JP2019174431A - 複数成分からなる試料についてクロマトグラフィー質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法及び情報処理装置及びプログラム及び記録媒体 - Google Patents

複数成分からなる試料についてクロマトグラフィー質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法及び情報処理装置及びプログラム及び記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】複数成分からなる試料についてクロマトグラフィー質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法及び情報処理装置を提供する。【解決手段】クロマトグラフィー質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルを解析して、分離成分個々のマススペクトルに特徴的なイオンの組を抽出し、その集合をリファレンスと比較することで高分子または混合試料の種類を推定する。【選択図】図5

Description

高分子材料または複数成分からなる試料についてクロマトグラフィー質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法及び情報処理装置及びプログラム及び記録媒体に関する。
質量分析法は、ある一つの化合物をイオン化し、生じた複数のイオンを質量電荷比(以下、m/zと表記することがある。)に基づいて分離し、それぞれの質量電荷ユニットに対応するイオンの数をスペクトルとして記録する手法である。例えばイオン化手法として用いられる電子イオン化(EI)法は、イオン化室に導かれた対象成分がフィラメントから放出し加速された電子との相互作用により、開裂、イオン化し、アナライザーに導かれる。一般的に電子イオン化では、主に測定対象とする有機化合物のイオン化エネルギー(10数eV)より大きなエネルギー(例えば70eV)でイオン化を行うため開裂が生じやすく、開裂によって生じたフラグメントイオン、または単に電子1個がとれて生じる分子イオンからなるマススペクトルにより化合物の構造解析が可能となる。なおフラグメントイオンとは質量分析で分子がイオン化する際に過剰エネルギーにより破片となったイオンである。そして本発明ではフラグメントイオンと分子イオンの両者をまとめて単にイオンと呼ぶ。
イオンの質量電荷比は各種質量分析計で測定することができる。質量分析計で例えば最も普及している四重極質量分析計では、双曲面を持つ4本の電極に直流電圧Uと交流電圧Vを±(U+Vcosωt)の形で印加すると、高周波四重極電場に入ったイオンは中を振動しながら進む。2U/Vを一定に保ち電圧を変化させると、ある瞬間には特定のm/z値を持つイオンだけが発散せずに四重極を通過し検出器に到達するものである。
質量分析計をクロマトグラフィーと結合することは、クロマトグラフィーで分離された個々の成分の定性的な情報が得られるので、一般的に利用されている。クロマトグラフィーは、カラム内の固定相と移動相からなる平衡の場で、二つの相への相互作用に、試料中の各成分に差があることを利用して各成分を分離する方法である。移動相に気体を用いるガスクロマトグラフィー、液体を用いる液体クロマトグラフィーなどがある。
ガスクロマトグラフと質量分析計を結合したガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)は、高い分離能が得られ短時間で測定ができる特徴を活かして、高分子分析、有機化合物合成品分析、燃料ガス分析、香料分析、作業環境分析、環境汚染物質、残留農薬、医薬品、食品分野などのさまざまな分野で利用されている。GC/MSは試料中の規制物質など特定の対象物質を定めてその同定・定量を行うターゲット分析のほか、質量電荷比の走査範囲を広くとったスキャン分析を行うことで、未知物質の分析にも非常に有効である。GC/MSは揮発性・半揮発性試料の分析にとどまらず、熱分解装置を組み合わせることで高分子の分析にも活用されるなど適用範囲が広がっている。
未知の高分子試料について熱分解GC/MSで得られたクロマトグラムから各ピークの物質を推定しながら高分子試料を同定する従来の方法は以下の方法がある。
(1)クロマトグラム上のピークから抽出されたマススペクトルから、市販のデータベース(NISTやWILEYなどのライブラリー)を用いて、同ピークの成分を検索する。
(2)主要なピークについて(1)の操作を繰り返し行うことで、熱分解生成物の組成が推定できる。
(3)標準高分子試料について測定されたパイログラムデータ集(たとえば非特許文献1)などを参照して、前記熱分解生成物からもとの高分子試料を推定する。この方法を個別ピーク解析方法と呼ぶ。
しかしながら、前記従来の個別ピーク解析方法では、各ピークに対応する熱分解生成物個々についてデータベース検索などを活用しながら推定しなければならないため、長時間を要する傾向があり、またこのように推定された多数の熱分解生成物からもとの高分子試料を推定するのは、高度な専門知識や経験を要する面もある。
特許文献1では未知の高分子試料を熱分解して得られる熱分解生成物を分離した後に質量分析を行って得られた合算マススペクトルを、既知の高分子試料について得られた合算マススペクトルと比較することで未知試料を検索する方法が開示されている。しかし、特許文献1の方法では合算マススペクトルが類似する材料を区別することが難しい場合がある。特許文献2ではガスクロマトグラフで分離された単一の成分について、その成分に特徴的なイオン間の相関を利用して単一の成分の同定を行う方法が開示されているが、複数の成分からなる試料を解析することは考慮されていない。特許文献3ではガスクロマトグラフ質量分析で得られた異なる分析結果において、同一成分でありながら異なる保持時間に現れたものについてマススペクトルから対応づけて、保持時間等を補正する方法が開示されている。特許文献3ではマススペクトルに関する演算方法が開示されているが、演算方法を未知試料の同定に利用することは考慮されていない。
