。まず、圧縮空気供給源(不図示)を起動して離型剤供給用圧縮空気配管46を通じて、離型剤タンク44に圧縮空気G2を供給する。その際に離型剤供給用の圧力センサ48にて離型剤供給用圧縮空気配管46を流れる圧縮空気G2の圧力を計測し、コントローラ90に送信する。なお、離型剤タンク44に圧縮空気G2が供給されることにより、離型剤タンク44の内圧が上昇し、離型剤Aを押し出す。なお、離型剤供給用の圧力センサ48を備えず、圧縮空気G2の圧力を計測しなくてもよい。離型剤タンク44は、液体の離型剤Aを貯留し、圧縮空気により離型剤Aを排出すればよく、公知の構造でよい。離型剤Aは、離型剤タンク44から離型剤供給配管40を流れて離型剤噴霧ノズル30に至る。これまでが、離型剤Aを供給する工程S10である。その際に流量センサ42にて離型剤供給配管40を流れる離型剤Aの流量を計測し、コントローラ90に送信する(工程S20)。また、圧縮空気供給源(不図示)は、コンプレッサやブロワでもよく、あるいは、他の設備から供給される加圧空気を貯留する加圧タンク、ボンベ等でもよい。
また、ガス供給源(不図示)を起動してガス供給配管32を通じて離型剤噴霧ノズル30に、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給する。これが、離型剤噴霧ガス供給工程S30である。その際に、圧力センサ34にてガス供給配管32を流れるガスG1の圧力を計測し、コントローラ90に送信する(工程S40)。なお、ガス供給源は、コンプレッサやブロワでもよく、あるいは、他の設備から供給される加圧空気を貯留する加圧タンク、ボンベ等でもよい。また、ガス供給源は圧縮空気供給源(不図示)と共通であってもよい。共通の場合は、離型剤供給用圧縮空気配管46に減圧弁等(不図示)を設置して、離型剤タンク44に供給する圧縮空気G2の圧力を、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するためのガスG1の圧力より低くする。
離型剤噴霧ノズル30に、所定流量の離型剤Aと、所定圧力のガスG1とが供給されることにより、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aがパターンプレート20に向けて噴霧される。なお、パターンプレート20に向けて噴霧されるという場合、離型剤噴霧ノズル30から噴霧される離型剤Aの方向が必ずしもパターンプレート20を向いている必要はなく、噴霧された離型剤Aがパターンプレート20に達すればよい。例えば、造型空間内を漂ってから、パターンプレート20上に落下することでもよい。
ここで、ガスG1の圧力に基づき、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知する方法について説明する。先ず、圧力センサ34にて計測したガスG1の圧力が所定の範囲内であるかを判定する(工程S100)。所定の圧力範囲は、例えば、0.1Mpa〜0.2Mpaであるが、離型剤噴霧ノズル30の構造や離型剤Aの粘性等の性状により異なる。ガスG1の圧力が所定の範囲内であれば、正常であるとされる(工程110)。
ガスG1の圧力が所定の範囲より小さければ、ガス供給源、離型剤噴霧ノズル30、ガス供給配管32等の離型剤噴霧装置1の機器の不具合が予測される。そこで、典型的には作業員により不具合の調査が行われ(工程S120)、その結果に基づき、不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
ガスG1の圧力が所定の範囲より大きければ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりが想定される(工程S130)。そこで、目詰まりの不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
また、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するのか否かを判定する(工程S200)。コントローラ90が噴霧させる指令を送信しているか否かを判定する。あるいは、作業員がタッチパネルで選択してもよい。噴霧する場合には、流量センサ42にて計測した離型剤Aの流量が所定の流量以上であるかを判定する(工程S220)。所定の流量は、パターンプレート20の大きさ、離型剤Aの性状や離型剤噴霧ノズル30の構造等により異なる。離型剤Aが所定流量以上流れている場合、噴霧指令時にのみ流量が検知されるかを判定する(工程S240)。噴霧指令時にのみ流量が検知されれば、正常であるとされる(工程S260)。
工程S200で噴霧しないと判定された場合、流量センサ42にて離型剤Aの流量が検知されるかを判定する(工程S202)。離型剤Aの流量が検知されなければ(工程S202で「なし」)、正常であるとされる(工程S210)。離型剤Aの流量が検知されると、液漏れ箇所の確認を行う(工程S204)。たとえば、作業員が離型剤噴霧装置1を目視により点検する。液漏れ箇所があったならば、液漏れ箇所の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。液漏れ箇所が無いのであれば、測定機器類や離型剤供給配管40等の不具合を調査する(工程S206)。調査結果に基づき、不具合のある測定機器類や離型剤供給配管40等の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
