(1)電力変換装置の構成の概要
図1には、本発明の基本技術に係る車両搭載用の電力変換装置の構成が示されている。電力変換装置は、力率改善回路10、電圧コンバータ回路14および制御部22を備えている。力率改善回路10には交流電圧源18が接続されている。交流電圧源18は、例えば、商用電源であり、電力変換装置の搭載先の車両がプラグイン機能を有する場合には、電源コネクタが交流電圧源18となる。電圧コンバータ回路14には直流電源回路20が接続されている。直流電源回路20は、例えば、バッテリ、あるいはバッテリを充電するための充電回路である。制御部22は、力率改善回路10および電圧コンバータ回路14が備える各スイッチング素子をオンオフ制御する。
力率改善回路10は、交流電圧源18から流入する電流の時間波形をスイッチングによって調整し、交流電圧源18から電力変換装置側を見た力率を改善する。力率改善回路10および電圧コンバータ回路14はトランスTによって結合されており、交流電圧源18から出力された電力は、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に伝送される。電圧コンバータ回路14は、トランスTの2次巻線T2から得られる交流電圧を直流電圧に変換し、適切な大きさの直流電圧を直流電源回路20に出力する。力率改善回路10および電圧コンバータ回路14によれば、交流電圧源18から直流電源回路20に効率的に電力が供給される。直流電源回路20がバッテリである場合には、直流電源回路20としてのバッテリが充電され、直流電源回路20がバッテリを充電するための充電回路であるときは、直流電源回路20によってバッテリが充電される。
(2)力率改善回路の構成および動作
力率改善回路10の構成について説明する。力率改善回路10は、フィルタコンデンサCf、1次巻線T1、および第1スイッチング回路12を備えている。
第1スイッチング回路12は、スイッチング素子S1およびS2によって構成されるハーフブリッジU、スイッチング素子S3およびS4によって構成されるハーフブリッジV、整流スイッチング素子S9、整流スイッチング素子S10、および中間コンデンサCbufを備えている。ハーフブリッジUは、スイッチング素子S1の一端と、スイッチング素子S2の一端とを接続したものである。スイッチング素子S1の両端には、スイッチング素子S2との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S2の両端には、スイッチング素子S1との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S1およびS2としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。この場合、スイッチング素子S1としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S2としてのIGBTのコレクタとが接続される。
同様に、ハーフブリッジVは、スイッチング素子S3の一端と、スイッチング素子S4の一端とを接続したものである。スイッチング素子S3の両端には、スイッチング素子S4との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S4の両端には、スイッチング素子S3との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S3およびS4としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S3としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S4としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S1およびS2の接続点と、スイッチング素子S3およびS4の接続点との間には、1次巻線T1が接続されている。1次巻線T1のタップm(中途点)は交流端子24−2に接続されている。
ハーフブリッジUおよびVは並列接続され、フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S1のスイッチング素子S2側とは反対側の端子(図の上側の端子)と、スイッチング素子S3のスイッチング素子S4側とは反対側の端子(図の上側の端子)とが接続されている。また、スイッチング素子S2のスイッチング素子S1側とは反対側の端子(図の下側の端子)と、スイッチング素子S4のスイッチング素子S3側とは反対側の端子(図の下側の端子)とが接続されている。
整流スイッチング素子S9の一端は整流スイッチング素子S10の一端に接続されている。整流スイッチング素子S9の他端は、ハーフブリッジUおよびVの上側の端子に接続され、整流スイッチング素子S10の他端は、ハーフブリッジUおよびVの下側の端子に接続されている。整流スイッチング素子S9およびS10の接続点は、交流端子24−1に接続されている。整流スイッチング素子S9の両端には、整流スイッチング素子S10との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。整流スイッチング素子S10の両端には、整流スイッチング素子S9との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。整流スイッチング素子S9およびS10としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、整流スイッチング素子S9としてのIGBTのエミッタと、整流スイッチング素子S10としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S1、スイッチング素子S3、および整流スイッチング素子S9の接続点と、スイッチング素子S2、スイッチング素子S4、および整流スイッチング素子S10の接続点との間には、中間コンデンサCbufが接続されている。
