プレス装置には、基板やICチップ等の電子部品(パンプ形成体)に形成された粒子部材を上プレスヘッドの下端平坦面で押圧して平坦化する装置(コイニング装置)がある。このような装置として、特許文献1や特許文献2に示すように、下治具(下プレスヘッド)と上治具(上プレスヘッド)とを用いて、基板の厚さ方向にバンプの頂部に押圧力を加えるものがある。
このようなプレス装置では、図10に示すように、下プレスヘッド1上に基板2を載置して、上プレスヘッド3を下降させて、基板2上のバンプの頂部を押圧することになる。このため、下プレスヘッド1の上面と、上プレスヘッド3の下面との平行度が重要である。
すなわち、上プレスヘッド3が下降してバンプの頂部を加圧する際に、上プレスヘッド3の下面に対して下プレスヘッド1の上面が傾斜している状態であれば、正確なコイニングを行うことができない。このため、従来においては、下プレスヘッド1の平行度出しを行う必要があった。この場合の調整は、作業者が手動調整を行うのが一般的であった。
従来には、圧着ヘッドにより電子部品を基板に押圧してボンディングする電子部品のボンディング装置において、チルト機構を備えた圧着ヘッドを用い平行度のばらつきを吸収する方法が種々提案されている(特許文献3)。この特許文献3に記載のチルト機構としては、円弧面状の回動面を介して当接する固定ブロックと可動ブロックとで圧着ヘッドを構成するものである。
ところで、基板の上面の多数の凹窪部(ディンプル)に、それぞれチップを配設して、各チップを各凹窪部(ディンプル)に接着するものがある。このような場合、図11に示すように、上プレスヘッド3に、基板の凹窪部に対応するピン部材5を備えた上治具6を取り付けることになる。
すなわち、プレス加工する際に上治具6の各ピン部材5が基板の凹窪部にそれぞれ嵌入して、凹窪部のチップを接着することになる。このため、プレス加工する際には、上プレスヘッド3を下降させた際に、各ピン部材5が基板の凹窪部にそれぞれ嵌入する必要がある。しかしながら、下プレスヘッド1が、図12の2点鎖線で示すように、実線で示す正規位置よりその軸心廻りにずれている場合がある。このような場合、各ピン部材5を基板の凹窪部にそれぞれ嵌入させることができない。なお、図12では、角度αだけ正規位置よりずれている場合を示している。
しかしながら、特許文献3等に記載のようなチルト機構を用いて、下プレスヘッド1の平行度出しを行っても、この下プレスヘッド1の軸心廻りのθ方向に位置ずれを調整することはできなかった。
従来には、プレス装置ではないが、位置決めが可能な倣い装置が提案されている(特許文献4)。この倣い装置は、図13と図14に示すように、基台(固定部材)7と、球面ベース(可動部材)8と、一対のサイドプレート(支持部材)9と、回り止めリング(回り止め部材)10と、押さえ部材11等を備えたものである。
そして、球面ベース8及びサイドプレート9にそれぞれ回動規制ピン12、13が設けられ、球面ベース8の回動規制ピン12が、回り止めリング10のピン挿入孔14に係合され、サイドプレート9の回動規制ピン13が、回り止めリング10のピン挿入孔14に係合される。回動規制ピン12と回動規制ピン13は、周方向に沿って90°ピッチで交互に配設される。また、回動規制ピン12、13は曲面を有するように形成されている。
このように、球面ベース8の回動規制ピン12が、回り止めリング10のピン挿入孔14に係合され、サイドプレート9の回動規制ピン13が、回り止めリング10のピン挿入孔14に係合されることによって、球面ベースのZ軸の軸線回りの回動を規制している。また、回動規制ピン12、13は曲面を有するように形成されているので、球面ベースのX軸周り及びY軸周りの揺動を確保している。
前記図13及び図14に示す倣い装置では、構成要素が多く、生産性に劣る。しかも、回動規制ピン12、13が、それぞれ対応するピン挿入孔14,14に係合されるものであり、かつ、回動規制ピン12、13は曲面を有するように形成されている。従って、球面ベースのX軸周り及びY軸周りの揺動を確保しているが、回動規制ピン12、13とピン挿入孔14,14との間には、多少のがたつきが生じる。
