以下、本発明の演奏支援システムおよび制御方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の演奏支援システムの概略構成図である。図2は、図1に示す演奏支援システムのブロック図である。図3は、図1に示す演奏装置の一例を示す側面図である。図4は、図1に示す動作検出部を演奏者に装着した状態を示す図である。図5は、図1に示す動作検出部を演奏者に装着した状態で演奏者が楽器を演奏している状態を示す図である。図6は、図1に示す制御装置が行う制御動作(本発明の制御方法)を説明するためのフローチャートである。図7は、縦軸が、動作検出部が検出した角速度、横軸が時間で表されるグラフである。図8および図9は、縦軸がBPM、横軸が時間で表されるグラフである。図10〜図13は、再生部が再生する楽曲のBPMを示す曲線である。
図1に示す演奏支援システム1は、再生される楽曲とともに演奏者100が楽器200を演奏する際に、演奏者100の演奏を支援するシステムである。この演奏支援システム1は、再生部2と、演奏者100に装着される動作検出部3と、演奏者が行う演奏のテンポを表示する表示装置4と、これら各部の制御を行う制御装置5と、を備えている。
以下、演奏支援システム1の各部について詳細に説明する。
[再生部]
図1に示す再生部2は、後述する制御装置5のメモリー53(図2参照)に記憶されている楽曲データを楽曲として再生(出力)する機能を有する。
再生部2は、スピーカー21と、楽器300を演奏する演奏装置22と、を備えている。
スピーカー21は、制御装置5と電気的に接続されており、制御装置5から送信された楽曲データの電気信号を物理信号に変換して音を発して楽曲を再生するものである。スピーカー21が再生する楽曲データとしては、後に詳述するが、各種オーディオデータや、MIDIデータ(MIDI規格(Musical Instrument Digital Interface)(登録商標)の楽曲データ)等が挙げられる。
このスピーカー21と制御装置5との通信は、無線、有線の何れであってもよい。また、スピーカー21には、音量を調節する調節部が設けられていてもよい。
また、図示の構成では、再生部2が有するスピーカー21は1つであるが、これに限定されず、再生部2が有するスピーカー21は複数であってもよい。
図3に示す演奏装置22は、楽器300を演奏する演奏装置である。
楽器300としては、特に限定されず、例えば、後述するような、打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、管楽器等が挙げられるが、本実施形態では、一例として、打楽器であるドラム301(スネアドラム、バスドラム、ハイハット、ライドシンバル、クラッシュシンバル)として説明する。
なお、本明細書中では、楽器とは、自身が音を発するものや、自身が発した音を増幅させてスピーカー等から出力するものや、自身は音を出さないが電気信号が入力されることによってスピーカー等から出力するものを含む。
演奏装置22は、ドラム301の各部(スネアドラム、バスドラム、ハイハット、ライドシンバル、クラッシュシンバル)にそれぞれ設けられた打撃部221と、打撃部221を駆動する駆動部222とを有している。
各打撃部221および各駆動部222は、設置位置および姿勢が異なること以外は略同様の構成であるため、以下では、スネアドラム(以下、スネアドラム302と言う)に設置された打撃部221および駆動部222について代表的に説明する。
打撃部221は、スティック221aと、スティック221aの基端部(グリップ)を回動可能に支持する回動支持部221bと、スティック221aの長手方向の途中に連結されたバネ221cと、ストッパー221dとを有する。
スティック221aは、スネアヘッドと衝突することによって音を鳴らすことができるものであれば特に限定されず、例えば、木製、金属製、樹脂製のものや、いわゆるブラシスティック等が挙げられる。また、ドラム301の部位(スネアドラム、バスドラム、ハイハット、ライドシンバル、クラッシュシンバル)に応じて先端部(チップ)に例えばスポンジ体等を装着してもよい。
回動支持部221bは、スティック221aを回動軸221e回りに回動可能に支持する。この回動支持部221bは、ヘッド303(打撃面)よりも上方(離間する側)に設置されている。また、回動軸221eは、スネアドラム302のヘッド303と略平行となっている。
この回動支持部221bによって、スティック221aは、スネアドラム302のヘッド303と当接(打撃)する状態と、離間した状態とをとり得る。なお、スネアドラム302のヘッド303と当接(打撃)する状態では、スティック221aの先端部(チップ)がヘッド303と当接するとともに、スティック221aの長手方向の途中(ショルダー)がリム304と当接するのが好ましい。これにより、鮮明な打撃音を得ることができる。