1次巻線T1は、電圧コンバータ回路14が備える2次巻線T2に磁気的に結合し、1次巻線T1および2次巻線T2はトランスTを構成している。1次巻線T1は、自己インダクタとしての第1インダクタL1、自己インダクタとしての第2インダクタL2、および相互インダクタMを直列接続したもので表される。相互インダクタMの一端とスイッチング素子S1およびS2の接続点との間には第1インダクタL1が接続され、相互インダクタMの他端とスイッチング素子S3およびS4の接続点との間には第2インダクタL2が接続されている。トランスTの結合係数kには、k=M/(L1+L2)の関係がある。第1のインダクタL1と第2インダクタL2は磁気的に結合してもよい。また、交流端子24−2とタップmとの間にもインダクタ(リアクトル)が接続されてもよい。
交流端子24−1と交流端子24−2との間には、フィルタコンデンサCfが接続されている。また、交流端子24−1と交流端子24−2との間には交流電圧源18が接続されている。交流電圧源18が商用電源である場合には、交流端子24−1および24−2には、ケーブルを介して電源用プラグが接続され、その電源用プラグが電源コネクタに差し込まれる。
力率改善回路10の動作について説明する。交流電圧源18は交流端子24−1および24−2に、正弦波電圧である入力交流電圧Vacを出力する。フィルタコンデンサCfは、力率改善回路10で発生し、交流電圧源18側に流出する高周波電流を抑制する。
制御部22は、制御信号Cn1〜Cn4をそれぞれスイッチング素子S1〜S4に出力し、スイッチング素子S1〜S4をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは1〜4のうちいずれかの整数である。制御信号Cn2は制御信号Cn1に対してハイおよびローを反転したものであり、制御信号Cn4は、制御信号Cn3に対してハイおよびローを反転したものである。また、制御信号Cn3およびCn4は、それぞれ、制御信号Cn1およびCn2に対して位相が180°遅れている。
これによって、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2は、交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S1がオフからオンになったときは、スイッチング素子S2はオンからオフになり、スイッチング素子S1がオンからオフになったときは、スイッチング素子S2は、オフからオンになる。同様に、スイッチング素子S3およびスイッチング素子S4は交互にオンオフする。スイッチング素子S1およびS2のオンオフの位相に対し、スイッチング素子S3およびS4のオンオフの位相は180°遅れる。
制御部22は、例えば、中間コンデンサCbufの端子間電圧(中間電圧Vb)、交流電圧源18と1次巻線T1のタップmとの間の経路を流れる中途点電流iL、交流電圧源18が出力する入力交流電圧Vac等に応じて、制御信号Cn1〜Cn4のデューティ比(時比率)を変化させる。また、入力交流電圧Vacの極性が、交流端子24−1の側を正とするとき(入力交流電圧Vacが正の値となる半周期の間)は、制御部22は、整流スイッチング素子S9をオフにし、整流スイッチング素子S10をオンにする。そして、入力交流電圧Vacの極性が、交流端子24−1の側を負とするとき(入力交流電圧Vacが負の値となる半周期の間)は、制御部22は、整流スイッチング素子S9をオンにし、整流スイッチング素子S10をオフにする。これによって、交流端子24−1および24−2に流れる電流の時間波形を入力交流電圧Vacの時間波形に近似させ、または一致させると共に、交流端子24−1および24−2に流れる電流の位相を入力交流電圧Vacの位相に近似させ、または一致させる。
図2(a)〜(e)には、入力交流電圧Vacが正の値となる半周期における力率改善回路10の動作タイミングが示されている。図2(a)には制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の時間波形が示されており、図2(b)には制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4の時間波形が示されている。符号の上に付された「−」の記号は、その符号で表される制御信号の反転値を意味する。図2(c)には、スイッチング素子S1およびS2の接続点の電位Vu(U相電位Vu)の時間波形が示されており、図2(d)には、スイッチング素子S3およびS4との接続点の電位Vv(V相電位Vv)の時間波形が示されている。さらに、図2(e)には、1次巻線T1に印加される電圧Vuv(1次巻線電圧Vuv)の時間波形が示されている。制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn3の反転値は、それぞれ、制御信号Cn2およびCn4と同一である。また、U相電位VuおよびV相電位Vvの基準は接地導体G1の電位である。
図2(a)に示されているように、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の周期はPであり、1周期Pの間に制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2は、ハイ時間δだけハイになる。図2(b)に示されているように、制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4は、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2に対して半周期、すなわち、180°遅れている。デューティ比αは、α=δ/Pであり、ハイ時間δが入力交流電圧Vacの瞬時値に応じて変化し、デューティ比αはハイ時間δの変化に伴って変化する。
ここでは、中間コンデンサCbufが一定の電圧Vbに充電されているものとして力率改善回路10の動作について説明する。
制御信号Cn1がハイであり、制御信号Cn2がローである間、スイッチング素子S1はオンになり、スイッチング素子S2はオフになる。これによってU相電位Vuは、中間コンデンサCbufの充電電圧(中間電圧Vb)となる。一方、制御信号Cn1がローであり、制御信号Cn2がハイである間、スイッチング素子S1はオフになり、スイッチング素子S2はオンになる。これによってU相電位は0となる。したがって、図2(c)に示されているように、U相電位Vuは、周期Pで時間(P−δ)の間Vbとなり、その他の時間帯で0となる。
