(1)スイッチングアーム駆動システム
図1には、本発明の実施形態に係るスイッチングアーム駆動システムが示されている。スイッチングアーム駆動システムは、制御ユニット10、電力供給ユニット12、スイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bを備えている。スイッチングアーム駆動システムは、2つのスイッチング素子16Aおよび16Bのそれぞれをオンからオフに、またはオフからオンに制御する。各スイッチング素子(16A,16B)は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。一般に、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に用いられる電力変換装置には、2つのスイッチング素子が直列接続されたスイッチングアーム(ハーフブリッジ)が用いられている。スイッチング素子がIGBTである場合、2つのIGBTのうちの一方のエミッタが他方のIGBTのコレクタに接続されることでスイッチングアームが構成される。
なお、以下の説明においては、スイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bについては、「14」の符号によってスイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bの両者を示すものとし、スイッチング素子16Aおよび16Bについても、「16」の符号によってスイッチング素子16Aおよび16Bの両者を示すものとする。末尾に符号「A」または「B」が付されたその他の構成要素についても同様である。
スイッチングアーム駆動システムの動作について図1を参照して説明する。制御ユニット10は、電力供給ユニット12および各スイッチング素子ドライバ14を制御する。電力供給ユニット12は、制御ユニット10による制御に従って各スイッチング素子ドライバ14に電力を供給する。スイッチング素子ドライバ14Aは、制御ユニット10による制御に従ってスイッチング素子16Aをオンオフ制御し、スイッチング素子ドライバ14Bは、制御ユニット10による制御に従ってスイッチング素子16Bをオンオフ制御する。
後述するように、電力供給ユニット12は送電コイルを備えており、各スイッチング素子ドライバ14は受電コイルを備えている。電力供給ユニット12から各スイッチング素子ドライバ14への電力伝送は、送電コイルおよび受電コイルによる非接触給電によって行われる。すなわち、送電コイルが構成する共振回路と、各スイッチング素子ドライバ14において受電コイルが構成する共振回路との結合共振(共鳴)によって、電力供給ユニット12から各スイッチング素子ドライバ14に電力が供給される。また、送電コイルと、各スイッチング素子ドライバ14における受電コイルとの電磁誘導結合によって、電力供給ユニット12から各スイッチング素子ドライバ14に電力が供給されてもよい。
制御ユニット10は、電力供給ユニット12における送電コイルの電気的状態を検出し、その電気的状態に応じて各スイッチング素子16の状態を認識する。送電コイルの電気的状態には、例えば、送電コイルの端子間電圧、送電コイルに流れる電流、送電コイルの端子間のインピーダンス等がある。
(2)基本駆動システム
図2には、スイッチングアーム駆動システムを構成する基本駆動システムが示されている。基本駆動システムは、スイッチングアーム駆動システムのうち、1つのスイッチング素子16に関する部分に相当する。図1に示された構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。基本駆動システムは、制御ユニット10、電力供給ユニット12、およびスイッチング素子ドライバ14を備えている。電力供給ユニット12は、電力供給回路18、送電コイル20、送電側電流センサ22、信号線23および送電側結合導体24を備えている。スイッチング素子ドライバ14は、受電コイル26、受電コンデンサ28、整流回路32、抵抗アレイ34、駆動回路36、スイッチング素子電流センサ38、温度センサ40、受電側結合導体30および信号線31を備えている。
送電コイル20は、電力供給回路18に含まれるコンデンサと共に送電側の共振回路を構成する。受電コイル26および受電コンデンサ28は直列に接続され、受電側の共振回路を構成する。受電側の共振回路は、整流回路32の一対の入力端子に接続されている。整流回路32の一対の出力端子は、抵抗アレイ34の一対の入力端子に接続され、抵抗アレイ34の一対の出力端子は、駆動回路36に接続されている。
送電コイル20および受電コイル26は磁気的に結合し、送電側の共振回路および受電側の共振回路は、電力供給回路18から出力された電力を結合共振によって整流回路32に伝送する。整流回路32は、受電側の共振回路から伝送された交流電力を整流して直流電力に変換し、抵抗アレイ34に出力する。