バネ221cは、スティック221aの長手方向の途中に連結され、スティック221aがスネアドラム302から離間する方向に付勢するものである。これにより、スティック221aに外力が付与していない自然状態では、スティック221aは、スネアドラム302から離間した状態となる。
ストッパー221dは、スティック221aの移動限界を規制するものである。これにより、スティック221aの位置が不本意にずれたりするのを防止することができ、安定した打撃音を得ることができる。
駆動部222は、ロッド222aを有するソレノイドで構成されている。ロッド222aは、通電により駆動する駆動源(図示せず)によって、出没自在に構成されており、スティック221aのグリップを打撃する状態と、スティック221aから離間した状態とをとり得る。
ロッド222aがスティック221aを打撃(押圧)することよって、図3中二点鎖線で示すように、スティック221aがバネ221cの付勢力に抗して回動し、スティック221aの先端部(チップ)がヘッド303を打撃するとともにスティック221aの長手方向の途中(ショルダー)がリム304と当接する。これにより、スネアドラム302から打撃音を生じさせることができる。
一方、ロッド222aが退避してスティック221aから離間した状態では、スティック221aは、バネ221cの付勢力によってスネアドラム302から離間した状態となる。
ロッド222aが上記出没を繰り返すことによって、スネアドラム302を演奏することができる。
このような駆動部222は、制御装置5と電気的に接続されており、その作動が制御される。なお、駆動部222と制御装置5との通信は、無線、有線の何れであってもよい。
以上、再生部2について説明した。特に、再生部2が、楽器300を演奏する演奏装置22を有することにより、例えば、スピーカー等では再現できない楽器の倍音等の臨場感を演出することができる。
なお、本実施形態では、再生部2は、スピーカー21と演奏装置22とを有する構成である場合について説明したが、これらのうちのいずれか一方のみを有する構成であってもよい。
また、再生部2は、例えば、イヤホンやヘッドホン等、演奏者100が装着する機器であってもよい。これにより、例えば、演奏者100が自宅で楽器200を練習する際、音量を気にせず、再生部2との合奏を楽しむことができる。なお、この構成の場合、イヤホンやヘッドホンが接続されるジャックは、制御装置5が収納された筐体(図示せず)や、スピーカー21に設けられた構成とすることができる。
また、以下では、スピーカー21が再生する楽曲と、演奏装置22が演奏する楽曲とを合わせて、単に「再生部2による楽曲」とも言う。
[動作検出部]
図4および図5に示す動作検出部3は、楽器200を演奏する演奏者100の動作を検出する機能を有する。
楽器200としては、特に限定されず、例えば、打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、管楽器等が挙げられるが、本実施形態では、一例として、打楽器であるコンガ201として説明する。
なお、上記打楽器としては、上記ドラム、電子ドラム、和太鼓、カホン、ジャンベ、タンバリン、トライアングル、カスタネット、ウッドブロック、カウベル、拍子木、クラベス、木魚、ボンゴ、ティンパニ、コンサートチャイム、ウインドチャイム、カバサ、スレイベル、ティンパレス、アゴゴ等が挙げられる。
上記弦楽器としては、アコースティックギター、エレキギター、アコースティックベース、エレキベース、ハープ、マンドリン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス等が挙げられる。
上記鍵盤楽器としては、ピアノ、ホンキートンクピアノ、エレクトリックピアノ、キーボード、チェンバロ、チェレスタ、オルガン、パイプオルガン、リードオルガン、エレクトーン、鍵盤ハーモニカ、アコーディオン、シンセサイザー等が挙げられる。
上記管楽器としては、フルート、クラリネット、オーボエ、サクスフォーン、ファゴット、笙、バグパイプ等の木管楽器や、トランペット、トンロンボーン、ホルン、ユーフォニアム、チューバ、ホイッスル、サンバホイッスル等の金管楽器等が挙げられる。
これらの楽器の中でも、例えば、打楽器等、演奏の動作が大きいものや、演奏時に楽器に対する接触(インパクト)の瞬間の反力が大きいものが好ましい。これにより、動作検出部3による動作を明確に検出することができ、演奏者100の動作をより顕著に検出することができる。