制御信号Cn3がハイであり、制御信号Cn4がローである間、スイッチング素子S3はオンになり、スイッチング素子S4はオフになる。これによって、V相電位Vvは中間電圧Vbとなる。一方、制御信号Cn3がローであり、制御信号Cn4がハイである間、スイッチング素子S3はオフになり、スイッチング素子S4はオンになる。これによってV相電位は0となる。したがって、図2(d)に示されているように、V相電位Vvは、U相電位Vuと同一の時間波形を有し、U相電位Vuから180°位相が遅れた電位となる。
1次巻線電圧Vuvは、U相電位VuからV相電位Vvを減じた電圧である。これによって、図2(e)に示されているように、1次巻線電圧Vuvは、波高値Vbで正負対称の時間波形となる。
図3(a)〜(e)には、入力交流電圧Vacが負の値となる半周期における力率改善回路10の動作タイミングが示されている。図3(a)には制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の時間波形が示されており、図3(b)には制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4の時間波形が示されている。図3(c)にはU相電位Vuの時間波形が示されており、図3(d)にはV相電位Vvの時間波形が示されている。さらに、図3(e)には1次巻線電圧Vuvの時間波形が示されている。図2に示されている事項と同一の事項については同一の符号付してその説明を省略する。
図3(a)に示されているように、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2の周期はPであり、1周期Pの間に制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2は、ハイ時間γだけハイになる。図3(b)に示されているように、制御信号Cn3の反転値および制御信号Cn4は、制御信号Cn1の反転値および制御信号Cn2に対して半周期、すなわち、180°遅れている。デューティ比αは、α=γ/Pであり、ハイ時間γが入力交流電圧Vacの瞬時値に応じて変化し、デューティ比αはハイ時間γの変化に伴って変化する。
入力交流電圧Vacが正の値となる半周期と同様の動作によって、入力交流電圧Vacが負の値となる半周期においては、図3(c)に示されているように、U相電位Vuは、周期Pで時間(P−γ)の間Vbとなり、その他の時間帯で0となる。また、図3(d)に示されているように、V相電位Vvは、U相電位Vuと同一の時間波形を有し、U相電位Vuから180°位相が遅れた電位となる。1次巻線電圧Vuvは、U相電位VuからV相電位Vvを減じた電圧である。これによって、図3(e)に示されているように、1次巻線電圧Vuvは、波高値Vbで正負対称の時間波形となる。これによって、2次巻線T2には、1次巻線電圧Vuvに基づく2次巻線電圧Vwxが発生する。
また、制御信号Cn1〜Cn4に従ってスイッチングS1〜S4がオンオフ制御されることで、スイッチング素子S1〜S4、整流スイッチング素子S9およびS10が整流回路として動作し、1次巻線T1の端子間電圧Vuvが整流されて中間コンデンサCbufに印加される。これによって、入力交流電圧Vacに基づいて、中間コンデンサCbufが充電される。
制御信号Cn1〜Cn4の周期は、入力交流電圧Vacの周期よりも十分短い。1次巻線T1に流れる電流の時間波形は、スイッチング素子S1〜S4のスイッチングによって整形され、力率改善動作が実行される。
(3)電圧コンバータの構成および動作
次に、電圧コンバータ回路14の構成について図1を参照して説明する。電圧コンバータ回路14は、2次巻線T2および第2スイッチング回路16を備えている。
第2スイッチング回路16は、スイッチング素子S5およびS6によって構成される2次側ハーフブリッジW、スイッチング素子S7およびS8によって構成される2次側ハーフブリッジX、および2次側コンデンサCoutを備えている。2次側ハーフブリッジWは、スイッチング素子S5の一端と、スイッチング素子S6一端とを接続したものである。スイッチング素子S5の両端には、スイッチング素子S6との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S6の両端には、スイッチング素子S5との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S5およびS6としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S5としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S6としてのIGBTのコレクタとが接続される。
同様に、ハーフブリッジXは、スイッチング素子S7の一端と、スイッチング素子S8の一端とを接続したものである。スイッチング素子S7の両端には、スイッチング素子S8との接続点の側をアノードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S8の両端には、スイッチング素子S7との接続点の側をカソードとしてダイオードが接続されている。スイッチング素子S7およびS8としては、例えば、IGBTが用いられる。この場合、スイッチング素子S7としてのIGBTのエミッタと、スイッチング素子S8としてのIGBTのコレクタとが接続される。
スイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間には2次巻線T2が接続されている。
2次側ハーフブリッジWおよびXは並列接続され、2次側フルブリッジを構成している。すなわち、スイッチング素子S5の上側の端子とスイッチング素子S6の上側の端子とが接続され、スイッチング素子S7の下側の端子とスイッチング素子S8の下側の端子とが接続されている。2次側ハーフブリッジWおよびXの上側の端子と、2次側ハーフブリッジWおよびXの下側の端子との間には、2次側コンデンサCoutが接続されている。また、2次側ハーフブリッジWおよびXの上側の端子には正極端子26Pが接続され、2次側ハーフブリッジWおよびXの下側の端子には負極端子26Nが接続されている。さらに、正極端子26Pと負極端子26Nとの間には直流電源回路20が接続されている。
