JP2019172827A - 蛍光体 - Google Patents

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Shinnosuke Akiyama
真之介 秋山
慶 豊田
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慶 豊田
将人 森
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将人 森
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Abstract

【課題】レーザー光の照射面とは反対側へのレーザー光の抜けが低減され、色むらを抑制でき、蛍光強度を増大させることが可能な蛍光体を提供する。【解決手段】蛍光体は、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相と、が3次元的に複合化された蛍光体であって、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙が前記3次元的に複合化された蛍光体中に分散している。【選択図】図1

Description

本発明は、高エネルギー密度を有するレーザー光によって励起させ、白色光を得るための蛍光体に関する。
青色発光ダイオード(LED)の実用化に伴い、青色LEDを用いた白色光源の技術開発が進められている。この白色光源は、従来の光源であるハロゲンランプやディスチャージランプ(HID)と比較して消費電力が非常に小さく、製品寿命がとても長いことが特徴である。
これらの白色光源は、ある特定波長の光を放つ励起光源と、その光を吸収して蛍光を放つ蛍光体と、を組み合わせたものである。一般的には、青色光源からの光と、黄色蛍光体からの光と、を合成することで白色光を得る構成が知られている。
また、近年、高輝度プロジェクターや車載ヘッドライト分野において、さらなる高輝度化への要望が高まっており、青色LEDよりも高輝度を実現することができる青色レーザー(LD)を励起光源とした白色光源に注目が集まっている。
しかしながら、LD光はLED光と比較してエネルギー密度が非常に高くなるため、蛍光体に照射したときに発する熱量が増加する。この発熱量増加は蛍光体の信頼性低下や温度消光等の問題を引き起こすため、発光量が減少する。
したがって、LD光と蛍光体を組合せた白色光源を実現する場合、高エネルギー密度を有するLD光の照射下で、蛍光体の温度消光等によって発光量が減少しない蛍光体が求められている。
これらのレーザー励起光源に対応した蛍光体としては、出力密度の高いレーザー光照射下においても、その発光量を維持することのできる耐熱性の高い蛍光体が必要とされる。
特許文献1には、金属の酸化物と二種以上の金属の酸化物から生成される複合酸化物とからなる群から選ばれる二種以上の酸化物を夫々成分とする二種以上のマトリックス相から形成されている凝固体において、各マトリックス相が連続的にかつ三次元的に配列されて相互に絡み合って存在し、該マトリックス相の少なくとも一つが蛍光体相であるセラミック複合材料が開示されている。この蛍光体は、例えば、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相とが複合したものである。
特許第4609319号
ところが、上記特許文献1のように各マトリックス相が連続的にかつ三次元的に配列されて相互に絡み合って存在している蛍光体に、青色LDのようなエネルギー密度の高い光が照射すると、前記発光性を有するマトリックス相においては青色光から黄色に変換された光が360度方向に放射されるのに対して、前記熱伝導性を有するマトリックス相においては青色光が変換されることなく、入射した青色光が導波し、蛍光体外に放射される。このため、最終的に我々が認識する光は中心が青くその周囲が黄色に色づいた、いわゆるイエローリングを有する状態となり色むらが発生することとなる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、レーザー光の照射面とは反対側へのレーザー光の抜けが低減され、色むらを抑制でき、蛍光強度を増大させることが可能な蛍光体を提供することを目的とする。
本発明に係る蛍光体は、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相とが3次元的に複合化された蛍光体であって、
前記発光性を有するマトリックス相と、前記熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙が前記3次元的に複合化された蛍光体中に分散している。
