JP2019134091A - マスク一体型表面保護テープおよびマスク一体型表面保護テープを用いる半導体チップの製造方法 - Google Patents
マスク一体型表面保護テープおよびマスク一体型表面保護テープを用いる半導体チップの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
従来、ダイシング工程においては、ダイシングブレードにより切断されるブレードダイシング方式が用いられてきた。しかしながら、ブレードダイシング方式では切断時にブレードによる切削抵抗が半導体ウェハに直接かかる。そのため、この切削抵抗によって半導体チップに微小な欠け(チッピング)が発生することがある。チッピングの発生は半導体チップの外観を損なうだけでなく、場合によっては抗折強度不足によるピックアップ時のチップ破損を招き、チップ上の回路パターンまで破損する可能性がある。また、ブレードによる物理的なダイシング工程では、チップ同士の間隔であるカーフ(スクライブライン、ストリートともいう)の幅を厚みのあるブレード幅よりも狭小化することができない。この結果、一枚のウェハから取ることができるチップの数(収率)は少なくなる。さらにウェハの加工時間が長いことも問題であった。
しかしながら、これらの方式は、個々にメリットはあるものの、これらの方式によっては、チップの破損、極小チップの製造に時間を要したり、表面汚染、カーフ幅の狭小化に対する制約、得られるチップの収率低下、チップ抗折強度の低下、チップ端面が隣接チップとぶつかってチップコーナーが欠けるなどの問題がある。
プラズマダイシング方式は、マスクで覆っていない箇所をプラズマで選択的にエッチングすることで、半導体ウェハを分割する方法である。このダイシング方法を用いると、選択的にチップの分断が可能であり、スクライブラインが曲がっていても問題なく分断できる。また、エッチングレートが非常に高いことから近年ではチップの分断に最適なプロセスの1つとされてきた。
マスク一体型表面保護テープでは、少なくとも下記の工程で半導体チップが製造可能となる。
〔工程〕
(A)表面保護テープをパターン面に表面保護テープを貼り付けた半導体ウェハの裏面研削後のリングフレームへの支持固定工程
(B)剥離で表面露出したマスク材層に対するレーザー切断による半導体ウェハのストリート部の開口工程
(C)プラズマダイシング工程、および、
(D)残りのマスク材層のアッシング工程
特に、マスク材層を設けることにより、工程(B)でのレーザー加工時にデブリが発生する問題がある。レーザー加工時のデブリとは、マスク材層の切断屑とウエハパターン面上の金属配線などが混ざった加工屑である。この加工屑がマスク材層上に残留していると、工程(D)でのO2等のプラズマアッシングによるマスク除去時にデブリが除去されず、チップ上に残って加工収率が低下するという問題に繋がってくる。
〔1〕基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられたマスク材層とを少なくとも有するマスク一体型表面保護テープであって、前記マスク材層が放射線硬化型であって、前記マスク材層の放射線硬化後の破断伸度が50〜250%であり、前記マスク材層の放射線硬化後の貯蔵弾性率が100,000Pa以上であることを特徴とするマスク一体型表面保護テープ。
〔2〕前記粘着剤層を構成する粘着剤が感圧型粘着剤であることを特徴とする〔1〕に記載のマスク一体型表面保護テープ。
〔3〕前記基材フィルムが、ポリオレフィン樹脂層又はPET層を少なくとも有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のマスク一体型表面保護テープ。
〔4〕プラズマダイシングに使用される請求項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のマスク一体型表面保護テープ
〔5〕下記工程(a)〜(d)を含む半導体チップの製造に用いられる〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のマスク一体型表面保護テープ
〔工程〕
(a)前記マスク一体型表面保護テープを半導体ウェハのパターン面側に貼り合せた状態で、該半導体ウェハの裏面を研削し、研削した半導体ウェハの裏面にウェハ固定テープを貼り合せ、リングフレームで支持固定する工程、
(b)前記マスク一体型表面保護テープから前記基材フィルムと前記粘着剤層とを一体に剥離することで、前記マスク材層を表面に露出させた後、該マスク材層のうち半導体ウェハのストリートに相当する部分をレーザーにより切断して半導体ウェハのストリートを開口する工程、
(c)プラズマにより前記半導体ウェハを前記ストリートで分断して半導体チップに個片化するプラズマダイシング工程、および、
(d)プラズマにより前記マスク材層を除去するアッシング工程
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕いずれか1項に記載のマスク一体型表面保護テープを用いることを特徴とする半導体チップの製造方法。
これにより、半導体チップの製造工程の各工程で優れた性能を示し、操作性、作業性にも優れたマスク一体型表面保護テープ、および、このマスク一体型表面保護テープを使用する半導体チップの製造方法を提供することが可能となった。