電圧コンバータ回路14の動作について説明する。力率改善回路10の1次巻線T1に印加された電圧に応じて2次巻線T2に電圧が発生し、2次巻線T2に発生した電圧がスイッチング素子S5およびS6の接続点と、スイッチング素子S7およびS8の接続点との間に印加される。
制御部22は、制御信号Cn5〜Cn8をそれぞれスイッチング素子S5〜S8に出力し、スイッチング素子S5〜S8をオンオフ制御する。制御信号Cniがハイであるときは、スイッチング素子Siはオンとなり、制御信号Cniがローであるときは、スイッチング素子Siはオフとなる。ただし、iは5〜8のうちいずれかの整数である。制御信号Cn6は制御信号Cn5に対してハイおよびローを反転させたものであり、制御信号Cn8は、制御信号Cn7に対してハイおよびローを反転させたものである。また、制御信号Cn7およびCn8は、それぞれ、制御信号Cn5およびCn6に対して位相が180°遅れている。
これによってスイッチング素子S5およびS6は交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S5がオフからオンになったときは、スイッチング素子S6はオンからオフになり、スイッチング素子S5がオンからオフになったときは、スイッチング素子S6はオフからオンになる。同様に、スイッチング素子S7およびS8は交互にオンオフする。スイッチング素子S5およびS6のオンオフの位相に対し、スイッチング素子S7およびS8のオンオフの位相は180°遅れる。制御部22は、電圧コンバータ回路14におけるデューティ比を、力率改善回路10におけるデューティ比に一致させる。
制御部22は、2次側コンデンサCoutの端子間電圧と、その目標値との差異に応じて、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して遅らせる。
ここでは、2次側コンデンサCoutが一定の電圧Vdに充電されているものとして電圧コンバータ回路14の動作について説明する。
図4(a)には、1次巻線電圧Vuvおよび2次巻線電圧Vwxの時間波形が示されている。ここで、2次巻線電圧Vwxは、スイッチング素子S7およびS8の接続点の電位を基準としたスイッチング素子S5およびS6の接続点の電圧である。1次巻線電圧Vuvは波高値がVbの矩形波であり、2次巻線電圧Vwxは波高値がVdの矩形波である。2次巻線電圧Vwxは1次巻線電圧Vuvに対して位相がφだけ遅れている。図4(b)には、2次巻線T2に流れる電流idの時間波形が示されている。2次巻線電流idは、2次側ハーフブリッジXから2次側ハーフブリッジWに向かう方向を正とする。
1次巻線電圧Vuvが0からVbに立ち上がり、2次巻線電圧Vwxが0である期間τ1の間、2次巻線電流idは0から正方向に急激に増加する。その後、2次巻線電圧VwxがVdに立ち上がり、1次巻線電圧VuvがVbであり2次巻線電圧VwxがVdである期間τ2の間、2次巻線電流idの変化は緩やかになる。さらに、1次巻線電圧VuvがVbから0に立ち下がり、2次巻線電圧VwxがVdである期間τ3の間、2次巻線電流idは0に向かってに急激に減少する。
1次巻線電圧Vuvおよび2次巻線電圧Vwxが0である期間τ4では、2次巻線電流idは0である。
1次巻線電圧Vuvが0から−Vbに立ち下がり、2次巻線電圧Vwxが0である期間τ5の間、2次巻線電流idは0から負方向に急激に増加する。その後、2次巻線電圧Vwxが−Vdに立ち下がり、1次巻線電圧Vuvが−Vbであり2次巻線電圧Vwxが−Vdである期間τ6の間、2次巻線電流idの変化は緩やかになる。さらに、1次巻線電圧Vuvが−Vbから0に立ち上がり、2次巻線電圧Vwxが−Vdである期間τ7の間、2次巻線電流idは0に向かってに急激に減少する。
1次巻線電圧Vuvが立ち上がりまたは立ち下がってから2次巻線電圧Vwxが立ち上がりまたは立ち下がる前までの期間τ1およびτ5では、1次巻線T1から2次巻線T2にエネルギーが供給されると共に、2次巻線T2はエネルギーを蓄える。そして、期間τ2、τ3、τ6およびτ7の間、電圧コンバータ回路14は、2次巻線電圧Vwxおよび2次巻線電流idの積で定まる電力を直流電源回路20に出力する。
1次巻線電圧Vuvと2次巻線電圧Vwxとの位相差φが大きい程、2次巻線T2にエネルギーが蓄積される期間τ1およびτ5が長くなり、期間τ2、τ3、τ6およびτ7における2次巻線電流idの絶対値が大きくなる。ただし、位相差φは180°未満の値である。したがって、1次巻線電圧Vuvと2次巻線電圧Vwxとの位相差φが大きい程、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に伝送され、電圧コンバータ回路14から直流電源回路20に出力される電力が大きくなる。
なお、制御部22が、上述のようにスイッチング素子S5〜S8をスイッチング制御することで、2次巻線電流idが2次側コンデンサCoutの上端から下端に流れ、2次側コンデンサCoutは、所定の電圧Vdで充電される。
電圧コンバータ回路14は、1次巻線T1および2次巻線T2によって構成されるトランスTによって、力率改善回路10に磁気的に結合している。したがって、力率改善回路10は、電圧コンバータ回路14から電気的に絶縁され、電圧コンバータ回路14で発生した高電圧による電流が、力率改善回路10側に流れることが回避される。また、上述のように、1次巻線T1に印加される1次巻線電圧Vuvは、正負対称の時間波形を有しているため、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に電力が伝送される際にトランスTにおいて生じる損失が低減される。
(4)電力供給モード(入力電流制御モードおよび出力電圧制御モード)
上記では、交流端子24−1および24−2に交流電圧源18が接続され、交流電圧源18から直流電源回路20に電力を供給する動作について説明した。この動作では、直流電源回路20がバッテリである場合には、直流電源回路20としてのバッテリが充電され、直流電源回路20がバッテリを充電するための充電回路であるときは、直流電源回路20によってバッテリが充電される。このような充電モードの他、電力変換装置は、交流端子24−1および24−2に負荷回路が接続され、直流電源回路20から負荷回路に電力を供給する電力供給モードで動作する。