以上のように、本発明に係る蛍光体によれば、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙の境界で、光散乱が発生する。更に、空隙が蛍光体中で分散していることから、レーザー光の照射面とは反対側へ導波したレーザー光の抜けが低減され、色むらを抑制すること、および、蛍光強度を増大させることが可能となる。
実施の形態1に係る蛍光体の断面図である。 (a)〜(c)は、実施の形態1に係る蛍光体を得るための引下げプロセスを表す概略図である。 実施の形態1にて説明した蛍光体の色むらを測定するために使用した装置を表す概略図である。 実施の形態1にて説明した蛍光体の蛍光強度を測定するために使用した装置を表す概略図である。
第1の態様に係る蛍光体は、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相とが3次元的に複合化された蛍光体であって、
前記発光性を有するマトリックス相と、前記熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙が前記3次元的に複合化された蛍光体中に分散している。
第2の態様に係る蛍光体は、上記第1の態様において、前記発光性を有するマトリックス相は金属酸化物であり、前記金属酸化物中の一部の金属元素がランタノイド元素に置換された構造であることを特徴とする。
第3の態様に係る蛍光体は、上記第1又は第2の態様において、前記熱伝導性を有するマトリックス相は、金属酸化物であることを特徴とする。
上記構成によって、発光性の有するマトリックス相より発生する熱を、熱伝導性を有するマトリックス相に効率的に伝導し、放熱させることができる。
第4の態様に係る蛍光体は、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記発光性を有するマトリックス相と、前記熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙の平均径が、350nm以上5μm以下であることを特徴とする。
第5の態様に係る蛍光体は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記蛍光体中の前記空隙の体積分率である空隙率が、0.01vol%以上、5vol%以下であることを特徴とする。
上記構成によって色むらを低減し、かつ蛍光強度を増大させることが可能な蛍光体を実現することができる。
第6の態様に係る蛍光体の製造方法は、蛍光体の融液の原料となる酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムとの各粉末と、を坩堝内で、酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムのそれぞれの融点以上の温度で加熱して、融液とし、
前記坩堝の底の穴部にYAl12又はAlの種結晶を接触させ、
前記種結晶に前記融液が濡れた状態を確認後に、
前記坩堝と前記種結晶との間隔を5.0mm/分以上10.0mm/分以下の速度で離間させて前記融液を凝固させ、
前記種結晶について蛍光体を成長させる。
第7の態様に係る蛍光体の製造方法は、上記第6の態様において、前記蛍光体の融液は、
前記酸化アルミニウムと前記酸化イットリウムと前記酸化セリウムとについて、アルミニウムAl、セリウムCe、イットリウムYの各元素の合計を100モル%として、75モル%以上85モル%以下のアルミニウムを含み、且つ、0.02モル%以上0.4モル%以下のセリウムを含み、且つ、残部がイットリウムである。
以下、実施の形態に係る蛍光体について添付図面を参照しながら詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る蛍光体100の断面図である。
実施の形態1に係る蛍光体100は、発光性を有するマトリックス相101と熱伝導性を有するマトリックス相102と、上記発光性を有するマトリックス相と、上記熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙103と、から構成されている。また、この空隙103は、蛍光体100内に分散していることを特徴とする。