特許第3801355号 特開2006-138755 特開2007-147459
Pyrolysis - GC/MS Data Book of Synthetic Polymers: Pyrograms, Thermograms and MS of Pyrolyzates
本発明では、個別ピーク解析方法では長時間や経験などを要する面を改善して、短時間または経験が少ない分析者でも高分子試料を容易に判別する方法、また、上記の特許文献1の方法では成し遂げられないマススペクトルが類似した高分子、または高分子の混合物であっても、それぞれを明確に判別できる方法を提供することを目的とした。特に、高分子試料を短時間に同定可能なスクリーニング方法を提供することを目的とした。一方、高分子試料以外でも、複数成分からなる試料についてクロマトグラフィー質量分析で得られるデータに対しても適用可能な手法の提供も目的とした。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、未知試料のクロマトグラフィー質量分析において、クロマトグラフィーで分離された個々の成分について質量分析で得られたマススペクトルに特徴的なイオン組のセットを抽出し、その集合をリファレンスから得られた前記マススペクトルに特徴的なイオン組のセットと比較することで未知試料を推定できるのではないかと考えた。特に熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(熱分解GC/MS)において熱分解生成物個々のマススペクトルに特徴的なイオンの組を抽出し、その集合をリファレンスから得られた前記マススペクトルに特徴的なイオン組のセットと比較することで高分子種を推定できるのではないかと考えて、本発明を開発するに至った。
本発明の第1の発明についてはクロマトグラフィーで分離された試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法であって、未知試料におけるクロマトグラムのピークを構成するマススペクトルのうち検出強度上位の分子イオンおよびフラグメントイオンから質量電荷比が異なる複数のイオンを選択して選択イオン組とし、分離成分のすべてまたは一部についてピークの中から選択イオン組を複数集めたセットの集合を作成する工程と、既知試料におけるクロマトグラムのピークを構成するマススペクトルのうち検出強度が上位の分子イオンおよびフラグメントイオンから質量電荷比が異なる複数のイオンを選択して選択イオン組とし、分離成分のすべてまたは一部についてピークの中から選択イオン組を複数集めたセットの集合を作成する工程と、未知試料の選択イオン組のセットの集合と既知試料の選択イオン組のセットの集合を比較して比較指標を算出し、この比較指標が上位の既知試料を検索する工程とを含むことを特徴とする、複数成分からなる試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
発明1の下位概念の発明である第2の発明は、既知試料における選択イオン組のセットの集合について、既知試料において抽出されたピークをこのピークの高さまたは面積に基づいて複数のピーク群に分割し、このピーク群それぞれについて、ピークを構成するマススペクトルのうち検出強度が上位の分子イオンおよびフラグメントイオンから質量電荷比が異なる複数のイオンを選択して選択イオン組とし、ピーク群のすべてまたは一部についてピークの中から選択イオン組を複数集めたセットの集合として作成する工程を含むことを特徴とする、複数成分からなる試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
発明2の下位概念の発明である第3の発明は、未知試料の選択イオン組のセットの集合体と既知試料のピーク群それぞれから抽出された選択イオン組のセットの集合体を比較してピーク群ごとの比較指標を算出して、ピーク群ごとに予め決めた係数をピーク群ごとの比較指標に乗算したものを全ピーク群について合計することで、総合比較指標を算出する工程と、この総合比較指標が上位の既知試料を検索する工程とを含むことを特徴とする、複数成分からなる試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
発明1から3のいずれか1項の下位概念の発明である第4の発明は、未知試料の選択イオン組のセットの集合(A)、と既知試料の選択イオン組のセットの集合(B)、を比較して(A)と(B)に共通する選択イオン組の個数である第1の評価得点と、(A)と(B)の和集合あるいは(B)に含まれる選択イオン組の個数である第2の評価得点、とから比較指標を算出することを特徴とする、クロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
発明1から4のいずれか1項の下位概念の発明である第5の発明は、未知試料が高分子を熱分解して得られた混合試料であることを特徴とするクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
第6の発明は、複数成分からなる試料に対し発明1から5のいずれか1項の解析方法を実行するための情報処理装置である。
第7の発明は、発明6の情報処理装置を起動させるためのプログラムであって、コンピュータの演算部を機能させるためのプログラムである。
第8の発明は、発明7のプログラムがコンピュータで読み取り可能な記録媒体である。この記録媒体としては、例えば磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM、MO、MD、DVD、CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリーカードを含む)、光カード等のカード類、あるいはマスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROM等の半導体メモリ類などを用いることができる。
熱分解GC/MSで合算マススペクトルが類似する高分子などについて、得られたクロマトグラム及びマススペクトルを解析することで迅速に高分子種を推定する方法を提供できる。
