JP2019136989A - フロアマーキング用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】 床面へのグリップ性及びシートの層間接着性に優れ、床面へ敷いた後に容易に撤去することが可能であるフロアマーキング用シートを提供する。【解決手段】 軟質ポリ塩化ビニルフィルム、基布、接着剤層、及び、樹脂シートをこの順に備え、上記軟質ポリ塩化ビニルフィルムは、塩化ビニル樹脂、及び、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して60〜200重量部の可塑剤を含有し、上記基布は、2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計が100〜125本であり、上記縦糸及び上記横糸は、5〜25番手の糸であるフロアマーキング用シート。【選択図】 図1
Description
本発明は、フロアマーキング用シートに関する。
フロアマーキング用シートは、床面に敷き、床面装飾、宣伝広告及び案内表示等として用いられるシートである。床面に敷いて用いられるシートとして、例えば、特許文献1には、塩化ビニル樹脂配合物からなる表地層、中地層及び下地層が貼り合された床シートにおいて、中地層と下地層との間に繊維層が挿入されているクリーンルーム用床シートが開示されている。また、特許文献2には、塩化ビニル系樹脂の粉粒体が加熱、溶融により互いに固着一体化してなる半硬質ないし硬質の表層を、基材シート上に有する装飾シートが開示されている。
フロアマーキング用シートは、表面に広告や誘導サイン等が印刷されているメディアをラミネートし、その裏面に塗布されている接着剤によって床面(例えば、プラスチックタイル、コンクリート床、塗装床、等)に直接貼り付けて使用するか、上記裏面にゴムシートを貼り付けて移動用の置き敷き広告として使用することが多い。このようなフロアマーキング用シートは、次のような問題点を有している。
接着剤を用いてフロアマーキング用シートを床面に直接貼り付ける場合、フロアマーキング用シートは床面に強く接着するが、フロアマーキング用シートの撤去が煩雑になるという問題がある。また、ゴムシートを用いてフロアマーキング用シートを床面に設ける場合、ゴムシートのグリップ性が充分でない場合がある。
また、本発明者は、印刷が施されたメディア等の樹脂シートを基布上に配置したフロアマーキング用シートを検討する中で、上記基布と上記樹脂シートとを接着するために両者の間に接着剤層を設けたが、上記接着剤層の接着力は充分ではなく、上記接着剤層と上記基布とが剥がれ易く、シートの層間接着性が充分ではないことを見出した。
上記特許文献1及び上記特許文献2では、シートのグリップ性及び層間接着性の両者を向上させる技術については何ら記載されていない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、床面へのグリップ性及びシートの層間接着性に優れ、床面へ敷いた後に容易に撤去することが可能なフロアマーキング用シートを提供することを目的とするものである。
本発明者は、基布を備え、床面へ敷いた後に容易に撤去することが可能であるフロアマーキング用シートについて、床面へのグリップ性及びシートの層間接着性を向上させるために、種々の検討を行った。その結果、フロアマーキング用シートにおいて床面と接する層に軟質ポリ塩化ビニルフィルムを用いることにより、フロアマーキング用シートの表面の粘着力を高め、フロアマーキング用シートのグリップ性を向上させることが可能となることを見出した。更に、上記基布の単位面積当たりの縦糸及び横糸の合計の本数を特定の範囲とし、かつ、上記縦糸及び上記横糸の番手を特定の範囲とすることにより、上記基布の表面に適度な凹凸を付与し、上記基布と上記基布に接する層、例えば接着剤層等との接触面積を増加させること等を可能とし、シートの層間接着性を向上させることができることを見出した。これにより上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
本発明のフロアマーキング用シートは、軟質ポリ塩化ビニルフィルム、基布、接着剤層、及び、樹脂シートをこの順に備え、上記軟質ポリ塩化ビニルフィルムは、塩化ビニル樹脂、及び、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して60〜200重量部の可塑剤を含有し、上記基布は、2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計が100〜125本であり、上記縦糸及び上記横糸は、5〜25番手の糸であることを特徴とする。
上記接着剤層は、アクリル系接着剤又はゴム系接着剤を含有することが好ましい。
上記樹脂シートは、上記接着剤層と反対側の表面に印刷層を有することが好ましい。
上記基布は、上記縦糸及び上記横糸を綾織したものであることが好ましい。
本発明のフロアマーキング用シートは、厚みが0.4〜1.0mmであることが好ましい。
上記樹脂シートは、ポリ塩化ビニルフィルム又は合成紙であることが好ましい。
本発明のフロアマーキング用シートは、上記基布及び上記接着剤層の間に、更に、プライマー層を備えることが好ましい。
上記プライマー層は、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を含有することが好ましい。
上記基布は、上記接着剤層と接することが好ましい。
本発明のフロアマーキング用シートによれば、床面へ敷いた後に容易に撤去することが可能なフロアマーキング用シートについて、床面へのグリップ性及びシートの層間接着性を高めることができる。
<フロアマーキング用シート>
図1は、床面に敷いた状態の本発明のフロアマーキング用シートの一例を模式的に示した断面図である。本発明のフロアマーキング用シート1は、床面F側から順に、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10、基布20、接着剤層30及び樹脂シート40を備える。フロアマーキング用シート1は、床面F側に軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を備えるため、接着剤又はゴムシートを用いなくとも、床面Fに対する優れたグリップ性を得ることができる。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、薄く成形しても充分なグリップ性を発現できるため、フロアマーキング用シート1の厚みを抑えることが可能であり、フロアマーキング用シート1の厚みは、例えば、0.4〜1.5mmとすることができる。したがって、例えば、ゴムシートを用いたフロアマーキング用シートの場合、ゴムシートの厚みが1.5mm程度と厚いため、足や台車がフロアマーキング用シートの端に引っ掛かることがあるが、本発明のフロアマーキング用シート1は厚みを薄くすることが可能であるため、足や台車がフロアマーキング用シート1の端に引っ掛かり難くすることができる。フロアマーキング用シート1の厚みは、0.4〜1.0mmであることが好ましい。フロアマーキング用シート1を構成する各層の詳細を以下に説明する。