図5には、電力供給モードでの接続構成例として、正極端子26Pおよび負極端子26Nに直流電源回路20としてバッテリ28が接続され、交流端子24−1および24−2に負荷回路30が接続された接続構成例が示されている。
電力供給モードには、入力電流制御モードおよび出力電圧制御モードがある。入力電流制御モードでは、バッテリ28から正極端子26Pに流入する電流および負極端子26Nからバッテリ28に流出する電流が目標値に近付けられ、あるいは目標値に合わせられる。
入力電流制御モードはV2Gにおける動作モードであってもよい。V2Gでは、交流端子24−1および24−2に負荷回路30として電力供給システムが接続される。電力供給システムでは伝送電圧が一定に維持されているため、電力供給システムが接続された交流端子24−1および24−2に現れる出力交流電圧は所定値に維持される。また、バッテリ28から正極端子26Pおよび負極端子26Nに出力される電圧は一定である。したがって、バッテリ28から正極端子26Pに流入する電流および負極端子26Nからバッテリ28に流出する電流が目標値に近付けられ、または合わせられることで、交流端子24−1および24−2に流れる電流が所定値に近付けられ、または合わせられる。これによって、電力変換装置から負荷回路30としての電力供給システムに供給される電力が所定値に近付けられ、または合わせられる。
一方、出力電圧制御モードはV2Hにおける動作モードであってもよい。V2Hでは、交流端子24−1および24−2に負荷回路として一般的な電気機器が接続される。電気機器としては、例えば、商用交流電源によって動作する家電製品や事務用機器がある。出力電圧制御モードでは、交流端子24−1および24−2に現れる出力交流電圧が所定値に近付けられ、または合わせられる。これによって、交流端子24−1および24−2に接続された電気機器に与えられる電源電圧が安定化される。
電力供給モードにおけるスイッチング素子S1〜S4のスイッチングタイミングは、充電モードにおけるスイッチングタイミングと同様である。また、電力供給モードにおける整流スイッチング素子S9およびS10のスイッチングタイミングは次の通りである。交流端子24−1および24−2の間の出力交流電圧が、交流端子24−1の側を正とするときは、制御部22は、整流スイッチング素子S9をオフにし、整流スイッチング素子S10をオンにする。そして、出力交流電圧が、交流端子24−1の側を負とするときは、制御部22は、整流スイッチング素子S9をオンにし、整流スイッチング素子S10をオフにする。
電力供給モードにおけるスイッチング素子S5〜S8のスイッチングタイミングもまた、充電モードにおけるスイッチングタイミングと同様である。ただし、充電モードでは、制御部22が、スイッチング素子S5〜S8をスイッチングする位相をスイッチング素子S1〜S4に対して遅らせるのに対し、電力供給モードでは、制御部22が、スイッチング素子S5〜S8をスイッチングする位相をスイッチング素子S1〜S4に対して進める。
図6(a)には、電力供給モードにおける1次巻線電圧Vuvおよび2次巻線電圧Vwxの時間波形が示されている。2次巻線電圧Vwxは1次巻線電圧Vuvに対して位相がφだけ進んでいる。図6(b)には、1次巻線T1に流れる電流ieの時間波形が示されている。1次巻線電流ieは、ハーフブリッジVからハーフブリッジUに向かう方向を正とする。
2次巻線電圧Vwxが0からVdに立ち上がり、1次巻線電圧Vuvが0である期間τ1の間、1次巻線電流ieは0から正方向に急激に増加する。その後、1次巻線電圧VuvがVbに立ち上がり、2次巻線電圧VwxがVdであり1次巻線電圧VuvがVbである期間τ2の間、1次巻線電流ieの変化は緩やかになる。さらに、2次巻線電圧VwxがVdから0に立ち下がり、1次巻線電圧VuvがVbである期間τ3の間、1次巻線電流ieは0に向かってに急激に減少する。
2次巻線電圧Vwxおよび1次巻線電圧Vuvが0である期間τ4では、1次巻線電流ieは0である。
2次巻線電圧Vwxが0から−Vdに立ち下がり、1次巻線電圧Vuvが0である期間τ5の間、1次巻線電流ieは0から負方向に急激に増加する。その後、1次巻線電圧Vuvが−Vbに立ち下がり、2次巻線電圧Vwxが−Vdであり1次巻線電圧Vuvが−Vbである期間τ6の間、1次巻線電流ieの変化は緩やかになる。さらに、2次巻線電圧Vwxが−Vdから0に立ち上がり、1次巻線電圧Vuvが−Vbである期間τ7の間、1次巻線電流ieは0に向かってに急激に減少する。
2次巻線電圧Vwxが立ち上がりまたは立ち下がってから1次巻線電圧Vuvが立ち上がりまたは立ち下がる前までの期間τ1およびτ5では、2次巻線T2から1次巻線T1にエネルギーが供給されると共に、1次巻線T1はエネルギーを蓄える。そして、期間τ2、τ3、τ6およびτ7の間、力率改善回路10は、1次巻線電圧Vuvおよび1次巻線電流ieの積で定まる電力を交流端子24−1および24−2から負荷回路30に出力する。
2次巻線電圧Vwxと1次巻線電圧Vuvとの位相差φが大きい程、1次巻線T1にエネルギーが蓄積される期間τ1およびτ5が長くなり、期間τ2、τ3、τ6およびτ7における1次巻線電流ieの絶対値が大きくなる。ただし、位相差φは180°未満の値である。したがって、2次巻線電圧Vwxと1次巻線電圧Vuvとの位相差φが大きい程、電圧コンバータ回路14から力率改善回路10に伝送され、力率改善回路10から電力供給システムに出力される電力が大きくなる。
なお、制御部22が、上述のようにスイッチング素子S1〜S4をスイッチング制御することで、1次巻線電流ieが中間コンデンサCbufの上端から下端に流れ、中間コンデンサCbufは、所定の電圧Vbで充電される。
(5)入力電流制御モード
電力供給モードのうちの1つである入力電流制御モードについて具体的に説明する。入力電流制御モードでは、例えば、交流端子24−1および24−2に負荷回路30として電力供給システムが接続される。図7には電力供給システム32の等価回路が示されている。電力供給システム32は、2本の電力伝送線25、負荷回路36および送配電設備34を備えている。送配電設備34は、2本の電力伝送線25の間の電圧を一定に維持しつつ、負荷回路36に電力を供給する。2本の電力伝送線25は、交流端子24−1および24−2に接続されており、電力変換装置から2本の電力伝送線25を介して負荷回路36に電力が供給される。これによって、送配電設備34に加えて電力変換装置から負荷回路36に電力が供給される。交流端子24−1および24−2の間の出力交流電圧(システム交流電圧Vs)は、送配電設備34によって一定に維持されている。
