JP2019134694A - 揚げ物用バッターミックス - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱調理時における火通りが良好で、衣及び具材の食感に優れ、しかも製造後ある程度時間が経過してもその良好な食感を維持し得る衣付き揚げ物を製造可能な揚げ物用バッターミックスを提供すること。【解決手段】本発明の揚げ物用バッターミックスは、加工澱粉を含む穀粉類と、表面が油脂の被膜で被覆された重曹とを含有する。前記加工澱粉が、酸化澱粉、架橋澱粉、アセチル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。前記穀粉類における前記加工澱粉の含有量は好ましくは0.1〜80質量%、前記重曹の含有量は好ましくは0.05〜2.0質量%である。【選択図】なし

Description

本発明は、衣付き揚げ物の製造時に液体に溶かしてバッターとしてから使用される、揚げ物用バッターミックスに関する。
揚げ物は、各種の食材からなる具材を油ちょうなどの加熱調理することで得られる食品である。揚げ物には、具材に衣材を付着させずにそのまま油ちょうして得られる素揚げなどもあるが、その多くは、表面に衣材が付着した具材を加熱調理することで得られる衣付き揚げ物であり、具材の表面に衣材からなる衣が付着している。表面に衣材が付着した具材を高温の油中で加熱することより、油に直接触れる衣は、サクミのある独特の食感と風味を有し、一方で中身の具材は、衣の内側で蒸されたように火が通っていて旨味が凝縮されたものとなる。衣付き揚げ物の製造に使用される衣材は通常、常温常圧において粉末状であるが、具材に付着させる際の形態によっていくつかのタイプに分類され、典型的なタイプとして、具材表面に粉末状のまままぶして使用するまぶしタイプと、液体に溶かして液状の衣材(いわゆるバッター)としてから具材表面に付着させるバッタータイプとがある。
衣付き揚げ物には、調理直後から時間が経過すると、具材の水分が衣に移行することによって、具材のジューシーさが失われると共に衣が柔らかくなって、独特の食感が失われやすいという問題がある。特に近年は、調理済みの衣付き揚げ物が流通販売され、消費者がこれを購入してそのまま喫食するか又は電子レンジなどで加熱調理してから喫食するスタイルが普及しているが、斯かる食事スタイルにおいては、衣付き揚げ物が製造されてから喫食されるまでに比較的長時間を要するため、前記の水分移行に起因する衣の品質低下が問題となりやすく、特に、喫食前に衣付き揚げ物を電子レンジで加熱調理すると、電子レンジのマイクロ波によって具材の水分が加熱蒸散して衣に移行しやすくなるため、衣の品質低下はより一層深刻なものとなる。また、衣材として前記バッタータイプを使用した場合には、具材に対する衣の量が比較的多くなりやすく、それ故に、衣付き揚げ物全体の食感に占める衣の食感の割合が大きくなりやすいため、前記の水分移行に起因する衣の経時的な品質低下が問題となりやすい。
前記問題を解決するべく衣材の改良技術が提案されている。例えば特許文献1には、バッタータイプのから揚げ用ミックスに、加工澱粉として酸化澱粉及びリン酸架橋澱粉を特定量含有させると共に、重曹を特定量含有させることが記載されている。特許文献1記載のから揚げ用ミックスによれば、斯かる問題が解消され、油ちょうから時間が経過しても品質の低下が少ないから揚げを製造できるとされている。特許文献1には、ミックスに含有させる重曹として、表面が油脂で被覆された重曹を使用することは記載されていない。
ところで、製菓・製パン業界においては、その利便性から冷凍生地が用いられるようになっており、また、自家製のパン作り用の生地として、冷凍生地が市販されている。ベーキングパウダーを含むミックスを用いて製造された生地を冷凍保存した場合、冷凍保存中にベーキングパウダーに含まれる重曹の機能が失われ、加熱調理品の容積が低下するなどして、外観及び食感が低下するという問題があった。斯かる冷凍保存に関わる問題の解決手段として、重曹に油脂をコーティングすることで、冷凍中の重曹の反応を抑制し、加熱調理時の起泡性、膨化性を維持する方法が知られている。特許文献2には、硬化油脂などのコーティング剤でコーティングされた重曹(膨張剤)を含有するミックス粉が記載され、該ミックス粉は、パン類や菓子類のみならず、揚げ物にも使用できることが記載されている。
特開2015−223119号公報 特開2004−313185号公報
