まず、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法を説明する。粉体(より具体的には、トナー母粒子、トナーコア、外添剤、樹脂粒子、樹脂コア、及びトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、その粉体に含まれる相当数の粒子について測定した値の個数平均である。
粉体の粒子径、及び個数平均一次粒子径の各々は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。
粉体の体積中位径(D50)は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。以下、「体積中位径」を「D50」と記載することがある。
ガラス転移点(Tg)、及び融点(Mp)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121−2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、ガラス転移に起因する変曲点の温度が、ガラス転移点(Tg)に相当する。ガラス転移に起因する変曲点の温度は、詳しくは、ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点の温度である。吸熱曲線中の最大吸熱ピークの温度が、融点(Mp)に相当する。以下、「ガラス転移点」を「Tg」と、「融点」を「Mp」と記載することがある。
軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定された試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、軟化点(Tm)に相当する。以下、「軟化点」を「Tm」と記載することがある。
酸価及び水酸基価の各々は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従い測定した値である。
数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。以下、「数平均分子量」を「Mn」と、「質量平均分子量」を「Mw」と記載することがある。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、日本画像学会から提供される標準キャリアに対する摩擦帯電のし易さである。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)と混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。例えばKFM(ケルビンプローブフォース顕微鏡)を用いて、摩擦帯電させる前と後との測定対象の表面電位をそれぞれ測定し、摩擦帯電の前後での電位の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。以上、本明細書で用いる用語の意味、及び測定方法を説明した。次に、本発明の実施形態について説明する。
[トナー]
本実施形態は、正帯電性トナー(以下、トナーと記載することがある)に関する。トナーは、トナー粒子を含む。トナーは、トナー粒子の集合体(粉体)である。
図1は、本実施形態のトナーに含まれるトナー粒子10の断面構造の一例を示す。図1に示されるトナー粒子10は、トナー母粒子11と、外添剤とを備える。外添剤は、トナー母粒子11の表面に備えられる。外添剤は、樹脂粒子12を含む。樹脂粒子12とトナー母粒子11とは、共有結合により互いに結合されている。共有結合は、例えば、アミド結合である。
本実施形態のトナーは、帯電安定性に優れる。トナーの帯電安定性は、トナーを用いて画像を連続して形成した場合にトナーの帯電量を所望の範囲の帯電量に維持できるという特性である。本実施形態のトナーにおいては、樹脂粒子12とトナー母粒子11とが共有結合により互いに結合されている。共有結合により互いに結合されることで、トナー母粒子11から樹脂粒子12が脱離し難くなる。このため、樹脂粒子12の脱離によって引き起こされるトナーの帯電量の変動を、抑制することができる。その結果、トナーの帯電量を所望の範囲の帯電量に維持することができ、トナーの帯電安定性を向上させることができる。
また、帯電安定性に優れるトナーによれば、トナー飛散量を所望値以下に抑えることができる。トナーとキャリアとを混合した2成分現像剤を用いて現像する場合を例に挙げて、トナー飛散量について説明する。画像形成において、静電気力によって、キャリアの表面にトナーが付着する。トナーの帯電量が所望の範囲の帯電量より低くなると、トナーとキャリアとの間の静電気的な付着力が低下する。画像形成の現像工程において、トナーが付着したキャリアが、現像部(例えば、現像ローラー)の表面に汲み上げられる。トナーが付着したキャリアは現像部の表面に付着しながら、現像部の回転に従って回転する。この際に、静電気的な付着力が低下したトナーは、キャリアから脱離する。現像部の表面に付着したキャリアから脱離したトナーは、現像部から落下して、現像部の下方に位置する容器に溜まる。容器に溜まったトナーの量が、トナー飛散量である。本実施形態のトナーは帯電安定性に優れるため、トナーとキャリアとの間の静電気的な付着力が低下し難く、トナー飛散量を所望値以下に抑えることができる。
本実施形態のトナーの一例は、次のとおりである。トナー母粒子11及び樹脂粒子12の一方が、第1ビニル樹脂を含有する。トナー母粒子11及び樹脂粒子12の他方が、その表面にカルボキシル基を有する。第1ビニル樹脂は、下記式(A)で表される単位と、下記式(B)で表される単位とを含む。以下、「式(A)で表される単位」及び「式(B)で表される単位」を、各々、単位(A)及び単位(B)と記載することがある。樹脂粒子12とトナー母粒子11とを互いに結合させている共有結合は、第1アミド結合である。第1アミド結合は、単位(B)に含まれるアミド結合である。
式(A)中、R1は、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表す。アルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び環状アルキル基が挙げられる。R1が表わすアルキル基は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、フェニル基が挙げられる。R1は、水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基を表すことがより好ましく、水素原子を表すことが更に好ましい。
式(B)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。樹脂粒子12が第1ビニル樹脂を含有する場合、R2は、トナー母粒子11を構成する原子を表す。トナー母粒子11が第1ビニル樹脂を含有する場合、R2は、樹脂粒子12を構成する原子を表す。
樹脂粒子12が第1ビニル樹脂を含有する場合、第1ビニル樹脂中の多数個の単位(A)のうち、一部の単位(A)のオキサゾリン基を、トナー母粒子11の表面のカルボキシル基と反応させる。これにより、単位(A)を含む第1ビニル樹脂中に、単位(B)を更に含ませることができる。トナー母粒子11が第1ビニル樹脂を含有する場合、第1ビニル樹脂中の多数個の単位(A)のうち、一部の単位(A)のオキサゾリン基を、樹脂粒子12の表面のカルボキシル基と反応させる。これにより、単位(A)を含む第1ビニル樹脂中に、単位(B)を更に含ませることができる。
本実施形態のトナーの好適な例としては、以下に示す第1態様、及び第2態様が挙げられる。
[第1態様のトナー]
以下、図2を参照して、トナーの第1態様について説明する。第1態様のトナーは、トナー粒子20を含む。トナー粒子20は、トナー母粒子21と、外添剤とを備える。外添剤は、トナー母粒子21の表面に備えられる。外添剤は、樹脂粒子22を含む。樹脂粒子22とトナー母粒子21とは、共有結合により互いに結合されている。樹脂粒子22が、第1ビニル樹脂を含有する。トナー母粒子21がその表面にカルボキシル基を有している。樹脂粒子22は、樹脂コア23と、コート層24とを有する。コート層24は、樹脂コア23の表面を覆っている。第1ビニル樹脂は、コート層24に含有されている。コート層24に含有される第1ビニル樹脂は、単位(A)と、単位(B)とを含む。第1態様において、単位(B)は、下記式(B1)で表される単位である。以下「式(B1)で表される単位」を「単位(B1)」と記載することがある。樹脂粒子22とトナー母粒子21とを互いに結合させている共有結合は、第1アミド結合である。第1態様において、第1アミド結合は、単位(B1)に含まれるアミド結合である。
式(B1)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。R21は、トナー母粒子21を構成する原子を表す。コート層24に含有される第1ビニル樹脂中の多数個の単位(A)のうち、一部の単位(A)のオキサゾリン基を、トナー母粒子21の表面のカルボキシル基と反応させる。これにより、単位(A)を含む第1ビニル樹脂中に、単位(B1)を更に含ませることができる。以下「単位(A)及び単位(B1)を含む第1ビニル樹脂」を、「特定の第1ビニル樹脂(A−B1)」と記載することがある。以下、第1態様のトナーが備える樹脂粒子22、及びトナー母粒子21について、更に説明する。
<樹脂粒子>
樹脂粒子22は、樹脂コア23と、コート層24とを有する。樹脂粒子22の個数平均一次粒子径は、60nm以上120nm以下であることが好ましく、65nm以上105nm以下であることがより好ましい。樹脂粒子22の個数平均一次粒子径がこのような範囲内であると、樹脂粒子22とトナー母粒子21とを好適に結合することができ、トナー母粒子21からの樹脂粒子22の脱離を好適に抑制できる。樹脂粒子22の個数平均一次粒子径は、65nm以上70nm以下、75nm以上80nm以下、90nm以上95nm以下、95nm超100nm以下、又は100nm超105nm以下であってもよい。
樹脂粒子22の個数平均一次粒子径が60nm以上120nm以下であると、次の利点も得られる。外添剤が、樹脂粒子22以外の外添剤粒子(以下「その他の外添剤粒子」と記載することがある)を含む場合には、その他の外添剤粒子がトナー母粒子21に埋没することを抑制できる。その他の外添剤粒子の個数平均一次粒子径が、樹脂粒子22の個数平均一次粒子径よりも小さい場合に、この利点が特に得られ易い。その他の外添剤粒子がシリカ粒子である場合には、シリカ粒子がトナー母粒子21に埋没することを抑制できる。このため、トナーの流動性が確保され易い。その他の外添剤粒子が酸化チタン粒子である場合には、酸化チタン粒子がトナー母粒子21に埋没することを抑制できる。このため、トナーの帯電安定性がより一層確保され易い。なお、その他の外添剤粒子については、後述する。
(コート層)
コート層24は樹脂コア23の表面を覆う。コート層24は、樹脂コア23の表面全域を覆っていることが好ましく、樹脂コア23の表面全域を完全に覆っていることがより好ましい。コート層24は、特定の第1ビニル樹脂(A−B1)を含有することが好ましく、特定の第1ビニル樹脂(A−B1)のみを含有することがより好ましい。
特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、単位(A)及び単位(B1)に加えて、下記式(C)で表される単位を更に含むことが好ましい。以下「式(C)で表される単位」を「単位(C)」と記載することがある。樹脂コア23がカルボキシル基を有し、且つコート層24が単位(C)を含む特定の第1ビニル樹脂(A−B1)を含有していることが好ましい。コート層24は、単位(C)を含む特定の第1ビニル樹脂(A−B1)のみを含有していることが好ましい。コート層24が含有する特定の第1ビニル樹脂(A−B1)が単位(C)を含む場合、樹脂コア23とコート層24とが、第2アミド結合により互いに結合されている。第2アミド結合は、単位(C)に含まれるアミド結合である。樹脂コア23とコート層24とが互いに結合されることで、樹脂コア23からコート層24が剥がれることを抑制できる。
式(C)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。R3は、樹脂コア23を構成する原子を表す。コート層24に含有される特定の第1ビニル樹脂(A−B1)中の多数個の単位(A)のうち、一部の単位(A)のオキサゾリン基を、樹脂コア23の表面のカルボキシル基と反応させる。これにより、特定の第1ビニル樹脂(A−B1)中に、単位(C)を更に含ませることができる。なお、樹脂コア23は、コート層24に含有される第1ビニル樹脂中の第1アミド結合及び第2アミド結合を介して、トナー母粒子21と結合している。