このため、上面の多数の凹窪部(ディンプル)を有する基板に対して、プレス加工を施すプレス装置に、前記特許文献4に記載の倣い装置を搭載するようにして、下プレスヘッド1の平行度出しを行っても、この下プレスヘッド1の軸心廻りのθ方向の位置ずれを高精度に調整することはできない。
本発明は、上記課題に鑑みて、下プレスヘッドの平行度出しと、下プレスヘッドの軸心廻りのθ方向の位置ずれの調整が可能であって、高精度のプレス加工が可能なプレス装置およびプレス装置調整方法を提供する。
本発明のプレス装置は、上プレスヘッドと、平行出しを行う倣い手段を有する下プレスヘッドとを備え、下プレスヘッドにて受けられたワークに対してプレス加工を行うプレス装置であって、前記下プレスヘッドの軸心廻りであるθ方向の位置合わせを行う位置合わせ手段を備え、この位置合わせ手段を、180°反対方向に設けられる下プレスヘッド側の平行な鉛直平面の第1・第2基準面と、この第1・第2基準面を外方から挟む一対の挟持部材とで構成し、前記倣い手段による下プレスヘッドの平行出しに加え前記位置合わせ手段による下プレスヘッドのθ方向の位置合わせを可能としたものである。
本発明のプレス装置によれば、倣い手段による下プレスヘッドの平行出しと、位置合わせ手段による下プレスヘッドのθ方向の位置合わせとを行うことができる。しかも、位置合わせ手段は、プレスヘッド側の平行な鉛直平面の第1・第2基準面と、第1・第2基準面を外方から挟む一対の挟持部材とで構成され、シンプルな構造で構成することができる。すなわち、一対の挟持部材で平行な鉛直平面の第1・第2基準面を挟持するものであり、1・第2基準面を、挟持部材の押圧方向と直交する鉛直面に合わせることができる。これによって、下プレスヘッドはその軸心廻りに回動していない正規位置に合わせることができる。
一対の挟持部材は、第1・第2基準面に対してそれぞれ接触する押さえ部材を備えたものとすることができる。このような押さえ部材を備えたものでは、第1・第2基準面の位置合わせを安定して行うことができる。
各押さえ部材は、挟持方向と直交する方向に所定間隔だけ離間した同一水平面内の一対の押圧突起部を有するものが好ましい。このような押圧突起部を有することによって、各基準面に対してそれぞれ押圧突起部を2箇所で当接させることができ、より高精度の第1・第2基準面の位置合わせを行うことができる。
各押さえ部材は、一対の押圧突起部との間に位置決め用の突起部を有し、第1・第2基準面には、前記突起部が嵌入する位置決め用の凹部を有するものであってもよい。このように、第1・第2基準面に、突起部が嵌入する位置決め用の凹部を設けることによって、一対の挟持部材による位置調整(位置合わせ)を正確に行うことができる。
各押さえ部材には、押圧突起部を各基準面に対して接近・離間させるシリンダ機構が付設されているものであってもよい。このように、シリンダ機構を設けたものでは、位置調整(位置合わせ)に必要なときのみ、押さえ部材による位置合わせを行うことができ、他の状態では、押さえ部材を各基準面から離間させることができる。これによって、挟持部材等は、調整後(平行出し及び位置合わせを行った後)におけるこのプレス装置を用いたワークへのプレス加工の妨げにならない。
倣い手段は、上方に開口する凹球面と、この凹球面に上方から嵌合する凸球面と、この凸球面と凹球面との間へのエアの供給及び凸球面と凹球面との間からのエアの吸引を行うエア供給・吸引機構とを備えたもので構成できる。
このように、倣い手段を構成することによって、下部材の凹球面に上部材の凸球面を嵌合させた状態で、凹球面と凸球面との間にエアを供給する。すなわち、凹球面と凸球面との間に僅かな隙間を設け、上部材を下部材に対してチルト許容状態とする。そして、このチルト許容状態で、上プレスヘッドを下降させて、上プレスヘッドの下端平坦面にて上部材の上面平坦面を押圧して上プレスヘッドと下プレスヘッドとの平行出しを行う。すなわち、上部材がチルト許容状態であるので、上プレスヘッドの下端平坦面と上部材の上面平坦面が密着する平行出しが行われる。
