以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。
図1(a)、(b)は、画像表示装置20の使用形態を模式的に示す図である。図1(a)は、乗用車1の側方から乗用車1の内部を透視した模式図、図1(b)は、乗用車1の内部から走行方向前方を見た図である。
本実施形態は、車載用のヘッドアップディスプレイに本発明を適用したものである。図1(a)に示すように、画像表示装置20は、乗用車1のダッシュボード11の内部に設置される。
図1(a)、(b)に示すように、画像表示装置20は、映像信号により変調された光を、ウインドシールド12下側の運転席寄りの投射領域13に投射する。投射された光は、投射領域13で反射され、運転者2の目の位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に照射される。これにより、運転者2の前方の視界に、虚像として所定の画像30が表示される。運転者2は、ウインドシールド12の前方の景色上に、虚像である画像30を重ね合わせて見ることができる。すなわち、画像表示装置20は、虚像である画像30をウインドシールド12の投射領域13の前方の空間に結像させる。
図1(c)は、画像表示装置20の構成を模式的に示す図である。
画像表示装置20は、照射光生成部21と、ミラー22とを備える。照射光生成部21は、映像信号により変調された光を出射する。ミラー22は曲面状の反射面を有し、照射光生成部21から出射された光をウインドシールド12に向けて反射する。ウインドシールド12で反射された光は、運転者2の目2aに照射される。照射光生成部21の光学系とミラー22は、ウインドシールド12の前方に虚像による画像30が所定の大きさで表示されるように設計されている。
ミラー22は、後述するスクリーン110、111から生じた光により虚像を生成するための光学系を構成する。この光学系は、必ずしも、ミラー22のみから構成されていなくてもよい。たとえば、この光学系が、複数のミラーを含んでいてもよく、また、レンズ等を含んでいてもよい。
図2は、画像表示装置20の照射光生成部21の構成および照射光生成部21に用いる回路の構成を示す図である。
照射光生成部21は、光源101と、コリメータレンズ102a〜102cと、アパーチャ103a〜103cと、ミラー104と、ダイクロイックミラー105a、105bと、サンプリングミラー106と、光検出器107と、走査部108と、補正レンズ109と、スクリーン110、111とを備える。
光源101は、3つのレーザ光源101a、101b、101cを備える。
レーザ光源101aは、635nm以上645nm以下の範囲に含まれる赤色波長のレーザ光を出射し、レーザ光源101bは、510nm以上530nm以下の範囲に含まれる緑色波長のレーザ光を出射し、レーザ光源101cは、440nm以上460nm以下の範囲に含まれる青色波長のレーザ光を出射する。
本実施形態では、画像30としてカラー画像を表示するため、光源101がこれら3つのレーザ光源101a、101b、101cを備える。レーザ光源101a、101b、101cは、たとえば、半導体レーザからなっている。画像30として単色の画像を表示する場合、光源101は、画像の色に対応する1つのレーザ光源のみを備えていてもよい。また、光源101は、出射波長の異なる2つのレーザ光源を備える構成であってもよい。
レーザ光源101a、101b、101cから出射されたレーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ102a〜102cによって平行光に変換される。コリメータレンズ102a〜102cを透過したレーザ光は、それぞれ、アパーチャ103a〜103cによって、略同じサイズの円形のビームに整形される。すなわち、アパーチャ103a〜103cは、レーザ光源101a、101b、101cからそれぞれ出射されたレーザ光のビームサイズおよびビーム形状を揃えるためのビーム整形部を構成する。
なお、コリメータレンズ102a〜102cに代えて、レーザ光を円形のビーム形状に整形し且つ平行光化する整形レンズを用いてもよい。この場合、アパーチャ103a〜103cは省略され得る。
