図1は、本発明の一実施形態のガス消火装置の噴射ヘッド100と消音手段102を含む一部の構成を示す斜視図である。本実施形態のガス消火装置は、建物の消火対象区画内に設けられ、高圧力の消火ガスを消火対象区画内の空間に向けて噴射する噴射ヘッド100と、噴射ヘッド100が接続され、噴射ヘッド100に高圧力の消火ガスを導く導管14と、導管14に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、噴射ヘッド100に形成されるノズル孔104(後述の図3参照)から噴射される消火ガスの噴射に起因して発生する音響を減衰させる消音手段102とを含む。
消火ガスは、N2ガス、CO2ガスおよびハロゲン化物ガスなどの不燃ガスによって実現される。このような消火ガスを、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても充分に拡散させ、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができる。
噴射ヘッド100と消音手段102とによって、消火ガス噴射部111を構成する。このような消火ガス噴射部111では、消火ガスは、消火ガス供給源15から導管14を経て噴射ヘッド100に供給される。導管14は、消火ガス供給源15に接続される主管23と、主管23に介在される分岐管18と、分岐管18に接続される枝管19とを含み、このような導管14を経て消火ガス供給源15からの高圧力の消火ガスが前記噴射ヘッド100に導かれる。導管14は、基台20およびブラケット21にUボルトなどの締結具22によって締結され、振動および変位が抑制された状態で建物の躯体に設置される。
図2は、噴射ヘッド100と消音手段102とを示す斜視図であり、図3は噴射ヘッド100と消音手段102とを示す断面図である。消音機能を有する噴射ヘッド100は、消火ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火ガスを放出するために壁に設置され、噴射ヘッド本体101に消音手段102が取付け補助部材103によって取付けられて構成される。噴射ヘッド本体101には、チョークであるノズル孔104が直接形成される。ノズル孔104は、消火ガスの流量を希望する値に制限する。
取付け補助部材103は、基部105と、その基部105に連なる外向きフランジ106とを有する。基部105は、ねじ107によって噴射ヘッド本体101に着脱可能に取付けられる。
消音手段102は、気体が流通可能な多孔性材料からなる第1および第2消音材113,108で構成する。第2消音材108は大径であり、第1消音材113は第2消音材108に比べて小径である。第1および第2消音材113,108は、複数枚の各部材が、薄い円板状および薄い円環状の形状を有し、これらの部材が積層されてなる。積層された第1消音材113および第2消音材108の全体の形状は、それぞれほぼ円柱状である。
取付け補助部材103には、整流部材109がねじ110によって取付けられる。整流部材109は、チョークである整流孔112を有する。整流部材109内には、気体が流通可能な多孔性材料からなる前述の第1消音材113が収納される。第1消音材113は、複数枚の各部材が、薄い円板状の形状を有し、これらの部材が積層されてなる。整流孔112は、消火ガスの流量を制限する働きを有さず、第1消音材113によって減速、減圧された消火ガスを分散、整流して、次の第2消音材108に導く働きをする。取付け補助部材103における外向きフランジ106の端面と、第1消音材113との間には、環状部材114が介在される。環状部材114は、噴射ヘッド本体101と第1消音材113との間に、ノズル孔104からの微細な錆などの異物を留めて収納する間隙115を形成し、これによってノズル孔104の異物による目詰りを防ぐ。
図4は、案内部材121が取付け補助部材103と第2消音材108とによって挟まれた状態を示す一部の拡大断面図である。第2消音材108の一方側(図2および図3の左方)の端面120は、案内部材121の環状の取付け部122に接して、取付け補助部材103の外向きフランジ106に臨んで配設される。案内部材121は、この取付け部122と、取付け部122に連なり消火ガスを案内する短筒状の案内部123とを有する。
第2消音材108の周面124および他方側(図2および図3の右方)の端面125は、取付け部材127を介して取付け補助部材103の外向きフランジ106に第2消音材108を固定するリング部材としての押え部材128に接する部分を除いて、大気に開放される。取付け部材127の軸部は、押え部材128(リング部材、環状部材)、第2消音材108、案内部材121の取付け部122を挿通して、取付け補助部材103の外向きフランジ106に螺着される。
案内部材121の取付け部122は、図4に示されるように、取付け補助部材103の外向きフランジ106に環状に凹んで形成された取付け座131に嵌り、その取付け座131よりも半径方向内方(図4の下方)の端面132から間隙△L1だけ隆起する。
再び図3を参照して、噴射ヘッド100において、噴射ヘッド本体101は、基部137と、基部137に連なる掛合部138とを有する。導管14の端部14aには、噴射ヘッド100の基部137が、テーパねじである第1ねじ112によって、着脱交換可能に接続される。
取付け補助部材103は、噴射ヘッド本体101の基部137に着脱交換可能に設けられる。ノズル孔104の口径が異なる各種の噴射ヘッド本体101を、導管14の長さなどに依存して、個別的に選択使用される。その理由を、述べる。ガス消火装置は、その本来の役目である消火のために必要な大きな流量(たとえば2万〜10万リットル/分)を
確保しながら、消火対象区画内の空間に消火ガスを速やかに充満させるように高い流速(たとえば100m/s)を確保して、消火ガスを放出することができるように構成されなければならない。そのために消防法施行規則は、ガス消火装置における噴射ヘッド100のノズル孔104からの消火ガスの放射圧力を1.9MPa以上と規定しており、実務上は、2〜3MPa(≒20〜30kgf/cm2、なお、さらに高い6MPa≒60kgf/cm2くらいまで)の高い放射圧力で実施される。
したがって噴射ヘッド100のノズル孔104の口径の値は、ノズル孔104から噴射される消火ガスが、前述の大きな流量、高い流速、高い放射圧力を達成するように、消火ガス供給源15から噴射ヘッド100の設置場所までの導管14の長さなど、したがって管路抵抗に依存して、設定されなければならない。
そのためノズル孔104の口径は、導管14の長さなどによってそれぞれ異なり、したがって噴射ヘッド100の各設置場所毎に、ノズル孔104の口径が異なる各種の噴射ヘッド100を、個別的に選択して使用しなければならない。このようにガス消火装置において、ノズル孔104の口径が異なる各種の噴射ヘッド100は、不可欠である。
消音手段102は、第1消音材113と、第2消音材108と、押え部材128と取付け部材127とを有する。第1および第2消音材113,108は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、たとえば微細な金属粉または微細な金属線条体などが焼結された多孔質金属から成り、第2消音材108の微細な空隙は第1消音材113の空隙よりも小さく、高圧力の消火ガスを円滑で緩慢な減圧膨張によって流量を低下させずの効果的に消音効果を実現することができる。このような第1消音材113および第2消音材108は、ノズル孔104および整流孔112の口径および長さ、該ノズル孔104整流孔112の数および形成位置などの消火ガスの流動条件に応じて、空隙が粗密の異なる多孔性材料を適宜選択して用いることができる。また第1および第2消音材113,108として、たとえばワイヤメッシュを複数層積層して構成されてもよく、合成樹脂製繊維から成る板状の成形物または多孔性部材であってもよい。
第1および第2消音材113,108は、たとえば円板などの偏平な板状に形成され、第2消音材108は第1消音材113よりも大径であり、複数枚がそれぞれ積層される。積層された第1および第2消音材113,108の全体の形状のそれぞれは、たとえば円柱状である。その積層された第2消音材108の軸線方向一方側(図3の左方)の端面120は、噴射ヘッド本体101のスパナなどの工具が掛合される掛合部138における図3の右方に臨んで、たとえば接して、配置され、積層された第2消音材108の周面124は、大気に開放される。
押え部材128は、積層された第2消音材108の他方側(図3の右方)の端面125を押える。押え部材128は、偏平な板状であり、第2消音材108の周面124に沿って延びる周面124を有する。
取付け部材127は、この実施形態では、ねじ部材としてのボルトであり、同一の参照符を用いて示す。取付け部材127は、前記軸線L103まわりに等間隔に複数(たとえば6)配置される。取付け部材127の軸部は、押え部材128と第2消音材108とにそれぞれ形成されたボルト挿通孔を挿通し、取付け部材127の頭部は、押え部材128の第2消音材108とは反対側(図3の右方)に係止する。取付け部材127の軸部に形成されたおねじは、掛合部138に開孔して刻設されためねじに取外し可能に螺着される。これによって、取付け部材127は、積層された第2消音材108を、掛合部138と押え部材128との間で挟持して固定する。
取付け部材127の各軸線は、導管14の端部14aの軸線L103と平行である。導管14の端部14aと、噴射ヘッド100と、消音手段102との各軸線は、一直線上にある。噴射ヘッド100に消音手段102を取付けた状態で、導管14の端部14aに、噴射ヘッド本体101の基部137を、第1ねじ112によって接続する作業性が、良好である。
導管14の端部14aの軸線L103は、噴射ヘッド本体101を含む噴射ヘッド100と、第2消音材108と、押え部材128との各軸線は、一直線上にある。そのため、導管14の端部14aと噴射ヘッド本体101の基部137との第1ねじ112による接続、および噴射ヘッド本体101の基部137と整流部材109との第2ねじ107による接続の作業性が、良好である。この接続作業性が良好であることは、多くの場合、噴射ヘッド100と消音手段102とが、建物内の消火対象区画内で、人の移動などに障害にならない個所である人よりも高い天井などの個所に接続されることに鑑み、重要である。
消火時に、ノズル孔104を通って噴射された高圧力の消火ガスは、第2消音材108が有する微細な空隙を経て、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張し、音響の発生が低減抑制され、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。第1消音材108の周面124からの消火ガスは、天井付近で水平に放射状に噴射されて消火対象区画内の空間の全域に均一に、かつ速やかに拡散することができる。したがって消火対象区画の迅速な消火を達成することができる。
この第2消音材108によって、構成を小形化しつつ、噴射ヘッドから消火ガスの噴射流に起因する音響を減衰させることができ、噴射および消音の特性を正確に調整して、消火ガス流量を低下させずに大きな音響低減効果を達成することができる。
前述の実施形態では、噴射ヘッド100に比べて複雑な構成を有する消音手段102は、取付け部材127によって、ノズル孔104の口径が異なる各種の噴射ヘッド100に着脱交換可能であるので、第1および第2消音材113,108を、各種の噴射ヘッド100に共通に使用することができるようになる。この共用化によって、第1および第2消音材113,108の大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また、消火対象区画における消音の必要性の有無に依存して、個別的な選択使用が容易に可能であり、消音の必要性のない消火対象区画では、取り外しておくことによって、ガス消火設備の簡略化を図ることができる。さらに消音の必要性がなくなった消火対象区画から取り外した消音手段102を、消音すべき他の消火対象区画に、取り付けて、再使用することもでき、これによって経済性が良好であり、省エネルギ化が図られる。
本発明の他の実施形態では、噴射ヘッド100と消音手段102とが、一体的に、すなわち取外しができないように、構成されてもよい。この実施形態では、噴射ヘッド本体101の基部137が導管14の端部14aに、第1ねじ112によって着脱交換可能に設けられ、ノズル孔104の口径が異なる各種の噴射ヘッド100を、個別的に選択して使用するようにしてもよい。
また、噴射ヘッド100と消音手段102とを、第2ねじ107および取付け部材127によって、予め接続して組立体としておき、その後、この組立体における噴射ヘッド本体101の基部137を、導管14の端部14aに、第1ねじ112によって接続する作業性も良好である。
さらに、導管14の端部14aに第1ねじ112によって噴射ヘッド本体101の基部137が接続されている既存の消火対象区画を、消音すべき消火対象区画にするために、噴射ヘッド本体101の掛合部138に、消音手段102を、第2ねじ107によって接続するとき、その接続の作業性も良好である。
第1消音材113のノズル孔104に臨む側の端面と、噴射ヘッド本体101の第1消音材113に対向する側の端面との間に、間隙115が存在する。消火ガスがノズル孔104から噴射されるとき、微細な異物が、前記隙間に貯留して収納されるので、異物によるノズル孔104の目詰りを防ぐことができるとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および放出時の流量の低下を防ぐことができる。
異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。また、噴射ヘッド100内部での減圧および半径方向外方への消火ガスの放出によって、消火ガス噴射時に噴射ヘッド100から導管14に背後方向(図3の左方)へ作用する噴射反力を、図10に示す従来技術の1/9程度に低減することができる。
