JP2019165676A - 植物病害防除剤及び植物病害の防除方法 - Google Patents

植物病害防除剤及び植物病害の防除方法 Download PDF

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杉尋 安藤
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Abstract

【課題】植物病害の防除に使用される細菌集団、植物病害防除剤、及び植物病害の防除方法を提供する。【解決手段】有機資材から分離し貧栄養培地にて培養した細菌集団。【選択図】図3

Description

本発明は、細菌集団、該細菌集団を含む植物病害防除剤、及び該細菌集団を用いた植物病害の防除方法に関する。
我国の水稲の育苗は農協等の育苗センターで一括して行われることが多いが、育苗の環境は多湿になりやすいなど、病害が発生するリスクが高い。病害の発生を防除するために従来技術では化学農薬の使用が行われることが多い。化学農薬は効果が強くコスト的にも優れているため、化学農薬を用いた防除のシェアは 90%を超えると言われている。しかしながら、環境負荷の観点から、化学農薬に強く依存した農業体系は問題視される。また、化学農薬の多用は耐性菌の出現リスクを高めるため、対策が必要となっている。
化学農薬を使用しない防除法として、生物農薬又は微生物を用いた生物防除資材の使用が挙げられる(特許文献1及び特許文献2)。生物農薬に用いられる微生物は土壌、植物の表面や細胞間隙等、環境中の様々な場所から分離されている。しかしながら、このような生物農薬又は生物防除資材は防除の効果が不安定で、防除に労力がかかるため、特別な理由がない限り選択されないのが現状である。
また、慣行農業で用いられている育苗土には、病原菌や雑菌の除去を目的に、製造工程で加熱処理が行われていることが多い。しかしながら、このことが逆に育苗土の微生物相を貧弱化させ、病原菌の侵入に対して脆弱になる要因となっていると考えられる。
特許第3776919号 特許第5635792号
本発明が解決すべき課題は、植物の病害防除に優れ、かつ環境への負荷が少ない細菌集団、該細菌集団を含む植物病害防除剤、及び該細菌集団を用いた植物病害防除方法を提供することにある。
有機農業は化学農薬を使用せずに病害虫管理を行う農法であるが、化学農薬を使用しないにも関わらず有機農業が成立する要因のーつとして、水稲の有機栽培に用いられる育苗土に病害防除効果があることを見出し、育苗土中の微生物相の多様性と環境変化に対する堅牢性(robustness、育苗土中の水分含量や植物栽培等等の環境影響があっても細菌分布の変化が少ないこと)が病害防除機能に重要である可能性を示した。さらに、有機栽培育苗土等の有機資材から細菌集団を培養し、これを溶媒に懸濁した菌液を育苗土に施用することで病害防除効果が得られることを発見し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
[1]有機資材から分離し貧栄養培地にて培養した細菌集団。
[2]前記貧栄養培地が、培地1L当たり、肉エキス成分が100 mg以下、酵母エキス成分が100 mg以下、かつペプトンが100mg以下である培地である[1]に記載の細菌集団。
[3][1]又は[2]に記載の細菌集団を含む植物病害防除剤。
[4]前記植物病害がイネ苗病害である[3]に記載の植物病害防除剤。
[5][1]又は[2]に記載の細菌集団を溶媒に希釈した懸濁液である[3]又は[4]に記載の植物病害防除剤。
[6][1]又は[2]に記載の細菌集団又は[3]〜[5]のいずれか一項に記載の植物病害防除剤によって、植物の種子、苗、育苗土壌又は育苗培地を処理することを含む植物病害の防除方法。
[7]有機資材から細菌集団を分離すること、及び
分離した細菌集団を貧栄養培地で培養することからなる細菌集団の製造方法。
本発明の細菌集団、植物病害防除剤及び植物病害の防除方法によれば、育苗土の多様性を維持しつつ、植物の病害を効果的に防除することができる。また、本発明の細菌集団、植物病害防除剤及び植物病害の防除方法は、化学農薬よりも環境への負荷を減らすことができる。また、人畜に対する安全性も高い。
