JP2019134682A - 肝幹細胞様細胞の調製方法 - Google Patents

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隆之 福田
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Abstract

【課題】肝前駆細胞を含む様々な分化段階の細胞が共存するヘパトブラストヘテロ細胞集団が存在する培地から、肝幹細胞様細胞を調製するための培地を提供すること。【解決手段】HepSCF+2F培地においてヘパトブラストヘテロ細胞集団を培養したところ、上記ヘパトブラストヘテロ細胞集団とは明らかに異なる形態的特徴を有するコロニーを単離することができ、かかるコロニーは、ヘパトブラストヘテロ細胞集団とは明らかに異なるマーカー発現を示す肝幹細胞様細胞であることを確認した。【選択図】なし

Description

本発明は、ヘパトブラストヘテロ細胞集団から肝幹細胞様細胞を調製する方法や、かかる肝幹細胞様細胞から肝前駆細胞様細胞を調製する方法に関する。
現在、肝硬変、劇症肝炎、肝がん等の重篤な肝臓疾患患者の治療には肝移植が有効とされ、肝臓の臓器そのものの一部をドナーからレシピエントへ移植することが広く行われているが、ドナー不足の問題や、また、移植後に免疫抑制療法が生涯必要になる場合がある等レシピエント側の負担が大きい等の問題がある。
したがって、近年、細胞レベルでの移植が注目されているが、移植細胞としてヒト肝細胞そのものの利用を試みる場合、臓器から酵素的に分離することにより採取された細胞は、インビトロにおいて通常増殖能をほとんど有さず、また、培養や凍結保存することにより、肝細胞としての機能が通常急速に失われることが知られており、実用化は今のところ難しいとされている。肝臓臓器移植に代わる新しい治療法の開発が模索されており、中でも、ES細胞やiPS細胞から誘導した肝実質細胞の再生医療への応用に期待が高まっている。
他方、肝臓は、薬を解毒する主要な臓器であることから、医薬品の毒性評価をする場合の主要な標的臓器の一つとされている。従来、実験動物を使って毒性の予測が行われているが、「種差の壁」の限界があり、ヒトにおける毒性についての予測性は十分とはいえない。また、利便性・汎用性の観点から、また実験動物使用制限の観点からも、ヒト培養細胞を用いた、よりよい安全性予測系・有効性評価系の開発や移植用細胞の開発が期待されてきた。しかし、現行のヒト肝臓由来初代培養細胞は、インビトロにおいて通常増殖能をほとんど有さず、また、培養や凍結保存することにより、肝細胞としての機能が通常急速に失われることが知られている。さらに、多大な費用をかけて毒性評価を行い、治験を経て市場に流通し始めた薬剤においても、薬剤性肝障害が起きること等を原因として早々に市場から撤退した例が報告されている。
そのため、均一な機能を有し、ロット毎の管理が可能である細胞を大量に、比較的安価に供給できる、ES細胞、iPS細胞等の多能性幹細胞に由来する肝実質細胞を毒性評価に用いることに注目が集まってきており、かかる目的においても多能性幹細胞から肝細胞への高効率に分化誘導するための方法の研究がすすんでいる。
これまで、多能性幹細胞から肝実質細胞へ分化させるための方法として、多能性幹細胞からアクチビンと酪酸ナトリウムを含む培地で内胚葉細胞を誘導し、次にDMSO(dimethyl sulfoxide)を含む培地で培養することにより分化が進み、AFP(alpha-fetoprotein)等が強く発現するヘパトブラストが誘導され、さらに、OSM(オンコスタチンM)を含む培地において成熟肝細胞へ誘導する方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、多能性幹細胞からアクチビンを含む培地で内胚葉細胞を誘導し、FGF4(fibroblast growth factor-4)とBMP2(bone morphogenetic protein-2)を含む培地でAFP等を発現するヘパトブラストを誘導し、さらにHGF(hepatocyte growth factor)を含む培地やOSMを含む培地において培養を続けることにより、肝細胞を誘導する方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照)。そしてまた、iPS細胞からFOXA2(forkhead box a2)とHNF4α(hepatocyte nuclear factor 4:肝細胞核因子4)とAFPとが発現するヘパトブラストと称される肝前駆細胞を誘導した後、HGFを含む培地やOSMを含む培地において培養を続けることにより、肝細胞を誘導する方法が報告されている(例えば、非特許文献3参照)。さらに、多能性幹細胞からRPMI+B27培地にアクチビンとWnt3aとHGFとを添加した培地で内胚葉を誘導し、KO−DMEM20%KSR培地にDMSOを添加した培地で培養することにより肝前駆細胞が誘導され、さらに、OSMとデキサメタゾンを添加した培地で培養することにより、肝細胞を誘導する方法が報告されている(例えば、非特許文献4参照)。
しかしながら、上記多能性幹細胞から誘導されたヘパトブラストや、肝前駆細胞(以下、単に「ヘパトブラストヘテロ細胞集団」ともいう)は、AFP等の共通するマーカーの発現はあるものの、実際には分化の程度が多岐にわたっており、分化が十分に進まない細胞、増殖能が不十分な細胞、分化が進んだ場合にも肝細胞としての機能を果たすことができない細胞、肝細胞としての機能が長続きしない細胞等、様々な細胞が混在する細胞集団であって、実際に肝細胞等として機能できる細胞に誘導された細胞は、多能性幹細胞の多くとも10〜30%にとどまっているとされる。また、上記文献におけるヘパトブラストヘテロ細胞集団は、肝細胞への分化途上の段階にあることが確認されている細胞であるが、各分化段階で増殖や保存をすることは困難であるとされる。
Stem Cells 2008;26:894-902 Hepatology 2007;45:1229-1239 Hepatology 2010;51:297-305 Hepatology 2012;55:1193-1203
本発明者らは、化学合成培地である基礎培地の適切な組成と、サプリメント成分の様々な組合せについて検討を続けており、カルシウムイオンと、グルコースと、ピルビン酸イオンとを含む基礎培地に、インスリン、トランスフェリン、2−メルカプトエタノール、2‐エタノールアミン、セレン酸、脂肪酸不含アルブミン、ヘパリン、FGF−2、FGF−4、及びHGFからなるサプリメントを添加した培地が、増殖能や分化能を保持したままの肝前駆細胞を培養し、保存することができることを確認している(特開2015−6137号公報)。しかしながら、かかる培地においては、肝前駆細胞を培養及び保存するという目的は達成したものの、様々な分化段階の肝前駆細胞が共存するため、機能性の高い肝細胞に分化することができる肝前駆細胞を効率よく選抜することは難しい場合があった。
本発明の課題は、従前の肝前駆細胞を含む様々な分化段階の細胞が共存するヘパトブラストヘテロ細胞集団が存在する培地から、肝幹細胞様細胞を調製するための培地を提供することにある。
本発明者らは、ヒト多能性幹細胞から分化誘導されたヘパトブラストヘテロ細胞集団について種々の培地を用いて培養することにより検討を行ってきたが、HepSCF+2F培地を用いて培養を行ったところ、驚くべきことに、上記ヘパトブラストヘテロ細胞集団とは明らかに異なる形態的特徴を有し、コロニーとして単離することができる細胞を培地上に見いだした。かかるコロニーを単離し、HepSCF+2F培地上で培養を続け、発現マーカーについて解析したところ、ヘパトブラストヘテロ細胞集団とは明らかに異なるマーカー発現を示した。かかる単離された細胞は、形態学的特徴及びマーカーの発現状況から、ヒト肝臓に存在し、自己複製能を有し、肝臓が損傷を受けた際に肝臓修復に寄与する能力があるとされる肝幹細胞に極めて近い、インビトロで作製された肝幹細胞様細胞であることが確認された。
さらに、上記単離された肝幹細胞様細胞は、そのままHepSCF+2F培地において培養を続けることができることを確認したうえで、さらにもう一段階分化を進めることを試みた。上記肝幹細胞様細胞をHepSCF+4F培地に培地交換して培養したところ、肝前駆細胞様細胞に分化することが確認された。上記肝幹細胞様細胞や肝前駆細胞様細胞は増殖能や分化能が維持されており、肝実質細胞様細胞や胆管様細胞への分化も容易であることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]以下の工程(a)〜(e)を順次備えるヘパトブラストヘテロ細胞集団から肝幹細胞様細胞を調製する方法。
(a)多能性幹細胞から公知の方法によりヘパトブラストヘテロ細胞集団を調製する工程;
(b)工程(a)において調製されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とを添加した肝幹細胞様細胞調製培地に播種する工程;
(c)工程(b)において播種されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、前記肝幹細胞様細胞調製培地に2回以上継代する工程;
(d)前記肝幹細胞様細胞調製培地に産生した肝幹細胞様細胞コロニーを前記肝幹細胞様細胞調製培地から単離する工程;
(e)工程(d)において単離された肝幹細胞様細胞コロニーを前記肝幹細胞様細胞調製培地において培養し、肝幹細胞様細胞を調製する工程;
[2]ヘパトブラスト培地が、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンと、500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとを含む基礎培地に、サプリメントを構成する培地成分を添加することにより作製される培地であることを特徴とする上記[1]記載の方法。
