JP2019137796A - フォトクロミック複合体 - Google Patents

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【課題】光応答性に優れ、比較的弱い紫外線照射下でも発色するフォトクロミック複合体を提供すること、特に自然の太陽光下でも速やかに発色するフォトクロミック複合体を提供すること【解決手段】酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体。【選択図】図8

Description

本発明は、酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体、フォトクロミック材料、フォトクロミック複合体形成用溶液、前記フォトクロミック複合体を用いた紫外線インディケータ、及び前記フォトクロミック複合体の製造方法に関する。
酸化タングステン(WO)によるエレクトロクロミズムは、1973年にS.K.Debによって初めて報告され、表示素子として、CRTディスプレイに代わるエレクトロディスプレイへの展開を目的に研究されてきた。当初は、CRTなどの発光型と異なり受光型であるために直射日光下でも見やすく、液晶と比較して視野角の依存性がないことなどから、新しい表示システムへの展開に大きな期待がもたれていたが、応答速度が遅いために、高速性が要求されるテレビなどのモニター系への利用はできないことが分かった。そこで、高速応答性を必要としない太陽エネルギーを制御・利用する目的での研究へと展開されるようになり、環境問題への意識の高まりの中で、スマートウインドウへの展開研究がなされ、現在では、酸化タングステンは航空機の窓に搭載される電子カーテンに利用されている。スマートウインドウでは、電圧の調整により窓の光透過率を制御可能であるが、電気エネルギーを必要とすることが問題である。
また、酸化タングステンに関しては、紫外線を吸収することで青色に変化する性質、つまりフォトクロミズムを利用した用途への提案も行われている。酸化タングステン、セルロース及びエチレングリコールを含有した透明フィルムは、夏の太陽光照射下では自ら濃青色に変化し、翌日には透明に戻るので、これを既存の窓ガラスにスマートウインドウ機能を付与する着脱可能な調光フィルムとして使用することが提案されている(特許文献1)。このフィルムは主成分がバイオ材料であるセルロース化合物であり、素人にとっても廃棄の容易なフィルムである。また、光が照射された部分だけが青くなることから、透明と濃青色のコントラストを明瞭にすることで、表示材料としてかき消し可能なリライタブルペーパーへの応用も提案されている。しかしながら、着色の濃さは吸収した紫外線量に依存するため、例えば前記調光フィルムとして使用する場合、午前中の発色が弱いとの問題点がある。また、リライタブルペーパーへの応用では、コントラストの明瞭な表示のためには、人工の強い紫外線照射器を必要とするという使用時の問題を有していた。このように、酸化タングステンを使用した従来のフォトクロミックフィルムは、濃青色に発色するには強い紫外線の照射が必要であり、太陽光照射下では視覚的に濃青色が認められるまでに時間を要するとの問題があった。
一方、酸化タングステンゾルと酸化チタンゾルを混合して発色の様子を観察した結果が報告されている(非特許文献1)。しかし、報告されているのはゾル(コロイド水溶液)状態での発色の様子であり、さらに空気下では発色せず、窒素やアルゴン雰囲気下においてのみ発色するものであった。したがって、空気下で発色するフォトクロミック材料や、膜や成形体形状のフォトクロミック複合体について何ら提案するものではなかった。