本発明の他の実施形態では、前述の実施形態における第1消音材113のノズル孔104側に配設される端面と、噴射ヘッド本体101と取付け補助部材103とが一体化された噴射ヘッド700の第1消音材113に対向して配設された端面との間を離間させても、消音効果が低下しないことが、本件発明者によって確認された。実験とその結果とを、図5と図6を参照して、以下に述べる。
図5は、本件発明者によって実験が行われた噴射ヘッド700と消音手段701,701aとを示す断面図であり、図6は本件発明者が、図5の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。図5(1)では、導管714からのN2ガスである消火ガスは、噴射ヘッド700のノズル孔704から噴射される。
噴射ヘッド700に取付けられた整流部材703内には、4枚の第1消音材705が積層されて収納される。また整流部材703の消火ガスの放出方向下流側(図5の右側)には、3枚の第2消音材706が積層されて配設される。第1消音材705を通過した消火ガスは、整流部材703の整流孔707を通過して整流されて、第2消音材708へ流入し、第2消音材708の周面709から半径方向外方へ放出するとともに、押え部材728の放出孔752から消火対象区画内の空間に放出される。第1消音材705は、噴射ヘッド500のノズル孔704の出口端の平坦な端面に密着して当接する。
導管714から噴射ヘッド700へ供給される消火ガスの供給圧力は、例えば、3MPa〜7MPaであり、消火ガスの放出流量は約55m3/minであり、ノズル孔504から放出される消火ガスの流速は約60〜100m/secである。この実験で用いた消音材508の空隙の空隙率は、約97%であり、直径は約130mmであり、第1消音材706の厚みは5mm/枚、第2消音材708の厚みは10mm/枚である。
図5(2)では、消音手段701aの第1消音材705は、噴射ヘッド700のノズル孔704の出口端の平坦な端面から約1mmの間隙753をあけて配置され、そのほかの構成は、図5(1)と同様である。
図6は、本件発明者が、図5の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。ライン754は、図5(1)のように第1消音材705をノズル孔704の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成による実験結果であり、ライン755は、図5(2)のように第1消音材705をノズル孔704の出口端の平坦な端面から間隙753をあけて配置した構成による実験結果である。
これらの実験結果から、第1消音材705をノズル孔704の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成(図5(1))によれば、間隙753をあけて配置した構成(図5(2))に比べて、消音効果の差がほとんどないことが確認された。したがって、第1消音材705のノズル孔704に対向する端面と、噴射ヘッド700の第1消音材705に対向する端面との間に間隙753をあけても、消音効果が低下しないことが確認された。
このような間隙753を、第1消音材705のノズル孔704に対向する端面と噴射ヘッド700の第1消音材705に対向する端面との間に設けることによって、消音効果を低下させずに、微細な異物が、前記間隙753内に貯留して収納され、消火ガスがノズル孔704から噴射されるとき、異物による第1および第2消音材705,706の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生を防ぐことができる。異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管14がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。
図7は、本件発明者によって実験が行われた噴射ヘッド500と消音手段502,502aとを示す断面図である。図7(1)では、導管514からのN2ガスである消火ガスは、噴射ヘッド500のノズル孔504から噴射される。
噴射ヘッド500に取付けられた消音手段502の直円筒状のハウジング551内には、11枚の消音材508が積層されて収納される。消音材508を通過した消火ガスは、ハウジング551の放出孔552から消火対象区画内の空間に放出される。消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接する。
導管514から噴射ヘッド500へ供給される消火ガスの供給圧力は、例えば、3MPa〜7MPaであり、消火ガスの放出流量は約55m3/minであり、ノズル孔504から放出される消火ガスの流速は約60〜100m/secである。この実験で用いた消音材508の空隙の空隙率は、約97%であり、直径は約130mmであり、厚みは10mm/枚である。
図7(2)では、消音手段502aの消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面から約1mmの間隙553をあけて配置され、そのほかの構成は、図7(1)と同様である。
図8は、本件発明者が、図7の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。ライン554は、図7(1)のように、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成による実験結果であり、ライン555は、図7(2)のように、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面から間隙553をあけて配置した構成による実験結果である。
これらの実験結果から、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成(図7(1))によれば、間隙553をあけて配置した構成(図7(2))に比べて、約16dBもの大きな消音効果が得られたことが確認された。したがって、消音材508のノズル孔504に対向する端面と、噴射ヘッド500の消音材508に対向する端面とを、密着して当接した実施形態によれば、消音効果が向上されることが確認された。
図9は、本発明の他の実施形態のガス消火装置を示す断面図である。このガス消火装置の消音手段600では、前述の案内部材121が省略される。図9を参照して、案内部材121の働きを説明する。
噴射ヘッド本体601の平板状のノズル部608の全面に均一に分布して形成された複数の各ノズル孔609からの消火ガスは、各ノズル孔609の相互に平行な軸線に沿って噴射され、ノズル孔609の下流に配置された第1消音材613および第2消音材610が有する微細な空隙に、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張してゆく。噴射ヘッド本体601と第1および第2消音材613,610との各軸線は、一直線上にある。第1および第2消音材613,610の微細な空隙は、それらの中を通過する消火ガスに圧力損失を与える。
第2消音材610の中で、各ノズル孔609の軸線に沿って噴射された後、第2消音材613および整流部材611の整流孔612を経て第2消音材610中へ噴射された消火ガスが辿る経路は、簡略化のために直線であると仮定すると、各整流孔612から、全体の形状がほぼ直円柱状である第2消音材610の最下流の端面までの経路長は、図9において参照符L601で示される。
整流部材611の側部から第2消音材610の周面614までの経路長は、図9において参照符L602で示される。整流孔612から噴射される消火ガスの流量を大きくするために、整流部材611の外径を第2消音材610の軸線方向の長さに比べて比較的大きく構成すると、L601>L602である。
消火ガスに作用する圧力損失は、これらの経路長L601、L602に比例し、したがって第2消音材610の中における圧力損失の分布は、等しい圧力損失を生じる位置を連ねた等圧線603のとおりである。圧力損失は、第2消音材610の軸線上の領域で最も大きく、その軸線から遠ざかった周辺の領域になるにつれて小さくなる。整流孔612から噴射される消火ガスは、圧力損失が小さい領域に流過しやすいので、第2消音材610の中で消火ガスは、噴射ヘッド本体601の軸線方向へ仮想線の参照符604で示されるように、また側方へ参照符605で示されるように進行し、さらに、背後の方向へも参照符606で示されるように進行する。参照符604、605、606の長さは、消火ガスの流量に対応して示され、前記側方および背後の方向へ比較的大流量の消火ガスが流れる。消火対象区画内に消火ガスを迅速に満たすには、複数の第2消音材610のうちで壁面付近(図9の左側)に設置された第2消音材から噴射ヘッド本体601の軸線方向に沿って仮想線の参照符604で示される方向に、また側方へ参照符605で示される方向に、できるだけ大流量で噴射し、背後の方向へ参照符606で示されるように進行する消火ガスの流量を抑制しなければならない。
本発明の前述の図1〜図8に関連して前述した各実施形態では、案内部材121は、消音材113,108;705,708から噴射される消火ガスのうち、図9の背後の方向606へ進行する消火ガスを阻止し、噴射ヘッド本体101および噴射ヘッド700の軸線方向604および側方605へ進行させる。これによって、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても、消火ガスを充分に拡散させて、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができるようになる。
本発明のガス消火装置は、火災発生時に建物の消火対象区画内の空間に消火ガスを消火剤として放出することによって、大規模な消火対象区画であっても消火ガスを充分に拡散させて消火するために、広範囲に実施することができる。
高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射する消火ガス噴射装置であって、前記消火ガス噴射装置は、噴射ヘッド100と、前記噴射ヘッド100からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段102を有しており、前記消音手段102は、前記噴射ヘッド100側に設けられた第1消音部材としての第2消音材108と、前記第1消音部材の下流側に設けられた第2消音部材としての第2消音材108とを有しており、前記第1および第2消音部材の各々は偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料からなる。前記第1および第2消音部材が積層されることで円柱形状を構成している。前記第1および第2消音部材は同一の外径を有する。前記第1および第2消音部材は同一の厚みを有する。前記第1および第2消音部材の外周面全面が大気に露出している。前記第2消音部材を固定するリング部材としての押え部材128をさらに備える。前記消音手段は上流側に位置する第1消音手段としての第1消音材113と下流側に位置する第2消音手段としての第2消音材108とを有しており、前記第1消音手段と前記第2消音手段との間には気体が流通可能な中間部材としての整流部材が配置されている。
消音部材が偏平な板状に形成されることで、消音部材が撓みやすくなる。その結果、消音部材の破損を防止することができる。
図10は、本発明の一実施形態のガス消火装置の噴射ヘッド200と消音手段202を含む一部の構成を示す斜視図である。本実施形態のガス消火装置は、建物の消火対象区画内に設けられ、高圧力の消火ガスを消火対象区画内の空間に向けて噴射する噴射ヘッド200と、噴射ヘッド200が接続され、噴射ヘッド200に高圧力の消火ガスを導く導管14と、導管14に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、噴射ヘッド200に形成されるノズル孔204(後述の図12参照)から噴射される消火ガスの噴射に起因して発生する音響を減衰させる消音手段202とを含む。
消火ガスは、N2ガス、CO2ガスおよびハロゲン化物ガスなどの不燃ガスによって実現される。このような消火ガスを、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても充分に拡散させ、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができる。
噴射ヘッド200と消音手段202とによって、消火ガス噴射部211を構成する。このような消火ガス噴射部211では、消火ガスは、消火ガス供給源15から導管14を経て噴射ヘッド200に供給される。導管14は、消火ガス供給源15に接続される主管23と、主管23に介在される分岐管18と、分岐管18に接続される枝管19とを含み、このような導管14を経て消火ガス供給源15からの高圧力の消火ガスが前記噴射ヘッド200に導かれる。導管14は、基台20およびブラケット21にUボルトなどの締結具22によって締結され、振動および変位が抑制された状態で建物の躯体に設置される。
図11は、噴射ヘッド200と消音手段202とを示す斜視図であり、図12は噴射ヘッド200と消音手段202とを示す断面図である。消音機能を有する噴射ヘッド200は、消火ガスを使用するガス系消火設備において、消火対象区画に消火ガスを放出するために壁に設置され、噴射ヘッド本体201に消音手段202がボルトなどの取付け部材227によって着脱可能に取付けられて構成される。噴射ヘッド本体201には、チョークであるノズル孔204が直接形成される。ノズル孔204は、消火ガスの流量を希望する値に制限する。
噴射ヘッド本体201は、基部205と、その基部205に連なる外向きフランジ206とを有する。基部205は、ねじ207によって噴射ヘッド本体201に着脱可能に取付けられる。