第1態様のトナーにおいて、コート層24は、単位(A)を含む。単位(A)は、未開環オキサゾリン基を含む。未開環オキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。このため、このようなコート層24を有する樹脂粒子22を備えるトナーは、正帯電性に優れる。なお、単位(A)中の未開環オキサゾリン基は、カルボキシル基と反応して開環して、単位(B1)又は単位(C)を形成する。開環したオキサゾリン基の正帯電性は、未開環のオキサゾリン基と比較して、低い。
コート層24が含有する特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、下記式(1)で表されるビニル化合物を含むモノマーの重合体であることが好ましい。以下「式(1)で表されるビニル化合物」を「ビニル化合物(1)」と記載することがある。
式(1)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。式(1)中のR1の好適な例は、式(A)中のR1の好適な例と同じである。ビニル化合物(1)の好適な例としては、2−ビニル−2−オキサゾリンが挙げられる。ビニル化合物(1)が2−ビニル−2−オキサゾリンである場合、式(1)中のR1は水素原子である。
ビニル化合物(1)を含むモノマーを重合させることで、単位(A)を特定の第1ビニル樹脂(A−B1)に導入できる。単位(A)は、ビニル化合物(1)に由来する繰返し単位に相当する。特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、ビニル化合物の重合体である。ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)とビニリデン基(CH2=C<)とビニレン基(−CH=CH−)とのうちの少なくとも1つの官能基を分子内に含む。ビニル基などの官能基に含まれる炭素二重結合(C=C)が開裂して付加重合反応が起こると、ビニル化合物が高分子(ビニル樹脂)となる。
特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、ビニル化合物(1)のみの重合体であってもよい。或いは、特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、ビニル化合物(1)と、ビニル化合物(1)以外のビニル化合物との重合体であってもよい。以下、「ビニル化合物(1)以外のビニル化合物」を「その他のビニル化合物」と記載することがある。
その他のビニル化合物の例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、及びスチレンが挙げられる。その他のビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸ブチルが更に好ましい。1種のその他のビニル化合物のみを使用してもよく、2種以上(例えば、2種)のその他のビニル化合物を使用してもよい。
その他のビニル化合物が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合には、特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、単位(A)及び単位(B1)に加えて、下記式(D)で表される単位を更に含む。特定の第1ビニル樹脂(A−B1)に含まれる単位(D)は、1種の単位(D)のみであってもよく、2種以上(例えば、2種)の単位(D)であってもよい。
式(D)中、R4は、水素原子又はメチル基を表す。その他のビニル化合物がアクリル酸アルキルエステルである場合には、R4は、水素原子を表す。その他のビニル化合物がメタクリル酸アルキルエステルである場合には、R4は、メチル基を表す。R5は、置換されていてもよいアルキル基を表す。R5が表わすアルキル基としては、例えば、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、及び環状アルキル基が挙げられる。R5が表わすアルキル基は置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、フェニル基が挙げられる。R5は、アルキル基を表すことが好ましく、炭素数1以上8以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基(例えば、n−プロピル基、又はイソプロピル基)、ブチル基(例えば、n−ブチル基、tert−ブチル基、又はイソブチル基)、又は2−エチルヘキシル基を表すことが更に好ましく、メチル基又はブチル基を表すことが特に好ましい。
特定の第1ビニル樹脂(A−B1)は、ビニル化合物(1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマーの重合体であることが好ましく、ビニル化合物(1)と少なくとも2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマーの重合体であることがより好ましく、ビニル化合物(1)と少なくとも2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのみの重合体であることが更に好ましく、ビニル化合物(1)と(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルとの重合体であることが一層好ましく、2−ビニル−2−オキサゾリンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの重合体であることが更に一層好ましく、5質量部の2−ビニル−2−オキサゾリンと4質量部のメタクリル酸メチルと1質量部のアクリル酸ブチルとの重合体であることが特に好ましい。特定の第1ビニル樹脂(A−B1)のTgは、30℃以上70℃以下であることが好ましく、40℃以上60℃以下であることがより好ましい。
コート層24の厚さは、3.0nm以下であることが好ましく、0.1nm以上3.0nm以下であることがより好ましく、1.6nm以上1.8nm以下であることが更に好ましい。特定の第1ビニル樹脂(A−B1)が単位(B1)を含むため、コート層24の厚さを3.0nm以下とすることができる。これにより、樹脂粒子22の表面における窒素原子の存在量を適量とすることができる。これにより、樹脂粒子22が水分を吸着し難くなる。その結果、高温高湿環境下で連続して画像を形成した場合であっても、帯電安定性に特に優れるトナーを提供できる。コート層24の厚さは、後述の実施例に記載の方法又はそれに準ずる方法で測定できる。なお、樹脂コア23の酸価が小さいほど、コート層24の厚さが薄い傾向にある。例えば、樹脂コア23の酸価が5.0mgKOH/g以下であれば、コート層24の厚さが3.0nm以下となり易い。
外添剤は、樹脂粒子22として、1種の樹脂粒子22のみを含んでもよく、2種以上の樹脂粒子22を含んでもよい。樹脂粒子22の量は、100.0質量部のトナー母粒子21に対して、0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。外添剤が2種以上の樹脂粒子22を含む場合には、樹脂粒子22の合計量が、100.0質量部のトナー母粒子21に対して0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
(樹脂コア)
樹脂コア23は、樹脂を含有することが好ましく、樹脂のみを含有することがより好ましい。樹脂コア23が含有する樹脂としては、第2ビニル樹脂が好ましい。第2ビニル樹脂を合成するためのモノマーとしては、第1ビニルモノマー、第2ビニルモノマー、及び第3ビニルモノマーが挙げられる。第1ビニルモノマーは、1個のビニル基を有し、カルボキシル基を有さないビニルモノマーである。第2ビニルモノマーは、1個のビニル基と1個のカルボキシル基とを有するビニルモノマーである。第3ビニルモノマーは、少なくとも2個のビニル基を有するビニルモノマーである。
特定の第1ビニル樹脂(A−B1)に単位(C)を含ませて樹脂コア23とコート層24とを互いに結合させるためには、樹脂コア23がカルボキシル基を有することが好ましい。このような樹脂コア23を形成するためには、第2ビニル樹脂が、カルボキシル基を有する第2ビニル樹脂であることが好ましい。
カルボキシル基を有する第2ビニル樹脂は、第1ビニルモノマーと第2ビニルモノマーと第3ビニルモノマーとを含むモノマーの重合体であることが好ましい。カルボキシル基を有する第2ビニル樹脂は、第1ビニルモノマーと第2ビニルモノマーと第3ビニルモノマーとのみの重合体であることがより好ましい。カルボキシル基を有する第2ビニル樹脂は、128質量部以上135質量部以下の第1ビニルモノマーと、5質量部以上6質量部以下の第2ビニルモノマーと、7質量部以上13質量部以下の第3ビニルモノマーとの重合体であることが更に好ましい。
第1ビニルモノマーの例としては、スチレン、アルキルスチレン、ヒドロキシスチレン、ハロゲン化スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。
アルキルスチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、及び4−tert−ブチルスチレンが挙げられる。ヒドロキシスチレンとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、及びm−ヒドロキシスチレンが挙げられる。ハロゲン化スチレンとしては、例えば、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、及びp−クロロスチレンが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ハロゲン化メチル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化エチル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化n−プロピル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化iso−プロピル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化n−ブチル、(メタ)アクリル酸ハロゲン化iso−ブチル、及び(メタ)アクリル酸ハロゲン化2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
第1ビニルモノマーとしては、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、又は(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ハロゲン化エチルが好ましく、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチルがより好ましく、アクリル酸トリフルオロエチルが更に好ましく、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(即ち、2,2,2−トリフルオロアクリレート)が特に好ましい。
第2ビニルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
第3ビニルモノマーの例としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、及びエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。第3ビニルモノマーとしては、ジビニルベンゼン、又はエチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
第2ビニル樹脂は、スチレンとアクリル酸とジビニルベンゼンとの重合体であることが好ましい。第2ビニル樹脂は、メタクリル酸メチルとメタクリル酸とエチレングリコールジメタクリレートとの重合体であることも好ましい。第2ビニル樹脂は、アクリロニトリルとアクリル酸とジビニルベンゼンとの重合体であることも好ましい。第2ビニル樹脂は、2,2,2−トリフルオロアクリレートとメタクリル酸とエチレングリコールジメタクリレートとの重合体であることも好ましい。
樹脂コア23が含有する樹脂は、分子内に窒素原子を含まないことが好ましい。これにより、樹脂コア23に存在する窒素原子の量を適量にすることができ、樹脂コア23が水分を吸着し難くなる。これにより、トナー粒子20が水分を吸着し難くなる。その結果、高温高湿環境下で連続して画像を形成した場合におけるトナーの帯電安定性を、更に向上できる。
<トナー母粒子>
トナー母粒子21は、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤の少なくとも1種を含有してもよい。第1態様において、トナー母粒子21は、その表面にカルボキシル基を有する。トナー母粒子21がその表面に有するカルボキシル基は、結着樹脂が有するカルボキシル基であることが好ましい。
(結着樹脂)
