本発明は、ロール状ウェットティッシュ等の多数の単位シートが帯状に連接されてなる長尺シート状物を内部に収納でき、当該長尺シート状物が単位シート毎に取り出されるための構成を備えたシート状物収納容器、及び、これに用いられるシート状物分配用チップに関する。
不織布等のシート状物が多数枚分収納されてなる製品は、使い捨てできる拭き取り用シートとして、家庭内の清掃や人体の清浄用等、様々な場面で使用されている。このような製品には、シート状物を一枚分ずつ容易に取り出し得ることが求められており、この需要を満たすものとして、一般に「ボトルタイプ」と呼ばれる製品が広く知られている。
「ボトルタイプ」製品としては、中空円筒状の収納容器内に、ロール状に巻回された長尺のシート状物が収納されたものが一般的である。この長尺シート状物には、一定間隔でミシン目等の脆弱部が設けられており、使用者がシート状物の一端を収納容器に設けられた小孔やスリットに挿通して引き出すことにより、引き出された脆弱部においてシート状物が切断されるようになっている。これにより、一枚分のシート状物を取り出すと同時に、次の一枚分の一部が引き出され、次回の取り出しの準備が整った状態となる。
ここで、「ボトルタイプ」製品の特徴として、中に収納する長尺シート状物を詰め替えることにより、容器を再利用できる点が挙げられる。このように中身を詰め替えることができる製品の場合、詰め替え作業の度に、シート状物の先端を上述の小孔又はスリットに挿通させる作業が必要となる。また、単位シート同士の連結が脆弱過ぎて、収納容器内部でシートが切断されてしまった場合にも、同様の作業が必要である。
しかしながら、このような製品の収納容器に設けられた小孔やスリットは、シート状物が引き出される際に、シート状物が脆弱部において切断されるのに十分な抵抗力を付与し得るよう設計されたものであるため、シート状物の先端を挿通させるには小さ過ぎる場合が通例である。
このような課題を解決するものとして、特許文献1の第一実施例(図6参照)には、シート状物の引き出しに用いられる小孔及びスリット(引き出し孔901)にスリットを介して連接した大径の開口(挿通孔902)を設ける技術が開示されている。挿通孔902は、シート状物の先端を容易に挿通し得る十分な大きさを有しており、この技術によれば、挿通孔902に挿通されたシート状物を、挿通状態のままスリットを経由させて引き出し孔901の中心に移動させることにより、シート状物の先端を引き出し孔901に容易に挿通させることができる。
また、特許文献1の第二実施例(図7参照)には、シート状物の引き出しに用いられる小孔及びスリット(引き出し孔911)、並びに、一本のスリット(スリット915)を介して引き出し孔911に連接した切り欠き(ガイド溝916)が設けられた取出部(板体914)を有するシート状物収納容器の蓋体91も開示されている。この板体914は、蓋体本体(蓋本体913)の下面に一端部が固着されており、常態では自身の弾性によって蓋本体913の下面に密着している。使用者は、板体914の一部をその弾性に抗して蓋本体913から離反させて保持した状態において、シート状物をガイド溝916からスライドさせることにより、シート状物を引き出し孔911へ挿通させることができる。その後、さらに、板体914を蓋本体913から離反状態に保持したままで、蓋本体913の、引き出し孔911の上方に位置する部分に設けられた開口(挿通孔912)に、シート状物の一端を挿通させることにより、シート状物の取り出し準備が整う。この構成によれば、シート状物を挿通した後は、板体914が自然に蓋本体913に密着し、不要な開口を閉塞することができる。
しかしながら、特許文献1の第一実施例によるシート状物収納容器の蓋体90は、シート状物の先端を挿通させた後においても、シート状物を引き出そうとする度に不要な大面積の開口が表出する構成となっており、容器内部への異物混入や、ウェットシートの場合にはシート状物の乾燥が助長されるものであった。一方、第二実施例によるシート状物収納容器の蓋体91は、シート状物の先端の挿通を補助するとともに、不要な開口を閉塞する構成を備えているものの、シート状物の取り出し準備が整うまでに、板体914をその弾性に抗して保持した状態で複数の作業を行わねばならず、シート状物の引き出しに用いられる小孔又はスリットに直接シート状物をねじ込む場合と比較して、利便性が向上したとは言い難い構成となってしまっていた。さらに、引き出し孔911の周辺が複層構造となっているため、構造が複雑であり、安価であることを求められるウェットシート製品に用いるには、製造コストが割高であった。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑み、シート状物の先端を挿通させる作業の簡便化、容器内部への異物混入やウェットシートの乾燥の抑制、及び、製造コストの低廉化を並立し得るシート状物収納容器及びシート状物分配用チップを提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の第1の側面に係るシート状物収納容器によれば、多数の単位シートが帯状に連接されてなる長尺シート状物を収納するとともに、前記長尺シート状物全体を一度に出し入れ可能な開口部が形成された容器本体と、前記開口部を開閉するとともに、前記長尺シート状物が前記単位シート毎に取り出されるよう構成された取出部を有する蓋体とを備えたシート状物収納容器において、前記取出部は、可撓性を有する素材からなる単層構造であり、開口及びスリットのうち少なくとも一方からなる貫通部を有する分配部と、一端において前記貫通部と連結したスリットを有する補助部とを備えるよう構成することができる。