揚げ物用バッターミックスに加工澱粉を含有させることで、該ミックスを用いて得られた衣付き揚げ物の衣の食感などが向上し得るが、その反面、衣の伝熱性(いわゆる火通り)が悪くなる傾向があり、特に衣における具材との接触部分においてその傾向が顕著となる。そのため、加工澱粉を含有するミックスを用いて衣付き揚げ物を製造した場合、油ちょう時において衣の厚み方向全体に熱が通りにくく、衣の表面側は火通りがよいために十分に揚がっても、衣の具材側は火通りが悪いために揚げが不十分となりやすく、その結果、衣付き揚げ物が、衣と具材との間に生っぽい不快なねちゃり感があるものとなってしまうという問題がある。また、衣の火通りが悪いと、油ちょう時間が長くならざるを得ず、その結果、調理の簡便性が低下することに加えて、具材からの水分の蒸発量が多くなることに起因して、具材のジューシー感が損なわれ、具材の食感が硬くパサついたものとなるという問題もある。このような、揚げ物用ミックスにおける加工澱粉の使用に特有の問題を解決し得る技術は未だ提供されていない。
本発明の課題は、加熱調理時における火通りが良好で、衣及び具材の食感に優れ、しかも製造後ある程度時間が経過してもその良好な食感を維持し得る衣付き揚げ物を製造可能な揚げ物用バッターミックスを提供することである。
本発明は、加工澱粉を含む穀粉類と、表面が油脂の被膜で被覆された重曹とを含有する揚げ物用バッターミックスである。
また本発明は、前記の本発明の揚げ物用バッターミックスと液体とを含む揚げ物用バッターである。
また本発明は、前記の本発明の揚げ物用バッターを具材に付着させた後、該具材を加熱調理する工程を有する、衣付き揚げ物の製造方法である。
本発明によれば、加熱調理時における火通りが良好で、衣及び具材の食感に優れ、しかも製造後ある程度時間が経過してもその良好な食感を維持し得る衣付き揚げ物を製造可能な揚げ物用バッターミックスが提供される。本発明の揚げ物用バッターミックス又は該ミックスを用いた揚げ物用バッターを用い、常法に従って加熱調理(油ちょう)されて製造された衣付き揚げ物は、衣が、カリっとして適度な硬さを持つ良好な食感を有すると共に、具材が、ジューシーで軟らかい食感であり、且つ衣と具材との間に不快なねちゃり感がなく、しかも経時耐性に優れ、加熱調理から時間が経過しても品質の低下が少ない。
本発明の揚げ物用バッターミックスは穀粉類を含有するところ、該穀粉類には加工澱粉が含まれる。ミックスに加工澱粉が含まれることで、該ミックスを用いて得られた衣付き揚げ物は、特に衣の食感に優れたものとなる。加工澱粉としては、原料澱粉(未加工澱粉)に、油脂加工、α化、エーテル化、エステル化(アセチル化)、架橋、酸化等の処理の1つ以上を施したものを用いることができる。本発明では1種類の加工澱粉を用いてもよく、2種類以上の加工澱粉を併用してもよい。原料澱粉としては、その種類に制限はなく、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、サツマイモ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉などが挙げられる。本発明では加工澱粉として市販品を用いることもできる。
本発明において好ましい加工澱粉として、酸化澱粉、架橋澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉が挙げられる。特に好ましい加工澱粉は、酸化澱粉、リン酸架橋澱粉である。尚、ここに挙げた4種類の加工澱粉は、それぞれ、その名称となっている処理(酸化、架橋、アセチル化、エーテル化)に加えてさらに他の処理が施されていてもよい。例えば、酸化澱粉及び架橋澱粉は、それぞれ、さらにアセチル化及び/又はエーテル化されていてもよく、その場合、例えばアセチル化された酸化澱粉は、酸化澱粉でもあり、アセチル化澱粉でもある。
酸化澱粉は、原料澱粉を常法に従って酸化剤で処理することによって得られ、該酸化剤として、次亜塩素酸ナトリウム、無水酢酸、過酸化水素、硝酸などを用いることができる。本発明で用いる酸化澱粉としては、例えば、酢酸澱粉、アセチル化酢酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉を例示できる。
リン酸架橋澱粉は、原料澱粉を常法に従ってリン酸化剤で処理することによって得られ、該リン酸化剤として、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リンなどを用いることができる。本発明で用いるリン酸架橋澱粉としては、例えば、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉を例示できる。本発明で用いるリン酸架橋澱粉は、その未架橋の水酸基がエステル化(アセチル化)又はエーテル化されていてもよい。