その後、レーザ光源101a、101b、101cから出射された各色のレーザ光は、ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bによって光軸が整合される。ミラー104は、コリメータレンズ102aを透過した赤色レーザ光を略全反射する。ダイクロイックミラー105aは、コリメータレンズ102bを透過した緑色レーザ光を反射し、ミラー104で反射された赤色レーザ光を透過する。ダイクロイックミラー105bは、コリメータレンズ102cを透過した青レーザ光を反射し、ダイクロイックミラー105aを経由した赤色レーザ光および緑色レーザ光を透過する。ミラー104と2つのダイクロイックミラー105a、105bは、レーザ光源101a、101b、101cから出射された各色のレーザ光の光軸を整合させるように配置されている。
サンプリングミラー106は、ダイクロイックミラー105bを経由した赤色レーザ光、青色レーザ光および緑色レーザ光の大部分を透過し、これらレーザ光の一部(たとえば3%程度)を、それぞれ、光検出器107へと反射する。光検出器107は、受光したレーザ光の光量に応じた検出信号を画像制御回路201に出力する。
走査部108は、サンプリングミラー106を透過した各色のレーザ光を反射する。走査部108は、たとえば、MEMS(micro electro mechanical system)ミラーからなっており、サンプリングミラー106を透過した各色のレーザ光が入射されるミラー108aを、駆動信号に応じて、X軸に平行な軸と、X軸に垂直かつミラー108aの反射面に平行な軸の周りに回転させる。このようにミラー108aを回転させることにより、レーザ光の反射方向が、X−Z平面に平行な方向およびY−Z平面に平行な方向において変化する。これにより、後述のように、各色のレーザ光によってスクリーン110、111が2次元に走査される。
なお、ここでは、走査部108が、2軸駆動方式のMEMSミラーにより構成されたが、走査部108は、他の構成であってもよい。たとえば、互いに垂直な2つの軸の周りにそれぞれ回動される2つのミラーを組み合わせて走査部108が構成されてもよい。
補正レンズ109は、走査部108によるレーザ光の振り角に拘わらず、各色のレーザ光をZ軸正方向に向かわせるように設計されている。補正レンズ109は、たとえば、複数のレンズを組み合わせて構成される。
スクリーン110、111は、レーザ光が走査されることにより画像が形成され、入射したレーザ光を運転者2の目2aの位置周辺の領域(アイボックス領域)に拡散させる作用を有する。スクリーン110、111は、マイクロレンズアレイや拡散板等から構成され得る。スクリーン110、111は、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明な樹脂から構成され得る。
スクリーン110、111は、駆動部300によってZ軸方向、すなわち、各色のレーザ光の進行方向に平行な方向に駆動される。スクリーン110は、奥行き方向に視差のある画像を表示するためのものであり、スクリーン111は、奥行き方向に視差のない画像を表示するためのものである。スクリーン110、111は、境界がY方向に略重なった状態で、Z軸方向に互いに離れるように配置される。スクリーン110、111は、駆動部300によって一体的にZ軸方向に駆動される。駆動部300は、たとえば、コイルと磁気回路を備え、コイルに生じた電磁力によってスクリーン110、111を保持するホルダを駆動する。駆動部300の構成は、追って、図9(a)〜図11(b)を参照して説明する。
スクリーン110、111を移動させながら各色のレーザ光によりスクリーン110に画像が描画されることにより、ウインドシールド12の前方に、奥行き方向に視差のある画像が表示される。これにより、運転者2は、たとえば、進行方向を示す矢印の画像を路上に重なった状態で見ることができる。
また、スクリーン110、111をZ軸方向の所定位置に静止させた状態で、各色のレーザ光によりスクリーン111に画像が描画されることにより、ウインドシールド12の前方に、視差のない画像が表示される。これにより、運転者2は、ウインドシールド12のやや奥に、車速や外気温等の情報を含む静止画を見ることができる。
スクリーン110、111の全体に表示される画像が1フレームの画像を構成する。スクリーン110、111の構成および走査方法は、追って、図3(a)、(b)を参照して説明する。