クロマトグラフィー質量分析で得られるクロマトグラムの例 マススペクトルの例 データ処理部の詳細な機能構成及び周辺機能部を示すブロック図 分析及び解析方法のフロー図 未知試料とリファレンス試料の比較工程を示すフロー図 未知試料あるいはリファレンス試料の選択イオン組のセットの集合作成工程を示すフロー図 ピークを複数のピーク群に分割して重み付けしたときの未知試料とリファレンス試料の比較工程を示すフロー図 ABS試料について熱分解GC/MSで得られたクロマトグラム及びピーク抽出結果及びα−メチルスチレンのピークから抽出された選択イオン組のセット ABS試料について作成した選択イオン組のセットの集合の2次元プロット 「キンカン+ミント」試料からヘッドスペースGC/MSで得られたクロマトグラム及び19.651分付近のピークからの相関利用マススペクトル抽出法による「選択イオン組のセット」の抽出例
本発明における好適な実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
(分析装置の構成)
本発明の情報処理装置は図3のように前処理及びサンプリング部1、分離部2、質量分析部3の下流につながれているデータ処理部4である。
前処理及びサンプリング部1については、高分子試料では熱分解装置が好ましく、このほか試料を揮発させる加熱脱着サンプリング装置、ヘッドスペースサンプリング装置、液体直接注入装置を使用することができる。また、低濃度の揮発性試料またはガス試料に対しては吸着剤捕集−加熱脱着または溶媒抽出法や固相マイクロ抽出(SPME)法なども好ましく使用できる。
本発明では複数の成分を含む混合試料を解析の対象とするので、クロマトグラフィーによる分離部2が必要である。分離された各成分は、クロマトグラフ後段の質量分析部3で検出され、クロマトグラムが得られる。クロマトグラムは図1に示すように、保持時間及び質量電荷比についてのイオン強度のデータである。図2のように、クロマトグラムからある保持時間におけるマススペクトルを抽出することもでき、また、ある質量電荷比におけるマスクロマトグラムを抽出することもでき、マススペクトルから求められる全イオン電流値を保持時間に対してプロットすることで全イオン電流クロマトグラムを得ることもできる。クロマトグラフィーにはガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動などが使用できるが、キャピラリーカラムを用いることで、高い分離性能が得られるガスクロマトグラフィーが最も好ましい。
本発明では、クロマトグラフィーによって分離された個々の成分について2種以上の分子イオンまたはフラグメントイオンが生じることが望ましい。よって、質量分析部3におけるイオン化手法は、電子イオン化または化学イオン化が望ましい。前記イオン化によって生じたイオンを検出する質量分析計には、四重極質量分析計または四重極マスフィルターと飛行時間型質量分析計を結合したいわゆるQ−TOFなどを使用することができる。
(分析対象試料)
本発明の解析対象試料は、クロマトグラフィー質量分析で分析できるものであれば特に限定されない。すなわち石油化学製品、有機溶剤、環境汚染物質、農薬、香料、医薬品、食品、農作物を含む植物、微生物などを対象に適用できる。中でも熱分解GC/MSで分析可能な高分子試料に対して最も好ましく適用できる。
(データ処理部4の詳細な機能構成)
データ処理部4は図3に示すように、入力処理部41、演算部42、データ記憶部43、主制御部44、出力処理部45からなる。分離部2及び質量分析部3で得られる検出データは入力処理部41に入力され、演算部42で後述する解析処理が行われる。解析結果は、データ記憶部43に前もって保存されたリファレンスの情報と比べることで比較指標が算出され、その比較結果が出力処理部45を通して印刷出力部5(例えばプリンタ)や画面表示部6(例えばディスプレイ)などに出力される。
データ処理部4には、このような機能を備えたコンピュータが適しており、パソコン、タブレット端末、スマートフォンなどを用いることができるが、中でもパソコンが好ましい。また、データ処理部4で記憶されたクロマトグラムや後述する選択イオン組のセットの集合を、外部データ処理部に、直接的にまたはメモリーカードなどの記憶媒体を介して間接的に転送して同外部データ処理部で解析を行うこともできる。外部データ処理部は、質量分析部3と接続されていないことを除けばデータ処理部4と同じ構成と機能のものを好ましく使用できる。
また、本発明における解析方法は、図4に示すように各部に対応する前処理及びサンプリング工程S1、分離工程S2、質量分析工程S3の下流につながれたデータ処理工程S4である。
(データ処理工程S4)
前述の構成の分析装置を用いて、保持時間及び質量電荷比毎のイオン検出強度の情報、すなわちクロマトグラムが得られる。図4に示すデータ処理工程S4においてクロマトグラムのデータ処理を行う。
図5は、データ処理部4で実施するデータ処理工程S4の詳細な機能構成を示すフロー図である。データ処理工程S4は、未知試料の選択イオン組のセットの集合Usmp作成工程S41、リファレンス試料の選択イオン組のセットの集合U作成工程S411、未知試料とリファレンス間の比較指標算出工程S42、比較結果表示工程S43からなる。さらに未知試料の選択イオン組のセットの集合作成工程S41あるいはリファレンス試料の選択イオン組のセットの集合作成工程S411は、図6のようにピーク抽出工程S41a、ピーク代表マススペクトル抽出工程S41b、選択イオン組のセット抽出工程S41c、選択イオン組のセットの集合作成工程S41dからなる。
(ピークの抽出工程S41a及びピーク代表マススペクトル抽出工程S41b)
クロマトグラムから個々成分のピークを抽出するには公知の方法を利用できる。次に抽出したピークにおける質量電荷比ごとのイオン検出強度の情報、すなわちピーク代表マススペクトルを得るのは、ピーク最高部におけるマススペクトルを抽出する方法のほか、ピーク最高部近傍のマススペクトルを平均化して求めたり、ピーク開始保持時間から終了保持時間までのマススペクトルを平均化するなどの方法も利用できる。