この状態で、凹球面と凸球面との間を負圧状態とするとともに、固定機構による上部材の固定を行って、上プレスヘッドを上昇させる。これによって、このプレス装置による平行出し作業が可能となる。
下プレスヘッドの平行出しと、下プレスヘッドのθ方向の位置合わせを行うことが可能であるので、ワークとして、チップが配設される多数の凹窪部を上面に有する基板であっても対応できる。
本発明のプレス装置調整方法は、下プレスヘッドにて受けられたワークに対してプレス加工を行うプレス装置における下プレスヘッドの調整方法であって、下プレスヘッドの平行調整を行う平行出し工程と、下プレスヘッドの軸心廻りであるθ方向の位置合わせを行う位置合わせ工程とを備え、前記位置合わせ工程は、180°反対方向に設けられる下プレスヘッド側の平行な鉛直平面の第1・第2基準面を外方から挟む一対の挟持部材とで行うものである。
本発明のプレス装置調整方法によれば、下プレスヘッドの平行調整を行う平行出しと、下プレスヘッドの軸心廻りであるθ方向の位置合わせを行うことができる。この場合、一対の挟持部材で平行な鉛直平面の第1・第2基準面を挟持するものであり、第1・第2基準面を、挟持部材の押圧方向と直交する鉛直面に合わせることができる。これによって、下プレスヘッドはその軸心廻りに回動していない正規位置に合わせることができる。
前記平行出し工程は、上方に開口する凹球面とこの凹球面に上方から嵌合する凸球面との間にエアを供給して、凹球面を有する上部材を浮かせて、凹球面と凸球面との間に隙間を設け、この状態で、上部材の平行調整を行うことができる。
位置合わせ工程は、凹球面を有する上部材を浮かせて、上部材の平行調整を行いつつ、一対の挟持部材にて、下プレスヘッド側の鉛直平面の第1・第2基準面を外方から挟み、その状態で、下プレスヘッドの上方に位置する上プレスヘッドを下降させて、凹球面に凸球面を接触させることができる。
上プレスヘッドの下降力を、一対の挟持部材の挟持力よりも大きく設定することができる。このように設定することによって、上プレスヘッドが、一対の挟持部材の挟持力に打ち勝って、下プレスヘッドの平行出しの際に、影響されることなく、下プレスヘッドの平行出しを行うことができる。しかも、一対の挟持部材は、第1・第2基準面の挾持状態を維持でき、下プレスヘッドのθ方向の位置合わせを行うことができる。
位置合わせ工程の終了後に、手動式の固定機構にて下プレスヘッドのその位置を固定するようにできる。このように固定することによって、高精度のプレス加工を長期にわたって安定して行うことができる。しかも、手動式であるので、構成の簡略化を図ることができる。
本発明では、下プレスヘッドの平行出しと、下プレスヘッドのθ方向の位置合わせとを行うことができるので、高精度のプレス加工を行うことができる。特に、ワークとして、チップが配設される多数の凹窪部を上面に有する基板であっても対応できる利点がある。
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
本発明に係るプレス装置は、図5に示すように、上プレスヘッド16と、下プレスヘッド17とを備え、下プレスヘッド17にて受けられたワークW(図9に示すような基板W1)に対してプレス加工を行うものである。ここで、図9に示す基板W1は、上面46に多数の凹窪部(キャビティ)47を有するものである。この場合、各凹窪部47内にチップ(半導体チップ)45が配置されて接着される。
下プレスヘッド17には、倣い手段M1が設けられている。すなわち、下プレスヘッド17は、図1に示すように、上面に凹球面20を有する下部材21と、下面に下部材21の凹球面20に嵌合する凸球面22を有する上部材23と、上部材23の凸球面22と下部材21の凹球面20との間にエアを供給・吸引するエア供給・吸引機構25とを有する。
この場合、少なくとも凹球面20の構成部位が、多孔質材料を介してエア供給・吸引機構25にて凹球面20と凸球面22との間にエアを供給・吸引するように構成できる。多孔質材料は小さい気孔が無数に空いている材料であって、金属、セラミックス等の種々のものがある。