消音手段202は、気体が流通可能な多孔性材料からなる消音材208で構成する。消音材208は、複数枚の各部材が、薄い円板状および薄い円環状の形状を有し、これらの部材が積層されてなる。積層された消音材208の全体の形状は、ほぼ円柱状である。
図13は、案内部材221が噴射ヘッド本体201と消音材208とによって挟まれた状態を示す一部の拡大断面図である。消音材208の一方側(図12および図13の左方)の端面220は、案内部材221の環状の取付け部222に接して、噴射ヘッド本体201の外向きフランジ206に臨んで配設される。案内部材221は、この取付け部222と、取付け部222に連なり、消火ガスを案内する短筒状の案内部223とを有する。
消音材208の周面224および他方側(図12の右方)の端面225は、取付け部材227を介して噴射ヘッド本体201の外向きフランジ206に消音材208を固定する押え部材228に接する部分を除いて、大気に開放される。取付け部材227の軸部は、押え部材228、消音材208、案内部材221の取付け部222を挿通して、噴射ヘッド本体201の外向きフランジ206に螺着される。
案内部材221の取付け部222は、図13に示されるように、噴射ヘッド本体201の外向きフランジ206に環状に凹んで形成された取付け座231に嵌り、その取付け座231よりも半径方向内方(図13の下方)の端面232から間隙△L1だけ隆起する。
再び図12を参照して、噴射ヘッド200において、噴射ヘッド本体201は、基部205と、基部205に連なる外向きフランジ206とを有する。導管14の端部14aには、噴射ヘッド200の基部205が、テーパねじである第1ねじ212によって、着脱交換可能に接続される。
噴射ヘッド本体201は、噴射ヘッド本体201の基部205に着脱交換可能に設けられる。ノズル孔204の口径が異なる各種の噴射ヘッド本体201を、導管14の長さなどに依存して、個別的に選択使用される。その理由を、述べる。ガス消火装置は、その本来の役目である消火のために必要な大きな流量(たとえば2万〜10万リットル/分)を
確保しながら、消火対象区画内の空間に消火ガスを速やかに充満させるように高い流速(たとえば100m/s)を確保して、消火ガスを放出することができるように構成されなければならない。そのために消防法施行規則は、ガス消火装置における噴射ヘッド200のノズル孔204からの消火ガスの放射圧力を1.9MPa以上と規定しており、実務上は、2〜3MPa(≒20〜30kgf/cm2、なお、さらに高い6MPa≒60kgf/cm2くらいまで)の高い放射圧力で実施される。
したがって噴射ヘッド200のノズル孔204の口径の値は、ノズル孔204から噴射される消火ガスが、前述の大きな流量、高い流速、高い放射圧力を達成するように、消火ガス供給源15から噴射ヘッド200の設置場所までの導管14の長さなど、したがって管路抵抗に依存して、設定されなければならない。
そのためノズル孔204の口径は、導管14の長さなどによってそれぞれ異なり、したがって噴射ヘッド200の各設置場所毎に、ノズル孔204の口径が異なる各種の噴射ヘッド200を、個別的に選択して使用しなければならない。このようにガス消火装置において、ノズル孔204の口径が異なる各種の噴射ヘッド200は、不可欠である。
消音手段202は、消音材208と、押え部材228と取付け部材227とを有する。消音材208は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、たとえば微細な金属粉または微細な金属線条体などが焼結された多孔質金属から成り、高圧力の消火ガスを円滑で緩慢な減圧膨張によって流量を低下させずの効果的に消音効果を実現することができる。このような消音材208は、ノズル孔204の口径、長さ、数および形成位置などの消火ガスの流動条件に応じて、空隙が粗密の異なる多孔性材料を適宜選択して用いることができる。また消音材208として、たとえばワイヤメッシュを複数層、積層して構成されてもよく、合成樹脂製繊維から成る板状の成形物または多孔性部材であってもよい。
消音材208は、たとえば円板などの偏平な板状に形成され、複数枚がそれぞれ積層される。積層された消音材208の全体の形状のそれぞれは、たとえば円柱状である。その積層された消音材208の軸線方向一方側(図12の左方)の端面220は、噴射ヘッド本体201に臨んで、たとえば接して、配置され、積層された消音材208の周面224は、大気に開放される。
押え部材228は、積層された消音材208の他方側(図12の右方)の端面225を押える。押え部材228は、偏平な板状であり、消音材208の周縁部に沿って延びるリング状金属から成る。
取付け部材227は、この実施形態では、ねじ部材としてのボルトであり、同一の参照符を用いて示す。取付け部材227は、前記軸線L203まわりに等間隔に複数(たとえば3)が軸対称に配置される。取付け部材227の軸部は、押え部材228と消音材208とにそれぞれ形成されたボルト挿通孔を挿通し、取付け部材227の頭部は、押え部材228の消音材208とは反対側(図12の右方)に係止する。取付け部材227の軸部に形成されたおねじは、噴射ヘッド本体201の外向きフランジ206に開孔して刻設されためねじに取外し可能に螺着される。これによって、取付け部材227は、積層された消音材208を、外向きフランジ206と押え部材228との間で挟持して固定する。
取付け部材227の各軸線は、導管14の端部14aの軸線L103と平行である。導管14の端部14aと、噴射ヘッド200と、消音手段202との各軸線は、一直線上にある。噴射ヘッド200に消音手段202を取付けた状態で、導管14の端部14aに、噴射ヘッド本体201の基部205を、第1ねじ212によって接続する作業性が、良好である。
導管14の端部14aの軸線L103は、噴射ヘッド本体201を含む噴射ヘッド200と、消音材208と、押え部材228との各軸線は、一直線上にある。そのため、導管14の端部14aと噴射ヘッド本体201の基部205との第1ねじ212による接続、および噴射ヘッド本体201とノズル部材234との第2ねじ207による接続の作業性が、良好である。この接続作業性が良好であることは、多くの場合、噴射ヘッド200と消音手段202とが、建物内の消火対象区画内で、人の移動などに障害にならない個所である人よりも高い天井などの個所に接続されることに鑑み、重要である。
消火時に、ノズル孔204を通って噴射された高圧力の消火ガスは、消音材208が有する微細な空隙を経て、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張し、音響の発生が低減抑制され、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。消音材208の周面224からの消火ガスは、天井付近で水平に放射状に噴射されて消火対象区画内の空間の全域に均一に、かつ速やかに拡散することができる。したがって消火対象区画の迅速な消火を達成することができる。
この消音材208によって、構成を小形化しつつ、噴射ヘッドから消火ガスの噴射流に起因する音響を減衰させることができ、噴射および消音の特性を正確に調整して、消火ガス流量を低下させずに大きな音響低減効果を達成することができる。
前述の実施形態では、噴射ヘッド200に比べて複雑な構成を有する消音手段202は、取付け部材227によって、ノズル孔204の口径が異なる各種の噴射ヘッド200に着脱交換可能であるので、消音材208を、各種の噴射ヘッド200に共通に使用することができるようになる。この共用化によって、消音材208の大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また、消火対象区画における消音の必要性の有無に依存して、個別的な選択使用が容易に可能であり、消音の必要性のない消火対象区画では、取り外しておくことによって、ガス消火設備の簡略化を図ることができる。さらに消音の必要性がなくなった消火対象区画から取り外した消音手段202を、消音すべき他の消火対象区画に、取り付けて、再使用することもでき、これによって経済性が良好であり、省エネルギ化が図られる。
本発明の他の実施形態では、噴射ヘッド200と消音手段202とが、一体的に、すなわち取外しができないように、構成されてもよい。この実施形態では、噴射ヘッド本体201の基部205が導管14の端部14aに、第1ねじ212によって着脱交換可能に設けられ、ノズル孔204の口径が異なる各種の噴射ヘッド200を、個別的に選択して使用するようにしてもよい。
また、噴射ヘッド200とノズル部材234とを、第2ねじ207によって、予め接続して組立体としておき、その後、この組立体における噴射ヘッド本体201の基部205を、導管14の端部14aに、第1ねじ212によって接続する作業性も良好である。
さらに、導管14の端部14aに第1ねじ212によって噴射ヘッド本体201の基部205が接続されている既存の消火対象区画を、消音すべき消火対象区画にするために、噴射ヘッド本体201に、消音手段202を、取付け部材227によって接続するとき、その接続の作業性も良好である。
消音材208のノズル孔204に臨む側の端面と、噴射ヘッド本体201の消音材208に対向する側の端面との間に、軸線L203の方向に間隔ΔL2を有する間隙215が存在する。消火ガスがノズル孔204から噴射されるとき、微細な異物が、前記隙間に貯留して収納されるので、異物によるノズル孔204の目詰りを防ぐことができるとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および放出時の流量の低下を防ぐことができる。
異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。また、噴射ヘッド100内部での減圧および半径方向外方への消火ガスの放出によって、消火ガス噴射時に噴射ヘッド100から導管14に背後方向(図12の左方)へ作用する噴射反力を、図28に示す従来技術の1/9程度に低減することができる。
本発明の実施の他の形態では、前述の実施形態における消音材208のノズル孔204側に配設される端面と、噴射ヘッド本体201の消音材208に対向して配設された端面との間を離間させても、消音効果が低下しないことが、本件発明者によって確認された。実験とその結果とを、図14と図15を参照して、以下に述べる。
図14は、本件発明者によって実験が行われた噴射ヘッド500と消音手段502,502aとを示す断面図である。図14(1)では、導管514からのN2ガスである消火ガスは、噴射ヘッド500のノズル孔504から噴射される。
噴射ヘッド500に取付けられた消音手段502の直円筒状のハウジング551内には、11枚の消音材508が積層されて収納される。消音材508を通過した消火ガスは、ハウジング551の放出孔552から消火対象区画内の空間に放出される。消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接する。
導管514から噴射ヘッド500へ供給される消火ガスの供給圧力は、例えば、3MPa〜7MPaであり、消火ガスの放出流量は約55m3/minであり、ノズル孔504から放出される消火ガスの流速は約60〜100m/secである。この実験で用いた消音材508の空隙の空隙率は、約97%であり、直径は約130mmであり、厚みは10mm/枚である。
図14(2)では、消音手段502aの消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面から約1mmの間隙553をあけて配置され、そのほかの構成は、図14(1)と同様である。
図15は、本件発明者が、図14の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。ライン554は、図14(1)のように、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成による実験結果であり、ライン555は、図14(2)のように、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面から間隙553をあけて配置した構成による実験結果である。
これらの実験結果から、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成(図14(1))によれば、間隙553をあけて配置した構成(図14(2))に比べて、約16dBもの大きな消音効果が得られたことが確認された。したがって、消音材508のノズル孔504に対向する端面と、噴射ヘッド500の消音材508に対向する端面とを、密着して当接した実施形態によれば、消音効果が向上されることが確認された。
したがって、図10〜図13の実施形態のように、消音材208のノズル孔204に臨む側の端面と、噴射ヘッド本体201の消音材208に対向する側の端面との間に間隙215を設けるに際して、軸線L203の方向に間隔ΔL2を上記消音効果が低下しない範囲、たとえば0.1mm〜1.5mmとすることによって、消音効果を実質上低下させずに、異物による消音材208の目詰まりを防止することができる。
図16は、本発明の他の実施形態のガス消火装置を示す断面図である。このガス消火装置の消音手段600では、前述の案内部材221が省略される。図16を参照して、案内部材221の働きを説明する。
噴射ヘッド本体601の平板状の前述の端壁241に対応するノズル部608の全面に均一に分布して形成された複数の各ノズル孔609からの消火ガスは、各ノズル孔609の相互に平行な軸線に沿って噴射され、ノズル孔609の下流に配置された消音材613が有する微細な空隙に、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張してゆく。噴射ヘッド本体601と消音材613との各軸線は、一直線上にある。消音材613の微細な空隙は、それらの中を通過する消火ガスに圧力損失を与える。
