(第1実施形態)
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態の車両用温度調整装置1は、エンジン及びモータジェネレータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。
車両用温度調整装置1は、車室内の空調を行うために空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却あるいは加熱する機能を有している。更に、車両用温度調整装置1は、車両に搭載された各種電気機器に電力を供給するバッテリ43を暖機する機能も有している。従って、本実施形態の温度調整対象物は、送風空気及びバッテリ43である。
車両用温度調整装置1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モード、除湿暖房モード、及び暖房モードの運転を行うことができる。冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。
更に、車両用温度調整装置1は、乗員が車両に搭乗している際に行われる通常の空調運転の他に、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を開始するプレ空調を実行可能に構成されている。
次に、車両用温度調整装置1の構成について説明する。車両用温度調整装置1は、冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、高温側冷却水回路40、制御部60等を有している。
冷凍サイクル装置10は、温度調整対象物である送風空気の温度調整を行うものである。冷凍サイクル装置10は、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、及び暖房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。図1では、冷房モードの冷媒回路及び除湿暖房モードの冷媒回路における冷媒流れを白抜き矢印で示している。また、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示している。
冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。更に、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油は、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)であり、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を交流モータ11aにて駆動する電動式圧縮機として構成されている。圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。そして、制御部60が交流モータ11aの回転数を制御することによって、圧縮機構の冷媒吐出能力が変更される。
圧縮機11の吐出口には、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路と、高温側冷却水回路40を循環する冷却水である冷却水を流通させる水通路とを有している。そして、水−冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と水通路を流通する冷却水とを熱交換させて、冷却水を加熱する熱交換器である。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口側には、水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒を、室外熱交換器16の冷媒入口側へ導く第1冷媒通路14aが接続されている。
第1冷媒通路14aには、第1膨張弁15aが配置されている。第1膨張弁15aは、少なくとも暖房モード時に、水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒を減圧させる第1減圧装置である。第1膨張弁15aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有する可変絞り機構である。
第1膨張弁15aは、絞り開度を全開にすることによって、冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能付きの可変絞り機構として構成されている。第1膨張弁15aは、制御部60から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁15aの出口側には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器16は、第1膨張弁15aから流出した冷媒と送風ファン29から送風された空調対象空間外空気(すなわち、外気)とを熱交換させるものである。室外熱交換器16は、車両ボンネット内の車両前方側に配置されている。送風ファン29は、制御部60から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動送風機である。
室外熱交換器16の冷媒出口側には、第1三方継手13aの1つの流入出口が接続されている。このような第1三方継手13aは、複数の配管を接合して形成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて形成してもよい。更に、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2三方継手13bを備えている。第2三方継手13bの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
第1三方継手13aの別の流入出口には、室外熱交換器16から流出した冷媒を、室内蒸発器18の冷媒入口側へ導く第2冷媒通路14bが接続されている。また、第1三方継手13aの更に別の流入出口には、室外熱交換器16から流出した冷媒を、後述するアキュムレータ20の入口側(具体的には、第2三方継手13bの1つの流入出口)へ導く第3冷媒通路14cが接続されている。
第2冷媒通路14bには、逆止弁17、及び第2膨張弁15bが、冷媒流れに対してこの順に配置されている。逆止弁17は、冷媒が第1三方継手13a側から室内蒸発器18側へ流れることのみを許容するものである。
第2膨張弁15bは、室外熱交換器16から流出して室内蒸発器18へ流入する冷媒を減圧させる第2減圧装置である。第2膨張弁15bの基本的構成は、第1膨張弁15aと同様である。更に、本実施形態の第2膨張弁15bは、絞り開度を全閉した際に当該冷媒通路を閉塞する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。
従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、第2膨張弁15bを全閉として第2冷媒通路14bを閉じることによって、冷媒回路を切り替えることができる。換言すると、第2膨張弁15bは、冷媒減圧装置としての機能を果たすとともに、サイクルを循環する冷媒の冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。
室内蒸発器18は、冷房モード時、及び除湿暖房モード時に、第2膨張弁15b(室外熱交換器16)から流出した冷媒とヒータコア42通過前の送風空気とを熱交換させる冷却用熱交換器である。室内蒸発器18では、第2膨張弁15bにて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、冷媒とヒータコア42の送風空気流れ上流側に配置されている。
