JP2019154357A - コリネ型細菌形質転換体及びそれを用いる2,3−ブタンジオールの製造方法 - Google Patents

コリネ型細菌形質転換体及びそれを用いる2,3−ブタンジオールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】meso型の2,3−ブタンジオールの生産濃度と生産速度との両立が可能な微生物の提供。【解決手段】アセト乳酸シンターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び、2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入されたmeso型の2,3−ブタンジオールを生産することができるコリネ型細菌形質転換体。【選択図】図1

Description

本発明は、2,3−ブタンジオール生産技術に関する。さらに詳しくは、meso型2,3−ブタンジオール生産機能を付与するために特定の遺伝子操作が施されたコリネバクテリウム グルタミカムの形質転換体、及びこの形質転換体を用いた効率的なmeso型2,3−ブタンジオールの製造技術に関する。
2,3−ブタンジオールは、合成ゴムの原材料である1,3−ブタジエンや溶媒として用いられるメチルエチルケトンの原料となる。また2,3−ブタンジオールはそれ自体、印刷用インク、化粧品、芳香剤、可塑剤、医薬品、液晶、殺虫剤、柔軟剤、食品の分野における利用が期待される。
現在、工業的に利用される2,3−ブタンジオールは、主に原油を原料とした有機化学的な方法によって製造されている。
原油価格の高騰や、供給不安、地球環境からの温室効果ガス排出削減の観点から、原油からバイオマス原料にシフトし、微生物を用いた環境にやさしいバイオプロセスによる発酵生産に注目が集まっている。2,3−ブタンジオールを天然に発酵生産する微生物はKlebsiella pneumoniae等で報告例があるが、BSL2に指定される病原菌であるなど産業利用上、大量培養するには不向きであった。
遺伝子組換え体を用いたバイオプロセスを利用して2,3−ブタンジオールを製造する場合、有機化学合成法ではできない利点として、特異的な酵素を用いれば(S,S)型,(R,R)型,及び(meso)型といった3種の2,3−ブタンジオールの立体異性体をそれぞれ選択的に作り分けることが理論的に可能な点が挙げられる。
これら異性体のうち、特にmeso型の2,3−ブタンジオールは、(S,S)型,(R,R)型よりも抗菌活性が強いなどの有用な性質を有することが知られている。
例えば、特許文献1には微生物の増殖速度の低下を抑制しつつ、副生物の生成を低減させ、2,3−ブタンジオールを効率よくかつ安全に製造するための微生物を提供するために、2,3−ブタンジオール生産能を有し、乳酸デヒドロゲナーゼ活性、アセテートキナーゼ活性及びホスホトランスアセチラーゼ活性のいずれか一方又は両方、並びにCoAトランスフェラーゼ活性が非改変株と比較して低減するように改変された微生物としてのコリネ型細菌が記載され、このコリネ型細菌を用いてmeso型の2,3−ブタンジオールと、(S,S)型又は(R,R)型の2,3−ブタンジオール混合物が発酵生産されたことが報告されている。
また、特許文献2は、大腸菌を用いた2,3−ブタンジオール及び/又はアセトインの生産方法の提供をするために、大腸菌に、アセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子及びアセト乳酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子が導入されているか、或いはさらにブタンジオール脱水素酵素をコードする遺伝子が導入されている、アセトイン及び/又は2,3−ブタンジオールを生産することができる遺伝子組換え大腸菌が記載され、この大腸菌の遺伝子組換え体を用いてmeso型の2,3−ブタンジオールを選択的に生産した報告例がある。
特開2015-228804号公報 特開2015-149978号公報
本発明は、一態様において、meso型の2,3−ブタンジオールを生産濃度と生産速度との両立が可能な微生物を提供する。本発明は、その他の態様において、糖類を原料として効率よくmeso型の2,3−ブタンジオールを高濃度で選択的に製造する方法を提供する。
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ねた結果、アセト乳酸シンターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入された形質転換体が、糖類を原料として効率よくmeso型の2,3−ブタンジオールを高濃度で選択的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のコリネ型細菌形質転換体及びmeso型の2,3−ブタンジオールの製造方法を提供することによって、上記課題が解決される。
[項1]
アセト乳酸シンターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入されたmeso型の2,3−ブタンジオールを生産することができるコリネ型細菌形質転換体。
[項2]
2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子がBacillus licheniformis由来のbudC又はそのオーソログである[項1]に記載のコリネ型細菌形質転換体。
[項3]