結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結着樹脂は、ポリエステル樹脂のみを含んでいてもよい。或いは、結着樹脂は、ポリエステル樹脂に加えて、ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。トナー母粒子21は、1種の結着樹脂のみを含有してもよく、2種以上(例えば、2種)の結着樹脂を含有してもよい。以下、ポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、アルコールモノマーとカルボン酸モノマーとを縮重合させることにより得られる。ポリエステル樹脂は、アルコールモノマーと、カルボン酸モノマーとの重合体である。
アルコールモノマーの例としては、ジオールモノマー、ビスフェノールモノマー、及び3価以上のアルコールモノマーが挙げられる。
ジオールモノマーの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノールモノマーの例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールモノマーの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
カルボン酸モノマーの例としては、2価カルボン酸モノマー、及び3価以上のカルボン酸モノマーが挙げられる。
2価カルボン酸モノマーの例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、及びイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸モノマーの例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
アルコールモノマーの1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。カルボン酸モノマーの1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。更に、カルボン酸モノマーを、エステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体の例としては、酸ハライド、酸無水物、及び低級アルキルエステルが挙げられる。低級アルキルは、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。
トナー母粒子21は、結着樹脂として、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有することが好ましい。トナー母粒子21が結晶性ポリエステル樹脂を含有することで、トナーにシャープメルト性を付与できる。トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、結晶性ポリエステル樹脂の量は、ポリエステル樹脂の総量(結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂との合計量)に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
非結晶性ポリエステル樹脂としては、ビスフェノールモノマーの少なくとも1種と、2価カルボン酸モノマーの少なくとも1種との重合体が好ましい。非結晶性ポリエステル樹脂としては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、テレフタル酸と、n−ドデセニルコハク酸との重合体であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂としては、ジオールモノマーの少なくとも1種と、2価カルボン酸モノマーの少なくとも1種との重合体であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂としては、1,4−ブタンジオールと、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−ベンゼンジオールと、フマル酸との重合体であることがより好ましい。
トナーコアが適度なシャープメルト性を有するためには、トナーコア中に、結晶性指数0.90以上1.20以下の結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが好ましい。ポリエステル樹脂の結晶性指数は、ポリエステル樹脂のMpに対するポリエステル樹脂のTmの比率(Tm/Mp)に相当する。結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、結晶性ポリエステル樹脂を合成するための材料の種類又は使用量(配合比)を変更することで、調整できる。なお、非結晶性樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。
ポリエステル樹脂のTgは、30℃以上80℃以下であることが好ましく、55℃以上60℃以下であることがより好ましい。トナー母粒子21が非結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂のTgは、30℃以上80℃以下であることが好ましく、55℃以上60℃以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂のMpは、50℃以上100℃以下であることが好ましく、80℃以上85℃以下であることがより好ましい。トナー母粒子21が結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、結晶性ポリエステル樹脂のMpは、50℃以上100℃以下であることが好ましく、80℃以上85℃以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂のTmは、60℃以上130℃以下であることが好ましい。トナー母粒子21が非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂のTmは100℃以上130℃以下であることが好ましく、125℃以上130℃以下であることがより好ましい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂のTmは60℃以上95℃以下であることが好ましく、85℃以上90℃以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂のMwは、1万以上15万以下であることが好ましく、2万5000以上11万以下であることがより好ましい。トナー母粒子21が非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂のMwは、7万以上15万以下であることが好ましく、10万以上10万5000以下であることがより好ましい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂のMwは、1万以上5万以下であることが好ましく、2万5000以上3万以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂のMnは、2000以上5000以下であることが好ましく、3500以上4500以下であることがより好ましい。トナー母粒子21が非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂のMnは、4000超5000以下であることが好ましく、4500以上5000以下であることがより好ましい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂のMnは、2000以上4000以下であることが好ましく、3500以上4000以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましく、1mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることがより好ましい。トナー母粒子21が非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、6mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることがより好ましい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上5mgKOH/g以下であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の水酸基価は、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以上35mgKOH/g以下であることがより好ましい。トナー母粒子21が非結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する場合、非結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、25mgKOH/g以上35mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上35mgKOH/g以下であることがより好ましい。この場合、結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、15mgKOH/g以上25mgKOH/g未満であることが好ましい。
(着色剤)
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、100質量部の結着樹脂に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。トナー母粒子21は、1種の着色剤のみを含有してもよく、2種以上の着色剤を含有してもよい。
トナー母粒子21は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナー母粒子21は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルーが挙げられる。
(離型剤)
離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐高温オフセット性を向上させる目的で使用される。トナー母粒子21のカチオン性を強めるためには、カチオン性を有するワックスを用いてトナー母粒子21を作製することが好ましい。
離型剤は、例えば、脂肪族炭化水素ワックス、植物性ワックス、動物性ワックス、鉱物ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、又は脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスであることが好ましい。脂肪族炭化水素ワックスとしては、例えば、エステルワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスには、これらの酸化物も含まれる。植物性ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスが挙げられる。動物性ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン、及び鯨ろうが挙げられる。鉱物ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セレシン、及びペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするワックス類としては、例えば、モンタン酸エステルワックス、及びカスターワックスが挙げられる。トナー母粒子21は、1種の離型剤のみを含有してもよく、2種以上の離型剤を含有してもよい。
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。トナー母粒子21に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子21のカチオン性を強めることができる。正帯電性の電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩が好ましい。トナー母粒子21は、1種の電荷制御剤のみを含有してもよく、2種以上の電荷制御剤を含有してもよい。
<その他の外添剤粒子>
外添剤は、樹脂粒子22に加えて、その他の外添剤粒子を更に含んでいてもよい。その他の外添剤粒子は、シリカ粒子、又は金属酸化物の粒子であることが好ましい。金属酸化物は、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムであることが好ましい。外添剤は、1種のその他の外添剤粒子を含んでもよいし、2種以上のその他の外添剤粒子を含んでもよい。