また、ノイズ除去や隣接ピークの影響を低減する観点からは、各ピーク抽出後の前記ピーク開始保持時間から終了保持時間までの質量電荷比ごとのマスクロマトグラムから、イオン強度の相関が高いマススペクトルを抽出し、同ピークの最高部の同マススペクトルをもって、ピーク代表マススペクトルとする方法も好ましく使用することができる。このマススペクトル抽出法を本発明では相関利用マススペクトル抽出法と呼ぶ。また、クロマトグラムからデコンボリューションを行ってピークを抽出し、同ピークからピーク代表マススペクトルを抽出することも好ましい。
(選択イオン組のセット抽出工程S41c)
前記のようにして求めたピーク代表マススペクトルから選択イオン組のセットを抽出するのは、次の手順による。まず、マススペクトルのうち検出強度が大きいものから順に質量電荷比が異なるイオンを複数選択する。選択されたイオンを選択イオン群と呼ぶ。選択イオン群の要素数nionは2個以上あればよく、特に限定されないが、2個以上32個以下がより好ましく、3個以上16個以下が最も好ましい。次に選択イオン群から質量電荷比の異なるm個のイオンの組み合わせ、すなわち選択イオン組のセットを作成する。mは2個以上nion個以下である。例えばnionが4個のとき、あるピーク代表マススペクトルにおいて検出強度が大きい上位4つのイオンa1,a2,a3,a4が、質量電荷比がa1>a2>a3>a4となるように選択されたとき、すなわち選択イオン群が(a1,a2,a3,a4)のとき、mが2における選択イオン組のセットは{(a1,a2),(a1,a3),(a1,a4),(a2,a3),(a2,a4),(a3,a4)}となる。また、前記選択イオン群に対し、例えばmが3では、選択イオン組のセットは{(a1,a2,a3),(a1,a2,a4),(a1,a3,a4),(a2,a3,a4)}となる。また、前記選択イオン群に対し、例えばmが4では、選択イオン組のセットは{(a1,a2,a3,a4)}となる。
(選択イオン組のセットの集合作成工程S41d)
クロマトグラムから抽出されたすべてのピークまたは一部のピークについて選択イオン組のセットを抽出することで選択イオン組のセットの集合Uを作成する。まず未知試料のUsmpを作成し、また別途複数の、例えばN個のリファレンス試料についてUを作成する。このUが試料の特徴を反映したものとなる。なお、リファレンス試料には番号をつけて区別し、s番目のUはU(s)と表す。ここで、未知試料における選択イオン群の要素数nion,smpとリファレンス試料における選択イオン群の要素数nion,refは、通常同一の値とするが、異なっていてもかまわない。なぜなら、異なる装置や異なる分析条件では、同一の化学物質においてもマススペクトルが若干変動するため、選択イオン群中のイオンの一部が異なることがあるからである。nion,smpをnion,refより1から3程度小さい値にしても、以下に述べる比較指標を算出することができる。
(未知試料とリファレンスの比較工程)
図5は、未知試料とリファレンスの比較工程を示すフロー図である。
未知試料とリファレンスを比較して比較指標を算出する方法には、未知試料がリファレンス試料と一致する程度を調べるために類似度を求める方法と、未知試料にリファレンス試料が含まれているかどうか調べるための含有確率を求める方法の2種類を主に用いることができる。比較指標は、UsmpとUを用いて算出でき、予めN個のリファレンス試料について求めたU(s)、(sは1以上N以下の値)とUsmpを用いて試料と各リファレンス間の比較指標を算出し、後述する比較結果表示工程において、その結果を表示する。
ここで比較指標を算出する際に、図7に示すようにリファレンスの抽出元のピークの高さや面積に従って重み付けすることも好ましい。その方法の一例を以下に述べる。
(1) リファレンスのピークの選択時に、ピークの高さや面積に従って、ピークをn個のピーク群に分割する。
(2) 各ピーク群について選択イオン組のセットの集合U(jはピーク群の番号)を作成する。
(3) 各ピーク群の重み付け係数wを決める。wは抽出元のピークの高さや面積などを基準に決めることができ、また、比較指標の精度が良くなるような任意の値とすることもできる。
以下に、UsmpとUを用いて算出できる比較指標の例として、類似度と含有確率について述べる。
(未知試料とリファレンス間の類似度算出工程)
未知試料とリファレンス間の類似度を、未知試料のUsmpとリファレンス試料のUを用いて算出するには、公知の類似度を使用できる。類似度としては、Tanimoto係数、Cosine係数、Pearson’s相関係数などを使用することができる。例えば類似度のTanimoto係数IはI=f/gで求められる。ここで、f は第1の評価得点であって、UsmpとUに共通する選択イオン組の要素数、gは第2の評価得点であって、UsmpとUの和集合における選択イオン組の要素数である。Iは0以上1以下の値をとり、大きいほど未知試料とリファレンスが類似していることを表す。
前記UsmpとUに共通する選択イオン組とは、UsmpとUの要素である選択イオン組であって、前記選択イオンが完全に一致(完全一致型と呼ぶ)または概ね一致(概ね一致型と呼ぶ)している選択イオン組である。前記概ね一致しているとは、選択イオンのうち70%、好ましくは80%以上一致していることを意味する。例えば、Usmpの要素である選択イオン組に(a1,a2,a3,a4,a5)があり、Uの要素である選択イオン組に(a1,a2,a3,a4,a6)がある場合、両者は5個中4個すなわち80%一致しているので、概ね一致している選択イオン組といえる。以下に述べる「共通する選択イオン組」は本定義に基づく。
また、UsmpとUの和集合とは、(A)UsmpとUに共通する選択イオン組、(B)Usmpの選択イオン組であって、UsmpとUに共通する選択イオン組ではないもの、(C)Uの選択イオン組であって、UsmpとUに共通する選択イオン組ではないもの、を合わせた選択イオン組の集合である。以下に述べる和集合は本定義に基づく。
ここで、類似度を算出する際に、リファレンスの抽出元のピークの高さや面積に従って重み付けした重み付き類似度を求めることもできる。例えば重み付きTanimoto係数Iを次のように求めることができる。
(1) 前述のようにリファレンスのピークをn個のピーク群に分割し、各ピーク群の
