JP2019137876A - 金属配位親水性ポリマー上での種核成長法を利用した、金属混合溶液からの金属の分離方法 - Google Patents

金属配位親水性ポリマー上での種核成長法を利用した、金属混合溶液からの金属の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属混合溶液から目的とする金属を効率よく分離する方法を提供すること。【解決手段】(1)金属配位ユニット含有親水性ポリマーを第一の還元剤の存在下、第一の金属のイオンを含む第一の溶液に浸漬させ、当該親水性ポリマー上に前記第一の金属の核を生成する工程、および(2)前記第一の金属の核を含む親水性ポリマーを、第二の還元剤の存在下、前記第一の金属のイオンを含む第二の溶液に浸漬させて、前記親水性ポリマー上の第一の金属の核上に前記第二の溶液に含まれる第一の金属を析出させて核成長させる工程、を備え、前記第一の金属は標準水素電極基準における還元電位が0より大きいことを特徴とする、金属の分離方法。【選択図】図1

Description

本発明は、金属配位親水性ポリマー上での種核成長法を利用した、金属混合溶液からの金属の分離方法に関する。
希少金属(レアメタル)はいわゆるハイテク製品の製造に欠かせないが、これらの多くは埋蔵量が少なく、2050年までに多くの金属が枯渇する可能性がある。
一方、近年、アジア諸国では電子機器の廃棄物が増加し続けて(日本224万トン、中国668万トン、インドネシア81万トン、日本経済新聞2017年1月16日付)いる。これらの電子機器には、希少金属、例えば白金族元素が主要元素として用いられることが多い。白金族元素は電子機器や自動車排気ガス浄化触媒などの原料に多量に使用されているが、地球上での産出量が少なく高価格で取り引きされている。したがって、廃製品や海中に溶存する希少金属を効率よく回収するシステムの開発は急務の課題である。
希少金属を回収する技術の一つとして、特許文献1には、白金族の元素を溶媒抽出方法で分離する方法が開示されている。白金は、白金鉱石中に混合して産出されるため、白金族同士の相互選択分離も求められているが、揮発性の高い有機溶媒を用いることは毒性や環境への影響が懸念される。
一方、特許文献2には、貴金属と卑金属とを含有する酸性液中にメルカプト基を含有する水溶性化合物を添加して貴金属を含有する凝集体を形成させ、これを分離回収して貴金属と卑金属を分別する方法が開示されている。
特開2005−97695号公報 特開2012−158830号公報
本発明は、金属混合溶液から目的とする金属を効率よく分離する方法を提供することを主たる課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、金属配位ユニットを有する親水性ポリマーを分離対象の金属のイオンを含有する第一溶液と浸漬させ、還元剤の存在下、当該金属を還元することで、分離対象の金属をポリマー上に配位させて核形成を行い、さらに、分離対象の金属のイオンを含む第二の溶液に前記核形成させた金属含有ポリマーを浸漬させることで、第二の溶液中に存在する分離対象の金属(イオン)が還元され、ポリマーに配位している金属が核成長すること、これにより、金属混合溶液から目的とする金属を効率よく分離することができること、を見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を提供する。
[1] (1)金属配位ユニット含有親水性ポリマーを第一の還元剤の存在下、第一の金属のイオンを含む第一の溶液に浸漬させ、当該親水性ポリマー上に前記第一の金属の核を生成する工程、および
(2)前記第一の金属の核を含む親水性ポリマーを、第二の還元剤の存在下、前記第一の金属のイオンを含む第二の溶液に浸漬させて、前記親水性ポリマー上の第一の金属の核上に前記第二の溶液に含まれる第一の金属を析出させて核成長させる工程、を備え、
前記第一の金属は標準水素電極基準における還元電位が0より大きいことを特徴とする、金属の分離方法。
[2] 前記第一の還元剤が水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化アルミニウムリチウムである、[1]に記載の分離方法。
[3] 前記第二の還元剤がL−アスコルビン酸である、[1]または[2]に記載の金属の分離方法。
[4] 前記金属配位ユニットが、チオカルボニル基、チオール基、チオエーテル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる1種以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の金属の分離方法。
[5] 前記親水性ポリマーが水酸基を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の金属の分離方法。
[6] 前記第一の金属が、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)からなる群より選ばれる、[1]〜[5]のいずれかに記載の金属の分離方法。
[7] 前記第二の溶液が、さらに前記第一の金属とは異なる第二の金属を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の金属の分離方法。