前記構成によれば、補助部のスリット周辺を押圧することにより、シート状物を挿通させるための開口が形成され、押圧をやめると取出部を形成する素材の弾性により開口が閉塞される。よって、開口が形成されている時間を必要最小限に抑えることができ、容器内部への異物混入やウェットシートの乾燥を抑制することができる。
また、取出部が単層構造であるため、シート状物を挿通させる作業の前後で、複層構造の場合のように閉塞のための層を取り除いたり元に戻したりする手間を必要とせず、シート状物挿通時の作業工程を簡便化できる。
さらに、取出部が単層構造という簡素なつくりであることで、複雑な製造工程を必要とせず、製造コストが抑えられる。
すなわち、前記構成によれば、前記3つの効果を並立させることができ、需要者にとっても供給者にとっても有益なシート状物収納容器を提供することができる。
また、本発明の第2の側面に係るシート状物収納容器によれば、前記補助部のスリットを、一直線状ではない形状とすることができる。
スリットが一直線状である場合には、スリットをその幅方向に押し広げなければ開口を生じさせられないが、前記構成によれば、補助部のスリットによって縁取られた内部が、補助部のなす面に対して垂直方向に可動となるため、シート状物の挿通時に可動域内部の1点を押圧するだけでより容易に所望の大きさの開口を生じさせることができる。
さらにまた、本発明の第3の側面に係るシート状物収納容器によれば、前記補助部のスリットを、分岐を有する形状とすることができる。
前記構成によれば、スリットの分岐点の周辺に、少なくとも2つの独立した可動域が形成されるため、当該分岐点を押圧するだけで複数の可動域による開口を生じさせることができ、シート状物の挿通時に、より容易に所望の大きさの開口を生じさせることができる。
さらにまた、本発明の第4の側面に係るシート状物収納容器によれば、前記補助部のスリットを、2以上の分岐を有する形状とすることができる。
前記構成によれば、補助部における可動域をより大きくすることができるため、シート状物の挿通時に、より大きな開口を形成することができ、より分厚いシートでも容易に挿通させることができる。
さらにまた、本発明の第5の側面に係るシート状物収納容器によれば、前記補助部のスリットは、最も前記貫通部に近い分岐点からの枝スリットが、該分岐点において、該スリットの該分岐点より前記貫通部側の部分である幹スリットとなす角が90度以上であるよう構成することができる。
前記構成によれば、シート状物を挿通させるための開口が、幹スリットに向けて狭くなる形状となるため、開口に挿通されたシートを幹スリットへより容易に誘導することができ、分配部へのシートの誘導がより容易となる。
さらにまた、本発明の第6の側面に係るシート状物分配用チップによれば、多数の単位シートが帯状に連接されてなる長尺シート状物を収納するとともに、前記長尺シート状物全体を一度に出し入れ可能な開口部が形成された容器本体と、前記開口部を開閉するとともに、前記長尺シート状物が前記単位シート毎に取り出されるよう構成された蓋体とを備えたシート状物収納容器の、前記蓋体を構成する部品であるシート状物分配用チップにおいて、前記蓋体の本体部に着脱可能に取り付けられるよう構成された取付部と、可撓性を有する素材からなる単層構造であり、開口及びスリットのうち少なくとも一方からなる貫通部を有する分配部、及び、一端において前記貫通部と連結したスリットを有する補助部を有する取出部とを備えるよう構成することができる。
前記構成によれば、シート状物収納容器の他の部分より劣化が早い取出部周辺のみを取り替え可能とすることができ、シート状物収納容器をより長く使用し続けることができるようになるため、資源の有効活用につながる。
本発明を適用したシート状物収納容器の斜視図である。
本発明を適用したシート状物収納容器の蓋体の斜視図である。
本発明を適用したシート状物分配用チップの平面図である。なお、図中の網掛けは、平面状の部材の一部を指示するためのものであり、部材の模様を示すものではない。
本発明を適用したシート状物分配用チップの取出部にシート状物の先端を挿通する工程の説明図である。
本発明を適用したシート状物分配用チップの取出部の他の実施例を示す図である。
特許文献1に開示された発明を適用した第一実施例に係るシート状物収納容器の斜視図である。
特許文献1に開示された発明を適用した第二実施例に係るシート状物収納容器の平面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例)
本発明を適用したシート状物収納容器1の斜視図を図1に示す。なお、図1に示す状態を正立として、これ以降の説明を行う。
また、シート状物収納容器1に収納されるシート状物は、一般的なシート状物巻回体を想定して説明を行う。シート状物巻回体は、長さ方向の一定間隔おきに設けられたミシン目によって多数の単位シートに分割された長尺シート状物がロール状に巻回されたものである。また、シート状物巻回体の中心に位置する、長尺シート状物の端部をシート状物先端と称す。
(シート状物収納容器1の構成)
図1に示すように、シート状物収納容器1は容器本体2と蓋体3とにより構成されている。図1の状態では、蓋体3が容器本体2に螺着等の着脱可能な方法により係着されている。
(容器本体2)
容器本体2は、シート状物巻回体を内部に収納するための部材である。