特に、マスク材層を設けることで生じる克服すべき課題における、レーザー切断によるストリートの開口性、マスク材層のレーザー加工時におけるデブリ発生の防止のいずれも優れる。
この結果、本発明のマスク一体型表面保護テープは、なかでも半導体ウェハのストリートに相当する部分のマスク材をレーザーにより切断して半導体ウェハのストリートを開口する工程において、マスク材層のレーザー光吸収性不足によるレーザー加工効率の低下での加工長時間化や、過剰なレーザー光のエネルギー投入によるマスク材層の溶融によるウェハ加工品質の悪化、レーザー加工時のデブリ発生も防止することが可能となる。
本発明のマスク一体型表面保護テープは、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられたマスク材層とを少なくとも有する。
なお、本発明および本明細書では、マスク材層を有さず、基材フィルム上に粘着剤層が設けられているテープを、単に、表面保護テープと称し、マスク材層を有するものをマスク一体型表面保護テープと称す。
従って、通常の半導体ウェハ加工用表面保護テープと同様の粘着性を含めた性能が要求される。
具体的には、半導体ウェハのパターン面に形成された半導体素子を保護する機能を有する。すなわち、後工程のウェハ薄膜化工程(裏面研削工程)では半導体ウェハのパターン面で半導体ウェハを支持してウェハの裏面が研削されるために、マスク一体型表面保護テープはこの研削時の負荷に耐える必要がある。そのため、マスク一体型表面保護テープは単なるレジスト膜等とは異なり、パターン面に形成される素子を被覆するだけの厚みがあって、その押圧抵抗は低く、また、研削時のダストや研削水などの浸入が起こらないように素子を密着できるだけの密着性が高いものである。
これに加えて、プラズマダイシング方式に適し、プラズマダイシング方式を用いた半導体チップの製造においてフォトリソグラフィプロセスによるマスク形成を不要とする。
(a)マスク一体型表面保護テープを半導体ウェハのパターン面側に貼り合せた状態で、該半導体ウェハの裏面を研削し、研削した半導体ウェハの裏面にウェハ固定テープを貼り合せ、リングフレームで支持固定する工程、
(b)マスク一体型表面保護テープから前記基材フィルムを剥離するか、または、基材フィルムと粘着剤層とを一体に剥離することで、マスク材層を表面に露出させた後、マスク材層のうち半導体ウェハのストリートに相当する部分をレーザーにより切断して半導体ウェハのストリートを開口する工程、
(c)プラズマ(例えばSF6プラズマ)により半導体ウェハをストリートで分断して半導体チップに個片化するプラズマダイシング工程、および、
(d)プラズマ(例えばO2プラズマ)によりマスク材層を除去するアッシング工程
基材フィルムは単層構成でも、複数の層が積層した積層体であってもよい。
基材フィルムを構成する樹脂もしくはポリマー成分は、従来の半導体ウェハ加工用表面保護テープで使用される樹脂もしくはポリマー成分が用いられる。
例えば、ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂、さらには、(メタ)アクリル樹脂に加え、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ゴム類が挙げられ、これらを単体もしくは2種以上を混合させたものでも構わない。
なお、ポリエチレン、ポリプロピレンは、ホモポリエチレン、ホモポリプロピレン以外は、通常、密度を調整するため、α−オレフィンを共重合成分として含む。特に、ポリエチレンでは、このα−オレフィンは、一般には、5モル%以下である。
ポリエチレンの密度(比重)等により、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)に分類される。
ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンが挙げられる。
マスク材層は、プラズマダイシング工程でのSF6などのプラズマ照射によるエッチング(ダイシング)から、半導体ウェハ表面を保護する層であり、開口工程で除去された半導体ウェハのストリート部分のみを選択的にエッチング(ダイシング)して、半導体ウェハの高精度な分割を可能とする層である。
本発明では、マスク材層は、半導体ウェハ表面のパターン面に貼り合わせて使用されるため、通常の半導体ウェハ加工用表面保護テープにおける粘着剤層と同様に、粘着性を含めた性能を有する。
照射されるレーザー光は、CO2レーザー(炭酸ガスの気体レーザー)、YAGレーザー(イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザー)、半導体レーザーなど特に限定されるものではない。本発明では、なかでもYAGレーザーの第3高調波である355nmの紫外線領域のレーザーは各種材質に対して吸収率が非常に高く、熱ストレスをかけないため、高品質を求められる微細加工に使用され、ビーム径が長波長レーザーと比べ絞られるため、より微細な加工が可能であり、本発明に好適に利用できる。
マスク材層の放射線硬化後の破断伸度は、50〜150%が好ましく、50〜100%がより好ましい。
マスク材層の放射線硬化後の貯蔵弾性率は、150,000〜300,000Paが好ましく、200,000〜300,000Paがより好ましい。
また、上記のマスク材層の放射線硬化後の破断伸度および放射線硬化後の貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
