JP2019137970A - パネル部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量化を図りながらも、断熱性、機械的強度及び不燃性のいずれにも優れるパネル部材を提供する。【解決手段】無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機充填材粒子と中空樹脂粒子とを結着させる無機バインダーと、を含み、密度が0.05〜0.3g/cm3であり、中空樹脂粒子の含有量が0.4〜0.8mg/cm3である、パネル部材である。中空樹脂粒子としては、熱膨張性マイクロカプセルが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、パネル部材に関する。詳細には、本発明は、建材として使用し得るパネル部材に関する。
建物の下地材や内装材等に用いられる建築用パネルとしては、合板やパーティクルボード、中密度繊維板(MDF)などの木質系材料を芯材とし、表面に突き板や樹脂シート等の化粧シートを貼着したパネルが知られている。このような木質系材料を芯材とした建築用パネルは、重量が比較的大きいため、運搬や施工時の取り扱い性が悪いという問題がある。
そのため、このような木質系材料を芯材とするパネルに代えて、近年、無機材料を用いたパネルが開発されている。そして、無機系材料を用いることにより、軽量化を図りつつも、機械的強度、断熱性及び不燃性を高める検討が行われている。
特許文献1には、超微粒中空発泡体と、微細な繊維と、合成樹脂エマルションと、増粘剤とからなる軽量モルタル用混和材と、硬化材料とで構成した無機質断熱材が記載されている。
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂と無機充填剤と、揮発性炭化水素を内部に有する熱膨張性のマイクロカプセルを配合してなる発泡性樹脂組成物を、所定の加工温度にて押出成形し、マイクロカプセルを熱膨張させて得られる発泡体が記載されている。
特開平1−160882号公報 特開2015−151407号公報
特許文献1及び2のいずれの部材においても、無機材料が用いられており種々の性能の向上が図られている。しかし、いずれも可燃性の有機系材料を含むため、不燃性が不十分と考えられる。不燃性を向上させるには、有機材料の含有比率を小さくし、無機材料の含有比率を大きくすることが考えられる。しかし、そのようにすると密度が増大するため、軽量化を図る上で支障を来す。すなわち、パネル部材において、軽量化、機械的強度、不燃性、及び断熱性の全てを満足することは一筋縄ではいかないのが現状である。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、軽量化を図りながらも、断熱性、機械的強度及び不燃性のいずれにも優れるパネル部材を提供することにある。
本発明の態様に係るパネル部材は、無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機充填材粒子と中空樹脂粒子とを結着させる無機バインダーと、を含む。そして、密度が0.05〜0.3g/cmであり、中空樹脂粒子の含有量が0.4〜0.8mg/cmであることを特徴とする。
本発明によれば、軽量化を図りながらも、断熱性、機械的強度及び不燃性のいずれにも優れるパネル部材を提供することができる。
本発明の実施形態に係るパネル部材の内部構造を概略的に示す断面図である。 本発明の実施形態に係るパネル部材において、熱膨張性マイクロカプセルが膨張する前の状態を示す概略断面図である。 図2において示す熱膨張性マイクロカプセルが膨張した後の状態を示す概略断面図である。
以下、本実施形態に係るパネル部材について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本実施形態に係るパネル部材は、無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機充填材粒子と中空樹脂粒子とを結着させる無機バインダーと、を含む。そして、当該パネル部材は、密度が0.05〜0.3g/cmであり、中空樹脂粒子の含有量が0.4〜0.8mg/cmであることを特徴としている。