図1に示すように、容器本体2は略円筒状の部材であり、中空構造となっている。また、その下端は底面により閉塞される一方、その上端は開口21(図示していない。)となっており、開口21の周縁部は、蓋体3を係着させることができる構造となっている。蓋体3の係着用構造としては、例えば雄ねじ形状等を採用することができる。
容器本体2の素材としては、軽量で剛性及び気密性を有するプラスチック等が好適であるが、これに限定されない。
(蓋体3)
蓋体3は、容器本体2に設けられた開口21を閉塞するための密閉機能と、引き出されたシート状物先端を摘まみ易い位置に保持するための先端保持機能と、シート状物が引き出される際に、長尺シート状物の、シート状物収納容器1の外部に引き出された部分に対して、ミシン目において切断されるための抵抗力を与えるための分配機能とを有する部材である。
図2に、蓋体3の斜視図を示す。この図に示すように、蓋体3は、蓋体本体4、小蓋5及びチップ6(特許請求の範囲における「シート状物分配用チップ」の一例に対応する。)から構成されている。
(蓋体本体4)
蓋体本体4は、前記密閉機能に関連した部材である。
蓋体本体4は、容器本体2と略同径のごく短い略円筒状の部材であり、中空構造となっている。また、正立状態において、その上端は略閉塞される一方、その下端は開口43(図示していない。)となっている。開口43の周縁部は、開口21の周縁部に設けられた係着用構造に対応する構造となっており、例えば、開口21の周縁部に雄ねじが形成されている場合には開口43の周縁部には雌ねじが形成されている。
蓋体本体4の素材としては、容器本体2と同様に、軽量で剛性及び気密性を有するプラスチック等が望ましい。
また、蓋体本体4の上端面には、取出部7(詳細は後述する。)を配するための開口41が設けられている。さらに、開口41の周囲は、蓋体本体4の内側において、チップ6(詳細は後述する。)を係着させることができる構造となっており、蓋体本体4の外側においては、引き出されたシート状物先端を内部に収納するための枠42が設けられている。
(小蓋5)
小蓋5は、前記密閉機能に関連した部材である。
図2に示すように、小蓋5は、蓋体本体4に対して蝶着された略円盤状の部材であって、開口41の開閉を担っている。小蓋5の内側には枠42に対応した枠受け51が設けられており、枠42と枠受け51が係着されることで、小蓋5が開口41を閉塞した状態で蓋体本体4に固定されるとともに、枠42内部の空間が外部と遮断されるようになっている。
小蓋5には、プラスチック等、蓋体本体4と同一の素材を用いればよいが、別素材を採用することも可能である。
(チップ6)
図3に、チップ6の平面図を示す。チップ6は、例えばシリコンのような可撓性を有する素材からなる小片であり、抜き加工やプレス成型等により製造することができる。図3に示すように、チップ6の周縁部は取付部8となっており、その内側に取出部7が形成されている。
(取出部7)
取出部7は、図3に示す分配部71と補助部72とからなる。取出部7は、チップ6が蓋体本体4に取り付けられた状態において、平面視で開口41内部に位置する。取出部7が配された部分では、シート状物の挿通を行う際の状態(小蓋5が開かれた状態)において、シート状物収納容器1の内部空間と外部空間が、取出部7による一層のみで隔てられるようになっている。なお、本発明における「一層(単層)」とは、分離可能に設けられた他の層を有さないという意味であり、これを満たすものであれば、部分的な凹凸や厚薄があっても一層であるとする。
また、取出部7は、チップ6ではなく蓋体本体4に直接設けられてもよい。この場合、蓋体本体4自体を可撓性を有する素材とし、開口41を設ける代わりに取出部7を蓋体本体4に一体形成すればよい。
(分配部71)
分配部71は、前記先端保持機能及び分配機能に関連した部材である。
図3に示すように、分配部71には狭小な開口からなる貫通部711が設けられており、チップ6の貫通部711を取り囲む端縁部近傍が、貫通部711に挿通されたシート状物を掴持するための分配弁712となっている。
なお、貫通部711は狭小な開口のみからなる態様に限定されず、スリットからなる態様や、開口とスリットが併設されてなる態様であってもよい。
また、取出部7のうち分配部71のみを分厚い態様としたり、上方に突出させた態様としたりすることも可能である。
(補助部72)
補助部72は、シート状物先端を貫通部711に挿通させる際の補助となる部材である。
図3に示すように、補助部72にはスリット721が形成されており、これにより、チップ6の一部が、チップ6のなす面に垂直な方向に弾性変形可能な閉塞弁722となっている。
スリット721は、貫通部711と分岐点Pとをつなぐ一直線状の幹スリット7211と、分岐点Pにおいて幹スリット7211と連結された2本の枝スリット7212とからなる。図3においては、幹スリット7211を柄とする刺又のような形状のスリット721を例示しているが、スリット721の形状はこれに限定されない。
また、スリット721は幅を有さないスリットである。このため、閉塞弁722は、外力が加わっていない状態において、それぞれの端縁部が隣り合う閉塞弁722の端縁部と隙間なく接触しているという特徴を有している。
なお、スリット721は、チップ6の厚み方向に太さが変化するように形成されてもよい。例えば、閉塞弁722の端縁部同士がチップ6の厚み方向上端においてのみ接触し、その接触部からチップ6の厚み方向下端に向かうにつれて端縁部同士の間隔が広がっていくような形状とすれば、シート状物の挿通をより容易に行うことができるようになる。
(取付部8)