動作検出部3は、本実施形態では、角速度を検出する角速度センサー31で構成されている。角速度センサー31は、筐体311と、筐体311に内蔵されたセンサー素子312と、制御装置5と通信を行う通信部313とを有する(図2参照)。
筐体311は、演奏者100の手首101にリストバンド102によって装着されている。なお、図示の構成に限定されず、指、頭部、腹部、足等、任意の部位に装着してもよい。また、動作検出部3は、演奏者100の任意の部位に複数装着されていてもよい。
センサー素子312は、静電容量式、歪みゲージ式、圧電式、渦電流式、電磁誘導式、光式のいずれのタイプのものであってもよい。センサー素子312が検出した角速度の情報は、電気信号に変換されて通信部313によって制御装置5に送信される。通信部313と制御装置5との通信は、無線、有線の何れであってもよい。
ここで、図4および図5には、互いに交わる(直交する)x軸、y軸、z軸を図示している。x軸は、水平方向に沿った軸であり、かつ、演奏者100の左右方向に沿った軸である。y軸は、水平方向に沿った軸であり、かつ、前後方向に沿った軸である。z軸は、鉛直方向に沿った軸である。
図5に示すように、演奏者100がコンガ201を演奏する際、すなわち、コンガ201のヘッド202を叩く際、手を回動させる運動を行う。この運動の際、手および動作検出部3は、x軸回りに回動する。このため、演奏者100が演奏を行っているとき、x軸回りの角速度が顕著に変化する(図7参照)。よって、演奏者100の動作をより確実に検出することができる。
なお、演奏者100の動作をより顕著に検出するための軸は、楽器の種類に応じて、異なっている。例えば、ギターを演奏する場合には、演奏者100のピックを把持する方の手は、y軸回りに回転する。このため、y軸回りの角速度の変化が顕著になる。
また、楽器の種類に応じて角速度センサーに代えて、加速度センサーを用いてもよい。例えば、演奏者100がヴァイオリンを演奏する場合、弓を把持する方の手は、略x軸方向に沿って往復運動を行う。このため、この場合は、加速度センサーを用いた場合、x軸方向の加速度の変化が顕著になり、演奏者100の動作をより確実に検出することができる。
このように、本実施形態では、演奏者100がコンガ201を演奏するため、角速度センサーが内蔵されているが、これに限定されず、楽器の種類に応じて、加速度センサー、角加速度センサー、磁気センサー、感圧センサー、変位センサー等を用いてもよい。また、これら各センサーのうちの複数が筐体311に内蔵されたものを用いてもよい。
また、本実施形態では、演奏者100が演奏を行っている間は、動作検出部3は、連続して作動している。
[表示装置]
図1に示す表示装置4は、表示画面41と、操作ボタン42と、通信部43とを有している。
表示画面41は、例えば、液晶画面、有機EL画面等で構成される。この表示画面41には、動作検出部3が検出した演奏者100の演奏のテンポが表示される。本実施形態では、BPM(Beats Per Minute)が表示される。この数値は、1分間に四分音符が何回現れるかを示す値であり、例えば、120BPMの場合、表示画面41には、「120」という数値が表示される。このBPMの算出方法は、後に詳述する。
また、表示画面41には、リアルタイム(例えば、1小節ごと)で演奏のBPMが表示される。従って、120BPMで演奏していて、演奏がもたついた場合、例えば、「110」という数字に切り替わる。
このような表示装置4によれば、演奏者100が、自身が演奏しているテンポの絶対的数値を知ることができる。さらに、相対的に早くなったか遅くなったかも把握することができ、表示画面41を見て修正することができる。
また、操作ボタン42は、演奏者100が押圧操作すると、その情報を通信部43が電気信号に変換して制御装置5に送信する。これにより、後述するように制御装置5が再生部2を駆動して、再生部2が楽曲を再生する。よって、演奏者100が、再生部2が再生した楽曲に合わせて演奏を開始することができる。
なお、操作ボタン42は、メカニカルスイッチや、表示画面41上に設けられた、いわゆるタッチパネル式であってもよい。
また、表示装置4は、例えば、ギターやベース等のチューニングを行う機能を有していてもよい。また、メトロノーム機能を有していてもよい。これにより、演奏者100は、表示装置4を参照しつつ、任意のテンポで演奏を行うことができる。メトロノーム機能としては、音を発するもの以外に、光、指示棒の動きなどでテンポを参照できるものであってもよい。
また、表示画面41には、BPMの大小を示すインジケーターが表示されていてもよい。このインジケーターには、BPMの基準値が表示され、この基準値に対してゲージが増減する構成であるのが好ましい。これにより、演奏者100のBPMが速いか遅いかが一目で分かる。また、正確な演奏を可能とするため、基準値となるBPMに対して、演奏者100のBPMが、高い頻度、低い頻度、同じ頻度等を、回数や百分率などで表示するよう構成してもよく、標準偏差を表示するよう構成してもよい。