図1は、床面に敷いた状態の本発明のフロアマーキング用シートの一例を模式的に示した断面図である。本発明のフロアマーキング用シート1は、床面F側から順に、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10、基布20、接着剤層30及び樹脂シート40を備える。フロアマーキング用シート1は、床面F側に軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を備えるため、接着剤又はゴムシートを用いなくとも、床面Fに対する優れたグリップ性を得ることができる。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、薄く成形しても充分なグリップ性を発現できるため、フロアマーキング用シート1の厚みを抑えることが可能であり、フロアマーキング用シート1の厚みは、例えば、0.4〜1.5mmとすることができる。したがって、例えば、ゴムシートを用いたフロアマーキング用シートの場合、ゴムシートの厚みが1.5mm程度と厚いため、足や台車がフロアマーキング用シートの端に引っ掛かることがあるが、本発明のフロアマーキング用シート1は厚みを薄くすることが可能であるため、足や台車がフロアマーキング用シート1の端に引っ掛かり難くすることができる。フロアマーキング用シート1の厚みは、0.4〜1.0mmであることが好ましい。フロアマーキング用シート1を構成する各層の詳細を以下に説明する。
[軟質ポリ塩化ビニルフィルム]
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、特定量の可塑剤を含有させることにより柔らかく形成したポリ塩化ビニルフィルムである。軟質であることによって、フロアマーキング用シート1の床面Fに対するグリップ性が得られ、フロアマーキング用シート1の床面Fに対する滑りを抑える機能を有する。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、接着剤とは異なり、床面に完全に固定するものではないため、フロアマーキング用シート1を一時的に床面Fに設置し、その後、容易に撤去することができる。また、ゴムシートよりもグリップ性に優れ、かつ、厚みを抑えることができるため、足や台車のフロアマーキング用シート1への引っ掛かりを抑えることができる。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、特定量の可塑剤を含有させることにより柔らかく形成したポリ塩化ビニルフィルムである。軟質であることによって、フロアマーキング用シート1の床面Fに対するグリップ性が得られ、フロアマーキング用シート1の床面Fに対する滑りを抑える機能を有する。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、接着剤とは異なり、床面に完全に固定するものではないため、フロアマーキング用シート1を一時的に床面Fに設置し、その後、容易に撤去することができる。また、ゴムシートよりもグリップ性に優れ、かつ、厚みを抑えることができるため、足や台車のフロアマーキング用シート1への引っ掛かりを抑えることができる。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、塩化ビニル樹脂及び可塑剤を含有し、上記可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、60〜200重量部である。このような態様とすることにより、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の表面の粘着力を高め、床面Fに対するグリップ性を向上させることができる。上記可塑剤の含有量が60重量部未満であると、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の表面の粘着力を高めることができず、床面Fに対するグリップ性を向上させることができない。一方、上記可塑剤の含有量が200重量部を超えると、ブリードアウトした可塑剤が床面Fを汚染してしまうことがある。上記可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、80〜140重量部であることが好ましく、90〜120重量部であることがより好ましい。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、床面Fと接する側の表面にツヤがある(上記表面がグロス調である)ことが好ましい。このような態様の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、床面Fと接する側の表面粗さが小さく、表面が平滑であるため、床面Fとの接触面積を大きくすることができる。その結果、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の床面Fに対する摩擦係数を高めることができ、フロアマーキング用シート1のグリップ性をより高めることができる。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10に含まれる上記塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他の単量体との共重合体を挙げることができる。
上記他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記塩化ビニルと他の単量体との共重合体における、上記他の単量体の含有量は、通常、50重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。50重量%を超えると、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の耐屈曲性が低下するおそれがある。上記塩化ビニル樹脂のなかでも、寸法安定性が得られる点から、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
上記塩化ビニル樹脂の平均重合度は特に限定されず、求められるフィルムの硬さや、硬さの調整に用いられる可塑剤の量に応じて調整されるものであり、例えば、700〜1400とされる。上記平均重合度が700〜1400の範囲内であると、カレンダー成形に適する。これに対して、上記平均重合度が700未満では、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10に破けや割れが発生し易くなるおそれがある。一方、上記平均重合度が1400を超えると、ポリマー鎖の絡み合いが強くなるため、カレンダー加工等で延伸してフィルム状に製膜する際のせん断力が大きくなり、製膜性が低下するおそれがある。本明細書において、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10に含まれる上記可塑剤としては特に限定されず、従来から塩化ビニル樹脂に配合されているものを用いることができ、例えば、フタル酸オクチル(ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP))、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸ジエステル;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル;トリクレジルホスフエート、トリオクチルホスフエート等のリン酸トリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;高分子ポリエステル可塑剤等を挙げることができる。