取付部8は、蓋体本体4の内側において、開口41の周囲に設けられた係着用構造と対応する構造となっている。
図2に示すように、チップ6は、取付部8を介して、蓋体本体4の内側から開口41を閉塞するように係着される。
(シート状物収納容器1の使用方法及び使用に伴う動作)
シート状物収納容器1を使用する際には、使用者は、まず、容器本体2から蓋体3を取り外し、出現した開口21よりシート状物巻回体を容器本体2内部へ挿入する。続いて、シート状物先端を取出部7に挿通し、蓋体3を再び容器本体2へ取り付ける。これ以降は、必要に応じて小蓋5を開け、取出部7に挿通された状態で保持されているシート状物先端を引張るだけで、シート状物を単位シート毎に取り出すことができる。
ここで、本発明は取出部7に特徴を有するものであるため、上記工程のうち、取出部7にシート状物先端を挿通する工程の作業手順、及び、これに伴う取出部7の各部の動作について、図4のフローチャートに基づいて詳しく説明する。
取出部7にシート状物先端を挿通する工程の初期状態では、蓋体3が容器本体2から取り外されており、容器本体2内部にはシート状物巻回体が挿入され、シート状物巻回体の中心からシート状物先端が引き出されている。また、小蓋5は開かれた状態である。
使用者は、まず、ステップST101において、蓋体3の内側から補助部72にシート状物先端を当て、外側へ向けて押圧する。これにより、閉塞弁722が蓋体3の外側に撓み、補助部72に開口723(図示していない。)が生じるとともに、シート状物先端が蓋体3の外側に押し出される。
続いて、使用者は、ステップST102において、蓋体3の外側からシート状物先端を摘まんで適当な長さに引き出す。この作業の完了に伴い、閉塞弁722を押圧する必要がなくなるため、自然と指が閉塞弁722から離れる。これにより、閉塞弁722が自身の弾性により元の状態に戻ろうとし、シート状物の一部が閉塞弁722によって掴持された状態となる。
続いて、使用者は、ステップST103において、シート状物先端を摘まんで貫通部711へ向けて引張る。これにより、シート状物は、幹スリット7211を経由して貫通部711へ到達し、分配弁712によって掴持された状態となる。これで挿通は完了である。ここで、閉塞弁722は、シート状物が貫通部711に向かって移動するに従って外力から開放され、その弾性により元の平らな状態に戻るため、補助部72が再び隙間なく閉塞された状態となる。
以上の通り、取出部7にシート状物先端を挿通する工程において使用者が意識して行うことは、シート状物先端を補助部72(開口723)に押し込む作業と、シート状物を貫通部711に向けて引張る作業のみであり、ごく簡便である。作業の過程で生じた開口723は、これら作業の完了に伴って自然に閉塞されるため、作業者が意識せずとも乾燥や異物混入を抑制できる構成となっているのである。
(シート状物収納容器1による効果)
以上述べたように、取出部7が可撓性を有する素材による単層構造であり、補助部72がスリット721により形成されていれば、使用者がシート状物収納容器1を使用する際に、取出部7にシート状物先端を挿通する作業をごく容易に行うことができる。また、作業の過程で生じた開口723は、挿通作業の完了に伴って自然に閉塞されるため、作業者が意識せずとも異物混入や乾燥を抑制することができる。さらに、取出部7が単層構造という簡素なつくりであるため、複雑な製造工程を必要とせず、製造コストが抑えられる。
また、シート状物収納容器1のうち、もっとも劣化が早い部分が取出部7であるので、付替用にチップ6を単体で流通させれば、需要者は、チップ6を交換するだけでシート状物収納容器1をより長く使用することができ、資源の有効活用につながる。
(スリット721の他の形状)
補助部72に形成されるスリット721の形状は、上記形状に限定されず、例えば図5に示すように様々な形状を採用することが可能である。
図5Aに示すスリット721aでは、2本の枝スリット7212aが、分岐点Paを起点に互いに線対称の滑らかな弧を描いている。このように、幹スリット7211aと枝スリット7212aとが滑らかに連結されていることで、シート状物の幹スリット7211aへの誘導がより容易になる。
図5Bに示すスリット721bでは、幹スリット7211b上に2つの分岐点Pbがあり、各分岐点Pbにおいて、2本の枝スリット7212bが連結されている。このように、2つの分岐点を有する形状とすることで、補助部72bを押圧した際に形成される開口をより大きくすることができ、シート状物の挿通がより容易になる。このような形状のスリット721bは、分厚いシート状物の分配に用いる場合や、コンパクトサイズのシート状物収納容器であるためチップ6のサイズを大きくできない場合に特に有用である。
図5Cに示すスリット721cでは、幹スリット7211cと枝スリット7212cとが略直交するよう設けられており、その交点となるべき点よりやや貫通部711c寄りに分岐点Pcが設けられることで、分岐点Pcの近傍においてのみ、枝スリット7212cが貫通部711c側に屈曲した形状となっている。もちろん、枝スリット7212cが屈曲せず、単に幹スリット7211cと直交しているだけでも、上記効果を得ることができるが、図5Cに示すような部分的な屈曲を設けることで、幹スリット7211cと枝スリット7212cとがなす角を鈍角とすることができるため、シート状物の幹スリット7211cへの誘導がより容易になる。
本発明に係るシート状物収納容器及びシート状物分配用チップは、特に、詰め替え頻度の高い業務用やコンパクトタイプのウェットティッシュボトルに好適に使用できる。