を算出する。
(2) 各ピーク群の重み付け係数wを決める。
(3) リファレンスのピーク群jに対するTanimoto係数Iを、I=f/gで算出する。ここで、fは第1の評価得点であって、サンプルのUsmpとリファレンスのUに共通する選択イオン組の要素数、gは第2の評価得点であって、サンプルのUsmpとリファレンスのUの和集合の要素数から、UsmpとUresに共通する要素の数を差し引いた値である。ここでUresはリファレンスにおけるUを除くUからUの和集合である。これを式で表すと数1となる。
Figure 2019174431

はIにwを乗じて足し合わせたものをwの合計で除することで算出でき、数2のように表される。
Figure 2019174431
(未知試料中のリファレンス試料の含有確率算出工程)
未知試料のUsmpとリファレンス試料のUから、未知試料中にリファレンス試料が含まれる確率、すなわち含有確率PはP=f/rで算出される。ここで、f は第1の評価得点であって、サンプルのUsmpとリファレンスのUに共通する選択イオン組の個数、rは第2の評価得点であって、リファレンスにおける選択イオン組の個数である。Pは0以上1以下の値をとり、大きいほど未知試料中にリファレンス試料が含まれる確率が高くなる。
ここで、Tanimoto係数に関して重み付きTanimoto係数を定義したのと同様に、含有確率Pに関してリファレンスのピークの高さや面積に従って重み付けした重み付き含有確率を利用することも好ましい。重み付き含有確率Pは例えば次のように求められる。
(1) 前述のようにピークをn個のピーク群に分割し、各ピーク群のUを算出する。
(2) 各ピーク群の重み付け係数vを決める。リファレンスのピーク群jに対する試料の含有確率Pは、I=f/rで求められる。ここで、fは第1の評価得点であって、サンプルのUsmpとリファレンスのUに共通する選択イオン組の要素数、rは第2の評価得点であって、リファレンスのUに含まれる選択イオン組の要素数である。これを式で表すと数3となる。
(3)Pは、Pにvを乗じて足し合わせたものをvの合計で除することで算出でき、数4のように表される。

Figure 2019174431

Figure 2019174431
(比較結果表示工程S43)
前述のようにして未知試料の各リファレンスに対する比較指標を算出することができるので、リファレンス試料の中から比較指標が上位の試料を検索し、その一覧を比較結果表示工程によって、ディスプレイなどの画面上に表示したり、プリントアウトすることなどが可能である。
本発明は未知試料(特に高分子材料)を推定する方法、特には迅速にスクリーニングする手法を提供する。具体的にはガスクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーで分離された成分を、質量分析部で分析することで得られるクロマトグラムからピークを抽出し、すべてのピークまたは一部のピークについてピーク代表マススペクトルから選択イオン組のセットを抽出することで得られる「選択イオン組のセットの集合」を、その試料特有のパターンと捉え、「選択イオン組のセットの集合」を予め取得した既知試料と比較して比較指標を算出し、比較指標が上位の既知試料を検索する解析方法である。さらに本発明は複数の試料が混合されている未知試料における構成成分も推定できる解析方法を提供する。
以下、本発明について実施例を示して、より具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
試料の前処理装置として熱分解装置はフロンティア・ラボ株式会社製EGA/PY-3030Dを用いた。ガスクロマトグラフはアジレント・テクノロジー株式会社製7890Bを用い、分離カラムはUA-5(30m×0.25mm, 0.25μm)を用いた。ガスクロマトグラフで分離された成分を分析する質量分析計には四重極質量分析計のアジレント・テクノロジー株式会社製MS5977Aを用いた。質量スキャン範囲はm/z=29〜550とした。高分子試料にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂を用い、熱分解温度600℃、試料量約0.1mgでクロマトグラムを取得した。本実施例における解析手順を以下に述べる。
(1) ABSのクロマトグラムから、ピークを抽出した(図8)。ピークを抽出する基準は、全ピーク中最大ピークの高さに対し2%以上の高さとした。
(2) 各ピークについて、ピークトップにおけるマススペクトルをピーク代表マススペクトルとし、前記ピーク代表マススペクトルから上位4個のイオンを抽出した(nion=4)。例えば、保持時間7分付近に現れるα−メチルスチレンのピークにおいて、質量電荷比=118,117,103,78のイオンが選択イオン群として抽出された。
(3) 前記選択イオン群から質量電荷比が異なる2つのイオン(m=2)を選択するすべての組み合わせ、すなわち選択イオン組のセットは{(118,117)、(118,103)、(118,78)、(117,103)、(117,78)、(103,78)}となった。なお、1番目のイオンの質量電荷比(m1)が2番目のイオンの質量電荷比(m2)より大きくなるような組み合わせを選択した。
(4) (2)〜(3)の操作を抽出した全ピークについて繰り返し行い、選択イオン組のセットの集合Usmpを求めた。ここで参考までにUsmpを可視化するため、Usmpの要素である選択イオンの組の構成要素である2イオンのうち、m1を横軸に、m2を縦軸にとり2次元にプロットすると、図9のようになった(ただし、質量電荷比250以上は省略)。
同様に、リファレンス試料としてPE, PP, PET, PBT, PC, PS, ABS, AES, Ny6, Ny66, PU, NR, PMMA, PVC及びPOM(全15種)の高分子試料について、熱分解温度600℃、試料量約0.2mgでクロマトグラム(パイログラム)を取得した。次に、ABS試料のUsmpとリファレンスについて求めたUについて、両者間の、比較指標であって類似度であるTanimoto係数を算出した。なお、Tanimoto係数を算出するときに、UsmpとUに共通する選択イオン組の要素数を求める方法は完全一致型で行った。また、リファレンスのUを求めるときのnion,refは4とした。