抵抗アレイ34は、正極線29P、負極線29N、第1抵抗器R1、第2抵抗器R2、第3抵抗器R3、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、一対の入力端子および一対の出力端子を備えている。一対の入力端子のうちの上側の入力端子(正極入力端子35P)は、一対の出力端子のうちの上側の出力端子(正極出力端子37P)に正極線29Pによって接続され、一対の入力端子のうちの下側の入力端子(負極入力端子35N)は、一対の出力端子のうちの下側の出力端子(負極出力端子37N)に負極線29Nによって接続されている。
第1抵抗器R1、第2抵抗器R2および第3抵抗器R3は、それぞれ、第1スイッチS1、第2スイッチS2および第3スイッチS3に直列に接続されている。抵抗器およびスイッチが直列接続された各直列接続ブロックは、正極線29Pおよび負極線29Nとの間に接続されている。
抵抗アレイ34の正極出力端子37Pおよび負極出力端子37Nには駆動回路36が接続されている。後述するように、各スイッチは、スイッチング素子16の状態に応じて、駆動回路36によってオフからオンに制御され、またはオンからオフに制御される。第1スイッチS1、第2スイッチS2、および第3スイッチS3のうち少なくとも1つがオンになっている場合、抵抗アレイ34は、正極入力端子35Pから流入する電流の一部を負極入力端子35Nから整流回路32に流し、駆動回路36をバイパスさせる。抵抗アレイ34は、残りの一部の電流を駆動回路36に流し、駆動回路36から負極出力端子37Nに流入した電流を整流回路32に流す。第1スイッチS1、第2スイッチS2、および第3スイッチS3の総てがオフになっている場合、抵抗アレイ34は、正極入力端子35Pから流入する電流を駆動回路36に流し、駆動回路36から負極出力端子37Nに流入した電流を整流回路32に流す。このような動作によって、抵抗アレイ34は、整流回路32から出力された電力に基づき、自らが備える各スイッチの状態に応じた電力を駆動回路36に出力する。
制御ユニット10からは、信号線23が引き出されており、その信号線23の先端には送電側結合導体24が接続されている。送電側結合導体24の近傍には、受電側結合導体30が配置されている。受電側結合導体30からは信号線31が引き出されており、駆動回路36に至っている。送電側結合導体24と受電側結合導体30は、電気的または磁気的に結合し、信号線23、送電側結合導体24、受電側結合導体30および信号線31によって、制御ユニット10と駆動回路36との間で制御信号を伝送するための信号伝送経路33が形成される。
駆動回路36は、電力供給回路18から、送電側の共振回路、受電側の共振回路、整流回路32、および抵抗アレイ34を介して供給された電力に基づいて、制御ユニット10の制御に従ってスイッチング素子16をオンオフ制御する。
送電側結合導体24および受電側結合導体30は機械的に結合されておらず、送電コイル20および受電コイル26もまた機械的に結合していない。そのため、制御ユニット10および電力供給ユニット12を送電側基板に実装し、スイッチング素子ドライバ14およびスイッチング素子16を受電側基板に実装した場合には、これらの基板の間を配線によって接続しなくてもよい。この場合送電側基板および受電側基板は着脱自在としてもよい。
スイッチング素子電流センサ38は、スイッチング素子16に流れる電流を検出し、検出された電流の値を示す情報(その電流に応じた物理量)を駆動回路36に出力する。温度センサ40は、スイッチング素子16の温度を検出し、スイッチング素子16の温度の値を示す情報(その温度に応じた物理量)を駆動回路36に出力する。
駆動回路36は、スイッチング素子電流センサ38および温度センサ40から与えられた情報に基づいてスイッチング素子16の状態を判定する。本実施形態におけるスイッチング素子16の状態には、温度急上昇、温度異常、過電流、素子故障および定常状態がある。温度急上昇は、所定時間当たりの温度上昇が所定の閾値を超えた状態である。温度異常は、温度が所定の範囲内にない状態である。過電流は、電流値が所定の閾値を超えた状態である。素子故障は、電流値が所定値に満たない状態等、電流経路が遮断されている状態(オープン故障の状態)である。素子故障は、所定の複数箇所が短絡している状態(ショート故障の状態)として定義されてもよい。この場合、スイッチング素子電流センサ38の代わりに、スイッチング素子16における複数箇所間の電圧を検出する電圧センサが用いられてもよい。定常状態は、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のいずれでもない状態である。