工程S220で離型剤Aの流量が所定の流量未満と判定された場合、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合、例えば離型剤供給配管40を開閉する開閉弁や離型剤供給用圧縮空気配管46を開閉する開閉弁の不具合、の有無を判定する(工程S222)。離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合があると判定されると、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合がないと判定されると、測定機器類の不具合が想定されるので、調査が行われる(工程S224)。そして、測定機器類の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
工程S240で噴霧指令時以外に離型剤Aの流量が検知されれば、離型剤噴霧ノズル30あるいは離型剤供給配管40等からの液漏れが想定される(工程S242)。そこで、離型剤噴霧ノズル30、離型剤供給配管40等の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
工程S290で不具合を修正する処置が行われると、再び、離型剤Aを供給する工程S10から繰り返される。また、図3には示されていないが、離型剤Aの流量およびガスG1の圧力に基づく判定で、いずれも正常と判定されたとき、すなわち工程S110および工程S210またはS260となったときにも、離型剤Aを供給する工程S10から繰り返される。なお、必要に応じて、離型剤Aの噴霧時間を調整(工程S300)してもよい。
離型剤Aの噴霧時間を調整する工程S300では、流量センサ42にて計測した離型剤Aの流量に基づき、噴霧時間を調整する。すなわち、パターンプレート20に噴霧される離型剤Aの量は、離型剤Aの流量に噴霧時間を乗じた値となる。そこで、適切な量の離型剤Aがパターンプレート20に噴霧されるように、噴霧時間を調整する。
これまで説明した工程等は、基本的にコントローラ90で行われる。ただし、工程S120、工程S204、工程S206、工程224、工程S242および処置(工程S290)は、基本的に作業員により行われる。しかし、これらに限定されるものではない。
このように、離型剤噴霧装置1では、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量または圧力センサ34により計測された離型剤を噴霧するためのガスG1の圧力から、離型剤Aの漏れ、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器(測定機器を含む)の不具合を検知できるので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
図3では、不具合の検知は、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量または圧力センサ34により計測された離型剤を噴霧するためのガスG1の圧力から判定しているが、離型剤Aの流量とガスG1の圧力の両方を用いて判定することも可能であり、より信頼性の高い不具合の検知を行うこともできる。たとえば、離型剤Aを噴霧しようとする時に、ガスG1の圧力は正常であるが、離型剤Aの流量が検知されない場合には、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりではなく、離型剤供給配管40等の不具合が想定される。
図3では、不具合の検知は、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量および圧力センサ34により計測された離型剤を噴霧するためのガスG1の圧力に基づき判定しているが、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量だけに基づき不具合を判定しても、ガスG1の圧力だけに基づき不具合を判定してもよい。すなわち、図2に示す離型剤噴霧装置1において、流量計42を備えていなくても、あるいは、圧力計34を備えていなくてもよい。
図4を参照して、離型剤Aが噴霧されていることを検知するレーザセンサ60をさらに備える離型剤噴霧装置1の例について説明する。図4に示す鋳型造型機では、鋳枠10に盛枠12を重ねる際に、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧する。すなわち、盛枠12を下方に移動しながら、よって、離型剤噴霧ノズル30を下方に移動しながら、離型剤Aを噴霧する。このように、離型剤噴霧ノズル30を下方に移動しながら離型剤Aを噴霧すると、一点から噴霧するより広い範囲に離型剤Aを噴霧することになり、パターンプレートの広い範囲により均一に離型剤を噴霧することができる。