上記高分子ポリエステル可塑剤としては、例えば、フタル酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステル;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記可塑剤の数平均分子量は、300〜3500であることが好ましい。上記数平均分子量が300未満では、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10に隣接する層や床面Fへ上記可塑剤が移行し易いため、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の表面の粘着力を充分に高めることができず、床面Fに対するグリップ性を充分に向上させることができない場合がある。一方、上記数平均分子量が3500を超えると、溶融粘度が高くなるため、溶融樹脂の流動性が低下して軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の表面が粗くなるおそれがある。その結果、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の表面の平滑性が低下して軟質ポリ塩化ビニルフィルム10と床面Fとの接触面積が低下し、両者間の摩擦係数が低下することにより、床面Fに対するグリップ性を充分に向上させることができない場合がある。なお、本明細書において、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算の測定値である。上記GPC測定は定法に従って行われる。例えば、測定対象となる可塑剤の希薄テトラヒドロフラン溶液を調製し、東ソー社製のGPC測定装置「HLC一8220GPC」と、昭和電工社製のカラム「KF606M」及び「KF603」とを用いて測定する。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10は、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収材、着色剤、発泡剤、滑剤、改質剤、無機粒子や無機繊維等の充填剤、希釈剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤としては、塩化ビニル樹脂に一般的に配合されるものを使用することができる。
上記安定剤としては、例えば、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、脂肪酸バリウム等の金属石ケン;ハイドロタルサイト等が挙げられる。上記金属石ケンの脂肪酸成分としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム等が挙げられる。また、上記安定剤としては、エポキシ系安定剤;バリウム系安定剤;カルシウム系安定剤;スズ系安定剤;亜鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系(Ca−Zn系)、バリウム−亜鉛系(Ba−Zn系)等の複合安定剤も使用することができる。
軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の厚みは、40〜600μmであることが好ましい。上記厚みが40μm未満であると、グリップ性が低下してしまうおそれがある。一方、上記厚みが600μmを超えると、カレンダー成形時に表面に外観不良が発生してしまうおそれがある。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10の厚みのより好ましい下限は50μmであり、より好ましい上限は500μmである。
[基布]
基布20は、縦糸及び横糸で構成される布である。基布20は、2.54cm四方あたりの上記縦糸及び上記横糸の合計が100〜125本であり、上記縦糸及び上記横糸は、5〜25番手の糸である。単位面積当たりの上記縦糸及び上記横糸の合計本数と、上記縦糸及び上記横糸の番手の両方を所定の範囲とすることにより、基布20の表面に適度な凹凸を付与することができる。これにより、基布20に接する層(例えば、接着剤層30)を基布20の凹凸部に密着させ、両者の接触面積を増加させつつ、基布20に接する層へ入り込む基布20の凸部の体積を適度な範囲とすることにより、基布20及び基布20に接する層の間の層間接着性を高めることができる。以下では、「2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計」を、「単位面積当たりの糸の本数」ともいう。
基布20は、縦糸及び横糸で構成される布である。基布20は、2.54cm四方あたりの上記縦糸及び上記横糸の合計が100〜125本であり、上記縦糸及び上記横糸は、5〜25番手の糸である。単位面積当たりの上記縦糸及び上記横糸の合計本数と、上記縦糸及び上記横糸の番手の両方を所定の範囲とすることにより、基布20の表面に適度な凹凸を付与することができる。これにより、基布20に接する層(例えば、接着剤層30)を基布20の凹凸部に密着させ、両者の接触面積を増加させつつ、基布20に接する層へ入り込む基布20の凸部の体積を適度な範囲とすることにより、基布20及び基布20に接する層の間の層間接着性を高めることができる。以下では、「2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計」を、「単位面積当たりの糸の本数」ともいう。
単位面積当たりの糸の本数が100本未満の場合、基布20の表面に形成される凸部の数が少な過ぎ、基布20と基布20に接する層との接触面積が充分に増加せず、層間接着性を高めることができない。一方、単位面積当たりの糸の本数が125本を超える場合、基布20の表面に形成される凸部の数が増加し過ぎ、基布20に接する層を基布20の凹部に充分密着させることができず、層間接着性を高めることができない。
上記縦糸及び上記横糸の番手が5番手より小さい場合、基布20の表面において凸部間の間隔が狭くなり、基布20に接する層を基布20の凹部に充分密着させることができず、層間接着性を高めることができない。一方、上記縦糸及び上記横糸の番手が25番手より大きい場合、基布20に接する層へ入り込む基布20の体積が減少し、層間接着性を高めることができない。
上記縦糸及び上記横糸は、繊維であれば特に限定されない。上記縦糸及び上記横糸に用いられる繊維としては、例えば、天然繊維(例えば、木綿及び麻等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維等)、再生繊維(例えば、ビスコースレーヨン及びキュプラ等)、半合成繊維(例えば、セルロースジ−及びトリアセテート繊維等)、並びに、合成繊維(例えば、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、アクリル重合体、ポリ塩化ビニル、ビニロン及びポリオレフィンの繊維等)が挙げられる。