上記蛍光体100では、発光性を有するマトリックス相101と、熱伝導性を有するマトリックス相102と、が3次元的に複合化されている。例えば、発光性を有するマトリックス相101と、熱伝導性を有するマトリックス相102と、が互いに不規則に入り組んだ構造を有する。また、発光性を有するマトリックス相101と、熱伝導性を有するマトリックス相102のいずれかの母材中に他方が不規則な島状に分布してもよい。それぞれが櫛歯状に構成されていてもよい。このように発光性を有するマトリックス相101と熱伝導性を有するマトリックス相102との接触面積を大きくすることによって発光性を有するマトリックス相101で発生する熱を効率よく熱伝導性を有するマトリックス相102に伝えることができる。なお、図1の構造は一例であって、蛍光体100の構造は上記構造に限定されない。
また、この蛍光体100によれば、レーザー光を照射した際、蛍光体100中の空隙103によって、蛍光体100内部での光の散乱が発生し、レーザー光の照射面とは反対側へ導波したレーザー光の抜けが低減され、色むらを抑制することができる。
以下、蛍光体100を構成する要素ごとに詳述する。
(発光性を有するマトリックス相)
発光性を有するマトリックス相101は、母体結晶を構成する一部の元素が、発光源となる元素に置換された構造を有する。母体結晶の構造としては数多く存在する結晶の中でも、ガーネット構造を有するYAl12あるいはLuAl12であることが望ましい。この構造はYあるいはLuと、この後に述べる熱伝導性を有するマトリックス相102であるAlとからなり、複合体を作製する観点では非常に好適である。
また、発光源となる元素としては、ランタノイド系元素が挙げられるが、その中でもCe元素を選択することが望ましい。上述したように発光源となる元素は、母体結晶を構成する一部の元素と置換されるが、特に、Ceは、YAl12あるいはLuAl12の一部であるY元素あるいはLu元素と置換した際に、それぞれ黄色および緑色の優れた発光を示すことから好適である。
(熱伝導性を有するマトリックス相)
熱伝導性を有するマトリックス相102は、物性として熱伝導率の高いものを選択することができ、金属酸化物や金属窒化物などが知られているが、不活性ガス雰囲気下でも安定である金属酸化物を使用することが望ましい。中でも、発光性を有するマトリックス相101を構成する酸化物の1つであり複合体を形成しやすいという観点からAl2O3を使用することがさらに好ましい。
(空隙)
ここでの空隙103とは、発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空間を意味する。この空隙103の境界で、光散乱が発生し、更に空隙が蛍光体中で分散していることからレーザー光の照射面とは反対側へ導波したレーザー光の抜けが低減され、色むらを抑制することおよび蛍光強度を増大させることが可能となる。青色光の導波を抑制するために光学的干渉を発現させるという観点から、入射光の波長が450nmの場合は、空隙の平均径はその近傍となる350nm以上とすることが好ましい。ここでの空隙の平均径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって取得した蛍光体の断面画像を、画像解析処理にてマトリックス相と空隙とに分け、各空隙部の長径を測定し、空隙数で除した値とする。
光の取り出し効率の低下を抑制するという観点から、空隙103の平均径は、5μm以下とすることがさらに好ましい。また、蛍光体100中における空隙103の割合としては、0.01vol%以上、5vol%以下とすることが望ましい。0.01vol%より少ない場合、所望の散乱効果を得ることができない。5vol%より多い場合、光の取り出し効率の低下するため、十分な光量が得ることができない。よって、0.01vol%以上、5vol%以下とすることが好適である。
(蛍光体の製造方法)
本実施の形態1に係る蛍光体100を作製するために結晶引下げ装置を使用できる。図2の(a)〜(c)は、本実施の形態1における引下げプロセスを表す概略図である。
(1)蛍光体の融液の原料として、例えば、酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムと、の各粉末と、を坩堝に入れる。酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムと、の各粉末は、アルミニウムAl、セリウムCe、イットリウムYの各元素の合計を100モル%として、75モル%以上85モル%以下のアルミニウムを含み、且つ、0.02モル%以上0.4モル%以下のセリウムを含み、且つ、残部がイットリウムとなるように用意する。