[3]肝幹細胞様細胞調製培地を培養容器の内側にコートされたフィブロネクチン上に調製することを特徴とする上記[1]又は[2]記載の方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか記載の肝幹細胞様細胞を調製する方法で調製された肝幹細胞様細胞を、ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とSB431542とY−23672とを添加した肝前駆細胞様細胞調製培地で培養する工程を備える肝前駆細胞様細胞を調製する方法。
[5]上記[1]〜[3]のいずれか記載の方法で調製された肝幹細胞様細胞。
[6]上記[4]記載の方法で調製された肝前駆細胞様細胞。
[7]ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とを添加した肝幹細胞様細胞調製培地。
[8]ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とSB431542とY−23672とを添加した肝前駆細胞様細胞調製培地。
[9]ヘパトブラスト培地が、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンと、500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとを含む基礎培地に、サプリメントを構成する培地成分を添加することにより作製される培地であることを特徴とする上記[7]又は[8]記載の培地。
本発明によると、肝幹細胞様細胞を単離するための培地を用いることにより、ヘパトブラストヘテロ細胞集団から、肝幹細胞様コロニーを単離することにより、同一コロニー由来の肝幹細胞様細胞や肝前駆細胞様細胞を効率的に調製することが可能となり、したがって均一な機能を有する肝実質細胞様細胞や胆管様細胞を大量に比較的安価に供給できる。
H9細胞由来のヘパトブラストヘテロ細胞集団の位相差画像を示す。 HepSCF+2F培地での1回目の継代後の細胞集団における蛍光免疫染色の画像を示す。(a)FOXA2(b)HNF4α(c)AFP(d)Merge(FOXA2+HNF4α+AFP)である。 HepSCF+2F培地中のコロニーから単離された細胞の位相差画像である。 HepSCF+4F培地中の肝前駆細胞様細胞の位相差画像を示す。 HepSCF+4F培地中の細胞における蛍光免疫染色の画像を示す。(a)FOXA2(b)HNF4α(c)AFP(d)Hoechst(e)Phase−contrastである。 Dotcom株由来のヘパトブラストヘテロ細胞集団の位相差画像を示す。 HepSCF+2F培地中のコロニーの位相差画像を示す。 HepSCF+2F培地中のDotcom株由来細胞のコロニーから単離された細胞の位相差画像を示す。 HepSCF+4F培地中の肝前駆細胞様細胞の位相差画像を示す。 HepSCF+2F培地で培養された肝幹細胞様細胞と、HepSCF+4F培地で培養された肝前駆細胞様細胞のマーカー発現のグラフである。Undiffは、未分化細胞である。 肝実質細胞様細胞の蛍光免疫染色の画像を示す。(a)ALB(b)AAT(Alpha-1 antitrypsin)(c)Hoechst(d)Bright Field(e)Merge(ALB+AAT)である。 肝前駆細胞様細胞が7F+Da+Wn培地で培養された後の分化誘導マーカー発現のグラフである。 コラーゲンゲル培養により誘導された胆管様細胞の画像を示す。
本発明のヘパトブラストヘテロ細胞集団から肝幹細胞様細胞を調製する方法としては、多能性幹細胞から公知の方法によりヘパトブラストヘテロ細胞集団を調製する工程(a);工程(a)において調製されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とを添加した肝幹細胞様細胞調製培地に播種する工程(b);工程(b)において播種されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、前記肝幹細胞様細胞調製培地に2回以上継代する工程(c);前記肝幹細胞様細胞調製培地に産生した肝幹細胞様細胞コロニーを前記肝幹細胞様細胞調製培地から単離する工程(d);工程(d)において単離された肝幹細胞様細胞コロニーを肝幹細胞様細胞調製培地において培養し、肝幹細胞様細胞を調製する工程(e);を順次備える方法であれば特に制限されず、上記肝幹細胞様細胞をヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とSB431542とY−23672とを添加した肝前駆細胞様細胞調製培地で培養することにより、肝前駆細胞様細胞を調製することもできる。なお、本発明における多能性幹細胞、ヘパトブラストヘテロ細胞集団、肝幹細胞様細胞コロニー、肝幹細胞様細胞、肝前駆細胞様細胞、肝実質細胞様細胞、胆管様細胞は、ヒト細胞である。
上記工程(a)において、ヘパトブラストヘテロ細胞集団を調製する方法としては、多能性幹細胞から公知の方法を用いて調製する方法であれば特に制限されず、多能性幹細胞としては、初期胚より単離される胚性幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)や、胎児期の始原生殖細胞から単離される胚性生殖細胞(embryonic germ cells:EG細胞)(例えばProc Natl AcadSci U S A. 1998, 95:13726-31参照)や、出生直後の精巣から単離される生殖細胞系列幹細胞(germline stem cells:GS細胞)(例えば、Nature. 2008, 456:344-9参照)や、腸骨骨髄、顎骨骨髄等の骨髄由来の幹細胞、脂肪組織由来の幹細胞などの間葉系幹細胞、及び皮膚細胞等の体細胞に複数の遺伝子を導入することで、被検体自身の体細胞の脱分化を誘導し、ES細胞同様の多能性を有する体細胞由来人工多能性幹細胞(若しくは、誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS細胞))を挙げることができるが、具体的には、ヒトES細胞H9株(WA09)、ヒトES細胞H1(WA01)株(ウィスコンシン大学樹立、WISC Bank分譲)や、KhES−1、KhES−2及びKhES−3(いずれも京大再生研付属幹細胞医学研究センター樹立、理研バイオリソースセンター分譲)や、HES3、HES4、及びHES6(モナッシュ大学樹立、WISC Bank分譲)などのヒトES細胞や、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子、C−Myc遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞(京都大学樹立、理研バイオリソースセンター分譲)や、Tic(JCRB1331株)、Dotcom(JCRB1327株)、Squeaky(JCRB1329株)、及びToe(JCRB1338株)、 Lollipop(JCRB1336株)(以上成育医療センター樹立、医薬基盤・健康・栄養研究所・JCRB細胞バンク分譲)や、UTA−1株及びUTA−1−SF−2−2株(いずれも東京大学樹立、医薬基盤・健康・栄養研究所・JCRB細胞バンク分譲)や、Oct3/4遺伝子、Klf4遺伝子及びSox2遺伝子を導入することによって得られるiPS細胞(Nat Biotechnol 2008; 26: 101-106)等のiPS細胞を例示することができる。発現マーカーにおいては、OCT−3/4やNANOG等の未分化マーカーを強く発現していることが特徴である。
上記多能性幹細胞からヘパトブラストヘテロ細胞集団を調製する公知の方法としては、多能性幹細胞に遺伝子導入する方法や多能性幹細胞の分化を誘導する成分を添加した培地において培養する方法を挙げることができる。
上記多能性幹細胞に遺伝子導入する方法としては、以下の1)及び2)の方法、並びにこれらの方法に改良を加えた方法を例示することができる。
1)HEX遺伝子、HNF4α遺伝子、HNF6遺伝子及びSOX17遺伝子から選択されるいずれか1又は複数の遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込むことにより、ヒト多能性幹細胞に導入することを特徴とする、幹細胞からヘパトブラスト細胞集団を分化誘導する方法(国際公開WO2011/052504号パンフレット参照);
2)FOXA2遺伝子を、アデノウイルスベクターを用いてヒト多能性幹細胞に導入し、次いで、FOXA2遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターとHNF1α遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターとを、前記ヒト多能性幹細胞に導入することにより、ヘパトブラスト細胞集団を調製する方法;
上記ヒト多能性幹細胞の分化を誘導する成分を添加した培地において培養する方法としては、以下の3)〜9)の方法、並びにこれらの方法に改良を加えた方法を例示することができる。
3)肝幹細胞や肝前駆細胞の調製方法としては、マトリゲル上のRPMI1640/B27(−インスリン)培地に100ng/mLのアクチビンA、20ng/mLのFGF2、及び10ng/mLのBMP4を添加した培地にヒトES細胞やヒトiPS細胞を播種し、培地交換を毎日行い培養を2日間行った後、3日目に、培地を、RPMI1640/B27(−インスリン)培地に100ng/mLのアクチビンAを添加した培地へ交換し、更に2〜5日間培養し、決定内胚葉になったと判断された細胞について、培地を、RPMI1640/B27(+インスリン)培地に10ng/mLのFGF2、及び20ng/mLのBMP4を添加した培地に変更、毎日培地を交換してさらに3〜8日間培養し、肝細胞へ分化する肝幹細胞様の形態になった細胞について、RPMI1640/B27(+インスリン)培地に20ng/mLのHGFを添加したものに変更し、さらに数日培養をすることにより、ヘパトブラスト細胞集団を調製する方法(NIHセンター法);
