以下図面を参照して、DCリンク部のコンデンサの短絡判定部を有するモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1により、1巻線タイプの交流モータ(以下、単に「モータ」と称する。)3を1個制御する場合について説明する。モータ3の個数は本実施形態を特に限定するものではなくこれ以外の個数であってもよく、また、モータ3は複数巻線タイプであってもよい。インバータ13は、モータの巻線ごとに設けられる。例えば、インバータ13は、1巻線タイプのモータ3が複数個ある場合はモータ3ごとに、複数巻線タイプのモータ3が1個ある場合は巻線ごとに、複数巻線タイプのモータ3が複数個ある場合は各モータ3の巻線ごとに、設けられる。交流電源2及びモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図1では、一例として交流電源2及びモータ3の相数をともに三相としている。また、モータ3の種類についても本実施形態を特に限定するものではなく、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。ここで、モータ3が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。
モータ駆動装置1は、一般的なモータ駆動装置と同様、DCリンク部12の直流電力とモータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力との間で電力変換を行うインバータ13を制御する。モータ駆動装置1内のモータ制御部10は、モータ3の(回転子の)速度(速度フィードバック)、モータ3の巻線に流れる電流(電流フィードバック)、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、モータ3の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するためのスイッチング指令を生成する。モータ制御部10によって作成されたスイッチング指令に基づいて、インバータ13による電力変換動作が制御される。
図1に示すように、第1の実施形態によるモータ駆動装置1は、コンバータ11と、DCリンク部12と、インバータ13と、短絡判定部14と、停止部15とを備える。また、第1の実施形態によるモータ駆動装置1は、モータ制御部10と、インバータ電流測定部21と、回転速度測定部22と、インバータ出力計算部23と、コンバータ入力電流測定部31と、コンバータ入力電圧測定部32と、コンバータ電力計算部33とを備える。また、モータ駆動装置1は、電磁接触器16を備えてもよい。
コンバータ11は、交流電源2から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側に出力する。コンバータ11の例としては、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、あるいは内部にスイッチング素子を備えるPWMスイッチング制御方式の整流回路などがある。本実施形態では、図1に示すように、一例として交流電源2を三相としたので、コンバータ11は三相のブリッジ回路として構成される。なお、交流電源2が単相である場合は単相ブリッジ回路で構成される。コンバータ11がダイオード整流回路である場合は、交流電源2から入力された交流電流を整流し、直流側であるDCリンク部12に直流電流を出力する。コンバータ11が120度通電型整流回路やPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、コンバータ11は、交流電源2から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力するとともにモータ減速時にはDCリンク部12の直流電力を交流電力に変換して交流電源2側へ戻すことができる交直双方向に変換可能である電力変換器として実現される。コンバータ11がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。この場合、スイッチング素子の例としては、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn−OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
DCリンク部12は、コンバータ11の直流出力側及びインバータ13の直流入力側に並列接続される。DCリンク部12は、互いに直列接続された複数のコンデンサC1〜Cn(nは2以上の整数)を有する。DCリンク部12におけるコンデンサC1〜Cnは、コンバータ11の直流出力の脈動分を抑える機能とともに直流電力を蓄積する機能を有する。
インバータ13は、DCリンク部12に並列接続され、DCリンク部12における直流電力をモータ3の駆動のための交流電力に変換して出力する。インバータ13は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。本実施形態では、図1に示すように、一例としてモータ3を三相としたので、インバータ13は三相のブリッジ回路として構成される。なお、モータ3が単相である場合は単相ブリッジ回路で構成される。インバータ13は、モータ制御部10から受信したスイッチング指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、DCリンク部12における直流電力とモータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力との間で電力変換する。