前記2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が(a)配列番号3の塩基配列を有する遺伝子、(b)配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3の塩基配列に対して70%以上の同一性の塩基配列を有する遺伝子、(c)配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3がコードするアミノ酸配列に対して同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子、(d)配列番号3に記載の塩基配列を有する遺伝子と相補的な塩基配列を有する遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子、のいずれかの遺伝子を含む、[項1]又は[項2]に記載のコリネ型細菌形質転換体。
[項4]
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、及び乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の破壊、欠損、又は変異させてその機能を欠失、或いは弱化させた[項1]〜[項3]のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体。
[項5]
宿主のコリネ型細菌がコリネバクテリウム グルタミカムである[項1]〜[項4]のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体。
[項6]
宿主のコリネ型細菌がコリネバクテリウム グルタミカムR(FERM P-18976)、ATCC13032、又はATCC13869である[項1]〜[項5]のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体
[項7]
コリネバクテリウム グルタミカムBud33株(受託番号:NITE P-02655)コリネ型細菌形質転換体。
[項8]
[項1]〜[項7]のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体及び前記形質転換体が糖類を含む反応液を用いて、実質的に増殖できない嫌気又は微好気条件において生産反応工程を行うことを含むmeso型の2,3−ブタンジオールの製造方法。
[項9]
前記糖類がグルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロース、及びマンニトールからなる群より選択される[項8]に記載のmeso型の2,3−ブタンジオールの製造方法。
アセト乳酸シンターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入されたコリネ型細菌形質転換体を用いることにより、糖類を原料として効率よくmeso型の2,3−ブタンジオールを高濃度で選択的に製造できる。一態様において、本発明は、meso型の2,3−ブタンジオールの生産濃度と生産速度との両立が可能なコリネ型細菌形質転換体を提供できる。
嫌気条件下におけるグルコースの消費、及びmeso-2,3−ブタンジオールの生成を示す図である。 微好気条件下におけるグルコースの消費、並びにmeso-2,3−ブタンジオール及びアセトインの生成を示す図である。 mBDO:meso-2,3-butanediol, rBDO:(R,R)及び(S,S)-2,3-butanediol
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)2,3−ブタンジオール生産能を有する形質転換体
本発明の2,3−ブタンジオール生産能を有する形質転換体は、アセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子、アセト乳酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子、及び2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入された形質転換体である。遺伝子導入方法としては、プラスミドの導入でもよく、ゲノムへの組み込みでもよい。
宿主
宿主として用いられるコリネバクテリウム グルタミカムとは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー〔Bergey's Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974)〕に定義されている一群の微生物である。
具体的には、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)R(FERM P-18976)、ATCC13032、ATCC13869、ATCC13058、ATCC13059、ATCC13060、ATCC13232、ATCC13286、ATCC13287、ATCC13655、ATCC13745、ATCC13746、ATCC13761、ATCC14020、ATCC31831、MJ-233(FERM BP-1497)又はMJ-233AB-41(FERM BP-1498)等の菌株が挙げられる。中でも、R(FERM P-18976)株、ATCC13032株、及びATCC13869が好ましく、R(FERM P-18976)株がより好ましい。