なお、上記RPMI1640/B27(−インスリン)培地は、RPMI(Roswell Park Memorial Institute medium)1640培地に、2%のインスリン不含B−27サプリメントを添加した培地を例示することができる。RPMI1640/B27(+インスリン)培地は、上記RPMI1640/B27(−インスリン)培地において、インスリン不含B−27サプリメントの代わりに、2%のB27サプリメント(50×)を添加した培地である。
4)BDマトリゲル上のRPMI1640培地に100ng/mLのアクチビンA及び1mMのNaBを添加した培地にヒトES細胞やヒトiPS細胞を播種し、培地交換を毎日行い培養を1〜3日間行った後、培地を、RPMI1640培地に100ng/mLのアクチビンA及び0.5mMのNaBを添加した培地へ交換し、更に2〜5日間培養し、決定内胚葉になったと判断された細胞について、20% KSR(Knockout Serum Replacement)を添加したノックアウト−DMEM培地(Knockout-Dulbecco’s modified Eagle’s medium)に1%のDMSOを添加した培地に変更し、5〜10日さらに培養をすることにより、ヘパトブラスト細胞集団を調製する方法(WeiCui法);
5)フィブロネクチンでコートした10ng/mLのアクチビンAと12ng/mLのFGF2を添加したCDM(化学合成培地)に、ヒトES細胞やヒトiPS細胞を播種し、1〜3日培養し、培地を、PVAを添加したCDM培地に、1×10−6MのLy294002(2-(4-morpholinyl)-8-phenyl-4H-1-benzopyran-4-one)、10ng/mLのアクチビンA、及び12ng/mLのFGF2を添加した培地に変更して、さらに1〜5日培養し、内胚葉分化を誘導し、内胚葉細胞の特徴が現われた細胞について、培地を、PVAを添加したCDM培地に50ng/mLのFGF10を添加した培地に変更してさらに1〜4日培養し、さらに培地をPVAを添加したCDM培地に50ng/mLのFGF10と、1×10−7Mのレチノイン酸と、1×10−6MのSB431542を添加した培地に変更してさらに1〜3日培養することにより、ヘパトブラスト細胞集団を調製する方法(Vallier法);
6)多能性細胞をアクチビンとナトリウムを含む培地で内胚葉細胞を誘導し、次にDMSO(dimethyl sulfoxide)を含む培地で培養することにより分化が進み、AFP等が強く発現するヘパトブラスト細胞集団を誘導する方法(例えば、非特許文献1参照);
7)多能性細胞をアクチビンを含む培地で内胚葉細胞を誘導し、FGF4(fibroblast growth factor-4)とBMP2(bone morphogenetic protein-2)を含む培地でAFP等を発現するヘパトブラスト細胞集団を誘導する方法(例えば、非特許文献2参照);
8)多能性細胞をからFOXA2とHNF4αとAFPとが発現するヘパトブラストと称される肝前駆細胞を誘導する方法(例えば、非特許文献3参照);
9)多能性幹細胞からRPMI+B27培地にアクチビンとWnt3aとHGFとを添加した培地で内胚葉を誘導し、KO−DMEM20%KSR培地にDMSOを添加した培地で培養することによりヘパトブラスト細胞集団を誘導する方法(例えば、非特許文献4参照);
上記工程(b)において、ヘパトブラストヘテロ細胞集団を播種する肝幹細胞様細胞調製培地としては、ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とを添加した培地であれば特に制限されず、ヘパトブラスト培地としては、例えば、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンと、500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとを含む基礎培地に、サプリメントを構成する培地成分を添加することにより作製される培地を挙げることができる。上記基礎培地は、調製が容易であり、ロットごとのばらつきを防ぐ点から化学合成培地が好ましい。ここで「培地」とは、「培地成分」に水を添加した状態のものをいう。
上記HGF(hepatocyte growth factor)としては、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物の肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、脳、腎臓、胎盤等の臓器、血小板、白血球等の血液細胞や血漿、血清などから抽出、精製して得ることができるHGFや、HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞等)から分離精製したHGFを挙げることができ、また、本発明の効果を奏する限りにおいて、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が欠失又は置換されている誘導体を含めることができる。かかるHGFは、例えば、0.1〜50ng/mL、好ましくは1〜20ng/mL、より好ましくは5〜15ng/mL、さらに好ましくは7〜12ng/mLの終濃度になるように、上記ヘパトブラスト培地に添加することにより、上記肝幹細胞様細胞調製培地を調製することができる。
上記FGF7(Fibroblast Growth Factor-7)としては、FGF7を産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞等)から分離精製したFGF7を挙げることができ、また、本発明の効果を奏する限りにおいて、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が欠失又は置換されている誘導体を含めることができる。かかるFGF7は、0.1〜50ng/mL、好ましくは1〜20ng/mL、より好ましくは5〜15ng/mL、さらに好ましくは7〜12ng/mLの終濃度になるように、上記ヘパトブラスト培地に添加することにより、上記肝幹細胞様細胞調製培地を調製することができる。
上記肝幹細胞様細胞調製培地は、細胞と培養容器との接着性を高めるために培養容器の内側にコートされたフィブロネクチン上に調製することが好ましく、フィブロネクチンをコートして用いる方法としては、物理的に吸着させたり、培養容器の細胞接着領域に反応性の官能基を導入して化学結合により容器表面に細胞接着因子を固定化する等の周知の方法を用いることができるが、具体的には、培養容器にフィブロネクチンを含む溶液を添加し、1時間から12時間、好ましくは2時間から8時間、より好ましくは3時間から5時間、例えば37℃にて乾燥させないように静置し、細胞を播種する直前に上記溶液を吸引除去する方法を例示することができる。フィブロネクチンの濃度としては、0.5〜5μg/cm、好ましくは1〜3μg/cm、より好ましくは1.5〜2.5μg/cmを例示することができる。
上記基礎培地には、さらに1又は2種類、好ましくは3種類以上の無機塩(類)や、1又は2種類以上、好ましくは5種類以上、より好ましくは10種類以上、さらに好ましくは15種類以上のアミノ酸(類)や、1又は2種類以上、好ましくは3種類以上、より好ましくは6種類以上、さらに好ましくは9種類以上のビタミン(類)や、1又は2種類以上、好ましくは3種類以上の微量成分(類)などを含むことが好ましく、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質を適宜含むこともできる。
上記無機塩類としては、具体的には、硫酸銅五水和物、硝酸鉄(III)九水和物、硫酸鉄(II)七水和物、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム(無水物)、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸水素二ナトリウム(無水物)、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、硫酸亜鉛七水和物、硫酸マンガン、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム四水和物、硝酸鉄、硝酸鉄(III)九水和物、炭酸水素ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム四水和物、塩化ニッケル(II)六水和物、ケイ酸ナトリウム、塩化スズ(II)二水和物、メタバナジウム酸アンモニウム、硫酸亜鉛七水和物、硫酸銅(II)五水和物等を挙げることができる。