また、本発明に用いられる細菌集団は有機資材由来であることから、有機農業に適用可能な技術として、有機農業の普及にも役立つことが期待される。
(A)イネ種子にイネもみ枯細菌病菌を接種した後、慣行栽培育苗土(加熱処理済)と有機培養育苗土でイネを生育した場合の写真。(−)は病原菌接種なし、(+)は病原菌接種あり。(B)(A)において病原菌を接種した場合の、慣行栽培育苗土(加熱処理済)と有機培養育苗土における発病度を示すグラフ。 細菌集団を含む懸濁液の調製及び発病検定の説明図。 (A)対照、NA普通培地、1/1000希釈したNA普通培地、DR2A培地でイネを生育した場合の写真。(−)は病原菌接種なし、(+)は病原菌接種あり。(B)9日間培養した後の病徴を4段階に分け、その割合を示したグラフ。(C)各処理区における病原菌のPCR増幅した16rDNAのゲル電気泳動を示す写真。 (A),(C)富栄養培地で培養した細菌集団を含む懸濁液の施用によるイネもみ枯細菌病発病を示す写真、(B),(D)9日間培養した後の病徴を4段階に分け、その割合を示したグラフ。 (A)繰り返し培養の土壌細菌の病害抑制効果への影響を示す写真。(B)9日間培養した後の病徴を4段階に分け、その割合を示したグラフ、(C)16SrDNAのゲル電気泳動を示す写真。
本明細書において「有機資材」とは、肥料として用いられる有機物を含む材料である。有機資材としては、バーク、油粕、キノコ栽培残渣、オガクズ、苔、炭、草木炭、泥炭、ピートモス、腐葉土、米ぬか、稲わら、もみ殻、フスマ、樹木の繊維、発酵、乾燥又は焼成した動物の排泄物由来の資材、食品工場又は繊維工場からの資材、食品廃棄物由来の資材、これらから選ばれた一つ又は複数を含む堆肥、これらから選ばれた一つ又は複数を含む育苗土も含む。有機資材は、植物の育苗前に殺菌のための加熱処理を行わない。なお、加熱処理とは通常、70℃以上、30分間以上で行う処理を指す。
本明細書において「貧栄養培地」とは、有機資材から分離した細菌の少なくとも一部が増殖可能な培地であって、培地1L当たり、肉エキス成分が100 mg以下、酵母エキス成分が100 mg以下、かつペプトンが100mg以下である培地を指す。好ましくは、貧栄養培地は、培地1L当たり、肉エキス成分が10 mg以下、酵母エキス成分が10 mg以下、かつペプトンが10 mg以下である。
本明細書において「防除」とは、予防、駆除、又はその両方を指す。植物の病害には、植物の病害を予防することと、植物の病害を抑制又は排除することが含まれる。
本発明の第1の態様は、有機資材から分離し貧栄養培地にて培養した細菌集団である。
有機資材からの細菌集団の分離は、公知の細菌の分離法を用いて行うことができる。例えば、有機資材を水、緩衝液等の溶媒に入れて混合し、上澄みの一部を採集することにより、有機資材から細菌集団を分離することができる。
有機資材から分離した細菌集団は、貧栄養培地で培養する。貧栄養培地は、市販の細菌培養用の培地をそのまま用いることもできるし、市販の細菌培養用の培地を希釈したものを用いることもできる。
貧栄養培地としては、希釈した普通寒天培地(NA培地)、DR2A寒天培地、希釈したPPGA培地、希釈したLB培地、土壌抽出物培地(土壌を水に懸濁し、オートクレーブ処理をすることで成分を抽出した上清)等が挙げられる。普通寒天培地の希釈倍率は、10〜100000倍であることが好ましく、100〜10000倍であることがより好ましく、1000〜10000倍であることがさらに好ましい。PPGA培地の希釈倍率は、10〜100000倍であることが好ましく、100〜10000倍であることがより好ましく、1000〜10000倍であることが好ましい。なお例示として、NA培地の組成は培地1L中、乾燥ブイヨン 3.0g、寒天 2.0g、蒸留水 100mLを含む。DR2A培地の組成は、酵母エキス 0.005g、ペプトン 0.005g、カザミノ酸 0.005g、グルコース 0.005g、リン酸三カリウム 0.003g、ピルビン酸ナトリウム 0.003g、硫酸マグネシウム 0.00024g、寒天 1.0g、蒸留水 100mlである。PPGA培地の組成はジャガイモ 200g、ペプトン 5g、グルコース 5g、Na2HPO4・12H2O 3g、KH2PO4 0.5g、NaCl 3g、蒸留水 1L、寒天 15gを含む。LB培地の組成はトリプトン10 g、酵母抽出物 5 g、NaCl 10 g、蒸留水1Lを含む。