そして、レーザセンサ60を、移動する盛枠12の外側で、盛枠12と鋳枠10との間に設置する。このように設置すると、レーザセンサ60のレンズに離型剤Aが付着しにくく、さらに付着しても除去し易い。レーザセンサ60は、噴霧された離型剤Aによりレーザの受光量が減少することにより、離型剤Aが噴霧されていることを検知することができる。よって、離型剤が適正に噴霧されていることを確認でき、パターンプレート20に離型剤Aが適正に噴霧されていることの信頼性が高くなる。なお、レーザセンサ60は、パターンプレート20および鋳枠10および盛枠12をスクイズ部材54の下方ではなく他の位置で重ね、ターンテーブル(不図示)にてスクイズ部材54の下方に移動する構成の鋳型造型機においては、離型剤噴霧ノズル30およびレーザセンサ60をターンテーブルの近傍に設置してもよい。また、レーザセンサ60は、盛枠12に設置されてもよく、設置場所は限定されない。
これまでは、離型剤供給用の圧縮空気G2により離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給し、離型剤噴霧ノズル30では、離型剤Aとは別に供給されて離型剤を噴霧するためのガスG1により離型剤Aが噴霧されるものとして説明した。しかし、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給することなく、離型剤供給用の圧縮空気G2により離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30から噴霧するようにしてもよい。この場合には、離型剤Aの漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、および、離型剤噴霧装置1の機器(測定機器を含む)の不具合は、流量センサ42で計測される離型剤Aの流量により検知される。さらにこの場合には、離型剤噴霧装置1は、ガス供給配管32、圧力センサ34等を備えていなくてもよい。
1 離型剤噴霧装置
10 鋳枠
12 盛枠
14 スリット
16 枠状フレーム
18 ガイドピン
20 パターンプレート
22 パターンキャリア
30 離型剤噴霧ノズル
32 ガス供給配管
34 圧力センサ
40 離型剤供給配管
42 流量センサ
44 離型剤タンク
46 離型剤供給用圧縮空気配管
48 圧力センサ
49 加圧空気供給装置
50 鋳物砂ホッパ
52 鋳物砂充填ノズル
54 スクイズ部材
56 砂供給シュート
60 レーザセンサ
90 コントローラ
92 ケーブル
A 離型剤
G1 離型剤を噴霧するためのガス
G2 圧縮空気
S 鋳物砂
本発明は、鋳枠およびパターンプレートを用いて鋳物砂から鋳型を造型する鋳型造型機において、パターンプレートに向けて離型剤を噴霧する離型剤噴霧装置および離型剤噴霧方法に関する。
従来、鋳型造型機において、パターンプレートに鋳物砂が付着しないようにするために、また、抜型性を維持するために鋳型造型機により形成される鋳型造型空間に離型剤を噴霧することは知られている(例えば、特許文献1参照)。
離型剤を噴霧する際に、噴霧量が適正でないと、しみつき(パターンプレートに鋳物砂が付着する現象)や抜型不良などの問題が発生する。したがって、噴霧量の管理は重要である。しかし従来、噴霧量の調整は目視で行われるのが一般的であり、噴霧ノズルの詰まり等により噴霧量が変化しても気付かないことが多いという問題があった。また、装置の配管経路や離型剤スプレーからの離型剤漏れがあっても気付かないことがあるという問題があった。
そこで、本発明は、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知し、離型剤の噴霧量を適正に管理することにより、しみつきや抜型不良などの発生を防止することができる離型剤噴霧装置および離型剤噴霧方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の離型剤噴霧装置は、例えば図1および図2に示すように、鋳枠10およびパターンプレート20を用いて鋳物砂Sから鋳型を造型する鋳型造型機において、パターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧装置1であって、パターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧ノズル30と、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給する離型剤供給配管40と、離型剤供給配管40を流れる離型剤Aの流量を計測する流量センサ42と、計測された流量から、離型剤Aの漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知するコントローラ90とを備える。
このように構成すると、離型剤噴霧ノズルに離型剤を供給する離型剤供給配管を流れる離型剤の流量を計測する流量センサと、計測された流量から、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知するコントローラとを備えるので、離型剤の流量に基づき、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合が検知でき、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第2の態様に係る離型剤噴霧装置は、例えば、図2に示すように、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給するガス供給配管32と、ガス供給配管32を流れるガスG1の圧力を計測する圧力センサ34とをさらに備え、コントローラ90は、計測された圧力から、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知する。