室内蒸発器18の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁19の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18の着霜(換言すると、フロスト)を抑制するために、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力Peを着霜抑制圧力APe以上に調整する機能を果たすものである。換言すると、蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度Teを着霜抑制温度ATe以上に調整する機能を果たすものである。
本実施形態では、冷媒としてR134aを採用し、着霜抑制温度ATeを0℃よりも僅かに高い値に設定している。従って、着霜抑制圧力APeは、R134aの0℃における飽和圧力である0.293MPaよりも僅かに高い値に設定されている。
蒸発圧力調整弁19の出口側には、第2三方継手13bが接続されている。第2三方継手13bには、前述した第3冷媒通路14cが接続されている。第2三方継手13bの更に別の流入出口には、アキュムレータ20の入口側が接続されている。
アキュムレータ20は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ20の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。従って、アキュムレータ20は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されることを抑制し、圧縮機11における液圧縮を防止する機能を果たす。
第1三方継手13aと第2三方継手13bとを接続する第3冷媒通路14cには、開閉弁21が配置されている。開閉弁21は、第3冷媒通路14cを開閉することによって冷媒を循環させる冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置としての電磁弁である。開閉弁21は、制御部60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、高温側冷却水回路40について説明する。高温側冷却水回路40は、冷却水を循環させる回路である。冷却水としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側冷却水回路40には、水−冷媒熱交換器12の水通路、高温側冷却水ポンプ41、ヒータコア42、バッテリ43の冷却水通路、高温側流量調整弁44等が配置されている。
高温側冷却水ポンプ41は、冷却水を水−冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側冷却水ポンプ41は、制御部60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
水−冷媒熱交換器12の水通路の出口には、高温側流量調整弁44の1つの流入出口が接続されている。高温側流量調整弁44は、3つの流入出口を有し、そのうち2つの流入出口の通路面積比を連続的に調整可能な電気式の三方流量調整弁である。高温側流量調整弁44は、制御部60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
高温側流量調整弁44の別の流入出口には、ヒータコア42の冷却水入口側が接続されている。高温側流量調整弁44の更に別の流入出口には、バッテリ43の冷却水通路の冷却水入口側が接続されている。
そして、高温側流量調整弁44は、高温側冷却水回路40において、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した冷却水のうち、ヒータコア42へ流入させる冷却水の流量とバッテリ43の冷却水通路へ流入させる冷却水の流量との流量比を連続的に調整する機能を有している。
ヒータコア42は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水と室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア42は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。ヒータコア42の冷却水出口には、高温側冷却水ポンプ41の吸入口側が接続されている。
バッテリ43は、車両に搭載されたインバータ装置等の各種電気機器に電力を供給するものである。インバータ装置は、バッテリ43から供給された直流電流を交流電流に変換したうえで、モータジェネレータに電流を供給する装置である。
バッテリ43は、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)である。ここで、この種のバッテリは、低温になると化学反応が進みにくく充放電の関して充分な性能を発揮することができない。一方、高温になると劣化が進行しやすい。従って、バッテリ43の温度は、充分な性能を発揮できる適正な温度帯(例えば、10℃以上、かつ、40℃以下)の範囲内に調整されている必要がある。
バッテリ43の冷却水通路は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水を流通させて、バッテリ43を加熱するための冷却水通路である。バッテリ43の冷却水通路の出口には、高温側冷却水ポンプ41の吸入口側が接続されている。
従って、高温側冷却水回路40では、高温側流量調整弁44が、ヒータコア42へ冷却水を流入させることによって、送風空気を加熱することができる。また、バッテリ43が低温となっている際に、高温側流量調整弁44が、バッテリ43の冷却水通路へ冷却水を流入させることによって、バッテリ43を暖機することができる。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を空調対象空間である車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア42等を収容することによって構成されている。
ケーシング31は、空調対象空間である車室内に送風される送風空気の空気通路を形成する空気通路形成部である。ケーシング31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(空調対象空間内の空気)と外気(空調対象空間外の空気)とを切替導入する内外気切替部としての内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を空調対象空間内へ向けて送風する送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、制御部60から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
ケーシング31内に形成された空気通路のうち、送風機32の送風空気流れ下流側には室内蒸発器18が配置されている。更に、ケーシング31内に形成された空気通路の室内蒸発器18の下流側は、二股に分岐されていて、ヒータコア通路35と冷風バイパス通路36とが並列に形成されている。
ヒータコア通路35内には、ヒータコア42が配置されている。つまり、ヒータコア通路35は、ヒータコア42にて冷却水と熱交換する送風空気が流通する流路である。室内蒸発器18とヒータコア42は、送風空気流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器18は、ヒータコア42よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
冷風バイパス通路36は、室内蒸発器18を通過した送風空気を、ヒータコア42を迂回させて下流側へ流す通風路である。
室内蒸発器18の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア42の送風空気流れ上流側には、制御部60から出力された制御信号によって、室内蒸発器18通過後の送風空気のうちヒータコア42を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