[制御装置]
図2に示すように、制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)51と、I/Oインターフェース(受信部)52と、メモリー(記憶部)53とを有している。
CPU(制御部)51は、メモリー53に記憶された複数のモジュールや、各種プログラム等を実行する。複数のモジュールは、論理ゲート、半導体デバイス、集積回路または他のどのような個別部品を含むハードウエア回路における内蔵コンポーネントを含んでいてもよい。また、モジュールは、ソフトウェアプログラムの一部であってもよい。ソフトウェアプログラムとしてのモジュールの実行は、CPU51または他のどのようなハードウェアエンティティによって実行されるべき論理演算命令のセットを含んでいてもよい。また、モジュールは、インターフェースを用いて、命令やプログラムのセットで具現化されていてもよい。
I/Oインターフェース52は、他の通信機器(再生部2、動作検出部3、表示装置4等)と通信を行うためのものである。I/Oインターフェース52としては、特に限定されないが、音声、アナログ、デジタル、モノラル、RCA、ステレオ、IEEE−1394、シリアルバス、ユニバーサルシリアルバス(USB)、赤外線、PS/2、BNC、同軸、コンポーネント、コンポジット、DVI(Digital Visual Interface)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、RFアンテナ、S−ビデオ、VGA、ブルートゥース(登録商標)、Cellular(例えば、CDMA(Code-Division Multiple Access)、HSPA+(High-Speed Packet Access)、GSM(Global System for Mobile communications)(登録商標)、LTE(Long-Term Evolution)、WiMax等)、Wi-Fi規格、無線LAN等の通信プロトコル/方法を採用してもよい。
このI/Oインターフェース52は、動作検出部3が検出した演奏者100の動作に関する動作情報を受信する受信部として機能する。
メモリー53は、例えば不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等で構成されている。メモリー53に記憶されたモジュールは、再生モジュール531と、平均BPM算出モジュール532と、補正モジュール533と、通信モジュール534と、を含む。
再生モジュール531は、CPU51によって実行されたとき、楽曲データを再生部2によって再生するよう構成されている。
平均BPM算出モジュール532は、CPU51によって実行されたとき、後述する平均BPMを算出するよう構成されている。
補正モジュール533は、CPU51によって実行されたとき、後述するように、再生部2によって再生される楽曲を補正するよう構成されている。
通信モジュール534は、CPU51によって実行されたとき、他の通信機器(再生部2、動作検出部3、表示装置4等)と通信を行うよう構成されている。
また、メモリー53には、再生部2が楽曲を再生するための楽曲データが記憶されている。この楽曲データは、特に限定されないが、例えば、WAVE(RIFF waveform Audio Format)、mp3(MPEG Audio Layer-3)等の音声ファイルフォーマットからなるオーディオデータや、MIDIデータ(MIDI規格(Musical Instrument Digital Interface)(登録商標)の楽曲データ)等が挙げられるが、以下では、MIDIデータとして説明する。MIDIデータを用いることにより、後述するような制御を容易に行うことができる。
また、メモリー53には、上記の他に、後述するような制御プログラム(本発明の制御方法)等が記憶されている。このような制御装置5は、表示装置4に内蔵されていてもよく、表示装置4とは異なる筐体に内蔵されたものであってもよい。
以上、制御装置5について説明した。このような制御装置5は、以下で説明するような制御を行うことにより、再生部2の楽曲に合わせて演奏者100が楽器を演奏するのを支援することができる。以下、制御装置5の制御動作(本発明の制御方法)について、図6に示すフローチャートを用いて説明するが、演奏者100が再生部2の楽曲を再生する以前の段階から説明する。
まず、演奏者100がコンガ201を試演し、その平均BPMを算出する(ステップS101:平均BPM算出ステップ)。この算出方法を、図8に示すグラフを用いて説明する。