このように構成すると、離型剤を噴霧するためのガスを供給するガス供給配管を流れるガスの圧力を計測する圧力センサと、計測された圧力から、ガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知するコントローラとを備えるので、ガスの圧力に基づき、ガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合が検知でき、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第3の態様に係る離型剤噴霧装置は、例えば、図2に示すように、離型剤Aを貯蔵する離型剤タンク44と、離型剤タンクAに加圧空気G2を供給し、離型剤Aを離型剤供給配管40を通じて離型剤噴霧ノズル30に供給する加圧空気供給装置49とをさらに備える。このように構成すると、離型剤を貯蔵する離型剤タンクと、離型剤タンクに加圧空気を供給し、離型剤を離型剤供給配管を通じて離型剤噴霧ノズルに供給する加圧空気供給装置とをさらに備えるので、加圧空気により離型剤を確実に離型剤噴霧ノズルに供給することができる。
また、本発明の第4の態様に係る離型剤噴霧装置では、コントローラ90は、計測された流量に基づいて、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aが噴霧される時間を調整する。このように構成すると、計測された流量に基づいて離型剤噴霧ノズルから離型剤が噴霧される時間をコントローラが調整するので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第5の態様に係る離型剤噴霧装置は、例えば図4に示すように、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aが噴霧されていることを検知するためのレーザセンサ60をさらに備える。このように構成すると、離型剤噴霧ノズルから離型剤が噴霧されていることを検知するためのレーザセンサをさらに備えるので、離型剤が適正に噴霧されていることを確認できる。
上記課題を解決するために、本発明の第6の態様の離型剤噴霧方法は、例えば図1、図2および図3に示すように、鋳枠10およびパターンプレート20を用いて鋳物砂Sから鋳型を造型する鋳型造型機において、離型剤噴霧ノズル30からパターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧方法であって、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給する工程S10と、離型剤噴霧ノズル30からパターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する工程S50と、離型剤Aが供給される流量を計測する工程S20と、計測された流量から、離型剤Aの漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤Aを噴霧するための機器の不具合を検知する工程S202、S204、S206、S220,S222、S224、S242とを備える。
このように構成すると、離型剤噴霧ノズルからパターンプレート20に向けて噴霧される離型剤が供給される流量を計測し、計測された流量から、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤を噴霧するための機器の不具合を検知する工程とを備えるので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第7の態様に係る離型剤噴霧方法は、例えば図2および図3に示すように、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給する工程S30と、ガスG1の圧力を計測する工程S40と、計測された圧力から、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、機器の不具合を検知する工程S100、S120、S130とを備える。このように構成すると、離型剤を噴霧するためのガスを供給するガス供給配管を流れるガスの圧力を計測し、計測された圧力から、ガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知するので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第8の態様に係る離型剤噴霧方法は、例えば図3に示すように、計測された流量に基づいて、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aが噴霧される時間を調整する工程S300をさらに備える。このように構成すると、計測された流量に基づいて離型剤噴霧ノズルから離型剤が噴霧される時間を調整する工程を備えるので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