なお、アルミニウムのモル分率が70モル%以下では発光性を有するマトリックス相を構成するYAl12の粗大化を生じるおそれがある。一方、アルミニウムのモル分率が90モル%以上では熱伝導性を有するマトリックス相を構成するAlの粗大化を生じるおそれがある。セリウムのモル分率が0.01モル%以下では発光性を有するマトリックス相を構成するYAl12内で発光中心の役割を果たすセリウムが少ないため蛍光出力が低下する。一方、セリウムのモル分率が0.45モル%以上では発光性を有するマトリックス相を構成するYAl12内で近接するセリウムが多くなる。近接するセリウムが多くなると基底状態から励起状態に電子が遷移した場合に拡がる電子雲が互いに重なり合うこととなる。これにより励起状態にある電子が近接する電子雲に移動する確率が高くなり、基底状態に戻る前に失活する場合がある。したがって、蛍光出力および蛍光出力維持率は低下する。
なお、上記イットリウムYに代えてルテチウムLuを用いてもよい。この場合、酸化イットリウムに代えて酸化ルテチウムを用いる。
(2)この結晶引下げ装置は、高周波コイル5と、耐火材6と、融液4を内部に有する坩堝3とを備える。この結晶引下げ装置では、加熱源として高周波コイル5を有しており、高周波誘導加熱の原理により、結晶引下げ装置内に設置されている坩堝3が加熱される(図2(a))。このときの加熱温度は、原料粉末が完全に溶融するように、例えば、1900℃以上2000℃以下とする。これによって、上記原料の酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムとが溶融した融液4となる。坩堝3を保温するために周囲は耐火材6で覆われている。したがって、坩堝3内の融液4は高周波コイル5との物理的な接触なしに加熱される。
(3)坩堝3の底面には小さな穴が開いている。この坩堝3の底面に種結晶2を接触させる(図2(b))。なお、種結晶2には、例えば、YAl12あるいはLuAl12の種結晶、又は、Alの種結晶を用いることができる。
(4)融液4が種結晶2の面に濡れ広がったことを確認した後に種結晶2を引き下げることで融液4を凝固させる(図2(c))。なお、種結晶2を引き下げる場合に限られず、坩堝3を引き上げてもよい。あるいは、坩堝3の底面の穴と種結晶2との間隔を離間させるように、少なくとも一方を移動させてもよい。
これによって、発光性を有するマトリックス相101と熱伝導性を有するマトリックス相102と、空隙103と、から構成された蛍光体ロッド1を得ることができる。
なお、固体中と融液中とに存在できる溶存酸素量は異なり、一般的に固体中の方が小さい。このため、融液を引き下げて凝固させる際に、固体中に存在できなくなった酸素が融液側へと拡散する。引下げあるいは引き上げの坩堝3の底面の穴と種結晶2との離間速度を5.0mm/分以上10.0mm/分以下の速度で制御することで酸素が拡散する前に凝固することができ、固体中に空隙を作製することが可能となる。空隙の大きさおよび分散状態を制御することができる。これによって、発光性を有するマトリックス相101と熱伝導性を有するマトリックス相102と、空隙103から構成された蛍光体ロッド1を得ることができる。
以下、実施例に基づき、さらに具体的な説明をする。
(実施例)
(1)前記融液4の原料となる純度99.9%の酸化アルミニウム(Al)粉末と酸化イットリウム(Y)粉末と、酸化セリウム(CeO)粉末と、を所定の比率で混合し、坩堝3にいれる。坩堝の底部には、5mm角、高さ2mmの突起が設けられており、さらに突起の5mm角の底面中央には、φ1mmの貫通孔が設けられている。坩堝3の内径は20mm、内壁高さは30mmである。そして、不活性ガス雰囲気下にて高周波コイル5の出力を上昇させる。このとき溶融温度は、原料粉末が完全に溶融するように1900℃以上2000℃以下とした。
(2)その後、種結晶2を坩堝3の底部と接触させる。すると、坩堝3の底から融液4が種結晶2に濡れ始める。種結晶2には、YAl12の種結晶又はAlの種結晶を用いる。
(3)種結晶2の表面に融液4が濡れ広がったことを確認した後、種結晶を徐々に引下げて融液4を凝固させる。具体的には、坩堝3の底部の貫通孔に対して5.0mm/分以上、10.0mm/分以下の離間速度で種結晶を引き下げる。
これにより、種結晶2について蛍光体が成長した蛍光体ロッド1が作製できる。
蛍光体ロッド1の断面形状は、上述の坩堝3底面の突起と、同サイズ、同形状となり、5mm角である。得られた蛍光体ロッド1は、公知の方法で切断、研磨などの加工により所望の厚みの蛍光体100とする。本実施例においては厚みを100μmとした。つまり本実施例における蛍光体100のサイズは5mm角、厚み100μmである。
実施の形態1の蛍光体100の効果を明らかにするために、異なる条件によって作製した蛍光体を用意した。
以下、本実施例における実施例および比較例として挙げた蛍光体の作製条件について詳述する。