ノズル孔609から消音材613中へ噴射された消火ガスが辿る経路は、簡略化のために直線であると仮定すると、ノズル部608から、全体の形状がほぼ直円柱状である消音材613の最下流の端面までの経路長は、図16において参照符L601で示される。
ノズル部608の側部から消音材613の周面までの経路長は、図16において参照符L602で示される。ノズル部608から噴射される消火ガスの流量を大きくするために、ノズル部608の外径を消音材613の軸線方向の長さに比べて比較的大きく構成すると、L601>L602である。
消火ガスに作用する圧力損失は、これらの経路長L601、L602に比例し、したがって消音材613の中における圧力損失の分布は、等しい圧力損失を生じる位置を連ねた等圧線603のとおりである。圧力損失は、消音材613の軸線上の領域で最も大きく、その軸線から遠ざかった周辺の領域になるにつれて小さくなる。ノズル部608から噴射される消火ガスは、圧力損失が小さい領域に流過しやすいので、消音材613の中で消火ガスは、噴射ヘッド本体601の軸線方向へ仮想線の参照符604で示されるように、また側方へ参照符605で示されるように進行し、さらに、背後の方向へも参照符606で示されるように進行する。参照符604、605、606の長さは、消火ガスの流量に対応して示され、前記側方および背後の方向へ比較的大流量の消火ガスが流れる。消火対象区画内に消火ガスを迅速に満たすには、複数の消音材613のうちで壁面付近(図16の左側)に設置された消音材から噴射ヘッド本体601の軸線方向に沿って仮想線の参照符604で示される方向に、また側方へ参照符605で示される方向に、できるだけ大流量で噴射し、背後の方向へ参照符606で示されるように進行する消火ガスの流量を抑制しなければならない。
本発明の前述の図10〜図16に関連して前述した各実施形態では、案内部材221は、消音材613から噴射される消火ガスのうち、図16の背後の方向606へ進行する消火ガスを阻止し、噴射ヘッド本体601の軸線方向604および側方605へ進行させる。これによって、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても、消火ガスを充分に拡散させて、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができるようになる。
本発明のガス消火装置は、火災発生時に建物の消火対象区画内の空間に消火ガスを消火剤として放出することによって、大規模な消火対象区画であっても消火ガスを充分に拡散させて消火するために、広範囲に実施することができる。
高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射する消火ガス噴射装置であって、前記消火ガス噴射装置は、噴射ヘッド100と、前記噴射ヘッド100からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段202を有しており、前記消音手段202は、前記噴射ヘッド100側に設けられた第1消音部材としての消音材208と、前記第1消音部材の下流側に設けられた第2消音部材としての消音材208とを有しており、前記第1および第2消音部材の各々は偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料からなる。前記第1および第2消音部材が積層されることで円柱形状を構成している。前記第1および第2消音部材は同一の外径を有する。前記第1および第2消音部材は同一の厚みを有する。前記第1および第2消音部材の外周面全面が大気に露出している。前記第2消音部材を固定する環状部材としての押え部材228をさらに備える。
図17は、本発明の一実施形態のガス消火装置の噴射ヘッド300と消音手段302を含む一部の構成を示す斜視図である。本実施形態のガス消火装置は、建物の消火対象区画内に設けられ、高圧力の消火ガスを消火対象区画内の空間に向けて噴射する噴射ヘッド300と、噴射ヘッド300が接続され、噴射ヘッド300に高圧力の消火ガスを導く導管314と、導管314に高圧力の消火剤ガスを供給する消火ガス供給源315と、噴射ヘッド300に形成されるノズル孔304(後述の図19参照)から噴射される消火ガスの噴射に起因して発生する音響を減衰させる消音手段302とを含む。
消火ガスは、N2ガスおよびCO2ガスなどの不活性ガスまたはハロゲン化物ガスなどの活性ガスによって実現される。このような消火ガスを、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても充分に拡散させ、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができる。
噴射ヘッド300と消音手段302とによって、消火ガス噴射部311を構成する。このような消火ガス噴射部311では、消火ガスは、消火ガス供給源315から導管314を経て噴射ヘッド300に供給される。導管314は、消火ガス供給源315に接続される主管323と、主管323に介在される分岐管318と、分岐管318に接続される枝管319とを含み、このような導管314を経て消火ガス供給源315からの高圧力の消火ガスが前記噴射ヘッド300に導かれる。導管314は、基台316およびブラケット321にUボルトなどの締結具322によって締結され、振動および変位が抑制された状態で建物の躯体に設置される。
図18は、噴射ヘッド300と消音手段302とを示す斜視図であり、図19は噴射ヘッド300と消音手段302とを示す断面図である。噴射ヘッド300は、消火ガスを使用するガス系消火装置において消火対象区画内の空間に消火ガスを放出するために、天井に設置される。噴射ヘッド300は、噴射ヘッド本体301とノズル部材339とを有する。噴射ヘッド本体301には、消音手段302が取付けられる。
噴射ヘッド300において、噴射ヘッド本体301は、基部337と、基部337に連なる外向きフランジ338とを有する。導管314の端部303には、噴射ヘッド300の基部337が、テーパねじである第1ねじ312によって、着脱交換可能に接続される。
ノズル部材339は、筒部340と、端壁341とを有する。筒部340は、導管314の端部303の上下の軸線L303に沿って延びる。この筒部340は、複数のノズル孔304が形成される周壁342と、周壁342の軸線方向一端部(図19の上方)に連なり、噴射ヘッド本体301の基部337に第2ねじによって着脱交換可能に接続される基端部306とを有する。端壁341は、周壁342の軸線方向他端部(図19の下方)を閉塞する。ノズル孔304は、消火ガスの流量を希望する値に制限する。
ノズル部材339の基端部306は、噴射ヘッド本体301の基部337に着脱交換可能に設けられる。ノズル孔304の口径が異なる各種のノズル部材339を、導管314の長さなどに依存して、個別的に選択使用される。その理由を、述べる。ガス消火装置は、その本来の役目である消火のために必要な大きな流量(たとえば2万〜10万リットル/分)を確保しながら、消火対象区画内の空間に消火ガスを速やかに充満させるように高
い流速(たとえば100m/s)を確保して、消火ガスを放出することができるように構成されなければならない。そのために消防法施行規則は、ガス消火装置における噴射ヘッド300のノズル孔304からの消火剤ガスの放射圧力を1.9MPa以上と規定しており、実務上は、2〜3MPa(≒20〜30kgf/cm2、なお、さらに高い6MPa≒60kgf/cm2くらいまで)の高い放射圧力で実施される。
したがって噴射ヘッド300のノズル孔304の口径の値は、ノズル孔304から噴射される消火剤ガスが、前述の大きな流量、高い流速、高い放射圧力を達成するように、消火ガス供給源315から噴射ヘッド300の設置場所までの導管314の長さなど、したがって管路抵抗に依存して、設定されなければならない。そのためノズル孔304の口径は、導管314の長さなどによってそれぞれ異なり、したがって噴射ヘッド300の各設置場所毎に、ノズル孔304の口径が異なる各種の噴射ヘッド300を、個別的に選択して使用しなければならない。このようにガス消火装置において、ノズル孔304の口径が異なる各種の噴射ヘッド300は、不可欠である。
消音手段302は、消音材308と押え部材328と取付け部材327とを有する。消音材308は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、たとえば微細な金属粉または微細な金属線条体などが焼結された多孔質金属から成り、またはたとえばワイヤメッシュを複数層積層して構成されてもよく、合成樹脂製であってもよい。このような消音材308は、ノズル孔304の口径、長さ、数、形成位置などの消火ガスの流動条件に応じて、空隙が粗密の異なる多孔性材料を適宜選択して用いることができる。
消音材308は、たとえば円板などの偏平な板状に形成され、複数枚が積層される。積層された消音材308の全体の形状は、たとえば円柱状である。その積層された消音材308の軸線方向一方側(図19の上方)の端面320は、噴射ヘッド本体301の外向きフランジ338における図19の下面に臨んで、たとえば接して、配置され、積層された消音材308の周面324は、大気に開放される。消音材308には、ノズル部材339の筒部340が挿通する挿通孔310が形成される。
押え部材328は、積層された消音材308の他方側(図19の下方)の端面325を押える。押え部材328は、偏平な板状であり、消音材308の周面324に沿って延びる周面を有する。
取付け部材327は、この実施の形態では、ねじ部材としてのボルトであり、同一の参照符を用いて示す。ボルト327は、前記軸線L303まわりに等間隔に複数(たとえば6)配置される。ボルト327の軸部は、押え部材328と消音材308とにそれぞれ形成されたボルト挿通孔を挿通し、ボルト327の頭部は、押え部材328の消音材308とは反対側(図19の下方)に係止する。ボルト327の軸部に形成されたおねじは、外向きフランジ338に開孔して刻設されためねじに取外し可能に螺着される。これによって、ボルト327は、積層された消音材308を、外向きフランジ338と押え部材328との間で挟持して固定する。
ボルト327の各軸線は、導管314の端部303の軸線L303と平行である。導管314の端部303と、噴射ヘッド300と、消音手段302との各軸線は、一直線上にある。噴射ヘッド300に消音手段302を取付けた状態で、導管314の端部303に、噴射ヘッド本体301の基部337を、第1ねじ312によって接続する作業性が、良好である。
導管314の端部303の軸線L303は、噴射ヘッド本体301およびノズル部材339を含む噴射ヘッド300と、消音材308と、押え部材328との各軸線は、一直線上にある。そのため、導管314の端部303と噴射ヘッド本体301の基部337との第1ねじ312による接続、および噴射ヘッド本体301の基部337とノズル部材339の基端部306との第2ねじ307による接続の作業性が、良好である。この接続作業性が良好であることは、多くの場合、噴射ヘッド300と消音手段302とが、建物内の消火対象区画内で、人の移動などに障害にならない個所である人よりも高い天井などの個所に接続されることに鑑み、重要である。
消火時に、ノズル孔304を通って噴射された高圧力の消火ガスは、消音材308が有する微細な空隙を経て、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張し、音響の発生が低減抑制され、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。消音材308の周面324からの消火ガスは、天井付近で水平に放射状に噴射されて消火対象区画内の空間の全域に均一に、かつ速やかに拡散することができる。したがって消火対象区画の迅速な消火を達成することができる。
この消音材308によって、構成を小形化しつつ、大きな音響低減効果を達成することができる。
前述の実施形態では、噴射ヘッド300に比べて複雑な構成を有する消音手段302は、ボルト327によって、ノズル孔304の口径が異なる各種の噴射ヘッド300に着脱交換可能であるので、消音手段302を、各種の噴射ヘッド300に共通に使用することができるようになる。この共用化によって、消音手段302の大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また、消火対象区画における消音の必要性の有無に依存して、個別的な選択使用が容易に可能であり、消音の必要性のない消火対象区画では、取り外しておくことによって、ガス消火設備の簡略化を図ることができる。さらに消音の必要性がなくなった消火対象区画から取り外した消音手段302を、消音すべき他の消火対象区画に、取り付けて、再使用することもでき、これによって経済性が良好であり、省エネルギ化が図られる。
本発明の他の実施形態では、噴射ヘッド300と消音手段302とが、一体的に、すなわち取外しができないように、構成されてもよい。この実施の形態では、噴射ヘッド本体301の基部337が導管314の端部303に、第1ねじ312によって着脱交換可能に設けられ、ノズル孔304の口径が異なる各種の噴射ヘッド300を、個別的に選択して使用するようにしてもよい。
また、噴射ヘッド300と消音手段302とを、第2ねじ307および取付け部材327によって、予め接続して組立体としておき、その後、この組立体における噴射ヘッド本体301の基部337を、導管314の端部303に、第1ねじ312によって接続する作業性も良好である。
さらに、導管314の端部303に第1ねじ312によって噴射ヘッド本体301の基部337が接続されている既存の消火対象区画を、消音すべき消火対象区画にするために、噴射ヘッド本体301の外向きフランジ338に、消音手段302を、取付け部材327によって接続するとき、その接続の作業性も良好である。