図8(図9についても同様)に示すグラフは、縦軸がBPMであり、横軸が時間(sec)となっている。このグラフには、演奏者100の動作が閾値を超えたとき、すなわち、コンガ201を打撃する際に、閾値を超える程度の強い打撃を検出したときを抽出し、各打撃を四分音符のタイミングとみなし、ある打撃とその次の打撃とを比較してBPMとしてプロットしている。
また、時間t(所定時間)ごとに、その間の複数回(本実施形態では、3回)の打撃のBPMの平均値を相加平均で算出し、その値を平均BPMとする。なお、平均の算出方法としては、相乗平均、調和平均、加重平均などを用いてもよい。
なお、本ステップでは、リアルタイムでBPMを表示装置4に表示する。これにより、演奏者100が試奏しているときのBPMをリアルタイムで把握することができる。よって、再生部2で再生したいBPMに近づけることができる。また、練習時に用いたとき、テンポキープが出来ているかを演奏者100が知ることができ、演奏の熟練度の向上に寄与する。
また、演奏者100のBPMに対して所定の範囲を設定し、所定の範囲から外れたら、その打撃を平均値の算出に用いないよう構成してもよい。例えば、BPMが100付近で演奏していて、演奏ミスでBPMが150になっても、この150という値は、平均値の算出に用いない。これにより、平均BPMの算出をより正確に、すなわち、演奏者100の意図に沿って行うことができる。
なお、上記では、各打撃を四分音符のタイミングとみなして平均BPMを算出したが、これに限定されず、例えば、八分音符のタイミングとみなして算出した値を2で割って平均BPMを算出してもよい。
また、上記では、各BMPに対して統計処理を行うことによって平均BPMを決定してもよい。例えば、分散や標準偏差を求め、頻度が多いBPMを平均BPMとしてもよい。
そして、ステップS102(再生BPM決定ステップ)において、再生部2が再生する楽曲のBPM(再生BPM)を決定する。
本実施形態では、演奏者100が、動作検出部3が装着された方の手首をひねる。すなわち、演奏者100が手首をy軸回りに回転させる。動作検出部3からの信号のうち、y軸回りの角速度が所定の値を超えた場合、その時点における平均BPMを再生BPMとして決定する。すなわち、ステップS101で算出した時間tごとの平均BPMのうち、最新の値を再生BPMとする。
なお、演奏者100が再生BPMを決定する際のトリガーとしては、演奏時の動作と区別することができれば、特に限定されない。
なお、例えば、表示装置4からボタンなどで操作を行って再生BPMを決定する指示を行うよう構成してもよい。
次いで、ステップS103(再生指示判断ステップ)において、演奏者100から再生指示があったか否かを判断する。再生指示があった場合、所定時間後に再生部2を駆動して再生を開始する。
本ステップでは、ステップS102にてトリガーとして用いた動作や演奏時の動作とは異なる動作を再生指示の有無の判断に用いるのが好ましく、例えば、水平方向(x軸方向またはy軸方向)の加速度が閾値を超えた場合、再生指示があったとみなす。これにより、再生BPMの決定の指示と明確に区別することができ、再生指示の有無の判断を正確に行うことができる。
なお、例えば、表示装置4からボタンなどで操作を行って再生BPMを決定する指示を行うよう構成してもよい。また、例えば、タイマーを用いて、所定時間以上演奏の動きを検出しなかったら、準備完了とみなして、最後(最新)の平均BPMを再生BPMとしてもよい。また、ステップS102とステップS103との順番を入れ替えてもよい。
ステップS103において再生指示があったと判断した場合、所定時間後に再生部2を駆動させて再生部2による楽曲の再生を開始する(ステップS104:再生部駆動ステップ)。
本実施形態では、前述したように、メモリー53に記憶されている楽曲データは、MIDI規格のデータであるため、簡単な制御でスピーカー21および演奏装置22の同期をとることができる。
そして、再生部2の楽曲に合わせて、演奏者100がコンガ201を演奏する。
次いで、ステップS105において、演奏者100の演奏の強度が所定の範囲内であるか否かを判断する(ステップS105:強度判断ステップ)。なお、所定の範囲とは、予めメモリー53に記憶された(設定された)値であり、動作検出部3が検出する角速度の値(動作情報)において、最大値Smaxと最小値Sminとの間の領域である(図7参照)。すなわち、動作検出部3が検出した角速度の大小を、演奏者100の演奏の強弱とみなす。
なお、これら最大値Smaxおよび最小値Sminは、適宜変更することができる。
