JP2021177130A - クロマトグラムの解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数成分からなる未知試料の構成物質や構成高分子をクロマトグラフ質量分析によって推定する。【解決手段】クロマトグラフ質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルを解析方法であり、未知試料における分離成分のすべてまたは一部についてピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めて作られるマススペクトルの集合を既知試料の該マススペクトルの集合と比較して類似度の行列を作成し、該類似度の行列から比較指標を算出することで複数成分からなる未知試料の構成物質や構成高分子を推定する。また、計算時間が短いデコンボリューション手法を提供する。【選択図】図6

Description

複数成分からなる未知試料についてクロマトグラフ質量分析で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法、並びに情報処理装置、プログラム及び記録媒体に関する。
質量分析法は、ある一つの化合物をイオン化し、生じた複数のイオンを質量電荷比(以下、m/zと表記することがある)に基づいて分離し、それぞれの質量電荷ユニットに対応するイオンの数(イオン強度)をスペクトルとして記録する手法である。例えばイオン化手法として用いられる電子イオン化(EI)法は、イオン化室に導かれた対象成分がフィラメントから放出し加速された電子との相互作用により、開裂、イオン化し、アナライザーに導かれる。一般的に電子イオン化では、主に測定対象とする有機化合物のイオン化エネルギー(10から20eV)より大きなエネルギー(例えば70eV)でイオン化を行うため開裂が生じやすく、開裂によって生じたフラグメントイオン、または単に電子1個がとれて生じる分子イオンからなるマススペクトルにより化合物の構造解析が可能となる。なおフラグメントイオンとは質量分析で分子がイオン化する際に過剰エネルギーにより破片となったイオンである。そして本発明ではフラグメントイオンと分子イオンの両者をまとめて単にイオンと呼ぶ。
イオンの質量電荷比は各種質量分析計で測定することができる。例えば質量分析計で最も普及している四重極質量分析計では、双曲面を持つ4本の電極に直流電圧Uと交流電圧Vを±(U+Vcosωt)の形で印加すると、高周波四重極電場に入ったイオンは中を振動しながら進む。2U/Vを一定に保ち電圧を変化させると、ある瞬間には特定のm/z値を持つイオンだけが発散せずに四重極を通過し検出器に到達するものである。
質量分析計をクロマトグラフと結合することは、クロマトグラフで分離された個々の成分の定性的な情報が得られるので、一般的に利用されている。クロマトグラフは、カラム内の固定相と移動相からなる平衡の場で、二つの相への相互作用に、試料中の各成分に差があることを利用して各成分を分離する方法である。移動相に気体を用いるガスクロマトグラフ、液体を用いる液体クロマトグラフなどがある。
ガスクロマトグラフと質量分析計を結合したガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)は、高い分離能が得られ短時間で測定ができる特徴を活かして、高分子分析、有機化合物合成品分析、燃料ガス分析、香料分析、作業環境分析、環境汚染物質、残留農薬、医薬品及び食品分野などのさまざまな分野で利用されている。GC/MSは試料中の規制物質など特定の対象物質を定めてその同定・定量を行うターゲット分析のほか、質量電荷比の走査範囲を広くとったスキャン分析を行うことで、未知物質の分析にも非常に有効である。GC/MSは揮発性・半揮発性試料の分析にとどまらず、熱分解装置を組み合わせることで高分子の分析にも活用されるなど適用範囲が広がっている。
未知の高分子試料について熱分解GC/MSで得られたクロマトグラムから各ピークの物質を推定しながら高分子試料を同定する従来の方法は以下の方法がある。
(1)クロマトグラム上のピークから抽出されたマススペクトルから、市販のデータベース(NISTやWILEYなどのライブラリー)を用いて、同ピークの成分を検索する。
(2)主要なピークについて(1)の操作を繰り返し行うことで、熱分解生成物の組成が推定できる。
(3)標準高分子試料について測定されたパイログラムデータ集(たとえば非特許文献1)などを参照して、上記熱分解生成物からもとの高分子試料を推定する。この方法を個別ピーク解析方法と呼ぶ。
しかしながら、上記従来の個別ピーク解析方法では、各ピークに対応する熱分解生成物個々についてデータベース検索などを活用しながら推定しなければならないため、長時間を要する傾向があり、またこのように推定された多数の熱分解生成物からもとの高分子試料を推定するのは、高度な専門知識や経験を要する面もある。
特許文献1では未知の高分子試料を熱分解して得られる熱分解生成物を分離した後に質量分析を行って得られた合算マススペクトルを、既知試料の高分子試料について得られた合算マススペクトルと比較することで未知試料を検索する方法が開示されている。しかし、特許文献1の方法では合算マススペクトルが類似する材料を区別することが難しい場合がある。また、原理的に複数の成分の含有有無を識別することは難しい。特許文献2ではガスクロマトグラフで分離された単一の成分について、その成分に特徴的なイオン間の相関を利用して単一の成分の同定を行う方法が開示されているが、複数の成分からなる試料を解析することは考慮されていない。特許文献3ではガスクロマトグラフ質量分析で得られた異なる分析結果において、同一成分でありながら異なる保持時間に現れたものについてマススペクトルから対応づけて、保持時間等を補正する方法が開示されている。特許文献3ではマススペクトルに関する演算方法が開示されているが、演算方法を未知試料の同定に利用することは考慮されていない。
デコンボリューション方法に関して、特許文献4には、クロマトグラム上やスペクトル上で重なっている異なる成分由来のピークを分離するためのクロマトグラムデータ処理方法及び装置が開示されている。しかし、特許文献4の方法は、クロマトグラム波形形状が正しいとの仮定の下にスペクトル波形を最小二乗法により求めるステップと、スペクトル波形形状が正しいとの仮定の下にクロマトグラム波形を最小二乗法により求めるステップとを繰り返し実行することで当てはめの尤もらしさを高める必要があることから、計算ステップが膨大で処理時間が長くなる傾向がある。
特許第3801355号 特開2006−138755 特開2007−147459 国際公開第2016/035167号
Pyrolysis − GC/MS Data Book of Synthetic Polymers: Pyrograms, Thermograms and MS of Pyrolyzates
