本実施例は、建設現場での作業者のモニタリングシステムについて説明する。
図1は、本実施例の前提となる、ビーコンと作業者、基地局との関係を示した図である。図1において、所定のエリアに設置されたビーコン1は各エリアの位置情報を示す固有のビーコン信号(ビーコンID)111を発信する。作業者10は作業者端末20を各自のヘルメットあるいはベルト等所定の位置に取り付けており、その作業者端末20は、作業者が存在するエリアの位置情報(ビーコンID)をビーコン1から受信して、作業者IDとビーコンIDを基地局30に送信する(211)。これにより、基地局30で、その作業者の所在地を把握できる。なお、基地局30は、危険場所に立ち入った場合とか、別途、熱中症の危険度を示す暑さ指数WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)を計測する機器(図示せず)からの信号を基に熱中症環境にいる場合などに、警報311を作業者端末20に送信する。これにより、作業者の作業実態の把握や作業者の状態把握ができる。また、作業者端末には、危険場所や立入禁止区域に作業者が入った場合、作業者に音声等で警報を発する機能もあり、基地局から作業者に警報信号を発信せずとも、端末単独で端末を携帯している作業者に警報を発することができる。
図2は、本実施例における作業者端末の構成ブロック図である。図2において、作業者端末20は、CPU201、メモリ202、センサー203、通信部204、スピーカ205、電池206を有する。メモリ202には、CPU201で処理するオペレーティングシステムなどの基本動作プログラムやその他の処理プログラムを格納する。センサー203は、温度や気圧等を測定する計測器である。通信部204は、ビーコンからの信号を受信するビーコン信号受信部と、基地局からの送信信号を受信する受信部と、基地局にエリア信号を送信するエリア信号送信部と、基地局に警報信号を送信する警報信号送信部を有している。スピーカ205は、例えば、警報を発信する。また、電池206は、作業者端末の電源を賄う。CPU201は、メモリ202に記憶された処理プログラムにより作業者端末20の全体制御を行う。
図3は、本実施例における作業者端末の機能ブロック図である。図3において、作業者端末20は、通信処理部210、ビーコン信号処理部220、センサー信号処理部230、記憶部240からなる。通信処理部210は、図2の通信部204により、ビーコン信号受信、エリア信号送信、警報信号送信、センサー信号送信等の処理を行う。ビーコン信号処理部220は、受信したビーコン信号からビーコン信号を判別しエリア信号の抽出処理を行う。また、センサー信号処理部230は、センサー203からの信号を変換し、センサー信号抽出処理を行う。また、記憶部240はメモリ202にエリア信号やセンサー信号、警報信号等を記憶させる処理を行う。また、ビーコンから発信されるビーコン信号を受信した際に、作業者にビーコン信号を受信したことを知らせる機構を備えてもよい。また、ビーコン信号を受信したことを基地局へ送信する機構を備えてもよい。
図4は、本実施例における基地局の構成ブロック図である。図4において、基地局30は、CPU301、メモリ302、通信部303を有する。メモリ302には、CPU301で処理するオペレーティングシステムなどの基本動作プログラムやその他の処理プログラムを格納する。通信部303は、作業者端末からの信号を受信する作業者端末信号受信部と、作業者端末に信号を送信する送信部を有している。CPU301は、メモリ302に記憶された処理プログラムにより基地局30の全体制御を行う。
図5は、本実施例における基地局の機能ブロック図である。図5において、基地局30は、通信処理部310、データ格納部320、作業者特定部330、エリア特定部340、作業分析処理部350、異常管理部360からなる。通信処理部310は、図4の通信部303により、作業者端末からの信号受信、作業者端末への信号送信等の処理を行う。データ格納部320は、作業者端末から送信されたデータを格納する。作業者特定部330は、作業者端末からの作業者IDから作業者を特定する処理を行う。また、エリア特定部340は作業者端末からのエリア信号から作業者の所在エリアを特定する処理を行う。また、作業分析処理部350は、後述する、作業者の所在情報から作業実態の把握や作業者の状態把握を行い、生産性演算や、作業者最適化処理、作業改善提案処理等を行う。なお、これらの処理は、複数の現場データを一括処理する情報システムに送り処理することも出来る。また、異常管理部360は、作業者端末からの警報情報やセンサー信号により、異常処理を行う。