本発明の揚げ物用バッターミックスには、加工澱粉以外の他の穀粉類が含有され得る。他の穀粉類としては、一般的に揚げ物用衣材として使用されている穀粉又は未加工澱粉を特に制限なく用いることができる。ここでいう未加工澱粉は、小麦等の植物から単離された純粋な澱粉(澱粉の含有量が通常80質量%以上)を意味し、「穀粉中に含まれている澱粉」(穀粉から単離されていない澱粉)とは異なる。穀粉としては、例えば、小麦粉(例えば強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉)、ライ麦粉、米粉、ソルガム粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。未加工澱粉としては、前記原料澱粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の揚げ物用バッターミックスにおいて、該ミックスに含まれる穀粉類(穀粉と加工澱粉を含む澱粉とからなる群)における加工澱粉の含有量は、該穀粉類の全質量に対して、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%である。ミックス中の穀粉類における加工澱粉の含有量が少なすぎると、加工澱粉を使用する意義に乏しく、該含有量が多すぎると、該ミックスを用いた衣付き揚げ物の製造において加熱調理時の火通りが悪くなり、衣と具材との間に不快なねちゃり感のある衣付き揚げ物となってしまうおそれがある。
また、本発明の揚げ物用バッターミックスにおいて、加工澱粉を含む穀粉類の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは10〜98質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
本発明の揚げ物用バッターミックスは、加工澱粉を含む穀粉類に加えてさらに、表面が油脂の被膜で被覆された重曹(以下、「油脂被覆重曹」ともいう)を含有する。揚げ物用バッターミックスに加工澱粉と共に油脂被覆重曹を含有させることにより、加工澱粉の含有で期待される効果(衣の食感の向上等)を得つつ、加工澱粉の含有に起因する不都合(加熱調理時の火通りの悪さ等)を効果的に防止することが可能となる。特許文献2には、主に製菓・製パン用冷凍生地に重曹が含まれている場合において、該生地の冷凍保存中に重曹の機能が失われることを防止するために、重曹として油脂被覆重曹を用いることが開示されているが、本発明のように、加工澱粉を含む揚げ物用ミックスに特有の課題を解決するために、加工澱粉及び油脂被覆重曹を併用することは記載されていない。
本発明で用いる油脂被覆重曹は、重曹即ち炭酸水素ナトリウムの表面が油脂の被膜で被覆されている。油脂被覆重曹に用いる油脂としては、食品分野において通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、ひまわり油、大豆油、綿実油、サラダ油、コーン油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、菜種油、米ぬか油、紅花油、ゴマ油、カポック油、ヤシ油、アマニ油、荏胡麻油、ぶどう油等の植物性油脂;牛脂、ラード、魚油、鯨油、バター等の乳脂肪等の動物性油脂;これらの油脂の1種以上を原料とする硬化油、分別油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
油脂被覆重曹に用いる油脂としては、硬化油脂が特に好ましい。硬化油脂は、典型的には、不飽和脂肪酸を含む、常温常圧で液状の油脂に、水素添加処理を行って飽和脂肪酸量を増加させ、常温常圧で固形化したものである。硬化油脂の種類としては、水素添加処理が可能なものであれば特に制限はなく、菜種油、パーム油、大豆油、綿実油、コーン油、牛脂、ラード等が挙げられるが、菜種油、パーム油、大豆油が好ましい。
また、油脂被覆重曹に用いる油脂の融点は、油脂被覆重曹による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、好ましくは35〜80℃、より好ましくは45〜75℃、さらに好ましく55〜70℃である。
また、油脂被覆重曹において、重曹の表面の油脂の被膜の平均膜厚は、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは15〜70μm、特に好ましくは18〜50μmである。斯かる油脂の被膜の平均膜厚は、重曹による膨化作用を制御し、即効性、遅効性などの重曹の膨化特性を決定づける重要な要素の1つであり、本発明の所定の効果を安定的に発現するための重要な要素の1つである。油脂の被膜の平均膜厚は、油脂被覆重曹の製造工程において、重曹の粒径とその量、油脂の供給量などを適宜調整することによって調整可能である。