その他の外添剤粒子の量は、100.0質量部のトナー母粒子21に対して0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。外添剤が2種以上のその他の外添剤粒子を含む場合には、その他の外添剤粒子の合計量が100.0質量部のトナー母粒子21に対して0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。その他の外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、樹脂粒子22の個数平均一次粒子径の0.5倍以下であることが好ましい。その他の外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。以上、図2を参照して、トナーの第1態様について説明した。
[第2態様のトナー]
以下、図3を参照して、トナーの第2態様について説明する。第2態様のトナーは、トナー粒子30を含む。トナー粒子30は、トナー母粒子31と、外添剤とを備える。外添剤は、トナー母粒子31の表面に備えられる。外添剤は、樹脂粒子32を含む。樹脂粒子32とトナー母粒子31とは、共有結合により互いに結合されている。トナー母粒子31が第1ビニル樹脂を含有し、樹脂粒子32がその表面にカルボキシル基を有する。トナー母粒子31は、トナーコア33と、シェル層34とを有する。シェル層34は、トナーコア33の表面を覆う。第1ビニル樹脂は、シェル層34に含有されている。シェル層34に含有される第1ビニル樹脂は、単位(A)と、単位(B)とを含む。第2態様において、単位(B)は、下記式(B2)で表される単位である。以下「式(B2)で表される単位」を「単位(B2)」と記載することがある。また、「単位(A)と単位(B2)とを含む第1ビニル樹脂」を、「特定の第1ビニル樹脂(A−B2)」と記載することがある。樹脂粒子32とトナー母粒子31とを互いに結合させている共有結合は、第1アミド結合である。第2態様において、第1アミド結合は、単位(B2)に含まれるアミド結合である。
式(B2)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。R22は、樹脂粒子32を構成する原子を表す。シェル層34に含有される第1ビニル樹脂中の多数個の単位(A)のうち、一部の単位(A)のオキサゾリン基を、樹脂粒子32の表面のカルボキシル基と反応させる。これにより、単位(A)を含む第1ビニル樹脂中に、単位(B2)を更に含ませることができる。以下、第2態様のトナーが備える樹脂粒子32、及びトナー母粒子31について、説明する。
<樹脂粒子>
第2態様のトナーが備える樹脂粒子32は、第1態様のトナーが備える樹脂コア23に相当する。第2態様のトナーが備える樹脂粒子32の好適な例は、第1態様のトナーで述べた樹脂コア23の好適な例と同じである。樹脂粒子32は、コート層を備えていないことが好ましい。ただし、樹脂粒子32は、第1ビニル樹脂以外の材料から構成されるコート層(図3では不図示)を、備えていてもよい。樹脂粒子32の個数平均一次粒子径は、60nm以上120nm以下であることが好ましく、65nm以上105nm以下であることがより好ましく、95nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
<トナー母粒子>
トナー母粒子31は、トナーコア33と、シェル層34とを有する。シェル層34は、トナーコア33の表面を覆う。シェル層34は、トナーコア33の表面全域を覆っていることが好ましく、トナーコア33の表面全域を完全に覆っていることがより好ましい。
第2態様におけるトナーコア33は、第1態様におけるトナー母粒子21に相当する。第2態様のトナーが備えるトナーコア33の好適な例は、第1態様のトナーが備えるトナー母粒子21の好適な例と同じである。トナーコア33は、例えば、結着樹脂を含有する。トナーコア33は、結着樹脂以外に、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤の少なくとも1種を更に含有してもよい。第2態様においてトナーコア33が含有する材料(例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤)の好適な例は、第1態様においてトナー母粒子21が含有する材料(例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤)の好適な例と同じである。次に、第2態様のトナーが備えるシェル層34について説明する。
(シェル層)
シェル層34は樹脂を含有することが好ましく、樹脂のみを含有することがより好ましい。以下「シェル層34が含有する樹脂」を「シェル樹脂」と記載することがある。シェル層34は、実質的にシェル樹脂から構成されていることが好ましい。第2態様において、シェル樹脂は、特定の第1ビニル樹脂(A−B2)である。
第2態様のトナーにおいて、シェル層34は、単位(A)を含む。単位(A)は、未開環オキサゾリン基を含む。既に述べたように、未開環オキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。このため、このようなシェル層34を備えるトナーは、正帯電性に優れる。なお、単位(A)中の未開環オキサゾリン基は、樹脂粒子32のカルボキシル基と反応して開環して、単位(B2)を形成する。開環したオキサゾリン基の正帯電性は、未開環のオキサゾリン基と比較して、低い。
シェル層34が含有する特定の第1ビニル樹脂(A−B2)は、ビニル化合物(1)を含むモノマーの重合体であることが好ましい。ビニル化合物(1)を含むモノマーを重合させることで、単位(A)を特定の第1ビニル樹脂(A−B2)に導入できる。単位(A)は、ビニル化合物(1)に由来する繰返し単位に相当する。特定の第1ビニル樹脂(A−B2)は、ビニル化合物(1)のみの重合体であってもよい。或いは、特定の第1ビニル樹脂(A−B2)は、ビニル化合物(1)と、その他のビニル化合物の重合体であってもよい。その他のビニル化合物が(メタ)アクリル酸アルキルエステルである場合には、特定の第1ビニル樹脂(A−B2)は、単位(A)及び単位(B2)に加えて、単位(D)を更に含む。
シェル層34が含有する特定の第1ビニル樹脂(A−B2)は、ビニル化合物(1)と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマーの重合体であることが好ましく、ビニル化合物(1)と少なくとも2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含むモノマーの重合体であることがより好ましく、ビニル化合物(1)と少なくとも2種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのみの重合体であることが更に好ましく、ビニル化合物(1)と(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルとの重合体であることが一層好ましく、2−ビニル−2−オキサゾリンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの重合体であることが更に一層好ましく、5質量部の2−ビニル−2−オキサゾリンと4質量部のメタクリル酸メチルと1質量部のアクリル酸ブチルとの重合体であることが特に好ましい。
特定の第1ビニル樹脂(A−B2)のTgは、30℃以上70℃以下であることが好ましく、40℃以上60℃以下であることがより好ましい。なお、特定の第1ビニル樹脂(A−B2)の好適な例は、単位(B1)及び単位(C)の代わりに単位(B2)を含むこと以外は、特定の第1ビニル樹脂(A−B1)の好適な例と同じである。
シェル層34の厚さは、20.0nm以下であることが好ましく、10.0nm以下であることがより好ましく、3.0nm以下であることが更に好ましい。シェル層34の厚さの下限値は特に限定されないが、例えば、0.1nm以上とすることができる。樹脂粒子32とシェル層34とが化学的に結合しているため、シェル層34の強度が向上し、シェル層34の厚さを薄くすることができる。シェル層34の厚さは、後述の実施例に記載の方法又はそれに準ずる方法で測定できる。
<その他の外添剤粒子>
第2態様のトナーのトナー粒子30は、その他の外添剤粒子を備えていてもよい。第2態様のトナーにおけるその他の外添剤粒子の例は、第1態様のトナーにおけるその他の外添剤粒子の例と同じである。以上、図3を参照して、トナーの第2態様について説明した。
本実施形態のトナーは、静電潜像の現像に好適に用いることが可能な静電潜像現像用トナーである。本実施形態のトナーは、1成分現像剤を構成してもよいし、キャリアと共に2成分現像剤を構成してもよい。トナーが1成分現像剤を構成する場合には、トナーは、現像装置内において現像スリーブ又はトナー帯電部材と摩擦することで、正に帯電する。トナー帯電部材は、例えば、ドクターブレードである。トナーが2成分現像剤を構成する場合には、トナーは、現像装置内においてキャリアと摩擦することで、正に帯電する。好適に画像を形成するためには、トナー母粒子のD50は、5μm以上9μm以下であることが好ましい。
本実施形態のトナーは、例えば、電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。まず、画像データに基づいて、感光体ドラムの感光層に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを用いて、現像する(現像工程)。現像工程では、現像装置が、現像スリーブ上のトナーを、感光体ドラムの感光層へ供給して、静電気的な力で静電潜像に付着させる。このようにして静電潜像が現像され、感光体ドラムの感光層にはトナー像が形成される。続いて、トナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写した後、加熱により未定着トナー像を記録媒体に定着させる。その結果、画像が記録媒体に形成される。
[トナーの製造方法]
本実施形態のトナーの製造方法は、外添工程と、結合工程とを少なくとも含む。本実施形態のトナーの製造方法は、樹脂粒子形成工程と、トナー母粒子形成工程とを更に含んでいてもよい。まず、図1を再び参照して、外添工程と、結合工程との概要について説明する。
<外添工程>
外添工程において、トナー母粒子11の表面に、樹脂粒子12を含む外添剤を付着させる。詳しくは、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、トナー母粒子11と、樹脂粒子12を含む外添剤とを混合する。これにより、トナー母粒子11の表面に、樹脂粒子12を含む外添剤が付着する。外添工程後、樹脂粒子12を含む外添剤は、化学的な結合によらず、物理的な力によって、トナー母粒子11の表面に付着している。
外添工程後、結合工程前の1gの樹脂粒子12に含まれる未開環オキサゾリン基の量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による測定で、0.002mmol/g以上5.000mmol/g以下であることが好ましい。既に述べたように、未開環オキサゾリン基は、強い正帯電性を示す。しかし、未開環オキサゾリン基は、吸水性を有する。これらのことから、樹脂粒子22においてオキサゾリン基の開環割合を制御することで、高温高湿環境下で連続して画像を形成した場合におけるトナーの帯電安定性を、更に向上できる。1gの樹脂粒子12に含まれる未開環オキサゾリン基の量は、0.002mmol/g以上3.000mmol/g以下であることがより好ましく、0.002mmol/g以上0.060mmol/g以下であることが更に好ましい。1gの樹脂粒子12に含まれる未開環オキサゾリン基の量は、0.002mmol/g以上0.005mmol/g以下、0.031mmol/g以上0.032mmol/g未満、0.032mmol/g以上0.040mmol/g未満、0.040mmol/g以上0.045mmol/g以下、0.050mmol/g以上0.055mmol/g未満、又は0.055mmol/g以上0.060mmol/g以下であってもよい。1gの樹脂粒子12に含まれる未開環オキサゾリン基の量は、後述の実施例に記載の方法又はそれに準ずる方法で、求めることができる。
<結合工程>
結合工程において、樹脂粒子12とトナー母粒子11とを共有結合により互いに結合して、トナー粒子10を形成する。結合工程の好適な例は、次のとおりである。トナー母粒子11及び樹脂粒子12の一方は、第1ビニル樹脂を含有する。トナー母粒子11及び樹脂粒子12の他方は、表面にカルボキシル基を有する。第1ビニル樹脂は、単位(A)を含む。結合工程において、第1ビニル樹脂が有する単位(A)とカルボキシル基とを、酸触媒の存在下で反応させる。これにより、単位(B)が形成されて、樹脂粒子12とトナー母粒子11とが共有結合により互いに結合される。共有結合は、第1アミド結合である。第1アミド結合は、形成された単位(B)に含まれるアミド結合である。結合工程後、外添剤に含まれる樹脂粒子12は、化学的な結合によって、トナー母粒子11の表面に結合している。