図8には、入力電流制御モードにおける制御部22の構成例として、制御部22Aのブロック図が示されている。制御部22Aは、図8に示されている各構成要素をプログラムを実行することによって実現するプロセッサを備えていてもよい。また、各構成要素が、ハードウエアとしての電子回路によって個別に構成されてもよい。
制御部22Aが、各制御信号を生成するに際しては、バッテリ28から正極端子26Pに流れ、負極端子26Nからバッテリ28に流れるバッテリ電流ibtの計測値Ibtm、中間電圧Vbの計測値Vbm、システム交流電圧Vsの計測値Vsm、および中途点電流iLの計測値ILが用いられる。電力変換装置には、これらを計測するための各センサ(図示せず)が設けられている。
制御部22Aは、中間電圧Vbの計測値である中間電圧計測値Vbmとその目標値Vb*との差異、システム交流電圧計測値Vsm、中途点電流計測値IL、システム交流電圧目標値Vs*および中間電圧計測値Vbmに基づいてデューティ比目標値αを求める。また、制御部22Aは、バッテリ電流計測値Ibtmとその目標値Ibt*との差異、バッテリ電流目標値Ibt*、中間電圧目標値Vb*およびデューティ比目標値αに基づいて、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して変化させる各制御信号を生成する。
デューティ比目標値αを求める処理について説明する。減算器38は、中間電圧目標値Vb*から中間電圧計測値Vbmを減算して第1誤差を求め、電圧PI制御部40に出力する。電圧PI制御部40は、比例積分制御による第1制御値を求め、乗算器42に出力する。乗算器42は、システム交流電圧計測値Vsmを第1制御値に乗じ、さらに、システム交流電圧計測値Vsmの時間平均値の自乗の逆数を乗じて得られる中途点電流目標値iL*を減算器44に出力する。減算器44は、中途点電流目標値iL*から中途点電流計測値ILを減算して第2誤差を求め、電流PI制御部46に出力する。電流PI制御部46は、比例積分制御による第2制御値を求め加算器48に出力する。加算器48は、第2制御値に半周期目標値1−Vs*/Vbmを加算して調整前目標値α0を求める。半周期目標値1−Vs*/Vbmは、システム交流電圧Vsが正の半周期の値であるときに、力率改善回路10において力率改善効果が得られるデューティ比としての意義を有する。
デューティ比決定部50は、システム交流電圧計測値Vsmが0または正の値であるときは、α=α0としてデューティ比目標値αを求める。また、デューティ比決定部50は、システム交流電圧計測値Vsmが負の値であるときは、α=1−α0としてデューティ比目標値αを求める。
第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して変化させる処理について説明する。減算器52は、バッテリ電流目標値ibt*からバッテリ電流計測値ibtmを減算した第3誤差を求め、位相PI制御部54に出力する。位相PI制御部54は、比例積分制御による第3制御値を求め、加算器55に出力する。
FF値決定部56は、次の(数1)に基づいて、第3制御値に対するフィードフォワード値FFを求め、加算器55に出力する。
ただし、ωswは、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする際のスイッチング角周波数である。Leqは、1次巻線T1における漏れインダクタンスであり、第1インダクタL1および第2インダクタL2のインダクタンスをそれぞれL1およびL2とし、1次巻線T1と2次巻線T2との結合係数をkとすると、Leq=(L1+L2)・(1−k)の関係がある。
加算器55は、第3制御値にフィードフォワード値FFを加算して位相制御値を求め位相調整部60に出力する。キャリア生成部58は、パルス幅変調を行うためのキャリア信号を位相調整部60に出力する。キャリア信号は、例えば、三角波を時間波形とする信号である。
位相調整部60は、さらに、キャリア生成部58から出力されたキャリア信号の位相を、位相制御値に基づいて変化させて、UV相バッファアンプ62に出力する。例えば、位相調整部60は、位相制御値が大きい程、キャリア信号の位相を遅らせる。UV相バッファアンプ62は、位相調整部60から出力されたキャリア信号をU相キャリア信号CUとしてUV相制御信号生成部64に出力する。また、UV相バッファアンプ62は、位相調整部60から出力されたキャリア信号を180°遅延させてV相キャリア信号CVとしてUV相制御信号生成部64に出力する。
位相調整部60は、キャリア信号をWX相バッファアンプ66に出力する。WX相バッファアンプ66は、位相調整部60から出力されたキャリア信号をW相キャリア信号CWとしてWX相制御信号生成部68に出力する。また、WX相バッファアンプ66は、位相調整部60から出力されたキャリア信号を180°遅延させてX相キャリア信号CXとしてWX相制御信号生成部68に出力する。
ここでは、位相調整部60が、UV相バッファアンプ62に出力する信号の位相を位相制御値に基づいて遅らせる処理について説明したが、位相調整部60が、WX相バッファアンプ66に出力する信号の位相を位相制御値に基づいて進める処理が実行されてもよい。
UV相制御信号生成部64は、デューティ比目標値α、U相キャリア信号CUおよびV相キャリア信号CVに基づいて、図2および図3に示されるような制御信号Cn1〜Cn4を生成する。WX相制御信号生成部68は、デューティ比目標値α、W相キャリア信号CWおよびX相キャリア信号CXに基づいて、制御信号Cn1〜Cn4に対して位相が180°遅れた制御信号Cn5〜Cn8を生成する。
以上のように、図8に示されている構成によって、制御部22Aは、第2スイッチング回路16に流入する直流電流ibtと、その直流電流に対する目標値ibt*との差異に応じて、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相と、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相との差を制御する。