基布20は、織物、編物、不織布、紙状物、及び、これらの2種以上を複合した布のいずれであってもよい。基布20は、上記縦糸及び上記横糸を、平織、綾織等したものが挙げられる。基布20及び基布20に接する層の間の層間接着性をより高めることができることから、基布20は、上記縦糸及び上記横糸を綾織したものであることが好ましい。綾織とは、縦糸(又は横糸)が、2本もしくは3本の横糸(又は縦糸)を通過した後、1本の横糸(又は縦糸)の下を通過することを繰り返す織り方である。
基布20は、接着剤層30と接していてもよい。このような態様とすることにより、基布20の凹凸部に接着剤層30を密着させ、両者の接触面積を増加させつつ、接着剤層30へ入り込む基布20の凸部の体積を適度な範囲とすることにより、基布20及び接着剤層30の間の層間接着性を高めることができる。
基布20の厚みは、特に限定されないが、300〜600μmであることが好ましい。基布20の厚みは、ダイヤルゲージにて測定することができる。
[接着剤層]
接着剤層30は、接着機能を有するものであり、具体的には、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤を含有するものが挙げられる。なかでも、アクリル系接着剤又はゴム系接着剤を含有することが好ましく、接着性、加工性、耐熱老化性、耐湿老化性、耐候性に優れるとともに、比較的安価である点から、アクリル系接着剤を含有することがより好ましい。
接着剤層30は、接着機能を有するものであり、具体的には、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤等の接着剤を含有するものが挙げられる。なかでも、アクリル系接着剤又はゴム系接着剤を含有することが好ましく、接着性、加工性、耐熱老化性、耐湿老化性、耐候性に優れるとともに、比較的安価である点から、アクリル系接着剤を含有することがより好ましい。
上記アクリル系接着剤は、アクリル系重合体を含む接着剤である。上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又はその共重合体等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が2〜18、好ましくは4〜12の第一級〜第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸とから得られるエステル等が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体の合成に用いられる共重合性単量体としては、共重合反応に関与する不飽和二重結合を分子内に少なくとも1個有するとともに、カルボキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等〕、ヒドロキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル等〕、スルホキシル基〔例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等〕、アミノ基〔例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステル等〕、アミド基〔例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等〕、アルコキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等〕等の官能基を側鎖に有する単量体を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アクリル系接着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40重量%以上の割合で重合した重合体が好ましい。特に、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜98重量%と、1種又は2種以上の共重合性単量体2〜50重量%を共重合して得られる共重合体が好ましい。
上記アクリル系接着剤の重量平均分子量(Mw)は、30万〜100万であることが好ましい。上記重量平均分子量が30万〜100万の範囲内であると、充分な接着力を発現することができる点で有利である。これに対して、上記重量平均分子量が30万未満では、粘着力が低下するおそれがあり、一方、上記重量平均分子量が100万を超えると、濡れ性低下によって、所望の接着力を発現することが難しいことがある。上記アクリル系接着剤の重量平均分子量は、40万〜90万であることがより好ましく、50万〜60万であることが更に好ましい。
上記ゴム系接着剤としては、例えば、天然ゴム系接着剤が挙げられる。上記天然ゴム系接着剤は、天然ゴム、粘着付与剤(テルペン樹脂、ロジン樹脂等)、トルエン、及び、その他安定剤を含む接着剤である。
上記アクリル系接着剤の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定によるポリスチレン換算の測定値である。なお、測定条件は以下の通りである。
装置名:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:G7000HXL 7.8mmID×30cm 1本 GMHXL 7.8mmID×30cm 2本 G2500HXL 7.8mmID×30cm 1本(東ソー社製)
サンプル濃度:1.5mg/mlになるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
装置名:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:G7000HXL 7.8mmID×30cm 1本 GMHXL 7.8mmID×30cm 2本 G2500HXL 7.8mmID×30cm 1本(東ソー社製)
サンプル濃度:1.5mg/mlになるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
接着剤層30は、例えば、接着剤、架橋剤(硬化剤)等を含有する接着剤組成物を樹脂シート40上に塗工して塗膜を形成した後、該塗膜を加熱乾燥して硬化させる方法によって形成できる。上記架橋剤(硬化剤)は、接着剤中の官能基と化学反応又は相互作用をして架橋させる化合物である。上記架橋剤としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の公知の架橋剤を用いることができる。