画像制御回路201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理ユニットやメモリを備え、入力された映像信号を処理してレーザ駆動回路202、ミラー駆動回路203およびスクリーン駆動回路204を制御する。また、後述のように、画像制御回路201は、光検出器107により検出された光量および温度センサ121により検出された環境温度に基づいて、レーザ光源101a〜101cを駆動するための電流値を補正する。これについては、追って、図4(a)〜図7を参照して説明する。
レーザ駆動回路202は、画像制御回路201から入力される制御信号に応じて、レーザ光源101a、101b、101cの出射強度を変化させる。ミラー駆動回路203は、画像制御回路201からの制御信号に応じて、走査部108のミラー108aを駆動する。スクリーン駆動回路204は、画像制御回路201からの制御信号に応じて、駆動部300を駆動する。
図2に示すように、レーザ光源101a、101b、101cは、1つの回路基板120に設置されている。回路基板120には、さらに、レーザ光源101a、101b、101cの設置位置付近の温度(環境温度)を検出するための温度センサ121が設置されている。温度センサ121は、赤色波長のレーザ光を出射するレーザ光源101aの周辺に設置されている。すなわち、温度センサ121は、その他2つのレーザ光源101b、101cよりもレーザ光源101aに接近する位置に配置されている。レーザ光源101a、101b、101cごとに温度センサが配置されてもよい。
さらに、車外の明るさ(外光)を検出するための光検出器130が配置されている。この光検出器130からの検出信号が画像制御回路201に入力される。画像制御回路201は、光検出器130から入力される検出信号に基づいて、車外が明るい場合は高い輝度レベルで画像を表示し、車外が暗い場合は低い輝度レベルで画像を表示するように、画像30の輝度レベルを調節する。この他、画像制御回路201は、マニュアルで設定された輝度レベルの設定値によって、画像30の輝度レベルを調節する。
図3(a)は、スクリーン110の構成を模式的に示す斜視図である。
図3(a)に示すように、スクリーン110のレーザ光入射側の面には、レーザ光をX軸方向に発散させるための複数の第1のレンズ部110aが、X軸方向に一定ピッチで並ぶように形成されている。第1のレンズ部110aは、Y軸方向に平行に延びている。Y軸方向に見たときの第1のレンズ部110aの形状は略円弧形状である。第1のレンズ部110aのX軸方向の幅(第1のレンズ部110aのピッチ)は、たとえば、50μmである。
また、スクリーン110のレーザ光出射側の面には、レーザ光をY軸方向に発散させるための複数の第2のレンズ部110bが、Y軸方向に一定ピッチで並ぶように形成されている。第2のレンズ部110bは、X軸方向に平行に延びている。X軸方向に見たときの第2のレンズ部110bの形状は略円弧形状である。第2のレンズ部110bのY軸方向の幅(第2のレンズ部110bのピッチ)は、たとえば、70μmである。第2のレンズ部110bのY軸方向の幅は、第1のレンズ部110aのX軸方向の幅と同じであってもよい。
第1のレンズ部110aの曲率半径Rxと第2のレンズ部110bの曲率半径Ryは、互いに異なっている。曲率半径Rxは、曲率半径Ryよりも小さく設定される。従って、第1のレンズ部110aによってレーザ光が収束された後発散される広がり角は、第2のレンズ部110bによってレーザ光が収束された後発散される広がり角よりも大きくなる。このように第1のレンズ部110aおよび第2のレンズ部110bの曲率を設定することにより、スクリーン110を透過するレーザ光を、運転者2の目2aの位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に導くことができる。第1のレンズ部110aおよび第2のレンズ部110bの曲率半径は、アイボックス領域の形状に応じて決定される。
スクリーン111も、スクリーン110と同様の構成である。ただし、スクリーン111は、Y軸方向の幅が、スクリーン110よりも短くなっている。
図3(b)は、スクリーン110、111と走査ラインの関係を模式的に示す図である。
上記構成を有するスクリーン110、111の入射面(Z軸負側の面)が、各色のレーザ光が重ねられたビームB1によって走査される。スクリーン110、111の入射面に対して、予め、ビームB1が通る走査ラインL1〜Lnが、Y軸方向に一定間隔で設定されている。上述のように、走査ラインL1〜Lnによって1フレームの画像が描画される。