また、本発明の第9の態様に係る離型剤噴霧方法は、例えば図4に示すように、噴霧する工程S50において、離型剤噴霧ノズル30を移動しながら、離型剤噴霧ノズル30からパターンプレート20に向けて離型剤Aを噴霧する。このように構成すると、離型剤噴霧ノズルを移動しながらパターンプレートに向けて離型剤を噴霧するので、パターンプレートの広い範囲に離型剤を噴霧することができる。
本発明によれば、離型剤の流量に基づき、離型剤の漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合が検知でき、離型剤の噴霧量を適正に管理することにより、しみつきや抜型不良などの発生を防止することができる。
図1は、離型剤噴霧装置を備えた鋳型造型機の一例の要部を示す側面断面図である。
図2は、離型剤噴霧装置の離型剤および離型剤を噴霧するためのガスを供給するための一実施形態のブロック図である。
図3は、離型剤の流量および離型剤を噴霧するためのガスの圧力に基づき、離型剤またはガスの漏れ、離型剤噴霧ノズルの目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置の機器の不具合を検知する方法の一例のフロー図である。なお、一のフロー図を(a)および(b)の2枚に分割して示す。
図4は、図1に示す鋳型造型機の変形例として、離型剤噴霧ノズルを移動しながら離型剤を噴霧すると共に、離型剤が噴霧されていることを検知するレーザセンサを備える鋳型造型機の要部を示す側面断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。図1を参照して、鋳型造型機の鋳型を造型する鋳枠10、パターンプレート20等について説明する。図1は、鋳枠10、盛枠12、枠状フレーム16、パターンプレート20、パターンキャリア22、スクイズ部材54、鋳物砂ホッパ50等を含む鋳型造型機の要部の側面断面図である。なお本書では、パターンプレート20には、上下鋳型を同時に造型するためのマッチプレートも含むものとする。そして、以下の説明では、鋳枠付き鋳型を製造する鋳型造型機を例として説明するが、本発明は、抜枠造型機にも同様に用いることができる。
鋳型造型機では、パターンプレート20はパターンキャリア22に載置される。パターンプレート20の外周を包囲する枠状フレーム16の上に、鋳枠10および盛枠12が順に重ねられる。枠状フレーム16は、パターンキャリア22に形成された穴部に挿入されるガイドピン18を介して、図示されない昇降シリンダにより昇降されるようになっている。盛枠12の内部にスクイズ部材54が上方から挿入される。パターンプレート20、枠状フレーム16、鋳枠10、盛枠12およびスクイズ部材54で囲まれた空間が造型空間となる。
盛枠12の上部に鋳物砂ホッパ50が配置される。鋳物砂ホッパ50は、鋳物砂Sを貯留し、下部に設けられた鋳物砂充填ノズル52を通じて、造型空間内に鋳物砂Sを供給する。なお、鋳物砂ホッパ50には、上部に設けられた砂供給シュート56を介して鋳物砂Sが供給される。
造型空間に鋳物砂Sが充填されると、鋳物砂ホッパ50およびスクイズ部材54が下降し、鋳枠10の内部空間にてパターンプレート20との間で鋳物砂Sをスクイズし、鋳型(不図示)を造型する。その際に、枠状フレーム16が下降することにより、鋳物砂Sがパターンプレート20側からもスクイズされ、均一にスクイズされた鋳型となる。その後、鋳物砂ホッパ50およびスクイズ部材54が上昇し、鋳型とスクイズ部材54が分離され、さらに盛枠12も上昇する。また、枠状フレーム16を上昇させ、鋳型とパターンプレート20が分離された後、鋳枠10がさらに上昇される。造型された鋳型は、鋳枠10に保持された状態で次の工程に送られる。
鋳型とパターンプレート20とを分離し易くするために、図1の状態でパターンプレート20上に離型剤Aが噴霧される。離型剤Aは、油性、水溶性など、市販の離型剤でよい。本実施の形態では、盛枠12を貫通するスリット14を形成し、スリット14に離型剤噴霧ノズル30を挿入し、離型剤噴霧ノズル30から造型空間内に離型剤Aを噴霧する。パターンプレート20、枠状フレーム16、鋳枠10、盛枠12およびスクイズ部材54で囲まれた造型空間に離型剤Aを噴霧するので、大気中に飛散することが防止され、環境的にも経済的にも好的である。また、離型剤噴霧ノズル30が盛枠12に設置されるので、鋳型の造型時、すなわち、スクイズ部材54で鋳物砂Sをスクイズする際に障害にならない。なお図では、離型剤噴霧ノズル30は水平に設置されているが、パターンプレート20に向けて下方に傾斜されてもよい。また、離型剤噴霧ノズル30の設置場所は、上記には限られず、たとえばスクイズ部材54など、パターンプレート20に離型剤Aを噴霧できる場所であればよい。