本実施形態のパネル部材の内部構造の概要を図1に示す。図1に示すパネル部材10は、無機充填材粒子2と、無機バインダー3と、中空樹脂粒子5とを含む。無機充填材粒子2は、強度と剛性を付与し、無機バインダー3は無機充填材粒子2及び中空樹脂粒子5の相対的位置を保ち、かつ、無機充填材粒子2間の力の伝達に寄与している。そのため、パネル部材10は、機械的強度、特に曲げ強さが大きく、さらに寸法安定性に優れている。また、パネル部材10において、可燃性材料たる有機材料は中空樹脂粒子5のみであり、それ以外は無機材料が用いられている。しかも、中空樹脂粒子5の含有量が0.4〜0.8mg/cmと非常に少ない。つまり、本実施形態のパネル部材は唯一の可燃性材料である中空樹脂粒子5が極少量であり、それ以外は非可燃性の材料である無機材料であるため不燃性に優れる。なお、「不燃性に優れる」とは、コーンカロリーメータ試験における総発熱量が8MJ/m以下であることをいう。
一方、パネル部材10において、密度が0.05〜0.3g/cmとなるように各材料を含有するため総空孔率が高く(70体積%以上)、それ故に軽量である。さらに、中空樹脂粒子5は、内部が中空状となっている。そのため、中空樹脂粒子5の熱伝導性が低下することから、パネル部材10の断熱性を確保することが可能となる。
以上より、本実施形態のパネル部材は、軽量化を図りながらも、断熱性、機械的強度及び不燃性のいずれにも優れる。
以下に、本実施形態のパネル部材を構成する各材料について詳述する。
[無機充填材粒子]
パネル部材に含まれる無機充填材粒子は、パネル部材の強度と剛性を高めることができれば特に限定されない。ただ、軽量化を図る観点から、軽量な無機発泡粒子であることが好ましい。無機発泡粒子は、無機材料からなり、内部に多数の気泡を有しているため、密度が小さい。パネル部材に発泡無機粒子を用いることにより、パネル部材の更なる軽量化を図ることが可能となる。
パネル部材において、無機発泡粒子の内部が中空状であることが好ましい。中空状の無機充填材粒子を用いることにより、充填材粒子を軽量化しつつも、熱伝導性を低下させることができる。そのため、得られるパネル部材は、軽量化と断熱性を両立することが可能となる。
無機発泡粒子は、パーライト、シラスバルーン、焼成バーミキュライト、シリカバルーン(中空シリカ)、エアロゲルからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。エアロゲルは、ゲル中に含まれる溶媒を乾燥により気体に置換した多孔性の物質である。エアロゲルとしては、シリカエアロゲル、カーボンエアロゲル、アルミナエアロゲルなどを用いることができるが、この中でもシリカエアロゲルを好ましく用いることができる。シリカエアロゲルは、断熱性に優れ、コストが安く、他のエアロゲルよりも容易に得ることができる。なお、ゲル中の溶媒が蒸発などにより除去され、空隙を持つ網目構造となったものをキセロゲルということもあるが、本明細書におけるエアロゲルは、キセロゲルを含むものである。
無機充填材粒子の密度は、パネル部材の軽量化(密度:0.3g/cm以下)を図るため、0.1〜0.5g/cmのものを用いることが好ましい。ただし、本実施形態においては、低密度の中空樹脂粒子を併用するため、比較的密度が高い(例えば、0.3g/cm以上)の無機充填材粒子を用いても、パネル部材の軽量化を図ることができる。
無機充填材粒子の粒子径は特に限定されないが、例えば20〜600μmであることが好ましい。無機充填材粒子の粒子径は、パネル部材の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
[中空樹脂粒子]
中空樹脂粒子は、内部が中空状となっている中空状粒子である。具体的には、中空樹脂粒子は、外殻を備え、当該外殻の内部に空洞部が形成された中空状粒子を用いることができる。そして、このような中空樹脂粒子は、例えば、熱膨張性マイクロカプセルを加熱することにより形成することができる。本実施形態のパネル部材は、上述の通り、有機材料は当該中空樹脂粒子のみである。
中空樹脂粒子の密度は、0.005〜0.1g/cmであることが好ましく、0.02〜0.05g/cmであることがより好ましい。当該密度が0.005〜0.1g/cmであると、中空樹脂粒子を体積基準で多量に用いても必要以上に質量は増大せず、パネル部材の軽量化に寄与する。また、可燃性材料たる中空樹脂粒子が増加せず、不燃性を確保することができる。