1…シート状物収納容器
2…容器本体、21…開口
3…蓋体
4…蓋体本体、41…開口、42…枠、43…開口
5…小蓋、51…枠受け
6…チップ
7…取出部
71…分配部、711…貫通部、712…分配弁
72…補助部
721…スリット、7211…幹スリット、7212…枝スリット
722…閉塞弁
723…開口
8…取付部
P…分岐点
本発明は、ロール状ウェットティッシュ等の多数の単位シートが帯状に連接されてなる長尺シート状物を内部に収納でき、当該長尺シート状物が単位シート毎に取り出されるための構成を備えたシート状物収納容器、及び、これに用いられるシート状物分配用チップに関する。
不織布等のシート状物が多数枚分収納されてなる製品は、使い捨てできる拭き取り用シートとして、家庭内の清掃や人体の清浄用等、様々な場面で使用されている。このような製品には、シート状物を一枚分ずつ容易に取り出し得ることが求められており、この需要を満たすものとして、一般に「ボトルタイプ」と呼ばれる製品が広く知られている。
「ボトルタイプ」製品としては、中空円筒状の収納容器内に、ロール状に巻回された長尺のシート状物が収納されたものが一般的である。この長尺シート状物には、一定間隔でミシン目等の脆弱部が設けられており、使用者がシート状物の一端を収納容器に設けられた小孔やスリットに挿通して引き出すことにより、引き出された脆弱部においてシート状物が切断されるようになっている。これにより、一枚分のシート状物を取り出すと同時に、次の一枚分の一部が引き出され、次回の取り出しの準備が整った状態となる。
ここで、「ボトルタイプ」製品の特徴として、中に収納する長尺シート状物を詰め替えることにより、容器を再利用できる点が挙げられる。このように中身を詰め替えることができる製品の場合、詰め替え作業の度に、シート状物の先端を上述の小孔又はスリットに挿通させる作業が必要となる。また、単位シート同士の連結が脆弱過ぎて、収納容器内部でシートが切断されてしまった場合にも、同様の作業が必要である。
しかしながら、このような製品の収納容器に設けられた小孔やスリットは、シート状物が引き出される際に、シート状物が脆弱部において切断されるのに十分な抵抗力を付与し得るよう設計されたものであるため、シート状物の先端を挿通させるには小さ過ぎる場合が通例である。
このような課題を解決するものとして、特許文献1の第一実施例(図6参照)には、シート状物の引き出しに用いられる小孔及びスリット(引き出し孔901)にスリットを介して連接した大径の開口(挿通孔902)を設ける技術が開示されている。挿通孔902は、シート状物の先端を容易に挿通し得る十分な大きさを有しており、この技術によれば、挿通孔902に挿通されたシート状物を、挿通状態のままスリットを経由させて引き出し孔901の中心に移動させることにより、シート状物の先端を引き出し孔901に容易に挿通させることができる。
また、特許文献1の第二実施例(図7参照)には、シート状物の引き出しに用いられる小孔及びスリット(引き出し孔911)、並びに、一本のスリット(スリット915)を介して引き出し孔911に連接した切り欠き(ガイド溝916)が設けられた取出部(板体914)を有するシート状物収納容器の蓋体91も開示されている。この板体914は、蓋体本体(蓋本体913)の下面に一端部が固着されており、常態では自身の弾性によって蓋本体913の下面に密着している。使用者は、板体914の一部をその弾性に抗して蓋本体913から離反させて保持した状態において、シート状物をガイド溝916からスライドさせることにより、シート状物を引き出し孔911へ挿通させることができる。その後、さらに、板体914を蓋本体913から離反状態に保持したままで、蓋本体913の、引き出し孔911の上方に位置する部分に設けられた開口(挿通孔912)に、シート状物の一端を挿通させることにより、シート状物の取り出し準備が整う。この構成によれば、シート状物を挿通した後は、板体914が自然に蓋本体913に密着し、不要な開口を閉塞することができる。
しかしながら、特許文献1の第一実施例によるシート状物収納容器の蓋体90は、シート状物の先端を挿通させた後においても、シート状物を引き出そうとする度に不要な大面積の開口が表出する構成となっており、容器内部への異物混入や、ウェットシートの場合にはシート状物の乾燥が助長されるものであった。一方、第二実施例によるシート状物収納容器の蓋体91は、シート状物の先端の挿通を補助するとともに、不要な開口を閉塞する構成を備えているものの、シート状物の取り出し準備が整うまでに、板体914をその弾性に抗して保持した状態で複数の作業を行わねばならず、シート状物の引き出しに用いられる小孔又はスリットに直接シート状物をねじ込む場合と比較して、利便性が向上したとは言い難い構成となってしまっていた。さらに、引き出し孔911の周辺が複層構造となっているため、構造が複雑であり、安価であることを求められるウェットシート製品に用いるには、製造コストが割高であった。
本発明は、従来のこのような問題点に鑑み、シート状物の先端を挿通させる作業の簡便化、容器内部への異物混入やウェットシートの乾燥の抑制、及び、製造コストの低廉化を並立し得るシート状物収納容器及びシート状物分配用チップを提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第1の側面に係るシート状物収納容器によれば、多数の単位シートが帯状に連接されてなる長尺シート状物を収納するとともに、前記長尺シート状物全体を一度に出し入れ可能な開口部が形成された容器本体と、前記開口部を開閉するとともに、前記長尺シート状物が前記単位シート毎に取り出されるよう構成された取出部を有する蓋体とを備えたシート状物収納容器において、前記取出部は、可撓性を有する素材からなる単層構造であり、開口及びスリットのうち少なくとも一方からなる貫通部を有する分配部と、一端において前記貫通部と連結し、前記分配部と離間した位置において分岐したスリットを有する補助部とを備えるよう構成することができる。