図2に、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧する離型剤噴霧装置1のブロック図の一例を示す。離型剤噴霧装置1は、離型剤噴霧ノズル30に加え、離型剤Aを貯蔵する離型剤タンク44と、離型剤Aの噴霧をコントロールするコントローラ90を有する。また、離型剤噴霧装置1は、離型剤タンク44から離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給する離型剤供給配管40、離型剤Aを噴霧するためのガスG1を離型剤噴霧ノズル30に供給するガス供給配管32を有する。また、離型剤タンク44から離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給するための加圧空気G2を離型剤タンク44に供給する離型剤供給用加圧空気配管46を備える。このように、加圧空気G2を離型剤タンク44に供給して圧力で離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給するので、確実に、すなわち一定流量で、離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給することができる。しかし、離型剤タンク44から離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給するのは、加圧空気G2の圧力以外の手段でもよく、例えば、重力流れであっても、ポンプであってもよい。なお、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するためのガスG1は、空気でもよく、また、離型剤タンク44から離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給するための加圧空気G2は、空気以外のガス、たとえば窒素等の不活性ガスであってもよい。これらのガスG1あるいは加圧空気G2は、不図示のガス供給源あるいは加圧空気供給源から送られる。
離型剤供給配管40には、離型剤噴霧ノズル30に供給される離型剤Aの流量を計測する流量センサ42が設置されている。ガス供給配管32には、離型剤噴霧ノズル30に供給されるガスG1の圧力を計測する圧力センサ34が設置されている。離型剤供給用加圧空気配管46には、離型剤タンク44から離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを供給するための加圧空気G2の圧力を計測する圧力センサ48が設置されている。なお、離型剤供給用加圧空気配管46、圧力センサ48および加圧空気供給源(不図示)などは加圧空気供給装置49を構成する。なお、加圧空気供給源(不図示)は、コンプレッサやブロワでもよく、あるいは、他の設備から供給される加圧空気を貯留する加圧タンク、ボンベ等でもよい。そして、流量センサ42、圧力センサ34、圧力センサ48による計測値はケーブル92を介してコントローラ90に送信される。流量センサ42、圧力センサ34、圧力センサ48とコントローラ90とはケーブル92ではなく、無線で連結されてもよい。なお、コントローラ90は、加圧空気供給装置49、加圧空気供給源等を含む離型剤噴霧装置1の運転を制御してもよい。さらに、コントローラ90は、専用のコントローラであっても、パソコンに組み込まれても、鋳型造型機のコントローラと一緒であっても、その他の装置あるいはシステムのコントローラと一緒であってもよく、鋳型造型機から遠隔の地に置かれていてもよい。
次に、図3を参照して、離型剤噴霧装置1の運転と不具合を検知する方法について説明する。図3は、離型剤Aの流量およびガスG1の圧力に基づき、離型剤AまたはガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知する方法の一例のフロー図である。なお、一のフロー図を(a)および(b)の2枚に分割し、接続する点を丸で囲んだ数字1〜5で示す。まず、加圧空気供給源(不図示)を起動して離型剤供給用加圧空気配管46を通じて、離型剤タンク44に加圧空気G2を供給する。その際に離型剤供給用の圧力センサ48にて離型剤供給用加圧空気配管46を流れる加圧空気G2の圧力を計測し、コントローラ90に送信する。なお、離型剤タンク44に加圧空気G2が供給されることにより、離型剤タンク44の内圧が上昇し、離型剤Aを押し出す。なお、離型剤供給用の圧力センサ48を備えず、加圧空気G2の圧力を計測しなくてもよい。離型剤タンク44は、液体の離型剤Aを貯蔵し、加圧空気により離型剤Aを排出すればよく、公知の構造でよい。離型剤Aは、離型剤タンク44から離型剤供給配管40を流れて離型剤噴霧ノズル30に至る。これまでが、離型剤Aを供給する工程S10である。その際に流量センサ42にて離型剤供給配管40を流れる離型剤Aの流量を計測し、コントローラ90に送信する(工程S20)。また、加圧空気供給源(不図示)は、コンプレッサやブロワでもよく、あるいは、他の設備から供給される加圧空気を貯留する加圧タンク、ボンベ等でもよい。
また、ガス供給源(不図示)を起動してガス供給配管32を通じて離型剤噴霧ノズル30に、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給する。これが、離型剤噴霧ガス供給工程S30である。その際に、圧力センサ34にてガス供給配管32を流れるガスG1の圧力を計測し、コントローラ90に送信する(工程S40)。なお、ガス供給源は、コンプレッサやブロワでもよく、あるいは、他の設備から供給される加圧空気を貯留する加圧タンク、ボンベ等でもよい。また、ガス供給源は加圧空気供給源(不図示)と共通であってもよい。共通の場合は、離型剤供給用加圧空気配管46に減圧弁等(不図示)を設置して、離型剤タンク44に供給する加圧空気G2の圧力を、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するためのガスG1の圧力より低くする。