消音材308の挿通孔310の内周面と、ノズル部材339の筒部340の外周面との間に、間隙が存在する。消火ガスがノズル孔304から噴射されるとき、微細な異物が、前記隙間に貯留して収納されるので、異物によるノズル孔304の目詰りを防ぐことができるとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および放出時の流量の低下を防ぐことができる。
異物は、導管314内に存在し、たとえば導管314内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。また、噴射ヘッド100内部での減圧および半径方向外方への消火ガスの放出によって、消火ガス噴射時に噴射ヘッド100から導管14に背後方向(図19の左方)へ作用する噴射反力を、図31に示す従来技術の1/9程度に低減することができる。
本発明の他の実施形態では、消音材308の挿通孔310の内周面と、ノズル部材339の筒部340の外周面とは、密着する。この構成によって、消音効果が向上されることが、本件発明者によって確認された。実験とその結果とを、図20と図21を参照して、以下に述べる。
図20は、本件発明者によって実験が行われた噴射ノズル500と消音手段502,502aとを示す断面図である。図20(1)では、導管514からのN2ガスである消火ガスは、噴射ヘッド500のノズル孔504から噴射される。噴射ヘッド500に取付けられた消音手段502の直円筒状ハウジング551内には、11枚の消音材508が詰めて収納される。消音材508を通過した消火ガスは、ハウジング551の放出孔52から消火対象区画内の空間に放出される。消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接する。
導管514から噴射ノズル500へ供給される消火ガスの供給圧力は、例えば、3MPa〜7MPaであり、消火ガスの放出流量は約55m3/minであり、ノズル孔504から放出される消火ガスの流速は約60〜100m/secである。この実験で用いた消音材508の空隙の空隙率は、約97%であり、直径は約130mmであり、厚みは10mm/枚である。
図20(2)では、消音手段500aの消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面から約1mm間隙553をあけて配置され、そのほかの構成は、図21(1)と同様である。
図21は、本件発明者が、図20の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。ライン554は、図20(1)のように消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成による実験結果であり、ライン555は、図20(2)のように消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面から間隙553をあけて配置した構成による実験結果である。
これらの実験結果から、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成(図20(1))によれば、間隙553をあけて配置した構成(図20(2))に比べて、約12dBもの大きな消音効果が得られたことが確認された。したがって、消音材308の挿通孔310の内周面と、ノズル部材339の筒部340の外周面とを、密着して当接した実施の形態によれば、消音効果が向上されることが判った。
したがって、図17〜図20の実施形態のように、消音材308のノズル孔304に臨む側の端面と、噴射ヘッド本体301の消音材308に対向する側の端面との間に間隙315を設けるに際して、軸線L303の方向に間隔を上記消音効果が低下しない範囲、たとえば0.1mm〜1.5mmとすることによって、消音効果を実質上低下させずに、異物による消音材308の目詰まりを防止することができる。
本発明のガス消火装置は、火災発生時に建物の消火対象区画内の空間に消火ガスを消火剤として放出することによって、大規模な消火対象区画であっても消火ガスを充分に拡散させて消火するために、広範囲に実施することができる。
高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射する消火ガス噴射装置であって、前記消火ガス噴射装置は、噴射ヘッド300と、前記噴射ヘッド300からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段302を有しており、前記消音手段302は、前記噴射ヘッド300側に設けられた第1消音部材としての消音材308と、前記第1消音部材の下流側に設けられた第2消音部材としての消音材308とを有しており、前記第1および第2消音部材の各々は偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料からなる。前記第1および第2消音部材が積層されることで円筒形状を構成している。前記第1および第2消音部材は同一の外径を有する。前記第1および第2消音部材は同一の厚みを有する。前記第1および第2消音部材の外周面全面が大気に露出している。前記第2消音部材を固定する板状の押え部材328をさらに備える。
図22は、本発明の一実施形態のガス消火装置の噴射ヘッド400と消音手段402を含む一部の構成を示す斜視図である。本実施形態のガス消火装置は、建物の消火対象区画内の壁に設けられ、高圧力の消火ガスを消火対象区画内の空間に向けて噴射する噴射ヘッド400と、噴射ヘッド400が接続され、噴射ヘッド400に高圧力の消火ガスを導く導管14と、導管14に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、噴射ヘッド400に形成されるノズル孔404(後述の図24参照)から噴射される消火ガスの噴射に起因して発生する音響を減衰させる消音手段402とを含む。
消火ガスは、N2ガス、CO2ガスおよびハロゲン化物ガスなどの不燃ガスによって実現される。このような消火ガスを、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても充分に拡散させ、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができる。
噴射ヘッド400と消音手段402とによって、消火ガス噴射部411を構成する。このような消火ガス噴射部411では、消火ガスは、消火ガス供給源15から導管14を経て噴射ヘッド400に供給される。導管14は、消火ガス供給源15に接続される主管23と、主管23に介在される分岐管18と、分岐管18に接続される枝管19とを含み、このような導管14を経て消火ガス供給源15からの高圧力の消火ガスが前記噴射ヘッド400に導かれる。導管14は、基台20およびブラケット21にUボルトなどの締結具22によって締結され、振動および変位が抑制された状態で建物の躯体に設置される。
図23は、噴射ヘッド400と消音手段402とを示す斜視図であり、図24は噴射ヘッド400と消音手段402とを示す断面図である。消音機能を有する噴射ヘッド400は、消火ガスを使用するガス系消火設備において消火対象区画に消火ガスを放出するために壁に設置され、噴射ヘッド本体401に消音手段402が取付け補助部材403によって取付けられて構成される。
取付け補助部材403は、基部405と、その基部405に連なる外向きフランジ406とを有する。基部405は、ねじ407によって噴射ヘッド本体401に着脱交換可能に取付けられる。取付け補助部材403には、チョークであるノズル孔404が形成されたノズル部材409がねじ410によって着脱交換可能に取付けられる。ノズル孔404は、消火ガスの流量を希望する値に制限する。
消音手段402は、気体が流通可能な多孔性材料からなる消音材408で構成する。消音材408は、複数枚の各部材が、薄い円板状および薄い円環状の形状を有し、これらの部材が積層されてなる。積層された消音材408の全体の形状は、ほぼ円柱状である。このような消音材408は、ノズル孔404の口径および長さ、該ノズル孔404の数、形成位置などの消火ガスの流動条件に応じて、空隙が粗密の異なる多孔性材料を適宜選択して用いることができる。
ノズル部材409において、ノズル孔404の出口部端面と、消音材408との間には、ノズル孔404からの微細な錆などの異物を留めて収納する間隙415を形成し、これによって消音材408の異物による目詰りを防ぐ。
消音材408の一方側(図24および図25の左方)の端面420は、案内部材421の環状の取付け部422に接して、取付け補助部材403の外向きフランジ406に臨んで配設される。案内部材421は、この取付け部422と、取付け部422に連なり消火ガスを案内する短筒状の案内部423と、後述の拡開部443とを有する。
消音材408の他方側(図24および図25の右方)の端面425は、ボルトなどの取付け部材427を介して取付け補助部材403の外向きフランジ406に消音材408を固定するリング状の押え部材428に接する部分を除いて、大気に開放される。取付け部材427の軸部は、押え部材428、消音材408、案内部材421の取付け部422を挿通して、取付け補助部材403の外向きフランジ406に螺着される。
消音材408の周面424は、案内部材421の案内部423の短筒状、詳しくは円筒状の内周面に密着して囲まれる。案内部423は、拡開部443が押え部材428よりも消火ガスの噴射方向下流側で、その下流側に遠ざかるにつれて半径方向外方に拡大するように、すなわち略円錐台状に形成される。
案内部材421は拡開部443を有するので、消音材408の軸線方向他方側の端面から放出された消火ガスが放出直後に、噴射ヘッド400の軸線L403に関して半径方向外方へ拡散してしまうことが抑制され、遠方まで消火ガスを到達させて、消火対象区間内に所要量の消火ガスを放出することができる。
案内部材421の取付け部422は、図25に示されるように、取付け補助部材403の外向きフランジ406に環状に凹んで形成された取付け座431に嵌り、その取付け座431よりも半径方向内方(図25の下方)の端面432から間隙△L4だけ突出する。
消音材408の一方側(図24および図25の左方)の端面420は、案内部材421の環状の取付け部422に接して、取付け補助部材403の外向きフランジ406に臨んで配設され、消音材408の一方側(図24および図25の左方)の端面420は、取付け補助部材403の外向きフランジ406の端面432と間隙△L4を有し、したがって噴射ヘッド本体401に接して配設される構成ではない。
取付け補助部材403は、基部405と、その基部405に連なる外向きフランジ406とを有する。基部405は、ねじ407によって噴射ヘッド本体401に着脱可能に取付けられる。
消音手段402は、気体が流通可能な多孔性材料からなる消音材408で構成する。消音材408は、複数枚の各部材が、薄い円板状および薄い円環状の形状を有し、これらの部材が積層されてなる。積層された消音材408の全体の形状は、ほぼ円柱状である。
取付け補助部材403には、ノズル部材409がねじ410によって取付けられる。ノズル部材409は、チョークであるノズル孔404を有する。
図25は、案内部材421が取付け補助部材403と消音材408とによって挟まれた状態を示す一部の拡大断面図である。消音材408の一方側(図24および図25の左方)の端面420は、案内部材421の環状の取付け部422に接して、取付け補助部材403の外向きフランジ406に臨んで配設される。案内部材421は、この取付け部422と、取付け部422に連なり消火ガスを案内する短筒状の案内部423とを有する。
消音材408の周面424および他方側(図23および図24の右方)の端面425は、取付け部材427を介して取付け補助部材403の外向きフランジ406に消音材408を固定する押え部材428に接する部分を除いて、大気に開放される。取付け部材427の軸部は、押え部材428、消音材408、案内部材421の取付け部422を挿通して、取付け補助部材403の外向きフランジ406に螺着される。
案内部材421の取付け部422は、図25に示されるように、取付け補助部材403の外向きフランジ406に環状に凹んで形成された取付け座431に嵌り、その取付け座431よりも半径方向内方(図25の下方)の端面432から間隙△L1だけ軸線方向に突出する。
再び図24を参照して、噴射ヘッド400において、噴射ヘッド本体401は、略円筒状の基部437と、基部437の外周に連なる掛合部438とを有する。導管14の端部14aには、噴射ヘッド400の掛合部438が、テーパねじである第1ねじ412によって、着脱交換可能に接続される。
取付け補助部材403は、噴射ヘッド本体401の基部437に着脱交換可能に設けられる。ノズル孔404の口径が異なる各種の噴射ヘッド本体401を、導管14の長さなどに依存して、個別的に選択使用される。その理由を、述べる。
ガス消火装置は、その本来の役目である消火のために必要な大きな流量(たとえば2万〜10万リットル/分)を確保しながら、消火対象区画内の空間に消火ガスを速やかに充
満させるように高い流速(たとえば100m/s)を確保して、消火ガスを放出することができるように構成されなければならない。そのために消防法施行規則は、ガス消火装置における噴射ヘッド400のノズル孔404からの消火ガスの放射圧力を1.9MPa以上と規定しており、実務上は、2〜3MPa(≒20〜30kgf/cm2、なお、さらに高い6MPa≒60kgf/cm2くらいまで)の高い放射圧力で実施される。
したがって噴射ヘッド400のノズル孔404の口径の値は、ノズル孔404から噴射される消火ガスが、前述の大きな流量、高い流速、高い放射圧力を達成するように、消火ガス供給源15から噴射ヘッド400の設置場所までの導管14の長さなど、したがって管路抵抗に依存して、設定されなければならない。
そのためノズル孔404の口径は、導管14の長さなどによってそれぞれ異なり、したがって噴射ヘッド400の各設置場所毎に、ノズル孔404の口径が異なる各種の噴射ヘッド400を、個別的に選択して使用しなければならない。このようにガス消火装置において、ノズル孔404の口径が異なる各種の噴射ヘッド400は、不可欠である。