マスク材層を構成する樹脂は、どのような樹脂でも構わないが、通常の半導体ウェハ加工用表面保護テープにおける粘着剤層を構成する粘着剤が好ましい。
粘着剤で使用される樹脂は、(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
なお、本発明および本明細書では、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」を総称するもので、「アクリル」、「メタクリル」のいずれか一方であっても、これらの混合であっても構わない。例えば、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを意味するものである。
ここで、エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、上記以外に、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニル、マレイン酸(エステル、酸無水物も含む)などが挙げられる。
本発明では、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸から選択されるモノマーの共重合体が、より好ましい。また、1種類の共重合体であっても複数の共重合体の混合物であっても構わない。
また、(メタ)アクリル酸エステルのアルコール部(エステルを形成するアルコール)の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜12がさらに好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸エステルのアルコール部は、置換基を有していてもよい。
さらに、(メタ)アクリル共重合体の全モノマー成分中、後述する硬化剤と反応する官能基(例えばヒドロキシ基)を有する(メタ)アクリル酸エステル成分の割合は、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がより好ましい。なお、硬化剤と反応する官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル成分の割合は35モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。
ここで、質量平均分子量は、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。
マスク材層中の(メタ)アクリル共重合体は硬化されていることが好ましく、マスク材層形成用組成物に硬化剤を含有することが好ましい。
硬化剤は、(メタ)アクリル共重合体が有する官能基と反応させて粘着力および凝集力を調整するために用いられるものである。
硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレートなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(以下、「エポキシ硬化剤」ともいう。)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのアダクトタイプなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(以下、「イソシアネート硬化剤」ともいう。)、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)−アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)−アジリジニル]トリホスファトリアジンなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン化合物(アジリジン硬化剤)等が挙げられる。硬化剤の添加量は、所望の粘着力に応じて調整すればよく、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が適当である。本発明のマスク一体型表面保護テープのマスク材層において、硬化剤は(メタ)アクリル共重合体と反応した状態にある。
本発明では、マスク材層を放射線硬化型とすることで、マスク材層のみを半導体ウェハのパターン面に残し、剥離を容易にすることができる。
上記放射線硬化型に対して、非放射線硬化型とは、粘着剤と同様に、感圧型とも称し、上記で説明した樹脂および硬化剤で硬化された樹脂からなり、放射線の照射で硬化するエチレン性不飽和基を含む成分を含有しないものである。
具体的には、マスク一体型表面保護テープの基材フィルム側から、放射線を照射することで、マスク材層を硬化させることにより、マスク材層とこれに接する層との層間剥離性が向上し、マスク一体型表面保護テープから表面保護テープを剥離しやすくなる。
これは、放射線照射によってマスク材層が三次元網状化して粘着力が低下するため、マスク材層に接する層、例えば粘着剤層との強固な密着性が解かれて、マスク一体型表面保護テープのマスク材層に接する層、例えば粘着剤層から簡単に剥離することが可能となる。
ただし、放射線照射により、マスク材層と粘着剤層との密着力は、マスク材層と半導体ウェハのパターン面との間の密着力よりも低くなることが好ましい。