離型剤噴霧ノズル30に、所定流量の離型剤Aと、所定圧力のガスG1とが供給されることにより、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aがパターンプレート20に向けて噴霧される。なお、パターンプレート20に向けて噴霧されるという場合、離型剤噴霧ノズル30から噴霧される離型剤Aの方向が必ずしもパターンプレート20を向いている必要はなく、噴霧された離型剤Aがパターンプレート20に達すればよい。例えば、造型空間内を漂ってから、パターンプレート20上に落下することでもよい。
ここで、ガスG1の圧力に基づき、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器の不具合を検知する方法について説明する。先ず、圧力センサ34にて計測したガスG1の圧力が所定の範囲内であるかを判定する(工程S100)。所定の圧力範囲は、例えば、0.1Mpa〜0.2Mpaであるが、離型剤噴霧ノズル30の構造や離型剤Aの粘性等の性状により異なる。ガスG1の圧力が所定の範囲内であれば、正常であるとされる(工程110)。
ガスG1の圧力が所定の範囲より小さければ、ガス供給源、離型剤噴霧ノズル30、ガス供給配管32等の離型剤噴霧装置1の機器の不具合が予測される。そこで、典型的には作業員により不具合の調査が行われ(工程S120)、その結果に基づき、不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
ガスG1の圧力が所定の範囲より大きければ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりが想定される(工程S130)。そこで、目詰まりの不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
また、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧するのか否かを判定する(工程S200)。コントローラ90が噴霧させる指令を送信しているか否かを判定する。あるいは、作業員がタッチパネルで選択してもよい。噴霧する場合には、流量センサ42にて計測した離型剤Aの流量が所定の流量以上であるかを判定する(工程S220)。所定の流量は、パターンプレート20の大きさ、離型剤Aの性状や離型剤噴霧ノズル30の構造等により異なる。離型剤Aが所定流量以上流れている場合、噴霧指令時にのみ流量が検知されるかを判定する(工程S240)。噴霧指令時にのみ流量が検知されれば、正常であるとされる(工程S260)。
工程S200で噴霧しないと判定された場合、流量センサ42にて離型剤Aの流量が検知されるかを判定する(工程S202)。離型剤Aの流量が検知されなければ(工程S202で「なし」)、正常であるとされる(工程S210)。離型剤Aの流量が検知されると、液漏れ箇所の確認を行う(工程S204)。たとえば、作業員が離型剤噴霧装置1を目視により点検する。液漏れ箇所があったならば、液漏れ箇所の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。液漏れ箇所が無いのであれば、測定機器類や離型剤供給配管40等の不具合を調査する(工程S206)。調査結果に基づき、不具合のある測定機器類や離型剤供給配管40等の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
工程S220で離型剤Aの流量が所定の流量未満と判定された場合、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合、例えば離型剤供給配管40を開閉する開閉弁や離型剤供給用加圧空気配管46を開閉する開閉弁の不具合、の有無を判定する(工程S222)。離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合があると判定されると、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。離型剤噴霧ノズル30の目詰まりや離型剤噴霧装置1の機器の不具合がないと判定されると、測定機器類の不具合が想定されるので、測定機器類の調査が行われる(工程S224)。そして、測定機器類の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
工程S240で噴霧指令時以外に離型剤Aの流量が検知されれば、離型剤噴霧ノズル30あるいは離型剤供給配管40等からの液漏れが想定される(工程S242)。そこで、離型剤噴霧ノズル30、離型剤供給配管40等の不具合を修正する処置が行われる(工程S290)。
工程S290で不具合を修正する処置が行われると、再び、離型剤Aを供給する工程S10から繰り返される。また、図3には示されていないが、離型剤Aの流量およびガスG1の圧力に基づく判定で、いずれも正常と判定されたとき、すなわち工程S110および工程S210またはS260となったときにも、離型剤Aを供給する工程S10から繰り返される。なお、必要に応じて、離型剤Aの噴霧時間を調整(工程S300)してもよい。