特開2014−62218号公報
S. Yamazaki, et al., Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects. 2011, 392, 163-170.
本発明は、上記問題点を解決し、光応答性に優れ、比較的弱い紫外線照射下でも発色するフォトクロミック複合体を提供することを課題とし、特に自然の太陽光下でも速やかに発色するフォトクロミック複合体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、自然の太陽光照射下でも速やかに濃青色に発色する材料であり、特別な雰囲気を必要とせず空気下でも濃青色に発色する材料の開発を目指して鋭意研究を進めた。従来、フォトクロミック材料において、酸化タングステンに他の金属酸化物粒子を加えると透明度が低下することから、酸化タングステンと他の金属酸化物粒子を混合して用いることはあまり試されてこなかった。しかし、本発明者らは、酸化タングステン粒子と酸化チタン粒子を混合して用い、さらにセルロース等の水溶性高分子化合物を混合すると、透明度は低下するものの、光を受けて発色する速さや発色の強さといった光応答性が極めて向上することを見いだした。また、これらの成分からなる複合体は、空気の影響を受けることが少なく、空気中の太陽下、すなわち通常の自然な状態での太陽下において優れた光応答性を示すので、従来とは異なる用途への適用が可能となるものであった。このようにして、本願発明は完成されたものである。
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体。
(2)水溶性高分子化合物がアルキルセルロースであることを特徴とする上記(1)記載のフォトクロミック複合体。
(3)ヒドロキシ基を有する水溶性化合物(ただし、上記(1)記載の水溶性高分子化合物を除く)を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のフォトクロミック複合体。
(4)ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類又は有機酸類であることを特徴とする上記(3)記載のフォトクロミック複合体。
(5)アルコール類がエチレングリコールであることを特徴とする上記(4)記載のフォトクロミック複合体。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか記載のフォトクロミック複合体を用いた紫外線インディケーター。
(7)酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有する偽造防止に用いるためのフォトクロミック材料。
(8)酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体形成用溶液。
(9)酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、前記分散液を基板上に塗布して乾燥することを特徴とするフォトクロミック複合体の製造方法。
(10)酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、前記分散液を型枠に充填し乾燥することを特徴とするフォトクロミック複合体の製造方法。
本発明のフォトクロミック複合体は、光応答性に優れ、比較的弱い紫外線照射下でも発色し、特に空気中の太陽光照射下でも速やかに発色する。また、本発明のフォトクロミック複合体の製造方法は、前記のようなフォトクロミズムを示すフォトクロミック複合体を簡易に製造することができる。
実施例1で作製したフォトクロミックフィルムの写真である。(a)はメチルセルロースを添加した例であり、(b)はポリビニルアルコールを添加した例である。 実施例2で作製したフォトクロミックバルク体の写真である。(a)はWとTiのモル比が1:1の例であり、(b)はWとTiのモル比が1:1であり、メチルセルロースに加えてエチレングリコールを添加した例であり、(c)はWとTiのモル比が1:3の例であり、(d)はWとTiのモル比が3:1の例である。 実施例3で作製したフォトクロミックフィルムの写真である。(a)はWとTiのモル比が1:1の例であり、(b)はWとTiのモル比が1:1であり、メチルセルロースに加えてエチレングリコールを添加した例であり、(c)はWとTiのモル比が1:3の例であり、(d)はWとTiのモル比が3:1の例である。 実施例4で作製したフォトクロミックフィルムの写真である。(a)はメチルセルロースを添加した例の紫外線照射前であり、(b)はメチルセルロースを添加した例の紫外線照射後である。(c)はTEMPO酸化CNFを添加した例の紫外線照射前であり、(d)はTEMPO酸化CNFを添加した例の紫外線照射後である。 実施例4で作製したフォトクロミックバルク体の写真である。(a)は太陽光照射前であり、(b)は太陽光照射開始10秒後であり、(c)は太陽光照射開始20秒後であり、(d)は太陽光照射開始30秒後であり、(e)は太陽光照射開始1分後である。また、(f)はTiOを添加しない例である。 実施例3の溶液で作製したフォトクロミックバルク体と実施例4で作製したフォトクロミックバルク体の写真である。(a)は太陽光照射前であり、(b)は太陽光照射開始10秒後であり、(c)は太陽光照射開始20秒後であり、(d)は太陽光照射開始1分後である。 実施例3で作製したフォトクロミックフィルムの写真である。(a)は太陽光照射前であり、(b)は太陽光照射開始10秒後であり、(c)及び(d)は太陽光照射開始1分後である。 実施例3と同様に作製したフィルムの紫外線照射前後の拡散反射法による測定結果。