培養は平板培養、斜面培養、液体培養等の任意の培養とすることができ、培養には公知の培養手段を使用することができる。培養温度及び培養時間は特に限定されないが、20〜30℃、1〜4日とすることが好ましい。また、細菌集団が植物の防除機能を失わない限り、培養は繰り返し行ってもよい。つまり、細菌集団として、有機資材から細菌集団を分離し、これを第1の培地で培養し、培養物を水、緩衝液等の溶媒に入れて混合した懸濁液の一部を第2の培地で培養し、培養して得られた細菌集団、3回培養を繰り返した細菌集団、4回以上培養を繰り返した細菌集団も本発明の細菌集団に含まれる。ゲル化剤として1〜5%、特には2%前後のゲランガムを用いることで、繰り返し培養しても強い病害防除効果をもつ細菌集団を得ることが可能である。
予想外なことに、本願発明者は、有機資材から貧栄養培地を用いて細菌集団を作出することで、このような細菌集団の病害防除効果が高いことを見出した。よって、本発明の細菌集団は、植物病害の防除に有用である。
本発明の細菌集団により病害を防除される植物は特に限定されないが、野菜類、いも類、きのこ類、果実類、豆類、穀物類、種実類、観賞用植物類、シダ類、コケ類などであることができ、穀物類が好ましい。穀物類としてはイネ、コムギ、オオムギ、エンバク、ライムギ、アワ、キビ、ヒエ、トウモロコシ等が挙げられ、イネが好ましい。
本発明に係る植物病害防除剤は、特にイネ科植物に病害を引き起こす各種病害菌に対して有効であり、病害菌としては、イネいもち病菌であるマグナポルテ(Magnaporthe)属菌(例えば、Magnaporthe oryzae)、イネ籾枯細菌病菌であるブルクホルデリア(Burkholderia)属菌(例えば、Burkholderia glumae)、イネ紋枯病菌であるリゾクトニア(Rizoctonia)属菌(例えば、Rizoctonia sorani)、イネばか苗病菌であるジベレラ(Gibberella)属菌(例えば、Gibberella fujikuroi)、イネ褐条病菌であるシュードモナス(Psudomonas)属菌(例えば、Psudomonas avenae)、イネごま葉枯病菌であるコクリオボナス(Cochliobolus属菌(例えば、Cochliobolus miyabeanus)、イネ苗立枯細菌病菌であるシュードモナス(Psudomonas)属菌、リゾプス(Rhizopus)属菌、フザリウム(Fusarium)属菌、ピシュウム(Pythium)属菌、トリコデルマ(Trichoderma)属菌等を挙げることができる。
本発明の第2の態様は、上記の細菌集団を含む植物病害防除剤である。
本発明の植物病害防除剤における細菌集団の菌濃度は特に限定されるものでなく、適用される病害の種類や程度、施用方法、剤型に応じて適宜設定することができるが、1×104CFU以上とすることが好ましく、特には1×105〜108CFUの範囲とすることが好ましい。
本発明の植物病害防除剤は、細菌集団の培養物をそのまま或いは希釈して用いることもできるし、あるいは細菌集団の菌体を水、緩衝液等の溶媒に希釈した懸濁液を調製することもできる。本発明の植物病害防除剤は、公知の植物病害防除剤と同様に、水和剤、顆粒水和剤、乳剤等の各種製剤として調製することもできる。
本発明の第3の態様は、上記の細菌集団又は上記の植物病害防除剤によって、植物の種子、苗、育苗土又は育苗培地を処理することを含む植物病害の防除方法である。
細菌集団又は上記の植物病害防除剤については上述した通りである。