ヒータコア通路35及び冷風バイパス通路36の合流部の下流側のケーシング31内には、混合空間37が形成されている。混合空間37内において、冷媒とヒータコア42にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路36を通過して冷媒とヒータコア42にて加熱されていない送風空気とが混合される。
更に、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間37にて混合された送風空気(空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための吹出口が配置されている。
従って、エアミックスドア34が、冷媒とヒータコア42を通過させる風量と冷風バイパス通路36を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間37にて混合される空調風の温度が調整されて、吹出口から空調対象空間である車室内へ吹き出される空調風の温度が調整される。
つまり、エアミックスドア34は、空調対象空間である車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御部60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、図2のブロック図を用いて、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。制御部60は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11a、15a、15b、21、29、32、33、34、41、44等の空調制御機器の作動を制御する。
制御部60の入力側には、内気温センサ51a、外気温センサ51b、日射センサ51c、高圧センサ51d、蒸発器温度センサ51e、空調風温度センサ51f、圧縮機温度センサ51g、バッテリ温度センサ51h等の制御用のセンサ群が接続されている。制御部60には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ51aは、内気温(車室内温度)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ51bは、外気温(車室外温度)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ51cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ51dは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁15aの入口側へ至る冷媒流路の高圧側冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
蒸発器温度センサ51eは、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ51fは、混合空間37から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
圧縮機温度センサ51gは、圧縮機11の外表面に配置されて、圧縮機11そのものの温度である圧縮機温度Tcompを検出するものである。すなわち、圧縮機温度センサ51gは、圧縮機の温度に相関する情報を検出する圧縮機温度検出部である。
バッテリ温度センサ51hは、バッテリ43の温度であるバッテリ温度Tbを検出するバッテリ温度検出部である。バッテリ温度センサ51hは、複数の温度センサを有し、バッテリ43の複数の箇所の温度を検出している。このため、制御部60では、バッテリ温度Tbとして、複数の温度センサの検出値の平均値を採用している。
更に、制御部60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作部61が接続され、この操作部61に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作部61に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、空調作動スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。空調作動スイッチは、乗員が車室内の空調を行うことを要求するための空調作動要求部である。風量設定スイッチは、乗員が送風機32の風量をマニュアル設定するための風量設定部である。温度設定スイッチは、車室内の設定温度Tsetを設定するための温度設定部である。
更に、制御部60の入力側には、通信装置62が接続され、この通信装置62が受信した受信信号が入力される。通信装置62は、乗員が所持する遠隔操作装置99から送信された信号を受信する。
遠隔操作装置99は、乗員が車両に乗り込む乗車予定時刻Time1(すなわち、乗車予定信号)、車室内の設定温度Tset等の信号を送信することができる。このような遠隔操作装置99としては、専用のリモコン装置、携帯電話、スマートフォン、インターネット端末等を採用することができる。プレ空調の実行に必要な情報は、遠隔操作装置99から送信されたものに限定されず、操作部61にて直接入力した信号を通信装置62の受信信号とするようになっていてもよい。
制御部60では、通信装置62が、遠隔操作装置99からの乗車予定時刻Time1、設定温度Tset等の信号を受信すると、これらの受信信号に基づいて、プレ空調を実行する。従って、通信装置62は、乗員の乗車予定時刻Time1に関連する乗車予定信号を受信する乗車予定信号受信部である。
なお、本実施形態の制御部60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する専用の制御部を構成している。例えば、制御部60のうち、圧縮機11の作動を制御する構成が、圧縮機制御部を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の車両用温度調整装置1の作動について説明する。前述の如く、車両用温度調整装置1は、車室内の空調を行うことができる。車両用温度調整装置1は、車室内の空調を行う際に、空調運転モードを切り替えることができる。空調運転モードは、予め制御部60に記憶された空調制御プログラムが実行されることによって切り替えられる。
この空調制御プログラムは、車両システムが起動している状態で、操作部61の空調作動スイッチが投入(ON)された際、あるいは、プレ空調のために車室内の空調を行う時刻となった際に実行される。空調制御プログラムでは、制御用のセンサ群によって検出された検出信号、及び操作部61から出力された操作信号等に基づいて、車室内へ送風される送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。
そして、空調制御プログラムでは、目標吹出温度TAO、検出信号等に基づいて、空調運転モードを切り替える。以下に、各空調運転モードの作動を説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、制御部60が、第1膨張弁15aを全開状態とし、第2膨張弁15bを減圧作用を発揮する絞り状態とし、開閉弁21を閉じる。更に、制御部60は、冷風バイパス通路36を全開とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータの作動を制御する。