上記イソシアネート系硬化剤はイソシアネート基を有する化合物であり、その具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等の分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物;それらをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させた化合物や、それらをポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型の分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。なかでも、分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物を多価アルコールと付加反応させた化合物が好ましく、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートを多価アルコールと付加反応させた化合物がより好ましい。
上記エポキシ系硬化剤はエポキシ基を有する化合物であり、その具体例としては、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
上記架橋剤を含有させる場合、その含有量は、上記接着剤100重量部(固形分)に対して0.05〜10重量部であることが好ましい。上記含有量が0.05重量部未満であると、架橋密度が低く、接着剤層30の凝集力が不充分で、糊残りが発生することがある。上記含有量が10重量部を超えると、接着力が低下するおそれがある。上記含有量は、0.1〜3重量部であることがより好ましい。なお、イソシアネート系硬化剤とエポキシ系硬化剤の両方が使用される場合、上記含有量は、イソシアネート系硬化剤とエポキシ系硬化剤の合計量を意味する。
上記接着剤組成物は、更に、触媒を含有してもよい。触媒としては、上記架橋剤の反応に用いられる触媒が挙げられ、例えば、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、ジラウリル酸ジメチル錫、ジブチル錫オキシド、オクタン錫等の有機錫化合物;有機チタン化合物;有機ジルコニウム化合物;カルボン酸錫塩;カルボン酸ビスマス塩;トリエチレンジアミン等のアミン系触媒が挙げられる。
上記接着剤組成物は、更に、疎水性有機溶剤等の溶剤を含有してもよい。上記疎水性有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、鉱油、石油エーテル等が挙げられる。
また、上記接着剤組成物には、本発明のフロアマーキング用シート1に要求される特性を阻害しない範囲で、必要に応じて、安定剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、染料、顔料等の各種添加剤が添加されていてもよい。
接着剤層30の厚みは、10〜60μmが好ましい。上記厚みが10μm未満では、充分な接着力を得ることができない場合があり、上記厚みが60μmを超えると、接着力がさほど向上しない。接着剤層30のより好ましい厚みは、20〜50μmである。
[樹脂シート]
樹脂シート40は、樹脂を含有するものであれば特に限定されない。樹脂シート40に含まれる樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート等が挙げられる。
樹脂シート40は、樹脂を含有するものであれば特に限定されない。樹脂シート40に含まれる樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート等が挙げられる。
樹脂シート40は、ポリ塩化ビニルフィルム又は合成紙であることが好ましい。このような態様とすることにより、樹脂シート40に容易に印刷を施すことができる。
上記ポリ塩化ビニルフィルムは、塩化ビニル樹脂を含み、上記塩化ビニル樹脂としては、上述の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10に含まれる塩化ビニル樹脂と同様のものを挙げることができる。
上記ポリ塩化ビニルフィルムは、可塑剤を含有してもよく、上記可塑剤としては、上述の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10に含まれる可塑剤と同様のものを挙げることができる。上記ポリ塩化ビニルフィルムに含まれる可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して、5〜30重量部であることが好ましい。上記含有量が5重量部未満であると、上記ポリ塩化ビニルフィルムが硬くなり過ぎるため、成形時に破れてしまうおそれがある。一方、上記含有量が30重量部を超えると、上記ポリ塩化ビニルフィルムから可塑剤がブリードアウトし、接着剤層に移行し、塩化ビニルフィルムと基布20との密着性を低下させる恐れがある。上記可塑剤の含有量は、10〜20重量部であることがより好ましい。
上記合成紙は、例えば、高分子化合物を繊維状に成形し、これらを絡めて圧着し一枚のシート状にしたものである。上記合成紙は、一般のプラスチックフィルムと比較して寸法変化が起こりにくいことから、樹脂シート40として合成紙を用いることで、フロアマーキング用シート1に反りが発生し難くすることができる。上記合成紙としては、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含有するものが挙げられる。例えば、ポリプロピレンを結晶状態で使用した合成紙は、耐溶剤性に優れている。
樹脂シート40は、接着剤層30と反対側の表面に印刷層を有することが好ましい。上記印刷層は、任意の模様や文字、図柄等の画像を形成するために設けられる。上記印刷層は、樹脂シート40の表面全体を覆うものであってもよく、部分的に覆うものであってもよい。
上記印刷層は、上記ポリ塩化ビニルフィルム又は上記合成紙の表面に溶剤系インクを用いて形成されることが好ましい。溶剤系インクを用いて形成された印刷層は、上記ポリ塩化ビニルフィルム又は上記合成紙の表面に配置されたインク受容層に染み込んだ状態で上記ポリ塩化ビニルフィルム又は上記合成紙の表面に定着する。そのため、画像の鮮明性、堅牢性に優れる。
上記溶剤系インクとしては、主に溶剤、顔料、ビヒクル、及び、更に必要に応じて配合される補助剤からなる従来公知の溶剤系インクを使用することができる。なかでも、ビヒクルとして、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、アクリル−酢酸ビニル共重合系樹脂等のビニル系樹脂、又は、アクリル系樹脂を含有する溶剤系インクが、上記ポリ塩化ビニルフィルム及び上記合成紙との密着性に優れる点で好ましい。上記ビヒクルは2種以上を併用してもよい。
上記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、低沸点芳香族ナフサ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。上記顔料としては、カーボンブラック(ブラック)、銅フタロシアニン(シアン)、ジメチルキナクリドン(マゼンタ)、ピグメント・イエロー(イエロー)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ニッケル化合物等が挙げられる。上記顔料としては、他にも種々の顔料が既に知られており、上記したものに限定されるわけではない。