図6は、建設現場における、ビーコンによる作業者の所在検知を示す概略図である。図6において、100は建設現場にある建設対象の建屋であり、各フロアにビーコン1が設置される。ここで、作業者10がビーコン1−6の受信エリア200にいる場合は、受信エリア200に対応するビーコン1−6のビーコンIDを、作業者10が装着している作業者端末20が受信し、作業者端末20は、作業者IDとビーコンIDを現場事務所にある基地局30に送信する。これにより、現場事務所では、管理PCなどにより、作業者の位置表示、状態推定、生産性分析や、それらのデータベース化を実施できる。なお、作業者端末20にGPS信号受信機能を備え、受信したGPS情報を基地局30に送信することで、建屋100の外に作業者10がいる場合でも屋内外でシームレスに作業者モニタリングが可能となる作業者モニタリングシステムとしてもよい。
ここで、建設現場では、作業工程の変化に伴い、作業者の作業場所が変化するため、エリアの位置情報を示す固有の信号(ビーコンID)を発信するビーコンの配置計画が必要となる。本実施例では、ビーコンの配置計画は、(1)建設工程と、(2)工程の各アクティビティ(作業)に係わる作業者リストと、(3)建設の進展に伴う出来姿を表示する3DCAD(3 Dimensional Computer Aided Design)システムにより作成する。さらに、作業当日の作業エリア割当に対しては、日々の作業指示書があるので、モニタリングするエリアの詳細選定には、作業指示書を参考にする場合もある。ここで、本実施例では、前記した出来姿を表示する3DCADシステムには2つあり、1つは、工程計画に基づきコンピュータ画面上で対象建屋を建てていくもの、つまり、工程に基づく建設シミュレーションを行うもの(以降、CAD(1)と称す)である。もう1つは、実際の現場の進展を出来姿としてコンピュータ画面上に表すもの(以降、CAD(2)と称す)である。CAD(1)では、建設が始まる前に、ビーコン数を把握するために工程計画に基づいた建設シミュレーションの画面で、ある時点ごとのビーコン配置を検討する。CAD(2)では、実際に建設が始まった現場状態を表すもので、実際のビーコンの配置計画である、ビーコン配置計画の再検討を行う。
図7から図10は、CAD(1)における、各工程に基づく建設シミュレーションでのビーコン配置計画の設定を説明する図である。
まず、図7において、(A)は工程、(B)は処理フロー、(C)はCAD画面を示している。図7は、(A)に示すように、エリアBにおける機器搬入を終えた時点でのビーコン配置の決定を説明する図である。図7においては、(C)に示すように、建屋100に機器120を搬入した状態での鉄骨110上でのビーコン1−1の設置位置を決定する場合を示す。図7(B)において、工程のデータベースから機器名称を取り込み、機器リストデータベースから機器登録番号を取り込み、CADとして、該当機器配置位置と、該当機器配置位置の上部鉄骨位置を出力し、図7(C)に示すように、該当機器配置エリア表示と上部鉄骨表示を行ない、機器120の上部の上部鉄骨110上にビーコン1−1を表示する。これにより、次の作業である機器固定を行う作業者の所在検知を行うことができるビーコン1−1の配置位置を決定する。
図8は、図8(A)の工程に示すように、機器固定の作業中であり、B−1配管の搬入が完了した時点でのビーコン配置の決定を説明する図である。図8においては、(C)に示すように、B−1配管130を搬入した状態での鉄骨110上でのビーコンの設置位置を決定する場合を示す。図8(B)において、該当機器配置エリア表示と上部鉄骨表示を行なうまでは図7(B)と同じであるが、B−1配管130の上部の上部鉄骨110上にビーコン1−2、1−3、1−4を表示する。なお、ビーコンの設置間隔は規定値とする。これにより、次の作業であるB−1仮設足場設置、B−2仮設足場設置を行う作業者の所在検知を行うことができるビーコン1−2、1−3、1−4の配置位置を決定する。
図9は、図9(A)の工程に示すように、B−1仮設足場設置、及び、B−2仮設足場設置の作業中であり、機器固定が完了した時点でのビーコン配置の決定を説明する図である。図9においては、(C)に示すように、B−1仮設足場設置、及び、B−2仮設足場設置の作業中であり、機器固定が完了した状態での鉄骨110上でのビーコンの設置位置を決定する場合を示す。図9(B)において、CAD上の足場計画から足場データを取り込み、CADとして、該当足場配置位置と、該当足場配置位置の上部鉄骨位置を出力し、図9(C)に示すように、該当足場配置エリア表示と上部鉄骨表示を行ない、B−1仮設足場140及びB−2仮設足場150の上部の上部鉄骨110上にビーコン1−2、1−3、1−4を表示する。また、機器120の上部のビーコン1−1を取り外す。これにより、作業終了した工程のためのビーコンを削除し、次の作業である配管取付けを行う作業者の所在検知を行うことができるビーコン1−2、1−3、1−4の配置位置を決定する。