上記アミノ酸類としては、具体的には、グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、シスチン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン等を挙げることができ、上記各アミノ酸にはそれぞれ、L−体のアミノ酸とそれらの誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物が含まれる。例えば、上記アルギニンの派生物としては、L−塩酸アルギニン、L−アルギニン一塩酸塩等を挙げることができ、上記アスパラギン酸の派生物としては、L−アスパラギン酸ナトリウム塩一水和物、L−アスパラギン酸一水和物、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム等を挙げることができ、上記システインの派生物としては、L−システイン二塩酸塩、L−システイン塩酸塩一水和物等を挙げることができ、上記L−リジンの派生物としては、L−リジン塩酸塩等を挙げることができ、上記グルタミン酸の派生物としては、L−グルタミン酸一ナトリウム塩等を挙げることができ、上記アスパラギンの派生物としては、L−アスパラギン一水和物等を挙げることができ、上記チロシンの派生物としては、L−チロシン二ナトリウム二水和物等を挙げることができ、上記ヒスチジンの派生物としては、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩一水和物等を挙げることができる。
上記ビタミン類としては、公知のビタミンの他、ビタミン様物質を含み、具体的には、ビオチン、コリン、パントテン酸、葉酸、ナイアシン、パラアミノ安息香酸(PABA)、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、イノシトール等を挙げることができ、上記各ビタミンにはそれぞれ、これらの誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物が含まれる。例えば、上記コリンの派生物としては、塩化コリン等を挙げることができ、上記ナイアシンの派生物としては、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール等を挙げることができ、上記パントテン酸の派生物としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール等を挙げることができ、上記ピリドキシンの派生物としては、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、リン酸ピリドキサール、ピリドキサミン等を挙げることができ、上記チアミンの派生物としては、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、ベンフォチアミン等を挙げることができる。
上記微量成分としては、増殖能を維持したままヘパトブラストヘテロ細胞集団を培養するにあたり、有利に作用する成分であることが好ましく、リポ酸、プトレシン、チミジン、アデニン、グルタチオン、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、フェノールレッド等、通常培地成分として用いられている成分及びこれらの誘導体並びにそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができ、かかる派生物としては、グルタチオン還元型やグルタチオン酸化型、プトレシン二塩酸塩、アデニン硫酸塩等を挙げることができる。
前記500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとしては、800mg/L〜2000mg/Lのグルコースが好ましく、1100mg/L〜1500mLのグルコースがより好ましい。また、糖(類)として、ラクトース、マンノース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類や、スクロース、マルトース、ラクトース等の二糖類から選ばれる1又は2以上の糖類をさらに添加することもできる。
前記0.03mM〜1mMのカルシウムイオンは、上記糖(類)、無機塩(類)、アミノ酸(類)、ビタミン(類)、微量成分(類)等の構成成分を含む基礎培地の成分に水を添加することにより培地中に生じるカルシウムイオンの合計濃度であり、0.05〜0.8mMのカルシウムイオンが好ましく、0.1〜0.6mMのカルシウムイオンがより好ましく、0.2〜0.5mMのカルシウムイオンがより好ましく、カルシウムイオンを生じさせる基礎培地の構成成分としては、上記パントテン酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムを例示することができるが、これらに限定されない。
上記基礎培地としては、以下の表1に示される組成の基礎培地を具体的に例示することができるが、市販のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Iscove's Modified Dulbecco's Medium:)、MCDB培地、F12NUT−MIX培地、RPMI1640培地等の化学合成培地の組成を改変し、及び/又は、これらの培地のいずれか2以上を適当な割合で混合し、500mg/L〜4500mg/Lのグルコース、及び、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンとを含む培地とすることもできる。
また、上記基礎培地の好適な例としては、以下表2に示される組成のHepSCF基礎培地を好適に挙げることができる。
前記サプリメントを構成する培地成分としては、ピルビン酸ナトリウム、インスリン、トランスフェリン、2−メルカプトエタノール、2−エタノールアミン、セレン酸、脂肪酸不含アルブミン、ヘパリンを挙げることができ、サプリメントの使用形態としては、1又は2以上の上記成分からなるサプリメントを複数個に分別しておいてもよいし、多数の上記成分を含む一つのサプリメントとしてまとめておくこともできる。
前記ピルビン酸ナトリウムとしては、例えば0.01〜1mg/mL、好ましくは0.05〜0.5mg/mL、より好ましくは0.075〜0.25mg/mL、さらに好ましくは0.08〜0.15mg/mLの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記インスリンとしては、ブタ由来インスリン、ウシ由来インスリン、ヒト由来インスリン等の天然由来のインスリンや、アニマルプロダクトフリーグレードのインスリンとしてウシ型、ブタ型、又はヒト型等の遺伝子組換え体のインスリンを挙げることができ、特にヒト型の遺伝子組換え体インスリン(リコンビナントヒトインスリン)を好適に例示することができ、例えば1〜20μg/mL、好ましくは5〜15μg/mL、より好ましくは7.5〜12.5μg/mL、さらに好ましくは9〜11μg/mLの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記トランスフェリンとしては、ブタ由来トランスフェリン、ウシ由来トランスフェリン、ヒト由来トランスフェリン等の天然由来のトランスフェリンや、アニマルプロダクトフリーグレードのインスリンとしてウシ型、ブタ型、又はヒト型等の遺伝子組換え体のトランスフェリンを挙げることができ、さらに鉄低含有のapo型のトランスフェリンが、鉄と結合しているholo型のトランスフェリンよりも好ましく、特にヒト型の遺伝子組換え体アポトランスフェリン(リコンビナントヒトapoトランスフェリン)を好適に例示することができ、例えば0.1〜50μg/mL、好ましくは1〜20μg/mL、より好ましくは2〜8μg/mL、さらに好ましくは3〜7μg/mLの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記2−メルカプトエタノールとしては、常法により合成された化学合成品を例示することができ、例えば0.01〜15μM、好ましくは5〜13μM、より好ましくは7.5〜12.5μM、さらに好ましくは9〜11μMの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記エタノールアミンとしては、2−アミノエタノール、又はモノエタノールアミンとも呼ばれ、常法により合成された化学合成品をアニマルプロダクトフリーグレードとして好適に例示することができ、例えば1〜30μM、好ましくは5〜20μM、より好ましくは7.5〜12.5μM、さらに好ましくは9〜11μMの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記セレン酸としては、セレン酸とその誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物を含むことができ、常法により化学合成されたセレン酸、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、亜セレン酸水素ナトリウム等を例示することができ、セレン酸ナトリウム換算で例えば1〜45nM、好ましくは10〜35nM、より好ましくは15〜30nM、さらに好ましくは20〜26nMの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記脂肪酸不含アルブミンとしては、卵白アルブミン、ブタ由来アルブミン、ウシ由来アルブミン、ヒト由来アルブミン等の天然由来のアルブミンや、アニマルプロダクトフリーグレードのアルブミンとしてウシ型、ブタ型、又はヒト型等の遺伝子組換え体のアルブミンであって、脂肪酸を含有していないアルブミンを挙げることができ、特にウシ血清由来アルブミンであって脂肪酸を含んでいないウシ血清由来の脂肪酸不含アルブミンを好適に例示することができ、例えば0.01〜50mg/mL、好ましくは0.2〜20mg/mL、より好ましくは0.25〜1mg/mL、さらに好ましくは0.3〜0.7mg/mLの終濃度になるように上記サプリメントの一構成成分として、前記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