本発明のフォトクロミック複合体は、酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体であり、酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を必須成分とする。本発明のフォトクロミック複合体は、フォトクロミズムを示す複合体であり、その形状は特に限定されるものではないが、例えば、膜状、成形体状等を挙げることができる。ここで膜状とは、基材上に形成され基材に付着した形態のもの、及び基材等に固定されずいわゆるフィルムとして単独で使用される形態のもの等を含む。本発明における酸化タングステンは、特に限定されるものではないが、例えば、タングステンの塩の水溶液をイオン交換して得られたものを好適に例示することができる。また、本発明における酸化チタンは、特に限定されるものではないが、例えば、チタンのアルコキシドを加水分解して得られたものを好適に例示することができる。
本発明における水溶性高分子化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、天然の水溶性高分子化合物、半合成の水溶性高分子化合物、合成の水溶性高分子化合物等を挙げることができる。本発明のフォトクロミック複合体においては、水溶性高分子化合物を配合することにより、酸化タングステン粒子及び酸化チタン粒子を均一に分散させることができ、水溶性高分子化合物はバインダー成分として作用する。
天然の水溶性高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン、グリチルリチン酸等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子を挙げることができる。半合成の水溶性高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子化合物;メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;メチルヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、TEMPO酸化セルロースナノファイバー、セルロース粉末等のセルロース系高分子化合物;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子を挙げることができる。合成の水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル系高分子、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子化合物;ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール6,000、ポリエチレングリコール4,000等のポリオキシエチレン系高分子化合物;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、PEG/PPGメチルエーテル等の共重合体系高分子化合物;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子化合物を挙げることができる。これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができる。また、これらのうち、アルキルセルロースが好ましく、メチルセルロースが特に好ましい。これら水溶性高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、本発明の複合体を作製することができる限り特に制限されないが、500〜500,000,000で水溶性のものが好ましく、より好ましくは1,000〜500,000である。
本発明のフォトクロミック複合体は、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物(ただし、上記水溶性高分子化合物として配合されたものを除く)を含有してもよい。本発明におけるヒドロキシ基を有する水溶性化合物は、上記水溶性高分子化合物以外の比較的低分子量の化合物であり、これらを添加することで、光応答性がより向上し、光に応答してより速く発色する。また、複合体の柔軟性が向上し、透明性が向上する。ヒドロキシ基を有する水溶性化合物としては、ヒドロキシ基を1個又は複数個有し、水溶性であり、かつ、好ましくは、膜を室温〜40℃程度で乾燥する時に蒸発しないものであれば有機化合物でも無機化合物でもよく、例えば、有機化合物としては、酸素原子を連結基として有していてもよいヒドロキシ基を有する炭化水素、有機酸類等が挙げられ、無機化合物としてはリン酸、ホウ酸等の酸類が挙げられる。中でも、アルコール類、有機酸類が好ましい。