また、制御部22Aは(数1)に従い、中間電圧Vbに対する目標値Vb*と、第2スイッチング回路16に流入する直流電流に対する目標値ibt*と、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする際のデューティ比と、1次巻線T1における漏れインダクタンスLeqと、スイッチング角周波数ωswとに基づいて、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相と、第2スイッチング回路16とをスイッチングする位相との差を制御する。
また、制御部22Aは、中間電圧Vbと、中間電圧Vbに対する目標値Vb*との差異に応じたデューティ比で、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする。
また、制御部22Aは、出力交流電圧Vs(システム交流電圧Vs)と、1次巻線の中途点から引き出された経路に流れる中途点電流iLと、に応じたデューティ比で、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする。
また、制御部22Aは、出力交流電圧に対する目標値Vs*と、中間電圧Vbとの差異に応じたデューティ比で、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする。
このような制御によれば、中間電圧目標値Vb*と中間電圧計測値Vbmとの差異に応じて中途点電流目標値iL*が求められ、中途点電流計測値ILが中途点電流目標値iL*に近付き、または一致するようなデューティ比目標値αが求められる。また、バッテリ電流計測値ibtmがバッテリ電流目標値ibt*に満たないときは、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対する、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の進みが大きくなる。そして、バッテリ電流計測値ibtmがバッテリ電流目標値ibt*を超えるときは、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対する、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の進みが小さくなる。これによって、バッテリ電流計測値ibtmがバッテリ電流目標値ibt*に近付き、または一致する。さらに、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16のスイッチング位相差|φ|を制御するための第3制御値には、FF値決定部56によって求められたフィードフォワード値FFが加算され、位相制御値が求められる。このようなフィードフォワード制御によって、電力供給システム32における消費電力が変化したとしても、電力変換装置から電力供給システム32に供給される電力が消費電力の変化に迅速に追従する。
図9には、入力電流制御モードの動作についてのシミュレーション結果が示されている。図9(a)〜(e)における横軸は時間を示す。図9(a)には、システム交流電圧Vsおよび中途点電流iLの時間波形が示されている。ただし、中途点電流iLは、シミュレーションによって求められたものではなく、縦軸のスケールを20倍にして模式的に時間波形が表されたものである。図9(b)には、中間電圧Vbおよびバッテリ電流ibtの時間波形が示されている。ただし、バッテリ電流ibtの縦軸のスケールは50倍とされている。図9(c)には、スイッチング素子S9およびS10の状態が示されている。図9(d)には、デューティ比αの時間波形が示されている。図9(e)には、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対する第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の遅れφが示されている。
(6)出力電圧制御モード
電力供給モードのうちの他の1つである出力電圧制御モードについて具体的に説明する。出力電圧制御モードでは、例えば、交流端子24−1および24−2に負荷回路30として電気機器が接続される。電気機器は、その動作状態に応じて消費電力が変化し、消費電力の変動によって電源電圧が変動した場合には、十分な性能が発揮されないことがある。そこで、出力電圧制御モードでは、交流端子24−1および24−2から出力される出力交流電圧が目標値に近付けられ、または目標値に合わせられる。
図10には、出力電圧制御モードにおける制御部22の構成例として、制御部22Bのブロック図が示されている。制御部22Bは、図に示されている各構成要素をプログラムを実行することによって実現するプロセッサを備えていてもよい。また、各構成要素が、ハードウエアとしての電子回路によって個別に構成されてもよい。
制御部22Bが、各制御信号を生成するに際しては、中間電圧Vbの計測値Vbm、および負荷電圧VL(交流端子24−1および24−2の間の電圧)の計測値VLmが用いられる。電力変換装置には、これらを計測するための各センサ(図示せず)が設けられている。
制御部22Bは、負荷電圧計測値VLmの絶対値とその目標値VL*との差異、負荷電圧目標値VL*、および中間電圧計測値Vbmに基づいてデューティ比目標値αを求める。また、制御部22Bは、中間電圧計測値Vbmと中間電圧目標値Vb*との差異に基づいて、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して変化させる各制御信号を生成する。
デューティ比目標値αを求める処理について説明する。減算器38は、負荷電圧計測値VLmの絶対値に対する目標値VL*から負荷電圧計測値VLmの絶対値|VLm|を減算して第1電圧誤差を求め、電圧PI制御部40に出力する。電圧PI制御部40は、比例積分制御によるデューティ比制御値を求め、加算器48に出力する。加算器48は、デューティ比制御値にオフセット値VL*/Vbmを加算して調整前目標値α0を求める。オフセット値VL*/Vbmは、負荷電圧測定値の絶対値の目標値VL*と中間電圧測定値Vbmとの相違を比率で表した誤差としての意義を有する。