本発明では、個別ピーク解析方法では長時間や経験などを要する面を改善して、短時間または経験が少ない分析者でも高分子試料を容易に判別する方法、また、上記の特許文献1の方法では成し遂げられないマススペクトルが類似した高分子、または高分子の混合物であっても、それぞれを明確に判別できる方法を提供することを目的とした。特に、高分子試料を短時間に同定可能なスクリーニング方法を提供することを目的とした。一方、高分子試料以外でも、複数成分からなる未知試料についてクロマトグラフ質量分析で得られるデータに対しても適用可能な手法の提供も目的とした。
また、本発明ではクロマトグラフで分離された試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラムから精密分離成分を得るためのデコンボリューション手法であって、計算時間が短くても良好にデコンボシューションできる手法の提供も目的とした。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、未知試料のクロマトグラフ質量分析において、クロマトグラフで分離された個々の成分について質量分析で得られたマススペクトルを抽出し、該マススペクトルの集合を既知試料から得られたマススペクトルの集合と比較して比較指標を算出して、該比較指標をもとに未知試料を推定できるのではないかと考えた。さらに、マススペクトルを比較するときにマススペクトル歪み補正を行い、上記比較指標を算出するときにピークの大きさやピーク成分のユニークさ(その既知試料に特徴的な程度)を重み付けすることで、比較の精度を上げることができると考えた。特に熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(熱分解GC/MS)において熱分解生成物個々のマススペクトルを抽出し、その集合を既知試料から得られた上記マススペクトルの集合と比較することで高分子種を推定できるのではないかと考えて、本発明を開発するに至った。
本発明の第1の発明については、クロマトグラフで分離された複数成分からなる未知試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法であって、
未知試料における前記分離成分のすべてまたは一部についてピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めてマススペクトルの集合を作成する工程と、
既知試料における前記分離成分のすべてまたは一部についてピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めてマススペクトルの集合を作成する工程と、
前記未知試料の前記マススペクトルの集合と前記既知試料の前記マススペクトルの集合を比較して類似度の行列を作成し、該類似度の行列から比較指標を算出し、該比較指標が上位の前記既知試料を検索する工程、
とを含むことを特徴とする複数成分からなる未知試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
第1の発明の下位概念の発明である第2の発明については、前記未知試料及び前記既知試料それぞれにおける前記分離成分に対してデコンボリューション手法を適用して得られる精密分離成分のすべてまたは一部について前記ピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めてマススペクトルの集合を作成し、前記未知試料の前記マススペクトルの集合と前記既知試料の前記マススペクトルの集合を比較して類似度の行列を作成し、該類似度の行列から前記比較指標を算出し、該比較指標が上位の前記既知試料を検索する工程を含むことを特徴とする複数成分からなる未知試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
第1の発明または第2の発明のいずれか1項の下位概念の発明である第3の発明については、前記ピーク代表マススペクトルに対し、マススペクトル歪み補正を行った上で前記マススペクトルの集合を作成し、前記比較指標を算出する際、前記既知試料の前記分離成分または前記精密分離成分の合算ピーク強度、ピーク面積またはユニークさ少なくともいずれか1つの重みづけ係数で重みづけして前記比較指標を算出することを特徴とする複数成分からなる未知試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法である。
第4の発明については、クロマトグラフで分離された試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラムから精密分離成分を得るためのデコンボリューション手法であって、
質量電荷比ごとの抽出イオンクロマトグラムにおける各ピークの頂点近傍の測定点をもとに、空間内挿補正及び質量スキャンタイム補正を用いてピークの真頂点保持時間を算出し、真頂点保持時間が近い成分において、その互いのイオン強度分布プロットまたはQ−Qプロットの傾きが直線である集合をもって同一の精密分離成分とすることを特徴とするデコンボリューション手法である。
第5の発明は、複数成分からなる未知試料に対し第1の発明から第3の発明のいずれか1項の解析方法を実行するための情報処理装置である。
第6の発明は、第5の発明の情報処理装置を起動させるためのプログラムであって、コンピュータの演算部を機能させるためのプログラムである。
第7の発明は、第6の発明のプログラムがコンピュータで読み取り可能な記録媒体である。この記録媒体としては、例えば磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM、DVD、CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリーカードを含む)、光カード等のカード類、あるいはマスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROM等の半導体メモリ類などを用いることができる。
熱分解GC/MSで複数成分から構成される未知試料、特に高分子の試料などについて、得られたクロマトグラム及びマススペクトルを解析することで迅速に構成物質や構成高分子を推定する方法を提供できる。
本発明の情報処理装置 クロマトグラフ質量分析で得られるクロマトグラムの例 マススペクトルの例 質量分析におけるサイクルタイムとスキャンタイムの関係を表す図 分析及び解析のフロー図 未知試料と既知試料の比較工程を示すフロー図 未知試料または既知試料のマススペクトルの集合の作成工程を示すフロー図 イオン強度飽和時のマススペクトル抽出方法 精密デコンボリューション工程のフロー図 精密デコンボリューションにおける真ピーク頂点の集合から高時間分解クロマトグラムを作成するときの概念図 図10で得られた高時間分解クロマトグラムのプロット 比較指標算出のフロー図 類似度の行列から比較指標の1つである含有確率を算出する概念図 類似度の行列から保持時間基準選択工程を経て比較指標の1つである含有確率を算出する概念図 真頂点保持時間が同一でピーク形状が異なる分離成分が重なっている例 イオン強度分布プロット