なお、分子生物学的分類により、ブレビバクテリウム フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)、コリネバクテリウム リリウム(Corynebacterium lilium)等のコリネ型細菌もコリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に菌名が統一されている〔Liebl, W. et al., Transfer of Brevibacterium divaricum DSM 20297T, "Brevibacterium flavum" DSM 20411, "Brevibacterium lactofermentum" DSM 20412 and DSM 1412, and Corynebacterium glutamicum and their distinction by rRNA gene restriction patterns. Int J Syst Bacteriol. 41:255-260 (1991)、駒形和男ら、コリネフォルム細菌の分類、発酵と工業、45:944-963 (1987)〕ため、本発明に含まれる。
また、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、及び乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の破壊、欠損、又は変異させてその機能を欠失、或いは弱化させたコリネ型細菌は、meso型の2,3−ブタンジオールを効率よく高濃度で選択的に製造する点から、より好ましい宿主となる。
アセト乳酸シンターゼ遺伝子
アセト乳酸シンターゼは、ピルビン酸からアセト乳酸の生成反応を触媒する酵素である。meso型ブタンジオールの生産性の観点から、好ましくはals遺伝子、より好ましくはバチラス属細菌のals遺伝子又はそのオーソログ、さらに好ましくはバチラス サブチリス(Bacillus subtilis)のals遺伝子又はそのオーソログが挙げられる。アセト乳酸シンターゼ活性は公知の方法、例えば、〔Stormer FC, The pH 6 acetolactate-forming enzyme from Aerobacter aerogenes. I. Kinetic studies. J. Biol. Chem. 243:3735-3739(1968)〕により測定できる。
アセト乳酸デカルボキシラーゼ遺伝子
アセト乳酸デカルボキシラーゼは、アセト乳酸からアセトインを生成する反応を触媒する酵素である。meso型ブタンジオールの生産性の観点から、好ましくはald遺伝子、より好ましくは、バチラス属細菌のald遺伝子又はそのオーソログ、さらに好ましくはバチラス サブチリス(Bacillus subtilis)のald遺伝子又はそのオーソログが挙げられる。アセト乳酸シンターゼ活性は公知の方法、例えば、〔Loken JP and Stormer FC, Acetolactate decarboxylase from Aerobacter aerogenes. Purification and properties. Eur. J. Biochem. 14:133-137(1970)〕により測定できる。
2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ遺伝子
2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼは、アセトインから2,3−ブタンジオールを生成する反応を触媒する酵素である。2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子の由来は特に限定されないが、バチラス サブチリス(Bacillus subtilis)のようなバチラス属細菌由来の遺伝子が挙げられる。2,3−ブタンジオールは立体異性体として(2R,3R)型、(2S,3S)型、meso型の3種類が存在するが、この中でmeso型2,3−ブタンジオールを特異的に生成する酵素として、例えばバチラス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来のbudC遺伝子やラクトコッカス ラクチス(Lactococcus lactis)由来のbutA遺伝子が挙げられる。meso型の2,3−ブタンジオールを効率よく高濃度で選択的に製造する点から、budC遺伝子が好ましく、バチラス属細菌のbudC遺伝子又はそのオーソログがより好ましく、Bacillus licheniformisのbudC遺伝子又はそのオーソログがさらに好ましい。Bacillus licheniformisのbudC遺伝子の一実施形態として、配列番号3の塩基配列が挙げられる。
本発明において「オーソログ遺伝子」とは、異なる生物に存在する相同な機能を有するタンパクをコードする類縁遺伝子を意味する。
本発明の一実施形態において、バチラス属細菌のbudC遺伝子及びBacillus licheniformisのbudC遺伝子のオーソログにはbutA遺伝子は含まれない。
本発明における2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子は、meso型の2,3−ブタンジオールを効率よく高濃度で選択的に製造する点から、下記(a)〜(d)遺伝子が挙げられる。
(a)配列番号3の塩基配列を有する遺伝子。
(b)配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3の塩基配列に対して同一性が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は97%以上の塩基配列を有する遺伝子。
(c)配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3がコードするアミノ酸配列に対して同一性が70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は97%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子。