ステップS105において、動作検出部3が検出する角速度の値が最大値Smaxを超えたと判断した場合、再生部2が再生する楽曲データのうちの、未だ再生されていない(これから再生するデータ)未再生データの強度を強くするよう補正して再生する。すなわち、再生部2による再生音量が大きくなるよう楽曲データを補正する。
一方、動作検出部3が検出する角速度の値が最小値Sminを下回ったと判断した場合、再生部2が再生する楽曲データのうちの、未だ再生されていない(これから再生するデータ)未再生データの強度を弱くするよう補正して再生する。すなわち、再生部2による再生音量が小さくなるよう楽曲データを補正する。
上記補正は、例えば、検出した角速度の情報を演奏の強弱となるベロシティー値に対応させて、MIDIデータのベロシティー信号に変換することにより行うことができる。なお、MIDIのエクスプレッション値やボリューム値等に対応させてもよい。
このように、制御装置5は、演奏者100の動作情報から演奏者100の演奏の強弱を検出し、その検出結果に基づいて、未再生データの強弱を補正して、再生部2に再生させる(ステップS106:強弱補正ステップ)。これにより、演奏者100の演奏の強弱を再生部2の楽曲に反映することができる。よって、よって、演奏者100が再生部2の楽曲に合わせて演奏する、すなわち、合奏する場合であっても、演奏者100が表現したい音楽性が損なわれず、表現豊かな楽曲を得ることができる。
なお、再生部2の楽曲の強弱を補正する際、どの程度音量を補正するかは、例えば、検出した加速度の大小と、再生部2の再生音量を示す検量線(図示せず)に基づいて行うことができる。
また、再生部2が楽曲を再生している間、演奏者100の動作を検出し、演奏者100の演奏の平均BPMが所定の範囲内か否かを判断する(ステップS107:平均BPM判断ステップ)。なお、所定の範囲とは、予めメモリー53に記憶された(設定された)最大値BPMmaxと最小値BPMminとの間の領域であり、最大値BPMmaxおよび最小値BPMminは、適宜変更することができる。
演奏者100の演奏の平均BPMが上記範囲外であった場合、再生部2が再生する楽曲データのうちの、未だ再生されていない(これから再生するデータ)未再生データのテンポを補正して再生する(ステップS108:テンポ補正ステップ)。これにより、演奏者100のテンポの変化を反映させた楽曲を再生部2から再生することができる。
なお、再生部2のテンポの補正は、演奏者100のBPMと同じ値に随時追従させてもよいが、演奏者100のBPMが徐々に変化していった場合、その変化をある程度予測して、再生部2のテンポの補正を案内する構成とすることができる。
演奏者100のBPMの変化を予測する際、例えば、演奏者100のBPMのプロットを、各種関数を用いて直線または曲線に近似して、演奏者100のBPMのプロットを予測することができる。この関数としては、n次関数(nは、自然数)やこれらの多項式や、これらを変形させた関数が挙げられるが、シグモイド関数を用いるのが特に好ましい。これにより、自然な予測および追従を実現することができる。
このシグモイド関数としては、例えば、下記式(1)で示すようなものが挙げられる。
この式(1)を用いたグラフを図9に示す。図9に示すグラフでは、演奏者100のBPMをドットで示し、再生部2のBPMを実線で示している。シグモイド関数を用いることにより、再生部2のBPMを示す実線は、なだらかなS字曲線を描く。このため、この曲線に沿って再生部2の楽曲のテンポを補正することにより、前述したような自然な予測および追従を実現することができる。
また、式(1)中a1〜a7は、適宜値を設定することができ、各値を変更することにより、再生部2のBPMを示す実線を以下のように変更することができる。
図10に示すように、a1の値を大きくすると、グラフ中曲線部分以降の位置を下側にシフトさせることができる。a1の値を小さくすると、グラフ中曲線部分以降の位置を上側にシフトさせることができる。
また、図10に示すように、a2の値を大きくすると、グラフ中曲線部分以降の位置を上側にシフトさせることができる。a2の値を小さくすると、グラフ中曲線部分以降の位置を下側にシフトさせることができる。
また、図11に示すように、a3の値を大きくすると、グラフ中曲線部分を右側にシフトさせることができ、a3の値を小さくすると、グラフ中曲線部分を左側にシフトさせることができる。
また、図12に示すように、a4の値を大きくすると、グラフ中曲線部分の開始位置を右側にシフトさせることができるとともに、グラフ中曲線部分の終了位置を左側にシフトさせることができる。a4の値を小さくすると、グラフ中曲線部分の開始位置を左側にシフトさせることができるとともに、グラフ中曲線部分の終了位置を右側にシフトさせることができる