本発明における好適な実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
(分析装置の構成)
本発明の情報処理装置は図1のように前処理及びサンプリング部1、分離部2、質量分析部3の下流につながれているデータ処理部4、印刷出力部5及び画面表示部6である。前処理及びサンプリング部1については、高分子試料では熱分解装置が好ましく、このほか試料を揮発させる加熱脱着サンプリング装置、ヘッドスペースサンプリング装置または液体直接注入装置を使用することができる。また、低濃度の揮発性試料またはガス試料に対しては吸着剤捕集−加熱脱着法を用いることの好ましく、溶媒抽出法や固相マイクロ抽出(SPME)法なども好ましく使用できる。
本発明では複数の成分を含む混合試料を解析の対象とするので、クロマトグラフによる分離部2が必要である。分離された各成分は、クロマトグラフ後段の質量分析部3で検出され、クロマトグラムが得られる。クロマトグラムは図2に示すように、保持時間及び質量電荷比についてのイオン強度のデータである。クロマトグラフにはガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフまたはキャピラリー電気泳動などを使用できるが、キャピラリーカラムを用いることで、高い分離性能が得られるガスクロマトグラフが最も好ましい。本発明では、クロマトグラフによって分離された個々の成分について2種以上の分子イオンまたはフラグメントイオンが生じることが望ましい。よって、質量分析部3におけるイオン化手法は、電子イオン化が望ましい。質量分析部3における上記イオン化によって生じたイオンを検出する質量分析計には、四重極質量分析計または四重極マスフィルターと飛行時間型質量分析計を結合したいわゆるQ−TOFなどを使用することができる。
(質量分析計)
四重極質量分析計または四重極マスフィルターでは、上記のように四重極を構成する4本に印加する電圧を変化させることによって、特定の質量電荷比(m/z)のイオンを検出できる。そこで、質量の異なるイオンをもれなく順次検出するため、上記電圧を変化させて、あらかじめ定めた質量範囲で低質量側から高質量側または高質量側から低質量側へ質量スキャンする。このようにして1スキャンで予め設定した質量スキャン範囲におけるイオンの強度すなわちマススペクトルが得られる。なお、本明細書においてイオン強度をアバンダンスまたはAbundanceと表記することもある。マススペクトルは保持時間に対応付けられているが、そもそも質量を走査しながら順次検出するという物理的制約から、同じ成分に対する抽出イオンクロマトグラムのピーク位置がm/z値によって若干異なるという課題がある。この補正方法に関しては後述する。1スキャンに要する時間、すなわちサイクルタイムは図4のように質量スキャン範囲におけるスキャンタイムと、最初のスキャン質量に戻すリセットタイムを合算した値である。上記サイクルタイムは長くすれば検出感度は向上し、短くすれば検出感度が低下するというトレードオフの関係にある。また、スキャンナンバーと保持時間は相互に変換でき、スキャンナンバーとサイクルタイムを乗算した値が保持時間となる。なお上記マススペクトルにおいて、最大イオン強度を示すイオン成分のイオン強度を1として、最大イオン強度未満のイオン成分のイオン強度を最大イオン強度に対する相対値で表すことを正規化と呼び、正規化したマススペクトルを正規化マススペクトルと呼ぶ。
(質量分析計のチューニング)
質量分析計では、フラグメントパターンが既知のチューニング標準物質を使ったチューニングが通常行われる。チューニングにより、イオン源各部の電圧調整、マス軸の較正及び感度の調整などが行われる。しかし、多くの分析を行っていると、イオン源に汚れが蓄積するなどして感度の変化が起こることがあり、例えば高質量における感度低下という現象が現れてマススペクトルが歪みことがある。このときのマススペクトル歪み補正方法については後述する。
(クロマトグラフ質量分析で得られるクロマトグラム)
クロマトグラフ質量分析で得られるクロマトグラムは、保持時間方向にマススペクトルの情報が付属した3次元データであり、各フラグメントイオン又は分子イオンのイオン強度が単一の保持時間に対応付けられたデータである。
(クロマトグラムとマススペクトル)
本明細書において、「マススペクトル」とは、m/z値ごとのイオン強度の情報を示すデータであって、例えば、クロマトグラムから、任意の保持時間におけるマススペクトルを抽出することができる。また、あるm/z値におけるイオン強度を保持時間の関数として表すことによって抽出イオンクロマトグラムが得られる。本明細書において「ピーク」とは、クロマトグラムまたは抽出イオンクロマトグラムにおいて、山なりのピーク形状を示す部分であって、ベースラインから区別できる部分を呼び、ピークの頂点における保持時間を頂点保持時間と呼ぶ。また、ある保持時間におけるm/z値が異なるイオン強度を合算したものを「合算イオン強度」と呼び、合算イオン強度を保持時間の関数として表すことによってトータルイオンクロマトグラムが得られる。
(分析対象試料)
本発明の解析対象試料は、クロマトグラフ質量分析で分析できるものであれば特に限定されない。すなわち石油化学製品、有機溶剤、環境汚染物質、農薬、香料、医薬品、食品、農作物を含む植物または微生物などを対象に適用できる。中でも熱分解GC/MSで分析可能な高分子試料に対して最も好ましく適用できる。
(データ処理部4の詳細な機能構成)
データ処理部4は図1に示すように、入力処理部41、演算部42、データ記憶部43、主制御部44、出力処理部45からなる。分離部2及び質量分析部3で得られる検出データは入力処理部41に入力され、演算部42で後述する解析処理が行われる。解析結果は、データ記憶部43に前もって保存された既知試料の情報と比べることで比較指標が算出され、その結果が出力処理部45を通して印刷出力部5(例えばプリンタ)や画面表示部6(例えばディスプレイ)などに出力される。データ処理部4には、このような機能を備えたコンピュータが適しており、パソコン、タブレット端末、スマートフォンなどを用いることができるが、中でもパソコンが好ましい。また、データ処理部4で記憶されたクロマトグラムや後述するマススペクトルの集合を、外部データ処理部に、直接的にまたはメモリーカードなどの記憶媒体を介して間接的に転送して上記外部データ処理部で解析を行うこともできる。上記外部データ処理部は、質量分析部3と接続されていないことを除けばデータ処理部4と同じ構成と機能のものを好ましく使用できる。