酸触媒としては、ハロゲン化水素が好ましく、塩化水素がより好ましい。気体状の酸触媒の存在下で、第1ビニル樹脂が有する単位(A)とカルボキシル基とが反応することが好ましい。気体状の酸触媒を使用することで、粉体のトナー母粒子11と、物理的な力で付着している粉体の樹脂粒子12とを、分離させることなく、反応を進行できる。結合工程においては、溶媒又は分散媒を使用しないことが好ましい。
反応容器に、樹脂粒子12を含む外添剤が付着したトナー母粒子11を入れる。反応容器の内圧を所定圧力まで下げる。反応容器内に酸触媒(好ましくは、気体状の酸触媒)を入れる。樹脂粒子12を含む外添剤が付着したトナー母粒子11を攪拌しながら、酸触媒の存在下、第1所定時間、反応容器の内圧を所定圧力に、反応容器内の温度を第1所定温度に保つ。所定圧力としては、0.0Paよりも大きく0.5Pa以下であることが好ましい。第1所定温度としては、0℃以上50℃以下が好ましい。第1所定時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、3分以上7分以下がより好ましい。第1所定時間保つ間に、樹脂粒子12と、トナー母粒子11とが、共有結合により互いに結合する。詳しくは、トナー母粒子11及び樹脂粒子12の一方に含有される第1ビニル樹脂が含む単位(A)のオキサゾリン基と、トナー母粒子11及び樹脂粒子12の他方が表面に有するカルボキシル基とが、反応(詳しくは、脱水反応)して、第1アミド結合が形成される。以上、図1を参照して、外添工程と、結合工程との概要について説明した。
以下、図2を再び参照して、第1態様のトナーの製造方法を説明する。
<第1態様のトナー:樹脂粒子形成工程>
樹脂粒子形成工程は、例えば、樹脂コア23の形成工程と、コート液の調製工程と、コート層24の形成工程とを含む。図2に加えて、図4を参照して、樹脂粒子22の好ましい形成方法を説明する。図4は、第1態様において、樹脂コア23と、コート層24を形成するための材料(以下、コート層材料と記載することがある)124との反応の一例を模式的に示す。なお、図4及び後述する図5〜図7では、炭素原子、及び炭素原子に結合した水素原子を省略して化学式を記載している。また、図4〜図7では、式(A)中のR1が水素原子を表す場合を例に挙げて示している。
(樹脂コアの形成工程)
樹脂コア23の形成工程では、樹脂コア23を含む分散液(樹脂コア23の分散液)を調製する。樹脂コア23は、その表面にカルボキシル基を有する。まず、樹脂コア23が含有する樹脂を合成するために使用されるモノマーを、水性媒体中で重合(好ましくは乳化重合)させる。重合開始剤の存在下で、モノマーを重合させてもよい。重合開始剤としては、過硫酸カリウムが好ましい。モノマーの重合時間が長いほど、樹脂コア23の個数平均一次粒子径が大きくなる傾向にある。
水性媒体は、水、又は水を主成分として含む分散媒であることが好ましい。水性媒体が水で構成される場合、水は、イオン交換水、又は純水であることが好ましい。水を主成分として含む水性媒体は、分散安定剤と水との混合液であることが好ましい。分散安定剤としては、界面活性剤又は乳化剤が好ましく、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートがより好ましい。
次に、樹脂コア23の分散液から樹脂コア23を取り出す。取り出した樹脂コア23を乾燥させないことが好ましい。
(コート液の調製工程)
コート液の調製工程では、コート層材料124を含む溶液を調製する。コート層材料124は、単位(A)を含む。コート層材料124の溶液としては、例えば、株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS−300」又は「エポクロスWS−700」を使用できる。エポクロスWS−300は、2−ビニル−2−オキサゾリンとメタクリル酸メチルとの重合体(水溶性架橋剤)を含む。重合体を構成するモノマーの質量比は、(2−ビニル−2−オキサゾリン):(メタクリル酸メチル)=9:1である。エポクロスWS−700は、2−ビニル−2−オキサゾリンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの重合体(水溶性架橋剤)を含む。重合体を構成するモノマーの質量比は、(2−ビニル−2−オキサゾリン):(メタクリル酸メチル):(アクリル酸ブチル)=5:4:1である。
(コート層の形成工程)
コート層24の形成工程では、コート層24を形成する。より具体的には、第2所定温度で、樹脂コア23(好ましくは、乾燥していない状態の樹脂コア23)とコート層材料124の溶液(コート液)とを混合する。ここで、第2所定温度は、カルボキシル基(樹脂コア23の表面に存在するカルボキシル基)とオキサゾリン基(コート層材料124に含まれるオキサゾリン基)とが反応して第2アミド結合Y2が形成される温度以上である。これにより、コート層24が形成され、樹脂粒子22が得られる。得られた樹脂粒子22の各々では、樹脂コア23の表面がコート層24で覆われている。
詳しくは、まず、樹脂コア23とコート層材料124の溶液とを混合して、分散液を得る。ここで、分散液中において、コート層材料124が樹脂コア23の表面に付着する。樹脂コア23の表面に均一にコート層材料124を付着させるためには、分散液中において樹脂コア23を高度に分散させることが好ましい。分散液中において樹脂コア23を高度に分散させるために、分散液に分散安定剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて分散液を攪拌してもよい。
次に、分散液を攪拌しながら、分散液の温度を第2所定昇温速度で、第2所定温度まで上昇させる。その後、分散液を攪拌しながら、第2所定時間にわたって分散液の温度を第2所定温度に保つ。分散液の温度を第2所定温度に保っている間に、次に示す反応が進行する。詳しくは、コート層材料124に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、一部のオキサゾリン基が、樹脂コア23のカルボキシル基と反応して開環する。これにより、第2アミド結合Y2が形成される。つまり、単位(C)が形成される。一方、コート層材料124に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、カルボキシル基と反応しないオキサゾリン基は、開環することなく、単位(A)としてコート層24中に残る。第2アミド結合Y2の存在は、後述の実施例に記載の方法又はそれに準ずる方法で確認できる。
第2所定温度は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。第2所定温度が50℃以上であれば、カルボキシル基とオキサゾリン基との反応が進行し易い。第2所定温度が100℃以下であれば、コート層24の形成に起因して樹脂成分が溶融することを防止できる。樹脂成分には、樹脂コア23が含有する樹脂と、コート層材料124とが含まれる。
第2所定昇温速度は、例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下であることが好ましい。第2所定時間は、例えば、30分間以上5時間以下であることが好ましい。回転速度が50rpm以上500rpm以下という条件で、分散液を攪拌することが好ましい。これにより、カルボキシル基とオキサゾリン基との反応が進行し易い。
<第1態様のトナー:トナー母粒子形成工程>
トナー母粒子形成工程では、公知の粉砕法又は公知の凝集法でトナー母粒子21を作製することが好ましい。
粉砕法の一例を説明する。まず、結着樹脂と、結着樹脂以外の成分(例えば、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び磁性粉の少なくとも1種)とを混合して、混合物を得る。混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融しながら混練し、混練物を得る。混練物を粉砕及び分級する。これにより、所望の粒子径を有するトナー母粒子21が得られる。
凝集法の一例を説明する。まず、結着樹脂の粒子と、結着樹脂以外の成分の粒子(例えば、着色剤の粒子、電荷制御剤の粒子、離型剤の粒子、及び磁性粉の粒子の少なくとも1種)とを含む水性媒体中で、これらの粒子を凝集させる。これにより、凝集粒子が形成される。凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナー母粒子21が得られる。
<第1態様のトナー:外添工程>
外添工程において、トナー母粒子21の表面に、樹脂粒子22を含む外添剤を付着させる。
<第1態様のトナー:結合工程>
結合工程において、樹脂粒子22とトナー母粒子21とを共有結合により互いに結合して、トナー粒子20を形成する。以下、図5を参照して、樹脂粒子22とトナー母粒子21とを共有結合により互いに結合する方法を説明する。図5は、第1態様において、樹脂粒子22とトナー母粒子21との反応の一例を模式的に示す。
樹脂粒子22のコート層24は、第1ビニル樹脂を含有する。トナー母粒子21は、表面にカルボキシル基を有する。第1ビニル樹脂は、単位(A)を含む。第1ビニル樹脂は、単位(C)を更に含むことが好ましい。結合工程において、第1ビニル樹脂が有する単位(A)と、トナー母粒子21の表面のカルボキシル基とを、酸触媒の存在下で反応させる。これにより、単位(B1)が形成されて、樹脂粒子22とトナー母粒子21との間に共有結合が形成される。共有結合は、第1アミド結合Y1である。第1アミド結合Y1は、形成された単位(B1)に含まれるアミド結合である。これにより、樹脂粒子22とトナー母粒子21とが、共有結合(具体的には、第1アミド結合Y1)により互いに結合して、トナー粒子20が形成される。
詳しくは、樹脂粒子22を含む外添剤が付着したトナー母粒子21を攪拌しながら、酸触媒の存在下、第1所定時間、反応容器の内圧を所定圧力に、反応容器内の温度を第1所定温度に保つ。第1所定温度に保つ間に、次に示す反応が進行する。樹脂粒子22のコート層24が含有する第1ビニル樹脂に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、一部のオキサゾリン基が、トナー母粒子21の表面のカルボキシル基と反応して開環する。これにより、第1アミド結合Y1が形成される。つまり、単位(B1)が形成される。一方、コート層24が含有する第1ビニル樹脂に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、カルボキシル基と反応しないオキサゾリン基は、開環することなく、単位(A)としてコート層24中に残る。第1アミド結合Y1の存在は、後述の実施例に記載の方法又はそれに準ずる方法で確認できる。以上、図2、図4、及び図5を参照して、第1態様のトナーの製造方法を説明した。
[第2態様のトナーの製造方法]
以下、図3を再び参照して、第2態様のトナーの製造方法を説明する。
<第2態様のトナー:樹脂粒子形成工程>
第2態様における樹脂粒子32の形成工程は、第1態様における樹脂コア23の形成工程と同じ方法で行うことができる。第2態様における樹脂粒子32が、第1態様における樹脂コア23に相当する。
<第2態様のトナー:トナー母粒子形成工程>
第2態様において、トナー母粒子31の形成工程は、例えば、トナーコア形成工程と、シェル層形成工程とを含む。
(トナーコア形成工程)
第2態様におけるトナーコア形成工程は、第1態様におけるトナー母粒子形成工程と同じ方法で行うことができる。第2態様におけるトナーコア33が、第1態様におけるトナー母粒子21に相当する。
(シェル層形成工程)
シェル層形成工程では、トナーコア33の表面にシェル層34を形成して、トナー母粒子31を得る。シェル層34を形成する方法としては、例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、及びコアセルベーション法が挙げられる。例えば、シェル34層を形成するための材料(以下「シェル材料」と記載することがある)134(図6参照)を溶かした水性媒体中に、トナーコア33を入れる。シェル材料134は、例えば、水溶性である。続いて、その水性媒体を加熱することにより、シェル材料134の重合反応を進行させる。これにより、トナーコア33の表面にシェル層34を形成する。
シェル層形成工程において、トナーコア33とシェル層34との間に共有結合が形成されてもよい。以下、図6を参照して、トナーコア33とシェル層34との間に共有結合を形成する方法を説明する。図6は、第2態様において、トナーコア33とシェル材料134との反応の一例を模式的に示す。
シェル材料134は、単位(A)を含む。トナーコア33は、表面にカルボキシル基を有する。シェル材料134とトナーコア33とを含む水性媒体を加熱している間に、次に示す反応が進行する。詳しくは、シェル材料134に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、一部のオキサゾリン基が、トナーコア33の表面のカルボキシル基と反応して開環する。これにより、第3アミド結合Y3が形成される。第3アミド結合Y3は、下記式(E)で表される単位に含まれるアミド結合である。一方、シェル材料134に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、カルボキシル基と反応しないオキサゾリン基は、開環することなく、単位(A)としてシェル層34中に残る。
