JP2019156722A - 2価のイミノホスファゼニウム塩およびその製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1は、式(I)で示される特定の構造を有する1価のイミノホスファゼニウム塩を用いて、アルキレンオキシドの重合反応を行い、ポリオキシアルキレンオキシドを製造する方法を開示している。
ところで、ポリアルキレンオキシドはポリウレタンやポリエステル等の樹脂の原料として有用であって、その用途には室内や車内で用いられる製品が含まれる。ポリアルキレンオキシドやそれを用いた樹脂は、室内や車内などの生活空間において発生するアルデヒド類を低減することが強く求められている。
また、これらの樹脂が用いられる製品を製造する工程中において、当該樹脂が高温に曝されることがあるため、熱安定性に優れることが望まれている。
そこで、本発明の一態様は、中性であり、熱安定性およびアルデヒド捕捉能に優れる2価のイミノホスファゼニウム塩およびその製造方法を提供することに向けられている。
R1及びR2は、各々独立して、
水素原子、
炭素数1〜20の炭化水素基、
R1とR2とが互いに結合した環構造、または、
R1同士もしくはR2同士が互いに結合した環構造を表す;
A−は、有機スルホン酸の脱プロトン化体を表す。
式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩1モルに対し、2モル以上の有機スルホン酸を反応させることを特徴とする製造方法である:
本発明の一態様にかかる2価のイミノホスファゼニウム塩は、式(1)で示される2価のイミノホスファゼニウム塩である:
R1及びR2は、各々独立して、
水素原子、
炭素数1〜20の炭化水素基、
R1とR2とが互いに結合した環構造、または、
R1同士もしくはR2同士が互いに結合した環構造を表す;
A−は、有機スルホン酸の脱プロトン化体を表す。
式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、R1とR2とが互いに結合した環構造、または、R1同士もしくはR2同士が互いに結合した環構造を表す。
A−は、有機スルホン酸の脱プロトン化体を表す。
有機スルホン酸としては、一般的に知られている有機スルホン酸の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えば、アルカンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、高級アルコール硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸等が挙げられる。具体例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、キュメンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ソフト型)、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ハード型)、直鎖アルキルナフタリンスルホン酸、分岐鎖アルキルナフタリンスルホン酸、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、p−アニリンスルホン酸、o−アニリンスルホン酸等が挙げられる。これらの中で、イミノホスファゼニウム塩の安定性、アルデヒド捕捉効果に優れるという点から、ドデシルベンゼンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ソフト型)、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ハード型)が好ましい。
本発明の一態様にかかる2価のイミノホスファゼニウム塩の製造方法は、上記2価のイミノホスファゼニウム塩の製造方法であって、
式(2)で示されるイミノホスファゼニウム塩1モルに対し、2モル以上の有機スルホン酸を反応させることを特徴とする製造方法である:
R1及びR2は、各々独立して、
水素原子、
炭素数1〜20の炭化水素基、
R1とR2とが互いに結合した環構造、または、
R1同士もしくはR2同士が互いに結合した環構造を表す;
X−は、ヒドロキシアニオン、炭素数1〜4のアルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。
核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定装置(日本電子社製、(商品名)GSX270WB)を用い、重溶媒に重クロロホルムを使用して、1H−NMRを測定した。
0.01mol/Lのイミノホスファゼニウム塩水溶液をpH試験紙につけ、イミノホスファゼニウム塩のpHを測定した。
JIS K−1557−5に記載の方法に従い、ポリアルキレンオキシド10gをイソプロパノール/水=10/6混合溶媒(60mL)に溶解し、YOKOGAWA社製pH/ORPメータPH72を使用して、ポリアルキレンオキシドのpHを測定した。
ポリアルキレンオキシド10gをインピンジャー(株式会社末永理化学社製、容量:30ml)に入れ、65℃で2時間加熱しながら、窒素ガスを0.5L/minの流速で吹き込んだ。通気後のガスを2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)カートリッジに捕集し、吸着成分を溶出した。溶出液の高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)測定を行い、ポリアルキレンオキシドからのアルデヒド揮発量を測定した。