「ヒドロキシ基を有する炭化水素」の「炭化水素」としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、エチル、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘプタデカン、オクタデカン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ブタジエン、イソプレン等のアルケン類;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン等のアルキン類を挙げることができる。脂環式炭化水素としては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等を挙げることができる。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として、下記にアルコール類を例示する。本発明におけるアルコール類としては、炭素数2以上の、好ましくは炭素数2〜30の水溶性の多価アルコールが挙げられる。一価のアルコールも、水溶性で室温〜40℃程度で蒸発しないものであれば可能である。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ネオペンチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリヒドロキシステアリルアルコール、3−ブテン−1−オール等の脂肪族アルコール;シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンヘキサオール等の環状アルコールを挙げることができる。これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができ、沸点が100℃以上であることが好ましい。二価又は三価のアルコールを含有することがより好ましく、エチレングリコール、グリセリンがさらに好ましい。
芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレン等を挙げることができ、ヒドロキシ基を有する水溶性芳香族炭化水素としては、フェノール、カテコール、ピロガロール等を挙げることができる。酸素原子を連結基として有する炭化水素は、上記炭化水素の分子内に酸素原子を1個又は2個以上有する化合物を意味する。ヒドロキシ基を有する、酸素原子を連結基として有する炭化水素としては、例えば、グルコース、マルトース等の糖類等を挙げることができる。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として、下記に有機酸類を例示する。本発明における有機酸類としては、例えば、炭素数1以上の、好ましくは炭素数1〜10のカルボン酸類もしくはスルホン酸類を挙げることができる。カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等を挙げることができる。スルホン酸類としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等を挙げることができる。これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができ、モノヒドロキシカルボン酸類又はジカルボン酸類が好ましく、グリコール酸、シュウ酸がさらに好ましい。
本発明の複合体における酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物の各成分の割合は、本発明の複合体を形成できる限り特に限定されるものではないが、複合体の強度を向上させ、光応答性を向上させる観点から、水溶性高分子化合物は、酸化タングステンと酸化チタンの合計100重量部に対して、30〜150重量部が好ましく、50〜100重量部がより好ましい。水溶性高分子化合物の添加量が上記範囲より多いと、本発明の複合体の強度が増すものの、粘度が高くなって空気を含み、複合体の白濁が強くなる。他方、水溶性高分子化合物の添加量が上記範囲より少ないと、複合体の強度が弱くなる。また、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物を配合する場合は、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物は、複合体を取り扱いやすくし、フォトクロミズム性をより向上させる観点から、酸化タングステンと酸化チタンの合計100重量部に対して、20〜200重量部が好ましい。ヒドロキシ基を有する水溶性化合物の添加量が上記範囲より多いと、形成する複合体に水分を多く含有し、複合体が扱いづらくなる。他方添加量が上記範囲より少ないと、複合体のフォトクロミズム性の向上の効果や、柔軟性や透明性の向上の効果が充分に得られない。
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類の場合には、複合体の光応答性をより向上させる観点から、アルコール類/酸化タングステン(モル比)は、例えば、グリセリン/WOの場合は1.0以上が好ましく、エチレングリコール/WOの場合は2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましい。また、アルコール類を使用する場合、複合体の強度を維持する観点から、アルコール類/酸化タングステン(モル比)は、6以下が好ましい。ヒドロキシ基を有する水溶性化合物が有機酸類の場合には、複合体の光応答性をより向上させる観点から、有機酸類/酸化タングステン(モル比)は、例えば、シュウ酸/WOの場合は0.1〜0.2が好ましく、グリコール酸/WOの場合は0.2〜0.8が好ましい。
本発明の複合体における酸化タングステンと酸化チタンの含有割合は、特に制限されるものではないが、光応答性をより向上させる観点から、タングステン(W)とチタン(Ti)のモル比が、W:Ti=4:1〜1:3が好ましく、3:1〜1:3がより好ましく、3:1〜1:2がさらに好ましい。