植物病害防除剤による植物の種子、苗、育苗土又は育苗培地の処理は、病害の種類や感染程度、施用範囲、剤型等に応じた方法で行うことができる。例えば、かかる処理としては、種子浸漬処理、種子粉衣処理、種子塗布処理、種子吹き付け処理、覆土への混和、床土への混和、育苗箱への施用、液剤かん注、株元散布、側条施用、水面施用、無人飛行機による散布等が挙げられる。
また、本発明に係る植物病害防除剤を施用する際には、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物成長促進剤、肥料、土壌改良資材等と混合してもよく、また、混合せずに交互に又は同時に併用してもよい。
本発明の第4の態様は、有機資材から細菌集団を分離すること、及び分離した細菌集団を貧栄養培地で培養、再混合することからなる細菌集団の製造方法である。
有機資材からの細菌集団の分離、及び分離した細菌集団の貧栄養培地における培養については第1の態様に関して説明した通りである。
本発明の細菌集団及び上記の植物病害防除剤を植物、育苗土又は育苗培地に施用することにより、植物病害を防除することができる。さらに、細菌集団添加後の育苗土の微生物相では、有機栽培育苗土と同様に、微生物相の多様性及び堅牢性を保つことができる。
よって、本発明の細菌集団、植物病害防除剤、及び植物病害の防除方法は、安全性が高く、環境保全の点でも優れている。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1 有機栽培育苗土による植物病害抑制効果
(方法)
有機栽培育苗土としては、東日本を中心とした各地の有機栽培農家が自作したもの(12点)を入手し解析に用いた(図は宮城県涌谷町の有機農家)。対照区としては市販の慣行栽培育苗土を用いた。イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病による苗腐敗症を対象病害とし、イネ(品種:コシヒカリ)の種子を温湯消毒後、2日間28℃で吸水し、はと胸期に達したところで、Burkholderia glumae (MAFF 302746)の菌液(OD600, 0.01)に浸漬し、5分間減圧接種を行った。接種後、各育苗土に播種し(7.5×7.5×5.5 cmのプラスティック容器を使用)、30℃一定条件(明期:14 h, 暗期10 h)で9日間培養し、発病検定を行った(図1A)。発病検定は病徴を4段階(0:無病徴、1:生育抑制・黄白化、2:半枯死、3:完全枯死)に分けて数え、発病度(Disease index, DI)を以下の式で算出した(図1B)。
有意差検定には、Steel-Dwass testを用いた。
(結果)
東日本を中心に全国12地点から有機栽培育苗土を収集し、イネもみ枯細菌病の抑制効果を検討した(図は宮城県涌谷町の有機農家)。対照としては市販の慣行栽培育苗土3点を用いた。その結果、慣行栽培育苗土では病原菌接種により激しい病徴を示し、枯死したのに対し、有機栽培育苗土に播種した場合は発病が有意に抑制された(図1A,図1B)。有機栽培育苗土では慣行栽培育苗土に比べてイネの生育が遅延するなどの特徴も認められたが(図1A)、解析した全ての有機栽培育苗土でイネもみ枯細菌病抑制効果が確認された。
実施例2 有機資材からの細菌集団の調製
(方法)
1 gの有機栽培育苗土に10 mlの滅菌水を加えて室温で1時間振とうし、土壌懸濁液を作製した。その後、100μlをNA普通培地又はPPGA培地に滴下し、均一に塗布して、暗所25 ℃で1日培養を行った。1/1,000希釈NA培地[支持剤として1%寒天又は2%ゲランガムを使用]、1/1,000希釈PPGA培地[支持剤として1%寒天]、DR2A培地[支持剤として1%寒天]では、2日間培養を行った。培養後、形成されたコロニーを滅菌水を加えて全て懸濁し、OD600の値を0.1に調製し、細菌集団液を得た(細菌Mix液)。