図10は、図10(A)の工程に示すように、B−1系統配管取付け、B−2系統配管取付けが完了した時点でのビーコン配置の決定を説明する図である。図10においては、(C)に示すように、B−1系統配管取付け、B−2系統配管取付けが完了した状態でのビーコンの設置位置を示す。図10(B)において、B−1系統配管取付け、及び、B−2系統配管取付けが終了したので、足場上部のビーコンを削除する。これにより、エリアBの作業が終了したので、図10(A)のビーコン数の欄に示すように、工程とともにエリアBのビーコン数を推定、集計し、建設開始前のビーコン配置計画データベースを作成する。
図11は、CAD(2)における、実際に建設が始まった現場状態を反映させて、実際のビーコン配置計画の再設定を説明する図である。図11において、ステップS71は、前述の図7から図10で説明した、CAD(1)における各工程に基づく建設シミュレーションにより建設開始前のビーコン配置計画データベースを作成する。次に、ステップS72で、建設進捗データベースから建設進捗データを取り込みCAD化する。次に、ステップS73で、工程表データベースから取り込んだ、例えば1週間分の工程表のアクティビティ(作業)と作業者登録データベースから取り込んだ関係作業者と作業エリア別担当データベースから取り込んだ作業場所を作業者の配置計画に基づき関連付けを行う。
ここで、図12は、作業者登録データベースの例であり、作業者の所属会社、氏名、作業者登録番号、職種のデータが蓄積されている。また、図13は作業エリア別担当データベースの例であり、作業エリア毎に、作業日、作業内容、作業者の所属会社、氏名、作業者登録番号、作業者端末IDのデータが蓄積されている。
そして、図11のステップS74で、該当する作業場所を3DCADで画面表示する。ステップS75では、ビーコン設置者が3DCAD画面を見て実際に作業に必要な作業エリアを特定する。そして、ステップS76で、作業エリア環境によるビーコン信号伝播範囲を推定する。ここで、作業者が作業する作業エリアとは、壁状のものに囲まれた領域を示す場合もあれば、壁のない広いフロアの中に作業あるいは把握したい領域の広さによって仮想的に分割領域を示す場合もある。そして、ビーコンの信号伝播範囲は、周りの環境に影響され、金属が多い場合で電波反射・吸収で所定の信号伝播範囲を得られない場合がある。また、把握したい作業者の作業が広いエリアで行われる場合、または、比較的広いエリアの作業者を把握したい場合は、ビーコンの信号強度を強くしビーコンが網羅できる範囲を広くする必要がある。逆に、把握したい作業者の作業が狭いエリアで行われる場合、または、比較的狭いエリアの作業者を把握したい場合は、ビーコンの信号強度を弱くしビーコンが網羅できる範囲を狭くする必要がある。したがって、ビーコン設置計画には、把握したい作業エリアの広さと周りの環境が電波に与える影響を考慮する必要があり、周りの環境が電波に与える影響を検討するために本実施例では、電波伝搬シミュレーションを行う。
図14は、作業エリア環境によるビーコン信号伝播が異なる例を示した説明図である。図14において、同じ広さのエリアCとエリアDにおいて、エリアCに対してエリアDは物が多く電波障害が大きい場合は、エリアCはビーコン1−3の1つでカバーするが、エリアDは、ビーコン1−1と1−5の2つでカバーする必要がある。
図11のステップS77では、ステップS76で推定したビーコン信号伝播範囲を基に、ステップS71で作成した建設開始前ビーコン配置計画データと照合し、ステップS78でビーコン配置計画でビーコン信号の伝播に問題がないかを判断し、問題があれば、ステップS79に進み、ビーコン配置計画を修正し、ビーコンの位置修正や、足りない場合はビーコン追加を行い、ビーコン設置エリアとビーコンIDの対応データベースを修正し、ステップS80で設置ビーコンを確定する。
図15は、ビーコン設置エリアとビーコンIDの対応データベースの例であり、ビーコンID、ビーコン設置のエリア名称、ビーコン座標、ビーコン固定場所、ビーコン設置計画者名、ビーコン設置者名から構成される。ビーコンIDは、取り外すとIDはクリアされ、未使用のビーコンとなり、ビーコンの設置追加は未使用のビーコンにビーコンIDを付与することで追加される。