駆動回路36は、スイッチング素子16の各状態に対して、第1スイッチS1、第2スイッチS2、および第3スイッチS3のそれぞれの状態を対応付けたスイッチ制御テーブルを記憶している。スイッチ制御テーブルは、例えば、定常状態に対して、第1スイッチS1、第2スイッチS2および第3スイッチS3をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。温度急上昇に対して、第1スイッチS1をオンにし、第2スイッチS2および第3スイッチS3をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。温度異常に対して、第2スイッチS2をオンにし、第1スイッチS1および第3スイッチS3をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。過電流に対して、第3スイッチS3をオンにし、第1スイッチS1および第2スイッチS2をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。素子故障に対して、第1スイッチS1および第3スイッチS3をオンにし、第2スイッチS2をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられたものであってもよい。
スイッチ制御テーブルがこのような情報を有するものである場合、第1抵抗器R1の抵抗値r1、第2抵抗器R2の抵抗値r2、および第3抵抗器R3の抵抗値r3の間には、r1>r2>r3>(1/r1+1/r3)−1の関係が成立してもよい。例えば、r1=4・r3、およびr2=2・r3の関係が成立してもよい。
駆動回路36は、スイッチ制御テーブルを参照し、スイッチング素子16の状態に対応付けられたスイッチ情報を取得する。そして、スイッチ情報に基づいて第1スイッチS1、第2スイッチS2および第3スイッチS3の状態を設定する。
このような処理によれば、各スイッチはスイッチング素子16の状態に応じてオンまたはオフに設定される。そして、各スイッチがオンであるかオフであるかに応じて、電力供給ユニット12からスイッチング素子ドライバ14に供給される電力は異なり、送電コイル20の電気的状態も異なったものとなる。したがって、送電コイル20の電気的状態は、スイッチング素子16の状態に応じて異なったものとなる。
そこで、基本駆動システムでは、以下に説明するように、送電コイル20の電気的状態を表す物理量の1つである送電コイル電流値(送電コイル20に流れる電流の値)に基づいて、制御ユニット10がスイッチング素子16の状態を認識する。
送電側電流センサ22は送電コイル20に流れる電流を検出し、送電コイル電流値を示す電流情報(送電コイル電流値に応じた物理量)を制御ユニット10に出力する。制御ユニット10は、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のそれぞれの状態に対し、送電コイル電流値と基準値との差の絶対値(判定値)が取り得る範囲を対応付けた状態認識テーブルを記憶している。基準値は、例えば、定常状態における送電コイル電流値である。図3には、状態認識テーブルに含まれる情報が概念的に示されている。定常状態、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障の各状態に、それぞれ、判定値の取り得る範囲d0〜d4が対応付けられている。
制御ユニット10は、送電コイル電流値から基準値を減算して、その減算して得られた値の絶対値を判定値として求める。制御ユニット10は、状態認識テーブルを参照し、判定値に対応するスイッチング素子16の状態を認識する。制御ユニット10は、認識された状態を示すダイアグ情報を、搭載先の車両のコントロールユニットに送信する。
このような基本駆動システムによれば、信号線23、送電側結合導体24、受電側結合導体30、および信号線31による信号伝送経路33を用いることなく、制御ユニット10が、送電コイル20の電気的状態によってスイッチング素子16の状態を認識する。信号伝送路33は、スイッチング素子16をオンオフ制御する情報を伝送するために用いられる。そのため、スイッチング素子16の状態をスイッチング素子ドライバ14から制御ユニット10に伝送するために信号伝送路33を用いたのでは、情報の伝送に長時間を要してしまうことがある。基本駆動システムによれば、送電コイル20の電気的状態によってスイッチング素子16の状態が迅速に認識される。
さらに、制御ユニット10および電力供給ユニット12を送電側基板に実装し、スイッチング素子ドライバ14およびスイッチング素子16を受電側基板に実装した場合には、これらの基板の間を配線によって接続しなくてもよい。これによって、送電側基板に実装される電気回路および受電側基板に実装される電気回路との間の配線が単純化される。
なお、第1抵抗器R1、第2抵抗器R2および第3抵抗器R3は、トランジスタ等によって構成された可変抵抗器に置き換えられてもよい。この可変抵抗器は、正極線29Pと負極線29Nとの間に接続され、この可変抵抗器の抵抗値は、駆動回路36によって調整される。駆動回路36は、スイッチング素子16の各状態に対して、可変抵抗器の抵抗値を対応付けた抵抗値テーブルを記憶している。抵抗値テーブルでは、定常状態に対し、抵抗値として無限大(開放状態)が対応付けられてもよい。また、温度急上昇、温度異常、過電流、および素子故障に対して、それぞれ異なる抵抗値r1、r2、r3、およびr4が対応付けられてもよい。