式(E)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。R6は、トナーコア33を構成する原子を表す。第3アミド結合が形成される場合、トナーコア33は、シェル層34が含有する第1ビニル樹脂中の第1アミド結合及び第3アミド結合を介して、樹脂粒子32と結合している。シェル材料134を含む水性媒体としては、例えば、株式会社日本触媒製「エポクロスWS−300」又は「エポクロスWS−700」を使用できる。
なお、シェル層34の形成において、シェル材料134としてシェル層34を形成するための樹脂粒子(以下、シェル用樹脂粒子)を使用してもよい。より具体的には、シェル用樹脂粒子とトナーコア33とを含む液(例えば、水性媒体)中で、トナーコア33の表面にシェル用樹脂粒子を付着させる。続いて、液を加熱することにより、シェル用樹脂粒子の膜化を進行させて、トナーコア33の表面にシェル層34を形成する。液を高温に保っている間に、トナーコア33の表面においてシェル用樹脂粒子同士の結合(ひいては、シェル用樹脂粒子間の架橋反応)を進行させることができる。
<第2態様のトナー:外添工程>
外添工程において、トナー母粒子31の表面に、樹脂粒子32を含む外添剤を付着させる。
<第2態様のトナー:結合工程>
結合工程において、樹脂粒子32とトナー母粒子31とを共有結合により互いに結合して、トナー粒子30を形成する。以下、図7を参照して、樹脂粒子32とトナー母粒子31との間に共有結合を形成する方法を説明する。図7は、第2態様において、樹脂粒子32とトナー母粒子31との反応の一例を模式的に示す。
トナー母粒子31のシェル層34は、第1ビニル樹脂を含有する。樹脂粒子32は、表面にカルボキシル基を有する。第1ビニル樹脂は、単位(A)を含む。第1ビニル樹脂は、単位(E)を更に含むことが好ましい。結合工程において、第1ビニル樹脂が有する単位(A)とカルボキシル基とを、酸触媒の存在下で反応させる。これにより、単位(B2)が形成されて、樹脂粒子32とトナー母粒子31との間に共有結合が形成される。共有結合は、第1アミド結合Y1である。第1アミド結合Y1は、形成された単位(B2)に含まれるアミド結合である。これにより、樹脂粒子32とトナー母粒子31とが、共有結合(第1アミド結合Y1)により互いに結合する。
詳しくは、樹脂粒子32を含む外添剤が付着したトナー母粒子31を攪拌しながら、酸触媒の存在下、第1所定時間、反応容器の内圧を所定圧力に、反応容器内の温度を第1所定温度に保つ。第1所定温度に保つ間に、次に示す反応が進行する。トナー母粒子31のシェル層34が含有する第1ビニル樹脂に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、一部のオキサゾリン基が、樹脂粒子32の表面のカルボキシル基と反応して開環する。これにより、第1アミド結合Y1が形成される。つまり、単位(B2)が形成される。一方、シェル層34が含有する第1ビニル樹脂に含まれる多数個のオキサゾリン基のうち、カルボキシル基と反応しないオキサゾリン基は、開環することなく、単位(A)としてシェル層34中に残る。第1アミド結合Y1の存在は、後述の実施例に記載の方法又はそれに準ずる方法で確認できる。以上、図3、図6、及び図7を参照して、第2態様のトナーの製造方法を説明した。
実施例を用いて本発明を更に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。以下、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の製造方法、測定方法、評価方法、及び評価結果について、説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の個数平均を評価値とした。
[トナーの製造方法]
<樹脂粒子の形成工程>
以下の方法で、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の作製に使用するための樹脂粒子P−1〜P−5を作製した。樹脂粒子P−1〜P−5の各々の組成を、表1に示す。
表1中「WS−700」は、株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」を示す。表1中「Tween20」は、東京化成工業株式会社製「Tween20」を示す。表1中「量」は、添加量(単位:g)を示す。表1中の「−」は、添加しなかったことを示す。
(樹脂粒子P−1の作製)
まず、樹脂コアを形成した。アンカー型攪拌翼を備えた丸底フラスコ(容量:1L)に、135gのスチレンと、5gのアクリル酸と、7gのジビニルベンゼンと、10gの水溶性の重合開始剤(過硫酸カリウム)と、20gの分散安定剤(東京化成工業株式会社製「Tween20」、成分:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)と、375gのイオン交換水とを入れた。フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、昇温速度1℃/分でフラスコ内の温度を70℃まで上昇させた。フラスコ内の温度を70℃に保った状態で、フラスコ内容物を回転速度100rpmで8時間にわたって攪拌した。フラスコ内の温度を70℃に保っている間に、フラスコ内容物が反応(詳しくは、乳化重合)した。このようにして、樹脂コアの分散液を得た。遠心分離機(株式会社久保田製作所製「マイクロ冷却遠心機3740」)を用いて、重力加速度の10000倍(10000G)の条件で30分間、得られた分散液を遠心分離した。そして、樹脂コアAを含む固相を回収した。得られた樹脂コアAを含む固相は、乾燥させなかった。
次に、コート層を形成した。アンカー型攪拌翼を備えた別の丸底フラスコ(容量:1L)に、得られた樹脂コアA(詳しくは、乾燥していない状態の樹脂コアAを含む固相)の全量と、15gのオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」、モノマー質量比:メタクリル酸メチル/2−ビニル−2−オキサゾリン/アクリル酸ブチル=4/5/1、固形分濃度:25質量%、Tg:50℃)と、500mLのイオン交換水とを入れた。フラスコに希塩酸を更に加えて、フラスコ内容物のpHを4.0に調整した。フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、昇温速度1℃/分でフラスコ内の温度を70℃まで上昇させた。フラスコ内の温度を70℃に保った状態で、フラスコ内容物を回転速度100rpmで3時間にわたって攪拌した。フラスコ内の温度を70℃に保っている間に、樹脂コアAの表面のカルボキシル基と、オキサゾリン基含有高分子水溶液に含まれるオキサゾリン基とが反応した。その後、フラスコ内の温度を常温(25℃)まで冷却した。このようにして、樹脂粒子を含む分散液を得た。
得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。得られた固形分をイオン交換水に再度分散させた。得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。このような固液分離処理を5回行った。得られた固形分を乾燥させて、樹脂粒子を含む塊を得た。得られた塊を、超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルIDS−2」)を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で、粉砕した。超音速ジェット粉砕機の衝突板は、セラミック製の平板であった。このようにして、樹脂粒子P−1を得た。得られた樹脂粒子P−1は、多数個の樹脂粒子P−1から構成される粉体であった。
(樹脂粒子P−2の作製)
135gのスチレンと5gのアクリル酸と7gのジビニルベンゼンとの代わりに、128gのメタクリル酸メチルと、6gのメタクリル酸と、13gのエチレングリコールジメタクリレートとを添加した。過硫酸カリウムの添加量を、10gから8gに変更した。Tween20の添加量を、20gから25gに変更した。これらを変更した以外は、樹脂コアAの作製と同じ方法で、樹脂コアBを得た。樹脂コアAの代わりに樹脂コアBを用いたこと以外は、樹脂粒子P−1の作製と同じ方法で、樹脂粒子P−2を得た。
(樹脂粒子P−3の作製)
135gのスチレンの代わりに、135gのアクリロニトリルを添加した。これを変更した以外は、樹脂コアAの作製と同じ方法で、樹脂コアCを得た。樹脂コアAの代わりに樹脂コアCを用いたこと以外は、樹脂粒子P−1の作製と同じ方法で、樹脂粒子P−3を得た。
(樹脂粒子P−4の作製)
135gのスチレンと5gのアクリル酸と7gのジビニルベンゼンとの代わりに、128gの2,2,2−トリフルオロアクリレートと、6gのメタクリル酸と、13gのエチレングリコールジメタクリレートとを添加した。過硫酸カリウムの添加量を、10gから5gに変更した。これらを変更した以外は、樹脂コアAの作製と同じ方法で、樹脂コアDを得た。樹脂コアAの代わりに樹脂コアDを用いたこと以外は、樹脂粒子P−1の作製と同じ方法で、樹脂粒子P−4を得た。
(樹脂粒子P−5の作製)
樹脂粒子P−1の作製で得られた樹脂コアAに対して、コート層を形成しなかった。樹脂粒子P−1の作製で得られた樹脂コアAを含む固相を乾燥させて、樹脂コアAを含む塊を得た。得られた塊を、超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルIDS−2」)を用いて、粉砕圧0.6MPaの条件で、粉砕した。超音速ジェット粉砕機の衝突板は、セラミック製の平板であった。このようにして、樹脂コアAを得た。得られた樹脂コアAを、樹脂粒子P−5として使用した。樹脂粒子P−5は、多数個の樹脂粒子P−5(樹脂コアA)から構成される粉体であった。
<トナー母粒子形成工程>
(トナー母粒子M−1の作製)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、10質量部の結晶性ポリエステル樹脂と、90質量部の非結晶性ポリエステル樹脂と、3質量部のエステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−8」)と、1質量部の正帯電電荷制御剤(4級アンモニウム塩、オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)と、6質量部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)とを混合し、混合物を得た。二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度6kg/時、軸回転速度160rpm、且つ設定温度(シリンダー温度)120℃の条件で、混合物を溶融しながら混練し、混練物を得た。混練物を冷却した。粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、冷却された混練物を粗粉砕し、粗粉砕物を得た。粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)を用いて、粗粉砕物を微粉砕して、微粉砕物を得た。微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて、分級した。これにより、トナー母粒子M−1を得た。トナー母粒子M−1のD50は、7μmであった。
(非結晶性ポリエステル樹脂の合成)
トナー母粒子M−1の作製に用いた非結晶性ポリエステル樹脂は、次の方法で合成した。詳しくは、温度計、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、1600gのビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、550gのビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、600gのn−ドデセニル無水コハク酸と、400gのテレフタル酸と、4gの酸化ジブチル錫とを入れた。続けて、温度220℃でフラスコ内容物を9時間反応させた。続けて、圧力8kPaに減圧した状態で、温度280℃でフラスコ内容物を4時間反応させて、非結晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非結晶性ポリエステル樹脂のTmは126.9℃であり、Tgは56.8℃であり、酸価は10.9mgKOH/gであり、水酸基価は32mgKOH/gであり、Mwは102394であり、Mnは4602であった。
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