(フォトクロミック複合体の製造方法)
本発明の複合体は、その製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体形成用溶液を調製し、これを基材上に塗布して乾燥することや、流し込む等により型枠に充填し乾燥することで作製することができる。前者の場合、膜状の複合体を作製することができ、後者の場合、成形体を作製することができる。本発明におけるフォトクロミック複合体形成用溶液は、酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有し、酸化タングステン粒子及び酸化チタン粒子が分散した分散液であることが好ましい。
(フォトクロミック複合体形成用溶液の調製)
酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有する複合体形成用溶液は、例えば、酸化タングステンコロイド溶液と酸化チタンコロイド溶液を混合し、混合したコロイド溶液に水溶性高分子化合物を混合することにより調製することができる。これらの混合にあたっては、必要に応じて加熱、撹拌、超音波処理等を行う。複合体形成用溶液の調製においては、酸化タングステン粒子と酸化チタン粒子を複合体形成用溶液中に均一に分散させるために、酸化タングステンのコロイド水溶液と酸化チタンのコロイド水溶液を用いることが好ましい。酸化タングステンのコロイド水溶液としては、例えば、タングステン酸ナトリウムなどのタングステンの塩の水溶液をイオン交換(Na+ →H+ )したものを用いることができる。酸化タングステンのコロイド水溶液中の濃度としては、特に限定されないが、例えば0.01〜0.60mol/L程度で行うことができ、好ましくは0.01〜0.20mol/L程度で行うことができる。酸化チタンのコロイド水溶液としては、例えば、チタンのアルコキシドを加水分解して得たものを用いることができ、必要に応じてこれを解膠したものを用いることができる。酸化チタンのコロイド水溶液中の濃度としては、特に限定されないが、例えば0.01〜0.60mol/L程度で行うことができ、好ましくは0.01〜0.20mol/L程度で行うことができる。酸化タングステンコロイド水溶液や酸化チタンコロイド水溶液の濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析等によって求めることができる。このようにして調製した酸化タングステンコロイド水溶液と酸化チタンコロイド水溶液とを混合し、その混合コロイド水溶液に水溶性高分子化合物を混合する。複合体形成用溶液中の水溶性高分子化合物の濃度は、複合体を形成できる限り特に限定されないが、例えば、0.1〜10重量%程度とすることができる。さらに、必要に応じてヒドロキシ基を有する水溶性化合物を混合する。複合体形成用溶液中のヒドロキシ基を有する水溶性化合物の濃度は、複合体を形成できる限り特に限定されないが、例えば、0.1〜10重量%程度とすることができる。複合体形成用溶液中の各成分の配合比は、上記複合体中の各成分の配合比と同様である。
(フォトクロミック複合体の作製)
上記で調製した複合体形成用溶液を用いて、従来公知の方法によりフォトクロミック複合体を作製することができる。たとえば、フォトクロミック膜を作製する場合、ガラスやテフロン(登録商標)基板上に、従来公知の方法により複合膜形成用溶液を塗布、印刷などの手段により成膜し、次いで乾燥してゲル化させることにより作製することができる。乾燥の条件はアルコール類が蒸発しない温度で乾燥すればよく、常圧下、室温〜40℃の温度範囲で乾燥してもよいし、蒸発しにくいアルコール類を用いれば加熱乾燥してもよい。膜の作製に用いる基材は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスや金属等の無機基材や、樹脂等の有機基材を含む従来公知の基材を用いることができる。本発明のフォトクロミック複合膜は、耐久性に十分な厚みを有しているが、さらに耐久性を高めるためや、ガラス等との接着性などの新たな物性を得ることを目的として、保護層や接着層等のその他の層を設けることができる。その他の層を設ける場合、当該層は、本発明の複合膜の上部及び/又は下部に設けられてよいが、当該その他の層の組成物を本発明の複合膜の構成成分と同時に塗布して成膜してもよい。また、フォトクロミック成形体を作製する場合、上記で調製した複合体形成用溶液を型枠内に流し込み、これを乾燥させることにより、所定の形状の成形体を作製することができる。型枠に使用する基材や乾燥温度等は、膜の作製の場合と同様である。本発明のフォトクロミック複合体、例えばフォトクロミック膜やフォトクロミック成形体は、紫外線によるフォトクロミズム性に優れるので、暴露している紫外線量を示す紫外線インディケーターとして使用することができる。また、本発明のフォトクロミック膜は、偽造を防止したい対象物に形成すると、太陽光下で発色するため対象物の真贋を判別することができ、偽造防止用に使用することができる。ここで、膜とは、様々なパターンに形成された膜を含み、フォトクロミック複合体形成用溶液を用いて印字することもでき、また複合体を繊維等に埋め込むこともできる。このように、本発明のフォトクロミック複合体形成用溶液やフォトクロミック複合体は、偽造防止に用いるためのフォトクロミック材料として使用することができる。