算出したTanimoto係数を表1に示す。
ABS試料で検索されたリファレンス試料は、Tanimoto係数が大きい順にABS,AES,PSとなり、ABSが最上位に検索され、上位3つはいずれもポリスチレンを分子骨格に含む類似の高分子種であった。
同様にしてPEでは検索されたリファレンス試料は、Tanimoto係数が大きい順にPE,PP,PUとなり、PEが最上位に検索された。
また、同様にしてPPでは検索されたリファレンス試料は、Tanimoto係数が大きい順にPP,PE,NRとなり、PPが最上位に検索された。
本実施例は、高分子試料の熱分解生成物をガスクロマトグラフで分離して四重極質量分析計で検出したときのクロマトグラムにおいて、ピークを抽出し、各ピークにおける選択イオン組のセットを抽出し、前記ピークについて抽出した選択イオン組のセットの集合Usmpを求め、別途既知の高分子試料について得られた選択イオン組のセットの集合Uとの間で比較指標である類似度を求めることで、未知高分子試料をリファレンス試料の中から検索することができることを示す例である。

Figure 2019174431
(実施例2)
実施例1で取得したデータについて、試料及びリファレンスについてピーク代表マススペクトルから上位16個のイオンを選択(nion=16及びnion,ref=16)した以外は実施例1と同様に解析した。算出したTanimoto係数を表2に示す。
ABS試料で検索されたリファレンス試料は、Tanimoto係数が大きい順にABS,AES,PSとなり、ABSが最上位に検索された。
同様にしてPEでは検索されたリファレンス試料は、Tanimoto係数が大きい順にPE,PP,Ny66となり、PEが最上位に検索された。
また、同様にしてPPでは検索されたリファレンス試料は、Tanimoto係数が大きい順にPP,PE,Ny66となり、PPが最上位に検索された。
本実施例は選択するイオン数を変化させてもサンプルの種類を正しく同定できる例である。

Figure 2019174431
(実施例3)
リファレンス試料として、有機溶剤のアセトン、テトラヒドロフラン、1−ブタノール、酢酸エチル、トルエン、クロロホルムそれぞれについて、ガスクロマトグラフ質量分析装置(アジレント・テクノロジー社製GC7890A/四重極質量分析計5973MS)でクロマトグラムを取得した。注入口温度は250℃、試料量は0.2μL、分離カラムは微極性カラムのDB−5ms(長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用い、オーブン温度は40℃(4分)→10℃/分→300℃(10分)とした。質量分析条件は、イオン化条件は電子イオン化(イオン化電圧70eV)、m/zスキャン範囲29〜350とした。クロマトグラム上のピーク最高部におけるマススペクトルより、選択イオン組のセットの集合Uを求めた。アセトン、テトラヒドロフラン、1−ブタノール、酢酸エチル、トルエン、クロロホルムのUをそれぞれUAC、UTHF,UBT,UEA,UTL,UCFとすると、
ACは{(58,43)、(58,42)、(58,29)、(43,42)、(43,29)、(42,29)}、UTHFは{(72,71)、(72,42)、(72,41)、(71,42)、(71,41)、(42,41)}、UBTは{(56,43)、(56,41)、(56,31)、(43,41)、(43,31)、(41,31)}、
EAは{(61,45)、(61,43)、(61,29)、(45,43)、(45,29)、(43,29)}、
TLは{(92,91)、(92,65)、(92,39)、(91,65)、(91,39)、(65,39)}、
CFは{(85,83)、(85,48)、(85,47)、(83,48)、(83,47)、(48,47)}であった。
次に、アセトンとテトラヒドロフランを容量比1:1で混合して調製した溶剤試料Sample1を同じ分析装置及び条件でGC/MS分析してクロマトグラムTIC1を得た。TIC1で検出された2つのピークそれぞれ最高部におけるマススペクトルをピーク代表マススペクトルとし、前記ピーク代表マススペクトルより求めた選択イオン組のセットUTIC1は、{(58,43)、(58,42)、(58,29)、(43,42)、(43,29)、(42,29)、(72,71)、(72,42)、(72,41)、(71,42)、(71,41)、(42,41)}となった。
更に溶剤試料とリファレンス試料について求めたUについて、溶剤試料におけるリファレンス溶剤の含有確率Pを算出したところ、アセトン及びテトラヒドロフランのみ含有確率が1となり、他の溶剤に対して含有確率は0であった。
本実施例は複数成分で構成される試料についてガスクロマトグラフ質量分析を行い、得られたクロマトグラムの各ピークの上位成分のうち複数のイオンを選択して得られる選択イオン組のセットの集合について、リファレンス試料について得られる選択イオン組のセットの集合との間で比較指標である含有確率を求めることで、複数成分で構成される試料の中にリファレンス試料が含まれる確率を求めることができる例である。
(実施例4)
(高分子以外の試料に対して適用した例)
試料として温州ミカンまたはローズマリーの葉を供した。試料の前処理・サンプリング装置としてヘッドスペースサンプラーHP7694を用い、ガスクロマトグラフはアジレント・テクノロジー株式会社製6980PlusGCを用い、ガスクロマトグラフで分離された成分を分析する質量分析計には四重極質量分析計のアジレント・テクノロジー株式会社製MS5973を用いた。ヘッドスペースサンプリング条件は110℃(30分)とした。分離カラムはDB-5(30m×0.25mm, 膜厚0.25μm)を用いた。分離カラム温度は40℃で5分保持し、300℃まで10℃/minで昇温し、10分間保持した。キャリヤーガスにはヘリウムを用い、流量は1.0mL/minとした。質量分析装置は、電子イオン化法(イオン化電圧70eV)、質量スキャン範囲はm/z=29〜550とした。本分析条件で取得したクロマトグラムについて本実施例における解析手順を以下に述べる。