前記構成によれば、スリットの分岐点の周辺に、少なくとも2つの独立した可動域が形成されるため、当該分岐点を押圧するだけで複数の可動域による開口を生じさせることができ、シート状物の挿通時に、容易に所望の大きさの開口を生じさせることができる。また、押圧をやめると取出部を形成する素材の弾性により開口が閉塞される。よって、開口が形成されている時間を必要最小限に抑えることができ、容器内部への異物混入やウェットシートの乾燥を抑制することができる。
また、取出部が単層構造であるため、シート状物を挿通させる作業の前後で、複層構造の場合のように閉塞のための層を取り除いたり元に戻したりする手間を必要とせず、シート状物挿通時の作業工程を簡便化できる。
さらに、取出部が単層構造という簡素なつくりであることで、複雑な製造工程を必要とせず、製造コストが抑えられる。
すなわち、前記構成によれば、前記3つの効果を並立させることができ、需要者にとっても供給者にとっても有益なシート状物収納容器を提供することができる。
また、本発明の第2の側面に係るシート状物収納容器によれば、前記補助部のスリットを、2以上の分岐を有する形状とすることができる。
前記構成によれば、補助部における可動域をより大きくすることができるため、シート状物の挿通時に、より大きな開口を形成することができ、より分厚いシートでも容易に挿通させることができる。
さらにまた、本発明の第3の側面に係るシート状物収納容器によれば、前記補助部のスリットは、最も前記貫通部に近い分岐点からの枝スリットが、該分岐点において、該スリットの該分岐点より前記貫通部側の部分である幹スリットとなす角が90度以上であるよう構成することができる。
前記構成によれば、シート状物を挿通させるための開口が、幹スリットに向けて狭くなる形状となるため、開口に挿通されたシートを幹スリットへより容易に誘導することができ、分配部へのシートの誘導がより容易となる。
さらにまた、本発明の第4の側面に係るシート状物分配用チップによれば、多数の単位シートが帯状に連接されてなる長尺シート状物を収納するとともに、前記長尺シート状物全体を一度に出し入れ可能な開口部が形成された容器本体と、前記開口部を開閉するとともに、前記長尺シート状物が前記単位シート毎に取り出されるよう構成された蓋体とを備えたシート状物収納容器の、前記蓋体を構成する部品であるシート状物分配用チップにおいて、前記蓋体の本体部に着脱可能に取り付けられるよう構成された取付部と、可撓性を有する素材からなる単層構造であり、開口及びスリットのうち少なくとも一方からなる貫通部を有する分配部、及び、一端において前記貫通部と連結し、前記分配部と離間した位置において分岐したスリットを有する補助部を有する取出部とを備えるよう構成することができる。
前記構成によれば、シート状物収納容器の他の部分より劣化が早い取出部周辺のみを取り替え可能とすることができ、シート状物収納容器をより長く使用し続けることができるようになるため、資源の有効活用につながる。
本発明を適用したシート状物収納容器の斜視図である。
本発明を適用したシート状物収納容器の蓋体の斜視図である。
本発明を適用したシート状物分配用チップの平面図である。なお、図中の網掛けは、平面状の部材の一部を指示するためのものであり、部材の模様を示すものではない。
本発明を適用したシート状物分配用チップの取出部にシート状物の先端を挿通する工程の説明図である。
本発明を適用したシート状物分配用チップの取出部の他の実施例を示す図である。
特許文献1に開示された発明を適用した第一実施例に係るシート状物収納容器の斜視図である。
特許文献1に開示された発明を適用した第二実施例に係るシート状物収納容器の平面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(実施例)
本発明を適用したシート状物収納容器1の斜視図を図1に示す。なお、図1に示す状態を正立として、これ以降の説明を行う。
また、シート状物収納容器1に収納されるシート状物は、一般的なシート状物巻回体を想定して説明を行う。シート状物巻回体は、長さ方向の一定間隔おきに設けられたミシン目によって多数の単位シートに分割された長尺シート状物がロール状に巻回されたものである。また、シート状物巻回体の中心に位置する、長尺シート状物の端部をシート状物先端と称す。
(シート状物収納容器1の構成)
図1に示すように、シート状物収納容器1は容器本体2と蓋体3とにより構成されている。図1の状態では、蓋体3が容器本体2に螺着等の着脱可能な方法により係着されている。
(容器本体2)
容器本体2は、シート状物巻回体を内部に収納するための部材である。
図1に示すように、容器本体2は略円筒状の部材であり、中空構造となっている。また、その下端は底面により閉塞される一方、その上端は開口21(図示していない。)となっており、開口21の周縁部は、蓋体3を係着させることができる構造となっている。蓋体3の係着用構造としては、例えば雄ねじ形状等を採用することができる。
容器本体2の素材としては、軽量で剛性及び気密性を有するプラスチック等が好適であるが、これに限定されない。