エア供給・吸引機構25は、エア供給源26と、このエア供給源26からの圧縮空気を下部材21に供給する供給通路27とを備える。すなわち、エア供給源26からの圧縮空気が供給通路27に供給され、多孔質材料を介して凹球面20と凸球面22との間にエアが供給・吸引される。
このように、凹球面20と凸球面22との間にエアが供給されれば、凹球面20と凸球面22との間にすきまが形成され、これによって、下部材21に対する上部材23のチルトが許容される。また、凹球面20と凸球面22との間のエアを排出(吸引)して、この間を負圧状態とすれば、上部材23のチルトが規制される。そして、この状態で、図2に示すような固定機構30にて上部材23をその姿勢を維持するように固定される。
固定機構30として、図2に示すように、螺進退によって上部材23に対してその外側から接近・離間するねじ部材31にて構成される。すなわち、下部材21に固着された固定部32に、ねじ部材31が螺着される。この場合、固定部32には取付片32aが設けられ、この取付片32aにその軸心が水平方向に延びるねじ孔33を有し、ねじ部材31が螺合される。
ねじ部材31をねじ孔33に対して螺進させていけば、ねじ部材31の先端面が上部材の外周縁の当接端面23aに当接することになる。すなわち、上部材23の外周縁の当接端面23aを外側方からねじ部材31によって保持されることになる。このねじ部材31及び固定部32としては、上部材23の周方向に沿って所定ピッチで4個が配設されている。なお、配設ピッチや配置数は、ねじ部材31の先端面にて上部材23の外周縁の当接端面23aを保持して、上部材23の位置姿勢を維持できるものであれば、任意に設定できるが、等配置するのが好ましい。
また、このプレス装置では、下プレスヘッド17の軸心O(図3と図4参照)廻りであるθ方向の位置合わせを行う位置合わせ手段M2を備える。位置合わせ手段M2は、図1と図3と図4等に示すように、180°反対方向に設けられる下プレスヘッド17側の平行な鉛直平面の第1・第2基準面24a,24bと、この第1・第2基準面24a,24bを外方から挟む一対の挟持部材35(35A,35B)とで構成している。なお、第1・第2基準面24a,24bは、上部材23に設けられる平面視矩形体の基準ブロック24の側面にて形成される。
この場合、挟持部材35A,35Bは、図3と図4に示すように、第1・第2基準面24a,24bに対してそれぞれ当接する押さえ部材36、36を有する。押さえ部材36、36は、基準面24a,24bに対して平行に配設される押さえ本体部36a、36aと、この押さえ本体部36a、36aの長手方向端部に基準面24a,24b側に突出する押圧突起部36b、36bと、押さえ本体部36a、36aの長手方向中間部から反基準面側に突出する連結部36c、36cとを有する。また、押さえ本体部36aの長手方向中間部位に、基準面24a,24b側に突出する位置決め用の突起部36d、36dが設けられている。この突起部36d、36dの突出寸法は、押圧突起部36b、36bの突出寸法よりも大きく設定されている。各押さえ部材36、36の押圧突起部36b、36bは、基準面24a,24bの端部側に対応するように設定される。
連結部36c、36cには前記したようにシリンダ機構38A,38Bが接続される。この場合、シリンダ機構38A,38Bのピストンロッド39,39が連結部36c、36cに連結されている。このため、シリンダ機構38A,38Bのピストンロッド39,39が延びれば、押圧突起部36b、36bが基準面24a,24bに当接でき、また、シリンダ機構38A,38Bのピストンロッド39,39が縮まれば、押圧突起部36b、36bが基準面24a,24bから離間する。
ところで、基準面24a,24bには、中間部位に位置決め用凹部40、40が設けられている。この凹部40は、その深さを突起部36dの突出量よりも深く設定し、その幅寸法を突起部36dの幅寸法よりもやや小さく設定されて、突起部36dの嵌入(挿入)が可能とされている。