油脂被覆重曹における油脂の被膜の平均膜厚は、例えば粉体粒度分布測定装置マイクロトラック(日機装株式会社製)を用いて、粒子の粒度分布を測定することにより行うことができる。具体的には、先ず、油脂被覆前の重曹の粒度分布を測定し、平均粒径(R0)を算出する。次に、油脂被覆後の重曹の粒度分布を同様に測定し、平均粒径(R1)を算出する。そして下記式により、重曹の表面の被膜の平均膜厚を算出する。
被膜の平均膜厚=(R1−R0)/2
油脂被覆重曹は、重曹の表面を油脂で被覆することで製造される。この油脂による重曹の被覆方法は特に限定されないが、流動層コーティング法が好ましい。この流動層コーティング法としては、例えば、下記(1)〜(4)の方法が挙げられる。
(1)流動層造粒コーティング装置を用いて浮遊運動させた重曹に、上方より例えばスプレーガンなどで溶融した油脂を連続噴霧し、必要に応じて乾燥・冷却する方法。
(2)遠心流動層コーティング造粒装置を用いてローターの回転による遠心力とスリットエアーにより遊星運動させた重曹に、溶融した油脂を液滴下法などにより添加し、必要に応じて乾燥・冷却する方法。
(3)複合型流動層造粒コーティング装置を用いて浮遊流動、遠心転動、旋回流動させた重曹に、上方又は側方より例えばスプレーガンなどで溶融した油脂を噴霧し、必要に応じて乾燥・冷却する方法。
(4)ボールミル、電気乳鉢、高能率粉体混合装置、高速気流の対流により粉体を接触させる装置等を用いて、重曹と油脂とを接触・衝突させ、該重曹の全周囲表面に該油脂を付着・被覆する方法。
前記(1)〜(4)の方法のなかでも、特に前記(3)又は(4)の方法が好ましく、とりわけ前記(4)の方法が好ましい。
本発明の揚げ物用バッターミックスにおける油脂被覆重曹の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは0.05〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.2質量%である。ミックスにおける油脂被覆重曹の含有量が少なすぎると、油脂被覆重曹を使用する意義に乏しく、該含有量が多すぎると、該ミックスを用いた衣付き揚げ物において衣の食感が硬くなりすぎるおそれがある。
尚、本発明の所定の効果をより確実に発現させるためには、油脂被覆重曹の膨化作用が安定的に発現することが重要であり、そのためには本発明の揚げ物用バッターミックスに、油脂被覆重曹と共に、酸性剤が含有されていることが好ましい。斯かる好ましいミックスにおいては、油脂被覆重曹を基剤(ガス発生剤)とし、酸性剤を助剤とする膨張剤組成物が含有されていることになり、該膨張剤組成物の作用により、油脂被覆重曹に期待される効果がより確実に発現するようになり、延いては本発明の所定の効果がより確実に発現するようになる。酸性剤としては、食品に配合し得る常温で固体の酸又はその塩を特に制限無く用いることができ、例えば、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルコン酸、乳酸などの有機酸又はそれらの塩が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸性剤の粒径は特に制限はなく、通常の粉体状のものを使用することができる。
本発明の揚げ物用バッターミックスにおいて、油脂被覆重曹と酸性剤との混合割合としては、酸性剤が好ましくは該重曹の中和30〜200%相当量の範囲、さらに好ましくは該重曹の中和50〜150%相当量の範囲であり、具体的には、該重曹100質量部に対して、酸性剤が好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは35〜100質量部である。
尤も、酸性剤をミックスに意図的に含有させなくても、他の目的でミックスに含有される種々の成分(例えば調味料)が、油脂被覆重曹の膨化作用を促進する酸性剤として機能する場合が少なくない。従って本発明においては、必要に応じて、揚げ物用バッターミックスに油脂被覆重曹の助剤としての酸性剤を含有させればよい。
本発明の揚げ物用バッターミックスには、前記成分(加工澱粉を含む穀粉類、油脂被覆重曹、酸性剤)に加えてさらに、親油性乳化剤を含有させることができる。これにより、本発明の所定の効果がより一層確実に奏されるようになり、特に、衣付き揚げ物を加熱調理する際の火通りが良くなり、衣と具材との間の不快なねちゃり感が効果的に低減され得る。本発明において親油性乳化剤としては、HLB(親水性−親油性バランス)値が0.1〜10程度のものを用いることができる。本発明で用いる親油性乳化剤のHLB値は、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜8である。乳化剤には、HLB値が11〜20程度の親水性乳化剤も存在するが、親水性乳化剤では、親油性乳化剤を用いた場合の効果は奏されない。