中空樹脂粒子の平均粒径は、5〜500μmであることが好ましい。また、中空粒子の肉厚(外径と内径との差)は、2〜20μmであることが好ましい。なお、中空樹脂粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布(粒度分布)測定装置によって測定して得られる数値である。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂からなる外殻と、外殻に内包され、かつ、加熱によって気化する低沸点成分とを有する。熱膨張性マイクロカプセルは、加熱によって外殻が軟化すると共に低沸点成分が気化して、外殻を径外方向に押し出すことにより、外殻が膨張する。この結果、加熱前の熱膨張性マイクロカプセルは、外殻の内部に殆ど空洞部を有さないが、加熱後は外殻の内部に大きな空洞部を生じる。熱膨張性マイクロカプセルは、加熱温度が上昇するにつれて、外殻の膨張が始まり、その後、外殻の膨張が進行する。そして、外殻の膨張が限界を超えると、外殻に亀裂や孔が発生して内圧が減少する結果、外殻の収縮を生じる場合がある。なお、外殻が膨張を開始する温度及び外殻が最大に膨張する温度は、熱膨張性マイクロカプセルの外殻及び低沸点成分などを変えることにより、適宜設定することができる。
熱膨張性マイクロカプセルの具体例としては、沸点が低い炭化水素を低沸点成分とし、熱可塑性樹脂を外殻とするものが挙げられる。低沸点の炭化水素としては、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン及びネオペンタンからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートのようなアクリル酸エステル、又はスチレンのような芳香族ビニル化合物を主成分とする樹脂を用いることができる。
また、中空樹脂粒子を形成するために、内部に多数の気泡を有する発泡体を生成する発泡性樹脂前駆体を用いることも可能である。そして、中空樹脂粒子5を構成する発泡体としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、アクリル樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一つの樹脂からなる発泡体を用いることができる。
本実施形態のパネル部材において、中空樹脂粒子の含有量は0.4〜0.8mg/cmであり、0.4〜0.6mg/cmであることが好ましい。中空樹脂粒子の含有量が0.4mg/cm未満であると、軽量物の体積が減り、パネル部材の密度を0.3g/cm以下とすることが困難となる。また、同含有量が0.8mg/cmを超えると、可燃物が増大するため不燃性に劣る。
[無機バインダー]
本実施形態のパネル部材は、無機充填材粒子、中空樹脂粒子に加えて、無機充填材粒子と中空樹脂粒子とを結着させる無機バインダーを含有している。無機バインダーは、パネル部材の強度を高めつつも軽量化を図ることが可能な材料であれば特に限定されない。無機バインダーとしては、エチルシリケートなどのアルコキシシラン化合物、水ガラスなどのアルカリシリケート、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、重リン酸塩などのリン酸系バインダーなどが挙げられる。
無機バインダーは、必要に応じて添加物を含有していてもよい。添加物としては、例えば、安定化剤、着色剤、増粘剤、反応促進剤などが例示される。
図1に示すように、無機バインダー3は、少なくとも無機充填材粒子2を覆っていることが好ましい。また、無機バインダー3は、無機充填材粒子2の表面の少なくとも一部を覆っていることが好ましく、無機充填材粒子2の表面全体を覆っていることが好ましい。無機バインダー3が無機充填材粒子2を覆うことにより、隣接する無機充填材粒子2及び中空樹脂粒子5との結着性を高め、得られるパネル部材10の強度をより高めることが可能となる。なお、パネル部材10は、複数の無機充填材粒子2と無機バインダー3の前駆体である液状成分とを予め混合した後に加熱して、液状成分を硬化させることにより形成される。そのため、無機充填材粒子2の表面全体に液状成分が付着することから、無機バインダー3は少なくとも無機充填材粒子2を覆うことが可能となる。
[強化繊維]