より詳しくは、インバータ13は、モータ制御部10から受信したスイッチング指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、DCリンク部12を介してコンバータ11から供給される直流電力を、モータ3を駆動するための所望の電圧及び所望の周波数の交流電力に変換し、出力する(逆変換動作)。これにより、モータ3は、供給された電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて動作することになる。また、モータ3の減速時には回生電力が発生するが、モータ制御部10から受信したスイッチング指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、モータ3で発生した交流の回生電力を直流電力へ変換し、DCリンク部12へ戻す(順変換動作)。スイッチング素子の例としては、IGBT、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
短絡判定部14は、インバータ13の出力の値と予め規定された第1の閾値th1とを比較するとともにコンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値と予め規定された第2の閾値th2とを比較し、この比較の結果、インバータ13の出力が第1の閾値th1を下回った状態(インバータ13が電力変換動作を行っていない状態)において、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回ったことを検知した場合は、DCリンク部12内の複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定する。短絡判定部14の判定処理の詳細については後述する。
停止部15は、短絡判定部14が複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定した場合、モータ駆動装置1への交流電源2からの電力供給を遮断し、交流電源2からDCリンク部12へのコンバータ11を介した電力の流入を停止させる。停止部15は、図1に示すように例えばモータ駆動装置1と交流電源2との間の電路を開閉するために一般的に設けられる電磁接触器16に対して遮断指令(開指令)を出力して、電磁接触器16の接点を開離させ、モータ駆動装置1に交流電源2からの電力供給を遮断する。
短絡判定部14の判定処理に用いられるインバータ13の出力の値は、インバータ13の値とモータ3の回転速度とに基づいて計算される。このため、第1の実施形態によるモータ駆動装置1は、インバータ電流測定部21と、回転速度測定部22と、インバータ出力計算部23とを備える。
インバータ電流測定部21は、インバータ13とモータ3の間を流れるインバータ電流の値を測定する。インバータ電流測定部21は、例えばインバータ13の電力変換動作を制御するためにモータ制御部10にフィードバックされるインバータ電流を測定するために一般的に設けられる電流測定器を流用してもよい。図1では、インバータ電流測定部21はモータ制御部10の外部に設けられているが、モータ制御部10の内部に設けられてもよい。なお、図1では、一例としてモータ3を三相としたのでインバータ13は三相のブリッジ回路として構成され、インバータ電流測定部21は、インバータ13から出力される三相電流のうちの少なくとも二相分を、上記インバータ電流として測定すればよい。
回転速度測定部22は、モータ3の回転速度(回転角速度)を測定する。回転速度測定部22は、例えばモータ3の回転動作を制御するためにモータ制御部10にフィードバックされる回転速度を測定するために一般的に設けられるアブソリュートエンコーダなどの回転速度測定器を流用してもよく、この場合、ハードウェアとしての回転速度測定器を新たに設ける必要はない。
インバータ出力計算部23は、インバータ電流測定部21によって測定されたインバータ電流の値と回転速度測定部22によって測定されたモータ3の回転速度とに基づいて、インバータ13の出力の値を計算する。すなわち、インバータ出力計算部23は、インバータ電流測定部21によって測定されたインバータ電流の値と回転速度測定部22によって測定されたモータ3の回転速度とモータ3について規定されたトルク定数とを乗算して得られる値を、「インバータ13の出力の値」として算出する。なお、モータ制御部10が、インバータ13の電力変換動作及び/またはモータ3の回転動作の制御のためにインバータ出力計算機能を既に有している場合は、モータ制御部10のインバータ出力計算機能を用いてインバータ13の出力の値を求めてもよい。図1では、インバータ出力計算部23はモータ制御部10の外部に設けられているが、モータ制御部10の内部に設けられてもよい。またあるいは、インバータ出力計算部23は、インバータ電流とインバータ13の出力電圧とを乗算して得られる瞬時電力を、インバータ13の出力の値として算出してもよい。この場合、インバータ13の出力電圧は、例えばインバータ13の電力変換動作を制御するためにインバータ13に一般的に設けられる電圧測定器によって測定される。またあるいは、インバータ出力計算部23は、モータ3の回転速度の値とモータ3のトルクとを乗算して得られるモータ3の出力を、インバータ13の出力の値として算出してもよい。この場合、モータ3のトルクは、例えばトルクセンサによって測定される。
短絡判定部14の判定処理に用いられるコンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力は、第1の実施形態では、交流電源2からコンバータ11へ入力される電力として計算される。このため、第1の実施形態によるモータ駆動装置1は、コンバータ入力電流測定部31と、コンバータ入力電圧測定部32と、コンバータ電力計算部33とを備える。