[8] 前記第一の溶液が第一の安定化剤を含み、前記第二の溶液が第二の安定化剤を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の金属の分離方法。
[9] 前記第二の安定化剤が臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムである、[8]に記載の金属の分離方法。
本発明により、金属混合溶液から目的とする金属を効率よく分離することができる。これにより、従来は困難であった白金族金属間での相互分離など、分離が困難な金属同士の分離が可能となった。
図1は金属配位親水性ポリマー上での種核成長法を利用した白金族相互分離の概念図である。 図2は実施例1の核生成前後の赤外分光法(IR)スペクトル測定結果である。 図3は実施例1の核生成後のX線光電子分光法(以下、XPSという。)スペクトル測定結果である。 図4は実施例1の核成長後のXPSスペクトル測定結果である。 図5は核生成後の透過型電子顕微鏡(以下、TEMという。)像である(図面代用写真)。 図6は白金とパラジウムの混合溶液からの白金分離に関する蛍光X線分析(以下、XRFという。)測定の結果である。 図7は実施例1の、白金とその他の白金族元素との相互分離挙動結果である。 図8は実施例2の、パラジウムとその他の白金族元素との相互分離挙動結果である。
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の一態様は、(1)金属配位ユニットを有する親水性ポリマーを第一の還元剤の
存在下、第一の金属のイオンを含む第一の溶液に浸漬させ、当該親水性ポリマー上に前記第一の金属の核を生成する工程、(2)前記第一の金属の核を含む親水性ポリマーを、第二の還元剤の存在下、前記第一の金属のイオンを含む第二の溶液に浸漬させて、前記親水性ポリマー上の第一の金属の核上に前記第二の溶液に含まれる第一の金属を析出させて核成長させる工程、を備える金属の分離方法であって、前記第一の金属は標準水素電極基準における還元電位が0より大きいことを特徴とする。
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)金属配位ユニット含有親水性ポリマーを第一の還元剤の存在下、第一の金属のイオンを含む第一の溶液に浸漬させ、当該親水性ポリマー上に前記第一の金属の核を生成する工程
この工程は、金属配位ユニットを有する親水性ポリマー(以下、単に「親水性ポリマー」ともいう。)上での第一の金属の核形成工程である。親水性ポリマーを還元剤の存在下、第一の溶液に浸漬させることで、第一の金属のイオンが親水性ポリマーの金属配位ユニットに配位し、還元されて、第一の金属が親水性ポリマー上で核形成する。
第一の溶液は、分離の対象である、第一の金属のイオンを含有する。
第一の金属は、標準水素電極基準における還元電位が0より大きければ特に限定されないが、核形成及び核成長の観点から、+0.3V以上が好ましく、+0.5V以上がより好ましく、+1.0V以上がより好ましい。第一の金属として具体的には、金(Au)、銀(Ag)、水銀(Hg)およびレアメタルが例示され、ここでレアメタルとして具体的には、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、レニウム(Re)、及びビスマス(Bi)が挙げられる。なお、第一の溶液中、金属は水和イオンとして存在することができる。
還元電位が0より大きいことにより、後述する核成長が行われ、目的とする金属を効率良く分離することが可能になる。
本発明の一態様において、第一の金属は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)からなる群より選ばれる白金族元素であることがより好ましい。白金族元素は地球上での産出量が少なく高価格で取り引きされているためである。
第一の溶液は、分離の対象である金属のイオンを含有していればよく、その入手方法は特に限定されない。例えば、分離対象の金属の塩を純水に溶解し、第一の金属のイオンを含有する水溶液を調製してもよいし、分離対象の金属が含まれている廃液などを入手して用いてもよい。
ルテニウムを分離対象金属とする場合、塩化ルテニウム(III)n水和物、ルテニウム(III)アセチルアセトナートなどを純水に溶解し、水溶液として用いることができる。
ロジウムを分離対象金属とする場合、塩化ロジウム(III)三水和物などを純水に溶解し、水溶液として用いることができる。
オスミウムを分離対象金属とする場合、塩化オスミウム(III)三水和物、塩化オスミウム(III)n水和物、塩化オスミウム(III)などを純水に溶解し、水溶液として用いることができる。
イリジウムを分離対象金属とする場合、塩化イリジウム(III)三水和物、塩化イリジウム(IV)水和物などを純水に溶解し、水溶液として用いることができる。