このため、図3に示すように、挟持部材35A,35Bが基準面24a,24bから離間している状態で、挟持部材35A,35Bが基準面24a,24bに接近していけば、まず、突起部36d、36dが基準面24a,24bの位置決め用凹部40、40に嵌入していく。その後、さらに挟持部材35A,35Bが基準面24a,24bに接近していけば、突起部36dの先端が、凹部40の底面に当接する前に、押圧突起部36b、36bが基準面24a,24bに当接する。これによって、一対の挟持部材35A,35Bにて、下プレスヘッド17側の平行な鉛直平面の第1・第2基準面24a,24bを挾持することになる。
この場合、押圧突起部36b、36bの先端面(基準面当接面)の位置は予め設定された位置で停止するように設定され、これによって、下プレスヘッド17は、軸心O廻りであるθ方向の位置を正規位置に合わせることができる。なお、位置決め用凹部40、40の突起部36d、36dが嵌入することによって、下プレスヘッド17は、θ方向の位置が正規位置となるようにガイドする機能を有する。
すなわち、下プレスヘッド17が図3の仮想線で示すように、軸心O廻りに位置ずれしていた場合、各挟持部材35A,35Bが、基準ブロック24に接近していけば、一方の挾持部材35Aでは、イの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接するとともに、他方の挾持部材35Bでは、ロの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接する。この状態からさらに、挟持部材35A,35Bが、基準ブロック24に接近していけば、基準ブロック24はその軸心(すなわち、下プレスヘッド17の軸心O)廻りに矢印A方向に回転し、一方の挾持部材35Aのハの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接するとともに、他方の挾持部材35Bでは、ニの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接する。これによって、下プレスヘッド17は、軸心O廻り(θ廻り)に回転して、正規位置に合わせることができる。
図3の仮想線は、正規位置から時計廻り方向に所定角度だけ回転している場合を示しているが、この逆、つまり、正規位置から反時計廻りに回転していた場合、軸心O廻りに位置ずれしていた場合、各挟持部材35A,35Bが、基準ブロック24に接近していけば、一方の挾持部材35Aでは、ハの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接するとともに、他方の挾持部材35Bでは、ニの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接する。この状態からさらに、挟持部材35A,35Bが、基準ブロック24に接近していけば、基準ブロック24はその軸心(すなわち、下プレスヘッド17の軸心O)廻りに矢印A方向と反対方向に回転し、一方の挾持部材35Aのイの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接するとともに、他方の挾持部材35Bでは、ロの押圧突起部36bの端面36b1が基準ブロック24に当接する。これによって、下プレスヘッド17は、軸心O廻り(θ廻り)に回転して、正規位置に合わせることができる。
次に、前記のように構成されたプレス装置の調整方法を図5と図6を用いて説明する。まず、図6に示すように、エア供給工程S1を行う。ここで、エア供給工程S1とは、図5(a)に示すように、下プレスヘッド17側の凹球面20と凸球面22との間にエアが供給して、凹球面20と凸球面22との間にすきまを形成する工程である。これによって、下部材21に対する上部材23のチルトが許容される。