トナー母粒子M−1の作製に用いた結晶性ポリエステル樹脂は、次の方法で合成した。詳しくは、温度計、脱水管、窒素導入管、及び攪拌装置を備えた容量5Lの4つ口フラスコ内に、990gの1,4−ブタンジオールと、242gの1,6−ヘキサンジオールと、1480gのフマル酸と、2.5gの1,4−ベンゼンジオールとを入れた。続けて、温度170℃でフラスコ内容物を5時間反応させた。続けて、温度210℃でフラスコ内容物を1.5時間反応させた。続けて、圧力8kPaに減圧した状態で、温度210℃でフラスコ内容物を1時間反応させて、結晶性ポリエステル樹脂を得た。結晶性ポリエステル樹脂のTmは88.8℃であり、Mpは82℃であり、結晶性指数(Tm/Mp)は1.08であり、酸価は3.1mgKOH/gであり、水酸基価は19mgKOH/gであり、Mwは27500であり、Mnは3620であった。
(トナー母粒子M−2の作製)
1リットルの丸底フラスコに、300gのトナー母粒子M−1と、5gのオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS−700」、モノマー質量比:メタクリル酸メチル/2−ビニル−2−オキサゾリン/アクリル酸ブチル=4/5/1、固形分濃度:25質量%、Tg:50℃)と、500mLのイオン交換水とを入れた。フラスコに希塩酸を更に加えて、フラスコ内容物のpHを4.0に調整した。フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、昇温速度1℃/分でフラスコ内の温度を70℃まで上昇させた。フラスコ内の温度を70℃に保った状態で、回転速度100rpmで8時間にわたって、フラスコ内容物を攪拌した。フラスコ内の温度を70℃に保っている間に、トナー母粒子M−1(トナーコアに相当)の表面に、オキサゾリン基含有高分子を含有するシェル層が形成された。フラスコ内容物を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過し、固形分を得た。固形分をイオン交換水に分散させた。得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、再度、吸引濾過した。このような固液分離処理を5回行った。得られた固形分を乾燥させて、トナー母粒子M−2を得た。トナー母粒子M−2は、トナーコア(トナー母粒子M−1に相当)の表面を覆うシェル層を備え、シェル層がオキサゾリン基を含んでいた。
<外添工程及び結合工程>
樹脂粒子P−1〜P−5の何れか、及びトナー母粒子M−1〜M−2の何れかを用いて、外添工程及び結合工程を行った。これにより、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1を作製した。トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の構成を、後述する表2に示す。
(トナーTA−1)
外添工程は、次のとおりであった。FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)に、100.0質量部のトナー母粒子M−1と、1.0質量部の樹脂粒子P−1と、1.2質量部の疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)とを入れた。回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃、且つ混合時間2分間の条件で、トナー母粒子M−1と樹脂粒子P−1と疎水性シリカ粒子とを混合した。このようにして、トナー母粒子M−1の表面に、樹脂粒子P−1及び疎水性シリカ粒子を付着させた。その結果、樹脂粒子P−1及び疎水性シリカ粒子が付着したトナー母粒子M−1(以下、樹脂粒子付着トナー母粒子と記載する)を得た。
結合工程は、次のとおりであった。以下、図8を参照して、結合工程で用いる反応装置100について説明する。反応装置100は、反応容器101と、攪拌羽根102と、触媒容器104と、真空計105と、真空ポンプ106と、第1連結管109と、第2連結管107と、第3連結管108と、第1コック111と、第2コック110とを備えている。反応容器101は、樹脂粒子付着トナー母粒子Tを収容する。攪拌羽根102は、反応容器101内に配置される。攪拌羽根102は、反応容器101内の樹脂粒子付着トナー母粒子Tを攪拌する。触媒容器104は、酸触媒Xを収容する。反応容器101は、第3連結管108を介して、真空計105と接続している。真空計105は、第1連結管109を介して、真空ポンプ106と接続している。真空ポンプ106は、第3連結管108及び第1連結管109を介して、反応容器101内を減圧する。真空計105は、反応容器101の内圧を測定する。反応容器101は、第2連結管107を介して、触媒容器104と接続している。第1コック111は、第1連結管109を開閉する。第2コック110は、第2連結管107を開閉する。
引き続き図8を参照して、結合工程について説明する。反応装置100の第1コック111、及び第2コック110を、各々、閉めた。次いで、反応容器101に、外添工程で得られた300gの樹脂粒子付着トナー母粒子Tを入れた。触媒容器104に、50mgの酸触媒X(詳しくは、濃塩酸)を入れた。反応容器101、及び触媒容器104を、各々、密閉した。反応容器101内の攪拌羽根102を、回転速度60rpmで回転させた。真空ポンプ106を駆動させた。第2コック110を閉めたまま、第1コック111を開いた。これにより、反応容器101内を減圧した。真空計105が示す反応容器101の内圧が0.3Paに到達した時点で、第1コック111を閉めて、第2コック110を開いた。これにより、触媒容器104内の酸触媒X(詳しくは、濃塩酸)が気化して、気体状の酸触媒X(詳しくは、気体状の塩化水素)が発生した。気体状の酸触媒Xが、第2連結管107を通って、反応容器101内に流入した。真空計105が示す反応容器101の内圧が変化しなくなった後、第2コック110を閉めて、第1コック111を開いた。これにより、反応容器101の内圧を0.3Paに調整した。反応容器101の内圧が0.3Paである状態で、反応容器101を5分間保った。5分間保つ間に、樹脂粒子付着トナー母粒子Tに含まれる樹脂粒子とトナー母粒子とが、共有結合により互いに結合した。詳しくは、気体状の塩化水素が酸触媒として働きながら、樹脂粒子のコート層に含有されるオキサゾリン基と、トナー母粒子の表面のカルボキシル基とが、反応(詳しくは、脱水反応)して、第1アミド結合が形成した。これにより、トナーTA−1が得られた。トナーTA−1に含まれるトナー粒子は、樹脂粒子P−1と、トナー母粒子M−1とが、第1アミド結合により互いに結合していた。以上、図8を参照して、結合工程について説明した。
(トナーTA−2)
外添工程において、樹脂粒子P−1を、樹脂粒子P−2に変更した。これを変更した以外は、トナーTA−1の外添工程及び結合工程と同じ方法で、トナーTA−2を得た。
(トナーTA−3)
外添工程において、樹脂粒子P−1を、樹脂粒子P−3に変更した。これを変更した以外は、トナーTA−1の外添工程及び結合工程と同じ方法で、トナーTA−3を得た。
(トナーTA−4)
外添工程において、樹脂粒子P−1を、樹脂粒子P−4に変更した。これを変更した以外は、トナーTA−1の外添工程及び結合工程と同じ方法で、トナーTA−4を得た。
(トナーTA−5)
外添工程において、トナー母粒子M−1をトナー母粒子M−2に変更し、樹脂粒子P−1を樹脂粒子P−5に変更した。これらを変更した以外は、トナーTA−1の外添工程及び結合工程と同じ方法で、トナーTA−5を得た。なお、トナーTA−5の外添工程においては、気体状の塩化水素が酸触媒として働きながら、トナー母粒子M−2のシェル層に含有されるオキサゾリン基と、樹脂粒子P−5の表面のカルボキシル基とが、反応(詳しくは、脱水反応)して、第1アミド結合が形成された。
(トナーTB−1)
トナーTA−1の外添工程と同じ方法で、トナーTB−1の外添工程を行った。次いで、トナーTA−1の作製では結合工程を行ったが、トナーTB−1の作製では結合工程を行わなかった。外添工程で得られた、樹脂粒子P−1と疎水性シリカ粒子とが付着したトナー母粒子M−1を、トナーTB−1として用いた。トナーTB−1に含まれるトナー粒子においては、樹脂粒子P−1が、トナー母粒子M−1に、物理的な力で付着しているだけであった。トナーTB−1に含まれるトナー粒子においては、樹脂粒子P−1と、トナー母粒子M−1とが、第1アミド結合により互いに結合していなかった。
[測定方法]
<樹脂粒子の個数平均一次粒子径の測定>
試料(樹脂粒子)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散し、40℃の雰囲気にて2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を四酸化オスミウムにて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、厚さ200nmの薄片試料を得た。
電界放出形透過電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製「JEM−2100F」)を用いて加速電圧200kV、及び倍率1000000倍の条件で薄片試料の断面を撮影し、TEM写真を得た。100個以上の樹脂粒子のTEM写真を撮影した。得られたTEM写真の中から、100個の樹脂粒子のTEM写真を無作為に選択した。選択されたTEM写真について、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、100個の樹脂粒子の円相当径を測定した。測定された100個の樹脂粒子の円相当径の和を、測定個数(100個)で除することにより、樹脂粒子の円相当径の個数平均値を算出した。算出された個数平均値を、樹脂粒子の個数平均一次粒子径とした。算出結果を表2に示す。
<樹脂粒子のコート層の厚さの測定>
上記<樹脂粒子の個数平均一次粒子径の測定>と同じ方法で、試料(樹脂粒子)の薄片試料を得た。そして、電界放出形透過電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製「JEM−2100F」)を用いて加速電圧200kV、及び倍率1000000倍の条件で上記薄片試料の断面を撮影した。続けて、エネルギー分解能1.0eV、ビーム径1.0nmの電子エネルギー損失分光法(EELS)検出器(ガタン社製「GIF TRIDIEM(登録商標)」)と、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF 5.5.0」)とを用いてTEM写真を解析し、窒素元素の分布画像を得た。窒素元素は、コート層に含まれる特徴的な元素であった。100個以上の樹脂粒子について、窒素元素の分布画像を得た。得られた窒素元素の分布画像の中から、100個の樹脂粒子の窒素元素の分布画像を任意に選択した。任意に選択された窒素元素の分布画像の各々について、1個の樹脂粒子が備えるコート層の厚さを求めた。測定された100個の樹脂粒子のコート層の厚さの和を、測定個数(100個)で除することにより、樹脂粒子のコート層の厚さの個数平均値を算出した。算出された個数平均値を、樹脂粒子のコート層の厚さとした。算出結果を表2に示す。
<トナー母粒子のシェル層の厚さの測定>
試料を樹脂粒子からトナー母粒子に変更したことと以外は、樹脂粒子のコート層の厚さの測定と同じ方法で、トナー母粒子のシェル層の厚さを測定した。測定結果から、トナー母粒子のシェル層の厚さの個数平均値を算出した。算出された個数平均値を、トナー母粒子のシェル層の厚さとした。算出結果を表2に示す。
<樹脂粒子の未開環オキサゾリン基の量の測定>
樹脂粒子に対して、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)を行った。測定対象の樹脂粒子として、樹脂粒子形成工程後で外添工程前の樹脂粒子P−1〜P−5の各々を用いた。GC/MS法では、測定装置として、ガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製「GCMS−QP2010 Ultra」)及びマルチショット・パイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製「FRONTIER LAB Multi−functional Pyrolyzer(登録商標)PY−3030D」)を用いた。カラムとして、GCカラム(アジレント・テクノロジー社製「Agilent(登録商標)J&W ウルトライナートキャピラリGCカラム DB−5ms」、相:シロキサンポリマーにアリレンを入れてポリマーの主鎖を強化したアリレン相、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)を用いた。GC/MS法による測定条件は、以下のとおりであった。
(ガスクロマトグラフ)
・キャリアガス:ヘリウム(He)ガス
・キャリア流量:1mL/分
・気化室温度:210℃
・熱分解温度:加熱炉「600℃」、インターフェイス部「320℃」
・昇温条件:40℃で3分間保持した後、40℃から速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で15分間保持した。