この場合制御ユニット10は、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のそれぞれの状態に対し、送電コイル電流値についての判定値が取り得る範囲とを対応付けた可変抵抗器用状態認識テーブルを記憶する。このテーブルでは、判定値が取り得る範囲は、各抵抗器ではなく可変抵抗器を用いた場合の範囲とされている。
制御ユニット10は、送電コイル電流値から基準値を減算して、その減算して得られた値の絶対値を判定値として求める。制御ユニット10は、可変抵抗器用状態認識テーブルを参照し、判定値に対応するスイッチング素子16の状態を認識する。制御ユニット10は、認識された状態を示すダイアグ情報を、搭載先の車両のコントロールユニットに送信する。
(3)コンデンサアレイ型基本駆動システム
図4には、コンデンサアレイ型基本駆動システムが示されている。コンデンサアレイ型基本駆動システムは、図2に示されるスイッチング素子ドライバ14の抵抗アレイ34を取り除いて整流回路32と駆動回路36とを直結し、受電コンデンサ28をコンデンサアレイ42に置き換えたものである。図4では、このようなスイッチング素子ドライバが符号「15」によって表記されている。図3に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
コンデンサアレイ42は、受電コイル26の一端と整流回路32における一対の入力端子(27P,27N)の一方(図の上側の入力端子27P)との間に接続されている。コンデンサアレイ42は、基本共振コンデンサCF、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第3コンデンサC3、第1コンデンサスイッチW1、第2コンデンサスイッチW2、および第3コンデンサスイッチW3を備えている。
第1コンデンサC1、第2コンデンサC2および第3コンデンサC3は、それぞれ、第1コンデンサスイッチW1、第2コンデンサスイッチW2および第3コンデンサスイッチW3に直列に接続されている。コンデンサおよびコンデンサスイッチが直列接続された3つの直列接続ブロックおよび基本共振コンデンサCFは並列接続されている。すなわち、各直列接続ブロックは基本共振コンデンサCFと共に、受電コイル26の一端と整流回路32における上側の入力端子27Pとの間に接続されている。
駆動回路36は、スイッチング素子16の各状態に対して、第1コンデンサスイッチW1、第2コンデンサスイッチW2、および第3コンデンサスイッチW3のそれぞれの状態を対応付けたコンデンサスイッチ制御テーブルを記憶している。コンデンサスイッチ制御テーブルは、例えば、定常状態に対して、第1コンデンサスイッチW1、第2コンデンサスイッチW2および第3コンデンサスイッチW3をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。温度急上昇に対して、第1コンデンサスイッチW1をオンにし、第2コンデンサスイッチW2および第3コンデンサスイッチW3をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。温度異常に対して、第2コンデンサスイッチW2をオンにし、第1コンデンサスイッチW1および第3コンデンサスイッチW3をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。過電流に対して、第3コンデンサスイッチW3をオンにし、第1コンデンサスイッチW1および第2コンデンサスイッチW2をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。素子故障に対して、第1コンデンサスイッチW1および第3コンデンサスイッチW3をオンにし、第2コンデンサスイッチW2をオフにすべき旨のスイッチ情報が対応付けられた情報であってもよい。
コンデンサスイッチ制御テーブルがこのような情報を有するものである場合、第1コンデンサC1の容量c1、第2コンデンサC2の容量c2、および第3コンデンサC3の容量c3の間には、c1<c2<c3<c1+c3の関係が成立してもよい。例えば、c2=2・c1、およびc3=4・c1の関係が成立してもよい。
駆動回路36は、コンデンサスイッチ制御テーブルを参照し、スイッチング素子16の状態に対応付けられたスイッチ情報を取得する。そして、スイッチ情報に基づいて第1コンデンサスイッチW1、第2コンデンサスイッチW2および第3コンデンサスイッチW3の状態を設定する。
このような処理によれば、各コンデンサスイッチはスイッチング素子の状態に応じてオンまたはオフに設定される。そして、各コンデンサスイッチがオンであるかオフであるかに応じて、受電側の共振回路の共振周波数が異なったものとなり、電力供給ユニット12からスイッチング素子ドライバ15に供給される電力が異なったものとなる。そのため、スイッチング素子16の状態に応じて送電コイル20の電気的状態も異なったものとなる。