本発明における分析及び解析のフロー図は、図5に示すように各部に対応する前処理及びサンプリング工程S1、分離工程S2、質量分析工程S3、及びデータ処理工程S4である。
(データ処理工程S4)
図1の情報処理装置を用いて、保持時間及び質量電荷比毎のイオン強度の情報、すなわちクロマトグラムが得られる。図5に示すデータ処理工程S4においてクロマトグラムのデータ処理を行う。図6は、データ処理部4で実施するデータ処理工程S4の詳細な機能構成を示すフロー図である。データ処理工程S4は、未知試料のマススペクトルの集合Usmp作成工程S41、既知試料のマススペクトルの集合U作成工程S411、未知試料と既知試料間の比較指標算出工程S42及び比較結果表示工程S43からなる。
(ピーク代表マススペクトル抽出工程)
未知試料のマススペクトルの集合Usmp作成工程S41あるいは既知試料のマススペクトルの集合U作成工程S411は、図7のようにピーク代表マススペクトル抽出工程S41a及びマススペクトル群作成工程S41bからなる。ピーク代表マススペクトル抽出工程S41aは、標準マススペクトル抽出工程S4101aまたは純粋マススペクトル抽出工程S4102aのいずれか一方である。標準マススペクトル抽出工程S4101aはトータルイオンクロマトグラムに対してピークを検出し、各ピークのピーク代表マススペクトルを抽出する工程である。純粋マススペクトル抽出工程S4102aは、クロマトグラムに対しデコンボリューションを行うことで、トータルイオンクロマトグラムに対してはピークを識別できないなどの理由で抽出が難しいピークを検出したり、隣接するピークやバックグラウンドの影響が排除されたピーク代表スペクトルを抽出する工程である。ピーク代表マススペクトル抽出工程S41aに続いて実施するマススペクトル群作成工程S41bでは、得られた上記ピーク代表マススペクトルをスキャンナンバーrt、保持時間RT、保持指標RI、合算イオン強度ISUM及びピーク面積Aと関連づけて表1のような表形式のデータを作成する。表1の各行はピーク成分と呼ぶ。なお、保持指標RIを同時に記録することは必須ではない。というのは、保持指標RIは、炭素数既知のアルカン混合試料を同条件で分析して各アルカンの保持時間を記録し、未知試料の上記保持時間との相対比較によって算出されるものであり、必ずしも常に把握されている値ではないからである。
Figure 2021177130
(標準マススペクトル抽出工程S4101a)
標準マススペクトル抽出工程S4101aでは、トータルイオンクロマトグラムに対してピークを検出し、該ピークに対するピーク代表スペクトルを作成する。ピーク代表スペクトルを作成する方法には公知の方法か、後述するイオン強度飽和時のマススペクトル抽出方法を用いることができる。トータルイオンクロマトグラムに対してピーク代表マススペクトルを作成する公知の方法としては、ピーク最高部におけるマススペクトルを抽出する方法のほか、ピーク最高部近傍のマススペクトルを平均化して求めたり、ピーク開始保持時間から終了保持時間までのマススペクトルを平均化するなどの方法も利用できる。さらに、ピーク開始点やピーク終了点またはその近傍のベースライン点のマススペクトルを減算することも好ましい。なお、クロマトグラフで分離された成分の溶出量が質量分析計におけるイオン化工程や検出工程にとって過負荷になるとイオン強度が飽和することがある。イオン強度の飽和が生じたときは、後述するイオン強度飽和時のマススペクトル抽出方法でピーク代表マススペクトルを求めることも好ましい。
(イオン強度飽和時のマススペクトル抽出方法)
イオン強度が飽和したときは、図8に例示するようにイオン強度が飽和した箇所のピーク形状が平らになることが特徴として現れる。このときは、単にピーク最高部やその近傍のマススペクトルを抽出すると、飽和したイオンの強度が適切に反映されないため、正確なマススペクトルが得られないことがある。この場合は次のようなイオン強度飽和時のマススペクトル抽出方法を用いてマススペクトルを抽出することが好ましい。ますそのピーク成分を構成するピーク構成イオン群(m/z=m,m,・・,m)を作成する。次にイオン強度が大きいまたは飽和している部分(平らな部分)が長いことを示すイオン成分について、イオン強度が飽和していないところのデータ点群の傾きを求める。図8の例では、ピーク開始点t,飽和開始点t、飽和終了点t、ピーク終了点tに対し、ピーク構成イオン群のうち、m/z値がmであるイオン成分の抽出イオンクロマトグラムの傾きaはピーク開始点tと飽和開始点t間のすべてまたは一部のデータ点群の傾きa、飽和終了点tとピーク終了点t間のすべてまたは一部のデータ点群の傾きの絶対値a’、若しくは両者の平均のいずれか1つで推定できる。このような操作をピーク構成イオン群に含まれる全m/z(mからm)のイオンについて行うことで、上記ピーク構成イオン群に対する傾きの集合すなわちUa=(am1,am2,・・,amn)が求められ、これをマススペクトルとして用いることができる。なお、イオン強度が飽和していないところのデータ点群の傾きを求めるときの保持時間の範囲は、すべてのm/z値に対して共通である。すなわち、同じ処理対象ピークについてt,t,t、tの値は共通である。
(純粋マススペクトル抽出工程S4102a)
夾雑物が多い試料では、目的成分を精度良く抽出するため、成分同士を分離することが重要である。そこで、近接する成分を精密に分離するためにデコンボリューションを行うことも好ましい。純粋マススペクトル抽出工程S4102aでは、公知の方法でデコンボリューションを行ったのち、標準マススペクトル抽出工程と類似の方法でピーク代表マススペクトルを抽出することもできるし、または以下に述べる精密デコンボリューション工程でピーク代表マススペクトルを抽出することもできる。
(精密デコンボリューション工程)
純粋マススペクトル抽出工程S4102aの1つである精密デコンボリューション工程は、図9のように抽出イオンクロマトグラム作成工程S51、抽出イオンクロマトグラムピーク抽出工程S52、ピークのクラスタリングによる精密分離成分作成工程S53、及び高時間分解クロマトグラムによる精密分離成分作成工程S54からなる。
(抽出イオンクロマトグラム作成工程S51)
抽出イオンクロマトグラム作成工程S51では、分析時の質量スキャン範囲の各m/z値における抽出イオンクロマトグラムを抽出する。
(抽出イオンクロマトグラムピーク抽出工程S52)