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、ゾル中の酸化タングステン又は酸化チタン濃度の測定は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Varian社製、Liberty Series II)を用いて行い、粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−2100)を用いて行った。
[実施例1]
(WOゾルの調製)
NaWO・2HOを15.831g測りとり水100mLに溶解した。この水溶液90mLをスターラー上で攪拌しながら、塩酸(9.3M)9.5mLを一滴ずつ滴下した。得られた溶液を、あらかじめ洗浄した分画分子量3500の透析膜(12cm)4枚に均等に25mLずつ入れ、1Lの水中で8時間透析し、塩化物イオンを除去して酸化タングステンゾル(WOゾル)を得た。なお、水は1時間ごとに新しいものに交換した。ゾル中のWO濃度は0.16Mであり、WO粒子の粒子径は10〜20nmの範囲であった。
(TiOゾルの調製)
水180mLに硝酸1.3mL加え、スターラー上で撹拌し、チタンテトライソプロポキシド15mLを滴下後、暗所下において6日間撹拌を続けた。解膠により得られた酸化チタンゾルを分画分子量3500の透析膜(12cm)4枚に25mLずつ均等に入れ1Lの水中で8時間透析操作を行い、酸化チタンゾル(TiOゾル)を得た。なお、水は1時間ごとに新しいものに交換した。透析終了時の水のpHは3.96であった。また、硝酸イオンが、8時間の透析により完全に除去されたことをイオンクロマトグラフィーにより確認した。ゾル中のTiO濃度は0.19Mであり、TiO粒子の粒子径は10nm以下の範囲であった。
(フォトクロミックフィルムの作製)
上記で調製したWOゾル及びTiOゾルをそれぞれ水で希釈して、0.016MWOゾルと0.016MTiOゾルを調製した。それぞれ10mLずつを混合して20mL溶液(モル比はW:Ti=1:1)とした。この混合ゾル溶液中に水溶性高分子として、メチルセルロース(MC400)を0.4g(2wt%)あるいはポリビニルアルコール(PVA)0.6g(3wt%)を添加し、さらにエチレングリコール(EG)0.027mL(モル比はEG/WO=3.0となる)を加え、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って均一溶液を得た。この溶液を、疎水処理を行ったシャーレ(内径:9.5cm)に入れて、40℃で2日間乾燥した。得られたフィルムは透明であった。図1に得られたフィルムの外観の写真を示す。図1(a)は、メチルセルロースを添加した溶液から得られたフィルムであり、図1(b)は、ポリビニルアルコールを添加した溶液から得られたフィルムである。
[実施例2]
(フォトクロミックバルク体(塊)の作製)
実施例1と同様にして調製したTiOゾルを水で希釈して、0.16MTiOゾルを調製した。0.16MWOゾルと0.16MTiOゾルを10mLずつ混合して20mL溶液(モル比はW:Ti=1:1)とした。さらに、混合するWOゾルとTiOゾルの体積比を変えることで、W:Ti=1:3、W:Ti=3:1の混合ゾル20mLを調製した。それぞれの混合ゾル溶液中に水溶性高分子として、メチルセルロース(MC400)を0.4g(2wt%)添加し、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って均一溶液を得た。また、前記モル比がW:Ti=1:1の混合ゾルにメチルセルロース(MC400)を添加したものに、さらにエチレングリコール(EG)0.27ml(モル比EG/WO=3.0となる)を加え、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って均一溶液としたものも調製した。得られた溶液を、それぞれ疎水処理を行ったビーカー(内径3.5cm)に移して40℃で2日間乾燥した。いずれも白色の塊となったが、EGを添加した場合は柔軟性の高いソフトな塊であった。図2に得られた塊の外観の写真を示す。図2(a)は、モル比W:Ti=1:1であり、メチルセルロースを添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=1:1)]から得られた塊であり、図2(b)は、モル比W:Ti=1:1であり、メチルセルロースとエチレングリコールを添加した溶液[WO/TiO/MC/EG(W:Ti=1:1)]から得られた塊であり、図2(c)は、モル比W:Ti=1:3であり、メチルセルロースを添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=1:3)]から得られた塊であり、図2(d)は、モル比W:Ti=3:1であり、メチルセルロースを添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=3:1)]から得られた塊である。
[実施例3]
(WOゾルの調製)
実施例1と同様にWOゾルを調製した。WOゾル中のWO濃度は0.15Mであった。
(TiOゾルの調製)
解膠により得られたTiOゾルを分画分子量3500の透析膜(15cm)2枚に49mlずつ均等に入れ、1.75Lの水中で、1日に1回水を交換しながら、3日間透析したこと以外は実施例1と同様にしてTiOゾルを得た。TiOゾル中のTiO濃度は0.17Mであった。
(フォトクロミックフィルムの作製)