消音手段402は、複数枚の消音材408と、押え部材428と取付け部材427とを有する。消音材408は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、たとえば微細な金属粉または微細な金属線条体などが焼結された多孔質金属から成り、高圧力の消火ガスを円滑で緩慢な減圧膨張によって流量を低下させずに効果的に消音効果を実現することができる、また消音材408として、たとえばワイヤメッシュを複数層、積層して構成されてもよく、合成樹脂製繊維から成る板状の成形物または多孔性部材であってもよい。
消音材408は、たとえば円板などの偏平な板状に形成され、複数枚がそれぞれ積層される。積層された消音材408の全体の形状のそれぞれは、たとえば円柱状である。その積層された消音材408の周面424は、案内部材421の案内部423の円筒状内周面に密着して囲まれており、したがって大気に開放されていない。
押え部材428は、積層された消音材408の他方側(図24の右方)の端面425を押える。押え部材428は、偏平な板状であり、消音材408の周面424に沿って延びる周面426を有する。
取付け部材427は、この実施形態では、ねじ部材としてのボルトであり、同一の参照符を用いて示す。取付け部材427は、前記軸線L403まわりに等間隔に複数(たとえば6)配置される。取付け部材427の軸部は、押え部材428と消音材408とにそれぞれ形成されたボルト挿通孔を挿通し、取付け部材427の頭部は、押え部材428の消音材408とは反対側(図24の右方)に係止する。
取付け部材427の軸部に形成されたおねじは、取付け補助部材403の外向きフランジ406に開孔して刻設されためねじに取外し可能に螺着される。これによって、取付け部材427は、積層された消音材408を、取付け補助部材403と押え部材428との間、したがって噴射ヘッド本体401と押え部材428との間で挟持して固定する。
取付け部材427の各軸線は、導管14の端部14aの軸線L403と平行である。導管14の端部14aと、噴射ヘッド400と、消音手段402との各軸線は、一直線上にある。噴射ヘッド400に消音手段402を取付けた状態で、導管14の端部14aに、噴射ヘッド本体401の基部437を、第1ねじ412によって接続する作業性が、良好である。
導管14の端部14aの軸線L403は、噴射ヘッド本体401を含む噴射ヘッド400と、消音材408と、押え部材428との各軸線は、一直線上にある。そのため、導管14の端部14aと噴射ヘッド本体401の基部437との第1ねじ412による接続、および噴射ヘッド本体401の基部437と取付け補助部材403との第2ねじ407による接続の作業性が、良好である。この接続作業性が良好であることは、多くの場合、噴射ヘッド400と消音手段402とが、建物内の消火対象区画内で、人の移動などに障害にならない個所である人よりも高い天井などの個所に接続されることに鑑み、重要である。
消火時に、ノズル孔404を通って噴射された高圧力の消火ガスは、消音材408が有する微細な空隙を経て、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張し、音響の発生が低減抑制され、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。消音材408の周面424からの消火ガスは、天井付近で水平に放射状に噴射されて消火対象区画内の空間の全域に均一に、かつ速やかに拡散することができる。したがって消火対象区画の迅速な消火を達成することができる。
この消音材408によって、構成を小形化しつつ、大きな音響低減効果を達成することができる。
前述の実施形態では、噴射ヘッド400に比べて複雑な構成を有する消音手段402は、取付け部材427によって、ノズル孔404の口径が異なる各種の噴射ヘッド400に着脱交換可能であるので、消音材408を、各種の噴射ヘッド400に共通に使用することができるようになる。この共用化によって、消音材408の大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また、消火対象区画における消音の必要性の有無に依存して、個別的な選択使用が容易に可能であり、消音の必要性のない消火対象区画では、取り外しておくことによって、ガス消火設備の簡略化を図ることができる。さらに消音の必要性がなくなった消火対象区画から取り外した消音手段402を、消音すべき他の消火対象区画に、取り付けて、再使用することもでき、これによって経済性が良好であり、省エネルギ化が図られる。
本発明の他の実施形態では、噴射ヘッド400と消音手段402とが、一体的に、すなわち取外しができないように、構成されてもよい。この実施形態では、噴射ヘッド本体401の基部437が導管14の端部14aに、第1ねじ412によって着脱交換可能に設けられ、ノズル孔404の口径が異なる各種の噴射ヘッド400を、個別的に選択して使用するようにしてもよい。
また、消音手段402と噴射ヘッド400とを第2ねじ407および取付け部材427によって、予め接続して組立体としておき、その後、この組立体における噴射ヘッド本体401の基部437を、導管14の端部14aに、第1ねじ412によって接続する作業性も良好である。
さらに、導管14の端部14aに第1ねじ412によって噴射ヘッド本体401の基部437が接続されている既存の消火対象区画を、消音すべき消火対象区画にするために、噴射ヘッド本体401に、消音手段402を、取付け部材427によって接続するとき、その接続の作業性も良好である。
消音材408のノズル孔404に臨む側の端面と、ノズル部材409の消音材408に対向する側の端面との間に、間隙415が存在する。消火ガスがノズル孔404から噴射されるとき、微細な異物が、前記間隙415に貯留して収納されるので、異物による消音材408の目詰りを防ぐことができるとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および放出時の流量の低下を防ぐことができる。
異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。また、噴射ヘッド400内部での減圧および半径方向外方への消火ガスの放出によって、消火ガス噴射時に噴射ヘッド400から導管14に背後方向(図24の左方)へ作用する噴射反力を、図31に示す従来技術の1/9程度の低減することができる。
本発明の他の実施形態では、前述の実施形態における消音材408のノズル孔404側に配設される端面と、噴射ヘッド本体401と取付け補助部材403とが一体化された噴射ヘッド700の消音材408に対向して配設された端面との間を離間させても、消音効果が低下しないことが、本件発明者によって確認された。実験とその結果とを、図26と図27を参照して、以下に述べる。
図26は、本件発明者によって実験が行われた噴射ヘッド700と消音手段701,701aとを示す断面図であり、図27は本件発明者が、図26の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。図26(1)では、導管714からのN2ガスである消火ガスは、噴射ヘッド700のノズル孔704から噴射される。
噴射ヘッド700に取付けられたノズル部材703の消火ガスの放出方向下流側(図26の右側)には、3枚の消音材706が積層されて配設される。消火ガスは、ノズル部材703のノズル孔704を通過して、消音材706へ流入し、消音材706の軸線方向他方の端面709から押え部材728の放出孔752から消火対象区画内の空間に放出される。消音材706は、ノズル部材703のノズル孔704の出口端の平坦な端面に密着して当接する。
導管714から噴射ヘッド700へ供給される消火ガスの供給圧力は、例えば、3MPa〜7MPaであり、消火ガスの放出流量は約55m3/minであり、ノズル孔704から放出される消火ガスの流速は約60〜100m/secである。この実験で用いた消音材706の空隙の空隙率は、約97%であり、直径は約130mmであり、厚みは10mm/枚である。
図26(2)では、消音手段701aの消音材706は、ノズル部材703のノズル孔704の出口端の平坦な端面から軸線方向に約1mmの間隙753をあけて配置され、そのほかの構成は、図26(1)と同様である。
図27は、本件発明者が、図26の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。ライン754は、図26(1)のように消音材706をノズル孔704の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成による実験結果であり、ライン755は、図26(2)のように消音材705をノズル孔704の出口端の平坦な端面から間隙753をあけて配置した構成による実験結果である。
これらの実験結果から、消音材706をノズル孔704の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成(図26(1))によれば、間隙753をあけて配置した構成(図26(2))に比べて、消音効果の差がほとんどないことが確認された。したがって、消音材706のノズル孔704に対向する端面と、噴射ヘッド700の消音材706に対向する端面との間、間隙753をあけても、消音効果が低下しないことが確認された。
このような間隙753を、消音材706のノズル孔704に対向する端面と噴射ヘッド700の消音材706に対向する端面との間に設けることによって、消音効果を低下させずに、微細な異物が、前記間隙753内に貯留して収納され、消火ガスがノズル孔704から噴射されるとき、異物による消音材706の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生を防ぐことができる。異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管14がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。
したがって、図22〜図26の実施形態のように、消音材408のノズル孔404に臨む側の端面と、噴射ヘッド本体401の消音材408に対向する側の端面との間に間隙415を設けるに際して、軸線L403の方向に間隔ΔL2を上記消音効果が低下しない範囲、たとえば0.1mm〜1.5mmとすることによって、消音効果を実質上低下させずに、異物による消音材408の目詰まりを防止することができる。
図28は、本件発明者によって実験が行われた噴射ヘッド500と消音手段502,502aとを示す断面図である。図28(1)では、導管514からのN2ガスである消火ガスは、噴射ヘッド500のノズル孔504から噴射される。
噴射ヘッド500に取付けられた消音手段502の直円筒状のハウジング551内には、11枚の消音材508が積層されて収納される。消音材508を通過した消火ガスは、ハウジング551の放出孔552から消火対象区画内の空間に放出される。消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接する。
導管514から噴射ヘッド500へ供給される消火ガスの供給圧力は、例えば、3MPa〜7MPaであり、消火ガスの放出流量は約55m3/minであり、ノズル孔504から放出される消火ガスの流速は約60〜100m/secである。この実験で用いた消音材508の空隙の空隙率は、約97%であり、直径は約130mmであり、厚みは10mm/枚である。
図28(2)では、消音手段502aの消音材508は、噴射ヘッド500のノズル孔504の出口端の平坦な端面から約1mmの間隙553をあけて配置され、そのほかの構成は、図28(1)と同様である。
図29は、本件発明者が、図28の構成によって消火ガスを放出したとき得られた音圧レベルの時間経過を示す図である。ライン554は、図28(1)のように、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成による実験結果であり、ライン555は、図28(2)のように、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面から間隙553をあけて配置した構成による実験結果である。
これらの実験結果から、消音材508をノズル孔504の出口端の平坦な端面に密着して当接した構成(図28(1))によれば、間隙553をあけて配置した構成(図28(2))に比べて、約16dBもの大きな消音効果が得られたことが確認された。したがって、消音材508のノズル孔504に対向する端面と、噴射ヘッド500の消音材508に対向する端面とを、密着して当接した実施形態によれば、消音効果が向上されることが確認された。
図30は、本発明の他の実施形態のガス消火装置を示す断面図である。このガス消火装置の消音手段600では、前述の案内部材421が省略される。図30を参照して、案内部材421の働きを説明する。
噴射ヘッド本体601の平板状のノズル部608の全面に均一に分布して形成された複数の各ノズル孔609からの消火ガスは、各ノズル孔609の相互に平行な軸線に沿って噴射され、ノズル孔609の下流に配置された消音材613および消音材610が有する微細な空隙に、徐々にすなわち円滑、スムーズに、通過して減圧膨張してゆく。噴射ヘッド本体601と消音材613との各軸線は、一直線上にある。消音材613の微細な空隙は、それらの中を通過する消火ガスに圧力損失を与える。
噴射ヘッド本体601の各ノズル孔609から消音材613中へ噴射された消火ガスが辿る経路は、簡略化のために直線であると仮定すると、全体の形状がほぼ直円柱状である消音材613の最下流の端面までの経路長は、図30において参照符L601で示される。