前記ヘパリンとしては、ウロン酸とアミノグリコシドからなるグリコサミノグリカンの構造を有する、抗血液凝固作用を有する因子を挙げることができ、天然物、合成品にかかわらず、本発明の効果を奏する限りにおいて、ヘパリンとその誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物を含むことができ、常法により化学合成されたヘパリンナトリウム塩やヘパリンカルシウム塩を好適に例示することができ、例えば1〜500ng/mL、好ましくは10〜200ng/mL、より好ましくは50〜150ng/mL、さらに好ましくは80〜120ng/mLの終濃度になるように、前記サプリメントの一構成成分として、上記基礎培地に添加することにより、ヘパトブラスト培地を調製することができる。
上記ヘパトブラスト培地の具体例としては、以下の表3に示されるHepSCF培地を好適に挙げることができる。
上記肝幹細胞様細胞調製培地の具体例としては、以下の表4に示されるHepSCF+2F培地を好適に挙げることができる。
上記ヘパトブラストヘテロ細胞集団において発現する分化誘導マーカーとしては、FOXA2、HNF4α、KRT19(ケラチン19)、EpCAM(Epithelial cell adhesion molecule:上皮細胞接着分子)、NCAM(Neural Cell Adhesion Molecule:神経細胞接着分子)、ICAM(intercellular adhesion molecule:細胞間接着分子)、CD13、CD133、AFP、ALB(アルブミン)等を挙げることができる。
上記ヘパトブラストヘテロ細胞集団の形態的特徴としては、顕微鏡観察下においてやや大きい上皮様細胞の様相を呈するものや、やや小さい上皮様細胞、あるいは、間葉系細胞様の様相を呈する細胞などヘテロな細胞集団として観察されることを挙げることができる。
前記工程(c)において、工程(b)において播種されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を肝幹細胞様細胞調製培地に継代する方法としては、従来公知の継代方法であれば特に制限されず、例えば、培地交換後12時間〜20日、好ましくは3〜15日、より好ましくは4〜6日に行うことを例示することができるが、培養されている細胞集団の状況によっては、55〜99%コンフルエント、好ましくは65〜95%コンフルエント、さらに好ましくは70〜90%コンフルエントに達した場合等、コンフルエンシーによって判断することもできる。継代回数としては、例えば2回以上、好ましくは3回以上、より好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上を挙げることができる。
前記工程(d)において肝幹細胞様細胞調製培地に産生した肝幹細胞様細胞コロニーとしては、肝幹細胞様細胞調製培地上に産生する単一の細胞から増殖した細胞群を挙げることができ、上記コロニーの形態としては、実体顕微鏡下で観察したときに、高く盛り上がっている形態や、細胞がやや小さく、細胞と細胞の間隙が非常に狭いコロニーの形態等を挙げることができる。また、肝幹細胞様細胞コロニーを単離する方法としては、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、顕微鏡下又は目視にて、先端の細いプラスチックパスツールの先端や、マイクロピペットのチップの先端を用いてコロニーを培地から剥離する方法を挙げることができる。コロニーを肝幹細胞様細胞調製培地から単離する前に、ディスパーゼ等の分散酵素により処理することもできる。
前記工程(e)における肝幹細胞様細胞を調製する方法としては、工程(d)において単離された肝幹細胞様細胞コロニーを上記肝幹細胞様細胞調製培地において培養する方法であれば特に制限されず、2以上のコロニーから肝幹細胞様細胞を調製する場合は、コロニー毎に、肝幹細胞様細胞を調製することが好ましく、コロニー毎に処理することによりロット管理が容易となり、肝実質細胞様細胞や胆管様細胞へ分化誘導率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上となる肝幹細胞様細胞を取得し、保存することができる。
上記肝幹細胞様細胞は、例えば、HepSCF+2F培地等において培養を続け、適宜継代することにより、増殖させることができ、また、上記肝幹細胞様細胞の保存方法としては、ディスパーゼ等の剥離溶液を用いて細胞剥離し、次いで、肝幹細胞様細胞調製培地にDMSO溶液を添加した凍結保存液に上記剥離細胞を浮遊させ、適切な容器に封入した後マイナス70℃〜80℃に凍結させた後、液体窒素中で保存する方法を挙げることができる。かかる方法により半永久的に保存することができ、解凍後に適切に分化誘導された肝実質様細胞や胆管様細胞は、細胞移植療法における有力なツールとなり、またインビトロにおいて薬剤や化合物の毒性や代謝を評価するためのツールとなりうる。
上記肝幹細胞様細胞としては、ヒト肝臓に存在するヒト肝幹細胞と同等の特性を有する細胞を挙げることができ、ヒト肝幹細胞と同等の特性としては、ヒト肝幹細胞と同等の分化誘導マーカー発現や、肝前駆細胞様細胞への分化能を有すること等を挙げることができる。
上記ヒト肝幹細胞と同等の分化誘導マーカー発現としては、FOXA2、HNF4α、KRT19、EpCAM(Epithelial cell adhesion molecule:上皮細胞接着分子)、NCAM、N−cad(N−cadherin:N−カドヘリン)、ICAM、CD13、CD133等が発現することを挙げることができる。
さらにまた、OCT−3/4やNANOG等の未分化マーカーを発現しないことや、AFPやALB(アルブミン)が発現しない又はほとんど発現しないことをヒト肝幹細胞と同等の特性として含めることができ、具体的には、肝細胞様細胞前駆細胞との比較において、AFPやALBの発現が肝細胞様細胞前駆細胞と比較するとそれぞれ2分の1以下、好ましくは3分の1以下、より好ましくは5分の1以下、特に好ましくは10分の1以下であることを例示することができる。
上記肝幹細胞様細胞が、肝前駆細胞様細胞への分化能を有するか否かは、上記肝幹細胞様細胞から肝前駆細胞様細胞を調製することができるか否かによって決定することもでき、前述のとおり肝幹細胞様細胞をヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とSB431542とY−23672とを添加した肝前駆細胞様細胞調製培地で培養することにより、肝前駆細胞様細胞を調製することができる。
上記HGFとしては、例えば、0.1〜50ng/mL、好ましくは1〜20ng/mL、より好ましくは5〜15ng/mL、さらに好ましくは7〜12ng/mLの終濃度になるように、また、FGF7としては、例えば、0.1〜50ng/mL、好ましくは1〜20ng/mL、より好ましくは5〜15ng/mL、さらに好ましくは7〜12ng/mLの終濃度になるように、それぞれ上記ヘパトブラスト培地に添加することにより肝前駆細胞様細胞調製培地を調製することができる。
上記SB431542としては、TGF‐βのTypeIレセプターであるALK5の強力で選択的な阻害物質であることが知られている、CASNo.301836−41−9の化合物又はその誘導体を挙げることができ、例えば、0.1〜50μM、好ましくは1〜20μM、より好ましくは5〜15μM、さらに好ましくは7〜12μMの終濃度になるように肝前駆細胞様細胞調製培地に添加することにより、また、上記Y−27632としては、ROCK(Rho結合キナーゼ)阻害剤であることが知られている、CASNo.331752−47−7の化合物又はその誘導体を挙げることができ、例えば、0.1〜50μM、好ましくは1〜20μM、より好ましくは5〜15μM、さらに好ましくは7〜12μMの終濃度になるように肝前駆細胞様細胞調製培地に添加することにより調製することができる。
上記肝前駆細胞様細胞調製培地の具体例としては、以下の表5に示されるHepSCF+4F培地を好適に挙げることができる。
上記肝前駆細胞様細胞としては、ヒト肝臓に存在するヒト肝前駆細胞と同等の特性を有する細胞を挙げることができ、ヒト肝前駆細胞と同等の特性としては、ヒト肝前駆細胞と同等の形態や、ヒト肝前駆細胞と同等の分化誘導マーカー発現や、肝実質細胞様細胞や胆管様細胞へ、必要に応じて即座に分化する能力を有すること等を挙げることができる。
上記ヒト肝前駆細胞と同等の形態としては、肝幹細胞よりは大きく、扁平であり、細胞と細胞の間隙が明瞭なコロニーを形成する等を挙げることができる。
上記肝前駆細胞様細胞は、例えば、HepSCF+4F培地等において培養・継代することにより、適宜増殖させることができ、また、肝前駆細胞様細胞の保存方法としては、ディスパーゼ等の剥離溶液を用いて細胞剥離し、次いで、肝幹細胞様細胞調製培地にDMSO溶液を添加した凍結保存液に上記剥離細胞を浮遊させ、適切な容器に封入した後マイナス70℃〜80℃に凍結させた後、液体窒素中で保存する方法を挙げることができる。かかる方法により半永久的に保存され、解凍後に適切に分化誘導された肝実質様細胞や胆管様細胞は、細胞移植療法における有力なツールとなりえ、またインビトロにおいて薬剤や化合物の毒性や代謝を評価するためのツールとなりうる。
上記ヒト肝前駆細胞と同等の分化誘導マーカー発現としては、FOXA2、HNF4α、KRT19、EpCAM、NCAM、ICAM、CD13、CD133、AFP、ALB等が発現することを挙げることができる。
上記肝前駆細胞様細胞が肝実質細胞様細胞や胆管様細胞への分化能を有するか否かは、上記肝前駆細胞様細胞から、肝実質細胞様細胞や胆管様細胞を調製することができるか否かによって決定することもできる。
上記肝前駆細胞様細胞から肝実質細胞様細胞の調製方法としては、公知の方法であれば特に制限されないが、肝前駆細胞様細胞をHepSCF培地で洗浄し細胞を剥離後、HepSCF+4F培地に懸濁し、コンフルエントになった肝前駆細胞様細胞をHepSCFにHGF、SB431542、Y431542、ニコチンアミド、デキサメタゾン、アスコルビン酸、OSM、Wnt3a、DAPTを添加した培地に培地交換し、さらに培地交換を1〜15日毎に行いながら培養する方法を例示することができる。