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の白抜き矢印に示すように、圧縮機11→(水−冷媒熱交換器12→第1膨張弁15a→)室外熱交換器16→逆止弁17→第2膨張弁15b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16を放熱器として機能させ、室内蒸発器18を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。そして、このサイクル構成で、制御部60は、車室内へ吹き出される送風空気温度TAVが目標吹出温度に近づくように、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器18にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、制御部60が、第1膨張弁15aを絞り状態とし、第2膨張弁15bを絞り状態とし、開閉弁21を閉じる。また、制御部60は、ヒータコア通路35を全開とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータの作動を制御する。
また、制御部60は、予め定めた除湿暖房モード用の基準能力を発揮するように、高温側冷却水ポンプ41の作動を制御する。更に、制御部60は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水がヒータコア42へ流入するように、高温側流量調整弁44の作動を制御する。
これにより、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の白抜き矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→第1膨張弁15a→室外熱交換器16→逆止弁17→第2膨張弁15b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水−冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室内蒸発器18を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。更に、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には室外熱交換器16は放熱器として機能し、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には室外熱交換器16は蒸発器として機能する。
そして、このサイクル構成で、制御部60は、車室内へ吹き出される送風空気温度TAVが目標吹出温度に近づくように、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。例えば、制御部60は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁15aの絞り開度を縮小させるとともに、第2膨張弁15bの絞り開度を増加させる。
これにより、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器16における冷媒の放熱量を減少させることができる。その結果、水−冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
また、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させることができる。その結果、水−冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
従って、除湿暖房モードでは、室内蒸発器18にて冷却された送風空気をヒータコア42にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。更に、第1膨張弁15aの絞り開度及び第2膨張弁15bの絞り開度を調整することによって、水−冷媒熱交換器12における冷却水の加熱能力、すなわちヒータコア42における送風空気の加熱能力を調整することができる。
ここで、除湿暖房モードでは、水−冷媒熱交換器12にて冷却水が加熱される。従って、バッテリ温度センサ51hによって検出されたバッテリ温度Tbが予め定めた基準温度よりも低くなっている際には、制御部60が、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水をバッテリ43の冷却水通路へ流入させるように、高温側流量調整弁44の作動を制御してもよい。これにより、バッテリ43の暖機を行うことができる。このような暖機は、他の空調運転モード時に実行してもよい。
(c)暖房モード
暖房モードでは、制御部60が、第1膨張弁15aを絞り状態とし、第2膨張弁15bを全閉状態とし、開閉弁21を開く。更に、制御部60は、ヒータコア通路35を全開とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータの作動を制御する。
また、制御部60は、予め定めた暖房モード用の基準能力を発揮するように、高温側冷却水ポンプ41の作動を制御する。更に、制御部60は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水がヒータコア42へ流入するように、高温側流量調整弁44の作動を制御する。
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の黒塗り矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→第1膨張弁15a→室外熱交換器16→開閉弁21→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、水−冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。そして、このサイクル構成で、制御部60は、車室内へ吹き出される送風空気温度TAVが目標吹出温度に近づくように、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。
従って、暖房モードでは、ヒータコア42にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
以上の如く、本実施形態の車両用温度調整装置1では、冷房モード、除湿暖房モード、及び暖房モードを切り替えて、車室内の快適な空調を実現することができる。
ところで、車室内の空調を行う際、圧縮機11の起動前に外気温が低下し、圧縮機11の温度が低下していると、圧縮機11の内部に滞留する冷媒が凝縮して液化し、液化した冷媒に圧縮機11内の冷凍機油が溶け込んでしまうことがある。この状態で、圧縮機11を起動すると、圧縮機11内の冷凍機油が液化した冷媒とともに排出されてしまい、圧縮機11の摺動部の潤滑が不充分となってしまう。その結果、圧縮機11の耐久寿命に悪影響を及ぼしてしまうおそれがある。
そこで、本実施形態の車両用温度調整装置1では、圧縮機11の起動時に、圧縮機11の内部に滞留する冷媒が液化していることを抑制するために、圧縮機11内の冷媒が気化するように圧縮機11を加熱する予熱制御を行う。予熱制御は、図3のタイムチャートに示すように、遠隔操作装置99から送信された乗車予定信号に基づいて実行される。
つまり、制御部60では、通信装置62が遠隔操作装置99からの乗車予定時刻Time1、設定温度Tset等の信号を受信した後に、空調を開始する温度調整開始時刻Time2を決定し、更に、予熱の必要に応じて予熱に要する予熱時間Tpre2を決定する。そして、現在の時刻(すなわち、実際の時刻)が温度調整開始時刻Time2よりも予熱時間Tpre2分前の時刻である予熱開始時刻Time3に達した場合に、圧縮機11の予熱を行うようになっている。
予熱制御の詳細については、図4のフローチャートを用いて説明する。この予熱制御の制御ルーチンは、制御部60に電力が供給されていれば、車両システムが起動しているか否かに関わらず、車両用温度調整装置1が停止している際、すなわち、圧縮機11が停止している際に所定の周期毎に実行されている。なお、図4に示す各制御ステップは、制御部60が有する機能実現部を構成している。