制御ユニット10は、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のそれぞれの状態に対し、送電コイル電流値についての判定値が取り得る範囲とを対応付けたコンデンサアレイ用状態認識テーブルを記憶している。このテーブルでは、判定値が取り得る範囲は、抵抗器アレイ34ではなくコンデンサアレイ42を用いた場合の範囲とされている。
制御ユニット10は、送電コイル電流値から基準値を減算して、その減算して得られた値の絶対値を判定値として求める。制御ユニット10は、コンデンサアレイ用状態認識テーブルを参照し、判定値に対応するスイッチング素子16の状態を認識する。制御ユニット10は、認識された状態を示すダイアグ情報を、搭載先の車両のコントロールユニットに送信する。
コンデンサアレイ型基本駆動システムによれば、図2に示された基本駆動システムによって得られる効果と同様の効果が得られる。すなわち、送電コイル20の電気的状態によってスイッチング素子16の状態が認識されるため、スイッチング素子16の状態が迅速に認識される。また、送電側基板に実装される電気回路および受電側基板に実装される電気回路との間の配線が単純化される。
なお、図4に示されるコンデンサアレイ42は、図5に示されているように受電コイル26に並列に接続されてもよい。
また、図4に示されるコンデンサアレイ42は、図6に示されるスイッチングコンデンサ回路44に置き換えられてもよい。スイッチングコンデンサ回路44は、基本共振コンデンサCF、スイッチングコンデンサCV、およびオンオフスイッチSVを備えている。スイッチングコンデンサCVおよびオンオフスイッチSVは直列接続されている。スイッチングコンデンサCVおよびオンオフスイッチSVが直列接続された直列接続ブロックは、基本共振コンデンサCFと共に、受電コイル26の一端と整流回路32における上側の入力端子27Pとの間に接続されている。
駆動回路36は、オンオフスイッチSVを所定の周期でオフからオン、オンからオフにスイッチングする。1周期においてオンオフスイッチSVがオンになる時間の比率であるデューティ比が大きい程、スイッチングコンデンサCVおよびオンオフスイッチSVによる直列接続ブロックの容量の時間平均値(オンオフ周期よりも十分長い時間で観測した場合における見かけ上の容量)が大きくなる。
駆動回路36は、スイッチング素子16の各状態に対して、オンオフスイッチSVのデューティ比を対応付けたデューティ比テーブルを記憶している。デューティ比テーブルでは、定常状態に対しデューティ比として0が対応付けられてもよい。また、温度急上昇、温度異常、過電流、および素子故障に対して、それぞれ異なるデューティ比α1、α2、α3、およびα4が対応付けられてもよい。
制御ユニット10は、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のそれぞれの状態に対し、送電コイル電流値についての判定値が取り得る範囲とを対応付けたスイッチングコンデンサ用状態認識テーブルを記憶している。このテーブルでは、判定値が取り得る範囲は、コンデンサアレイ42ではなくスイッチングコンデンサ回路44を用いた場合の範囲とされている。
制御ユニット10は、送電コイル電流値から基準値を減算して、その減算して得られた値の絶対値を判定値として求める。制御ユニット10は、スイッチングコンデンサ用状態認識テーブルを参照し、判定値に対応するスイッチング素子16の状態を認識する。制御ユニット10は、認識された状態を示すダイアグ情報を、搭載先の車両のコントロールユニットに送信する。
スイッチングコンデンサCVを用いた基本駆動システムによれば、図2に示された駆動システムによって得られる効果と同様の効果が得られる。すなわち、送電コイル20の電気的状態によってスイッチング素子16の状態が認識されるため、スイッチング素子16の状態が迅速に認識される。また、送電側基板に実装される電気回路および受電側基板に実装される電気回路との間の配線が単純化される。
なお、図6に示されるスイッチングコンデンサ回路44は、図7に示されているように受電コイル26に並列に接続されてもよい。
なお、上記では、送電コイル20の電気的状態を示す物理量としての送電コイル電流値に基づいて、制御ユニット10がスイッチング素子16の状態を認識する構成および処理について説明した。送電コイル20の電気的状態を示す物理量は、送電コイル20の端子間電圧や、送電コイル20の端子間インピーダンスであってもよい。送電コイル20の電気的状態を示す物理量が送電コイル20の端子間電圧である場合、送電コイル20の端子間に電圧センサが設けられる。また、状態認識テーブルまたはコンデンサアレイ用状態認識テーブルには、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のそれぞれの状態に対し、送電コイル端子間電圧と基準値との差の絶対値(判定値)が取り得る範囲を対応付けたものが用いられる。基準値は、例えば、定常状態における送電コイル端子間電圧である。制御ユニット10は、電圧センサによって検出された送電コイル20の端子間電圧を用いて状態認識テーブルまたはコンデンサアレイ用状態認識テーブルを参照し、スイッチング素子16の状態を認識する。