(クロマトグラムの取得とピークの抽出)
(1)試料のクロマトグラムからピークを抽出した。ピークを抽出する基準高さは、全ピーク中最大ピークの高さに対し2%以上とした。
(試料からの選択イオン組のセット抽出工程)
(2)各ピークについて、最高部におけるマススペクトルをピーク代表マススペクトルとし、前記ピーク代表マススペクトルから上位8個のイオンを選択した(nion=8)。
(3) これらイオンから質量電荷比が異なる2つ(m=2)のイオンを選択するすべての組み合わせ、すなわち選択イオン組のセットを作成した。
(4)(2)〜(3)の操作を抽出した全ピークについて繰り返し行い、選択イオン組のセットの集合Usmpを算出した。
一方、リファレンス試料として、温州ミカン、キンカン、ユズ、ユーカリ、月桂樹、クスノキ、ミント、ローズマリー及びディルの葉について以下のように解析した。
(クロマトグラムの取得とピークの抽出)
(1)クロマトグラムからピークを抽出した。ピークを抽出する基準高さは、全ピーク中最大ピークの高さに対し2%以上とした。
(2)抽出したピークについて、ピーク高さが最大ピークの高さに対し25%を超え、かつ100%以下のピーク群1と、ピーク高さが最大ピークの高さに対し25%以下のピーク群2に分割した。
(3)各ピーク群における各ピークについて、最高部におけるマススペクトルをピーク代表マススペクトルとし、前記ピーク代表マススペクトルから上位8個のイオンを選択した(nion=8)。
(4)これらイオンから質量電荷比が異なる2つ(m=2)のイオンを選択するすべての組み合わせ、すなわち選択イオン組のセットを作成した。
(5)(3)〜(4)の操作を抽出した全ピークについて繰り返し行い、ピーク群1及びピーク群2それぞれの選択イオン組のセットの集合U及びUを求めた。
次に、試料の温州ミカンまたはローズマリーについて求めたUsmpとリファレンスについて求めたUについて、両者間の重み付きTanimoto係数Iを算出した結果を表3に示す。ここで、ピーク群1の重み付け係数wは1、ピーク群2の重み付け係数wは0.25とした。
温州ミカン試料の重み付きTanimoto係数は、温州ミカンリファレンスに対し、0.94となり、他のどのリファレンスに対する値より大きくなった。また、ローズマリーの重み付きTanimoto係数は、ローズマリーリファレンスに対し、0.91となり、他のどのリファレンスに対する値より大きくなった。
本実施例は、植物試料を加熱したときの揮発成分をガスクロマトグラフで分離して四重極質量分析計で検出したときのクロマトグラムにおいて、ピークを抽出し、各ピークにおける選択イオン組のセットを抽出し、全ピークについて抽出した選択イオン組のセットの集合Usmpを求め、別途既知の植物試料について同様の操作で得られた選択イオン組のセットの集合Uとの間で類似度を求めることで、未知植物試料をリファレンス試料の中から検索できることを示す例であり、リファレンス試料のクロマトグラムから抽出したピークをその高さに基づいて複数のピーク群に分割し、各ピーク群のUを算出し、サンプルのUsmpとリファレンスのUから重み付き類似度である重み付きTanimoto係数を求めることで、未知試料をリファレンス試料の中から検索できることを示す例である。

Figure 2019174431
(実施例5)
(高分子以外の試料に対して適用した例)
実施例4と同じ分析条件で、キンカンの葉とミントの葉の混合試料を分析に供した。得られたクロマトグラムについて本実施例における解析手順を以下に述べる。
(クロマトグラムの取得とピークの抽出)
(1)試料のクロマトグラム(図10)からピークを抽出した。ピークを抽出する基準高さは、全ピーク中最大ピークの高さに対し2%以上とした。
(試料からの選択イオン組のセット抽出工程)
(2)各ピークについて、最高部におけるマススペクトルをピーク代表マススペクトルとし、前記ピーク代表マススペクトルから上位6個のイオンを選択した(nion=6)。
(3)これらイオンから質量電荷比が異なる2つ(m=2)のイオンを選択するすべての組み合わせ、すなわち選択イオン組のセットを作成した。
(4) (2)〜(3)の操作を抽出した全ピークについて繰り返し行い、選択イオン組のセットの集合Usmpを算出した。
一方、リファレンス試料として、温州ミカン、キンカン、ユズ、ユーカリ、月桂樹、クスノキ、ミント、ローズマリー及びディルの葉について以下のように解析した。
(クロマトグラムの取得とピークの抽出)
(1)クロマトグラムからピークを抽出した。ピークを抽出する基準高さは、全ピーク中最大ピークの高さに対し2%以上とした。
(2)抽出したピークについて、ピーク高さが最大ピークの高さに対し25%を超え、かつ100%以下のピーク群1と、ピーク高さが最大ピークの高さに対し25%以下のピーク群2に分割した。
(3)各ピーク群における各ピークについて、相関利用マススペクトル抽出法でピーク代表マススペクトルを作成した。具体的には、次の手順で行った。
(A) 各ピークについてピーク開始点からピーク終了点までの平均マススペクトルをもってピーク代表マススペクトルとした。
(B) 前記ピーク代表スペクトルから、イオン強度上位のイオン(上位イオン)であって、他のすべての上位イオンとの間のイオン強度の相関が0.9以上と高いイオンをイオン強度が強い順に6個(nion,ref=6)抽出した。例えば、図10に示す19.651分付近のピークについて述べると、選択イオン群は(161,121,107,93,81,59)となった。
(C) これらイオンから質量電荷比が異なる2つ(m=2)のイオンを選択するすべての組み合わせ、すなわち選択イオン組のセットを作成した。例えば前記19.651付近のピークでは{(161,121)、(161,107)、(161,93)、(161,81)、(161,59)、(121,107)、(121,93)、(121,81)、(121,59)、(107,93)、(107,81)、(107,59)、(93,81)、(93,59)、(81,59)}となった。
(D) (A)〜(C)の操作を抽出した全ピークについて繰り返し行い、ピーク群1及びピーク群2それぞれの選択イオン組のセットの集合U及びUを求めた。