まず、図4のステップS11では、通信装置62が乗車予定信号を受信したか否かを判定する。ステップS11にて、通信装置62が乗車予定信号を受信したと判定された場合には(ステップS11:YES)、ステップS12へ進む。ステップS11にて、通信装置62が乗車予定信号を受信していないと判定された場合には(ステップS11:NO)、予熱制御の開始へ戻る。
ステップS12では、外気温Tam、及びステップS11において受信した乗車予定信号に含まれる設定温度Tsetに基づいて、予め制御部60に記憶された制御マップを参照して、温度調整時間Tpre1を決定する。この制御マップでは、外気温Tamの低下に伴って、温度調整時間Tpre1の時間間隔を増加させ、設定温度Tsetの上昇に伴って、温度調整時間Tpre1の時間間隔を増加させるように決定する。
更に、ステップS12では、乗車予定信号に含まれる乗車予定時刻Time1から温度調整時間Tpre1分前の時刻を、温度調整開始時刻Time2に決定して、ステップS13へ進む。従って、本実施形態のステップS12は、温度調整開始時刻決定部である。
ステップS13では、制御部60が、外気温センサ51bによって検出された外気温Tamが規定外気温KTam(例えば、−5℃)以下であるか否かを判定する。ステップS12にて、外気温Tamが規定外気温KTam以下であると判定された場合には(ステップS13:YES)、ステップS14へ進む。ステップS13にて、外気温Tamが規定外気温KTam以下になっていないと判定された場合には(ステップS13:NO)、ステップS20に進む。
規定外気温KTamは、この温度よりも外気温Tamが低い場合に、圧縮機11の内部に滞留する冷媒が凝縮して液化する可能性が有る温度に設定されている。
ステップS14では、圧縮機11が規定時間KTstop(例えば、1時間)以上停止していたか否かを判定する。ステップS13にて、圧縮機11が規定時間KTstop以上停止していたと判定された場合には(ステップS14:YES)、ステップS15へ進む。ステップS14にて、圧縮機11が規定時間KTstop以上停止していないと判定された場合には(ステップS14:NO)、ステップS20に進む。
規定時間KTstopは、前回の作動によって温度上昇した圧縮機11の温度が、外気温Tamと同程度となるまで低下するために必要な時間間隔(時間の長さ)に設定されている。
ステップS15では、圧縮機温度センサ51gによって検出された圧縮機温度Tcompが、予め定められた規定圧縮機温度KTcomp(例えば、−2℃)以下であるか否かを判定する。ステップS15にて、圧縮機温度Tcompが規定圧縮機温度KTcomp以下であると判定された場合には(ステップS15:YES)、ステップS16へ進む。ステップS15にて、圧縮機温度Tcompが規定圧縮機温度KTcompよりも高いと判定された場合には(ステップS15:NO)、ステップS20に進む。
規定圧縮機温度KTcompは、この温度よりも圧縮機温度Tcompが低い場合に、圧縮機11の内部に滞留する冷媒が凝縮して液化する可能性が有る温度に設定されている。
ステップS16では、圧縮機温度センサ51gによって検出された圧縮機温度Tcompに基づいて、予め制御部60に記憶された制御マップを参照して、予熱時間Tpre2を決定して、ステップS17へ進む。この制御マップでは、圧縮機温度Tcompの低下に伴って、予熱時間Tpre2の時間間隔を増加させる。この予熱時間Tpre2は、予熱時間Tpre2だけ圧縮機11を予熱した場合に、圧縮機11の始動時に、圧縮機11内の冷媒が気化するのに必要な時間であり、制御マップはこのような予熱時間Tpre2が決定されるように設定されている。
ステップS17では、ステップS12にて決定された温度調整開始時刻Time2からステップS16にて決定された決定した予熱時間Tpre2分前の時刻である予熱開始時刻Time3を決定して、ステップS18へ進む。
ステップS18では、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過しているか否かを判定する。ステップS18にて、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過していると判定された場合には(ステップS18:YES)、ステップS19へ進む。ステップS18にて、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過していないと判定された場合には(ステップS18:NO)、再びステップS18の判定を繰り返す。なお、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過しているとの判定には、現在の時刻が予熱開始時刻Time3に達している場合と、現在の時刻が既に予熱開始時刻Time3を経過している場合の両方が含まれる。
ステップS19では、圧縮機11の交流モータ11aに対して欠相通電することによって、圧縮機11を加熱する圧縮機予熱制御を実行して、ステップS20へ進む。欠相通電では、例えば、3相のコイルのうち、1つのコイルのみに通電させるので、交流モータ11aを回転させることなくジュール熱を発生させることができる。そして、この熱によって圧縮機11を加熱することができる。
ステップS20では、現在の時刻(すなわち、実際の時刻)が温度調整開始時刻Time2に達したか否かを判定する。ステップS20にて、現在の時刻が温度調整開始時刻Time2に達していると判定された場合には(ステップS20:YES)、ステップS21へ進む。ステップS20にて、現在の時刻が温度調整開始時刻Time2に達していない判定された場合には(ステップS20:NO)、再びステップS20の判定を繰り返す。
ステップS21では、通常の空調運転と同様に、車室内の空調が行われる。ここで、ステップS19の圧縮機予熱制御が実行される条件は、ステップS13で説明したように、外気温Tamが規定外気温KTam以下であると判定された場合である。従って、ステップS21で実行される空調運転モードは、暖房モードとなる。
従って、本実施形態の車両用温度調整装置1によれば、圧縮機11の予熱を行うことができるので、低外気温時等に圧縮機11を起動させても、圧縮機11内の冷凍機油が外部に排出されてしまうことを抑制して、圧縮機11の保護を図ることができる。
更に、圧縮機11の予熱は、現在の時刻が、乗車予定時刻Time1から決定された予熱開始時刻Time3に達した場合に行われる。つまり、乗員の乗車予定が無いにもかかわらず、圧縮機11の予熱が実行されてしまうことを抑制することができる。その結果、本実施形態の車両用温度調整装置1によれば、圧縮機11を予熱する際に、不必要なエネルギが消費されてしまうことを抑制することができる。
車両用温度調整装置1によって、温度調整を行う温度調整対象物は、車両の室内に送風される送風空気である。これにより、車室内の快適な空調を実現することができる。
制御部60は、圧縮機11の温度の低下に伴って、予熱時間Tpre2を増加させる(図3のステップS16)。これにより、圧縮機11の温度が低くなる程、圧縮機11がより長時間予熱される。このため、圧縮機11の温度が低く、圧縮機11の内部に滞留する冷媒が凝縮しやすい場合であっても、より確実に、圧縮機11の内部に滞留する冷媒の凝縮を抑制することができる。この結果、より確実に、圧縮機11内の冷凍機油が外部に排出されてしまうことを抑制して、圧縮機11の保護を図ることができる。
圧縮機11は、交流モータ11aを有する電動式圧縮機であり、交流モータ11aに対して欠相通電をすることによって、圧縮機11を予熱する。これにより、圧縮機11を予熱するための加熱部(例えば、電気ヒータ)を設ける必要が無い。このため、圧縮機11を予熱するために車両用温度調整装置1の構成を複雑化させてしまうことがない。
(第2実施形態)
以下に、図5に示すタイムチャート及び図6に示すフローチャートを用いて、第2実施形態の車両用温度調整装置1について、第1実施形態の車両用温度調整装置1と異なる点について説明する。