送電コイル20の電気的状態を示す物理量が送電コイル20の端子間インピーダンスである場合、送電側電流センサ22に加えて、送電コイル20の端子間に電圧センサが設けられる。また、状態認識テーブルまたはコンデンサアレイ用状態認識テーブルには、温度急上昇、温度異常、過電流および素子故障のそれぞれの状態に対し、送電コイル端子間インピーダンスと基準値との差の絶対値(判定値)が取り得る範囲を対応付けたものが用いられる。基準値は、例えば、定常状態における送電コイル端子間インピーダンスである。制御ユニット10は、送電側電流センサ22によって検出された送電コイル電流値および電圧センサによって検出された送電コイル20の端子間電圧を用いて送電コイル端子間インピーダンスを求める。そして、送電コイル端子間インピーダンスを用いて状態認識テーブルまたはコンデンサアレイ用状態認識テーブルを参照し、スイッチング素子16の状態を認識する。
(4)スイッチングアーム駆動システムの具体的な構成
図8には、スイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bを用いて、スイッチング素子16Aおよび16Bをオンオフ制御するスイッチングアーム駆動システムが示されている。スイッチングアーム駆動システムは、図1に示されているスイッチングアーム駆動システムを具体化したものである。図1および図2に示されている構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。また、図8では、2つのスイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bに属する同一の構成要素については末尾に「A」または「B」の符号を付して、いずれの駆動システムに属する構成要素であるかが示されている。
受電コイル26Aおよび受電コイル26Bは、いずれも電力給電システム12が備える送電コイル20に磁気的に結合している。駆動回路36Aおよび36Bと制御ユニット10との間には、図1に示されている基本駆動システムと同様、信号伝送経路33が設けられているが、図8ではその詳細な構成が省略して描かれている。
図2に示されている制御ユニット10および電力供給ユニット12が実行する処理と同様の処理によって、図8に示されている制御ユニット10および電力供給ユニット12は、スイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bに電力を供給すると共に、スイッチング素子ドライバ14Aおよび14Bを制御して、スイッチング素子16Aおよび16Bをオンオフ制御する。
また、図8には、整流回路32Aおよび32Bの具体的な構成が示されている。各整流回路(32A,32B)は、ダイオードD1〜D4を備えている。ダイオードD1のアノードはダイオードD2のカソードに接続されている。ダイオードD3のアノードはダイオードD4のカソードに接続されている。ダイオードD1およびD2の接続点と、ダイオードD3およびD4の接続点は、一対の入力端子となっている。ダイオードD1およびD3のカソードは、抵抗アレイ34Aの正極出力端子37Pに接続され、ダイオードD2およびD4のアノードは、抵抗アレイ34Aの負極出力端子37Nに接続されている。抵抗アレイ34Aの正極出力端子37Pと負極出力端子37Nとの間には、出力コンデンサCRが接続されている。
スイッチング素子ドライバ14Aにおける抵抗アレイ34Aは、図2のスイッチング素子ドライバ14における抵抗アレイ34と同様の構成を有し、第1抵抗器R1、第2抵抗器R2、第3抵抗器R3、第1スイッチS1、第2スイッチS2および第3スイッチS3を備えている。また、抵抗アレイ34Bは抵抗アレイ34Aと同様の構成を有し、抵抗アレイ34Aが有する構成要素に対応する構成要素として、第4抵抗器R4、第5抵抗器R5、第6抵抗器R6、第4スイッチS4、第5スイッチS5および第6スイッチS6を備えている。
各抵抗器の抵抗値には、r1>r2>r3>(1/r1+1/r3)−1>r4>r5>r6の関係が成立してもよい。例えば、r1=32・r6、r2=16・r6、r3=8・r6、r4=4・r6、およびr5=2・r6の関係が成立してもよい。
電力供給ユニット12における送電側電流センサ22は送電コイル20に流れる電流を検出し、電流情報を制御ユニット10に出力する。制御ユニット10は以下のそれぞれの状態に対し、送電コイル電流値と基準値との差の絶対値(判定値)が取り得る範囲を対応付けた状態認識テーブルを記憶している。状態認識テーブルにおいて判定値と対応付けられている状態は次の(i)〜(iv)である。