抽出イオンクロマトグラムピーク抽出工程S52では上記抽出イオンクロマトグラムに対してピークを抽出し、ピーク開始保持時間、ピーク頂点保持時間及びピーク終了保持時間を同時に記録する。ピークの抽出は公知の方法で実施できる。抽出イオンクロマトグラムにおけるピークは、離散サンプリングされた各スキャン点のイオン強度で構成されているので、スキャンタイムが長い場合、必ずしもピーク頂点を正確にサンプリングできない場合がある。そこで、より真値に近いピークの頂点保持時間すなわち真頂点保持時間を算出して頂点保持時間として記録することが必要となる。真頂点保持時間は、次の推定頂点保持時間または補正推定頂点保持時間のいずれか一方である。なお、ここで真頂点保持時間はスキャンナンバーrtで算出される。
(真頂点保持時間)
真頂点保持時間は、ピーク形状近似またはスキャン点微分のいずれか一方で算出される。ピーク形状近似では、上記スキャン点をピーク形状近似関数にフィッティングさせ、サンプリングされたスキャン点間のデータを空間内挿して得られるピークの最大点すなわち推定ピーク頂点の保持時間を推定頂点保持時間rtmax,eとする。上記ピーク形状近似関数としては例えば2次関数、3次関数、ガウス関数またはローレンツ関数などを用いることができる。フィッティングに供する上記スキャン点はピークを構成する点から複数選ぶ。上記スキャン点は、イオン強度が最大となる点Pmax(rtmax,Imax)を含む3点以上50点以下が好ましい。
上記スキャン点微分は、イオン強度が最大となる点Pmax(rtmax,Imax)を含むピーク近傍における複数のスキャン点において、スキャンナンバーrtが1つ前のイオン強度との差分値ΔIが算出され、差分値ΔIが0となる、すなわち極大値をとるスキャンナンバーrtを推定頂点保持時間rtmax,eとする方法である。これは、上記複数のスキャン点におけるスキャンナンバーrtとΔIとの関係に対し1次関数、2次関数、3次関数またはガウス関数の微分関数などの推定微分関数でフィッティング、つまり空間内挿し、該推定微分関数が0となるスキャンナンバーrtを求めることによって実施できる。
このようにして求められた推定頂点保持時間rtmax,eから、推定ピーク頂点(rtmax,e,Imax)が求められる。さらに前述のように、m/z値によって実際のスキャンナンバーと記録されるスキャンナンバーにずれがあるので、推定頂点保持時間rtmax,eをもとにより真値に近い推定頂点保持時間を求めるため、補正推定頂点保持時間rtmax,cを算出することも好ましい。例えば質量スキャン方向が低質量から高質量の場合は式1で、質量スキャン方向が高質量から低質量の場合は式2で補正推定頂点保持時間を計算できる。ここで、tscanはスキャン基準のスキャンタイムでmは抽出イオンのm/z値、mmaxは質量スキャン範囲の最大質量であり、mminは質量スキャン範囲の最小質量である。このようにして得られた補正推定頂点保持時間とピークの最大イオン強度Imaxとから、補正ピーク頂点(rtmax,c,Imax)が得られる。真頂点保持時間には上記推定頂点保持時間か補正推定頂点保持時間のどちらかを用いることができるが、補正推定頂点保持時間がより好ましい。このようにして得られる推定ピーク頂点または補正ピーク頂点の集合として真ピーク頂点の集合が得られる。このような操作を全m/z値の抽出イオンクロマトグラムに対して行うことで各m/z値の真ピーク頂点の集合が得られる。ここで、スキャンナンバーrtは整数値であるが、以上のようにして計算で求められる真頂点保持時間は小数値である。
(数1)
rtmax,c=rtmax,e+tscan×(m−mmin)/(mmax−mmin
(数2)
rtmax,c=rtmax,e+tscan×(mmax−m)/(mmax−mmin
(精密デコンボリューション工程における精密分離成分の作成)
精密デコンボリューション工程における精密分離成分の作成は、以下に示すピークのクラスタリングによる精密分離成分作成工程S53または高時間分解クロマトグラムによる精密分離成分作成工程S54でなされる。
(ピークのクラスタリングによる精密分離成分作成工程S53)
m/z値が異なる抽出イオンクロマトグラムから得られる真ピーク頂点であって、真頂点保持時間が近い該真ピーク頂点は同じ分離成分由来と推定できる。そこで、真頂点保持時間が近い真ピーク頂点の集合をもって、同一の精密分離成分とすることができる。真頂点保持時間が近いとは、真頂点保持時間の差が所定の閾値以下であることを基準にしても良いし、真頂点保持時間を入力とする機械学習手法を用いてクラスター分けすることで判別しても良い。上記機械学習手法として、例えばk−平均法、凝集型クラスタリング手法などを用いることができる。このようにして、同一の精密分離成分であるピーク構成イオン群(m/z=m,m,・・m)が求められる。
(高時間分解クロマトグラムによる精密分離成分作成工程S54)
(高時間分解クロマトグラム作成工程S54a)
真頂点保持時間が近い真ピーク頂点を抽出するための高時間分解クロマトグラムは次の手順で作成される。まず真頂点保持時間は、適当な時間解像度で丸める。例えば時間解像度10倍では、時間刻み(単位時間)は0.1スキャンとなる。このように設定した時間解像度に丸めたあとで、図10に例示した概念図のように真ピーク頂点の集合から高時間分解クロマトグラムを作成する。高時間分解クロマトグラムは真ピーク頂点の集合をm/z値の区別無く時系列(真頂点保持時間順)に並べたものについて作成したクロマトグラムである。このとき同一の単位時間に割り当てられた異なるm/z値のイオン強度は合算される。例えば図10で得られた高時間分解クロマトグラムをプロットすると図11のようになる。
(高時間分解クロマトグラムピーク抽出工程S54b)
次に得られた高時間分解クロマトグラムに対しピーク検出を行う。ピーク検出は公知の方法で実施できる。ピーク開始点とピーク終了点の間に真頂点保持時間が位置する真ピーク頂点を抽出することで、該真ピーク頂点が属するm/z値から、各ピークに対するピーク構成イオン群(m/z=m,m,・・m)が求められる。なお、上記時間解像度は増加させれば、近接した成分同士の分離能が高まるが、一方では元来同じ成分であるものを異なる成分と誤検出するリスクが高まる。このように時間解像度と誤検出のリスクはトレードオフの関係にあるため、適切に設定することが好ましい。
(イオン強度分布プロットまたはQ−Qプロット)
上記のように真頂点保持時間が近いことでピーク構成イオン群を求めたが、真頂点保持時間が近いイオンであるにも関わらず、同一の分離成分由来ではないことがある。このとき、ピークの形状(ピークの幅や左右対称性)が異なる場合は、異なる分離成分由来のイオンとして除去することができる。すなわち、上記ピーク構成イオン群が、同一の分離成分由来であることを確実にするため、イオン強度分布プロットまたはQ−Qプロットを行うことも好ましい。イオン強度分布プロットは、ピーク構成イオン群を構成するイオンの抽出イオンクロマトグラムに立ち戻って、該抽出イオンクロマトグラムのピーク開始点からピーク終了点までのイオン強度を、第1のm/z値のイオン強度に対して、他方第2のm/z値のイオン強度をプロットしたものである。もし、上記第1のm/z値のイオンと第2のm/z値のイオンが同一の分離成分由来であれば、上記イオン強度分布プロットは直線となるはずである。直線であることは、上記イオン強度分布プロットに対してフィッティングした近似直線の相関係数が0.95以上、好ましくは0.99以上であることで確認できる。そして、直線とならなかったイオンは上記ピーク構成イオン群から除かれる。イオン強度分布プロットの代わりに統計的手法であるQ−Q(クォンタイル−クォンタイル)プロットを用いて同様の操作をしても良い。