また、図11に示すように、a5の値を大きくすると、グラフ中曲線部分を右側にシフトさせることができ、a5の値を小さくすると、グラフ中曲線部分を左側にシフトさせることができる。
また、図11に示すように、a6の値を大きくすると、グラフ中曲線部分を右側にシフトさせることができ、a6の値を小さくすると、グラフ中曲線部分を左側にシフトさせることができる。
また、図13に示すように、a7の値を大きくすると、グラフ全体を上側にシフトさせることができ、a7の値を小さくすると、グラフ全体を下側にシフトさせることができる。
このような式(関数)は、予めメモリー53に記憶されている。なお、演奏者100の平均BPMが徐々に速くなる(アッチェレランド)場合は、上記式(1)の右辺に−1を乗算した式を用いて制御を行うことができる。
このような補正案内では、演奏者100がBPMを変化させて演奏することにより、多段階で追加補正を行うこともできる。例えば、リタルダンドの場合、だんだん遅くなるようにBPMを補正案内させたつもりが、BPMの減少をもっと下げたいと判断した時点で、BPMを下げた演奏を行うと、それがトリガーとなって、再補正が行われて、再度、補正案内が行われる。
具体的に説明すると、例えば、式(1)を用いて補正を行っている途中で、式(1)中a1〜a7を変更する補正を行うことにより、案内終了時のBPMや、それに至るタイミングや、BPMの変化度合いを変更することもできる。また、例えば、一次関数を用いて案内をしていたときに、途中で傾きを変更したりすることもできる。
このように補正データを算出してその信号を再生部2に送信する。また、楽曲データがMIDI規格のデータであるため、MIDIクロック信号を補正して再生部2に送信するという簡単な制御で上記補正を行うことができる。
演奏者100の演奏の平均BPMが上記範囲内であった場合、未再生データのテンポを補正せず、後述するステップS111に移行する。
このように、制御装置5は、平均BPM(平均値)が所定の範囲内であった場合、未再生データのテンポを補正せず、平均BPM(平均値)が所定の範囲外であった場合、未再生データのテンポを補正する。これにより、演奏者100の演奏のテンポのわずかなズレに、再生部2の楽曲が随時追従してしまい、演奏自体が不自然になってしまうのを防止することができる。よって、自然な演奏(合奏)を提供することができる。
また、制御装置5は、所定時間毎(図示の構成では、時間t毎)に前記平均値を算出し、最新の平均値を、未再生データのテンポを補正するか否かの判断に用いる。これにより、最新の演奏者の意図を、再生部2による楽曲に反映させることができる。
最大値BPMmaxは、特に限定されないが、例えば、平均BPMの5%〜20%程度であるのが好ましく、平均BPMの8%〜11%程度であるのがより好ましい。最小値BPMminは、特に限定されないが、例えば、平均BPMの−20%〜−5%程度であるのが好ましく、平均BPMの−11%〜−8%程度であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより確実に発揮することができる。
そして、ステップS109(補正解除指示判断ステップ)において、演奏者100からテンポの補正解除の指示があったか否かを判断する。
本ステップでは、演奏者100が装着している動作検出部3からの信号によって判断する。ステップS102およびステップS103にてトリガーとして用いた動作や演奏時の動作とは異なる動作を補正解除指示の有無の判断に用いるのが好ましい。これにより、補正解除指示を、再生BPMの決定の指示および再生指示と明確に区別することができ、補正解除指示の有無の判断を正確に行うことができる。
ステップS109において、補正解除指示があったと判断した場合、テンポの補正を解除、すなわち、元のBPM(テンポ補正前の最新の平均BPM)に戻して、再生部2から楽曲を再生する(ステップS110:補正解除ステップ)。
なお、ステップS109において、補正解除指示が無いと判断した場合、ステップS111に移行する。
そして、再生終了指示があったか否かを判断する(ステップS111:再生終了指示判断ステップ)。
本ステップでは、演奏者100が装着している動作検出部3からの信号によって判断する。ステップS102、ステップS103およびステップS109にてトリガーとして用いた動作や演奏時の動作とは異なる動作を再生終了指示の有無の判断に用いるのが好ましい。これにより、再生終了指示を、再生BPMの決定の指示、再生指示および補正解除指示と明確に区別することができ、再生終了指示の有無の判断を正確に行うことができる。
ステップS111において、再生終了指示があった場合、再生部2による再生を終了する。また、ステップS111において、再生終了指示がないと判断した場合、ステップS105に戻り、以下のステップを順次繰り返す。