実施例1は、種結晶の引き下げ速度が6.0mm/分であって、発光性を有するマトリックス相101としてYAl12:Ce、熱伝導性を有するマトリックス相102としてAl、空隙103として平均径450nmの空隙103が存在している場合の例である。
実施例2は、種結晶の引き下げ速度が5.0mm/分である点、及び、空隙103の平均径が350nmである点を除いて実施例1と同様である。
実施例3は、種結晶の引き下げ速度が10.0mm/分である点、及び、空隙103の平均径が5μmである点を除いて実施例1と同様である。
実施例4は、発光性を有するマトリックス相101がLuAl12:Ceである点を除いて実施例1と同様である。
実施例5は、種結晶の引き下げ速度が5.5mm/分である点、及び、空隙103が0.01vol%である点を除いて実施例1と同様である。
実施例6は、種結晶の引き下げ速度が7.0mm/分である点、及び、空隙103が5vol%である点を除いて実施例1と同様である。
比較例1は、種結晶を引き下げることなく結晶化させ、空隙103が存在していない、蛍光体100である。
比較例2は、種結晶の引き下げ速度が4.5mm/分である点、及び、熱伝導性を有するマトリックス相を有さず、空隙103の平均径が300nmである点を除いて実施例1と同様である。
比較例3は、種結晶の引き下げ速度が25.0mm/分である点、及び、熱伝導性を有するマトリックス相を有さず、空隙103の平均径が20μmである点を除いて実施例1と同様である。
比較例4は、種結晶の引き下げ速度が5.3mm/分である点、及び、熱伝導性を有するマトリックス相を有さず、空隙103が0.005vol%である点を除いて実施例1と同様である。
比較例5は、種結晶の引き下げ速度が7.5mm/分である点、及び、熱伝導性を有するマトリックス相を有さず、空隙103が7vol%である点を除いて実施例1と同様である。
以上の蛍光体100について、青色レーザーを照射した際、照射した反対側から放射する光の色むらおよび蛍光強度について評価した。
(色むら)
図3は、作製した測定試料9である蛍光体の色むらを測定するために使用した測定装置を表す概略図である。この測定装置は、青色レーザー7、f200レンズ8、測定試料9、f75平凸レンズ10、光検出器11を備える。
測定試料9である蛍光体に照射する青色レーザー7は、出力5W、波長450nmであり、その径を0.5mmとなるようにし、蛍光体9から放射された光をf75平凸レンズ10にてコリメート光にする。次いで、もう1つのf75平凸レンズ10にて光検出器11に集光することで、蛍光体9から放射された直後の光の状態を検出できるように設定した。
実施例および比較例における蛍光体9に対し、青色レーザー7を入射した面とは反対面から放射される発光成分を光検出器11に集光させ、中心部におけるスペクトルを測定する。
中心部のスペクトルの波長450nmにおける強度Ibと波長530nmの強度Iyの比Ib/Iyを求める。実施例4については、蛍光色が黄色ではなく、緑色であるため、中心部のスペクトルの波長450nmにおける強度Ibと波長505nmの強度Igの比Ib/Igを求める。色むらの判定基準については下記の通りとした。
・青色レーザーの抜けが改善し車載ヘッドライト用途に用いることが可能な範囲として Ib/Iyまたは、Ib/Igが0.3以下を◎とした。
・青色レーザーの抜けが改善し一般照明用途に用いることが可能な範囲として Ib/Iyまたは、Ib/Igが0.3より大きく、0.6以下を○とした。
・青色レーザーの抜けが不十分な範囲として Ib/Iyまたは、Ib/Igが0.6より大きい場合△とした。
(蛍光強度)
図4は、作製した蛍光体9の蛍光強度を測定するために使用した測定装置を表す概略図である。この測定装置は、青色レーザー7、f200レンズ8、測定試料9、f75平凸レンズ10、青色光カットフィルター12、光強度検出器13を備える。
実施例および比較例における蛍光体に対し、青色レーザー7を入射した面とは反対面から放射される蛍光成分を光強度検出器13に集光させ、蛍光強度を測定する。
なお、光強度検出器13の検出上限を超えない範囲で測定するために、照射する青色レーザー7のエネルギー密度を1.5W/mmに調整した。また、青色光が黄色光に変換された蛍光強度のみを測定するために、光強度検出器13の前に青色光カットフィルター12を設置した。蛍光強度の判定基準については下記の通りとした。
・光学製品の中でも車載ヘッドライト用途に用いることが可能な範囲として 蛍光出力が40mW以上を◎とした。
・光学製品の中でも一般照明用途に用いることが可能な範囲として 蛍光出力が30mW以上を○とした。
・光学製品への適用に適合してない範囲として 蛍光出力が30mW未満を△とした。
(総合判定)