上記印刷層を形成する方法は特に限定されず、直接グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の従来公知の印刷方法を用いることができる。
樹脂シート40の厚みは、特に限定されないが、100〜300μmであることが好ましい。上記厚みが100μm未満であると、薄くて取扱いが困難となり、延伸時に抗張力不足により破断等してしまうおそれがある。一方、上記厚みが300μmを超えると、トリミング時に切削が困難となり、加工し辛くなる場合がある。また、コストも増加してしまうおそれがある。
[プライマー層]
フロアマーキング用シート1は、基布20と接着剤層30との間に、更に、プライマー層を有していてもよい。上記プライマー層は高い接着性を有するため、プライマー層と基布20との間、及び、プライマー層と接着剤層30との間において、優れた接着性を発現することができる。そのため、プライマー層を介して、基布20と接着剤層30との接着力を更に高め、層間接着性を更に向上させることができる。この場合、基布20にはプライマー層が接することとなり、プライマー層を基布20の凹凸部に密着させ、両者の接触面積を増加させつつ、プライマー層へ入り込む基布20の凸部の体積を適度な範囲とすることにより、基布20及びプライマー層の間の層間接着性を高めることができる。プライマー層は基布20に含浸させることが好ましい。
フロアマーキング用シート1は、基布20と接着剤層30との間に、更に、プライマー層を有していてもよい。上記プライマー層は高い接着性を有するため、プライマー層と基布20との間、及び、プライマー層と接着剤層30との間において、優れた接着性を発現することができる。そのため、プライマー層を介して、基布20と接着剤層30との接着力を更に高め、層間接着性を更に向上させることができる。この場合、基布20にはプライマー層が接することとなり、プライマー層を基布20の凹凸部に密着させ、両者の接触面積を増加させつつ、プライマー層へ入り込む基布20の凸部の体積を適度な範囲とすることにより、基布20及びプライマー層の間の層間接着性を高めることができる。プライマー層は基布20に含浸させることが好ましい。
上記プライマー層は、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を含有することが好ましい。アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を使用することにより、基布20との接着力、及び、接着剤層30との接着力が強固なものとなり、最終製品として耐水性や耐候性などの耐久性の面で、性能を著しく向上させることができる。
上記アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらのなかでは、接着力の点からメタクリル酸メチルが好ましい。上記アクリル系樹脂としては市販品を使用することもできる。
上記ウレタン系樹脂は、例えば、ポリオールとイソシアネートを反応させることにより得られる。
上記ウレタン系樹脂は、ウレタンアクリレートであってもよい。上記ウレタンアクリレートは、例えば、上記ポリオールとイソシアネートを反応させることにより得られるウレタン系樹脂に、(メタ)アクリル酸モノマーを導入したものが挙げられる。
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常、1〜10μmが好ましい。1μm未満では、基布20と接着剤層30との接着性を充分に向上させることができないおそれがある。一方、10μmを超えると、タック(べたつき)が強くなり、例えば、フロアマーキング用シートの製造において、基布上にプライマー層を形成した積層体をロール状に巻き取る際に、積層体間での貼り付きが発生する可能性がある。また、加工時にシートが設備にくっつき、加工が困難となる場合がある。
<フロアマーキング用シートの製造方法>
本発明のフロアマーキング用シート1は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、塩化ビニル樹脂、及び、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して60〜200重量部の可塑剤を含有する混合物を、カレンダー法により、カレンダーロールを用いてシート状に成形して軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を形成した後、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10が軟化した状態で、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を基布20に積層させる。ここで、基布20は、2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計が100〜125本であり、上記縦糸及び上記横糸は、5〜25番手の糸である。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を基布20に積層させる際、カレンダーロール(圧延ロール)から送り出された溶融状態の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10と、基布ロールから送り出された基布20とが貼り合わされるため、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10と基布20とを充分に接着させることができる。
本発明のフロアマーキング用シート1は、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、塩化ビニル樹脂、及び、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対して60〜200重量部の可塑剤を含有する混合物を、カレンダー法により、カレンダーロールを用いてシート状に成形して軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を形成した後、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10が軟化した状態で、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を基布20に積層させる。ここで、基布20は、2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計が100〜125本であり、上記縦糸及び上記横糸は、5〜25番手の糸である。軟質ポリ塩化ビニルフィルム10を基布20に積層させる際、カレンダーロール(圧延ロール)から送り出された溶融状態の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10と、基布ロールから送り出された基布20とが貼り合わされるため、軟質ポリ塩化ビニルフィルム10と基布20とを充分に接着させることができる。
続いて、基布20の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10が積層された面とは反対側の面に、接着剤層30を介して樹脂シート40を接着する。