また、以下の(a)〜(c)の方法により肝前駆細胞様細胞から肝実質細胞様細胞へ誘導することもできる。
(a)肝前駆細胞様細胞を、市販の肝細胞専用培地に、肝細胞培養用添加因子セットからhEGF(組換えヒト上皮細胞成長因子)を除いたものを添加し、20ng/mLオンコスタチンMを添加した培地に、肝前駆細胞様細胞を播種し、2〜8日間、好ましくは4〜7日間培養することにより、肝実質細胞様細胞へ分化する方法(NIHセンター肝細胞分化方法);
(b)肝前駆細胞様細胞を、8.3%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15培地に、10ng/mLのHGF、及び20ng/mLのオンコスタチンMを添加した培地を用い、肝前駆細胞様細胞を播種し、3〜10日間、好ましくは5〜9日間培養することにより、肝前駆細胞様細胞を、肝実質細胞様細胞へ分化する方法(WeiCui肝細胞分化方法);
(c)肝前駆細胞様細胞を、ポリビニルアルコール(PVA)を添加したCDM培地に、30ng/mLのFGF4、50ng/mLのHGF、50ng/mLのEGFを添加した培地を用い、肝前駆細胞様細胞を播種し、5〜15日間、好ましくは8〜12日間培養することにより、肝前駆細胞様細胞を、肝実質細胞様細胞へ分化する方法(Vallier肝細胞分化方法);
上記肝実質細胞様細胞としては、ヒト肝臓に存在するヒト肝実質細胞と同等の特性を有する細胞を挙げることができ、ヒト肝実質細胞と同等の特性としては、ヒト肝実質細胞と同等の形態や、ヒト肝実質細胞と同等の分化誘導マーカー発現を有することを挙げることができる。
上記ヒト肝実質細胞と同等の形態としては、細胞がかなり大きく、扁平な形態をもち、多核の細胞も存在する点を挙げることができる。
上記ヒト肝実質細胞と同等の分化誘導マーカー発現としては、ALB、AAT、TTR(Transthyretin)、CYP2B6、CYP2E1、CYP3A4、CYP7A1、CYP2C8、CYP2D6、CYP3A5、CYP2C9、CYP2C19等が発現することを挙げることができ、特に肝前駆細胞様細胞と比べて2倍以上発現している、AAT、TTR、CYP2B6、CYP2E1、CYP3A4、CYP7A1、CYP2D6、CYP2C9、CYP2C19等が発現することを好ましく挙げることができる。
上記肝前駆細胞様細胞から胆管様細胞の調製方法としては、従来公知の方法であれば特に制限されず、コラーゲンゲル培養法を挙げることができる。
上記胆管様細胞としては、ヒト肝臓に存在するヒト胆管細胞と同等の特性を有する細胞を挙げることができ、ヒト胆管細胞と同等の特性としては、ヒト胆管細胞と同等の形態を有すること等を挙げることができる。
上記ヒト胆管細胞と同等の形態としては、細胞群が管状の分岐構造を形成していることを挙げることができる。
本発明における分化誘導マーカーの発現を確認する方法としては、各マーカーの発現を、遺伝子レベルで確認する方法や、タンパク質レベルで確認する方法等を挙げることができる。上記各マーカーの発現を遺伝子レベルで確認する場合には、各マーカー遺伝子に対する特異的プライマー対を用いた遺伝子発現解析法、特異的プローブを用いたノーザンブロッティング方等によって確認することができる。これらの方法に用いられるプローブやプライマーは、各遺伝子の配列情報に基づいて適宜設計し、適当なオリゴヌクレオチド合成装置を用いて適宜作製することができる。上記各マーカーの発現をタンパク質レベルで確認する方法としては、各マーカーの特異抗体を用いた、免疫染色法、ELISA法等を挙げることができる。
上記免疫染色法としては、本発明の方法で培養した細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定後、FBSでブロッキングを行った後、各対象マーカータンパク質の抗体と標識抗体とを用いて免疫染色し、蛍光顕微鏡観察により判定する方法を例示することができる。
上記遺伝子発現解析法としては、本発明の方法で培養した細胞を溶解・破砕後精製したRNAから、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、プライマーや適切な試薬を用いてリアルタイムPCR法を行い、その結果から遺伝子発現を評価する方法を挙げることができる
本発明は、ヒト肝幹細胞様細胞を単離するための培地を作製するためのキットを提供する。本発明のキットは、水に添加して調製した場合に、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンと、500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとを含む基礎培地を構成する成分群とピルビン酸ナトリウム、インスリン、トランスフェリン、2−メルカプトエタノール、2−エタノールアミン、セレン酸、脂肪酸不含アルブミン、ヘパリンからなるサプリメントを構成する成分群と、HGFとFGF7とを備え、上記基礎培地又はサプリメントを構成する成分は、一部の又は全部の成分を個別に包装され、2以上の組成物を混合して包装される。上記キットは、さらに培養細胞について、ヒト肝幹細胞の特性の有無を判定するための、分化マーカータンパク質に対する抗体や、分化マーカー遺伝子を検出するためのプライマー、プローブや、添付文書等を含むこともできる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。なお、実施例において用いられる多能性幹細胞であるES細胞株やiPS細胞株については、政府指針に従い分与を受け実験に供した。他の細胞株についても国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所に保管されており、一定条件下で分譲可能である。
[参考例1]
[ヒトES細胞由来ヘパトブラストヘテロ細胞集団の作製]
上記非特許文献3を参考に、以下のとおり、ヒトES細胞株H9(以下、「H9細胞」ともいう)から、ヘパトブラストヘテロ細胞集団を調製した。
H9細胞をフィーダーフリーにて、以下に示すhESF−FX培地(和光純薬工業社製)を用いてT25フラスコで培養した。細胞剥離液アキュターゼ(Merck Millipore社製)1mLを添加し、室温で2〜3分間静置した。10mLのmTeSR培地(STEMCELL Technologies社製)をT25フラスコに添加し、H9細胞をスクレーパーで剥離した。剥離したH9細胞をT25フラスコから15mL遠沈管に回収し、さらにT25フラスコを2mLのmTeSR培地を用いてリンスすることにより、H9細胞を遠沈管に再回収した。遠沈管に回収及び再回収されたH9細胞を含むmTeSR培地を800rpmにて2分間遠心した。遠沈管から上清を除き、タッピングをすることにより細胞を分散させた後、10mLのmTeSR培地を遠沈管に添加し、再度、800rpmにて2分間遠心した。遠沈管から上清を除き、mTeSR培地を遠沈管に添加して細胞を懸濁し、600000個細胞/ウェルになるようにH9細胞をGeltrex(ThermoFisher Scientific社製)をコーティングした24ウェルプレートに播種した。
播種されたH9細胞は、37℃にて、5%CO存在下にてインキュベーターを用いて24時間培養された。24時間後、500mLのRPMI1640(ThermoFisher Scientific社製)/B27(−インスリン)(ThermoFisher Scientific社製)にnon-essential amino acidと100ng/mLのアクチビンAと10ng/mLのBMP4と20ng/mLのFGF2とを添加した培地に交換し、2日間培養した。
2日後、上記培養細胞をRPMI1640/B27(−インスリン)にnon-essential amino acidと100ng/mLのアクチビンAとを添加した培地に交換し、3日間培養した。3日後、上記培養細胞をRPMI1640/B27にnon-essential amino acidと20ng/mLのBMP4と20ng/mLのFGF2とを添加した培地に交換し、5日間培養した。5日後、RPMI1640/B27に非必須アミノ酸と20ng/mLのHGF(R&Dシステムズ社製)とを添加した培地に交換し、2日間培養した。
上述の手順で得られたH9細胞由来の細胞の位相差画像を図1に示す。かかる位相差画像は、位相差顕微鏡(M125 Leica社製)により撮影された。画像から明らかなとおり、上皮様細胞や間葉系細胞様細胞が混在する一方で、へパトブラストの形態に似たコロニーも確認できた点で、ヘテロなヘパトブラスト細胞集団であるといえる。
[実施例1]
[ヒトES細胞由来肝幹細胞様細胞の単離]
上記H9細胞由来ヘパトブラストヘテロ細胞集団を2日間培養後に培地を除き、ヘパトブラストヘテロ細胞集団に0.5mLのディスパーゼ(Roche社製)を添加し、37℃にて4分間静置した。静置後ディスパーゼを除き、3mLの前記HepSCF培地で洗浄後、2mLのHepSCF培地を添加し、スクレーパーで細胞を剥離した。
(ヘパトブラストヘテロ細胞集団のHepSCF+2F培地での培養)
上記剥離された細胞は、15mLの遠沈管に回収され、1000rpmにて1分間遠心後、遠沈管から上清を除き、HepSCF培地に10ng/mLのHGFと10ng/mLのFGF7(R&Dシステムズ社製)を添加することにより調製されたHepSCF+2F培地に懸濁し、2μg/cmのフィブロネクチン(Sigma Aldrich社製)をコーティングした6ウェルプレートに播種した。播種されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、37℃にて5%CO存在下にてインキュベーターを用いて4日間培養後、HepSCF+2F培地に1回目の継代を行った。