ここで、HLB値は、界面活性剤の分子における親水性部位の分子質量と疎水性部位の分子質量との比を表す数値であり、例えば、「改訂三版 油脂化学便覧」(日本油化学協会編、丸善発行)に記載された方法により測定することができる。
好ましい親油性乳化剤の例示として、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。本発明ではこれらの親油性乳化剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の揚げ物用バッターミックスにおける親油性乳化剤の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜1質量%である。
本発明の揚げ物用バッターミックスには、前記成分(加工澱粉を含む穀粉類、油脂被覆重曹、酸性剤、親油性乳化剤)以外の他の成分を含有してもよい。この他の成分としては、この種の揚げ物用ミックスに通常配合し得る成分を特に制限なく用いることができ、例えば、糖類、卵粉、食塩、粉末醤油、果実由来の発酵物等の発酵物、粉末味噌、アミノ酸やその他の調味料、香辛料、香料、ビタミン等の栄養成分、着色料、粉末油脂などが挙げられ、衣付き揚げ物に要求される特性(例えば中華風、和風、洋風)などに応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの他の成分の含有量は、本発明の揚げ物用バッターミックスの全質量に対して、好ましくは30質量%以下程度である。
本発明の揚げ物用バッターミックスは、常温常圧下で粉末状であり、使用時には、液体と混ぜて液状ないしペースト状のいわゆるバッターとしてから具材の表面に付着させて使用する。本発明には、本発明の揚げ物用バッターミックスと液体とを含む、液状ないしペースト状の揚げ物用バッターが包含される。ミックスと混合される液体としては、水、油、調味料、卵液、牛乳等を含んだ水性液体を例示できる。また、ミックスと液体との混合比率は、一般的にはミックス:液体として、1:1〜1:8程度である。
本発明の揚げ物用バッターを用いた衣付き揚げ物の製造は、常法に従って行うことができる。典型的には、本発明の揚げ物用バッターミックスと液体とを攪拌混合して本発明の揚げ物用バッターを得、該揚げ物用バッターを具材に付着させた後、該具材を加熱調理することで衣付き揚げ物が得られる。バッターが付着した具材の加熱調理方法は、典型的には油ちょうであるが、焼成などの他の加熱調理方法でもよい。揚げ物用バッターを具材に付着させる方法は特に制限されず、例えば、具材をバッター中に浸す方法でもよく、具材にバッターを噴霧、塗布又は滴下する方法でもよい。
本発明の揚げ物用バッター(揚げ物用バッターミックス)を付着させた具材を常法に従って加熱調理(油ちょう)すると、衣(衣材)の火通りが良好であるため、比較的短い加熱時間で衣の厚み方向全体が十分に揚がる結果、カリっとして適度な硬さを持つ良好な食感の衣が得られ、また、このように比較的短い加熱時間で済むことに起因して、具材から過剰な量の水分が蒸発することがなく、その結果、具材がジューシーで軟らかいものとなる。このように本発明によれば、衣及び具材の双方の食感が良好な高品質の衣付き揚げ物を短時間で調理することが可能となる。
本発明は、種々の衣付き揚げ物の製造に適用することができ、例えば、から揚げ、天ぷら、フリッター、フライを例示できる。衣付き揚げ物の具材としては、特に限定されず、例えば、鶏、豚、牛、羊、ヤギなどの畜肉類、イカ、エビ、アジなどの魚介類、野菜類などの種々のものを使用することができる。具材には、本発明の揚げ物用バッターミックスから調製されたバッターを付着させる前に、必要に応じて、下味を付けてもよく、打ち粉をまぶしてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(油脂被覆重曹の製造)
流動層コーティング用装置として高速撹拌機(パウレック社製 VG−05)用い、これに重曹(炭酸水素ナトリウム)475gと、所定量の下記油脂A〜Eのいずれか1種とを投入し、ブレード回転数500rpm、クロススクリュー回転数2000rpmの条件下にて25℃で40分間混合した。次いで、45℃の恒温槽にて5時間のテンパリングを行って、重曹の表面が油脂の被膜で被覆された油脂被覆重曹を製造した。
・油脂A:硬化油脂、融点35℃
・油脂B:硬化油脂、融点45℃
・油脂C:硬化油脂、融点55℃
・油脂D:硬化油脂、融点58℃
・油脂E:硬化油脂、融点70℃