イネもみ枯細菌病菌(Burkholderia glumae:MAFF302746)は、PPGA培地を用い暗所25 ℃で2日間培養した。形成されたコロニーを滅菌水を加えて懸濁し、OD600の値を0.01に調製した。暗所28 ℃で2日間吸水させた種籾(品種:コシヒカリ)を蒸留水で1回洗い、イネもみ枯細菌病菌懸濁液に浸漬して、5分間減圧接種をした。その後、蒸留水で1回洗い、滅菌した慣行栽培育苗土に1ポットあたり25粒播種した。コントロールとして、イネもみ枯細菌病菌を接種せずに播種した処理区を設けた。プラスチック容器(7.5×7.5×5.5 cm)1ポットあたりの床土は、100 g、覆土は50 gとした。覆土後に、細菌Mix液を1ポットあたり10 ml添加した。その後、6:00-20:00 30 ℃ 明期(14 h)、20:00-6:00 30 ℃ 暗期(10 h)で9日間培養し、発病検定を行った(図2)。発病検定は実施例1と同様に行った。
実施例3 各種培地を用いた場合の植物病害防除の効果
1 gの有機栽培育苗土に10 mlの滅菌水を加えて室温で1時間振とうし、土壌懸濁液を作製した。その後、100 μlを1/1,000希釈NA培地[支持剤として1%寒天]又はDR2A培地[支持剤として1%寒天]に滴下し、均一に塗布して、暗所25 ℃で2日培養を行った。培養後、形成されたコロニーを滅菌水を加えて全て懸濁し、OD600の値を0.1に調製し、細菌集団液を得た(細菌Mix液)。実施例2に記載の通りにイネもみ枯細菌病菌を接種したイネ種子を播種した育苗土の細菌Mix液を添加し、9日間の培養の後に発病検定を行った。
細菌混合液(細菌Mix液)からのDNA抽出には、ISOPLANT II(ニッポンジーン)を使用し、推奨プロトコルに従って行った。土壌からのDNA抽出サンプルとして、発病検定に用いた育苗土(播種後9日目)の一部を採取して解析に用いた。土壌からのDNA抽出には、Fast DNA SPIN Kit for Soil (Q-BioGene)を使用した。操作はキットの推奨プロトコルに従って行った。さらに、細菌相の解析のため、土壌から抽出したDNAを鋳型にしてPCR法により、16S rDNAの増幅を行った。Forward Primerとして968f-GCプライマー(2 μM;5'-CGC CCG GGG CGC GCC CCG GGC GGG GCG GGG GCA CGG GGG GAA CGC GAA GAA CCT TAC-3'(配列番号1);下線部はGC clamp)とReverse primerとして1378rプライマー(2 μM;5'-CGG TGT GTA CAA GGC CCG GGA ACG-3'(配列番号2))を用い、TaKaRa Taq HS Low DNA(Takara)を使用して94 ℃で2分処理後、94 ℃で5秒、55 ℃で1秒、68 ℃で30秒の反応を35サイクルで反応を行った。
PCR産物の精製には、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(MACHEREY-NAGEL)で精製をした。本実験のDGGE解析は、農研機構農業環境変動研究センターの"土壌微生物群集(細菌・糸状菌)のPCR-DGGE解析 eDNAプロジェクト課題共通マニュアル Ver. 1.7"に従って行った。電気泳動終了後、ゲルをゲル板から外し、染色用の容器に移した。ゲルを適当量の1×TAE Bufferで洗浄し、Bufferを捨てた。1×TAEで希釈したエチジウムブロマイド溶液を注ぎ、10分程度染色をした。その後、トランスイルミネーターを用い電気泳動像を検出した。
(結果)
NA普通培地、1/1000希釈NA培地、DR2A培地を用いて培養して得た細菌Mix液をイネもみ枯細菌病菌を接種したイネ種子を播種した慣行栽培育苗土に添加したところ、NA普通培地から得た細菌Mixでは無添加区(Control)同様に激しい発病が認められたのに対し、1/1000希釈NA培地、DR2A培地から得た細菌Mixではイネもみ枯細菌病による苗腐敗症が抑制された(図3A、B)。この際の細菌集団をPCR-DGGE法を用いて解析した結果、添加した細菌Mixの細菌集団は培養に用いる培地の栄養生物の豊富さによって大きく変動することが確認された(図3C)。さらに、細菌Mix添加9日後の発病検定時の育苗土からDNAを抽出し、PCR-DGGE解析した結果、育苗土の微生物相は添加した細菌Mixとは異なっていたが、病害抑制効果が認められた場合には、病原菌の接種による細菌相の変動が小さく、形成される微生物相が安定している傾向が観察された。このことは、細菌Mixの添加により、土壌の微生物相の多様性とその堅牢性が回復し、その結果、病害発生が抑制された可能性を示唆するものである。