デューティ比決定部50は、負荷電圧計測値VLmが0または正の値であるときは、α=α0としてデューティ比目標値αを求める。また、デューティ比決定部50は、負荷電圧計測値VLmが負の値であるであるときは、α=1−α0としてデューティ比目標値αを求める。
第2スイッチング回路16をスイッチングする位相を、第1スイッチング回路12に対して変化させる処理について説明する。減算器52は、中間電圧目標値Vb*から中間電圧計測値Vbmを減算した第2電圧誤差を求め、位相PI制御部54に出力する。位相PI制御部54は、比例積分制御による位相制御値を求め位相調整部60に出力する。
位相調整部60、UV相バッファアンプ62およびUV相制御信号生成部64は、キャリア信号、位相制御値およびデューティ比目標値αに基づいて、制御信号Cn1〜Cn4を生成する。また、位相調整部60、WX相バッファアンプ66およびWX相制御信号生成部68は、キャリア信号、位相制御値およびデューティ比目標値αに基づいて、制御信号Cn5〜Cn8を生成する。
図10に示されている構成によって、制御部22Bは、中間電圧Vbと、中間電圧に対する目標値Vb*との差異に応じて、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相と、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相との差を制御する。
また、制御部22Bは、出力交流電圧VLの絶対値と、出力交流電圧の絶対値に対する目標値VL*との差異に応じたデューティ比で、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする。
また、制御部22Bは、出力交流電圧VLの絶対値に対する目標値VL*と、中間電圧Vbとの差異に応じたデューティ比で、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16をスイッチングする。
制御部22Aが行う制御によれば、負荷電圧計測値VLmの絶対値|VLm|がその目標値に近付き、または一致し、さらに、|VLm|の目標値VL*と中間電圧計測値Vbmとが一致するようなデューティ比目標値αが求められる。また、中間電圧計測値Vbmが中間電圧目標値Vb*に満たないときは、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対し、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の進みが大きくなる。そして、中間電圧計測値Vbmが中間電圧目標値Vb*を超えるときは、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対し、第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の進みが小さくなる。これによって、中間電圧計測値Vbmが中間電圧目標値Vb*に近付き、または一致する。したがって、負荷電圧VLの絶対値が所定値に近付けられ、または合わせられ、負荷電圧VLが安定化される。
図11には、出力電圧制御モードの動作についてのシミュレーション結果が示されている。図11(a)〜(e)における横軸は時間を示す。図11(a)には、負荷電圧VLおよび中途点電流iLの時間波形が示されている。図11(b)には、中間電圧Vbの時間波形が示されている。図11(c)には、整流スイッチング素子S9およびS10の状態が示されている。図11(d)には、デューティ比αの時間波形が示されている。図11(e)には、第1スイッチング回路12をスイッチングする位相に対する第2スイッチング回路16をスイッチングする位相の遅れφが示されている。
(7)トランスTの巻線比
電力変換装置では、力率改善回路10から電圧コンバータ回路14に伝送される電力、または、電圧コンバータ回路14から力率改善回路10に伝送される電力を一定とした場合、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16のスイッチング位相差|φ|について次のような傾向がある。すなわち、デューティ比が1または0に近い程、スイッチング位相差が大きくなり、デューティ比が0.5に近い程、スイッチング位相差が小さくなる傾向がある。これは、デューティ比が0.5に近い程、図4および図6における期間τ2およびτ6が長くなり、電力が伝送される時間が長くなるためである。すなわち、期間τ2およびτ6が長くなり、伝送電力を一定とするという条件下では、期間τ1およびτ5を長くして(スイッチング位相差を大きくして)、1次巻線T1または2次巻線T2に流れる電流を大きくする必要がないためである。伝送電力を一定とするという条件下では、デューティ比が0.5に近い程、スイッチング位相差が小さくなり、1次巻線T1または2次巻線T2に流れる電流が小さくなる。これによって、ジュール熱による損失が小さくなり、伝送効率が向上する。本実施形態に係る電力変換回路では、トランスTの巻線比を適切な値とすることで、以下に説明するように、デューティ比が0.5に近付けられ、伝送効率が向上する。
上述の力率改善回路10では、交流端子24−1と交流端子24−2との間の出力交流電圧V(=Vac,VsまたはVL)の実行値をVrmsとしたとき、中間電圧目標値Vb*をVrmsの1.8倍とすることで、第1スイッチング回路12および第2スイッチング回路16のデューティ比が0.5に近付けられる。ただし、交流端子24−1と交流端子24−2との間の出力交流電圧Vの時間波形は正弦波である。これは実効値がVrmsの正弦波を全波整流して得られた時間波形の時間平均値は0.9Vrmsであり、中間電圧Vbを、この2倍の電圧とすることでデューティ比が0.5に近付けられるためである。そこで、1次巻線T1の巻数に対する2次巻線T2の巻数として定義される巻線比Nを、N=Vbat/(1.8・Vrms)とすることでデューティ比が0.5に近付けられる。ただし、Vbatはバッテリ28の出力電圧である。したがって、伝送電力を一定とするという条件下では、N=Vbat/(1.8・Vrms)とすることでデューティ比が0.5に近付けられ、伝送効率が向上する。