(c')配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3がコードするアミノ酸配列に対して相同性(Similarity)が92%以上、95%以上、又は97%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子。
(d)配列番号3に記載の塩基配列を有する遺伝子と相補的な塩基配列を有する遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子。
なお、ストリンジェントな条件としては、例えばDNAを固定したナイロン膜を、6×SSC(1×SSCは塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶かしたもの)、1%SDS、100μg/mlサケ精子DNA、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコールを含む溶液中で65℃にて20時間プローブとともに保温してハイブリダイゼーションを行う条件を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。当業者であれば、このような緩衝液の塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ハイブリダイゼーションの条件を設定することができる。
2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性は公知の方法、例えば、〔Calam E et al., Enantioselective Synthesis of Vicinal (R,R)-Diols by Saccharomyces cerevisiae Butanediol Dehydrogenase. Appl. Environ. Microbiol. 82:1706-1721(2016)〕により測定できる。
(II)2,3−ブタンジオールの製造方法
上記説明した本発明の形質転換体を、炭素源を含む反応液中で反応させることにより2,3−ブタンジオールを製造することができる
微生物の増殖
反応に先立ち、形質転換体を好気条件下で、温度約25〜38℃で、約12〜48時間培養して増殖させることが好ましい。
培養用培地
反応に先立つ形質転換体の好気的培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類及びその他の栄養物質等を含有する天然培地又は合成培地を用いることができる。
炭素源として、糖類(グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトースのような単糖;スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロースのような二糖;澱粉のような多糖;糖蜜等)、マンニトール、ソルビトール、キシリトールグリセリンのような糖アルコール;酢酸、クエン酵 乳酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸のような有機酸;エタノール、プロパノールのようなアルコール;ノルマルパラフィンのような炭化水素等も用いることができる。
炭素源は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。
窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムのような無機又は有機アンモニウム化合物、尿素、アンモニア水、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等を使用できる。また、コーンスティープリカー、肉エキス、ペプトン、NZアミン、蛋白質加水分解物、アミノ酸等の含窒素有機化合物等も使用できる。窒素源は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。窒素源の培地中の濃度は、使用する窒素化合物によっても異なるが、通常約0.1〜10(w/v%)とすればよい。
無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機塩は、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用できる。無機塩類の培地中の濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常約0.01〜1(w/v%)とすればよい。
栄養物質としては、肉エキスペプトン、ポリペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、コーンスティープリカー、脱脂粉乳、脱脂大豆塩酸加水分解物、動植物又は微生物菌体のエキスやそれらの分解物等が挙げられる。栄養物質の培地中の濃度は、使用する栄養物質によっても異なるが、通常約0.1〜10(w/v)%とすればよい。
さらに、必要に応じて、ビタミン類を添加することもできる。ビタミン類としては、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が挙げられる。培地のpHは約6〜8が好ましい。
具体的な好ましいコリネバクテリウム グルタミカム用培地としては、A培地〔Inui, M. et al.,Metabolic analysis of Corynebacterium glutamicum during lactate and succinate productions under oxygen deprivation conditions. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 7:182-196 (2004)〕、BT培地〔Omumasaba, C.A. et al., Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)〕等が挙げられる。これらの培地において、糖類濃度を上記範囲にして用いればよい。