白金を分離対象金属とする場合、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、ヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム六水和物、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム六水和物などを純水に溶解し、水溶液として用いることができる。
パラジウムを分離対象金属とする場合、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム
、テトラクロロパラジウム酸(II)リチウムn水和物、塩化パラジウム(II)などを純水に溶解し、溶液として用いることができる。
第一の溶液中の第一の金属のイオンの含有量は核形成反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核生成の観点から、0.0001mol/L以上0.04mol/L以下が好ましい。
第一の溶液の溶媒としては水を用いることができるが、本発明の効果を損なわない範囲で、エタノールなどのアルコール、エチレングリコール等を含むことができる。
本発明の一態様において、第一の溶液は第一の還元剤及び第一の安定化剤を含む。
第一の還元剤は、第一の溶液中に含有される分離対象である金属(イオン)を還元する還元力を有していればよく、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウムなどが挙げられる。還元力の観点から、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
第一の溶液中の第一の還元剤の含有量は核形成反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核生成の観点から、0.01mol/L以上0.1mol/L以下が好ましく、0.02mol/L以上0.06mol/L以下がより好ましく、0.0211mol/L以上0.04mol/L以下がさらに好ましい。
また、第一の安定化剤は、第一の溶液中で、第一の金属のイオンの分散状態を安定化させられるものであればよく、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの界面活性剤全般が挙げられる。金属安定化の観点から、クエン酸、クエン酸ナトリウムが好ましい。
第一の溶液中の第一の安定化剤の含有量は核形成反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核生成の観点から、0.001mol/L以上0.01mol/L以下が好ましい。
第一の安定化剤は1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属配位ユニットを有する親水性ポリマーの種類は特に限定されず、合成してもよいし、市販品を入手して用いてもよい。
金属配位ユニットとしては金属の種類に応じて適宜選択できるが、白金族元素の配位の観点から、チオカルボニル基、チオール基、チオエーテル基、チオカルボニル基などの硫黄元素を含む基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる基であることが好ましく、チオカルボニル基がより好ましい。親水性ポリマーは水酸基などの親水性ユニットを有することが好ましい。
親水性ユニットを有する場合、金属配位ユニットと親水性ユニットの比は、核形成と親水性の観点から、3:97〜20:80が好ましく、5:95〜20:80がより好ましい。金属配位ユニット含有親水性ポリマーの合成方法の一例としては、例えば、ポリビニルアルコールとメチルイソチオシアナートをジメチルスルホキシド中で撹拌する方法が挙げられる。また、特開2011−235236号公報に記載のポリアリルアミンのアミノ基と、ポリアリルアミンのアミノ基の1つの水素原子がイソチオシアナートによって置換されたチオウレア基の双方を有するポリアリルアミン誘導体を用いる方法を参考にすることができる。
核形成工程の温度は核形成反応が可能な限り特に制限されないが、還元効率の観点から、25℃以上100℃以下が好ましい。
核形成工程の時間は核形成反応が可能な限り特に制限されないが、還元効率の観点から、1分以上30分以内が好ましく、1分以上20分以内がより好ましい。
また、核形成工程では、第一の溶液を撹拌してもよい。
なお、還元剤は、親水性ポリマーを第一の溶液に浸漬させる前に予め第一の溶液に添加
してもよいし、親水性ポリマーを第一の溶液に浸漬してから第一の溶液に添加してもよい。
例えば、金属配位ユニット含有親水性ポリマーと、還元剤を第一の溶液に加えて、100℃で10分間撹拌する。
この工程により、形成する核の大きさは、通常0.1nm以上10nm以下であり、0.1nm以上2nm以下である。
第一の金属が還元され、ポリマーに配位して第一の金属の核が形成したことは、例えば、赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)測定によりポリマーの金属配位ユニットのピークの有無を調べることによりわかる。核生成(金属元素配位)前は金属配位ユニットのピーク(例えば、チオカルボニル基は1560cm−1)が観測されるが、核生成(金属元素配位)後は金属配位ユニットのピークが減少する。また、XPSスペクトル測定により、第一の金属のピーク、すなわち第一の金属の価数を調べることによってもわかる。例えば、白金を分離対象の第一の金属とする場合、白金は還元されると0価になるので、0価の白金のピークが観測される。