次に、図6に示す挾持部材の挾持工程S2を行う。すなわち、図5(b)に示すように、一対の挾持部材35A,35Bを所定位置まで前進させる。この場合、下プレスヘッド17が軸心O廻りに位置ずれしていれば、この挾持工程S2によって、下プレスヘッド17は、軸心O廻り(θ廻り)に回転して、正規位置に合わせることができる。その後、エア吸引状態(チルト状態)での上プレスヘッド16の押圧工程S3を行う。この場合、図5(b)に示すように、上プレスヘッド16を下降させていけば、上プレスヘッド16の押圧面41が、下プレスヘッド17の上部材23の押圧面42を押圧する。これによって、下プレスヘッド17の上部材23の押圧面42が上プレスヘッド16の押圧面41に倣うことになる。
次に、図6に示すように、排出状態での上プレスヘッド押圧工程S4を行う。すなわち、下プレスヘッド17側の凹球面20と凸球面22との隙間からエアを排出するとともに、図5(c)に示すように、上プレスヘッド16をさらに下降させる。これによって、下プレスヘッド17の上部材23の押圧面42が上プレスヘッド16の押圧面41に倣った状態で、上部材23の凸球面22を下部材21の凹球面20に接触させる。これによって、下プレスヘッド17の上面(押圧面42)と、上プレスヘッド16の下面(押圧面41)とが平行状態となる。つまり、平行出しが行われる。
ところで、平行出しを行った場合、図7(a)及び図8(a)で示すように水平面に対して、上部材23の基準ブロック24が傾斜していたり、図7(b)及び図8(b)で示すように水平面に対して、上部材23の基準ブロック24が傾斜していたりする場合がある。
図7(a)及び図8(a)に示す状態では、一対の挾持部材35A,35Bによる基準面24a、24bの挾持によって、軸心O廻り(θ廻り)に回転して、正規位置に合っている。しかしながら、上部材23の基準ブロック24が一方の挾持部材35A側において、上方に傾斜し、上部材23が他方の挾持部材35B側において、下方に傾斜している状態である。このような場合、基準面24aが下端側から上方に向かって挾持部材35Aから離間するように傾斜し、基準面24bは上端側から下方に向かって挾持部材35Aから離間するように傾斜することになる。
このため、一方の挾持部材35Aは、図7(a)の矢印A1に示すように、基準面24aから離れる方向に押圧される。この際、挾持部材35Aを基準面24a側へ押圧する力よりも、上プレスヘッド16の下降力を大きくしているため、この一方の挾持部材35Aが、矢印A1方向に移動する。また、他方の挾持部材35Bは、図8(a)の矢印B1に示すように、基準面24bから離れる方向に押圧される。この際も、挾持部材35Bを基準面24b側へ押圧する力よりも、上プレスヘッド16の下降力を大きくしているので、この他方の挾持部材35Bが、矢印B1方向に移動する。
このように、挾持部材35A、35Bが矢印A1,B1ようにスライドしても、これらの挾持部材35A、35Bは、基準面24a、24bを挾持した状態を維持できる。このため、下プレスヘッド17の軸心O廻りの位置が合わされた状態が維持される。
図7(b)及び図8(b)に示す状態では、一対の挾持部材35A,35Bによる基準面24a、24bの挾持によって、軸心O廻り(θ廻り)に回転して、正規位置に合っているが、上部材23の基準ブロック24が一方の挾持部材35A側において、下方に傾斜し、上部材23が他方の挾持部材35B側において、上方に傾斜している状態である。このような場合、基準面24aが上端側から下方に向かって挾持部材35Aから離間するように傾斜し、基準面24bは下端側から上方に向かって挾持部材35Aから離間するように傾斜することになる。
このため、一方の挾持部材35Aは、図7(b)の矢印A2に示すように、基準面24aから離れる方向に押圧される。この場合、挾持部材35Aを基準面24a側へ押圧する力よりも、上プレスヘッド16の下降力を大きくしているので、この一方の挾持部材35Aは、矢印A2方向に移動する。また、他方の挾持部材35Bは、図8(b)の矢印B2に示すように、基準面24bから離れる方向に押圧される。この場合も、他方の挾持部材35Bを基準面24b側へ押圧する力よりも、上プレスヘッド16の下降力を大きくしているので、この他方の挾持部材35Bは矢印B2に移動する。