本発明および本明細書において「放射線」とは、紫外線のような光線や電子線のような電離性放射線の双方を含む意味に用いる。本発明では、放射線は紫外線が好ましい。
放射線硬化型とするには、大きく分けて、(1)側鎖にエチレン性不飽和基(放射線重合性炭素−炭素二重結合でエチレン性二重結合とも称す)を有する樹脂(ポリマー)を含有するか、(2)上記の感圧型で使用する樹脂(ポリマー)とともに、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する低分子量化合物(オリゴオマーを含み、以下、放射線重合性低分子量化合物とも称す)を含有させる。
本発明では、上記(1)、(2)のいずれでもよいが、(1)が好ましい。
側鎖にエチレン性不飽和基を有する樹脂は、側鎖に反応性の官能基(α)、例えば、ヒドロキシ基を有する共重合体と、この反応性官能基(α)と反応する官能基(β)、例えば、イソシアネート基を有し、かつエチレン性不飽和基を有する化合物と反応させることで得られる。反応性官能基βとエチレン性不飽和基を有する化合物としては、代表的には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
上記官能基(α)と(β)の組み合わせは、例えば、求核置換反応の場合、一方が、求核剤で、他方が求電子剤である。
(メタ)アクリル共重合体は、少なくとも、(メタ)アクリル酸エステルから得られる単位構造において、このエステルのアルコール部にエチレン性不飽和基を有する単位構造を有する重合体が好ましい。
また、上記(メタ)アクリル共重合体は、上記単位構造に加えて、アルコール部にエチレン性不飽和基を有さない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、その他のエチレン性不飽和基を有するモノマーから得られる繰り返し単位を有することが好ましい。このうち、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸から得られる繰り返し単位を有することが好ましい。
特に、アルコール部の炭素数が8〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから得られる繰り返し単位を有することが好ましい。
側鎖にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマー成分中、炭素数が8〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分の割合は、45〜85モル%が好ましく、50〜80モル%がより好ましい。
放射線重合性低分子量化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等の(メタ)アクリレート化合物を広く適用可能である。
放射線によりマスク材層を重合硬化させるには、光ラジカル重合開始剤を使用することで、効率よく重合反応を進行させることができ、好ましい。
光ラジカル重合開始剤は、アルキルフェノン型重合開始剤、ジアリールケトン型重合開始剤、ジアシル型重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型重合開始剤、オキシムエステル型重合開始剤、ハロゲン化アルキル置換−1,3,5−トリアジン型重合開始剤、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体(ロフィン二量体)が挙げられる。
本発明では、α位にヒドロキシ基を有するアルキルもしくはシクロアルキルフェノンが好ましい。
光ラジカル重合開始剤は、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を用いることができる。これらのうち少なくとも1種類をマスク材層に添加することにより、効率よく重合反応を進行させることができる。
放射線硬化型マスク材層を形成する樹脂においても、樹脂は硬化剤で硬化されていることが好ましい。特に、側鎖にエチレン性不飽和基を有する樹脂の場合、マスク材層形成用組成物に硬化剤を含有させて樹脂を硬化するのが好ましい。
硬化剤は、感圧型で挙げた硬化剤が好ましく、硬化剤の添加量は、含有する硬化前の樹脂、例えば(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が適当である。本発明のマスク一体型表面保護テープのマスク材層において、硬化剤は(メタ)アクリル共重合体と反応した状態にある。
本発明では、マスク材層は紫外線吸収成分を含有する。紫外線吸収成分としては、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
紫外線吸収剤は樹脂に対する相溶性に優れ、透明性が高く、少量の添加で紫外領域のレーザー光に対し高い吸収性能を有するため、本発明に好適に利用できる。
これらの紫外線吸収剤は、例えば、トリアジン骨格を有する化合物として、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は、所望のレーザー光吸収性能に応じて調整すればよく、(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.1〜5.0質量部が適当である。