コンバータ入力電流測定部31は、交流電源2からコンバータ11へ流れる入力電流の値を測定する。なお、図1では、一例として交流電源2を三相としたのでコンバータ11は三相のブリッジ回路として構成され、コンバータ入力電流測定部31は、交流電源2からコンバータ11へ入力される三相電流のうちの少なくとも二相分を、上記入力電流として測定できればよい。
コンバータ入力電圧測定部32は、交流電源2によってコンバータ11の交流入力側に印加される入力電圧を測定する。
コンバータ電力計算部33は、コンバータ入力電流測定部31によって測定された入力電流の値とコンバータ入力電圧測定部32によって測定された入力電圧の値とを乗算することによって、交流電源2からコンバータ11へ入力される電力を算出する。このように、第1の実施形態では、コンバータ電力計算部33によって算出された交流電源2からコンバータ11へ入力される電力を、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値として利用する。
なお、例えばコンバータ11がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、コンバータ入力電流測定部31、コンバータ入力電圧測定部32及びコンバータ電力計算部33は、コンバータ11の電力変換動作を制御するために一般的に設けられるコンバータ入力電流測定器、コンバータ入力電圧測定器及びコンバータ電力計算部を流用してもよい。図1では、コンバータ入力電流測定部31、コンバータ入力電圧測定部32及びコンバータ電力計算部33はモータ制御部10の外部に設けられているが、モータ制御部10の内部に設けられてもよい。
このように第1の実施形態では、短絡判定部14の判定処理に用いられるコンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力を、交流電源2からコンバータ11へ入力される電力として計算した。次に説明する第2の実施形態では、短絡判定部14の判定処理に用いられるコンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力を、コンバータ11からDCリンク部12へ出力される電力として計算される。
図2は、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。第2の実施形態によるモータ駆動装置1は、コンバータ11からDCリンク部12へ出力される電力を計算するために、コンバータ出力電流測定部41と、コンバータ出力電圧測定部42と、コンバータ電力計算部43とを備える。すなわち、第2の実施形態によるモータ駆動装置1は、第1の実施形態におけるコンバータ入力電流測定部31、コンバータ入力電圧測定部32及びコンバータ電力計算部33に代えて、コンバータ出力電流測定部41、コンバータ出力電圧測定部42及びコンバータ電力計算部43を備えるものである。なお、これ以外の回路構成要素については図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
第2の実施形態において、コンバータ出力電流測定部41は、コンバータ11からDCリンク部12へ流れる出力電流の値を測定する。コンバータ出力電流測定部41は、例えばDCリンク部12のコンデンサC1〜Cnの電圧制御あるいはコンバータ11(特にコンバータ11がPWM制御方式の整流回路の場合)の電力変換制御に用いられるコンバータ11の出力電流の値を測定するために一般的に設けられる電流測定器を流用してもよい。コンバータ出力電流測定部41は、コンバータ11とDCリンク部12との間を流れるコンバータ出力電流の値を測定できる位置に設けられればよく、例えば図2のA−1に示す位置(正極側)またはA−2の位置(負極側)に設けられる。
コンバータ出力電圧測定部42は、コンバータ11の直流出力側に出力される出力電圧を測定する。コンバータ出力電圧測定部42は、例えばDCリンク部12のコンデンサC1〜Cnの電圧制御あるいはコンバータ11(特にコンバータ11がPWM制御方式の整流回路の場合)の電力変換制御に用いられるコンバータ11の出力電圧の値を測定するために一般的に設けられる電圧測定器を流用してもよい。
コンバータ電力計算部43は、コンバータ出力電流測定部41によって測定された出力電流の値とコンバータ出力電圧測定部42によって測定された出力電圧の値とを乗算することによって、コンバータ11からDCリンク部12へ出力される電力を算出する。第2の実施形態では、コンバータ11からDCリンク部12へ出力される電力を、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力として利用する。
なお、例えばコンバータ11がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、コンバータ出力電流測定部41、コンバータ出力電圧測定部42及びコンバータ電力計算部43は、コンバータ11の電力変換動作を制御するために一般的に設けられるコンバータ入力電流測定器、コンバータ入力電圧測定器及びコンバータ電力計算部を流用してもよい。図2では、コンバータ出力電流測定部41、コンバータ出力電圧測定部42及びコンバータ電力計算部43はモータ制御部10の外部に設けられているが、モータ制御部10の内部に設けられてもよい。
以上説明したように、短絡判定部14の判定処理に用いられる「コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力」は、第1の実施形態では「交流電源2からコンバータ11へ入力される電力」であり、第2の実施形態では「コンバータ11からDCリンク部12へ出力される電力」である。