攪拌翼を付した2リットルの4つ口フラスコを窒素雰囲気下とし、五塩化リン96g(0.46mol)、脱水トルエン800mlを加え、20℃で攪拌した。撹拌を維持したまま、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン345g(2.99mol)を3時間かけて滴下した後、100℃に昇温し、さらに1,1,3,3−テトラメチルグアニジン107g(0.92mol)を1時間かけて滴下した。得られた白色のスラリー溶液を100℃で14時間攪拌した後、80℃まで冷却し、イオン交換水250mlを加えた後、さらに30分間撹拌した。撹拌を止めると、スラリーは全て溶解し、2相溶液が得られた。得られた2相溶液の油水分離を行い、水相を回収した。得られた水相にジクロロメタン100mlを加え、油水分離を行い、ジクロロメタン相を回収した。得られたジクロロメタン溶液をイオン交換水100mlで洗浄した。
図1は、合成例1で得られたイミノホスファゼニウム塩−Aの1H−NMRを示す図である。
1H−NMRにおける当該1価のイミノホスファゼニウムカチオンのケミカルシフトは、2.83ppmであった。
スターラーバーを入れた100ミリリットルのビーカーに、合成例1で得られた1価のイミノホスファゼニウム塩−Aの2−プロパノール溶液10mgおよびイソプロパノール/水=10/6の混合溶液60mlを加え、よく撹拌した。そこへ、ドデシルベンゼンスルホン酸のイソプロパノール溶液(0.02mol/L)を滴下することによって、中和滴定を行った。結果を図2に示す。
図2によれば、1モルの1価のイミノホスファゼニウム塩−Aに対し、約2モルのドデシルベンゼンスルホン酸を滴下した時点に等量点が観測され、2価のイミノホスファゼニウム塩の生成が確認された。2価のイミノホスファゼニウム塩は、上記式(1)におけるR1がメチル基、R2がメチル基、A−がドデシルベンゼンスルホン酸の脱プロトン化体に相当するイミノホスファゼニウム塩である。
スターラーバーを入れた0.2リットルの4つ口フラスコを窒素雰囲気下とし、合成例1で得られた1価のイミノホスファゼニウム塩−Aの2−プロパノール溶液50g(36mmol)を加えた。そこへ、撹拌を維持しながら、ドデシルベンゼンスルホン酸22g(72mmol、1価のイミノホスファゼニウム塩1molに対し、2mol)を加えた。10分間攪拌分撹拌を継続することによって、目的とする2価のイミノホスファゼニウム塩−Bを得た。2価のイミノホスファゼニウム塩−Bは、上記式(1)におけるR1がメチル基、R2がメチル基、A−がドデシルベンゼンスルホン酸の脱プロトン化体に相当するイミノホスファゼニウム塩である。得られたイミノホスファゼニウム塩のpHは、7(中性)であった。
図3は、実施例1で得られたイミノホスファゼニウム塩−Bの1H−NMRを示す図である。
1H−NMRにおける当該2価のイミノホスファゼニウムカチオンのケミカルシフトは2.91ppmであり、合成例1で得られた1価のイミノホスファゼニウム塩−Bと比較して低磁場にシフトした。イミノホスファゼニウム塩の価数が1価から2価に変化することによって、イミノホスファゼニウム塩のカチオン性が増大(電子密度が低下)したためと本発明者等は推測している。
スターラーバーを入れた0.2リットルの4つ口フラスコを窒素雰囲気下とし、合成例1で得られた1価のイミノホスファゼニウム塩−Aの2−プロパノール溶液50g(36mmol)を加えた。そこへ、撹拌を維持しながら、ドデシルベンゼンスルホン酸11g(36mmol、1価のイミノホスファゼニウム塩1molに対し、1mol)を加えた。10分間攪拌分撹拌を継続することによって、目的とする1価のイミノホスファゼニウム塩−Cを得た。1価のイミノホスファゼニウム塩−Cは、上記式(1)におけるR1がメチル基、R2がメチル基、A−がドデシルベンゼンスルホン酸の脱プロトン化体に相当するイミノホスファゼニウム塩である。得られたイミノホスファゼニウム塩−CのpHは12で、強い塩基性を示すものであった。
図4は、比較例1で得られたイミノホスファゼニウム塩−Cの1H−NMRを示す図である。
1H−NMRにおける当該1価のイミノホスファゼニウムカチオンのケミカルシフトは2.83ppmであり、実施例1で得られた2価のイミノホスファゼニウム塩−Bと比較して高磁場であった(図4)。2価のイミノホスファゼニウム塩−Bと比較して、カチオン性が減少(電子密度が増加)しているためと本発明者等は推測している。
Claims (5)
- R1及びR2が、メチル基であり、
A−が、ドデシルベンゼンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ソフト型)、または、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸(ハード型)の脱プロトン化体であることを特徴とする請求項1に記載の2価のイミノホスファゼニウム塩。 - 該2価のイミノホスファゼニウム塩の0.01mol/L水溶液のpHが、5以上8以下であることを特徴とする1又は2に記載の2価のイミノホスファゼニウム塩。
- アルデヒド捕捉剤として使用される請求項1〜3のいずれか1項に記載の2価のイミノホスファゼニウム塩。
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