上記で調製したWOゾル及びTiOゾルをそれぞれ水で希釈して、0.14MWOゾルと0.14MTiOゾルを調製した。それぞれ10mlずつを混合して20ml溶液(モル比はW:Ti=1:1)とした。さらに、混合するWOゾルとTiOゾルの体積比を変えることで、W:Ti=1:3、W:Ti=3:1の混合ゾル20mlを調製した。それぞれの混合ゾル溶液中に水溶性高分子として、メチルセルロース(MC400)を0.4g(2wt%)を添加し、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って均一溶液を得た。また、WOゾルとTiOゾルの混合ゾル(モル比はW:Ti=1:1)にメチルセルロース(MC400)を0.4g(2wt%)添加し、さらにエチレングリコール0.27ml(モル比EG/WO=3.0となる)を加え、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って均一溶液としたものも得た。得られた溶液を、それぞれ疎水処理を行ったシャーレ(内径:9.5cm)に入れて、40℃で1日間乾燥しところ、白濁したフィルムが得られた。図3に得られたフィルムの外観の写真を示す。図3(a)は、モル比W:Ti=1:1であり、メチルセルロースを添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=1:1)]から得られたフィルムであり、図3(b)は、モル比W:Ti=1:1であり、メチルセルロースとエチレングリコールを添加した溶液[WO/TiO/MC/EG(W:Ti=1:1、EG/WO=3.0)]から得られたフィルムであり、図3(c)は、モル比W:Ti=1:3であり、メチルセルロースを添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=1:3)]から得られたフィルムであり、図3(d)は、モル比W:Ti=3:1であり、メチルセルロースを添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=3:1)]から得られたフィルムである。
(実施例1〜3で得られたフィルム及び塊の発色試験)
実施例1〜3で得られたフィルム及び塊に対して、ペン型紫外線照射器(アズワンMOS−Cure mini365 UV波長:365nm)を使用して紫外線を照射し、発色の様子を目視で観察した。実施例1〜3で得られたフィルム及び塊のいずれも紫外線を照射することにより青色に発色した。実施例1で得られたフィルムは、フィルム作製に使用した溶液中のWO及びTiOの含有量が少ないため、透明であったが、実施例2及び3に比べて発色強度は強くなかった。実施例2で得られた塊における発色の強度は、エチレングリコールを添加したもの(W:Ti=1:1)が一番強く、次に(W:Ti=3:1)と(W:Ti=1:1)がほぼ同程度であり、(W:Ti=1:3)がその次であった。実施例3で得られたフィルムにおける発色の強度も、実施例2と同様に、エチレングリコールを添加したもの(W:Ti=1:1)が一番強く、次に(W:Ti=3:1)と(W:Ti=1:1)がほぼ同程度であり、(W:Ti=1:3)がその次であった。TiOゾルの透析時間については、8時間と3日間とで発色の強度に差は認められなかった。
[実施例4]
(WOゾルとTiOゾルの調製)
実施例3と同様に、WO濃度0.12MのWOゾルと、TiO濃度0.12MのTiOゾルを得た。
(フォトクロミックフィルムの作製)
上記で調製したWOゾルとTiOゾルをそれぞれ10mLずつ混合した(モル比はW:Ti=1:1)。混合したゾル溶液中に水溶性高分子として、メチルセルロース(MC400)を2.0wt%、あるいはTEMPO酸化CNF(セルロースナノファイバー)0.7wt%を添加し、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って均一溶液としたものも得た。得られた溶液を、それぞれ疎水処理を行ったシャーレ(内径:9.5cm)に入れて、30℃で46時間乾燥した。白色のフィルムが得られた。ここで、TEMPOとは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルのことである。また、メチルセルロースを添加した溶液から実施例2と同様にして塊(モル比はW:Ti=1:1)を作製した。
(実施例4で得られたフィルムと塊の発色試験)
実施例4で得られたフィルムに対して、ペン型紫外線照射器(アズワンMOS−Cure mini365 UV波長:365nm)を使用して紫外線を照射した。図4はその結果(発色の様子)を示す写真である。図4(a)は、メチルセルロースを添加した溶液から得られたフィルムの紫外線照射前であり、図4(b)は紫外線照射後である。図4(c)は、TEMPO酸化CNFを添加した溶液から得られたフィルムの紫外線照射前であり、図4(d)は紫外線照射後である。両者共にペン型紫外線照射器による紫外線照射により速やかに青色に発色した。また、実施例4で作製された塊を、晴れの日(雲が50%存在)に太陽光下に置いて発色試験を行った。図5はその結果(発色の様子)を示す写真である。図5(a)は、太陽光照射前であり、図5(b)は、太陽光照射開始10秒後であり、図5(c)は、太陽光照射開始20秒後であり、図5(d)は、太陽光照射開始30秒後であり、図5(e)は、太陽光照射開始1分後である。また、図5(f)は、WO濃度0.12MのWOゾル20mLに、メチルセルロースを2wt%、エチレングリコールを0.45g(エチレングリコール/WOのモル比は3)を添加して、湯浴(55〜63℃)中で撹拌し、超音波処理、さらに撹拌を行って得られた均一溶液で作製した透明フィルムについての、太陽光照射開始2分後の写真である。本発明のフォトクロミック材料から得られた塊は、太陽光照射開始後10秒で青色の発色が認められ、1分後には濃青色の発色が認められることから、光照射時の応答性が非常に速い。一方、TiOを含まない透明フィルムでは、光照射開始後2分経っても淡青色の発色しか認められなかった。
