JP2019174647A - 眼鏡用レンズ - Google Patents
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また、プラスの球面度数が設定された眼鏡用レンズでは、度数の絶対値が大きくなると、レンズ中央部が厚くなり、レンズを眼鏡フレームに枠入れした際、レンズ中央部が前後方向にはみ出して見栄えが悪くなってしまう問題がある。
このような問題を解消するため、従来、度数の絶対値が大きい眼鏡用レンズにおいては、レンズの前面若しくは後面の少なくとも何れか一方の面を非球面化したり、またレンズの素材として屈折率の高い材料を用いるなどしてレンズの薄型化が図られていた。しかしながら、その効果は必ずしも十分なものではなく、更なる薄型化が望まれていた。
しかしながら、このようなフレネルレンズ100を眼鏡用レンズに適用しようとしても、図12に示すように、眼鏡フレーム10のレンズ保持枠12は所定の曲率で湾曲しており、枠入れの際にレンズ縁部の全周をレンズ保持枠12にて保持させるためには、レンズを厚くせざるを得ず薄型化の効果が十分に発揮されない。また枠入れ後には、レンズ100の一部が眼鏡フレーム10の前方にはみ出し、見栄えが悪くなってしまう問題が生じてしまう。
前記分割レンズ面は、前記フレネル形状が形成されたレンズの面全体に亘って所定の曲率で設定されたユニットカーブの曲面に沿って配置されていることを特徴とする。
加えて、本発明の眼鏡用レンズは、フレネル形状のレンズ面全体が所定の曲率でカーブしているため、湾曲している眼鏡フレームに枠入れした際、レンズのはみ出しを抑えて見栄えを良くすることができる。
一方、段差の高さを過度に小さくしても外観向上の効果が飽和する一方、製造コストの増加を招くのみであることから、段差の高さは0.001mm以上とするのが望ましい。段差の高さについて、より望ましい範囲は0.003mm〜0.03mmである。
フレネル形状における段差部分は、レンズメータを用いた屈折力の測定結果に影響を及ぼす場合がある。レンズメータを用いた測定では、測定光源から照射される測定光がレンズ光学中心に来るように位置合わせがなされる。このときレンズ光学中心を通る測定光の光束がΦ4mm程であることを考慮すれば、レンズ光学中心を中心とする直径5mmのレンズ中心領域を段差の無い球面形状とし、レンズ中心領域よりも外側の領域を実質的なフレネル形状領域とすることで、屈折力測定時における段差の影響を排除しつつ、レンズの薄型化を図ることができる。
本例では、レンズ1の光学中心O(後面2では基点O1、前面3では基点O2)を通る前後方向の軸をz軸とし、レンズ1の後方に向かう方向をz軸の正方向とする。すなわち、z軸はレンズ1の光軸に一致する。
z=r2/(R1+(R1 2−Kr2)1/2) …式(i)
式(i)のrは、z軸からの距離である。すなわち、後面2では基点O1を中心として、z軸に直交する左右方向、上下方向の軸をそれぞれx軸、y軸とする直交座標系を考えた場合、r=(x2+y2)1/2である。R1は面の頂点における曲率半径、Kは1、である。
z=r2/(R2+(R2 2−Kr2)1/2) …式(ii)
式(ii)のrは、上記式(i)と同様z軸からの距離である。R2は面の頂点における曲率半径、Kは1、である。なお、レンズ1はマイナスレンズであるためR1<R2である。
z=r2/(R2+(R2 2−Kr2)1/2)+δ …式(iii)
式(iii)のδはz軸方向のシフト量である。
面屈折力=(n−1)×1000×ρ2=(n−1)×1000/R2 …式(iv)
本例では、レンズ1の前面3を構成するそれぞれの分割レンズ面30が、所定の面屈折力を有しており、前面全体が曲率半径R2の1つの連続した球面で構成された従来の単焦点レンズと略同等の光学特性が発揮されるように構成されている。
ここで、枠入れされる眼鏡フレーム10におけるレンズ保持枠12の湾曲を考慮すれば、ユニットカーブuの曲率ρ3は0.0009〜0.0191(曲率半径R3は52.3mm〜1053mm)の範囲内とするのが望ましい。
図4に示すように、本発明者らが眼の焦点距離と絞り径に近いカメラレンズ75を使って、レンズ1を通して得られたlogMAR視力表などの視力表76の解像度を評価したところ、段差40の高さhが0.1mm以下であれば、フレネル形状を有していない通常のレンズと同等の結果が得られたことから、段差40の高さhを0.1mm以下とすれば段差40を実質的に視認されないようにすることができる。