反応液は、糖類を含有する水、緩衝液、無機塩培地などを用いることができる。糖類としては、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロース、又はマンニトールが好ましい。
緩衝液としては、リン酸バッフアー、トリスバッファー、炭酸バッファー等が挙げられる。緩衝液の濃度は約10〜150mMが好ましい。
形質転換体を実質的に増殖させないため、反応液に増殖因子としてのビオチンを含まないことが望ましい。
無機塩培地としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マネシウム、塩化ナトリウム、硝酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸コバルト、炭酸カルシウム等の無機塩の1種又は2種以上を含む培地が挙げられる。中でも、硫酸マグネシウムを含む培地が好ましい。無機塩培地として、具体的にはBT培地〔Omumasaba, C.A. et al, Corynebacterium glutamicum glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase isoforms with opposite, ATP-dependent regulation. J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 8:91-103 (2004)〕等が挙げられる。無機塩類の培地中の濃度は、使用する無機塩によっても異なるが、通常、約0.01〜1(w/v%)とすればよい。
反応液のpHは約6〜8が好ましい。反応中は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、pHコントローラー(例えば、エイブル株式会社製、型式:DT-1023)で、反応液のpHを中性付近、特に約7にコントロールしながら反応させることが好ましい。
反応条件
反応温度、即ち反応中の形質転換体の生存温度は、約20〜50℃が好ましく、約25〜47℃がより好ましい。上記温度範囲であれば効率良く2,3−ブタンジオールを製造できる。
また、反応時間は約1〜7日間が好ましく、約1〜3日間がより好ましい。培養は、バッチ式、流加式、連続式のいずれでもよい。中でもバッチ式が好ましい。
通気条件
反応は、還元条件、或いは微好気的条件で行ってもよい。いずれの条件においてもコリネバクテリウム グルタミカムは実質的に増殖しない反応で行われるため、一層効率的に2,3−ブタンジオールを生産させることができる。
還元条件は、反応液の酸化還元電位で規定される。反応液の酸化還元電位は、約-200mV〜-500mVが好ましく、-250mV〜-500mVがより好ましい。
反応液の還元状態は簡便にはレサズリン指示薬(還元状態であれば、青色から無色への脱色)で推定できるが、正確には酸化還元電位差計(例えば、BROADLEY JAMES社製、ORP Electrodes)を用いて測定できる。
還元条件にある反応液の調整方法は、公知の方法を制限なく使用できる。
例えば、反応液調製用の液体媒体として、蒸留水等の代わりに反応液用水溶液を使用してもよく反応液用水溶液の調整方法は、例えば硫酸還元微生物等の絶対嫌気性微生物用の培養液調整方法(Pfennig, N. et al,(1981):The dissimilatory sulfate-reducing bacteria, In The Prokaryotes, A Handbook on Habitats, Isolation and Identification of Bacteria Ed. By Starr, M. P. et al.,p.926-940, Berlin, Springer Verlag.)や「農芸化学実験書 第三巻、京都大学農学部 農芸化学教室編、1990年第26刷、産業図書株式会社出版」等が参考となり、所望する還元条件下の水溶液を得ることができる。
具体的には、蒸留水等を加熱処理や減圧処理して溶解ガスを除去することにより、還元条件の反応液用水溶液を得ることができる。この場合、約10mmHg以下、好ましくは約5mmHg以下、より好ましくは約3mmHg以下の減圧下で、約1〜60分程度、好ましくは約5〜40分程度、蒸留水等を処理することにより、溶解ガス、特に溶解酸素を除去して還元条件下の反応液用水溶液を作成することができる。
また、適当な還元剤(例えば、チオグリコール酸、アスコルビン酸、システィン塩酸塩、メルカプト酢酸、チオール酢酸、グルタチオン、硫化ソーダ等)を添加して還元条件の反応液用水溶液を調整することもできる。
これらの方法を適宜組み合わせることも有効な還元条件の反応液用水溶液の調整方法である。
反応途中での還元条件を維持する場合は、反応系外からの酸素の混入を可能な限り防止することが望ましく、具体的には、反応系を窒素ガス等の不活性ガスや炭酸ガス等で封入する方法が挙げられる。酸素混入をより効果的に防止する方法としては、反応途中において本発明の好気性細菌の菌体内の代謝機能を効率よく機能させるために、反応系のpH維持調整液の添加や各種栄養素溶解液を適宜添加する必要が生じる場合もあるが、このような場合には添加溶液から酸素を予め除去しておくことが有効である。
反応途中で微好気条件を維持する場合は、通気量を0.5vvm(volume per volume per minute)等の低値或いはそれ以下とし、攪拌速度を500rpm等の低値或いはそれ以下の条件で反応させることができる。場合によっては、反応開始後、適当な時間で通気を遮断し、撹拌速度を100rpm或いはそれ以下の条件で嫌気度を向上させた状態と組み合わせて反応することもできる。