次に、試料の「キンカン+ミント」について求めたUsmpとリファレンスについて求めたUについて、両者間の重み付き含有確率Pを算出した結果を表4に示す。ここで、ピーク群1の重み付け係数vは1、ピーク群2の重み付け係数vは0.25とした。
はキンカンリファレンスに対し0.97、ミントリファレンスに対し0.96と高い値を示し、他のリファレンス試料と明確に区別できた。
本実施例は、植物試料を加熱したときの揮発成分をガスクロマトグラフで分離して四重極質量分析計で検出したときのクロマトグラムにおいて、ピークを抽出し、各ピークにおける選択イオン組のセットを抽出し、全ピークについて抽出した選択イオン組のセットの集合Usmpを求め、別途既知の植物試料について同様の操作で得られた選択イオン組のセットの集合Uとの間で含有確率を求めることで、未知植物試料に含まれるリファレンス試料を検索できることを示す例であり、リファレンス試料のクロマトグラムから抽出したピークをその高さに基づいて複数のピーク群に分割し、各ピーク群のUを算出し、サンプルのUsmpとリファレンスのUから重み付き含有確率を求めることで、未知試料に含まれるリファレンス試料を検索できることを示す例である。

Figure 2019174431
本発明は、各種化学分析事業所、高分子化合物製造業、医薬品製造業、食品製造業などで、未知試料の検索をするのに利用される。
1 … 前処理及びサンプリング部
2 … 分離部
3 … 質量分析部
4 … データ処理部
41 … 入力処理部
42 … 演算部
43 … データ記憶部
44 … 主制御部
45 … 出力処理部
5 … 印刷出力部
6 … 画面表示部
S1 … 前処理及びサンプリング工程
S2 … 分離工程
S3 … 質量分析工程
S4 … データ処理工程
S41 … 未知試料の選択イオン組のセットの集合Usmp作成工程
S41a… ピーク抽出工程
S41b… ピーク代表マススペクトル抽出工程
S41c… 選択イオン組のセット抽出工程
S41d… 選択イオン組のセットの集合作成工程
S411… リファレンス試料の選択イオン組のセットの集合U作成工程
S4111… リファレンス試料のピーク群1における選択イオン組のセットの集合U作成工程
S411n… リファレンス試料のピーク群nにおける選択イオン組のセットの集合U作成工程
S42 … 未知試料とリファレンス間の比較指標算出工程
S43 … 比較結果表示工程

Claims (8)

  1. クロマトグラフィーで分離された試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法であって、
    未知試料におけるクロマトグラムのピークを構成するマススペクトルのうち検出強度上位の分子イオンおよびフラグメントイオンから質量電荷比が異なる複数のイオンを選択して選択イオン組とし、前記分離成分のすべてまたは一部について前記ピークの中から前記選択イオン組を複数集めたセットの集合を作成する工程と、
    既知試料におけるクロマトグラムのピークを構成するマススペクトルのうち検出強度上位の分子イオンおよびフラグメントイオンから質量電荷比が異なる複数のイオンを選択して選択イオン組とし、前記分離成分のすべてまたは一部について前記ピークの中から前記選択イオン組を複数集めたセットの集合を作成する工程と、
    前記未知試料の前記選択イオン組のセットの集合と前記既知試料の選択イオン組のセットの集合を比較して比較指標を算出し、該比較指標が上位の前記既知試料を検索する工程、
    とを含むことを特徴とする複数成分からなる試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  2. 既知試料における選択イオン組のセットの集合については、既知試料において抽出されたピークを、該ピークの高さまたは面積に基づいて複数のピーク群に分割し、該ピーク群それぞれについて、前記ピークを構成するマススペクトルのうち検出強度上位の分子イオンおよびフラグメントイオンから質量電荷比が異なる複数のイオンを選択して選択イオン組とし、前記ピーク群のすべてまたは一部について前記ピークの中から前記選択イオン組を複数集めたセットの集合として作成する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数成分からなる試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  3. 未知試料の選択イオン組のセットの集合と既知試料のピーク群それぞれから抽出された選択イオン組のセットの集合を比較して前記ピーク群ごとの比較指標を算出して、前記ピーク群ごとに予め決めた係数を前記ピーク群ごとの前記比較指標に乗算したものを全ピーク群について合計することで、総合比較指標を算出する工程と、
    該総合比較指標が上位の前記既知試料を検索する工程、
    とを含むことを特徴とする請求項2に記載の複数成分からなる試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  4. 未知試料の選択イオン組のセットの集合(A)、と既知試料の選択イオン組のセットの集合(B)、を比較して(A)と(B)に共通する選択イオン組の個数である第1の評価得点と、(A)と(B)の和集合あるいは(B)に含まれる選択イオン組の個数である第2の評価得点、とから比較指標を算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  5. 未知試料が高分子を熱分解して得られる混合試料であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法を実行するための情報処理装置。
  7. 請求項6に記載の情報処理装置を起動させるためのプログラムであって、コンピュータの演算部を機能させるためのプログラム。
  8. 請求項7に記載のプログラムがコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
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