(ヘパトブラストヘテロ細胞集団の蛍光免疫染色)
上記蛍光免疫染色の具体的な手順は以下のとおりである。6ウェルプレートに細胞を播種し(0日)、6〜8日後に、培養上清を除き、細胞をPBSで洗浄した。洗浄した細胞に4%パラホルムアルデヒド(PFA)(和光純薬工業社製)を移し、室温で15分間静置して、細胞をウェルに固定した。4%PFAを除き、PBSで細胞を3回洗浄した。固定した細胞を洗浄後3%FBSを添加し、室温にて30分間ウシ血清を用いてブロッキングした。3%FBSを除き、一次抗体を加えた後4℃にて一晩反応させた後、一次抗体を除きPBSで3回洗浄した。PBSでの洗浄後二次抗体を加え、室温にて1時間反応させ、二次抗体を除いてPBSで1回洗浄した後、蛍光顕微鏡下に観察を行った。結果を図2(a)〜(d)に示す。「Merge」は、各抗体による染色画像をオーバーレイしたものである。
図2から明らかなとおり、HepSCF+2F培地での1回目の継代後の細胞集団においては、FOXA2(a)は全体的に強く発現しており、HNF4α(b)は、発現が強い細胞と発現が弱い細胞が観察され、AFP(c)は、全体的に発現しているが、発現が特に強い細胞と発現が弱い細胞が見受けられた。Merge(d)において、矢印の部分が、AFPの発現が弱まっていることから肝幹細胞コロニーとなるのではないかと予想した。
(肝幹細胞様細胞の位相差画像)
前記第1回目の継代後のヘパトブラストヘテロ細胞集団は、2日間毎にさらにHepSCF+2F培地で継代を行い、顕微鏡下又は目視にて観察を続けた。2継代目にそれまでのヘテロな細胞集団とは明らかに形態の異なるコロニーを見いだしたため、マイクロピペットのチップの先端を用いてかかるコロニーを培地から剥離することにより単離した。コロニーから単離された細胞群の位相差画像を図3に示す。実体顕微鏡下で観察したときに、高く盛り上がっている形態や、細胞がやや小さく、細胞と細胞の間隙が非常に狭いコロニーを形成することから肝幹細胞の特徴を示していることが確認された。
[ES細胞由来肝幹細胞様細胞の肝前駆細胞様細胞への分化]
上記HepSCF+2F培地において増殖しているES細胞由来の肝幹細胞様細胞を、HepSCFに10ng/mLのHGF、10ng/mLのFGF7、10μMのSB431542(TOCRIS社製)、10μMのY−27632(和光純薬工業社製)を添加した培地(HepSCF+4F培地)で培養したところ、上記単離された肝幹細胞コロニー由来の細胞が、さらに肝前駆細胞様細胞に分化していることが確認された。上記HepSCF+4F培地中の肝前駆細胞様細胞の位相差画像を図4に示す。顕微鏡による観察により、肝幹細胞より大きく扁平な形態であり、細胞と細胞の間隙が明瞭なコロニーが確認されたことから、肝前駆細胞様細胞であることがわかる。
上記HepSCF+4F培地中で肝幹細胞様細胞から誘導された細胞群について、FOXA2、AFP、HNF4αをマーカーとして用いて、蛍光免疫染色により細胞の陽性率を解析した。具体的な手順は、上記ヘパトブラストヘテロ細胞集団の蛍光免疫染色の手順にしたがった。なお、核を染色するためにヘキスト33342を用いて染色を行った(「Hoeschst」)。「Bright field」は位相差画像を撮影したものでしたものである。結果を図5に示す。
(結果)
図5(a)、(b)、(c)、(d)、(e)から明らかなとおり、上記HepSCF+4F培地中の肝幹細胞から誘導された細胞群は、FOXA2、HNF4αとともにAFPを強く発現していることが確認され、肝幹細胞からさらに分化した肝前駆細胞様細胞であることが確認された。
[参考例2]
[ヒトiPS細胞由来ヘパトブラストヘテロ細胞集団の作製]
iPS細胞を遺伝子導入によりヘパトブラストヘテロ細胞集団に誘導した。ヒトiPS細胞として、ヒトiPS細胞Dotcom株(JCRB1327)(医薬基盤研・JSCB細胞バンク)(以下「Dotcom株」ともいう)を使用した。中内胚葉(mesoendoderm)分化を促進するために、上記ヒトiPS細胞を、細胞分離試薬アキュターゼ(ミリポア社製)を用いて単細胞に分離した。BDマドリゲル(登録商標)上に、ヒトES細胞分化誘導用基礎培地hESF−DIF(細胞科学研究所製)に、10μg/mLのヒトリコンビナントインスリン(シグマ社製)、5μg/mLのヒトアポトランスフェリン(シグマ社製)、10μMの2−メルカプトエタノール(シグマ社製)、10μMのエタノールアミン(シグマ社製)、10μMのセレン酸ナトリウム(シグマ社製)、0.5mg/mLのウシ血清アルブミン(シグマ社製)(PBS(phosphate-buffered saline)にて調製)、及び100ng/mLのアクチビンA(R&Dシステムズ社製)をサプリメントとして添加した培地に、上記分離単細胞を播種した。この日を分化0日目とする。2日間培養し、ヒトiPS細胞由来中内胚葉様細胞(mesoendoderm cells)を得た。
2日後、内胚葉細胞を作製するため、上記Dotcom株由来中内胚葉様細胞を、HOXA2遺伝子を挿入したAdベクター(Ad‐FOXA2)に、1500VP(vector particle)/細胞に1.5時間感染させた。Ad-FOXA2感染細胞を、BDマトリゲル上に、100ng/mLのアクチビンAを添加したhESF−DIF培地において、分化6日目まで培養を続けることにより、内胚葉細胞を得た。
上記内胚葉細胞からヘパトブラストヘテロ細胞集団への分化をさらに進めるため、分化6日目に、上記内胚葉細胞に、上記Ad-FOXA2と、HNF4α遺伝子を挿入したAdベクター(Ad‐HNFα)とを、1,500VP(vector particle)/細胞にて1.5時間感染させた。Ad‐FOXA2・Ad‐HNFα感染細胞を、BDマトリゲル上に、骨形成タンパク質4(bone morphogenetic protein 4:(BMP4)、R&Dシステムズ社製)及び20ng/mLのFGF−4(R&Dシステムズ社製)を添加した肝細胞培養培地(hepatocyte culture medium:HCM)(Lonza社製)において、3日間培養した。
上述の手順で得られたDotcom株由来の細胞の位相差画像を図6に示す。画像から明らかなとおり、上皮系様の細胞や間葉系細胞様細胞が存在する一方で、へパトブラストの形態に似たコロニーも確認できた点で、ヘパトブラストヘテロ細胞集団であるといえる。
[実施例2]
[ヒトiPS細胞由来肝幹細胞様細胞の単離]
上記Dotcom株由来ヘパトブラストヘテロ細胞集団を2日間培養後に上記HCM培地を除き、ヘパトブラストヘテロ細胞集団に0.5mLのディスパーゼを添加し、37℃にて4分間静置した。静置後ディスパーゼを除き、3mLのHepSCF培地で洗浄後、2mLのHepSCF培地を添加し、スクレーパーで細胞を剥離した。
(ヘパトブラストヘテロ細胞集団のHepSCF+2F培地での培養)
上記剥離された細胞は、15mLの遠沈管に回収され、1000rpmにて1分間遠心後、遠沈管から上清を除き、HepSCF+2F培地に懸濁し、2μg/cmのフィブロネクチンがコーティングされた6ウェルプレートに播種した。播種されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、37℃にて5%CO存在下にてインキュベーターを用いて培養を起こった。4日から7日間毎にHepSCF+2F培地で数回継代を行い、顕微鏡下又は目視にて観察を続けたところ、2継代から3継代目にそれまでのヘテロな細胞集団ではなく、コロニーとして増殖している細胞を見いだした(図7参照)。マイクロピペットのチップの先端を用いてかかるコロニーを培地から剥離することにより単離した。コロニーから単離された細胞の位相差画像を図8に示す。細胞が小さく、強くパッキングされたコロニーを形成する点でヒト肝幹細胞の特徴を示していた。
[iPS細胞由来肝幹細胞様細胞の肝前駆細胞様細胞への分化]
上記HepSCF+2F培地において増殖しているDotcom株由来の肝幹細胞様細胞を、HepSCF+4F培地で培養したところ、上記単離されたコロニー由来の細胞が、さらに肝前駆細胞様細胞に分化し、増殖が行われることが確認された。HepSCF+4F培地中の肝前駆細胞様細胞の位相差画像を図9に示す。肝幹細胞よりやや大きく扁平な形態であることから、肝前駆細胞様細胞であることがわかる。
前記HepSCF+2F培地で培養された肝幹細胞様細胞と上記HepSCF+4F培地で培養された肝前駆細胞様細胞とについて、リアルタイムPCR法により、FOXA2、HNF4α、KRT19、EpCAM、NCAM、ICAM、CD13、CD133、AFP、ALBの各マーカーについて発現解析を行った。
細胞溶解液RLTバッファーを用いて、肝幹細胞様細胞及び肝前駆細胞様細胞をそれぞれ溶解後、各細胞溶解液をQiashuledderカラムに回収し、13000rpmにて2分間遠心して、細胞を破砕した。破砕された各細胞からRNeasyキットを使用して、RNAを精製し、精製した各RNA250ngと逆転写酵素を含むSuperScript(登録商標)VILOTMcDNA Synthesisキットを用いてcDNAを合成した。合成されたcDNA、標的プライマーセット、SYBR Premix ExTaqIIを用いて、リアルタイムPCRを行い、リアルタイムPCRの結果から、遺伝子発現を評価した。結果を図10に示す。
図10から明らかなとおり、HepSCF+2F培地で培養された肝幹細胞様細胞、HepSCF+4F培地で培養された肝前駆細胞様細胞いずれにおいても、未分化のiPS細胞と比較して、肝実質細胞への分化が進んでいることを示すFOXA2、HNF4α、KRT19、EpCAM、NCAM、ICAM、CD13、CD133が強く発現していた。なお、肝幹細胞様細胞においては、肝前駆細胞様細胞よりもNCAMの発現が2倍以上であり、CD133の発現も肝前駆細胞様細胞に比べて顕著に多い一方、AFPとALBの発現が顕著に低く(AFPは、肝前駆細胞様細胞の1/16の発現量)、肝幹細胞としての特徴が強く示されていることが確認された。