〔実施例1〜9及び比較例1〜3〕
酸化澱粉(松谷化学(株)製、商品名「スタビローズTA−8」)、リン酸架橋澱粉((株)J−オイルミルズ製、商品名「TP−2」)、前記油脂Dを用いて製造された油脂被覆重曹、重曹(旭硝子(株)製、商品名「重曹」、油脂被覆されていない通常の重曹)、親油性乳化剤(三菱ケミカルフーズ(株)製、商品名「リョートーシュガーエステルS−770、HLB値7」)、調味料ミックス、小麦粉(薄力粉、日清製粉(株)製、商品名「フラワー」)を下記表1に示す割合で均一に混合して、から揚げ用バッターミックスを製造した。前記調味料ミックスとして、塩、胡椒、粉末醤油、オニオンパウダー、ガーリックパウダーをそれぞれ適量配合したものを用いた。
〔実施例10〜12〕
油脂被覆重曹における重曹表面の油脂の被膜の平均膜厚を下記表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、から揚げ用バッターミックスを製造した。
〔実施例13〜16〕
油脂被覆重曹における油脂を下記表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、から揚げ用バッターミックスを製造した。
〔試験例〕
各実施例及び比較例のから揚げ用バッターミックス100gを水100ccとよく混合してバッターを調製した。各バッターに鶏もも肉の細片25g/個を20個ずつ入れてよく絡めた。バッターの付着した鶏もも肉を170℃に熱したサラダ油で4分間油ちょうして、鶏肉のから揚げを製造した。調理直後のから揚げ(室温(約25℃)に5分間放置したから揚げ)、及び調理後に室温にて1時間放置したから揚げを、それぞれ、訓練された専門の専門パネラー10名に食してもらい、衣及び具材それぞれの食感、衣と具材との間のねちゃり感を下記評価基準により評価してもらった。結果を10名それぞれの評価点(5点満点)の平均値として下記表1〜表3に示す。
(衣の食感の評価基準)
5点:カリッとした好ましい硬さが全体にあり、極めて良好。
4点:カリッとした硬さがあり、良好。
3点:カリッとした硬さに物足りなく、やや良好。
2点:カリッとした硬さに乏しく、やや軟らかくベタついているか、硬すぎるか、又はやや歯脆く軽過ぎる食感であり、やや不良。
1点:カリッとした硬さがなく、軟らかくベタついているか、非常に硬いか、又は非常に歯脆く軽過ぎる食感であり、極めて不良。
(具材の食感の評価基準)
5点:非常にジューシーで軟らかく、極めて良好。
4点:ジューシーで軟らかく、良好。
3点:ややジューシーで軟らかく、やや良好。
2点:ジューシーさに乏しく、ややボソつきがあって硬く、やや不良。
1点:ジューシーさがなく、乾いた感じがあって硬く、極めて不良。
(衣と具材との間のねちゃり感の評価基準)
5点:衣と具材との間にねちゃり感が全く感じられず、極めて良好。
4点:衣と具材との間にねちゃり感がほとんど感じられず、良好。
3点:衣と具材との間にねちゃり感がやや感じられるが、やや良好。
2点:衣と具材との間にねちゃり感が感じられ、やや不良。
1点:衣と具材との間にねちゃり感が強く感じられ、極めて不良。
Figure 2019134694
Figure 2019134694
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Claims (8)

  1. 加工澱粉を含む穀粉類と、表面が油脂の被膜で被覆された重曹とを含有する揚げ物用バッターミックス。
  2. 前記加工澱粉が、酸化澱粉、架橋澱粉、アセチル化澱粉及びエーテル化澱粉からなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の揚げ物用バッターミックス。
  3. 前記穀粉類における前記加工澱粉の含有量が0.1〜80質量%である請求項1又は2に記載の揚げ物用バッターミックス。
  4. 前記重曹の含有量が0.05〜2.0質量%である請求項1〜3の何れか1項に記載の揚げ物用バッターミックス。
  5. 前記油脂の融点が35〜80℃である請求項1〜4の何れか1項に記載の揚げ物用バッターミックス。
  6. 前記被膜の平均膜厚が5〜100μmである請求項1〜5の何れか1項に記載の揚げ物用バッターミックス。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の揚げ物用バッターミックスと液体とを含む揚げ物用バッター。
  8. 請求項7に記載の揚げ物用バッターを具材に付着させた後、該具材を加熱調理する工程を有する、衣付き揚げ物の製造方法。
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