第1実施形態では、乗車予定信号に基づいて、プレ空調を行うことを前提とした例を説明したが、内気温Trと乗車予定信号に含まれる設定温度Tsetとの温度差が小さい場合等には、車室内の空調を実行する必要はない。
これに対して、通信装置62が乗車予定信号を受信したことは、乗車予定時刻Time1に車両が走行を開始する可能性が極めて高いことを意味している。そして、走行の開始時に、バッテリ43の温度が低くなっていると、バッテリ43が充分な放電性能を発揮することができず、車両の走行出力が低下してしまうおそれがある。
従って、通信装置62が乗車予定信号を受信した際には、車両用温度調整装置1によってバッテリ43を暖機し、さらに、バッテリ43の暖機を行うために圧縮機11を起動させる際にも圧縮機11の予熱が必要となる場合がある。
そこで、第2実施形態の車両用温度調整装置1では、バッテリ43が低温になっている場合に、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水をバッテリ43の冷却水路に流入させて、バッテリ43を予熱するバッテリ予熱制御を実行する。従って、本実施形態の温度調整対象物は、バッテリ43となる。
第2実施形態の車両用温度調整装置1では、バッテリ43の温度調整を行う際に、バッテリ加熱モードでの運転を行う。
バッテリ加熱モードにおける冷凍サイクル装置10の冷媒回路は、加熱モードの冷媒回路と同一である。つまり、制御部60が、第1膨張弁15aを絞り状態とし、第2膨張弁15bを全閉状態とし、開閉弁21を開く。
また、制御部60は、予め定めたバッテリ加熱モード用の基準能力を発揮するように、高温側冷却水ポンプ41の作動を制御する。更に、制御部60は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水がバッテリ43の冷却水通路へ流入するように、高温側流量調整弁44の作動を制御する。
これにより、バッテリ加熱モードの冷凍サイクル装置10では、図1の黒塗り矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→第1膨張弁15a→室外熱交換器16→開閉弁21→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、バッテリ加熱モードの冷凍サイクル装置10では、水−冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。そして、このサイクル構成で、制御部60は、加熱されるバッテリ43のバッテリ温度Tbが目標バッテリ温度に近づくように、各種制御対象機器の作動を適宜制御する。
従って、バッテリ加熱モードでは、水−冷媒熱交換器12によって加熱された冷却水をバッテリ43の冷却水通路へ流入させることによって、バッテリ43の加熱を行うことができる。
なお、バッテリ43の加熱のみを行う場合には、制御部60は、ヒータコア通路35を全閉とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータの作動を制御する。一方で、バッテリ43の加熱とともに、暖房や除湿暖房を行う場合には、制御部60は、ヒータコア通路35を全開とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータの作動を制御する。
バッテリ予熱制御は、図5のタイムチャートに示すように、遠隔操作装置99から送信された乗車予定信号に基づいて実行される。
つまり、制御部60では、通信装置62が遠隔操作装置99からの乗車予定時刻Time01を受信した後に、バッテリ43の予熱を開始するバッテリ予熱開始時刻Time02を決定する。そして、現在の時刻がバッテリ予熱開始時刻Time02よりも圧縮機11の予熱時間Tpre02分前の時刻である予熱開始時刻Time03に達した場合に、圧縮機11の予熱を行うようになっている。
バッテリ予熱制御の詳細については、図6のフローチャートを用いて説明する。このバッテリ予熱制御の制御ルーチンは、制御部60に電力が供給されていれば、車両システムが起動しているか否かに関わらず、車両用温度調整装置1が停止している際、すなわち、圧縮機11が停止している際に所定の周期毎に実行されている。なお、図6に示す各制御ステップは、制御部60が有する機能実現部を構成している。
まず、図6のステップS51では、通信装置62が乗車予定信号を受信したか否かを判定する。ステップS51にて、通信装置62が乗車予定信号を受信したと判定された場合には(ステップS51:YES)、ステップS52へ進む。ステップS51にて、通信装置62が乗車予定信号を受信していないと判定された場合には(ステップS51:NO)、バッテリ予熱制御の開始へ戻る。
ステップS52では、バッテリ温度センサ51hによって検出されたバッテリ温度Tbが、予め定められた規定バッテリ温度KTb(例えば、10℃)以下であるか否かを判定する。ステップS52にて、バッテリ温度Tbが規定バッテリ温度KTb以下であると判定された場合には(ステップS52:YES)、ステップS53へ進む。ステップS52にて、バッテリ温度Tbが規定バッテリ温度KTbよりも高いと判定された場合には(ステップS52:NO)、バッテリ予熱制御の開始へ戻る。
ステップS53では、バッテリ温度センサ51hによって検出されたバッテリ温度Tbに基づいて、予め制御部60に記憶された制御マップを参照して、バッテリ予熱時間Tpre01を決定する。この制御マップでは、バッテリ温度Tbの低下に伴って、バッテリ予熱時間Tpre01の時間間隔を増加させるように決定する。
更に、ステップS53では、乗車予定信号に含まれる乗車予定時刻Time01からバッテリ予熱時間Tpre01分前の時刻を、バッテリ予熱開始時刻Time02に決定して、ステップS62へ進む。従って、本実施形態のステップS53は、温度調整対象物であるバッテリ43の温度調整を開始するバッテリ予熱開始時刻Time02を決定する温度調整開始時刻決定部である。
ステップS63〜S66の処理は、それぞれ、図4に示す予熱制御のステップS13〜S16の処理と同様である。ステップS66が終了すると、ステップS67に進む。
ステップS67では、ステップS53にて決定されたバッテリ予熱開始時刻Time02からステップS66にて決定された決定した予熱時間Tpre02分前の時刻である予熱開始時刻Time03を決定し、ステップS68に進む。
ステップS68、S69の処理は、それぞれ、図4に示す予熱制御のステップS18、S19の処理と同様である。ステップS69が終了すると、ステップS70に進む。
ステップS70では、現在の時刻がバッテリ予熱開始時刻Time02に達したか否かを判定する。ステップS70にて、現在の時刻がバッテリ予熱開始時刻Time02に達していると判定された場合には(ステップS70:YES)、ステップS71へ進む。ステップS70にて、現在の時刻がバッテリ予熱開始時刻Time02に達していない判定された場合には(ステップS70:NO)、再びステップS70の判定を繰り返す。
ステップS71では、制御部60は、車両用温度調整装置1をバッテリ加熱モードにして、ステップS53で決定されたバッテリ予熱時間Tpre01分バッテリ43を加熱する。ステップS71が終了すると、バッテリ予熱制御の開始へ戻る。
従って、第2実施形態の車両用温度調整装置1では、バッテリ温度Tbが規定バッテリ温度KTb以下になった場合に、車両用温度調整装置1でバッテリ43を予熱することができる。このため、バッテリ43が低温になってしまうことを抑制することができ、バッテリ43が充放電の関して充分な性能を発揮させることができる。
また、バッテリ43の予熱をする前に、圧縮機11の予熱を行うことができるので、低外気温時等に圧縮機11を稼働させても、圧縮機11内の冷凍機油が外部に排出されてしまうことを抑制して、圧縮機11の保護を図ることができる。