(i)スイッチング素子16Aの温度急上昇、温度異常、過電流、および素子故障。(ii)スイッチング素子16Bの温度急上昇、温度異常、過電流、および素子故障。(iii)上記(i)に列挙された状態のうちいずれかの状態と、上記(ii)に列挙された状態のうちいずれかの状態とが組み合わされた状態。(iv)スイッチング素子16Aおよび16Bのいずれもが定常状態。
制御ユニット10は、送電コイル電流値から基準値を減算して、その減算して得られた値の絶対値を判定値として求める。制御ユニット10は、状態認識テーブルを参照し、判定値に対応するスイッチング素子16Aおよび16Bの状態を認識する。制御ユニット10は、認識された状態を示すダイアグ情報を、搭載先の車両のコントロールユニットに送信する。
(5)コンデンサアレイ型スイッチングアーム駆動システム
図9には、コンデンサアレイ型スイッチングアーム駆動システムの構成が示されている。コンデンサアレイ型スイッチングアーム駆動システムは、図8に示される各スイッチング素子ドライバ(14A,14B)の抵抗アレイ(34A,34B)を取り除いて整流回路(32A,32B)と駆動回路(36A,36B)とを直結し、受電コンデンサ28をコンデンサアレイ(42A,42B)に置き換えたものである。図9では、このようなスイッチング素子ドライバを符号「15A」および「15B」と表記されている。図8に示される構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
図9には、整流回路(32A,32B)の具体的な構成が示されている。各整流回路32は、整流スイッチング素子G1〜G4を備えている。整流スイッチング素子G1の一端は整流スイッチング素子G2の一端に接続されている。整流スイッチング素子G3の一端は整流スイッチング素子G4の一端に接続されている。整流スイッチング素子G1およびG2の接続点と、整流スイッチング素子G3およびG4の接続点は、一対の入力端子となっている。整流スイッチング素子G1およびG3の各他端は、駆動回路36Aの一対の入力端子のうちの上側の端子に接続され、整流スイッチング素子G2およびG4の各他端は、駆動回路36Aの一対の入力端子のうちの下側の端子に接続されている。流スイッチング素子G1およびG3の接続点と、整流スイッチング素子G2およびG4の接続点との間には、出力コンデンサCRが接続されている。
スイッチング素子ドライバ15Aにおけるコンデンサアレイ42Aは、図4に示されるコンデンサアレイ42と同様の構成を有し、基本共振コンデンサCF、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第3コンデンサC3、第1コンデンサスイッチW1、第2コンデンサスイッチW2および第3コンデンサスイッチW3を備えている。また、コンデンサアレイ42Bはコンデンサアレイ42Aと同様の構成を有し、コンデンサアレイ42Aが有する構成要素に対応する構成要素として、第4コンデンサC4、第5コンデンサC5、第6コンデンサC6、第4コンデンサスイッチW4、第5コンデンサスイッチW5および第6コンデンサスイッチW6を備えている。
コンデンサC1〜C6の容量c1〜c6には、c1<c2<c3<c1+c3<c4<c5<c6の関係が成立してもよい。例えば、c2=2・c1、c3=4・c1、c4=8・c1、およびc5=16・c1の関係が成立してもよい。
電力供給ユニット12における送電側電流センサ22は送電コイル20に流れる電流を検出し、電流情報を制御ユニット10に出力する。制御ユニット10は以下のそれぞれの状態に対し、送電コイル電流値と基準値との差の絶対値(判定値)が取り得る範囲を対応付けたコンデンサアレイ用状態認識テーブルを記憶している。コンデンサアレイ用状態認識テーブルにおいて判定値と対応付けられている状態は次の(i)〜(iv)である。
(i)スイッチング素子16Aの温度急上昇、温度異常、過電流、および素子故障。(ii)スイッチング素子16Bの温度急上昇、温度異常、過電流、および素子故障。(iii)上記(i)に列挙された状態のうちいずれかの状態と、上記(ii)に列挙された状態のうちいずれかの状態とが組み合わされた状態。(iv)スイッチング素子16Aおよび16Bのいずれもが定常状態。
制御ユニット10は、送電コイル電流値から基準値を減算して、その減算して得られた値の絶対値を判定値として求める。制御ユニット10は、コンデンサアレイ用状態認識テーブルを参照し、判定値に対応するスイッチング素子16Aおよび16Bの状態を認識する。制御ユニット10は、認識された状態を示すダイアグ情報を、搭載先の車両のコントロールユニットに送信する。
なお、図8に示されているスイッチング素子ドライバ14Aおよび14B、または図9に示されているスイッチング素子ドライバ15Aおよび15Bを、スイッチング素子16Aおよび16Bと共に受電側基板に実装し、パワーカードが構成されてもよい。