(質量分析)
・イオン化法:EI(Electron Impact)法
・イオン源温度:200℃
・インターフェイス部の温度:320℃
・検出モード:スキャン(測定範囲:45m/z〜500m/z)
上記の条件で測定されたマススペクトルを解析して、未開環オキサゾリン基に由来するピーク面積を求めた。未開環オキサゾリン基に由来するピーク面積から、未開環オキサゾリン基の量(単位:mmоl)を求めた。なお、定量には、標準物質として、オキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」)を絶乾状態まで乾燥させたものを用いた。なお、固体状態のエポクロスWS−700の未開環オキサゾリン基の量が4.5mmоl/gであることは、既知である。測定に使用した樹脂粒子の質量(単位:g)と、定量された未開環オキサゾリン基の量(単位:mmоl)とから、樹脂粒子1gに含まれる未開環オキサゾリン基の量(単位:mmоl/g)を求めた。算出結果を表2に示す。
<トナー母粒子の未開環オキサゾリン基の量の測定>
測定対象を樹脂粒子からトナー母粒子に変更した以外は、上記<樹脂粒子の未開環オキサゾリン基の量の測定>と同じ方法で、トナー母粒子の未開環オキサゾリン基の量を測定した。測定対象のトナー母粒子として、トナー母粒子形成工程後で外添工程前のトナー母粒子M−1及びM−2の各々を用いた。測定に使用したトナー母粒子の質量(単位:g)と、定量された未開環オキサゾリン基の量(単位:mmоl)とから、トナー母粒子1gに含まれる未開環オキサゾリン基の量(単位:mmоl/g)を求めた。算出結果を表2に示す。
<アミド結合の存在の有無を確認する方法(第1方法)>
フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)を用いて減衰全反射(ATR)法によりトナーを測定し、IRスペクトルを得た。測定対象のトナーとして、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の各々を用いた。FT−IRとして、アジレント・テクノロジー株式会社製「FTS−60A/896」を用いた。FT−IRの測定条件は、以下のとおりであった。
(FT−IR測定条件)
アタッチメント:1回反射ATRアタッチメント(Specac社製「Silver Gate」)
光学結晶:Ge
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:128回
得られたIRスペクトルから、1680cm-1のピークの吸光度、及び1630cm-1のピークの吸光度を求めた。1680cm-1のピークの吸光度は、未開環オキサゾリン基に由来するピークの吸光度である。1630cm-1のピークの吸光度は、カルボキシル基と未開環オキサゾリン基とが反応することにより形成されるアミド結合に由来するピークの吸光度である。
トナーTA−1〜TA−5及びTB−1については、得られたIRスペクトルにおいて、1680cm-1のピークが確認されれば、樹脂粒子のコート層に単位(A)が存在すると推定した。
トナーTA−1〜TA−4については、得られたIRスペクトルにおいて、1630cm-1のピークが確認されれば、第1アミド結合及び第2アミド結合が存在すると推定した。トナーTA−1〜TA−4については、得られたIRスペクトルにおいて、1630cm-1のピークが確認されれば、樹脂粒子のコート層に、単位(B1)及び単位(C)が存在すると推定した。
トナーTA−5については、得られたIRスペクトルにおいて、1630cm-1のピークが確認されれば、第1アミド結合が存在すると推定した。更に、トナーTA−5については、得られたIRスペクトルにおいて、1630cm-1のピークが確認されれば、トナー母粒子のシェル層に、単位(B2)が存在すると推定した。
トナーTB−1については、得られたIRスペクトルにおいて、1630cm-1のピークが確認されれば、第2アミド結合が存在すると推定した。更に、トナーTB−1については、得られたIRスペクトルにおいて、1630cm-1のピークが確認されれば、樹脂粒子のコート層に、単位(C)が存在すると推定した。なお、トナーTB−1の作製において、結合工程を実施しなかった。このため、1630cm-1のピークは、第1アミド結合ではなく、第2アミド結合に由来するピークであると推定した。同じ理由から、1630cm-1のピークは、単位(B1)ではなく、単位(C)に由来するピークであると推定した。
単位(A)、単位(B1)、単位(B2)、及び単位(C)の存在の有無の確認結果を、表2に示す。
<アミド結合の存在の有無を確認する方法(第2方法)>
ノニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」、成分:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の水溶液(濃度:2質量%)を水で10倍に希釈して、界面活性剤水溶液を調製した。得られた界面活性剤水溶液500mL中に、10gのトナーを分散させて、トナー分散液を得た。測定対象のトナーとして、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の各々を用いた。
得られたトナー分散液に、超音波分散機(超音波工業株式会社製「ウルトラソニックミニウェルダーP128」、出力:100W、発振周波数:28kHz)を用いて、5分間、超音波処理を施した。これにより、超音波処理後の分散液を得た。遠心分離機を用いて、超音波処理後の分散液を、遠心分離した。遠心分離後の液に含まれる固相を、目視により確認した。固相が2層(詳しくは、トナー母粒子の層と、シリカ粒子の層)に分離していれば、樹脂粒子とトナー母粒子との間に共有結合が存在していると推定した。固相が3層(詳しくは、トナー母粒子の層と、シリカ粒子の層と、樹脂粒子の層)に分離していれば、樹脂粒子とトナー母粒子との間に共有結合が存在していないと推定した。
トナーTA−1〜TA−4については、固相が2層に分離した。このことから、樹脂粒子とトナー母粒子との間に共有結合が存在していると推定した。第2方法の確認結果と、第1方法の確認結果とから、トナーTA−1〜TA−4には第1アミド結合及び第2アミド結合が存在し、樹脂粒子のコート層には単位(B1)及び単位(C)が存在することが示された。
トナーTA−5については、固相が2層に分離した。このことから、樹脂粒子とトナー母粒子との間に共有結合が存在していると推定した。第2方法の確認結果と、第1方法の確認結果とから、トナーTA−5には第1アミド結合が存在し、トナー母粒子のシェル層には単位(B2)が存在することが示された。
トナーTB−1については、固相が3層に分離した。このことから、樹脂粒子とトナー母粒子との間に共有結合が存在していないと推定した。第2方法の確認結果と、第1方法の確認結果とから、トナーTB−1には第1アミド結合が存在せず第2アミド結合が存在し、樹脂粒子のコート層には単位(B1)が存在せず単位(C)が存在することが示された。
[評価方法]
<トナー帯電量とトナー飛散量との評価>
以下の方法で、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の各々について、トナー帯電量とトナー飛散量とを評価した。
(評価対象の作製)
ボールミルを用いて、100質量部のキャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa8002i」用キャリア)と10質量部のトナー(より具体的には、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の各々)とを、30分間にわたって、混合した。このようにして、評価対象を得た。
(評価機の準備)
複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa8002i」)を準備した。評価対象を複合機のブラック用現像装置に入れ、補給用トナーを複合機のブラック用トナーコンテナに入れた。補給用トナーとしては、評価対象に含まれるトナーと同一のトナーを用いた。つまり、補給用トナーは、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1の何れかであった。このようにして、評価機を準備した。
(トナー帯電量とトナー飛散量との測定)
温度28℃且つ湿度80%RHの環境(高温高湿環境)下で、評価機を用いて、画像(印字率:5%)を普通紙(A4サイズ)に30万枚連続で印刷した。その後、温度28℃且つ湿度80%RHの環境下で、評価機を用いて、評価画像を普通紙(A4サイズ)に印刷した。評価画像は、ソリッド画像部と、白紙部(印字の無い領域)とを含んでいた。その後、以下に示す方法でトナー帯電量を測定した。また、以下に示す方法でトナー飛散量を測定した。
トナー帯電量の測定方法を示す。まず、評価機の現像装置から評価対象を取り出した。次に、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−1」)の測定セルに0.10gの評価対象(より具体的には、2成分現像剤)を入れ、評価対象のうちトナーのみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、下記式に基づいて、トナー帯電量(単位:μC/g)を算出した。
トナー帯電量(単位:μC/g)=吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)
トナー飛散量の測定方法を示す。詳しくは、電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製「GF−3000」)を用いて、評価機内で回収されたトナーの質量を測定した。より具体的には、評価機は、吸引ファンと回収容器とを更に備えていた。吸引ファンは、現像装置が有する現像ローラーの周囲において、現像ローラーに対する吸着状態に優れないトナー(例えば、飛散トナー)を吸引する装置であった。回収容器は、吸引ファンに接続され、吸引ファンが吸引したトナーを回収するための容器であった。そして、電子天秤を用いて、回収容器に回収されたトナーの質量を測定した。
トナー帯電量の評価基準を以下に示す。
良好:トナー帯電量が18.0μC/g以上であった。
不良:トナー帯電量が18.0μC/g未満であった。
トナー飛散量の評価基準を以下に示す。
良好:トナー飛散量が5g以下であった。
不良:トナー飛散量が5g超であった。
[評価結果]
トナー帯電量、及びトナー飛散量の評価結果を表2に示す。表2中、「粒子径」には、樹脂粒子の個数平均一次粒子径を示す。表2中、「オキサゾリン基量」には、未開環オキサゾリン基の量を示す。表2中、「コート層」の「単位(A)」欄の「あり」及び「なし」は、各々、コート層に単位(A)の存在が確認されたこと、及び確認されなかったことを示す。表2中、「コート層」の「単位(B1)」欄の「あり」及び「なし」は、各々、コート層に単位(B1)の存在が確認されたこと、及び確認されなかったことを示す。表2中、「コート層」の「単位(C)」欄の「あり」及び「なし」は、各々、コート層に単位(C)の存在が確認されたこと、及び確認されなかったことを示す。表2中、「シェル層」の「単位(A)」欄の「あり」及び「なし」は、各々、シェル層に単位(A)の存在が確認されたこと、及び確認されなかったことを示す。表2中、「シェル層」の「単位(B2)」欄の「あり」及び「なし」は、各々、シェル層に単位(B2)の存在が確認されたこと、及び確認されなかったことを示す。表2中、「樹脂粒子とトナー母粒子との間の共有結合」欄の「あり」は、樹脂粒子とトナー母粒子との間の共有結合(詳しくは、単位(B1)又は(B2))が確認されたことを示す。表2中、「樹脂粒子とトナー母粒子との間の共有結合」欄の「なし」は、樹脂粒子とトナー母粒子との間の共有結合(詳しくは、単位(B1)又は(B2))が確認されなかったことを示す。
表2に示すように、トナーTA−1〜TA−5の各々において、トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に備えられる外添剤とを備えていた。外添剤は、樹脂粒子を含んでいた。樹脂粒子とトナー母粒子とは、共有結合により互いに結合されていた。そのため、表2に示すように、トナーTA−1〜TA−5の各々を用いて高温高湿環境下で画像を形成すると、30万枚印刷後においても、トナー帯電量を所望の範囲内の値に維持でき、トナー飛散量を所望値以下に抑えることができた。
一方、表2に示すように、トナーTB−1においては、樹脂粒子とトナー母粒子とが、共有結合により互いに結合されていなかった。そのため、表2に示すように、トナーTB−1を用いて高温高湿環境下で画像を形成すると、30万枚印刷後には、トナー帯電量が所望の範囲を下回り、トナー飛散量が所望値を超えた。
以上のことから、トナーTA−1〜TA−5は、トナーTB−1と比較して、トナー帯電量を所望の範囲内の値に維持でき、トナー飛散量を所望値以下に抑えられることが示された。このことから、本発明に係るトナーは、帯電安定性に優れることが示された。