(蓋体3)
蓋体3は、容器本体2に設けられた開口21を閉塞するための密閉機能と、引き出されたシート状物先端を摘まみ易い位置に保持するための先端保持機能と、シート状物が引き出される際に、長尺シート状物の、シート状物収納容器1の外部に引き出された部分に対して、ミシン目において切断されるための抵抗力を与えるための分配機能とを有する部材である。
図2に、蓋体3の斜視図を示す。この図に示すように、蓋体3は、蓋体本体4、小蓋5及びチップ6(特許請求の範囲における「シート状物分配用チップ」の一例に対応する。)から構成されている。
(蓋体本体4)
蓋体本体4は、前記密閉機能に関連した部材である。
蓋体本体4は、容器本体2と略同径のごく短い略円筒状の部材であり、中空構造となっている。また、正立状態において、その上端は略閉塞される一方、その下端は開口43(図示していない。)となっている。開口43の周縁部は、開口21の周縁部に設けられた係着用構造に対応する構造となっており、例えば、開口21の周縁部に雄ねじが形成されている場合には開口43の周縁部には雌ねじが形成されている。
蓋体本体4の素材としては、容器本体2と同様に、軽量で剛性及び気密性を有するプラスチック等が望ましい。
また、蓋体本体4の上端面には、取出部7(詳細は後述する。)を配するための開口41が設けられている。さらに、開口41の周囲は、蓋体本体4の内側において、チップ6(詳細は後述する。)を係着させることができる構造となっており、蓋体本体4の外側においては、引き出されたシート状物先端を内部に収納するための枠42が設けられている。
(小蓋5)
小蓋5は、前記密閉機能に関連した部材である。
図2に示すように、小蓋5は、蓋体本体4に対して蝶着された略円盤状の部材であって、開口41の開閉を担っている。小蓋5の内側には枠42に対応した枠受け51が設けられており、枠42と枠受け51が係着されることで、小蓋5が開口41を閉塞した状態で蓋体本体4に固定されるとともに、枠42内部の空間が外部と遮断されるようになっている。
小蓋5には、プラスチック等、蓋体本体4と同一の素材を用いればよいが、別素材を採用することも可能である。
(チップ6)
図3に、チップ6の平面図を示す。チップ6は、例えばシリコンのような可撓性を有する素材からなる小片であり、抜き加工やプレス成型等により製造することができる。図3に示すように、チップ6の周縁部は取付部8となっており、その内側に取出部7が形成されている。
(取出部7)
取出部7は、図3に示す分配部71と補助部72とからなる。取出部7は、チップ6が蓋体本体4に取り付けられた状態において、平面視で開口41内部に位置する。取出部7が配された部分では、シート状物の挿通を行う際の状態(小蓋5が開かれた状態)において、シート状物収納容器1の内部空間と外部空間が、取出部7による一層のみで隔てられるようになっている。なお、本発明における「一層(単層)」とは、分離可能に設けられた他の層を有さないという意味であり、これを満たすものであれば、部分的な凹凸や厚薄があっても一層であるとする。
また、取出部7は、チップ6ではなく蓋体本体4に直接設けられてもよい。この場合、蓋体本体4自体を可撓性を有する素材とし、開口41を設ける代わりに取出部7を蓋体本体4に一体形成すればよい。
(分配部71)
分配部71は、前記先端保持機能及び分配機能に関連した部材である。
図3に示すように、分配部71には狭小な開口からなる貫通部711が設けられており、チップ6の貫通部711を取り囲む端縁部近傍が、貫通部711に挿通されたシート状物を掴持するための分配弁712となっている。
なお、貫通部711は狭小な開口のみからなる態様に限定されず、スリットからなる態様や、開口とスリットが併設されてなる態様であってもよい。
また、取出部7のうち分配部71のみを分厚い態様としたり、上方に突出させた態様としたりすることも可能である。
(補助部72)
補助部72は、シート状物先端を貫通部711に挿通させる際の補助となる部材である。
図3に示すように、補助部72にはスリット721が形成されており、これにより、チップ6の一部が、チップ6のなす面に垂直な方向に弾性変形可能な閉塞弁722となっている。
スリット721は、貫通部711と分岐点Pとをつなぐ一直線状の幹スリット7211と、分岐点Pにおいて幹スリット7211と連結された2本の枝スリット7212とからなる。図3においては、幹スリット7211を柄とする刺又のような形状のスリット721を例示しているが、スリット721の形状はこれに限定されない。
また、スリット721は幅を有さないスリットである。このため、閉塞弁722は、外力が加わっていない状態において、それぞれの端縁部が隣り合う閉塞弁722の端縁部と隙間なく接触しているという特徴を有している。
なお、スリット721は、チップ6の厚み方向に太さが変化するように形成されてもよい。例えば、閉塞弁722の端縁部同士がチップ6の厚み方向上端においてのみ接触し、その接触部からチップ6の厚み方向下端に向かうにつれて端縁部同士の間隔が広がっていくような形状とすれば、シート状物の挿通をより容易に行うことができるようになる。
(取付部8)
取付部8は、蓋体本体4の内側において、開口41の周囲に設けられた係着用構造と対応する構造となっている。
図2に示すように、チップ6は、取付部8を介して、蓋体本体4の内側から開口41を閉塞するように係着される。
(シート状物収納容器1の使用方法及び使用に伴う動作)