このように、挾持部材35A、35Bが矢印A2,B2ようにスライドしても、これらの挾持部材35A、35Bは、基準面24a、24bを挾持した状態を維持できる。このため、下プレスヘッド17の軸心O廻りの位置が合わされた状態が維持される。
図5(c)に示す状態の後に、図6に示すように、挾持部材35A、35Bの離間工程S5を行う。すなわち、各挾持部材35A、35Bを基準面24a、24bから離間させる方向に移動させる。この場合、シリンダ機構38A,38Bのピストンロッド39,39を縮めることによって、押圧突起部36b、36bを基準面24a,24bから離間させる。この場合、上部材23は下部材21に吸着された状態であるので、挾持部材35A、35Bが基準面24a、24bから離間しても、下プレスヘッド12に平行出し及び位置ずれをすることがない。
その後は、図6に示すように、固定工程S6を行う。固定工程S6とは、固定機構30を用いて、上部材23をその姿勢で固定することである。すなわち、ねじ部材31を螺進させて、ねじ部材31の先端面を上部材の外周縁の当接端面23aに当接させる。
図6において、エア供給工程S1と、吸引状態での上プレスヘッド押圧工程S3と、排出状態での上プレスヘッド押圧工程S4とで、下プレスヘッド17の平行調整を行う平行出し工程S7を構成し、エア供給工程S1と、挾持部材の挾持工程S2と、吸引状態での上プレスヘッド押圧工程S3と、排出状態での上プレスヘッド押圧工程S4とで、下プレスヘッドの軸心O廻りであるθ方向の位置合わせを行う位置合わせ工程S8を構成することになる。
このように、本発明にかかるプレス装置では、倣い手段M1による下プレスヘッド17の平行出しと、位置合わせ手段M2による下プレスヘッド17のθ方向の位置合わせとを行うことができる。そして、このように、調整が完了したプレス装置に対して、上プレスヘッド16の押圧面41に図9に示すように、多数のピン部材50を有する上側治具51を配置する。また、下プレスヘッド17の押圧面42には、上面46に多数の凹窪部(キャビティ)47を有する基板W1を、図示省略の治具を介して載置される。そして、基板W1の各凹窪部47には、接着剤を介してチップ45が配置される。
このように、調整が完了したプレス装置にてプレス加工すれば、倣い手段M1による下プレスヘッド17の平行出しと、位置合わせ手段M2による下プレスヘッド17のθ方向の位置合わせとが行われているので、上プレスヘッド16側の各ピン部材50は、その対応する基板W1の凹窪部47に、位置ずれすることなく嵌入することができる。このため、上面46に多数の凹窪部47を有する基板W1であっても、安定して高精度のプレス加工を行うことができる。
しかも、位置合わせ手段M2は、下プレスヘッド17側の平行な鉛直平面の第1・第2基準面24a、24bと、第1・第2基準面24a、24bを外方から挟む一対の挟持部材35A,35Bとで構成され、シンプルな構造で構成することができる。すなわち、一対の挟持部材35A,35Bで平行な鉛直平面の第1・第2基準面24a、24bを挟持するものであり、第1・第2基準面24a、24bを、挟持部材35A,35Bの押圧方向と直交する鉛直面に合わせることができる。これによって、下プレスヘッド17はその軸心O廻りに回動していない正規位置に合わせることができる。
一対の挟持部材35A,35Bは、第1・第2基準面24a、24bに対してそれぞれ接触する押さえ部材36を備えているので、第1・第2基準面の位置合わせを安定して行うことができる。特に、各押さえ部材36が、挟持方向と直交する方向に所定間隔だけ離間した同一水平面内の一対の押圧突起部36b、36bを有するものでは、より高精度の第1・第2基準面24a、24bの位置合わせを行うことができる。