分割レンズ面30をフラットな形状で構成した場合でも、各分割レンズ面30に入射した光線はプリズム効果で屈折する。このため、段差の間隔pが小さい(幅の狭い)分割レンズ面30であれば、フラットな形状でも曲面の場合と略同様の面屈折力が発揮され得る。但し、段差の間隔pが大きくなると、本来の曲面の場合の屈折位置とのずれが大きくなる。このため、段差の間隔pが3mm以上ある場合、分割レンズ面30は曲面で構成することが望ましい。
処方度数が−6.00Dの単焦点レンズにおいて、前面をフレネル形状としたレンズ42(実施例)と、前面を通常の球面形状としたレンズ42a,42b(ともに比較例)を作製し、レンズ縁部の厚みを評価した。
レンズ42のレンズデータは以下の通りである。
処方度数(S度数) −6.00D
屈折率n 1.523
外径 Φ75mm
レンズ中心厚 1.1mm
分割レンズ面の面屈折力 1.00D(曲率ρ2=0.0019)
分割レンズ面の形状 曲面
ユニットカーブ 3.00D(曲率ρ3=0.0057)
固定要素 段差の高さ(0.003mm)
またレンズ42は、前面を3.0Dの球面形状としたレンズ42bに対してレンズ縁部の厚みが34.3%減少している。例えば、レンズ42bにおいて、レンズ42と同等の厚みを実現しようとすれば、屈折率1.76に相当するレンズ素材が必要である。
このようにフレネル形状を備えたレンズ42によれば、従来のレンズ42a,42bに比べレンズの縁厚を大幅に薄くすることが可能である。
フレネル形状における段差40部分は、レンズメータを用いた屈折力の測定結果に影響を及ぼす場合がある。レンズメータを用いた測定では、測定光源から照射される測定光がレンズ光学中心Oに来るように位置合わせがなされる。このときレンズ光学中心Oを通る測定光の光束がΦ4mm程であることを考慮すれば、レンズ光学中心Oを中心とする直径5mmのレンズ中心領域Mを段差40の無い球面形状とし、レンズ中心領域Mよりも外側の領域を実質的なフレネル形状領域とすることで、屈折力測定時における段差40の影響を排除しつつ、レンズの薄型化を図ることができる。なお、段差40の無い球面形状の領域は、レンズ光学中心Oを中心とする直径5〜20mmの範囲内で設定することが望ましい。
図7に示すレンズ50は、プラスの球面度数が設定された単焦点のプラスレンズである。レンズ50の後面2は、上記式(i)で定義される曲率半径R1の球面形状を有している。一方、レンズ50の前面3は、光学中心Oが通るz軸を中心として同心円状に分割された複数の分割レンズ面60と、隣接する分割レンズ面60同士を光軸と略平行な方向で接続する段差70と、を備えたフレネル形状に形成されている。
このように各分割レンズ面61〜67が配置されたレンズ50では、レンズ50の前面3の全体が、所定の面屈折力を得るための曲率ρ2(図7中の2点鎖線s参照)よりも、浅い曲率(曲率ρ3)のユニットカーブuに沿って形成されているため、従来のプラスレンズに比べてレンズ周縁部で所定の厚みを確保しつつレンズ中央部の厚みを薄くすることができる。
処方度数が5.00Dの単焦点レンズにおいて、レンズ前面をフレネル形状としたレンズ72(実施例)と、前面を通常の球面形状としたレンズ72a,72b(ともに比較例)を作製し、レンズ中央部の厚みを評価した。
レンズ72のレンズデータは以下の通りである。
処方度数(S度数) 5.00D
屈折率n 1.523
外径 Φ75mm
レンズ縁厚 1.0mm
分割レンズ面の面屈折力 6.00D(曲率ρ2=0.0115)
分割レンズ面の形状 曲面
ユニットカーブ 4.00D(曲率ρ3=0.0076)
固定要素 段差の間隔(0.03mm)
またレンズ72は、前面を面屈折力4.00Dの球面形状としたレンズ72bに対し、厚みが36.4%減少している。例えば、レンズ72bにおいて、レンズ72と同等の厚みを実現しようとすれば、屈折率1.90に相当するレンズ素材が必要である。
このようにフレネル形状を備えたレンズ72によれば、従来のレンズ72a,72bに比べレンズ中央部の厚みを大幅に薄くすることが可能である。
図9に示すように、単焦点レンズにおいて、後面2をフレネル形状としたレンズ80(実施例)と、後面2を通常の球面形状としたレンズ80a,80b(ともに比較例)を作製し、レンズ縁部の厚みを評価した。
レンズ80のレンズデータは以下の通りである。
処方度数(S度数) −4.00D
屈折率n 1.523
外径 Φ75mm
レンズ中心厚 1.1mm
レンズ前面の面屈折力 3.00D
分割レンズ面の面屈折力 7.01D(曲率ρ1=0.0134)
分割レンズ面の形状 曲面
ユニットカーブ 5.00D(曲率ρ4=0.0096)