噴射ヘッド本体601の側部から消音材613の周面614までの経路長は、図30において参照符L602で示される。ノズル孔609から噴射される消火ガスの流量を大きくするために、噴射ヘッド本体601の外径を消音材613の軸線方向の長さに比べて比較的大きく構成すると、L601>L602である。
消火ガスに作用する圧力損失は、これらの経路長L601、L602に比例し、したがって消音材613の中における圧力損失の分布は、等しい圧力損失を生じる位置を連ねた等圧線603のとおりである。圧力損失は、消音材613の軸線上の領域で最も大きく、その軸線から遠ざかった周辺の領域になるにつれて小さくなる。
ノズル孔609から噴射される消火ガスは、圧力損失が小さい領域に流過しやすいので、消音材613の中で消火ガスは、噴射ヘッド本体601の軸線方向へ仮想線の参照符604で示されるように、また側方へ参照符605で示されるように進行し、さらに、背後の方向へも参照符606で示されるように進行する。参照符604、605、606の長さは、消火ガスの流量に対応して示され、前記側方および背後の方向へ比較的大流量の消火ガスが流れる。
消火対象区画内に消火ガスを迅速に満たすには、複数の消音材610のうちで壁面付近(図30の左側)に設置された消音材から噴射ヘッド本体601の軸線方向に沿って仮想線の参照符604で示される方向に、また側方へ参照符605で示される方向に、できるだけ大流量で噴射し、背後の方向へ参照符606で示されるように進行する消火ガスの流量を抑制しなければならない。
本発明の前述の図22〜図29に関連して前述した各実施形態では、案内部材421は、消音材613から噴射される消火ガスのうち、図30の背後の方向606へ進行する消火ガスを阻止し、噴射ヘッドの噴射ヘッド本体601の軸線方向604および側方605へ進行させる。これによって、たとえば消火ガス到達距離が15m以上あるような大規模な消火対象区画においても、消火ガスを充分に拡散させて、消火対象区画内の空間を所定の消火剤濃度に均一に短時間で到達させて、消火することができるようになる。
本発明のガス消火装置は、火災発生時に建物の消火対象区画内の空間に消火ガスを消火剤として放出することによって、大規模な消火対象区画であっても消火ガスを充分に拡散させて消火するために、広範囲に実施することができる。
高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射する消火ガス噴射装置であって、前記消火ガス噴射装置は、噴射ヘッド400と、前記噴射ヘッド400からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段402を有しており、前記消音手段402は、前記噴射ヘッド400側に設けられた第1消音部材としての消音材408と、前記第1消音部材の下流側に設けられた第2消音部材としての消音材408とを有しており、前記第1および第2消音部材の各々は偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料からなる。前記第1および第2消音部材が積層されることで円筒形状を構成している。前記第1および第2消音部材は同一の外径を有する。前記第1および第2消音部材は同一の厚みを有する。前記第1および第2消音部材の外周面全面が大気に露出している。前記第2消音部材を固定する板状の押え部材428をさらに備える。
(付記1発明)
付記1発明は、
(a)高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔104を有する噴射ヘッド100と、
(b)噴射ヘッド100が接続される端部14aを有し、噴射ヘッド100に高圧力の消火ガスを導く導管14と、
(c)導管14に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、
(d)噴射ヘッド100に設けられ、ノズル孔104からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段102とを含むガス消火装置であって、
(e)噴射ヘッド100は、
(e1)導管14の前記端部14aに接続される噴射ヘッド本体101と、
(e2)噴射ヘッド本体101に着脱可能に取付けられる取付け補助部材103とを有し、
(f)消音手段102は、
(f1)整流孔112を有し、取付け補助部材103に噴射ヘッド本体101のノズル孔104を覆うように着脱自在に設けられる整流部材109と、
(f2)偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料から成り、整流部材109と噴射ヘッド本体との間に、複数枚が積層されて配設される第1消音材113と、
(f3)偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料から成り、整流部材109に消火ガスの放出方向に複数枚が積層されて配設される第2消音材108とを有することを特徴とするガス消火装置である。
付記1発明に従えば、消火ガス供給源15から導管14に供給された高圧力の消火ガスは、噴射ヘッド100を介して建物内の空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッド100には消音手段102が設けられ、噴射ヘッド100のノズル孔104から高速度で噴射される消火ガスの噴射流に起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
消火ガスは、導管14から、噴射ヘッド100のノズル孔104、第1消音材113および整流部材109を経て、第2消音材108に流入し、第2消音材108が有する微細な空隙を通過して減圧膨張し、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。
小形の構成による大きな音響低減効果について、消火時に、ノズル孔104を通って噴射された高圧力の消火ガスは、第1消音材113が有する微細な空隙を通過することによって減圧膨張し、整流部材109の整流孔112を経て整流された後、第2消音材108へ流入してさらに減圧膨張し、こうして消火ガスの流量を低下させずに徐々に円滑に減圧膨張して音響の発生が効果的に抑制される。このように構成を小形化しつつ、大きな音響低減効果を達成することができる。
各複数枚の第1および第2消音材113,108は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する第1および第2消音材113,108を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
付記1発明は、第1消音材113のノズル孔104に対向する側の端面と、噴射ヘッド100の第1消音材113に対向する側の端面との間に、間隙115が存在することを特徴とする。
付記1発明に従えば、第1消音材113のノズル孔104に対向する側の端面と、噴射ヘッドの第1消音材113に対向する側の端面との間に間隙115が設けられるので、異物が間隙115に貯留して収納されるので、消火ガスがノズル孔104から噴射されるとき、異物による第1および第2消音材113,108の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および流量低下が防がれる。異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管14がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。
付記1発明は、積層された第2消音材108の周面124は、大気に開放されていることを特徴とする。
付記1発明に従えば、第2消音材108の周面124が大気に開放されているので、消火ガスの放出面積が多く、これによって消火ガスの流量の低下が抑制され、ガス放出のための流路断面積を大きくせずに所要の流量および流速を確保することが可能となり、構成がさらに小形化される。
(付記1発明の効果)
付記1発明によれば、噴射ヘッド100に消音手段102が設けられるので、火災発生時に噴射ヘッド100から高圧力の消火ガスが噴射されても、大きな噴射音が発生することを防止することができる。また、各複数枚の第1および第2消音材113,108は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する第1および第2消音材113,108を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また付記1発明によれば、第1消音材113のノズル孔104に対向する側の端面と、噴射ヘッド100の第2消音材108に対向する側の端面との間に間隙115が設けられるので、微細な異物が前記間隙115に貯留して収納され、消火ガスがノズル孔104から噴射されるとき、異物による第1および第2消音材113,108の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生が防がれるとともに、消火ガス噴射時における目詰りに起因する流量の低下を防止することができる。
また付記1発明によれば、第2消音材108の周面124は、大気に開放されるので、消火ガスの流量の低下が抑制され、ガス放出のための流路断面積を大きくせずに所要の流量および流速を確保し、消火ガスの噴射が、障害物などによって妨げられることはなく、したがって小形化された構成によって、大きな噴射音が発生することを防止することができる。
(付記2発明)
付記2発明は、
(a)高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔204を有する噴射ヘッド200と、
(b)噴射ヘッド200が接続される端部14aを有し、噴射ヘッド200に高圧力の消火ガスを導く導管14と、
(c)導管14に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、
(d)噴射ヘッド200に設けられ、ノズル孔204からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段202とを含むガス消火装置であって、
(e)噴射ヘッド200は、
(e1)導管14の前記端部14aに接続される噴射ヘッド本体201と、
(e2)ノズル部材234であって、
(e2−1)導管14の前記端部14aの軸線に沿って延び、噴射ヘッド本体201に軸線方向一端部が接続される筒部240と、
(e2−2)筒部240の軸線方向他端部に連なり、ノズル孔204が形成され、筒部240の軸線方向他端部を閉塞する端壁241とを有するノズル部材234とを備え、
(f)消音手段202は、
(f1)消音材208であって、偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料から成り、複数枚が積層され、その積層された消音材208の軸線方向一方側の端面220は、噴射ヘッド本体201に臨んで配設される消音材208と、
(f2)積層された消音材208の軸線方向他方側の端面225を押える押え部材228と、
(f3)消音材208を噴射ヘッド本体201と押え部材228との間で挟持して固定する取付け部材227とを有することを特徴とするガス消火装置である。
付記2発明に従えば、消火ガス供給源15から導管14に供給された高圧力の消火ガスは、噴射ヘッド200を介して建物内の空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッド200には消音手段202が設けられ、噴射ヘッド200のノズル孔204から高速度で噴射される消火ガスの噴射流に起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
消火ガスは、導管14から、噴射ヘッド200のノズル孔204から消音材208に流入し、消音材208が有する微細な空隙を通過して減圧膨張し、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。
小形の構成による大きな音響低減効果について、消火時に、ノズル孔204を通って噴射された高圧力の消火ガスは、消音材208が有する微細な空隙を通過することによって減圧膨張し、こうして消火ガスの流量を低下させずに徐々に円滑に減圧膨張して音響の発生が効果的に抑制される。このように構成を小形化しつつ、大きな音響低減効果を達成することができる。
複数枚の消音材208は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する消音材208を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
付記2発明は、消音材208のノズル孔204に対向する側の端面220と、噴射ヘッド本体201の消音材208に対向する側の端面232との間に、間隙215が存在することを特徴とする。
付記2発明に従えば、消音材208のノズル孔204に対向する側の端面と、噴射ヘッドの消音材208に対向する側の端面との間に間隙215が設けられるので、異物が間隙215に貯留して収納される、消火ガスがノズル孔204から噴射されるとき、異物による消音材208の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および流量低下が防がれる。異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管14がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。
付記2発明は、積層された消音材208の周面224は、大気に開放されていることを特徴とする。
付記2発明に従えば、消音材208の周面224が大気に開放されているので、消火ガスの放出面積が多く、これによって消火ガスの流量の低下が抑制され、ガス放出のための流路断面積を大きくせずに所要の流量および流速を確保することが可能となり、構成がさらに小形化される。