(精密デコンボリューションにおけるピーク代表マススペクトル抽出工程)
精密デコンボリューションにおけるピーク代表マススペクトルは、上記ピーク構成イオン群の選択元である真ピーク頂点のイオン強度から得ることもできるし、ピーク頂点近傍のイオン強度を平均化して得ることができるし、上記イオン強度飽和時のマススペクトル抽出方法を用いて得ることもできる。
(未知試料と既知試料間の比較指標算出工程S42)
未知試料と既知試料間の比較指標算出工程S42において、未知試料と既知試料を比較して比較指標を算出する方法には、未知試料が既知試料と一致する程度を調べる指標である一致率を求める方法と、未知試料に既知試料が含まれているかどうか調べる指標である含有確率を求める方法の2種類を主に用いることができる。未知試料と既知試料間の比較指標算出工程S42は図12のように、重みづけ工程S421、保持時間基準選択工程S422、マススペクトルの集合の比較工程S423、比較指標算出工程S424からなる。
(重みづけ工程S421)
重みづけ工程S421では、既知試料におけるマススペクトルの集合に含まれるピーク成分のうち、ピークが大きい、またはユニークさが高い該ピーク成分について比較指標を算出するときの寄与を大きくするための重みづけ係数を算出する。ピークが大きいとは、合算イオン強度やピーク面積が大きいことをいい、ユニークさとは、注目成分がその既知試料に特徴的でかつほかの既知試料には含まれない程度のことである。重みづけ係数は、合算イオン強度に比例する合算イオン強度基準重みづけ係数wiまたは、ピーク面積に比例するピーク面積基準重みづけ係数waを用いることも好ましく、次に述べるようにユニークさ基準重みづけ係数wuを用いることも好ましい。
(ユニークさ基準重みづけ係数)
ユニークさが高い成分に関して高い重みづけ係数を付与する方法として、例えば式3にあげるユニークさ重みづけ係数wuを用いることができる。ここでNRはすべての既知試料の数で、Dはピーク成分jが含まれる既知試料の数である。
(数3)
wu=log(NR/D
(保持時間基準選択工程S422)
保持時間基準選択工程S422は、保持時間または保持指標を基準に、未知試料と既知試料のどのピーク成分を比較するかを決める工程である。保持時間を基準にする場合、未知試料の各ピーク成分の保持時間を基準に、比較対象とする既知試料のピーク成分の保持時間幅を設定する。具体的には、未知試料と既知試料の分析条件が同等とみなせる場合、保持時間幅は未知試料の保持時間に対し30%以上300%以下が好ましく、50%以上200%以下がより好ましく、75%以上133%以下が最も好ましい。分離カラムが同等でも、分離カラムの温度プログラムが異なる場合には保持時間の代わりに保持指標を基準とすることも好ましい。保持指標は、基準成分との相対値(保持比)によって成分の溶出位置を普遍化した指数で、Kovatsの保持指標などを用いることができる。Kovatsの保持指標では、直鎖アルカンの炭素数を基準にして、成分の保持時間を指標化する。例えば昇温分析では保持指標RIは式4で表される。ここで、RTは成分Xの保持時間、RTは炭素数Nの直鎖アルカンの保持時間、RTn+1は炭素数n+1の直鎖アルカンの保持時間である。ただし、成分Xと直鎖アルカンの保持時間はRT≦RT<RTn+1を満たすものとする。保持時間基準選択工程S422で保持指標を基準にする場合、未知試料の各ピーク成分の保持指標を基準に、比較対象とする既知試料のピーク成分の保持指標幅を設定する。上記保持指標幅は未知試料のピーク成分の保持指標に対し75%以上133%以下が好ましく、90%以上110%以下がより好ましく、95%以上105%以下が最も好ましい。なお、分離カラムが異なるなど、保持時間の比較があまり意味をなさないような場合は、保持時間幅は既知試料の分析時間全体としても良い。この場合は、未知試料のピーク成分のマススペクトルは既知試料のすべてのピーク成分のマススペクトルと比較されることになる。
(数4)
RI=100×(RT−RT)/(RTn+1−RT)+100N
(マススペクトルの集合の比較工程S423)
保持時間基準選択工程S422に続くマススペクトルの集合の比較工程S423では、未知試料のすべてまたは一部のピーク成分のマススペクトルと、既知試料のピーク成分のすべてまたは一部であって、上記未知試料の各ピーク成分について設定された保持時間幅に含まれるピーク成分のマススペクトルを総当たりで比較する。上記「一部」として選択するのは、合算イオン強度またはピーク面積を基準にしてある閾値を超えるものを対象とするなどの方法が利用できる。マススペクトルの比較は、正規化したマススペクトル同士で行う。マススペクトルはベクトルとして表現され、マススペクトルの比較は、上記ベクトルの間の類似度を算出することでなされる。未知試料のピーク成分iと既知試料のピーク成分jとの間の類似度をpi,jで表す。類似度が大きいほど、そのピーク成分同士が類似していることを示している。類似度としては、コサイン類似度などのほかに、ユークリッド距離、マハラノビス距離などの距離を0以上1以下となるように正規化して、1から減じることで得られる疑似類似度を代わりに用いることができる。上記類似度の中ではコサイン類似度が最も好ましい。
(マススペクトル歪み補正)
前述したように、多くの分析を行っているとマススペクトルに歪みが生じることがある。そこで、次に述べる方法でマススペクトル歪み補正を行うことも好ましい。マススペクトル歪み補正の一例としては、予め既知試料分析時にマススペクトル歪み補正用の標準物質のマススペクトルを取得しておき、未知試料分析に近い時点で取得した該マススペクトル歪み補正用の標準物質のマススペクトルと比較することで、歪みを補正する方法がある。補正式としては1次式、1次式の逆数、2次式、2次式の逆数、多項式、対数式または指数式等の任意の関数を用いることができる。マススペクトル歪み補正用の標準物質としては、PFTBA(パーフルオロトリブチルアミン)、DFTPP(デカフルオロトリフェニルフォスフィン)などのほか、任意の物質を用いることができる。
(比較指標算出工程S424)