各押さえ部材36、36は、一対の押圧突起部36b、36bとの間に位置決め用の突起部36dを有し、第1・第2基準面24a、24bには、突起部36dが嵌入する位置決め用の凹部40を有するものであってもよい。このように、第1・第2基準面24a、24bに、突起部36dが嵌入する位置決め用の凹部40を設けることによって、一対の挟持部材35A,35Bによる位置調整(位置合わせ)を正確に行うことができる。
各押さえ部材36、36には、押圧突起部36b、36bを各基準面24a、24bに対して接近・離間させるシリンダ機構38A,38Bが付設されているものであってもよい。このように、シリンダ機構38A,38Bを設けたものでは、位置調整(位置合わせ)に必要なときのみ、押さえ部材36、36による位置合わせを行うことができる。他の状態では、押さえ部材36、36を各基準面24a、24bから離間させることができる。これによって、挟持部材35等は、調整後(平行出し及び位置合わせを行った後)におけるこのプレス装置を用いたワークWへのプレス加工の妨げにならない。
倣い手段M1は、上方に開口する凹球面20と、この凹球面20に上方から嵌合する凸球面22と、凸球面22と凹球面20との間へのエアの供給及び凸球面22と凹球面20との間からのエアの吸引を行うエア供給・吸引機構25とを備えたもので構成できる。
このように、倣い手段M1を構成することによって、下部材21の凹球面20に上部材23の凸球面22を嵌合させた状態で、凹球面20と凸球面22との間にエアを供給する。すなわち、凹球面20と凸球面22との間に僅かな隙間を設け、上部材23を下部材21に対してチルト許容状態とする。そして、このチルト許容状態で、上プレスヘッド16を下降させて、上プレスヘッド16の下端平坦面(押圧面)41にて下部材21の上面平坦面(押圧面)42を押圧して上プレスヘッド16と下プレスヘッド17との平行出しを行う。すなわち、上部材23がチルト許容状態であるので、上プレスヘッド16の下端平坦面41と上部材23の上面平坦面42が密着する平行出しが行われる。
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、本プレス装置にてプレス加工するワークWとして、上面46に多数の凹窪部47を有する基板W1に限るものではなく、プレス加工する際に、下プレスヘッド17の平行出しと、下プレスヘッド17のθ方向の位置合わせを必要とする種々のワークWに対応することができる。
倣い手段M1として、多孔質材料を介して凹球面20と凸球面22との間にエアが供給・吸引されるものであり、凹球面20を構成部位のみを多孔質材料としたが、下部材全体を多孔質材料としてもよい。また、多孔質材料を介することなく、凹球面20と凸球面22との間に開口するエアブロー通路を下部材に設け、このエアブロー通路を介してエアを供給するようにしてもよい。
また、押さえ部材36に位置決め用の突起部36dを有さないものであってもよい。このように、突起部36dを有さないものでは、第1・第2基準面24a、24bに位置決め用の凹部40を設ける必要がない。また、押さえ部材36に設けられる押圧突起部36bとしては、各押さえ部材36に対して2個に限るものではなく、また押圧突起部36bを設けることなく、押さえ本体部36b、36bが直接基準面24a、24bに当接するものであってもよい。
挾持部材35A,35Bの押さえ部材36、36を基準面24a、24b側へ押圧する手段として、前記実施形態では、シリンダ機構38A,38Bを用いたが、このようなシリンダ機構38A,38Bを用いることなく、バネ部材等の弾性部材を用いることができる。また、シリンダ機構38A,38Bを用いる場合、同一の推力のシリンダ機構を用いても、相違する推力のシリンダ機構を用いてもよい。
挾持部材35A,35Bの押さえ部材36、36の押圧突起部36b、36と、基準面24a,24aとの接触は、点接触であっても、線接触であっても、面接触であってもよい。
固定機構30として、前記実施形態では、螺進退によって上部材23に対してその外側から接近・離間するねじ部材31にて構成していたが、下プレスヘッド17の上部材23側に設けられるアンビルと、固定部32側に設けられるスピンドルとを備えたマイクロメータにて構成してもよい。