更に、圧縮機11の予熱は、現在の時刻が、乗車予定時刻Time01から決定された予熱開始時刻Time03に達した場合に行われる。つまり、乗員の乗車予定が無いにもかかわらず、圧縮機11の予熱が実行されてしまうことを抑制することができる。その結果、本実施形態の車両用温度調整装置1によれば、第1実施形態と同様に、圧縮機11を予熱する際に、不必要なエネルギが消費されてしまうことを抑制することができる。
(第3実施形態)
上記説明した第1実施形態の車両用温度調整装置1と異なる点について、図7に示すブロック図を用いて、第3実施形態の車両用温度調整装置1について説明する。第3実施形態の車両用温度調整装置1について、第1実施形態の車両用温度調整装置1と同じ構造については、図7において、図1に示す第1実施形態の車両用温度調整装置1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
第3実施形態の車両用温度調整装置1は、加速、制動、及び操舵を自動で制御する自動運転を行う自動運転車両に搭載されている。自動運転車両では、乗員が予め車両に乗り込む乗車予定時刻Time1(すなわち、乗車予定信号)、乗車予定位置等を設定しておくことができる。そして、乗車予定時刻Time1に乗車予定位置にて乗員が乗車できるように、車両の保管場所から乗車予定位置へ無人で移動する機能を有している。
これらの乗車予定信号等の設定は、第1実施形態と同様に、遠隔操作装置99、及び通信装置62を用いて行うことができる。
また、図7に示すように、第3実施形態の車両用温度調整装置1は、車速センサ64及びグリルシャッター71を備えている。制御部60の入力側には、車速センサ64が接続されている。また、制御部60の出力側には、グリルシャッター71が接続されている。
車速センサ64は、車両の車輪の回転数や、この車輪と回転連結されたドライブシャフトの回転数を検出することによって、車速Vを検出する車速検出部である。なお、車速Vが速くなるに従って、圧縮機11の冷却量は増大する。つまり、車速センサ64は、将来の圧縮機11の冷却量に相関する情報を検出する冷却量検出部である。
グリルシャッター71は、室外熱交換器16の前方側(上流側)の車両ボンネットの開口部に配置されている。グリルシャッター71は、制御部60からの制御信号に基づいて、車両ボンネットの開口部の開口面積を変化させ、車両ボンネット内に流入する空気の流量を調整する。
なお、グリルシャッター71の開度が大きくなるに従って、車両ボンネット内に流入する空気の流量が大きくなり、圧縮機11の冷却量が増大する。従って、グリルシャッター71に制御信号を出力する制御部60は、将来の圧縮機11の冷却量に相関する情報を検出する冷却量検出部としての機能を兼ね備えている。
また、外気温が低くなるに従って、圧縮機11の冷却量は増大する。つまり、外気温センサ51bは、将来の圧縮機11の冷却量に相関する情報を検出する冷却量検出部である。
第3実施形態の予熱制御の詳細については、図8のフローチャートを用いて説明する。この予熱制御の制御ルーチンは、制御部60に電力が供給されていれば、車両システムが起動しているか否かに関わらず、車両用温度調整装置1が停止している際、すなわち、圧縮機11が停止している際に所定の周期毎に実行されている。なお、図8に示す各制御ステップは、制御部60が有する機能実現部を構成している。
第3実施形態の予熱制御のステップS11〜S15は、図4に示す第1実施形態の予熱制御のステップS11〜S15と同様である。
第3実施形態の予熱制御のステップS16では、制御部60は、圧縮機温度センサ51gによって検出された圧縮機温度Tcomp、及び将来の圧縮機11の冷却量に相関する情報である冷却量相関情報に基づいて、予め制御部60に記憶された制御マップを参照して、予熱時間Tpre2を決定する。
この制御マップには、圧縮機温度Tcomp、及び冷却量相関情報と、予熱時間Tpre2との関係が記憶されている。冷却量相関情報には、制御部60が検出したグリルシャッター71の開度、車速センサ64によって検出された車速V、及び外気温センサ51bによって検出された外気温Tamが含まれる。
この制御マップでは、圧縮機温度Tcompが低くなるに従って、予熱時間Tpre2が増加するように決定される。また、この制御マップでは、冷却量相関情報に基づいて、将来の圧縮機11の冷却量が大きくなるに従って、予熱時間Tpre2が増加するように決定される。
具体的には、この制御マップでは、グリルシャッター71の開度が大きくなるに従って、予熱時間Tpre2が増加するように決定される。また、この制御マップでは、車速Vが速くなるに従って、予熱時間Tpre2が増加するように決定される。この車速Vは、現在の車速であってもいいし、自動運転が開始してからの平均車速であってもよい。また、この制御マップでは、外気温Tamが低くなるに従って、予熱時間Tpre2が増加するように決定される。ステップS16が終了すると、ステップS17へ進む。
第3実施形態の予熱制御のステップS17は、図4に示す第1実施形態の予熱制御のステップS17と同様である。
ステップS18では、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過したか否かを判定する。ステップS18にて、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過していると判定された場合には(ステップS18:YES)、ステップS19へ進む。ステップS18にて、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過していないと判定された場合には(ステップS18:NO)、ステップS16に戻る。なお、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過しているとの判定には、現在の時刻が予熱開始時刻Time3に達している場合と、現在の時刻が既に予熱開始時刻Time3を経過している場合の両方が含まれる。
このように、第3実施形態の予熱制御では、現在の時刻が予熱開始時刻Time3に達するまで、ステップS16〜S18の処理が繰り返され、ステップS16が実行される際の圧縮機温度Tcomp及び冷却量相関情報に応じた予熱時間Tpre2が決定される。
第3実施形態の予熱制御のステップS19〜S21は、図4に示す第1実施形態の予熱制御のステップS19〜S21と同様である。
このように、第3実施形態では、乗員が遠隔操作装置99を操作することによって、乗車予定信号を通信装置62に送信すると、車両が自動運転によって乗車予定時刻Time1に乗員が車両に乗り込む場所に移動し、自動的に圧縮機11が予熱され、車両用温度調整装置1によって、乗車予定時刻Time1には車室内がプレ空調される。
制御部60は、将来の圧縮機11の冷却量の増加に伴って、予熱時間Tpre2を増加する(図8のステップS16)。これにより、将来の圧縮機11の冷却量が大きい程、圧縮機11がより長時間予熱される。このため、将来の圧縮機11の冷却量が大きく、圧縮機11が低温となり、圧縮機11の内部に滞留する冷媒が凝縮しやすい場合であっても、より確実に、圧縮機11の内部に滞留する冷媒の凝縮を抑制することができる。
この結果、より確実に、圧縮機11内の冷凍機油が外部に排出されてしまうことを抑制して、圧縮機11の保護を図ることができる。更に、圧縮機11を予熱する際に、不必要なエネルギが消費されてしまうことを抑制することができる。
(第4実施形態)
上記説明した第1実施形態の車両用温度調整装置1と異なる点について、図9を用いて、第4実施形態の車両用温度調整装置1について説明する。第4実施形態の車両用温度調整装置1について、第1実施形態の車両用温度調整装置1と同じ構造については、図9において、図1に示す第1実施形態の車両用温度調整装置1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
第4実施形態の車両用温度調整装置1では、電力が供給されることによって発熱し、圧縮機11を予熱する電気ヒータ75が設けられ、この電気ヒータ75で圧縮機11を予熱する。電気ヒータ75は、制御部60の出力側に接続され、制御部60によってON/OFF制御がなされる。