マススペクトルの集合の比較工程S423に続く比較指標算出工程S424では、例えば、上記のマススペクトルの集合の比較を行ったすべての既知試料と未知試料の組み合わせに対し、得られた類似度pi,jを図13や図14のような類似度の行列にまとめ、類似度の行列から既知試料のピーク成分ごとに類似度の最大値pj,maxを計算することで未知試料に対する既知試料の一致率または含有確率を算出する。一例として重みづけを行わない場合の一致率MRは式5で表され、重みづけを行わない場合の含有確率IRは式6で表される。ここで、kは類似度の最大値pj,maxが閾値pth以上となる既知試料のピーク成分数で、nは既知試料の比較対象としたピーク成分数で、mは未知試料の評価対象としたピーク成分数である。重みづけを行う場合の含有確率IRは例えば式7で表される。ここで、wは重みづけ係数で、bは既知試料のj番目のピーク成分に関する未知試料中の存在確率を表す数値で、存在すれば1、そうでなければ0と2値化しても良いし、上記類似度の最大値pj,maxそのものを代入しても良い。2値化する場合は、例えばpj,max>pthであればbは1で、pj,max<=pthであればbは0とすることが好ましい。重みづけ係数wは重みづけ工程S421で算出された重みづけ係数のいずれか1つであっても良いし、異なる重みづけ係数を複数組み合わせることを妨げない。例えば、合算ピーク強度基準重みづけ係数wiとユニークさ基準重みづけ係数wuを積算して算出しても良い。
(数5)
MR=k/(n+m−k)
(数6)
IR=k/n
Figure 2021177130
(比較結果表示工程S43)
以上のようにして未知試料の各既知試料に対する比較指標を算出することができるので、既知試料の中から比較指標が上位の試料を検索し、その一覧を比較結果表示工程S43によって、ディスプレイなどの画面上に表示したり、プリントアウトすることなどが可能である。
本発明は未知試料(特に高分子材料)を推定する方法、特に迅速にスクリーニングする手法を提供する。具体的にはガスクロマトグラフ等のクロマトグラフで分離された成分を、質量分析部で分析することで得られるクロマトグラムからピークを抽出し、すべてのピークまたは一部のピークについて得られるピーク代表マススペクトルを集めた「マススペクトルの集合」を予め取得した既知試料と比較して比較指標を算出し、比較指標が上位の既知試料を検索する解析方法である。さらに本発明は複数の試料から構成される未知試料における構成成分も推定できる解析方法を提供する。
以下、本発明について実施例を示して、より具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
試料の前処理装置として熱分解装置はフロンティア・ラボ株式会社製EGA/PY−3030Dを用いた。ガスクロマトグラフはアジレント・テクノロジー株式会社製7890Bを用い、分離カラムはUA−5(30m×0.25mm, 0.25μm)を用いた。ガスクロマトグラフで分離された成分を分析する質量分析計には四重極質量分析計のアジレント・テクノロジー株式会社製MS5977Aを用いた。質量スキャン範囲はm/z=29〜550とした。分析対象試料にポリエチレン−ポリエチレンテレフタレート(PE−PET)多層フィルムを用い、熱分解温度600℃、試料量約0.2mgでクロマトグラムを取得した。本実施例における解析手順を以下に述べる。PE−PETのクロマトグラムに対して精密デコンボリューション(高時間分解クロマトグラムによる精密分離成分作成工程を経る方法)を行い、ピーク成分を抽出した。ピーク成分を抽出する基準は、全ピーク中最大の合算イオン強度に対し2%以上の合算イオン強度とした。次に抽出した各ピーク成分からマススペクトルの集合を作成した。同様にして、既知試料としてPE,PP,PET,PBT,PC,PA6,PA66,PS,ABS,NR,PU,NBR及びPVCの高分子試料について、熱分解温度600℃、試料量約0.2mgでクロマトグラム(パイログラム)を取得した。各ピーク成分に対する重みづけは行わなかった。次に、PE−PET試料と各既知試料の間でマススペクトルの集合を比較して含有確率を算出した。算出した含有確率を表2に示す。PE−PET試料で検索された既知試料は、一致率が大きい順に、PE,PET、PS,PBTとなり上位2つがPE及びPETであった。このように構成する高分子種を明確に同定できた。本実施例は、高分子試料の熱分解生成物をガスクロマトグラフで分離して四重極質量分析計で検出したときのクロマトグラムにおいて、デコンボリューションを行った後ピークを抽出し、各ピークにおけるマススペクトルを抽出して集めることでマススペクトルの集合を求め、別途既知試料の高分子試料について得られたマススペクトルの集合との間で比較指標である含有確率を求めることで、未知高分子試料に含まれる複数の高分子を既知試料の中から検索することができることを示す例である。
Figure 2021177130
(実施例2)
実施例1において、分析対象試料としてポリエチレン−ポリアミド6多層フィルム(PE−PA6)及びポリプロピレン−ポリアミド6多層フィルム(PP−PA6)を加え、重みづけをした含有確率を算出した。まず上記分析対象試料についてマススペクトルの集合を求め、一方既知試料では、重みづけ工程において抽出したピーク成分の合算ピーク強度基準の重みづけ係数を算出し、マススペクトルの集合を求めた。次に上記分析対象試料のマススペクトルの集合と、上記既知試料のマススペクトルの集合との間で重みづけした含有確率を算出した結果を表3に示す。PE−PET試料で検索された既知試料は、含有確率が大きい順に、PE,PET、PS,PBTとなり上位2つがPE及びPETであった。PE−PA6試料で検索された既知試料は、含有確率が大きい順に、PE,PA6、PBT、NBRとなり上位2つがPE及びPA6であった。PP−PA6試料で検索された既知試料は、含有確率が大きい順に、PP,PA6、PET、PA66となり上位2つがPP及びPA6であった。
本実施例は高分子試料の熱分解生成物をガスクロマトグラフで分離して四重極質量分析計で検出したときのクロマトグラムにおいて、デコンボリューションを行った後ピークを抽出し、各ピークにおけるマススペクトルを抽出して集めることでマススペクトルの集合を求め、別途既知試料の高分子試料について得られたマススペクトルの集合を算出した後に重みづけを行って、比較指標である含有確率を求めることで、未知高分子試料に含まれる複数の高分子を既知試料の中から検索することができることを示す例である。
Figure 2021177130
(実施例3)