各実施例および比較例において、色むら、蛍光強度ともに◎のものを◎、少なくとも△が1個以上あるものを△、それ以外のものを○とした。
表1に各条件の試料について測定し、判定した結果を示す。
Figure 2019172827
実施例1と比較例1との対比から、実施の形態1に係る蛍光体は、色むらを抑制しながら高い蛍光強度を実現できる蛍光体であることが分かる。
実施例2と比較例2との対比より、空隙の平均径が350nmの場合は、色むらを抑制し高い蛍光強度を実現できることがわかるが、空隙の平均径が350nmより小さい300nmの場合は、色むらの発生を十分抑制することができないことがわかる。
実施例3と比較例3との対比より、空隙の平均径が5μmの場合は、色むらを抑制し高い蛍光強度を実現できることがわかるが、空隙の平均径が5μmより大きい20μmでは、蛍光強度が十分でないことがわかる。
実施例1および実施例4の対比よりガーネット構造を有するYAl12あるいはLu3Al5O12を母体結晶として利用すると優れた蛍光強度を得られることがわかる。
実施例5と比較例4との対比より、空隙が0.01vol%の場合、色むらを抑制し、高い蛍光強度を実現できることがわかるが、空隙が0.01vol%より低い0.005vol%の場合では、色むらの発生を十分抑制することができないことがわかる。
実施例6と比較例5との対比より、空隙が5vol%の場合、色むらを抑制し、高い蛍光強度を実現できることがわかるが、空隙が5vol%より高い7vol%の場合では、蛍光強度が十分でないことがわかる。
本発明に係る蛍光体は、高エネルギー密度を有するレーザー光照射下において色むらが少なく、蛍光強度に優れていることから、高輝度照明として利用できる可能性が高い。
1 蛍光体ロッド
2 種結晶
3 坩堝
4 融液
5 高周波コイル
6 耐火材
7 青色レーザー
8 f200レンズ
9 測定試料(蛍光体)
10 f75平凸レンズ
11 光検出器
12 青色光カットフィルター
13 光強度検出器
100 蛍光体
101 発光性を有するマトリックス相
102 熱伝導性を有するマトリックス相
103 空隙

Claims (7)

  1. 発光性を有するマトリックス相と、熱伝導性を有するマトリックス相と、が3次元的に複合化された蛍光体であって、
    前記発光性を有するマトリックス相と、前記熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙が前記3次元的に複合化された蛍光体中に分散している、蛍光体。
  2. 前記発光性を有するマトリックス相は金属酸化物であり、前記金属酸化物中の一部の金属元素がランタノイド元素に置換された構造であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
  3. 前記熱伝導性を有するマトリックス相は、金属酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光体。
  4. 前記発光性を有するマトリックス相と、前記熱伝導性を有するマトリックス相の一方または両方で囲まれた空隙の平均径が、350nm以上5μm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の蛍光体。
  5. 前記蛍光体中の前記空隙の体積分率である空隙率が、0.01vol%以上、5vol%%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の蛍光体。
  6. 蛍光体の融液の原料となる酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムとの各粉末と、を坩堝内で、酸化アルミニウムと酸化イットリウムと酸化セリウムのそれぞれの融点以上の温度で加熱して、融液とし、
    前記坩堝の底の穴部にYAl12又はAlの種結晶を接触させ、
    前記種結晶に前記融液が濡れた状態を確認後に、
    前記坩堝と前記種結晶との間隔を5.0mm/分以上10.0mm/分以下の速度で離間させて前記融液を凝固させ、
    前記種結晶について蛍光体を成長させる、蛍光体の製造方法。
  7. 前記蛍光体の融液は、
    前記酸化アルミニウムと前記酸化イットリウムと前記酸化セリウムとについて、アルミニウムAl、セリウムCe、イットリウムYの各元素の合計を100モル%として、75モル%以上85モル%以下のアルミニウムを含み、且つ、0.02モル%以上0.4モル%以下のセリウムを含み、且つ、残部がイットリウムである、請求項6に記載の蛍光体の製造方法。
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