続いて、第1及び第2の実施形態における短絡判定部14の判定処理について、より詳細に説明する。
DCリンク部12内の複数のコンデンサC1〜Cnのいずれも短絡故障がない正常な状態において、インバータ13が電力変換動作を行っていない場合は、インバータ13からの出力はなくすなわち略ゼロであり、なおかつ、コンバータ11を介した交流電源2からDCリンク部12への電力の流入はなくすなわち略ゼロである。このとき、DCリンク部12のコンデンサC1〜Cnは満充電の状態で安定している。しかし、複数のコンデンサC1〜Cnのうちいずれか1つが短絡すると、短絡したコンデンサ以外の正常なコンデンサの充電が上昇し、これに伴い、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力が発生する。そこで、第1及び第2の本実施形態では、インバータ13が電力変換動作を行っていない状態において、コンバータ11を介した交流電源2からDCリンク部12への電力の流入があったか否かを判定しコンバータ11を介した交流電源2からDCリンク部12への電力の流入があったと判定された場合は、複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定する。
このため、第1及び第2の実施形態では、インバータ13が電力変換動作を行っておらずインバータ13の出力がないことを、インバータ13の出力の値が略ゼロである(すなわちインバータ13からモータ3への電力の供給はない)ことをもって検知する。すなわち、第1の閾値th1としてゼロに近い電力値を予め設定しておき、短絡判定部14により、インバータ13の出力の値が第1の閾値th1を下回った状態であるか否かを判定する。
またさらに、第1及び第2の実施形態では、インバータ13が電力変換動作を行っていない状態においてコンバータ11を介した交流電源2からDCリンク部12への電力の流入があったことを、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値がゼロではなくなったことをもって検知する。すなわち、第2の閾値th2としてある大きさの電力値を予め設定しておき、短絡判定部14により、インバータ13の出力の値が第1の閾値th1を下回った状態において、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回ったか否かを判定する。第2の閾値th2については、電力値がゼロではなくなったことさえ検知できれば十分であるので、例えばゼロよりも大きい任意の値に設定すればよい。
このように、短絡判定部14は、インバータ13の出力の値と予め規定された第1の閾値th1とを比較するとともにコンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値と予め規定された第2の閾値th2とを比較し、比較の結果、インバータ13の出力の値が第1の閾値th1を下回った状態(すなわちインバータ13が電力変換動作を行っていない状態)において、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回った場合、DCリンク部12内の複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定する。第1の閾値th1は、インバータ13の出力はないことを検知するために略ゼロに設定される。第2の閾値th2は、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値がゼロではなくなったことを検知するためにゼロより大きい任意の値に設定される。
次に、第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置1と従来のモータ駆動装置とにおいて、互いに直列接続された複数のコンデンサのうちのいずれか1つが短絡故障した場合の挙動を比較する。
図3は、第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置における短絡判定処理を例示する図である。図3において、上段はDCリンク部の電圧を例示し、中段はインバータ13の出力の値を例示し、下段はコンバータを介して交流電源からDCリンク部へ流れる電力を例示する。また、図4は、従来のモータ駆動装置におけるDCリンク部のコンデンサ短絡発生時を例示する図である。図4において、上段は1つのコンデンサの電圧を例示し、中段はDCリンク部とインバータとの間を流れる直流電流を例示し、下段はコンバータを介して交流電源からDCリンク部へ流れる入力電流を例示する。
第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置1において、インバータ13が電力変換動作を行っていない状態では、図3に示すように、インバータ13の出力の値は、第1の閾値th1を下回っている(図3の中段の波形)。例えば時刻t1において複数のコンデンサのうちのいずれか1つのコンデンサに短絡故障が発生したとすると、DCリンク部12の電圧は一時的に低下するが、その後、DCリンク部12の電圧は、短絡事故発生前のDCリンク部12の電圧まで回復する(図3の上段の波形)。ただし、短絡故障していないコンデンサには時刻t1以前のときよりも高電圧が印加されることになる。このとき、交流電源2からDCリンク部12へのコンバータ11を介した電力の流入が発生する(図3の下段の波形)。短絡判定部14により、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回ったことが検知され、この結果、DCリンク部12内の複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定される。短絡判定部14の後段には、短絡判定部14が複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定した場合にモータ駆動装置1への交流電源2からの電力供給を遮断するために電磁接触器18に対して遮断指令(開指令)を出力する停止部15が設けられており、例えば時刻t2でモータ駆動装置1に交流電源2からの電力供給を遮断することにより、交流電源2からDCリンク部12へのコンバータ11を介した入力電流の流入が停止するので、短絡故障していないコンデンサは高電圧状態から解放されて電圧が徐々に低下し、破損や発火といったさらなる故障を回避することができる。