第4実施形態の車両用温度調整装置1では、圧縮機11を予熱するために充分な性能の電気ヒータ75を設定することによって、確実に圧縮機11を予熱することができ、より確実に圧縮機11の内部に滞留する冷媒の凝縮を抑制することができる。
(第5実施形態)
上記説明した第1実施形態の車両用温度調整装置1と異なる点について、図10を用いて、第5実施形態の車両用温度調整装置1について説明する。第5実施形態の車両用温度調整装置1について、第1実施形態の車両用温度調整装置1と同じ構造については、図10において、図1に示す第1実施形態の車両用温度調整装置1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
第5実施形態の車両用温度調整装置1では、車両に搭載されている車載機器の排熱によって、圧縮機11を予熱する。車載機器として、エンジン81が含まれる。第5実施形態の車両用温度調整装置1では、エンジン81の冷却水路と圧縮機11に形成された冷却水路との間で冷却水が循環する冷却水循環流路85及び冷却水循環流路85内で冷却水を循環させるポンプ86が設けられている。ポンプ86は、制御部60の出力側に接続され、制御部60によって制御される。
このように、車両に搭載されている車載機器であるエンジン81の排熱によって、圧縮機11を予熱することにすると、圧縮機11の予熱に電力等のエネルギを使用しないので、エネルギが無駄に消費されない。
なお、車載機器であるモータジェネレータやインバータ装置の排熱によって圧縮機11を予熱する実施形態であってもよい。この実施形態では、モータジェネレータやインバータ装置の冷却水路と圧縮機11の冷却水路との間で冷却水が循環する冷却水循環流路及び冷却水循環流路内で冷却水を循環させるポンプが設けられている。
(第6実施形態)
上記説明した第1実施形態の車両用温度調整装置1と異なる点について、図11を用いて、第6実施形態の車両用温度調整装置1について説明する。
第1実施形態の車両用温度調整装置1では、乗車予定信号の乗車予定時刻Time1に基づいて温度調整開始時刻Time2、及び予熱開始時刻Time3を決定した例を説明したが、予熱時間Tpre2が決定された際に(具体的には、図4のステップS16)、現在の時刻が予熱開始時刻Time3を経過していることもある。
そこで、第6実施形態の車両用温度調整装置1では、現在の時刻が、予熱開始時刻Time3を経過している場合に、制御部60は、図11に示すように、圧縮機11の通常始動制御の回転数よりも低い回転数で圧縮機11を始動させる低回転始動制御を実行する。
なお、予熱時間Tpre2が決定された際に、予熱開始時刻Time3を経過していない場合には、通常始動制御が実行される。通常始動制御では、図11に示すように、圧縮機11の回転数は、第1中間回転数N1にされて、第1中間回転数N1を予め定められた第1保持時間T1だけ保持された後に、各運転モードで圧縮機11が稼働される回転数にされる。第1中間回転数N1は、各運転モードで圧縮機11が稼働される回転数よりも低い回転数である。
一方で、低回転始動制御では、図11に示すように、圧縮機11の回転数は、第2中間回転数N2にされ、第2中間回転数N2を予め定められた第2保持時間T2だけ保持された後に、第3中間回転数N3にされ、第3中間回転数N3を予め定められた第3保持時間T3だけ保持された後に、各運転モードで圧縮機11が稼働される回転数にされる。
第2中間回転数N2は、第1中間回転数N1よりも低い回転数である。第3中間回転数N3は、第2中間回転数N2よりも高く、各運転モードで圧縮機11が稼働される回転数よりも低い回転数であり、第1中間回転数N1と同じ回転数、又は第1中間回転数N1に近い回転数である。
このように、第6実施形態の車両用温度調整装置1では、予熱時間Tpre2が決定された際に、既に予熱開始時刻Time3を経過している場合に、圧縮機11は、圧縮機11の通常始動時の回転数よりも低い回転数で始動される。
これにより、圧縮機11を予熱時間Tpre2だけ予熱できず、圧縮機11内の冷凍機油が外部に排出されてしまう可能性が有る場合に、圧縮機11の摺動部が通常始動時の圧縮機11の回転数よりも低い回転数で回転される。このため、圧縮機11の寿命の低下を抑制することができる。
(他の実施形態)
上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよく、第1実施形態車両用温度調整装置1〜第6実施形態の車両用温度調整装置1を適宜組み合わせた車両用温度調整装置1であっても良い。例えば、第1実施形態の車両用温度調整装置1と第2実施形態の車両用温度調整装置1を組み合わせ、車両用温度調整装置1によって温度調整対象物である送風空気とバッテリ43を同時に加熱する実施形態であってもよい。
上記説明した実施形態では、圧縮機温度センサ51gは、圧縮機11に配置され、又は圧縮機11の近傍に配置されている。圧縮機温度センサ51gは、圧縮機11の周辺部位の温度(例えば、吐出側の配管温度)を計測するように配置されていてもよい。この実施形態では、制御部60は、圧縮機11の周辺部位の温度に基づいて、圧縮機温度Tcompを推定する。
或いは、制御部60が、外気温センサ51bや車両のその他の部位の温度を検出する温度センサによって検出された温度情報に基づいて、圧縮機温度Tcompを推定するようになっていてもよい。
上記説明した実施形態では、圧縮機11の圧縮機構を駆動する電動モータは、交流モータ11aである。圧縮機11の圧縮機構を駆動する電動モータは、直流モータであってもよい。或いは、エンジン駆動式の圧縮機11を採用してもよい。エンジン駆動式の圧縮機11としては、吐出容量を変化させることによって冷媒吐出能力を調整可能に構成された可変容量型圧縮機を採用してもよい。この実施形態では、第4実施形態のように、電気ヒータ75によって生成された熱によって、圧縮機11を予熱することができる。或いは、第5実施形態にように、車両に搭載されている車載機器の排熱によって、圧縮機11を予熱することができる。
乗員と離れた位置に停車している車両に乗員が乗り込む場合に、制御部60が、車両と乗員との距離や位置関係に基づいて、乗車予定時刻Time1Time1を演算し、圧縮機11の予熱、及び車両用温度調整装置1による車室内の空調を実行する実施形態であってもよい。
この実施形態では、車両及び乗員が所持する遠隔操作装置99には、GPS衛星等の人工衛星から、測位信号を受信する測位信号受信装置が搭載されている。
制御部60は、車両に搭載された測位信号受信装置によって受信した測位信号に基づいて、車両の位置を演算する。また、乗員が所持する遠隔操作装置99は、遠隔操作装置99に搭載された測位信号受信装置によって受信した測位信号に基づいて、遠隔操作装置99の位置、つまり、乗員の位置を演算する。遠隔操作装置99は、遠隔操作装置99の位置情報を乗車予定信号として、車両の通信装置62に送信する。そして、制御部60は、車両の位置及び遠隔操作装置99の位置に基づいて、車両と乗員との距離や位置関係に基づいて、乗車予定時刻を演算する。このように、遠隔操作装置99の位置情報は、乗員の乗車予定時刻Time1に関連する乗車予定信号である。
この実施形態では、乗員と離れた位置に停車している車両に乗員が乗り込む場合に、圧縮機11が自動的に予熱され、乗車予定時刻に車両用温度調整装置1によって車室内がプレ空調される。
図4、6、8にて決定される予熱時間Tpre2が、熱時間Tpre2だけ圧縮機11を予熱した場合に、圧縮機11の始動時に、圧縮機11内の冷媒が気化するのに必要な時間に所定の余裕時間(例えば数10秒〜数分)を加えた時間であり、制御マップがこのような予熱時間Tpre2が決定される実施形態であってもよい。
上記した実施形態では、車両はハイブリッド車両である。車両用温度調整装置1は、エンジンのみの駆動力で駆動される車両や、モータジェネレータのみの駆動力で駆動される電気自動車にも適用できる。