(付記2発明の効果)
付記2発明によれば、噴射ヘッド200に消音手段202が設けられるので、火災発生時に噴射ヘッド200から高圧力の消火ガスが噴射されても、大きな噴射音が発生することを防止することができる。また、複数枚の消音材208は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する消音材208を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また付記2発明によれば、消音材208のノズル孔204に対向する側の端面と、噴射ヘッドの消音材208に対向する側の端面との間に間隙215が設けられるので、微細な異物が前記間隙215に貯留して収納され、消火ガスがノズル孔204から噴射されるとき、異物による消音材208の目詰りを防ぎ、異物の目詰りによる騒音の発生が防がれるとともに、消火ガス噴射時における目詰りに起因する流量の低下を防止することができる。
また付記2発明によれば、消音材208の周面224は、大気に開放されるので、消火ガスの流量の低下が抑制され、ガス放出のための流路断面積を大きくせずに所要の流量および流速を確保し、消火ガスの噴射が、障害物などによって妨げられることはなく、したがって小形化された構成によって、大きな噴射音が発生することを防止することができる。
(付記3発明)
付記3発明は、
(a)高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔304を有する噴射ヘッド300と、
(b)噴射ヘッド300が接続される端部303を有し、噴射ヘッド300に高圧力の消火ガスを導く導管314と、
(c)導管314に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源315と、
(d)噴射ヘッド300に設けられ、ノズル孔304からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段302とを含むガス消火装置であって、
(e)噴射ヘッド300は、
(e1)噴射ヘッド本体301であって、
導管314の前記端部303に接続される基部337と、
基部337に連なる外向きフランジ338とを有する噴射ヘッド本体301と、
(e2)ノズル部材339であって、
(e2−1)導管314の前記端部303の軸線L303に沿って延びる筒部340であって、複数のノズル孔304が形成される周壁342と、周壁342の軸線方向一端部に連なり、噴射ヘッド本体301の基部337に接続される基端部306とを有する筒部340と、
(e2−2)周壁342の軸線方向他端部を閉塞する端壁341とを有するノズル部材339とを有し、
(f)消音手段302は、
(f1)消音材308であって、各消音材308は、偏平な板状に形成され、複数枚が積層され、気体が流通可能な多孔性材料から成り、筒部340が挿通する挿通孔310を有し、積層された消音材308の軸線方向一方側(図19の上方)の端面320は、噴射ヘッド本体301の外向きフランジ338側に配置され、積層された消音材308の周面324は、大気に開放される消音材308と、
(f2)積層された消音材308の他方側(図19の下方)の端面325を押える押え部材328と、
(f3)消音材308を外向きフランジ338と押え部材328との間で挟持して固定する取付け部材327とを有することを特徴とするガス消火装置である。
付記3発明に従えば、消火ガス供給源315から導管314に供給された高圧力の消火ガスは、噴射ヘッド300を介して建物内の空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッド300には消音手段302が設けられ、噴射ヘッド300のノズル孔304から高速度で噴射される消火ガスの噴射流に起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
消火ガスは、導管314から、噴射ヘッド300の筒部340に形成されるノズル孔304を経て、消音材308が有する微細な空隙を通過して減圧膨張し、建物内の消火対象区画内の空間に噴射される。
小形の構成による大きな音響低減効果について、消火時に、ノズル孔304を通って噴射された高圧力の消火ガスは、消音材308が有する微細な空隙を通過することによって、消音材308の微細な空隙で、徐々にすなわち円滑、スムーズに、減圧膨張して音響の発生が低減抑制される。このように構成を小形化しつつ、大きな音響低減効果を達成することができる。消音材308の周面324は、大気に開放されるので、構成がさらに小形化される。
複数枚の各消音材308は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する消音材308を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
付記3発明は、取付け部材327は、ボルトによって構成され、押え部材328と消音材308とを挿通し、外向きフランジ338に開孔して刻設されためねじに螺着されることを特徴とする。
付記3発明に従えば、取付け部材327であるボルトが、押え部材328と消音材308とを挿通して、外向きフランジ338のめねじに螺着されるので、積層される消音材308の枚数の変化調整のためには、ボルトの必要とする長さを変えるだけでよく、さらに消音材308の周面324のほぼ全面を大気に開放することが確実であるとともに、構成の簡略化を図ることができる。
付記3発明は、消音材308の挿通孔310の内周面と、ノズル部材339の筒部340の外周面との間に、間隙が存在することを特徴とする。
付記3発明に従えば、微細な異物が、前記隙間に貯留して収納されるので、消火ガスがノズル孔304から噴射されるとき、異物によるノズル孔304の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および流量低下を防ぐことができる。異物は、導管314内に存在し、たとえば導管314内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管314がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。
付記3発明は、消音材308の挿通孔310の内周面と、ノズル部材339の筒部340の外周面とは、密着することを特徴とする。
付記3発明に従えば、消音材308の挿通孔310の内周面と、ノズル部材339の筒部340に形成されたノズル孔304の出口端面とが密着することによって、消音効果が向上されることが、図20および図21に関連して後述するように、本件発明者によって確認された。
(付記3発明の効果)
付記3発明によれば、噴射ヘッド300に消音手段302が設けられるので、火災発生時に噴射ヘッド300のノズル部材339から高圧力の消火ガスが噴射されても、大きな噴射音が発生および流量の低下を防止することができる。
また付記3発明によれば、消音材308の周面324は、大気に開放されるので、消火ガスの噴射が、障害物などによって妨げられることはなく、したがって小形化された構成によって、大きな噴射音が発生することを防止することができる。
複数枚の各消音材308は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する消音材308を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
(付記4発明)
付記4発明は、
(a)高圧力の消火ガスを建物内の消火対象区画内の空間に向けて噴射するノズル孔404を有する噴射ヘッド400と、
(b)噴射ヘッド400が接続される端部14aを有し、噴射ヘッド400に高圧力の消火ガスを導く導管14と、
(c)導管14に高圧力の消火ガスを供給する消火ガス供給源15と、
(d)噴射ヘッド400に設けられ、ノズル孔404からの消火ガスの放出による音響を減衰させる消音手段402とを含むガス消火装置であって、
(e)噴射ヘッド400は、
(e1)導管14の前記端部14aに接続される噴射ヘッド本体401と、
(e2)ノズル部材409であって、
(e2−1)導管14の前記端部14aの軸線に沿って延び、噴射ヘッド本体401に軸線方向一端部が接続される筒部440と、
(e2−2)筒部440の軸線方向他端部に連なり、ノズル孔404が形成され、筒部440の軸線方向他端部を閉塞する端壁441とを有するノズル部材409とを備え、(f)消音手段402は、
(f1)消音材408であって、偏平な板状に形成され、気体が流通可能な多孔性材料から成り、複数枚が積層され、その積層された消音材408の軸線方向一方側の端面420は、噴射ヘッド本体401に臨んで配設される消音材408と、
(f2)積層された消音材408の軸線方向他方側の端面425を押える押え部材428と、
(f3)消音材408を噴射ヘッド本体401と押え部材428との間で挟持して固定する取付け部材427と、
(f4)噴射ヘッド本体401に臨んで配設される環状の取付け部422と、取付け部422に連なり、積層された消音材の周面424を覆う短筒状の案内部423とを有する案内部材421とを備えることを特徴とするガス消火装置である。
付記4発明に従えば、消火ガス供給源15から導管14に供給された高圧力の消火ガスは、噴射ヘッド400を介して建物内の空間に向けて噴射される。このような噴射ヘッド400には消音手段402が設けられ、噴射ヘッド400のノズル孔404から高速度で噴射される消火ガスの噴射流に起因する大きな噴射音の発生を防止することができる。
案内部材421は、取付け部422と、取付け部422に連なり消火ガスを案内する短筒状の案内部423とを有する。消音材408の他方側の端面425は、押え部材428に接する部分を除いて、大気に開放される。消音材408の周面424は、案内部材421の案内部423に囲まれる。したがって、消火ガスは、導管14から、噴射ヘッド400およびノズル部材409のノズル孔404を経て、消音材408に流入し、消音材408が有する微細な空隙を通過して減圧膨張し、消音材408の周面424からの放出が案内部423によって抑えられた状態で、建物内の消火対象区画内の空間に噴射され、大音響を生じることなしに消火ガスを遠方まで到達させることができる。
小形の構成による大きな音響低減効果について、消火時に、ノズル孔404を通って噴射された高圧力の消火ガスは、消音材408が有する微細な空隙を通過することによって減圧膨張し、こうして消火ガスの流量を低下させずに徐々に円滑に減圧膨張して音響の発生が効果的に抑制される。このように音響を減衰させるための大きな音響減衰空間を設ける必要がないので、構成を小形化しつつ、大きな音響低減効果を達成することができる。
複数枚の消音材408は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する消音材408を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
付記4発明は、消音材408のノズル孔404に対向する側の端面と、ノズル部材409の消音材408に対向する側の端面との間に、間隙415が存在することを特徴とする。
付記4発明に従えば、消音材408のノズル孔404に対向する側の端面と、ノズル部材409の消音材408に対向する側の端面との間に間隙415が設けられるので、異物が間隙415に貯留して収納され、消火ガスがノズル孔404から噴射されるとき、異物による消音材408の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生および流量低下が防がれる。異物は、導管14内に存在し、たとえば導管14内の溶接によるスケールおよびスラグ、導管14がメッキ管であるとき、そのメッキ管内のメッキ層の剥離片、錆、ならびに管継手において用いられるシール材の破片などである。
付記4発明は、案内部材421は、案内部423の軸線方向他端側に連なり、円錐台状に拡開する円環状の拡開部443をさらに含むことを特徴とする。
付記4発明に従えば、案内部材421は拡開部443を有するので、消音材408の軸線方向他方側の端面から放出された消火ガスが放出直後に、噴射ヘッドの軸線に関して半径方向外方へ拡散してしまうことが抑制され、遠方まで消火ガスを到達させて、消火対象区間内に所要量の消火ガスを放出することができる。
(付記4発明の効果)
付記4発明によれば、噴射ヘッド400に消音手段402が設けられるので、火災発生時に噴射ヘッド400から高圧力の消火ガスが噴射されても、大きな噴射音が発生することを防止することができる。また、複数枚の消音材408は、気体が流通可能な多孔性材料から成り、偏平な板状に形成され、積層されて組立てられる。したがって、消火対象区画内の空間に噴射される消火ガスの流量、圧力および消音を必要とする程度などに対応して、積層枚数を選ぶことによって、各種の噴射および消音の希望する特性を正確に調整して得ることが、容易である。また同一寸法形状を有する消音材408を製造すればよく、大量生産が容易であり、生産性が向上される。
また付記4発明によれば、消音材408のノズル孔404に対向する側の端面と、噴射ヘッド400の消音材408に対向する側の端面との間に間隙415が設けられるので、微細な異物が前記間隙415に貯留して収納され、消火ガスがノズル孔404から噴射されるとき、異物による消音材408の目詰りを防ぐとともに、異物の目詰りによる騒音の発生が防がれるとともに、消火ガス噴射時における目詰りに起因する流量の低下を防止することができる。
付記4発明によれば、案内部材421は拡開部443を有するので、消音材408の軸線方向他方側の端面から放出された消火ガスが放出直後に、噴射ヘッドの軸線に関して半径方向外方へ拡散してしまうことが抑制され、遠方まで消火ガスを到達させて、消火対象区間内に所要量の消火ガスを放出することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。