(2)第一の金属の核を含む親水性ポリマーを、第二の還元剤存在下、第一の金属のイオンを含む第二の溶液に浸漬させる工程
この工程は、親水性ポリマー上に核形成した第一の金属を核成長させる工程である。親水性ポリマー上に分離対象の第一の金属の核形成後、当該金属核形成親水性ポリマーを第一の金属のイオンを含む第二の溶液に浸漬させることで、第二の溶液中に存在する第一の金属のイオンを還元し、ポリマー上の核から第一の金属のナノ粒子を成長させ、これにより、第二の溶液から第一の金属を分離出来る。
第二の溶液は第一の金属の水和イオンを含むものであれば特に限定されず、例えば、環境中に存在する水や工場などの排水や廃液などを用いることができる。
本分離法においては、第二の溶液のpHは限定されないので、この点も利点である。第二の溶液中の第一の金属のイオンの含有量は核成長反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核成長の観点から、0.02mol/L以上1mol/L以下が好ましい。
本発明の一態様において、第二の溶液は第二の還元剤及び第二の安定化剤を含む。
第二の還元剤は、第二の溶液中に含有される分離対象である金属(イオン)を穏やかに還元する還元力を有しているものが好ましい。例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ヒスチジンなどが挙げられる。還元力の観点から、アスコルビン酸が好ましい。
第二の溶液中の第二の還元剤の含有量は核成長反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核成長の観点から、0.001mol/L以上1mol/L以下が好ましく、0.005mol/L以上1mol/L以下がより好ましく、0.01mol/L以上1mol/L以下がさらに好ましい。
また、第二の安定化剤は、第二の溶液中でミセルを形成し、コロイド溶液とする界面活性剤の役割を果たすため、第二の溶液中に含まれるそれぞれの金属(イオン)が結合せず、選択性の低下を抑制できるという効果、および、金属(イオン)が還元され核成長する際に、結晶同士が凝集して大きくなり過ぎないようにできるという効果を有する。第二の安定化剤は界面活性剤として通常用いられるものであれば使用可能であり、例えば、臭化ヘキサデシルトリメチルアルミニウム等の界面活性剤が挙げられる。
第二の溶液中の第二の安定化剤の含有量は核成長反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核成長の観点から、0.0005mol/L以上1mol/L以下が好ましい。
金属ナノ粒子の安定化の観点から、臭化ヘキサデシルトリメチルアルミニウムが好まし
い。第二の安定化剤は1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
核成長工程の温度は核成長反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核成長の観点から、0℃以上40℃以下が好ましく、25℃以上40℃以下がより好ましい。
核成長工程の時間は核成長反応が可能な限り特に制限されないが、効率的な核成長の観点から、6時間以上48時間以内が好ましく、12時間以上24時間以内がより好ましい。
また、核成長工程では、均一な核成長の観点から、第二の溶液に還元剤を添加後、静置することが好ましい。
なお、第二の還元剤及び第二の安定剤は、第一の金属の核を含む親水性ポリマーを第二の溶液に浸漬させる前に予め第二の溶液に添加してもよいし、第一の金属の核を含む親水性ポリマーを第二の溶液に浸漬してから第二の溶液に添加してもよい。例えば、第一の金属のイオンを含む第二の溶液に第二の安定化剤を添加し、第一の金属の核を含む親水性ポリマーを加え、そこに第二の還元剤を添加する。金属イオンの凝集抑制の観点から、安定化剤、親水性ポリマー、還元剤の順に第二の溶液に加えることが好ましい。
本発明の一態様においては、第二の溶液が、第一の金属とは異なる第二の金属のイオンを含むことで、2種類の金属を相互分離することができる。さらに、本発明は、分離対象の金属を親水性ポリマー上で核成長させることにより第二の溶液から分離するため、第二の溶液が分離対象の第一の金属とは異なる金属のイオンを2種類以上含む場合、第一の金属を、第一の金属以外の複数種の金属から相互分離可能である。
また、第一の金属及び第二の金属が、それぞれ、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)からなる群より選ばれる相異なる金属である場合も、本発明の好ましい一態様である。すなわち、本発明の分離方法は、2種以上の白金族の金属の相互分離に好適に用いられる。
白金族元素は化学的・物理的性質が類似しているため、白金族同士の相互分離が困難である一方、同じ装置に混合して使用されることが多く、廃製品中にも同時に含まれていることが多い。本発明の方法は、これら白金族同士の相互選択分離に適用できる。したがって、本発明の一態様によれば、簡便に、選択的に白金族同士の相互分離が可能である。さらに、本発明の一態様である親水性ポリマーを用いた分離は、安全かつ無毒であり、環境適合性が高いという利点もある。