一方、従来のモータ駆動装置においては、図4に示すように、インバータが電力変換動作を行っていない状態では、DCリンク部に設けられた直列接続された複数のコンデンサのうち、例えば時刻t1においていずれか1つのコンデンサに短絡故障が発生すると、短絡故障していないコンデンサには時刻t1以前のときよりも高電圧が印加され、交流電源からコンバータへ入力電流が流れ込み(図4の下段の波形)、短絡故障していないコンデンサの電圧が上昇する(図4の上段の波形)。その後、短絡故障していないコンデンサの高電圧印加状態がしばらく続き、時刻t2で当該短絡故障していなかったコンデンサについても破損または発火が発生して短絡し(図4の上段の波形)、また短絡故障していなかった全てのコンデンサについても同様に短絡し、コンデンサ電圧はゼロになり大電流が流れる(図4の下段の波形)。
図5は、第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
ステップS101において、短絡判定部14は、インバータ13が電力変換動作を行っていない状態であるか否かを判別するために、インバータ13の出力の値と第1の閾値th1とを比較し、DCリンク部12とインバータ13との間を流れる直流電流の値が第1の閾値th1を下回った状態であるか否かを判定する。上述のように第1の閾値th1はゼロに近い値に設定される。ステップS101において短絡判定部14によりインバータ13の出力の値が第1の閾値th1を下回った状態であると判定された場合、ステップS102へ進む。
ステップS102において、短絡判定部14は、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回ったか否かを判定する。ステップS102において短絡判定部14により入力電流の値が第2の閾値th2を上回ったと判定されなかった場合はステップS101へ戻る。
ステップS102において短絡判定部14によりコンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回ったと判定された場合はステップS103へ進む。ステップS103へ進んだ場合は、インバータ13の出力の値が予め規定された第1の閾値th1を下回った状態(すなわちインバータ13が電力変換動作を行っていない状態)において、コンバータ11を介して交流電源2からDCリンク部12へ流れる電力の値が第2の閾値th2を上回った場合であるので、短絡判定部14は、DCリンク部12内の複数のコンデンサC1〜Cnのうち少なくとも1つが短絡したと判定する。
ステップS104において、停止部15は、モータ駆動装置1への交流電源2からの電力供給を遮断し、交流電源2からDCリンク部12へのコンバータ11を介した入力電流の流入を停止させる。これにより、短絡故障していないコンデンサは高電圧状態から解放されて電圧が徐々に低下し、破損や発火といったさらなる故障を回避することができる。
モータ制御部10、短絡判定部14、停止部15、インバータ出力計算部23、並びにコンバータ電力計算部33及び43は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。この場合、例えばASICやDSPなどの演算処理装置にこのソフトウェアプログラムを動作させて各部の機能を実現することができる。上述した実施形態では、短絡判定部14及び停止部15をモータ制御部10内に設けたが、これに代えてモータ制御部10の外部のASICやDSPなどの演算処理装置に上記ソフトウェアプログラムを実行させることで各部の機能を実現させてもよく、あるいは、短絡判定部14及び停止部15の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
また、上述したように、インバータ電流測定部21、回転速度測定部22、コンバータ入力電流測定部31、コンバータ入力電圧測定部32、コンバータ出力電流測定部41、及びコンバータ出力電圧測定部42は、例えばインバータ13の電力変換動作、モータ3の回転動作、及びPWM制御方式の整流回路からなるコンバータ11の電力変換動作などを制御するために様々な測定値を得るために一般的に設けられている各種測定器を流用すればよく、新規の測定器を別途設けなくてもよい。なお、これらインバータ電流測定部21、回転速度測定部22、コンバータ入力電流測定部31、コンバータ入力電圧測定部32、コンバータ出力電流測定部41、及びコンバータ出力電圧測定部42についても、各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。この場合、各種電子回路と例えばASICやDSPなどの演算処理装置とを接続し、演算処理装置にこのソフトウェアプログラムを動作させる。
本実施形態によれば、モータ駆動装置内のコンバータとインバータとの間のDCリンク部に設けられた直列接続された複数のコンデンサの短絡故障を追加の回路を設けることなく低コストで検知することができる。