接着剤層30は、基布20の軟質ポリ塩化ビニルフィルム10が積層された面とは反対側の面、又は、樹脂シート40に接着剤組成物を塗工することにより形成することができる。上記接着剤組成物の塗工量は、10〜90g/m2(乾燥時重量換算)であることが好ましい。言い換えれば、上記接着剤組成物を乾燥させた接着剤層30の塗工量が10〜90g/m2であることが好ましい。上記塗工量が10〜90g/m2の範囲に調整されることによって、接着剤層30の接着力を確保することができる。上記塗工量が10g/m2未満では、接着力が不充分なことがある。上記塗工量が90g/m2を超えると、接着剤層30の接着力がさほど向上しない。上記塗工量の好ましい下限は50g/m2である。上記塗工量が50g/m2以上であると、基材表面の凹凸に対する充分な追従性が得られる。
本発明のフロアマーキング用シート1を製造する際は、接着剤層30を介して樹脂シート40を接着する前に、樹脂シート40の接着剤層30と反対側の表面に印刷層を形成する工程を含むことが好ましい。上記印刷層は、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、静電印刷等により形成することができる。
本発明のフロアマーキング用シート1の製造方法は、上記接着工程の前に、基布20にプライマー処理を行う工程を含むことが好ましい。このような態様とすることにより、基布20と接着剤層30との接着性を向上させることができる。上記プライマー処理は、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を基布20上に塗布し、その後、必要に応じて乾燥させることにより行うことができる。
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。図2は、実施例及び比較例に関する写真であり、(a)は実施例1、3〜5、8〜10及び12のフロアマーキング用シートが備える基布の拡大写真であり、(b)は実施例2、6、7及び11のフロアマーキング用シートが備える基布の拡大写真であり、(c)は比較例3のフロアマーキング用シートが備える基布の拡大写真である。
(実施例1)
平均重合度が1300の塩化ビニル樹脂100重量部に対して、フタル酸エステル系可塑剤(シージーエスター社製、DOP)100重量部を添加し、ブレンダーを用いて20分間溶融混錬し、溶融混合物(PVCコンパウンド)を得た。得られたPVCコンパウンドを、加熱した逆L字型カレンダーロールを用いてカレンダー加工を行い、軟質ポリ塩化ビニルフィルムを得た後、続いて、エンボスロールを用いて図2(a)に示す基布と上記軟質ポリ塩化ビニルフィルムとを積層することにより、軟質ポリ塩化ビニルフィルム及び基布の積層体を得た。上記基布の糸はポリエステルであり、縦糸70本、横糸35本であり、単位面積当たりの糸の本数は105本であった。また、上記基布の縦糸の番手は20番手、横糸の番手は20/3番手であり、糸の太さは200〜300μmであった。ここで、糸の番手が20/3番手とは、20番手の糸を3本撚った状態の糸を意味する。基布は上記縦糸及び横糸を綾織したものであった。
平均重合度が1300の塩化ビニル樹脂100重量部に対して、フタル酸エステル系可塑剤(シージーエスター社製、DOP)100重量部を添加し、ブレンダーを用いて20分間溶融混錬し、溶融混合物(PVCコンパウンド)を得た。得られたPVCコンパウンドを、加熱した逆L字型カレンダーロールを用いてカレンダー加工を行い、軟質ポリ塩化ビニルフィルムを得た後、続いて、エンボスロールを用いて図2(a)に示す基布と上記軟質ポリ塩化ビニルフィルムとを積層することにより、軟質ポリ塩化ビニルフィルム及び基布の積層体を得た。上記基布の糸はポリエステルであり、縦糸70本、横糸35本であり、単位面積当たりの糸の本数は105本であった。また、上記基布の縦糸の番手は20番手、横糸の番手は20/3番手であり、糸の太さは200〜300μmであった。ここで、糸の番手が20/3番手とは、20番手の糸を3本撚った状態の糸を意味する。基布は上記縦糸及び横糸を綾織したものであった。
更に上記積層体における基布の表面に、アクリル系樹脂を含むプライマー層を11g/m2(乾燥時重量換算)塗工し、基布にプライマー層を含浸させ、プライマー層付き積層体を得た。
平均重合度が1050の塩化ビニル樹脂100重量部に対して、フタル酸エステル系可塑剤(シージーエスター社製、DOP)20重量部を添加し、ブレンダーを用いて20分間溶融混錬し、溶融混合物(PVCコンパウンド)を得た。得られたPVCコンパウンドを、加熱した逆L字型カレンダーロールを用いてカレンダー加工を行い、樹脂シートとしてポリ塩化ビニルフィルムを得た。続いて、上記ポリ塩化ビニルフィルム上にアクリル系接着剤(綜研化学社製、SK1717、重量平均分子量50万〜60万)を塗布し、30μmの厚みの接着剤層を形成し、接着剤層付きポリ塩化ビニルフィルムを得た。
上記プライマー層付き積層体と上記接着剤層付きポリ塩化ビニルフィルムとを、上記プライマー層及び上記接着剤層とが接するよう、ラミネーター機により貼り合わせ、実施例1のフロアマーキング用シートを得た。
(実施例2〜14、及び、比較例1〜3)
下記表1〜3に示したように構成を変更したことを除いて実施例1と同様にして、実施例2〜14及び比較例1〜3に係るフロアマーキング用シートをそれぞれ作製した。表1及び2中、SK1506は、綜研化学社製のアクリル系接着剤であり、その重量平均分子量は60万〜70万である。表3中、EPDMは、エチレン・プロピレン・ジエンゴムである。
下記表1〜3に示したように構成を変更したことを除いて実施例1と同様にして、実施例2〜14及び比較例1〜3に係るフロアマーキング用シートをそれぞれ作製した。表1及び2中、SK1506は、綜研化学社製のアクリル系接着剤であり、その重量平均分子量は60万〜70万である。表3中、EPDMは、エチレン・プロピレン・ジエンゴムである。
(フロアマーキング用シートの評価)
実施例及び比較例で作製したフロアマーキング用シートについて、下記の方法により(1)グリップ性、及び、(2)層間接着性の評価を行った。
実施例及び比較例で作製したフロアマーキング用シートについて、下記の方法により(1)グリップ性、及び、(2)層間接着性の評価を行った。
(1)グリップ性
<評価方法>
実施例及び比較例で作製したフロアマーキング用シートを、それぞれ、200mm×400mmの大きさに切り出してポリ塩化ビニル製の床タイル(東リ社製、マチコV)上に設置し、床タイルを固定した状態で、フロアマーキング用シートが床タイル上で水平となるようにしながら、フロアマーキング用シートをばねばかりで引っ張り、荷重(静止摩擦力)を測定した。
<評価方法>
実施例及び比較例で作製したフロアマーキング用シートを、それぞれ、200mm×400mmの大きさに切り出してポリ塩化ビニル製の床タイル(東リ社製、マチコV)上に設置し、床タイルを固定した状態で、フロアマーキング用シートが床タイル上で水平となるようにしながら、フロアマーキング用シートをばねばかりで引っ張り、荷重(静止摩擦力)を測定した。
<評価基準>
〇:0.25g/cm2以上
×:0.25g/cm2未満
〇:0.25g/cm2以上
×:0.25g/cm2未満
(2)層間接着性