本発明のマスク一体型表面保護テープは、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられたマスク材層とを少なくとも有する。すなわち、表面保護テープの粘着剤層上にマスク材層を有する。
粘着剤は、放射線硬化型粘着剤および感圧型粘着剤のいずれでもよいが、マスク材層が放射線硬化型である場合、感圧型粘着剤が好ましく、マスク材層が感圧型である場合、放射線硬化型粘着剤が好ましい。
このため、本発明では、マスク材層が放射線硬化型であるため、感圧型粘着剤が好ましい。
また、デバイスの種類にもよるが、粘着剤層の厚さは、マスク材層の厚さ以上が好ましく、マスク材層の厚さより厚い場合が、より好ましい。
分図1(b)、(c)において、マスク一体型表面保護テープ3は基材フィルム3aa上に粘着剤層3abを有し、この粘着剤層3ab上にマスク材層3bを有する。
ここで、基材フィルム3aaと粘着剤層3abが表面保護テープ3aである。
本発明では、特に、下記工程(a)〜(d)を含む工程で、半導体チップを製造することが好ましい。
(a)マスク一体型表面保護テープを半導体ウェハのパターン面側に貼り合せた状態で、半導体ウェハの裏面を研削し、研削した半導体ウェハの裏面にウェハ固定テープを貼り合せ、リングフレームで支持固定する工程、
(b)マスク一体型表面保護テープから基材フィルムを剥離するか、または、基材フィルムと前記粘着剤層とを一体に剥離することで、マスク材層を表面に露出させた後、マスク材層のうち半導体ウェハのストリートに相当する部分をレーザーにより切断して半導体ウェハのストリートを開口する工程、
(c)プラズマ(例えばSF6プラズマ)により半導体ウェハをストリートで分断して半導体チップに個片化するプラズマダイシング工程、および、
(d)プラズマ(例えばO2プラズマ)によりマスク材層を除去するアッシング工程
(e)ウェハ固定テープから半導体チップをピックアップする工程
(f)ピックアップした半導体チップをダイボンディング工程に移行する工程
なお、下記の実施形態に用いる装置およびマスク一体型表面保護テープ以外の材料は、特に断りのない限り、従来から半導体ウェハの加工に用いられている通常の装置および材料等を使用することができ、その使用条件も通常の使用方法の範囲内で目的に応じて適宜に設定、好適化することができる。また、各実施形態で共通する材質、構造、方法、効果などについては重複記載を省略する。
本発明が適用される製造方法の第1の実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
なお、これらの図は、前記のように、層構成を示す模式図であって、基材フィルム、粘着剤層、マスク材層の各厚さを実態に即して反映するものではない。基材フィルムや、各層の厚さは、既に記載したマスク一体型表面保護テープで説明されている内容が適用される。
なお、レーザーはCO2やYAGなど特に限定されるものではないが、なかでもYAGレーザーの第3高調波である355nmの紫外線領域のレーザーは各種材質に対して吸収率が非常に高く、熱ストレスをかけないため、高品質を求められる微細加工に使用され、ビーム径が長波長レーザーと比べ絞られるため、より微細な加工が可能であり、本発明に好適に利用できる。
また、マスク材層3bをO2プラズマで除去できるため、プラズマダイシングを行う装置と同じ装置でマスク部分の除去ができる。加えてパターン面2側(表面S側)からプラズマダイシングを行うため、ピッキング作業前にチップの上下を反転させる必要がない。これらの理由から設備を簡易化でき、プロセスコストを大幅に抑えることができる。
本実施形態では第1実施形態における表面保護テープ3aを剥離する工程の前に、マスク一体型表面保護テープ3に紫外線等の放射線を照射してマスク材層や粘着剤層を硬化させる工程を含む点で第1実施形態と異なる。その他の工程は第1実施形態と同じである。
なお、本発明では、粘着剤層でなく、マスク材層を硬化させることが好ましい。
なお、紫外線の照射は、例えば、紫外線を積算照射量500mJ/cm2となるように、マスク一体型表面保護テープ全体に、基材フィルム側から照射する。紫外線照射には高圧水銀灯を用いることが好ましい。
マスク材層3bを紫外線等で硬化させることにより、表面保護テープ3aとマスク材層3bとの剥離が容易になる。
<マスク一体型表面保護テープの作製>
アクリル酸20mol%、2−エチルヘキシルアクリレート75mol%、メチルアクリレート5mol%を混合し、酢酸エチル溶液中で重合することにより(メタ)アクリル共重合体(質量平均分子量:50万、水酸基価:0mgKOH/g、酸価:48.8mgKOH/g、Tg:−45℃)を合成した。
この(メタ)アクリル共重合体の溶液に該共重合体100質量部に対して、硬化剤としてTETRAD−X〔三菱ガス化学(株)社製、エポキシ系硬化剤〕を0.5質量部配合し、粘着剤組成物Aを得た。
得られた共重合体に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート〔商品名:カレンズMOI、昭和電工(株)社製〕を付加することで、エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体b(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.90meq/g、水酸基価:33.8mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)を得た。
このエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体b100質量部に対し、硬化剤としてコロネートL〔日本ポリウレタン工業(株)社製、イソシアネート系硬化剤〕を0.5質量部、光ラジカル重合開始剤としてイルガキュア184(BASF社製)を2.0質量部配合し、紫外線吸収剤としてLA−F70(株式会社ADEKA製、トリアジン骨格の紫外線吸収剤)を0.75質量部配合し、マスク材層形成用組成物Bを得た。
ラミネータDR8500III〔商品名:日東精機(株)社製〕を用いて、スクライブライン(ストリート)付シリコンウェハ(直径8インチ)表面に、上記で得られた紫外線硬化型のマスク一体型表面保護テープを貼り合わせた。
その後、DGP8760〔商品名:ディスコ(株)社製〕を用いて、上記マスク一体型表面保護テープを貼り合わせた面とは反対の面(ウェハの裏面)を、ウェハの厚さが50μmになるまで研削した。研削後のウェハを、RAD−2700F〔商品名:リンテック(株)社製〕を用いて、ウェハ裏面側からダイシングテープ(ウェハ固定テープ)上にマウントし、リングフレームにて支持固定した(工程(a))。
次に355nm波長のYAGレーザーでスクライブライン上のマスク材層を除去し、スクライブラインを開口した(工程(b))。
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体bの作製において、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート〔商品名:カレンズMOI、昭和電工(株)社製〕の付加量を調整することで、下記エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体c〜iを調製した。
続けて、マスク材層形成用組成物Bの作製において、エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体bに代えて、それぞれ、上記エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体c〜iを用いることで、マスク材層形成用組成物C〜Iを得た。
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体c(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.80meq/g、水酸基価:40.6mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体d(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.60meq/g、水酸基価:54.6mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体e(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.50meq/g、水酸基価:61.5mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体f(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.30meq/g、水酸基価:75.4mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体g(質量平均分子量:60万、二重結合量:1.00meq/g、水酸基価:26.8mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体h(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.20meq/g、水酸基価:82.4mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
エチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル共重合体i(質量平均分子量:60万、二重結合量:0.20meq/g、水酸基価:82.4mgKOH/g、酸価:5.5mgKOH/g、Tg:−43℃)
上記のようにして得られた各マスク材層3bの放射線硬化後の破断伸度および放射線硬化後の弾性率を、それぞれ下記の試験例1および2に従い測定した。
また、実施例1〜5、比較例1〜3で作製した各マスク一体型表面保護テープのレーザー照射によるウェハストリート部の開口性およびO2プラズマアッシングによるマスク材層の除去性を、下記の試験例3および4に従い評価した。
マスク材層の放射線硬化後の破断伸度は以下の方法で測定した。
上記で調製した各マスク材層形成用組成物を剥離ライナー上に塗工し、紫外線照射(500mJ/cm2)を行うことで、厚み30μmの、紫外線照射されたマスク材層を形成した。この紫外線照射されたマスク材層を、剥離ライナーを剥がして積層し(紫外線照射したマスク材層を50層、積層し)、厚さ1.5mmの紫外線照射されたマスク材層の積層体を作製した。積層したマスク材層から幅10mm、長さ50mmのサンプルを切り出し、JIS B 7721に適合する引張試験機を用いて、チャック間距離10mm、引張速度300mm/minでサンプルを引張り、マスク材層が破断した際の伸び量を測定した。