meso型2,3−ブタンジオールの回収
上記のようにして培養することにより、反応液中にmeso型2,3−ブタンジオールが生産される。反応液を回収することによりmeso型2,3−ブタンジオールを回収できるが、さらに、公知の方法でmeso型2,3−ブタンジオールを反応液から分離することもできる。そのような公知の方法として、蒸留法、膜透過法、有機溶媒抽出法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1) 染色体DNAの調製
2,3−ブタンジオール生産関連酵素遺伝子を取得するため、下記菌株から染色体DNAを調製した。
バシラス リケニフォルミス(Bacillus licheniformis JCM 2505)、バチルス サブティリス(Bacillus subtilis NBRC 14144)を菌株入手機関の情報に従って培養した後、DNAゲノム抽出キット(商品名:GenomicPrep Cells and Tissue DNA Isolation Kit、アマシャム社製)を用いて調製した。
(2) 2,3−ブタンジオール生産関連遺伝子発現プラスミドの構築
目的の酵素遺伝子を単離するために用いたプライマー配列を表1に示す。PCRは、Veritiサーマルサイクラー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用い、反応試薬としてPrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)を用いた。
得られたDNA断片を、tacプロモーターを含有するクローニングベクター(Ltac8sc、pCRB213 [Jojima T. et al., Promiscuous activity of (S,S)-butanediol dehydrogenase is responsible for glycerol production from 1,3-dihydroxyacetone in Corynebacterium glutamicum under oxygen-deprived conditions. Appl. Microbiol. Biotechnol. 2015 Feb;99(3):1427-1433]に導入した。
導入したクローニングベクターと得られたプラスミド名を表2に示す。尚、alsSとalsD(alsS-talsD遺伝子;配列番号8)は染色体上で連続して同じ向きに配置されているため、まとめてクローニングを行った。
コリネバクテリウム グルタミカム内で共存可能なプラスミド(pCRB1 [NCBI GenBank : AB444682])に、2,3−ブタンジオール生産関連遺伝子発現プラスミドからtacプロモーター融合酵素遺伝子断片を取得し導入した。
(3) 2,3−ブタンジオール生産株の構築
上述のbudC発現プラスミドとalsS-alsD発現プラスミドをコリネ型細菌R株のldh, ppc遺伝子破壊株であるCRZ2 [Inui M. et al., Metabolic engineering of Corynebacterium glutamicum for fuel ethanol production under oxygen-deprivation conditions. J Mol Microbiol Biotechnol. 2004;8(4):243-254]に同時に導入することにより、2,3−ブタンジオール生産株(Bud33)を構築した。CRZ2を構築する過程で得られたldh遺伝子破壊株も宿主として使用し、Bud24株を構築した。尚、得られた2,3−ブタンジオール生産株の概要は表3及び表4にまとめて示す。
コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)Bud33株は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818)の独立行政法人製品評価基盤機構 特許生物寄託センターに寄託した(受託日:2018年2月27日、受託番号:NITE P-02655)。
[実施例2]
<2,3−ブタンジオール生産遺伝子を導入したコリネバクテリウム グルタミカム副生経路破壊株の2,3−ブタンジオール生成実験>
コリネバクテリウム グルタミカムΔldh/ meso-2,3−ブタンジオール生産遺伝子導入株(Bud24株)を、カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06%(w/v) FeSO4・7H2O + 0.042%(w/v) MnSO4・2H2O 1ml、0.02%(w/v) biotin solution 1ml、0.01%(w/v) thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、glucose 40g、寒天 15gを蒸留水1Lに懸濁]に塗布し、33℃、16時間静置培養した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカムΔldh/meso-2,3−ブタンジオール生産遺伝子導入株をカナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA液体培地10mlの入った試験管に一白金耳植菌し、33℃で16時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で増殖したコリネバクテリウム グルタミカムΔldh/meso-2,3−ブタンジオール生産遺伝子導入株をカナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA液体培地500mLの入った容量2Lの三角フラスコに植菌し、33℃で16時間、好気的に振盪培養を行った。