本実施形態のパネル部材10は上述の無機充填材粒子2及び中空樹脂粒子5に加えて、強化繊維をさらに含有してもよい。強化繊維は、パネル部材10に剛性を付与する。また、無機バインダー3は、強化繊維の相対的位置を保ち、かつ、強化繊維間の力の伝達に寄与する。そのため、強化繊維を添加することにより、得られるパネル部材10の機械的強度及び寸法安定性をさらに高めることが可能となる。
パネル部材10に含まれる強化繊維は、繊維長さの平均値が0.15〜1.0mmであることが好ましい。繊維長さの平均値がこの範囲内であることにより、パネル部材10の内部に高分散し、パネル部材10の機械的強度を高めることが可能となる。なお、ピリングの生成を抑制してパネル部材の機械的強度をさらに向上させる観点から、繊維長さの平均値は0.3〜1.0mmであることが好ましく、0.3〜0.5mmであることがより好ましい。なお、パネル部材10に含まれる強化繊維の繊維径は特に限定されないが、例えば5〜30μmであることが好ましい。
本明細書において、繊維長さ及び繊維径は、日本工業規格JIS H7402の規定に沿うものである。つまり、「繊維長さ」は、繊維の投影輪郭形状の外周上の最大2点間距離をいい、「繊維径」は、繊維長さの中点を通り、繊維長さの方向に直角な線が繊維の投影輪郭を横切る長さをいう。繊維長さ及び繊維径は、パネル部材10の断面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
パネル部材10に含まれる強化繊維は特に限定されず、パネル部材10の内部に分散して機械的強度を高めることができ、不燃性を低下させないものならば如何なる材料を用いてもよい。当該強化繊維は化学繊維であることが好ましく、無機繊維であることがより好ましい。無機繊維は高い強度と剛性を有しているため、無機繊維を使用することにより、パネル部材10の機械的強度、特に曲げ強さをより高めることが可能となる。無機繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。なお、本実施形態のパネル部材の効果(特に不燃性)を損なわない範囲で有機繊維を用いてもよい。有機繊維は密度が低いため、パネル部材10の機械的強度を高めつつも軽量化を図ることが可能となる。有機繊維としては、ビニロン繊維(ポリビニルアルコール繊維)、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
本実施形態のパネル部材の密度は0.05〜0.3g/cmであり、0.05〜0.2g/cmとすることができる。無機充填材粒子のみでは0.3g/cm以下の軽量のパネル部材は困難であるが、本実施形態においては、所定量の中空樹脂粒子を含むことでパネル部材の軽量化を実現している。このように軽量化することにより、既存の壁に設置することが容易となるため、リフォーム材として好適に用いることが可能となる。本実施形態において、パネル部材の密度を上記範囲とするには、パネル部材成形時において加熱プレスする際のプレス圧力を適宜調整すればよい。
パネル部材の厚さは特に限定されず、用途などにより適宜設定されるが、2mm以上40mm以下であることが好ましい。厚さが2mm以上であると、パネル部材の強度などの物性が確保されるため好ましい。厚さ40mm以下であると、加熱及び加圧することにより、パネル部材の中心部にバインダー樹脂が硬化する熱量が短時間で伝わるため、中心部にまでバインダー樹脂の硬化物を形成することができる。
本実施形態のパネル部材10は、高い機械的強度、不燃性及び軽量性に加えて断熱性も兼ね備えているため、既存の壁に設置して断熱リフォームを容易に行うことができる。また、作業現場でパネル部材10を自由自在に切断することができ、作業性も向上させることができる。
パネル部材10は、その一面又は両面に表面材が設けられてもよい。表面材を設けることにより、パネル部材10の強度を高めることができる。表面材は、ボード状、シート状などであってもよい。この場合、パネル部材10は、複合材料で構成される複合パネル部材の一部となる。表面材は、成形後のパネル部材に接着されて設けられてもよいし、パネル部材の成形の際に重ねられ、バインダー樹脂により接着されて設けられてもよい。表面材としては、木材、パーティクルボード、繊維板のようなボード状のもの、木材を薄くスライスしてなる突き板、プラスチックや紙からなる化粧シート、防湿シートのようなシート状のもの等を適宜使用することができる。