離型剤Aの噴霧時間を調整する工程S300では、流量センサ42にて計測した離型剤Aの流量に基づき、噴霧時間を調整する。すなわち、パターンプレート20に噴霧される離型剤Aの量は、離型剤Aの流量に噴霧時間を乗じた値となる。そこで、適切な量の離型剤Aがパターンプレート20に噴霧されるように、噴霧時間を調整する。
これまで説明した工程等は、基本的にコントローラ90で行われる。ただし、工程S120、工程S204、工程S206、工程224、工程S242および処置(工程S290)は、基本的に作業員により行われる。しかし、これらに限定されるものではない。
このように、離型剤噴霧装置1では、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量または圧力センサ34により計測された離型剤を噴霧するためのガスG1の圧力から、離型剤Aの漏れ、ガスG1の漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、あるいは、離型剤噴霧装置1の機器(測定機器を含む)の不具合を検知できるので、離型剤の噴霧量を適正に管理することができる。
図3では、不具合の検知は、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量または圧力センサ34により計測された離型剤を噴霧するためのガスG1の圧力から判定しているが、離型剤Aの流量とガスG1の圧力の両方を用いて判定することも可能であり、より信頼性の高い不具合の検知を行うこともできる。たとえば、離型剤Aを噴霧しようとする時に、ガスG1の圧力は正常であるが、離型剤Aの流量が検知されない場合には、離型剤噴霧ノズル30の目詰まりではなく、離型剤供給配管40等の不具合が想定される。
図3では、不具合の検知は、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量および圧力センサ34により計測された離型剤Aを噴霧するためのガスG1の圧力に基づき判定しているが、流量センサ42により計測された離型剤Aの流量だけに基づき不具合を判定しても、ガスG1の圧力だけに基づき不具合を判定してもよい。すなわち、図2に示す離型剤噴霧装置1において、流量センサ42を備えていなくても、あるいは、圧力センサ34を備えていなくてもよい。
図4を参照して、離型剤Aが噴霧されていることを検知するレーザセンサ60をさらに備える離型剤噴霧装置1の例について説明する。図4に示す鋳型造型機では、鋳枠10に盛枠12を重ねる際に、離型剤噴霧ノズル30から離型剤Aを噴霧する。すなわち、盛枠12を下方に移動しながら、よって、離型剤噴霧ノズル30を下方に移動しながら、離型剤Aを噴霧する。このように、離型剤噴霧ノズル30を下方に移動しながら離型剤Aを噴霧すると、一点から噴霧するより広い範囲に離型剤Aを噴霧することになり、パターンプレート20の広い範囲により均一に離型剤を噴霧することができる。
そして、レーザセンサ60を、移動する盛枠12の外側で、盛枠12と鋳枠10との間に設置する。このように設置すると、レーザセンサ60のレンズに離型剤Aが付着しにくく、さらに付着しても除去し易い。レーザセンサ60は、噴霧された離型剤Aによりレーザの受光量が減少することにより、離型剤Aが噴霧されていることを検知することができる。よって、離型剤Aが適正に噴霧されていることを確認でき、パターンプレート20に離型剤Aが適正に噴霧されていることの信頼性が高くなる。なお、レーザセンサ60は、パターンプレート20および鋳枠10および盛枠12をスクイズ部材54の下方ではなく他の位置で重ね、ターンテーブル(不図示)にてスクイズ部材54の下方に移動する構成の鋳型造型機においては、離型剤噴霧ノズル30およびレーザセンサ60をターンテーブルの近傍に設置してもよい。また、レーザセンサ60は、盛枠12に設置されてもよく、設置場所は限定されない。
これまでは、離型剤供給用の加圧空気G2により離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30に供給し、離型剤噴霧ノズル30では、離型剤Aとは別に供給されて離型剤Aを噴霧するためのガスG1により離型剤Aが噴霧されるものとして説明した。しかし、離型剤噴霧ノズル30に離型剤Aを噴霧するためのガスG1を供給することなく、離型剤供給用の加圧空気G2により離型剤Aを離型剤噴霧ノズル30から噴霧するようにしてもよい。この場合には、離型剤Aの漏れ、離型剤噴霧ノズル30の目詰まり、および、離型剤噴霧装置1の機器(測定機器を含む)の不具合は、流量センサ42で計測される離型剤Aの流量により検知される。さらにこの場合には、離型剤噴霧装置1は、ガス供給配管32、圧力センサ34等を備えていなくてもよい。
1 離型剤噴霧装置
10 鋳枠
12 盛枠
14 スリット
16 枠状フレーム
18 ガイドピン
20 パターンプレート
22 パターンキャリア
30 離型剤噴霧ノズル
32 ガス供給配管
34 圧力センサ
40 離型剤供給配管
42 流量センサ
44 離型剤タンク
46 離型剤供給用加圧空気配管
48 圧力センサ
49 加圧空気供給装置
50 鋳物砂ホッパ
52 鋳物砂充填ノズル
54 スクイズ部材
56 砂供給シュート
60 レーザセンサ
90 コントローラ
92 ケーブル
A 離型剤
G1 離型剤を噴霧するためのガス
G2 加圧空気
S 鋳物砂