第二の溶液が、第一の金属とは異なる第二の金属のイオンを含む場合、第二の溶液中の第一の金属のイオンの含有量は核成長反応が可能な限り特に制限されないが、分離効率の観点から、0.01mol/L以上0.5mol/L以下が好ましい。第二の金属の含有量は第一の金属の核成長反応を妨げない限り特に制限されないが、分離効率の観点から、0.01mol/L以上0.5mol/L以下が好ましい。
図1に、第一の金属として白金、第一の還元剤として水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、第二の還元剤としてアスコルビン酸を用いた場合の本発明の一実施形態の概念図を示す。
核形成工程では、還元剤(水素化ホウ素ナトリウム)存在下で白金を含む水溶液(第一の溶液)を、金属配位ユニットと水酸基を含む親水性ポリマーに浸漬させることで、金属配位ユニットの硫黄原子上に白金が配位して核を形成する。そして、白金の核が形成された親水性ポリマーに、白金とその他の金属を含む水溶液(第二の溶液)を浸漬させ、アスコルビン酸で還元させる。そのことで、第二の溶液に含まれる白金が選択的に、核上で析出して核成長するので、第二の溶液から白金を選択的に分離することができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.金属配位親水性ポリマーの合成
ポリビニルアルコールとメチルイソチオシアナートをジメチルスルホキシド(DMSO)中、40℃で21時間撹拌することで金属配位親水性ポリマーを合成した。収率は100%であった。得られたポリマーの帰属についてはH NMRスペクトルにより行い、金属配位ユニットと親水性ユニットの生成比が6:94であることを確認した。
2.金属配位親水性ポリマー上での白金の核生成
蒸留水(464mL)、0.2wt%ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物水溶液(36mL)を加えた溶液に細かく砕いた金属配位親水性ポリマー(0.3g)を添加し、100℃で加熱還流する。そして、還流が開始して1分後に、1wt%クエン酸ナトリウム+0.05wt%クエン酸水溶液(11mL)を加え、30秒後に、0.08wt%水素化ホウ素ナトリウム+1wt%クエン酸ナトリウム+0.05wt%クエン酸水溶液(5.5mL)を加えて、10分間撹拌して反応させた。その後、メンブレンフィルターで減圧濾過し、蒸留水(300mL)で1時間撹拌して洗浄し、蒸留水を捨て、さらに蒸留水(300mL)で1時間洗浄し、蒸留水を捨て、蒸留水(500mL)で一晩撹拌して洗浄した。その後、メンブレンフィルターを用いて減圧濾過し、一晩凍結乾燥した。
核生成後のポリマーについて、XRF測定を行ったところ、硫黄の重量%は54wt%であるのに対し、Ptの重量%は約46wt%であることが確認できた。核生成前後のポリマーについて、IRスペクトル測定を行った結果を図2に示す。IRスペクトル測定結果より、核生成前は金属配位ユニットであるチオカルボニル基のピークが1560cm−1に観測されたが、核生成後はチオカルボニル基の強度が減少したことから、チオカルボニル基に白金が配位していることが確認された。また、核生成後のXPSスペクトルにより、0価の白金のピークのみが観測されたことから、白金は0価に還元されていることが分かった。XPSスペクトルの測定結果を図3に示す。
3.金属配位親水性ポリマー上での白金の核成長
ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物水溶液(4mL,0.02M)、安定化剤として臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水溶液(18mL,0.1M)、L−アスコルビン酸水溶液(0.1mL,1M)を加えた成長溶液に2.で核生成させたポリマー(0.15g)を添加した。そして、室温で24時間浸漬させ核成長を行った。水溶液作製には全て0.1M塩酸水溶液を用いた。その後、減圧濾過し、蒸留水(300mL)で撹拌して1時間洗浄し、蒸留水を捨て、さらに蒸留水(300mL)で1時間洗浄し、蒸留水を捨て、最後に蒸留水(500mL)で一晩洗浄した。その後、一晩凍結乾燥した。
蛍光X線分析から、ポリマー中の白金の重量パーセントは46wt%から81wt%に増加したことが確認された。核成長後のXPSスペクトルを測定したところ、0価のPt
のピークのみ観察されたことから、種核成長が進行していることが確認された(図4)。また、TEM観察より、核生成後では微粒子が小さすぎで観察できなかったが、核成長後では微粒子が観察されたことから、白金が核成長していることが確認された。核生成後のTEM像を図5に示す。また、TEM/EDS(Energy dispersive X-ray spectrometry:エネルギー分散型X線分析)測定によりTEM像の黒い点は白金のナノ粒子であることを確認している。
4.白金族相互分離
分離対象の金属(第一の金属)を白金として、分離実験を行った。
ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物水溶液(2mL,0.01M)、テトラクロロパラジウム(II)酸ナトリウム水溶液(2mL,0.01M)、安定化剤として臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム水溶液(18mL,0.1M)、L−アスコルビン酸水溶液(0.1mL,1M)を加えた成長溶液に2.で核生成させたポリマー(0.15g)を添加した。そして、室温で、24時間浸漬させ、核成長を行った。水溶液作製には全て0.1M塩酸水溶液を用いた。その後、減圧濾過し、蒸留水(300mL)で撹拌して1時間洗浄し、蒸留水を捨て、さらに蒸留水(300mL)で1時間洗浄し、蒸留水を捨て、最後に蒸留水(500mL)で一晩洗浄した。その後、一晩凍結乾燥した。
24時間静置後のXRF測定の結果より、白金が選択的に分離できていることが明らかとなった(図6参照)。
他の金属イオン(ロジウム、オスミウム、イリジウムまたはパラジウム)との混合水溶液において上記と同様の実験を行ったところ、すべてにおいて白金が選択的に分離できることが明らかとなった。結果を図7に示す。なお、各金属イオンの濃度はそれぞれ0.000442mol/Lとした。
[実施例2]
分離対象の金属(第一の金属)を白金からパラジウムに変えて同様に分離実験を行った。
それぞれの白金族元素に対して、パラジウムが選択的に分離できることが確認された。結果を図8に示す。
これらの結果より、核を選択することにより白金族混合物から目的の金属を選択的に分離できることが明らかとなった。
従来技術である溶媒抽出法では、一種類の配位子に対して一つの白金族元素しか分離することができない。これに対し、本手法ではポリマー上の核となる金属を変えることにより、様々な目的の金属を分離できるという利点がある。
本発明の一態様である金属の分離方法は廃家電製品や、工業排水からの金属のリサイクル等に用いることができ、特に、自動車排気ガス浄化触媒からの白金族の相互分離・回収、海水中・工業排水からの白金族の回収、有機エレクトロニクス材料等に用いられる白金族触媒の回収に有用である。

Claims (9)

  1. (1)金属配位ユニット含有親水性ポリマーを第一の還元剤の存在下、第一の金属のイオンを含む第一の溶液に浸漬させ、当該親水性ポリマー上に前記第一の金属の核を生成する工程、および
    (2)前記第一の金属の核を含む親水性ポリマーを、第二の還元剤の存在下、前記第一の金属のイオンを含む第二の溶液に浸漬させて、前記親水性ポリマー上の第一の金属の核上に前記第二の溶液に含まれる第一の金属を析出させて核成長させる工程、を備え、
    前記第一の金属は標準水素電極基準における還元電位が0より大きいことを特徴とする、金属の分離方法。
  2. 前記第一の還元剤が水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化アルミニウムリチウムである、請求項1に記載の分離方法。
  3. 前記第二の還元剤がL−アスコルビン酸である、請求項1または2に記載の金属の分離方法。
  4. 前記金属配位ユニットが、チオカルボニル基、チオール基、チオエーテル基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属の分離方法。
  5. 前記親水性ポリマーが水酸基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属の分離方法。
  6. 前記第一の金属が、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及びパラジウム(Pd)からなる群より選ばれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属の分離方法。
  7. 前記第二の溶液が、さらに前記第一の金属とは異なる第二の金属のイオンを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属の分離方法。
  8. 前記第一の溶液が第一の安定化剤を含み、前記第二の溶液が第二の安定化剤を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属の分離方法。
  9. 前記第二の安定化剤が臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムである、請求項8に記載の金属の分離方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112899492A (zh) * 2021-01-15 2021-06-04 浙江大学 一种利用超分子吸附剂吸附分离钯的方法
EP4257712A1 (en) 2022-04-05 2023-10-11 Shizuoka Prefectural University Corporation Separation method of separation target metal

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