(5)総括
上述のスイッチング素子ドライバ(14,15)およびスイッチング素子16は、非接触給電によって電力供給ユニット12から電力を取得する非接触受電装置として動作し、次のような構成要素を備える。すなわち、電力供給ユニット12から非接触給電によって電力を取得する受電コイル26と、受電コイル26で取得された電力が供給される電気回路と、受電コイル26と電気回路との間の電力伝送経路に設けられ、回路特性が可変である可変特性回路と、電気回路についての回路状態を判定する回路状態判定部と、回路状態判定部によって判定された回路状態に応じて回路特性を設定する制御部と、を備える。
上述の実施形態において、電気回路はスイッチング素子16によって構成される。可変特性回路は、上述の抵抗アレイ34、抵抗アレイ34に含まれる各抵抗器の代わりとされる可変抵抗器、コンデンサアレイ42、またはスイッチングコンデンサ回路44である。回路状態には、スイッチング素子16についての定常状態、温度急上昇、温度異常、過電流、素子故障等がある。回路状態判定部および制御部は、駆動回路36の内部に構成される。駆動回路36は、プログラムを実行するプロセッサを備えてもよい。この場合、プロセッサは、プログラムの実行によって回路状態判定部および制御部を実現する。回路状態判定部および制御部は、ハードウエアとしてのディジタル回路によって個別に構成されてもよい。
また、回路状態判定部は、電気回路に含まれる電子部品に異常があるか否かを判定すると共に、異常の種類を特定し、制御部は、異常の種類に応じて予め定められた特性に回路特性を設定してもよい。上述の実施形態において電子部品はスイッチング素子16であり、スイッチング素子16の異常としては、温度急上昇、温度異常、過電流、素子故障等がある。
また、可変特性回路は、複数の回路素子と、各回路素子の接続状態を変更するスイッチ回路と、を備えてもよい。可変特性回路としての抵抗アレイ34は、複数の回路素子として複数の抵抗器R1〜R3を含み、スイッチ回路として各抵抗器に直列接続されたスイッチS1〜S3を含む。可変特性回路としてのコンデンサアレイ42は、複数の回路素子として複数のコンデンサC1〜C3を含み、スイッチ回路として各コンデンサに直列接続されたコンデンサスイッチW1〜W3を含む。
上述のように制御ユニット10および電力供給ユニット12は、非接触給電によってスイッチング素子ドライバ14に電力を供給する非接触送電装置として動作し、次のような構成要素を備える。すなわち、スイッチング素子ドライバ14およびスイッチング素子16によって構成される受電装置に非接触給電によって電力を供給する送電コイル20と、送電コイル20の電気的状態を検出する電気的状態検出部と、電気的状態に応じて、受電装置の状態を認識する認識部と、を備える。
上述の実施形態において、送電コイル20の電気的状態を示す物理量には、例えば、送電コイル20の端子間電圧、送電コイル20に流れる電流、送電コイル20の端子間のインピーダンス等がある。送電コイル20の電気的状態を示す物理量が送電コイル20に流れる電流である場合、電気的状態検出部は送電側電流センサ22および制御ユニット10である。送電コイル20の電気的状態を示す物理量が送電コイル20の端子間電圧である場合、電気的状態検出部は、送電コイル20の端子間に設けられる電圧センサおよび制御ユニット10である。送電コイル20の電気的状態を示す物理量が送電コイル20の端子間のインピーダンスである場合、電気的状態検出部は、送電側電流センサ22、電圧センサおよび制御ユニット10である。認識部は、制御ユニット10の内部に構成される。
また、受電装置は複数の電子部品としてスイッチング素子16を含んでもよい。認識部は、送電コイル20の電気的状態に応じて、複数のスイッチング素子16のうち異常があるものを特定する特定部を含んでもよい。
また、特定部は、送電コイル20の電気的状態に応じて、複数のスイッチング素子16のうち異常があるものを特定すると共に、送電コイル20の電気的状態に応じて、異常の種類を特定してもよい。
また、認識部は、送電コイル20の電気的状態に応じて、受電装置に含まれる電子部品が異常であることを認識すると共に、送電コイル20の電気的状態に応じて異常の種類を特定する特定部を含んでもよい。
制御ユニット10は、プログラムを実行するプロセッサを備えてもよい。この場合、プロセッサは、プログラムの実行によって認識部および特定部を実現する。認識部および特定部は、ハードウエアとしてのディジタル回路によって個別に構成されてもよい。
なお、上述の各実施形態では、送電コイル20が構成する共振回路と、各スイッチング素子ドライバ14において受電コイル26が構成する共振回路との結合共振によって、電力供給ユニット12から各スイッチング素子ドライバ14に電力が供給される。このような構成の他、送電コイル20と受電コイル26との電磁誘導結合によって、電力供給ユニット12から各スイッチング素子ドライバ14に電力が供給される構成が用いられてもよい。