[参考例2]
[iPS細胞由来肝前駆細胞様細胞の肝実質細胞様細胞への分化誘導]
上記Dotcom株由来肝前駆細胞様細胞の肝実質細胞様細胞へ分化を誘導した。上記6ウェルプレートで培養しているiPS細胞由来肝前駆細胞様細胞からHepSCF+4F培地を除き、1mLのディスパーゼを移して、37℃にて1分間静置した。静置後iPS細胞由来肝前駆細胞様細胞を7mLのHepSCF培地で洗浄し、さらに5mLのHepSCF培地を添加し、スクレーパーで細胞を剥離した。剥離した肝前駆細胞様細胞を15mLの遠沈管に回収し、プレートをさらにHepSCF培地を用いてリンスすることにより、肝前駆細胞様細胞を遠沈管に再回収した。遠沈管に回収及び再回収された肝前駆細胞様細胞を含むHepSCF培地を1000rpmにて1分間遠心した。上清を除き、タッピングで細胞を分散させた後、HepSCF培地に10ng/mLのHGF、10ng/mlのFGF7、10μMのSB431542、及び10μMのY431542を添加したHepSCF+4F培地で懸濁し、2×10〜4×10個/ウェルの細胞を2μg/cmのフィブロネクチンがコートされた48ウェルプレートに播種した。
HepSCF+4F培地において、80〜90%コンフルエントになった肝前駆細胞様細胞は、HepSCFに20ng/mLのHGF、10μMのSB431542、10μMのY431542、10mMのニコチンアミド、1μMのデキサメタゾン、0.1mg/mLのアスコルビン酸、20ng/mLのOSM、20ng/mLのWnt3a、10μMのDAPTを添加した7F+Da+Wn培地を肝実質細胞様細胞調製培地として用い、8日毎に培地を交換して培養を続けた。
上記7F+Da+Wn培地での培養30日目の細胞について、ALB及びAATをマーカーとして用いて、蛍光免疫染色により細胞の陽性率を解析した。具体的な手順は、上記ヘパトブラストヘテロ細胞集団の蛍光免疫染色の手順にしたがった。結果を図11に示す。
図11から明らかなとおり、7F+Da+Wn培地で培養された肝前駆細胞様細胞は、培養後ALBとAATの発現が非常に強く、肝実質細胞様細胞に分化していることが確認された。
上記7F+Da+Wn培地での培養30日目の細胞において、肝細胞で発現することが知られている、ALB、AAT、TTR、CYP2B6、SYP2E1、CYP3A4、CYP7A1、CYP2C8、CYP2D6、CYP3A5、CYP2C9、CYP2C19の10種類のマーカー発現についてRNA解析を行い、マーカー発現を評価した。結果を図12に示す。
(結果)
図12から明らかなとおり、肝細胞で発現することが知られている、ALBや、AAT、TTR、CYP2B6、SYP2E1、CYP3A4、CYP7A1、CYP2C8、CYP2D6、CYP3A5、CYP2C9、及びCYP2C19等の成熟肝細胞マーカーの10種類のマーカーのいずれもが、肝前駆細胞様細胞を、HepSCF+4F培地にニコチンアミドとデキサメタゾンを加えた培地(ネガティブコントロール用培地)よりも、7F+Da+Wnを加えた培地(分化誘導用培地)で培養された細胞が顕著に強く発現しており、7F+Da+Wn培地において、肝前駆細胞様細胞から肝実質細胞用培養に分化したことが示されている。
[参考例3]
[iPS細胞由来肝前駆細胞様細胞の胆管様細胞への分化誘導]
上記Dotcom株由来肝前駆細胞様細胞を胆管様細胞へ分化を誘導した。上記6ウェルプレートで培養されているiPS細胞由来肝前駆細胞様細胞からHepSCF+4F培地を除き、1mLのディスパーゼを移して、37℃にて1分間静置した。静置後iPS細胞由来肝前駆細胞様細胞を7mLのHepSCF培地で洗浄し、さらに5mLのHepSCF培地を添加し、スクレーパーで細胞を剥離した。剥離した肝前駆細胞様細胞を15mLの遠沈管に回収し、プレートをさらにHepSCF培地を用いてリンスすることにより、肝前駆細胞様細胞を遠沈管に再回収した。遠沈管に回収及び再回収された肝前駆細胞様細胞を含むHepSCF培地を1000rpmにて1分間遠心した。上清を除き、タッピングで細胞を分散させた後、DMEM/F12(ThermoFisher Scientific社製)に、10μg/mLのヒトインシュリン、5μg/mLのヒトアポトランスフェリン、10μMの2−アミノエタノール、10μMの2−メルカプトエタノール、10nMのセレン酸ナトリウム、4mg/mLの脂肪酸不含ウシ血清アルブミン、20ng/mLのHGF、及び20ng/mLのEGFを添加した培地で培養して,胆管細胞誘導用細胞懸濁液を調製した。
0.24%のタイプ1コラーゲン、1×DMEM、20mMのHEPES、0.22%のNaHCO3、及び5mMのNaOHを含むコラーゲンゲル溶液と上記胆管細胞誘導用細胞懸濁液を1:2で混合して混合溶液とし、48ウェルプレートに播種し、37℃にて30分間COインキュベーターでゲル化させた。30分後、コラーゲンゲル化した混合溶液の上に、DMEM/F12に10μg/mLのヒトインシュリン、5μg/mLのヒトアポトランスフェリン、10μMの2−アミノエタノール、10μMの2−メルカプトエタノール、10nMのセレン酸ナトリウム、4mg/mLの脂肪酸不含ウシ血清アルブミン、20ng/mLのHGF、及び20ng/mLのEGFを添加した胆管誘導用培地1を移して、37℃にてCOインキュベーターで培養した。
1日後から、2日毎にDMEM/F12に10μg/mLのヒトインシュリン、5μg/mLのヒトアポトランスフェリン、10μMの2−アミノエタノール、10μMの2−メルカプトエタノール、10nMのセレン酸ナトリウム、4mg/mLの脂肪酸不含ウシ血清アルブミン、20ng/mLのHGF、及び20ng/mLのEGF、及び1%FBSを添加した胆管誘導用培地2に培地交換し、10日間コラーゲンゲル培養を行った。
上記コラーゲンゲル培養を行った培地において、顕微鏡により観察を行ったところ明らかな胆管分化細胞が現れたので4%PFAで30分間固定し、0.5%トリトンX−100を含むPBS溶液で、細胞のパーミライズを行った。3%のFBSを含むPBS溶液でブロッキングを室温にて30分間行った。抗CK19抗体で4℃にて一晩反応させた後PBSTで3回洗浄した。二次抗体AP(アルカリフォスファターゼ)を添加して4℃にて一晩反応させた後PBST(Phosphate Buffered Saline with Tween(登録商標)20)で3回洗浄した。APの基質を加えて反応させ、発色後、PBSTで2回洗浄した。顕微鏡で観察して、画像を撮影した。結果を図13に示す。
図13より明らかなとおり、細胞は、管状の分岐構造であり、胆管細胞と同等の構造を有する胆管様細胞であることが確認された。
本発明は、医療分野において非常に有用である。

Claims (9)

  1. 以下の工程(a)〜(e)を順次備えるヘパトブラストヘテロ細胞集団から肝幹細胞様細胞を調製する方法。
    (a)多能性幹細胞から公知の方法によりヘパトブラストヘテロ細胞集団を調製する工程;
    (b)工程(a)において調製されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とを添加した肝幹細胞様細胞調製培地に播種する工程;
    (c)工程(b)において播種されたヘパトブラストヘテロ細胞集団を、前記肝幹細胞様細胞調製培地に2回以上継代する工程;
    (d)前記肝幹細胞様細胞調製培地に産生した肝幹細胞様細胞コロニーを前記肝幹細胞様細胞調製培地から単離する工程;
    (e)工程(d)において単離された肝幹細胞様細胞コロニーを前記肝幹細胞様細胞調製培地において培養し、肝幹細胞様細胞を調製する工程;
  2. ヘパトブラスト培地が、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンと、500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとを含む基礎培地に、サプリメントを構成する培地成分を添加することにより作製される培地であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 肝幹細胞様細胞調製培地を培養容器の内側にコートされたフィブロネクチン上に調製することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか記載の肝幹細胞様細胞を調製する方法で調製された肝幹細胞様細胞を、ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とSB431542とY−23672とを添加した肝前駆細胞様細胞調製培地で培養する工程を備える肝前駆細胞様細胞を調製する方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか記載の方法で調製された肝幹細胞様細胞。
  6. 請求項4記載の方法で調製された肝前駆細胞様細胞。
  7. ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とを添加した肝幹細胞様細胞調製培地。
  8. ヘパトブラスト培地にHGFとFGF7とSB431542とY−23672とを添加した肝前駆細胞様細胞調製培地。
  9. ヘパトブラスト培地が、0.03mM〜1mMのカルシウムイオンと、500mg/L〜4500mg/Lのグルコースとを含む基礎培地に、サプリメントを構成する培地成分を添加することにより作製される培地であることを特徴とする請求項7又は8記載の培地。
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