シート状物収納容器1を使用する際には、使用者は、まず、容器本体2から蓋体3を取り外し、出現した開口21よりシート状物巻回体を容器本体2内部へ挿入する。続いて、シート状物先端を取出部7に挿通し、蓋体3を再び容器本体2へ取り付ける。これ以降は、必要に応じて小蓋5を開け、取出部7に挿通された状態で保持されているシート状物先端を引張るだけで、シート状物を単位シート毎に取り出すことができる。
ここで、本発明は取出部7に特徴を有するものであるため、上記工程のうち、取出部7にシート状物先端を挿通する工程の作業手順、及び、これに伴う取出部7の各部の動作について、図4のフローチャートに基づいて詳しく説明する。
取出部7にシート状物先端を挿通する工程の初期状態では、蓋体3が容器本体2から取り外されており、容器本体2内部にはシート状物巻回体が挿入され、シート状物巻回体の中心からシート状物先端が引き出されている。また、小蓋5は開かれた状態である。
使用者は、まず、ステップST101において、蓋体3の内側から補助部72にシート状物先端を当て、外側へ向けて押圧する。これにより、閉塞弁722が蓋体3の外側に撓み、補助部72に開口723(図示していない。)が生じるとともに、シート状物先端が蓋体3の外側に押し出される。
続いて、使用者は、ステップST102において、蓋体3の外側からシート状物先端を摘まんで適当な長さに引き出す。この作業の完了に伴い、閉塞弁722を押圧する必要がなくなるため、自然と指が閉塞弁722から離れる。これにより、閉塞弁722が自身の弾性により元の状態に戻ろうとし、シート状物の一部が閉塞弁722によって掴持された状態となる。
続いて、使用者は、ステップST103において、シート状物先端を摘まんで貫通部711へ向けて引張る。これにより、シート状物は、幹スリット7211を経由して貫通部711へ到達し、分配弁712によって掴持された状態となる。これで挿通は完了である。ここで、閉塞弁722は、シート状物が貫通部711に向かって移動するに従って外力から開放され、その弾性により元の平らな状態に戻るため、補助部72が再び隙間なく閉塞された状態となる。
以上の通り、取出部7にシート状物先端を挿通する工程において使用者が意識して行うことは、シート状物先端を補助部72(開口723)に押し込む作業と、シート状物を貫通部711に向けて引張る作業のみであり、ごく簡便である。作業の過程で生じた開口723は、これら作業の完了に伴って自然に閉塞されるため、作業者が意識せずとも乾燥や異物混入を抑制できる構成となっているのである。
(シート状物収納容器1による効果)
以上述べたように、取出部7が可撓性を有する素材による単層構造であり、補助部72がスリット721により形成されていれば、使用者がシート状物収納容器1を使用する際に、取出部7にシート状物先端を挿通する作業をごく容易に行うことができる。また、作業の過程で生じた開口723は、挿通作業の完了に伴って自然に閉塞されるため、作業者が意識せずとも異物混入や乾燥を抑制することができる。さらに、取出部7が単層構造という簡素なつくりであるため、複雑な製造工程を必要とせず、製造コストが抑えられる。
また、シート状物収納容器1のうち、もっとも劣化が早い部分が取出部7であるので、付替用にチップ6を単体で流通させれば、需要者は、チップ6を交換するだけでシート状物収納容器1をより長く使用することができ、資源の有効活用につながる。
(スリット721の他の形状)
補助部72に形成されるスリット721の形状は、上記形状に限定されず、例えば図5に示すように様々な形状を採用することが可能である。
図5Aに示すスリット721aでは、2本の枝スリット7212aが、分岐点Paを起点に互いに線対称の滑らかな弧を描いている。このように、幹スリット7211aと枝スリット7212aとが滑らかに連結されていることで、シート状物の幹スリット7211aへの誘導がより容易になる。
図5Bに示すスリット721bでは、幹スリット7211b上に2つの分岐点Pbがあり、各分岐点Pbにおいて、2本の枝スリット7212bが連結されている。このように、2つの分岐点を有する形状とすることで、補助部72bを押圧した際に形成される開口をより大きくすることができ、シート状物の挿通がより容易になる。このような形状のスリット721bは、分厚いシート状物の分配に用いる場合や、コンパクトサイズのシート状物収納容器であるためチップ6のサイズを大きくできない場合に特に有用である。
図5Cに示すスリット721cでは、幹スリット7211cと枝スリット7212cとが略直交するよう設けられており、その交点となるべき点よりやや貫通部711c寄りに分岐点Pcが設けられることで、分岐点Pcの近傍においてのみ、枝スリット7212cが貫通部711c側に屈曲した形状となっている。もちろん、枝スリット7212cが屈曲せず、単に幹スリット7211cと直交しているだけでも、上記効果を得ることができるが、図5Cに示すような部分的な屈曲を設けることで、幹スリット7211cと枝スリット7212cとがなす角を鈍角とすることができるため、シート状物の幹スリット7211cへの誘導がより容易になる。
本発明に係るシート状物収納容器及びシート状物分配用チップは、特に、詰め替え頻度の高い業務用やコンパクトタイプのウェットティッシュボトルに好適に使用できる。
1…シート状物収納容器
2…容器本体、21…開口
3…蓋体
4…蓋体本体、41…開口、42…枠、43…開口
5…小蓋、51…枠受け
6…チップ
7…取出部
71…分配部、711…貫通部、712…分配弁
72…補助部
721…スリット、7211…幹スリット、7212…枝スリット
722…閉塞弁
723…開口
8…取付部
P…分岐点