<評価方法>
実施例1で使用した軟質ポリ塩化ビニルフィルム、実施例1で使用した基布、実施例1で使用したプライマー層をこの順で積層した積層体を用意した。別途、実施例1で使用したポリ塩化ビニルフィルム上にアクリル系接着剤(SK1506)を用いて厚さ20μmの接着剤層を積層し、25mm幅に切断して接着性確認用テープを作成した。上記積層体のプライマー層と上記接着性確認用テープの接着剤層とが接するようにして貼り合わせ、速度300mm/minで180°剥離を行い、接着力を測定した。
<評価方法>
実施例1で使用した軟質ポリ塩化ビニルフィルム、実施例1で使用した基布、実施例1で使用したプライマー層をこの順で積層した積層体を用意した。別途、実施例1で使用したポリ塩化ビニルフィルム上にアクリル系接着剤(SK1506)を用いて厚さ20μmの接着剤層を積層し、25mm幅に切断して接着性確認用テープを作成した。上記積層体のプライマー層と上記接着性確認用テープの接着剤層とが接するようにして貼り合わせ、速度300mm/minで180°剥離を行い、接着力を測定した。
実施例2〜7及び比較例3については、各実施例及び比較例で使用した軟質ポリ塩化ビニルフィルム、基布及びプライマー層の積層体を用意し、各積層体のプライマー層と上記接着性確認用テープの接着剤層とが接するようにして貼り合わせ、実施例1と同様にして接着力を測定した。実施例8〜14については、プライマー層を設けず、各実施例で使用した軟質ポリ塩化ビニルフィルム及び基布の積層体を用意し、各積層体の基布と上記接着性確認用テープの接着剤層とが接するようにして貼り合わせ、実施例1と同様にして接着力を測定した。比較例1については、上記接着性確認用テープを、比較例1で使用したゴムシートに貼り合わせて、実施例1と同様にして接着力を測定した。比較例2については、比較例2で使用したゴムシート及びプライマー層を積層した積層体を用意し、上記積層体のプライマー層と上記接着性確認用テープの接着剤層とが接するようにして貼り合わせ、実施例1と同様にして接着力を測定した。
<評価基準>
実施例及び比較例について、上記で測定した接着力をもとに、以下の評価基準により層間接着性を評価した。
〇:接着力が2.5N/25mm以上
△:接着力が1.0N/25mm以上、2.5N/25mm未満
×:接着力が1.0N/25mm未満
実施例及び比較例について、上記で測定した接着力をもとに、以下の評価基準により層間接着性を評価した。
〇:接着力が2.5N/25mm以上
△:接着力が1.0N/25mm以上、2.5N/25mm未満
×:接着力が1.0N/25mm未満
実施例及び比較例に係るポリ塩化ビニルフィルムの構成、及び、評価結果を表1〜3に示した。
表1及び2の結果から、実施例1〜14のフロアマーキング用シートはグリップ性及び層間接着性に優れたものであった。また、実施例1及び2より、平織で織られた基布を有するフロアマーキング用シートより、綾織で織られた基布を有するフロアマーキング用シートの方が、層間接着性に優れることが分かった。実施例3〜5より、プライマー層の塗工量が多いほど層間接着性に優れることが分かった。これは、プライマー塗工量が多いほうが基布表面全体にプライマーが付着し、プライマーとの接触面積が多くなるためと考えられる。実施例8と9の対比、及び、実施例10と11の対比より、接着剤層の厚みが厚いほど充分な接着力を得ることができるため、層間接着性に優れることが分かった。実施例12及び14より、接着剤層に含まれる接着剤の重量平均分子量がより小さいほど、層間接着性を高められることが分かった。接着剤の重量平均分子量が小さいほどべたつきが大きくなり、接着性が向上すると考えられる。
一方、表3の結果から、比較例1〜3はグリップ性及び層間接着性の少なくとも一方の評価が悪く、グリップ性及び層間接着性の両者に優れたフロアマーキング用シートを得ることができなかった。より具体的には、床面と接する層にゴムシートを用いた比較例1及び2は、共に、グリップ性が充分ではなかった。これは、軟質ポリ塩化ビニルフィルムの床面に対するグリップ性に比べて、ゴムシートの床面に対するグリップ性が劣るためと考えられる。また、基布の単位面積当たりの糸の本数が100本未満であり、かつ、糸の番手が25番手を超える比較例3は、層間接着性が充分ではなかった。これは、基布の表面の凹凸形状が層間接着性を高めるのに適した形状ではなかったためと考えられる。
1:フロアマーキング用シート
10:軟質ポリ塩化ビニルフィルム
20:基布
30:接着剤層
40:樹脂シート
F:床面
10:軟質ポリ塩化ビニルフィルム
20:基布
30:接着剤層
40:樹脂シート
F:床面
Claims (7)
- 軟質ポリ塩化ビニルフィルム、基布、接着剤層、及び、樹脂シートをこの順に備え、
前記軟質ポリ塩化ビニルフィルムは、塩化ビニル樹脂、及び、前記塩化ビニル樹脂100重量部に対して60〜200重量部の可塑剤を含有し、
前記基布は、2.54cm四方あたりの縦糸及び横糸の合計が100〜125本であり、
前記縦糸及び前記横糸は、5〜25番手の糸であることを特徴とするフロアマーキング用シート。 - 前記接着剤層は、アクリル系接着剤又はゴム系接着剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のフロアマーキング用シート。
- 前記樹脂シートは、前記接着剤層と反対側の表面に印刷層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフロアマーキング用シート。
- 前記基布は、前記縦糸及び前記横糸を綾織したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフロアマーキング用シート。
- 厚みが0.4〜1.0mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフロアマーキング用シート。
- 前記樹脂シートは、ポリ塩化ビニルフィルム又は合成紙であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフロアマーキング用シート。
- 前記基布及び前記接着剤層の間に、更に、プライマー層を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフロアマーキング用シート。
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JP2016022708A (ja) * | 2014-07-24 | 2016-02-08 | 平岡織染株式会社 | 産業用ターポリン及びテント構造物用膜材 |
JP2017049481A (ja) * | 2015-09-03 | 2017-03-09 | 富士フイルム株式会社 | 路面、床面又は壁面設置用表示シート、及び路面、床面又は壁面設置用表示シート作製セット |
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2018
- 2018-02-14 JP JP2018024025A patent/JP2019136989A/ja active Pending
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