また、パネル部材の用途は、建物の下地材や内装材に限定されない。例えば、建具パネルや間仕切パネル、カウンターパネルとして用いられてもよく、収納部を区画する各種のパネル、例えば天板や側板、底板、棚板、仕切板等として用いられてもよい。また、当該パネル部材は、他の家具材として用いられてもよい。
<製造方法>
本実施形態のパネル部材は、無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機バインダーの前駆体である無機バインダー液とを混合して得られた混合物を型枠に投入し、加熱プレス機により加熱プレスすることによって製造することができる。以下に本実施形態のパネル部材の製造方法について詳述する。
まず、無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機バインダーの前駆体である無機バインダー液とを混合する。各成分を混合する方法は特に限定されず、例えば、無機充填材粒子及び中空樹脂粒子に対して無機バインダー液を添加し撹拌混合するや無機バインダー液をスプレー塗布する方法が挙げられる。また、無機バインダー液に無機充填材粒子及び中空樹脂粒子を含浸する方法なども挙げられる。このような方法により、無機充填材粒子及び中空樹脂粒子の表面に無機バインダー液を付着させることが可能となる。無機バインダー液としては、既述の無機バインダーを含むゾル、コロイド、スラリー、溶液が挙げられる。
なお、必要に応じて、無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機バインダー液とを混合してなる混合材に、上述の強化繊維を添加する。
次いで、無機充填材粒子と、中空樹脂粒子と、無機バインダー液とを含む混合材を型枠に投入した後、加圧しながら加熱する。これにより、無機バインダー液を硬化させる。加熱加圧成形の条件、例えば成形圧力、成形温度、成形時間などは、無機バインダー液、パネル部材の厚さなどにより適宜設定され得る。
混合材の加熱加圧成形の条件に関し、成形温度は140℃以上220℃以下であることが好ましい。成形温度が220℃以下では成分の劣化が進行し難いため、パネル部材としての物性が低下し難い。また、成形温度が140℃以上であれば、無機バインダー液の硬化速度が低下し難く、硬化が十分となりやすい。
成形圧力に関してはパネル部材の厚さ、密度などにより適宜設定されるが、0.5MPa以上4MPa以下であることが好ましい。成形圧力が0.5MPa以上であれば、十分に圧着することができ、パネル部材の強度を向上させやすい。成形圧力が4MPa以下であれば、成形圧力が大きすぎず、パネル部材の破壊が起こり難い。なお、本実施形態においては、パネル部材の密度が0.05〜0.3g/cmとなるように成形圧力を調節する。
成形時間に関しては、例えば1分以上60分以下の範囲にすることができ、2分以上30分以下が好ましく、3分以上15分以下がより好ましい。それにより、良好なパネル部材を効率よく製造することができる。
ここで、中空樹脂粒子が熱膨張性マイクロカプセルである場合、その前駆体を加熱して膨張させて中空樹脂粒子が得られる。本実施形態においては、そのような熱膨張性マイクロカプセルを用いる場合、膨張後における含有量を0.4〜0.8mg/cmとするには、事前に膨張させた状態で前記各成分と混合することが好ましい。加熱プレス時に膨張させると、熱膨張性マイクロカプセルは無機充填材粒子の存在により膨張が阻まれ、十分に膨張せず(つまり、体積が増大せず)、上記含有量範囲を実現することが困難となることがあるためである。ただし、加熱プレス時に熱膨張性カプセルを膨張させると、その膨張により各成分同士の密着性が向上し、機械的強度の更なる向上が見込まれる。そのため、中空樹脂粒子の含有量を0.4〜0.8mg/cmとすることができるのであれば、熱膨張性カプセルを加熱プレス時に膨張させることが好ましい。図2及び図3は、熱膨張性カプセルの前駆体を用い、当該前駆体を加熱プレス時に膨張させる状態を示している。