図11のステップS81では実際の建設現場にてビーコンを設置できるかの確認を含めてビーコンを設置し、ステップS82で実際のビーコン設置場所をビーコン設置エリアとビーコンIDの対応データベースに登録する。
このように、本実施例は、実際の現場の進展を出来姿としてコンピュータ画面上に表し、ビーコンの配置計画を作成するものである。図16は、コンピュータ画面上に実際の現場の進展を出来姿として表示した例である。図16において、(A)は工程であり、(B)は工程a時点でのエリアBの出来姿である。すなわち、工程a時点では、機器固定の途中であり、B−1仮設足場設置とB−2仮設足場設置と、B−1系統配管取付の開始段階である。そのため、機器固定のための作業を行う作業者10の位置確認を行うために、機器120の上部にビーコン1−1を設置し、B−1仮設足場設置とB−2仮設足場設置を行ない、B−1配管130の取付作業を行う作業者10の位置確認を行うために、B−1仮設足場140及びB−2仮設足場150の上部にビーコン1−2、1−3、1−4を設置するように表示する。
以上のように、本実施例によれば、実際の現場の進展の出来姿を見てビーコン配置計画が実行できるので、工程と出来姿の関係を熟知している建設熟練者によらずともビーコンの配置計画が実現できる。また、ビーコン配置が時系列的に3DCADの記録に残るだけでなく、電波シミュレーション結果もデータベース化でき、類似の建設案件に対しては、ビーコン配置計画の自動化も可能となる。
本実施例は、実施例1で設定したビーコン配置計画に基づいてビーコンを設置した後に、作業者端末20を用いて、作業者がどのエリアにいるのかを把握することができ、作業者がどのような動作、作業状態で作業を行っているかを推定することができるモニタリングシステムについて説明する。
図17は本実施例における作業者の所在エリアの特定の処理フローである。図17において、まず作業者は現場入所時に、作業者端末を各自のヘルメットあるいはベルト等所定の位置に取り付ける。システムとしては、作業者の登録番号と、それに紐付けられたIDを発信する作業者端末を登録する。
そして、作業現場では、作業者端末がビーコンIDを受信し、作業者端末はビーコンIDと作業者端末IDを一体化したデータを基地局へ送信する。
基地局では、ビーコンIDと作業者端末IDを一体化したデータを受信し、ビーコン設置エリアとビーコンIDの対応DBと受信したビーコンIDから該当所在エリアを特定し、受信データの作業者端末IDから作業者を特定する。そして、作業者モニタリングデータベースへ登録し、該当する作業エリアのCADデータ上に、作業者をマーキングする。
図18は本実施例における作業者モニタリングデータベースの例であり、作業者IDと、時刻に対応した作業者の所在エリア名称がデータベースとして蓄積される。すなわち、作業者数と、各作業者の所在エリアの滞在時間が蓄積される。
図19は本実施例における作業者の分析の例を示す処理フローである。図19において、まず、ステップS91で受信データの作業者端末IDから作業者を特定し、作業指示書から該当作業者のその日の作業と作業場所を抽出する。そして、抽出した作業場所と作業者の実際の所在を照合する。そして、ステップS92で作業者の実際の所在エリアが設定された作業場所であるかを判定する。不一致であれば、ステップS93で当該作業者に対して作業外と記録し、ステップS95に進む。所在エリアが設定された作業場所である場合は、ステップS94で当該作業者に対し作業中と記録し、ステップS95に進む。
ステップS95では、当該作業者に対し作業外が多いかを所定値と比較して判定し、作業外が少なければ、ステップS97に進む。作業外が多ければ、ステップS96で作業者との作業改善の実施を行い、ステップS97に進む。ステップS97では、出来高情報から作業対象の開始・終了期間を抽出し、作業者モニタリングデータベースから作業者数、作業者の滞在時間をもとに稼働率を抽出し、開始・終了期間と稼働率を加味したのべ作業者数から作業対象に対する生産性を演算し、データベース化する。
以上のように、本実施例によれば、作業者の作業実態の把握や作業者の状態把握ができ、生産性演算により生産性効率向上に貢献できるが、さらに作業者位置把握と作業者データとのリンクによる作業者最適化処理や作業改善提案処理、さらに作業者の状態把握により作業安全の向上に貢献できる。
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。