実施例4 富栄養培地を用いた場合の植物病害防除の効果
(方法)
栃木県芳賀町の育苗土を用いて、富栄養培地で培養した細菌を施用した場合の病害抑制効果について検討した。富栄養培地としては、NA普通培地及び、PPGA培地、LB培地[トリプトン10 g、酵母抽出物 5 g、NaCl 10 g、蒸留水1 L]、オートミール培地[オートミール粉末 30 g、砂糖 5 g、寒天 16 g、蒸留水1 L]を用いた。1 gの有機栽培育苗土に10 mlの滅菌水を加えて室温で1時間振とうし、土壌懸濁液を作製した。その後、100 μlをNA普通培地又はPPGA培地に滴下し、均一に塗布して、暗所25 ℃で1日培養を行った。培養後、形成されたコロニーを滅菌水を加えて全て懸濁し、OD600の値を0.1に調製し、細菌集団液を得た(細菌Mix液)。実施例2に記載の通りにイネもみ枯細菌病菌を接種したイネ種子を播種した育苗土の細菌Mix液を添加し、9日間の培養の後に発病検定を行った。
(結果)
NA普通培地及び、PPGA培地、LB培地、オートミール培地を用いて細菌集団を培養し、滅菌した慣行栽培育苗土に施用して9日後に発病検定を行った結果、本実施例の4種類の富栄養培地で培養して得られた細菌集団の施用では、イネもみ枯細菌病抑制効果は認められなかった(図4A〜D)。
実施例5 繰り返し培養の植物病害抑制効果に対する影響
(方法)
貧栄養培地を用いて有機栽培育苗土から得た細菌集団の病害抑制活性が繰り返し培養によって失われないことを確認するため、以下の実験を行った。実施例2に記載の通り土壌懸濁液(有機栽培育苗土 1g、滅菌水 10ml)100μlを1/1000NA培地に塗布後、25℃で2日間培養し、すべてのコロニーを滅菌水に懸濁し、OD600 0.1に調整 (1回培養;細菌Mix液(1))した。細菌Mix液(1)を 100μlとり、同様に培地に塗布し、25℃で2日間培養し、すべてのコロニーを滅菌水に懸濁し、OD600 0.1に調整 (2回培養;細菌Mix液(2))した。実施例2に記載の通りにイネもみ枯細菌病菌を接種したイネ種子を播種した育苗土の細菌Mix液を添加し、9日間の培養の後に発病検定を行った。
(結果)
図5A,Bによると、1回培養した場合も2回培養した場合も、同様にイネもみ枯細菌病を抑制していることが確認された。また、図5CのPCR-DGGE解析からは、多少の変動はあるものの、1回培養した場合も2回培養した場合も培養して得られた細菌相が、全体的には類似していることも確認された。さらに、土壌の細菌相については、繰り返し培養した場合でも、Control区の細菌相の変動に比べて、病原菌の接種の有無によらず比較的安定しており、1回培養の場合と同様の傾向が見られた。従って、1/1000希釈NA培地を用いることで、病害抑制効果のある細菌集団を繰り返し培養できることが示唆された。

Claims (7)

  1. 有機資材から分離し貧栄養培地にて培養した細菌集団。
  2. 前記貧栄養培地が、培地1L当たり、肉エキス成分が100 mg以下、酵母エキス成分が100 mg以下、かつペプトンが100mg以下である培地である請求項1に記載の細菌集団。
  3. 請求項1又は2に記載の細菌集団を含む植物病害防除剤。
  4. 前記植物病害がイネ苗病害である請求項3に記載の植物病害防除剤。
  5. 請求項1又は2に記載の細菌集団を溶媒に希釈した懸濁液である請求項3又は4に記載の植物病害防除剤。
  6. 請求項1若しくは2に記載の細菌集団又は請求項3〜5のいずれか一項に記載の植物病害防除剤によって、植物の種子、苗、育苗土壌又は育苗培地を処理することを含む植物病害の防除方法。
  7. 有機資材から細菌集団を分離すること、及び
    分離した細菌集団を貧栄養培地で培養することからなる細菌集団の製造方法。
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