マスク材層の放射線硬化後の貯蔵弾性率は以下の方法で測定した。
上記で調製した各マスク材層形成用組成物を剥離ライナー上に塗工し、紫外線照射(500mJ/cm2)を行うことで、厚み30μmの、紫外線照射されたマスク材層を形成した。この紫外線照射されたマスク材層を、剥離ライナーを剥がして積層し(紫外線照射したマスク材層を100層、積層し)、厚さ3mmの紫外線照射されたマスク材層の積層体を作製した。積層したマスク材層から8mmφ×3mmのサンプルを切り出し、円柱測定器:DYNAMIC ANALYZER RDA II (REOMETRIC 社製)を用いて、測定周波数:1Hzの条件で捻り剪断法にてマスク材層の貯蔵弾性率G’を測定した。
上記半導体チップの製造工程の工程(b)において、各実施例および比較例で、マスク材層に355nmのYAGレーザーを照射して、マスク材層のストリートに相当する部分を除去した際の、半導体ウェハのストリート部の開口性を下記評価基準により評価した。
具体的には、平均出力2.5W、繰り返し周波数1kHzのYAGレーザーの第三高周波(355nm)をfθレンズによりシリコンウェハ表面に25μm径に集光して、ガルバノスキャナーによりレーザー光を照射した。また、レーザー光は、2.5mm/秒の速度でスキャンして、1ラインあたり2回のレーザー照射を繰り返した。
◎:ストリートが開口可能であり、マスク材層の残渣物が生じなかった
○:ストリートが開口可能であったが、マスク材層の残渣物が少量生じた
△:ストリートが開口可能であったが、マスク材層の残渣物が多量に生じた
×:マスク材層が除去できず、ストリートの開口が不可能であった
上記半導体チップの製造工程の工程(d)において、各実施例および比較例でのO2プラズマアッシング(1.5μm/分のエッチング速度で10分間アッシング)後のマスク材層の残留の有無を、レーザー顕微鏡〔商品名:VK−X100、キーエンス(株)社製〕を用い、表面の横640μm×縦480μmの範囲における3次元情報(拡大率400倍)で調べた。
○:マスク材層の残留が観測されない(残留無)
×:マスク材層の残留が明らかに観測される(残留有)
しかも、本発明のマスク一体型表面保護テープを用いることにより、半導体ウェハのストリートをレーザー照射で問題なく開口でき、さらに、マスク材層3bはO2プラズマによってより確実に除去することができ、レーザー加工時におけるデブリ発生の防止に優れ、不良チップの発生を高度に抑制できることがわかった。
2 パターン面
3 マスク一体型表面保護テープ
3a 表面保護テープ(基材フィルムと粘着剤層)
3aa 表面保護テープの基材フィルム
3ab 表面保護テープの粘着剤層
3b マスク材層
4 ウェハ固定テープ
7 チップ
S 表面
B 裏面
M1 ウェハ研削装置
M2 ピン
M3 コレット
F リングフレーム
L レーザー
P1 SF6ガスのプラズマ
P2 O2ガスのプラズマ
UV 紫外線
Claims (6)
- 基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層上に設けられたマスク材層とを少なくとも有するマスク一体型表面保護テープであって、前記マスク材層が放射線硬化型であって、前記マスク材層の放射線硬化後の破断伸度が50〜250%であり、前記マスク材層の放射線硬化後の貯蔵弾性率が100,000Pa以上であることを特徴とするマスク一体型表面保護テープ。
- 前記粘着剤層を構成する粘着剤が感圧型粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載のマスク一体型表面保護テープ。
- 前記基材フィルムが、ポリオレフィン樹脂層又はPET層を少なくとも有することを特徴とする請求項1または2に記載のマスク一体型表面保護テープ。
- プラズマダイシングに使用される請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスク一体型表面保護テープ
- 下記工程(a)〜(d)を含む半導体チップの製造に用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載のマスク一体型表面保護テープ
〔工程〕
(a)前記マスク一体型表面保護テープを半導体ウェハのパターン面側に貼り合せた状態で、該半導体ウェハの裏面を研削し、研削した半導体ウェハの裏面にウェハ固定テープを貼り合せ、リングフレームで支持固定する工程、
(b)前記マスク一体型表面保護テープから前記基材フィルムと前記粘着剤層とを一体に剥離することで、前記マスク材層を表面に露出させた後、該マスク材層のうち半導体ウェハのストリートに相当する部分をレーザーにより切断して半導体ウェハのストリートを開口する工程、
(c)プラズマにより前記半導体ウェハを前記ストリートで分断して半導体チップに個片化するプラズマダイシング工程、および、
(d)プラズマにより前記マスク材層を除去するアッシング工程 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のマスク一体型表面保護テープを用いることを特徴とする半導体チップの製造方法。
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