固定要素 段差の高さ(0.010mm)
上記レンズデータで示すように、ユニットカーブuの曲率ρ4は0.0096であり、分割レンズ面82の曲率ρ10.0134よりも浅く設定されている。
なお、処方度数(S度数)、屈折率n、外径、レンズ中心厚についてはレンズ80と同じである。
またレンズ80は、後面2を5.00Dの球面形状としたレンズ80bに対してレンズ縁部の厚みが40.0%減少している。例えば、レンズ80bにおいて、レンズ80と同等の厚みを実現しようとすれば、屈折率1.98に相当するレンズ素材が必要である。
このようにフレネル形状を備えたレンズ80によれば、従来のレンズ80a,80bに比べレンズの縁厚を大幅に薄くすることが可能である。
図10に示すように、単焦点レンズにおいて、後面2をフレネル形状としたレンズ90(実施例)と、後面2を通常の球面形状としたレンズ90a,90b(ともに比較例)を作製し、レンズ中央部の厚みを評価した。
レンズ90のレンズデータは以下の通りである。
処方度数(S度数) 3.00D
屈折率n 1.523
外径 Φ75mm
レンズ縁厚 1.0mm
レンズ前面の面屈折力 5.00D
分割レンズ面の面屈折力 2.09D(曲率ρ1=0.0040)
分割レンズ面の形状 曲面
ユニットカーブ 4.00D(曲率ρ4=0.0076)
固定要素 段差の間隔(0.05mm)
上記レンズデータで示すように、ユニットカーブuの曲率ρ4は0.0076であり、分割レンズ面92の曲率ρ10.0040よりも深く設定されている。
なお、処方度数(S度数)、屈折率n、外径、レンズ縁厚についてはレンズ90と同じである。
またレンズ90は、後面2を4.00Dの球面形状としたレンズ90bに対してレンズ中央部の厚みが52.8%減少している。例えば、レンズ90bにおいて、レンズ90と同等の厚みを実現しようとすれば、屈折率2.40に相当するレンズ素材が必要である。
このようにフレネル形状を備えたレンズ90によれば、従来のレンズ90a,90bに比べレンズ中央部の厚みを大幅に薄くすることが可能である。
2 後面
3 前面
30,60,82,92 分割レンズ面
40、70,84,94 段差
u ユニットカーブ
M レンズ中心領域
Claims (8)
- レンズの前面若しくは後面の少なくとも何れか一方の面が、同心円状に分割された複数の分割レンズ面と、隣接する該分割レンズ面同士を接続する段差と、を備えたフレネル形状に形成され、
前記分割レンズ面は、前記フレネル形状が形成されたレンズの面全体に亘って所定の曲率で設定されたユニットカーブの曲面に沿って配置されていることを特徴とする眼鏡用レンズ。 - レンズの前面が前記フレネル形状に形成され且つ処方された球面度数がマイナスであって、前記ユニットカーブの曲率が前記分割レンズ面の曲率よりも深く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
- レンズの前面が前記フレネル形状に形成され且つ処方された球面度数がプラスであって、前記ユニットカーブの曲率が前記分割レンズ面の曲率よりも浅く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
- レンズの後面が前記フレネル形状に形成され且つ処方された球面度数がマイナスであって、前記ユニットカーブの曲率が前記分割レンズ面の曲率よりも浅く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
- レンズの後面が前記フレネル形状に形成され且つ処方された球面度数がプラスであって、前記ユニットカーブの曲率が前記分割レンズ面の曲率よりも深く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡用レンズ。
- 前記段差の高さが0.001mm〜0.1mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の眼鏡用レンズ。
- 隣接する前記段差の間隔が0.003mm〜10mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の眼鏡用レンズ。
- レンズ光学中心を中心とする直径5mmのレンズ中心領域が、前記段差の無い球面形状で構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の眼鏡用レンズ。
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