実施例2において、得られたマススペクトルの集合を構成する各マススペクトルについて以下のマススペクトル歪み補正を行った。本実施例において、マススペクトル歪み補正用標準物質としてPFTBAを用いた。既知試料分析時に上記PFTBAのマススペクトルを取得したところm/z69に対するm/z219及び502のイオン強度はそれぞれ66%及び5%であった。一方、未知試料分析時に上記PFTBAのマススペクトルを取得したところ、m/z69に対するm/z219及び502のイオン強度はそれぞれ41%及び2.6%であった。そこで、未知試料について取得したマススペクトルの集合を構成する各マススペクトルについて、m/z69における検出感度を基準にし、m/z291の感度低下(=41/61)及びm/z502の感度低下(=2.6/5)を既知資料分析時と同等のイオン強度に補正するように、m/z値がmにおける補正したイオン強度Im,cを式8で算出した。ここで、Iはm/z値がmにおける補正前のイオン強度である。
上記補正されたイオン強度を用いたマススペクトルの集合を用いて含有確率を求めたところ、表4が得られた。実施例2と比較してPE−PETにおけるPETに対する含有確率やPE−PA6におけるPA6に対する一致率などが向上した
本実施例は高分子試料の熱分解生成物をガスクロマトグラフで分離して四重極質量分析計で検出したときのクロマトグラムにおいて、デコンボリューションを行った後ピークを抽出し、各ピークにおけるマススペクトルを抽出して該マススペクトルの歪み補正をしてから集めることでマススペクトルの集合を求め、別途既知試料の高分子試料について得られたマススペクトルの集合を算出した後に重みづけを行って、比較指標である含有確率を求めることで、未知高分子試料に含まれる複数の高分子を既知試料の中から検索することができることを示す例である。
(数8)
Im,c=I/(−0.0010×m+0.980)
Figure 2021177130
(実施例4)
図15は真頂点保持時間が同一であるが、ピーク形状が異なる2つの分離成分が混在している様子を表す。白丸は第1の成分であってm/z値が異なるイオンのa1、a2及びa3をプロットしたもの。+印は第2の成分であってm/z値が異なるイオンのb1、b2及びb3をプロットしたものである。これに対し、本発明のデコンボリューション手法におけるイオン強度分布プロットを適用したところ、図16が得られた。これによるとa1、a2及びa3内のすべての組み合わせに対し、フィッティングした近似直線の相関係数は0.99以上となり、かつb1、b2及びb3内のすべての組み合わせに対し、同相関係数は0.99以上となった。一方、a1、a2及びa3からなる群とb1、b2及びb3からなる群の間のすべての組み合わせに対し、同相関係数は0.95未満であった。本実施例は、本発明のデコンボリューション手法は真頂点保持時間が同一であっても、ピーク形状が異なる複数の成分を分離可能なことを示す例である。
本発明は、各種化学分析事業所、高分子化合物製造業、環境分析事業所、医薬品製造業、食品製造業などで、未知試料の検索をするのに利用される。
1 … 前処理及びサンプリング部
2 … 分離部
3 … 質量分析部
4 … データ処理部
41 … 入力処理部
42 … 演算部
43 … データ記憶部
44 … 主制御部
45 … 出力処理部
5 … 印刷出力部
6 … 画面表示部

Claims (7)

  1. クロマトグラフで分離された複数成分からなる未知試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法であって、
    未知試料における前記分離成分のすべてまたは一部についてピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めてマススペクトルの集合を作成する工程と、
    既知試料における前記分離成分のすべてまたは一部についてピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めてマススペクトルの集合を作成する工程と、
    前記未知試料の前記マススペクトルの集合と前記既知試料の前記マススペクトルの集合を比較して類似度の行列を作成し、該類似度の行列から比較指標を算出し、該比較指標が上位の前記既知試料を検索する工程、
    とを含むことを特徴とする複数成分からなる未知試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  2. 前記未知試料及び前記既知試料それぞれにおける前記分離成分に対してデコンボリューション手法を適用して得られる精密分離成分のすべてまたは一部について前記ピーク代表マススペクトルを抽出し、該ピーク代表マススペクトルを集めてマススペクトルの集合を作成し、前記未知試料の前記マススペクトルの集合と前記既知試料の前記マススペクトルの集合を比較して類似度の行列を作成し、該類似度の行列から前記比較指標を算出し、該比較指標が上位の前記既知試料を検索する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の複数成分からなる未知試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  3. 前記ピーク代表マススペクトルに対し、マススペクトル歪み補正を行った上で前記マススペクトルの集合を作成し、前記比較指標を算出する際、前記既知試料の前記分離成分または前記精密分離成分の合算ピーク強度、ピーク面積またはユニークさ少なくともいずれか1つの重みづけ係数で重みづけして前記比較指標を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の複数成分からなる未知試料について得られるクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法。
  4. クロマトグラフで分離された試料の分離成分をイオン化して質量分析計で得られるクロマトグラムから精密分離成分を得るためのデコンボリューション手法であって、
    質量電荷比ごとの抽出イオンクロマトグラムにおける各ピークの頂点近傍の測定点をもとに、空間内挿補正及び質量スキャンタイム補正を用いてピークの真頂点保持時間を算出し、真頂点保持時間が近い成分において、その互いのイオン強度分布プロットまたはQ−Qプロットの傾きが直線である集合をもって同一の精密分離成分とすることを特徴とするデコンボリューション手法。
  5. 請求項1から3のいずれか一項に記載のクロマトグラム及びマススペクトルの解析方法を実行するための情報処理装置。
  6. 請求項5に記載の情報処理装置を起動させるためのプログラムであって、コンピュータの演算部を機能させるためのプログラム。
  7. 請求項6に記載のプログラムがコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023204089A1 (ja) * 2022-04-18 2023-10-26 日東電工株式会社 ヌクレオシドホスホロアミダイト識別システム、ヌクレオシドホスホロアミダイト識別方法及びプログラム

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