なお、上記ステップS104〜S111の途中に、楽曲データを最後まで再生した場合には、その時点で強制終了する。
以上説明したように、演奏支援システムは、楽曲データを楽曲として再生する再生部2と、再生部2によって再生された楽曲に合わせて楽器200を演奏する演奏者100に装着され、演奏者100の動作を検出する動作検出部3と、動作検出部3が検出した演奏者100の動作に関する動作情報を受信する受信部(I/Oインターフェース52)と、受信部(I/Oインターフェース52)が受信した動作情報に基づいて、再生部2の再生条件を補正するCPU51(制御部)と、を備える。
このような本発明によれば、演奏者100の演奏中の動作情報を取得し、その動作情報を、リアルタイムで再生部2が再生する楽曲に反映することができる。よって、演奏者100が再生部2の楽曲に合わせて演奏する、すなわち、合奏する場合であっても、演奏者100が表現したい音楽性が損なわれず、表現豊かな楽曲を得ることができる。
また、本実施形態では、制御装置5は、演奏者100の動作情報から演奏者100が演奏しているテンポを検出し、その検出結果に基づいて、再生部2による再生のテンポを補正する。これにより、演奏者100が演奏中にテンポを変更したとしても、再生部2による楽曲もその変更したテンポで再生される。よって、さらに表現豊かな楽曲を得ることができる。
このため、例えば、バンドメンバーがそろっていなくても、ライブハウス等で表現豊かなバンド演奏を行うことができたり、オーケストラのメンバーがそろっていなくても、コンサート会場等で表現豊かなオーケストラ演奏を行うことができる。また、身体が不自由で楽器の演奏(合奏)をあきらめていた人も、合奏することの楽しさを体感することができる。
また、本発明によれば、演奏者100が楽器200の練習しているとき、再生部2の楽曲についていけずに、遅れをとってしまっても、再生部2の楽曲が演奏者100の演奏に追従してテンポを遅くすることができる。これにより、演奏者100が練習中に演奏をあきらめるのを防止することができ、楽器200の練習を楽しく継続することができる。
このため、例えば、音楽教室等で本システムを導入することにより、老若男女問わず生徒が楽しくレッスンを長続きすることができる。
以上、本発明の演奏支援システムおよび制御方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、演奏支援システムおよび制御方法を構成する各部(ステップ)は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物やステップが付加されていてもよい。
また、前記実施形態では、制御部は、演奏者の動作情報に基づいて、再生部の再生条件を補正するに際し、楽曲データを補正してその補正データを再生する構成について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、楽曲データを補正せず、再生速度や、再生音量を補正する構成であってもよい。
また、制御部は、演奏者の動作情報に基づいて、再生部の再生条件を補正するに際し、楽曲データのうちの、未だ再生されていない未再生データを補正して、前記再生部に再生させる構成について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、楽曲データのうちの、既に再生された部分に対しても同様の補正を行ってもよい。この場合、演奏者の動作情報が楽曲データに反映され、次回以降再生する場合、演奏者の動作情報や、演奏意図等が組み込まれた楽曲データとなる。すなわち、楽曲データを編集する作業を容易に行うことができたり、この楽曲データを、演奏者自身が聞き返すことにより、演奏の熟練度の向上に寄与することができる。
また、前記実施形態において、ステップS102、ステップS103、ステップS109およびステップS111では、一例として、判断基準のトリガーとして動作検出部が検出した動作を用いる場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、表示装置の操作ボタンや、別途設けたフットスイッチ等による操作であってもよい。
なお、ステップS101およびステップS102を省略して、過去のデータに基づいて再生部が再生するBPMを決定してもよい。
また、前記実施形態では、楽曲データが記憶された記憶部(メモリー)は、制御装置に内蔵されたものであったが、本発明ではこれに限定されず、外部の機器(例えば、USBフラッシュメモリー)に記憶された構成であってもよい。この場合、外部の装置を制御装置に接続することにより、実施形態で述べたような制御を行うことができる。