(太陽光下での発色試験−1)
実施例4で作製した[WO/TiO/MC(W:Ti=1:1)]溶液から得られた塊(厚さ2mm)と、実施例3で作製した[WO/TiO/MC/EG(W:Ti=1:1、EG/WO=3.0)]溶液を100mLビーカー(底面の直径5cm)に入れて40℃で2日間乾燥後に得られた塊(厚さ0.4mm)を、曇天の日(雲が80%存在)に太陽光下に置いて発色試験を行った。図6はその結果(発色の様子)を示す写真である。図6(a)は、太陽光照射前であり、図6(b)は、太陽光照射開始10秒後であり、図6(c)は、太陽光照射開始20秒後であり、図6(d)は、太陽光照射開始1分後である。写真の左側が実施例4の塊である。曇天のために、太陽光照射開始後1分における実施例4の塊は、図5(e)の場合より発色が弱かったが、エチレングリコールを添加した方は濃青色となり光応答性が非常に速かった。
(太陽光下での発色試験−2)
実施例3で作製した、モル比W:Ti=1:1であり、メチルセルロース(MC)を添加した溶液[WO/TiO/MC(W:Ti=1:1)]から得られたフィルムと、モル比W:Ti=1:1であり、メチルセルロースとエチレングリコール(EG)を添加した溶液[WO/TiO/MC/EG(W:Ti=1:1、EG/WO=3.0)]から得られたフィルムを、曇天の日(雲が80%存在)に太陽光下に置いて発色試験を行った。両フィルムとも、直径9.5cmのシャーレで乾燥させて得たものであり、おおよそ60μmの厚さを有する。図7はその結果(発色の様子)を示す写真である。図7(a)は、太陽光照射前であり、図7(b)は、太陽光照射開始10秒後であり、図7(c)は、太陽光照射開始1分後であり、写真の左側が[WO/TiO/MC(W:Ti=1:1)]の場合、写真の右側が[WO/TiO/MC/EG(W:Ti=1:1、EG/WO=3.0)]の場合である。図7(d)は、太陽光照射開始1分後に、[WO/TiO/MC/EG(W:Ti=1:1、EG/WO=3.0)]の場合のフィルム上に試験開始前から貼っておいた紫色テープをはがした写真である。エチレングリコールを添加した場合、添加しない場合に比べて非常に発色の速さが速く、太陽光照射開始1分後には濃い青色となった(図7(c))。図7(d)から太陽光が照射された部分だけが青色に発色していることが分かる。また、図8には、実施例3と同様に作成した[WO/TiO/MC(W:Ti=1:1)]の厚さ約68μmのフィルムに、超高圧水銀ランプ(18mW/cm)で紫外線を5分照射した後のフィルムと、紫外線を照射する前のフィルムを拡散反射法(測定装置:紫外可視赤外分光光度計、JASCO、日本分光製 V−670、積分球ユニット(ISN−723)で測定した結果を示す。この結果からも本発明の複合体(フィルム)が紫外線の照射により青色に発色することが分かる。
本発明のフォトクロミック複合体は、紫外線によるフォトクロミズム性に優れるので、太陽光中の紫外線量を視覚化する分野、例えば、日焼け止めクリーム等の容器、日傘、帽子などの日中の紫外線対策製品において、暴露している紫外線量を示すインジケータとして利用できる。また、太陽光下で速やかに発色するので、太陽光にさらすことにより製品の真贋を証明でき、偽造防止の分野に利用できる。

Claims (10)

  1. 酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体。
  2. 水溶性高分子化合物がアルキルセルロースであることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック複合体。
  3. ヒドロキシ基を有する水溶性化合物(ただし、請求項1記載の水溶性高分子化合物を除く)を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のフォトクロミック複合体。
  4. ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類又は有機酸類であることを特徴とする請求項3記載のフォトクロミック複合体。
  5. アルコール類がエチレングリコールであることを特徴とする請求項4記載のフォトクロミック複合体。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載のフォトクロミック複合体を用いた紫外線インディケーター。
  7. 酸化タングステン、酸化チタン及び水溶性高分子化合物を含有する偽造防止に用いるためのフォトクロミック材料。
  8. 酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体形成用溶液。
  9. 酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、前記分散液を基板上に塗布して乾燥することを特徴とするフォトクロミック複合体の製造方法。
  10. 酸化タングステン粒子、酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、前記分散液を型枠に充填し乾燥することを特徴とするフォトクロミック複合体の製造方法。


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