このようにして培養増殖された菌体は、遠心分離(4℃、5,000×g、10分)により菌体を回収した。得られた菌体を、終菌体濃度5%となるように増殖因子としてのビオチンを含まないBT(-尿素)液体培地[0.7% (NH4)2SO4、0.05% KH2PO4、0.05% K2HPO4、0.05% MgSO4・7H2O、0.06%(w/v) FeSO4・7H2O + 0.000042%(w/v) MnSO4・2H2O、0.00002%(w/v) thiamin solution]に500mLに懸濁した。この菌体懸濁液を1LのJarファーメンター装置に移し、基質としてグルコース(初濃度60g/L)添加、33℃、反応液のpHが7.0を下回らないように5.0Nのアンモニア水を用いて調節し、菌体を増殖しない状態で、通気を遮断した条件で反応した。グルコースは濃度が低下した時点で適宜追加した。
サンプリングした反応液を遠心分離(4℃、10,000×g、5分)し、得られた上清液を用いて生成物の分析を行った。培養液中のグルコース濃度はグルコースセンサー(OSI BF-5D)により計測した。meso-2,3−ブタンジオール、acetoin、(S,S)型-,及び(R,R)型-ブタンジオールの濃度はウォーターズ社のACQUITY UPLCシステムを使用し、分離カラムにはImtakt社のUnison UK-C18を用いた。UPLCによる分離条件は、バッファーに20mMリン酸を使用、流速は0.4ml/min、カラム温度は40℃とした。
48時間反応させた結果、meso-2,3−ブタンジオールの収量は11.3g/Lであった(図1)。meso-2,3−ブタンジオールの生産量は48時間まではほぼ一定に増加しており、グルコースもほぼ一定の速度で消費された。meso-2,3−ブタンジオール以外の立体異性体((S,S)型,及び(R,R)型-2,3−ブタンジオール)は全く検出されなかった。
実施例1において作製したコリネバクテリウム グルタミカムΔldhΔppc/meso-2,3−ブタンジオール生産遺伝子導入株を、カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール5μg/mlを含むA寒天培地[(NH2)2CO 2g、(NH4)2SO4 7g、KH2PO4 0.5g、K2HPO4 0.5g、MgSO4・7H2O 0.5g、0.06% (w/v) FeSO4・7H2O + 0.042%(w/v) MnSO4・2H2O 1ml、0.02% (w/v) biotin solution 1ml、0.01%(w/v) thiamin solution 2ml、yeast extract 2g、vitamin assay casamino acid 7g、glucose 40g、寒天15gを蒸留水1Lに懸濁]に塗布し、33℃、16時間静置した。
上記のプレートで生育したコリネバクテリウム グルタミカムΔldhΔppc/meso-2,3−ブタンジオール生産遺伝子導入株をカナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール5μg/mlを含むビオチンを含まないA液体培地10 mlの入った試験管に―白金耳植菌し、33℃で16時間、好気的に振盪培養を行った。
上記条件で増殖したコリネバクテリウム グルタミカムΔldhΔppc/meso-2,3−ブタンジオール生産遺伝子導入株をカナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール5μg/mlを含むビオチンを含まないA液体培地500mlの入った容量2Lの三角フラスコに植菌し、33℃で16時間、好気的に振盪培養を行った。
このようにして培養増殖された菌体は、遠心分離(4℃、5,000×g、10分)により菌体を回収した。得られた菌体を、終菌体濃度5%となるように増殖因子としてのビオチンを含まないBT(-尿素)液体培地[0.7% (NH4)2SO4、0.05% KH2PO4、0.05% K2HPO4、0.05% MgSO4・7H2O、0.06% (w/v) FeSO4・7H2O + 0.000042%(w/v) MnSO4・2H2O、0.00002%(w/v) thiamin solution]に500mlに懸濁した。この菌体懸濁液を1LのJarファーメンター装置に移し、基質としてグルコース(初濃度80g/L)添加、33℃、反応液のpHが7.0を下回らないように5.0Nのアンモニア水を用いて調節し、菌体を増殖しない状態で、通気量を0.5vvm、攪拌速度を500rpmの条件で反応した。グルコースは濃度が低下した時点で適宜追加した。反応時間46時間経過後、次の9時間は通気を遮断し、撹拌速度を100rpmまで低下させた状態で反応させた。
サンプリングした反応液を遠心分離(4℃、10,000×g、5分)し、得られた上清液を用いて生成物の分析を行った。培養液中のグルコース濃度はグルコースセンサー(OSI BF-5D)により計測した。meso-2,3−ブタンジオール、acetoin、R-2,3−ブタンジオールの濃度はウォーターズ社のACQUITY UPLCシステムを使用し、分離カラムにはImtakt社のUnison UK-C18を用いた。UPLCによる分離条件は、バッファーに20mMリン酸を使用、流速は0.4ml/min、カラム温度は40℃とした。