図2においては、無機充填材粒子2と、無機バインダー液3aと、中空樹脂粒子5の前駆体として熱膨張性カプセル5aとを混合して得られた混合物を型枠に投入した直後の状態を示している。この状態では、無機充填材粒子2と無機バインダー液3aとの間に空隙4が生じている。そして、加熱により熱膨張性カプセル5aが膨張すると、硬化前の無機バインダー液3aが押圧され、中空樹脂粒子5と無機充填材粒子2との間に無機バインダー液3aが挟持される。そして、中空樹脂粒子5と無機充填材粒子2との間に挟持された状態で、無機バインダー液3aの硬化反応が進行する。その結果、図3に示すように、硬化した無機バインダー3により中空樹脂粒子5と無機充填材粒子2を強固に結着することが可能となる。また、中空樹脂粒子5と無機充填材粒子2との間に挟持された状態で無機バインダー液3aの硬化反応が進行することから、無機バインダー3の偏りを解消し、無機バインダー3の厚みを略均一化することが可能となる。そのため、充填材粒子同士の結着に関与しない無機バインダー3が減少し、パネル部材10の機械的強度を高めることが可能となる。
以下、実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1〜4]
各実施例・比較例において、無機充填材粒子としてパーライト(太平洋マテリアル株式会社製、太平洋パーライトP−1)を用いた。パーライトは、粒度が1.2mm以下、かさ密度が0.12g/cm、粒密度が0.29g/cmである。また、無機バインダーとして、株式会社朝日化学製のスミセラム(アルカリシリケート系)を用いた。さらに、中空樹脂粒子の前駆体として、熱膨張性マイクロカプセルである、松本油脂製薬株式会社製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F−30を使用した。なお、当該熱膨張性マイクロカプセルは、平均粒子径10〜18μmであったが、加熱膨張させ平均粒径が40μm程度となったものを使用した。
まず、上述のパーライトと、無機バインダーと、熱膨張性マイクロカプセルとを、表1に示す割合(かさ密度)で卓上縦型ミキサーを用いて湿式混合することにより混合材を得た。このとき、以下の成形条件で得られる成形品が表1に記載の成形品密度となるように上記各成分の混合割合を設定した。次に、当該混合材を金型(型枠)に投入し、加熱プレス装置を用い、プレス圧力を1MPa、プレス温度を180℃で5分加圧成形することにより、各例のパネル部材を得た。なお、得られたパネルは、縦100mm横100mm厚み20mmの略矩形状であった。
[評価]
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたパネル部材について、日本工業規格JIS A5908(パーティクルボード)に準じて、密度、曲げ強度を測定した。また、ヒートフローメーター (HFM)により熱伝導率を測定した。さらに、ISO5660準拠したコーンカロリーメータによる20分試験の発熱性試験・評価方法において総発熱量、最高発熱速度、及び200kW/m超過時間を測定した。なお、空孔率は密度に基づき算出した。それぞれの測定結果、算出結果を表1に示す。
Figure 2019137970
表1に示すように、実施例1〜3においては、密度、熱伝導率、曲げ強度及びコーンカロリーメータ試験結果のいずれも良好な結果が得られた。すなわち、実施例1〜3はいずれも、軽量であり、断熱性、機械的強度、及び不燃性のいずれも優れていた。
これに対して、比較例1は、中空樹脂粒子が0.8g/cmを超え(0.9g/cm)、不燃性に劣っていた。また、比較例2は、中空樹脂粒子が0.4g/cm未満(0.3g/cm)であり、機械的強度に劣っていた。さらに、比較例3は、中空樹脂粒子が比較例2よりもさらに少なく(0.2g/cm)、成形すらできなかった。さらに、比較例5は、パネル部材の密度が0.3g/cmを超え(0.40g/cm)、断熱性に劣っていた。
2 無機充填材粒子
3 無機バインダー
3a 無機バインダー液
5 中空樹脂粒子
10 パネル部材
20 混合材

Claims (2)

  1. 無機充填材粒子と、
    中空樹脂粒子と、
    前記無機充填材粒子と前記中空樹脂粒子とを結着させる無機バインダーと、を含み、
    密度が0.05〜0.3g/cmであり、
    前記中空樹脂粒子の含有量が0.4〜0.8mg/cmである、パネル部材。
  2. 前記中空樹脂粒子の密度が0.005〜0.1g/cmである、請求項1に記載のパネル部材。
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