2,3−ブタンジオール生産反応の結果、形質転換体が実質的に増殖しない生産反応の結果、meso-2,3−ブタンジオールの蓄積が見られた。通気量を0にすると前駆体であるacetoinの量は次第に減少し、逆にmeso-2,3−ブタンジオールが蓄積された。最終的にmeso-2,3−ブタンジオールは51.4g/L生産された(図2)。生産速度は0.93g/L/hであった。meso-2,3−ブタンジオール以外の立体異性体((S,S)型,及び(R,R)型-2,3−ブタンジオール)は全く検出されなかった。
[実施例3]
<各種2,3−ブタンジオール デヒドロゲナーゼ活性を有する遺伝子を導入したコリネバクテリウム グルタミカム副生経路破壊株の2,3−ブタンジオール生成実験>
実施例2において作製したBud33株のうち、meso-2,3−ブタンジオール生産に関わる2,3−ブタンジオール デヒドロゲナーゼ活性を有する遺伝子のみを各種微生物由来のものに入れ替えた場合の2,3−ブタンジオール生成を比較した。培養条件や生成物の分析は全て実施例2と同じ条件で行った。その結果、Bacillus licheniformis由来budC遺伝子を導入したBud33株は、55時間で51.4g/L(生産速度は0.93g/L/h)のmeso-2,3−ブタンジオールのみを検出した。meso-2,3−ブタンジオール以外の立体異性体((S,S)型,及び(R,R)型-2,3−ブタンジオール)は全く検出されなかった。
これに対して、Bud33株のBacillus licheniformis由来budC遺伝子をLactococcus lactis 由来butA遺伝子(特許文献2)に置換した株は、55時間で16g/L(生産速度は0.34g/L)のmeso-2,3−ブタンジオールが検出された。また、Bud33株のBacillus licheniformis由来budC遺伝子をCorynebacterium glutamicum 由来butA遺伝子(Appl. Microbiol. Biotechnol. 2016 Dec;100(24):10573-10583)に置換した株は55時間で14g/L(生産速度は0.21g/L)のmeso-2,3−ブタンジオールが検出された。
本発明の方法によれば、微生物を用いて実用的な効率で糖原料からmeso-2,3−ブタンジオールを製造することができる。

Claims (9)

  1. アセト乳酸シンターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、アセト乳酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が宿主のコリネ型細菌に導入されたmeso型の2,3−ブタンジオールを生産することができるコリネ型細菌形質転換体。
  2. 2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子がBacillus licheniformis由来のbudC又はそのオーソログである請求項1に記載のコリネ型細菌形質転換体。
  3. 前記2,3−ブタンジオールデヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子が(a)配列番号3の塩基配列を有する遺伝子、(b)配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3の塩基配列に対して70%以上の同一性の塩基配列を有する遺伝子、(c)配列番号3の塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を有する遺伝子であって、配列番号3がコードするアミノ酸配列に対して同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子、(d)配列番号3に記載の塩基配列を有する遺伝子と相補的な塩基配列を有する遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子、のいずれかの遺伝子を含む、請求項1又は2に記載のコリネ型細菌形質転換体。
  4. ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードする遺伝子、及び乳酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の破壊、欠損、又は変異させてその機能を欠失、或いは弱化させた請求項1〜3のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体。
  5. 宿主のコリネ型細菌がコリネバクテリウム グルタミカムである請求項1〜4のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体。
  6. 宿主のコリネ型細菌がコリネバクテリウム グルタミカムR (FERM P-18976)、ATCC13032、又はATCC13869である請求項1〜5のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体。
  7. コリネバクテリウム グルタミカムBud33株(受託番号:NITE P-02655)コリネ型細菌形質転換体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のコリネ型細菌形質転換体及び糖類を含む反応液を用いて、実質的に増殖できない嫌気又は微好気条件において生産反応工程を行うことを含むmeso型の2,3−ブタンジオールの製造方法。
  9. 前記糖類がグルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロビオース、トレハロース、及びマンニトールからなる群より選択される請求項8に記載のmeso型の2,3−ブタンジオールの製造方法。
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