ビームB1の径は、第2のレンズ部110bの幅よりも小さく設定される。たとえば、ビームB1の径は、35〜65μm程度に設定される。本実施形態では、ビームB1の径が、第2のレンズ部110bの幅のみならず、第1のレンズ部110aの幅よりも、小さくなっている。
このように設定された走査ラインL1〜Lnが、Y軸正側から順番にビームB1で走査される。走査ラインL1〜Ln上の各画素位置において、レーザ光源101a〜101cから各色のレーザ光が、所定のパルス幅でパルス発光される。このとき、パルス発光の出力値が、各画素位置における映像信号の輝度の階調値(画素値)に応じて調節される。具体的には、レーザ光源101a、101b、101cに印加される駆動電流が映像信号に応じて制御される。駆動電流のパルス幅は、所定の値に固定される。
こうして、スクリーン110、111がビームB1で2次元走査されることにより、スクリーン110、111に1フレーム分の画像が描画される。走査ラインL1から走査ラインLnまでの走査周期は、たとえば1/60秒である。上述のように、スクリーン110には、奥行き方向に視差のある画像を表示させるための画像が描画され、スクリーン111には奥行き方向に視差のない画像を表示させるための画像が描画される。スクリーン110、111上の画像が描画される領域は、表示画像(図1(a)の画像30)の歪み補正のため、矩形から歪んだ形状となる。
なお、スクリーン110、111のY軸方向の境界BR1付近は、表示画像の切り替えのため、表示画像の描画に用いられない。つまり、境界BR1付近に含まれる走査ラインには、画像描画用の映像信号が割り当てられない。
本実施形態では、境界BR1付近の走査ラインを用いて、各色のレーザ光源101a〜101cを駆動するための電流値が補正される。すなわち、各色のレーザ光源101a〜101cを目標光量で発光させる電流値の補正のために、境界BR1付近の走査ラインにおいて、各色のレーザ光源101a〜101cが複数回、パルス発光される。
なお、このように境界BR1付近でレーザ光源101a〜101cを発光させる場合、発光された各色のレーザ光がアイボックスにより導かれないように、境界BR1付近に遮光手段が設けられることが好ましい。本実施形態では、スクリーン110、111を保持するホルダに遮光手段が設けられている。遮光手段の構成については、追って、図11(a)、(b)を参照して説明する。
以下、レーザ光源101a〜101cを目標光量で発光させるための電流値を補正する方法について説明する。
まず、図4(a)、(b)を参照して、補正前の電流値の設定方法について説明する。
図4(a)は、赤色レーザ光を出射するレーザ光源101aの出力特性を示す図である。図4(a)において、横軸は、レーザ光源101aに印加される駆動電流の電流値、縦軸は、レーザ光源101aから出射されるレーザ光の出力値である。なお、レーザ光の出力値は、図2に示した光検出器107から出力される光量検出値により検出され得る。
図4(a)に示すように、レーザ光源101aの出力特性は、レーザ光源101aの温度に応じて変化する。ここでは、レーザ光源101a周囲の環境温度が、レーザ光源101aの温度として用いられている。レーザ光源101aは、電流値が0から所定の値(発光閾値)までの範囲において、レーザ光を略発光しない。電流値が発光閾値を超えると、電流値の増加に伴いレーザ光の出力値が増加する。レーザ光源101aの温度が高くなるに伴い、発光閾値が大きくなる。また、発光閾値よりも電流値が大きい範囲における特性グラフの傾きは、レーザ光源101aの温度が高くなるほど小さくなる。したがって、レーザ光源101aの温度が高くなるほど、同一駆動電流に対する光出力が低下する。
青色レーザ光および緑色レーザ光を出射するレーザ光源101b、101cの出力特性も、図4(a)と同様の傾向である。ただし、レーザ光源101b、101cの出力特性は、各温度の発光閾値および特性グラフの傾きが、レーザ光源101aと相違する。
本実施形態では、図4(a)に示した出力特性を基準の出力特性として、レーザ光源101aの電流値が設定される。すなわち、目標光量に対するレーザ光源101aの電流値Iが、以下の式に基づいて設定される。
I=Ith+Iscale×(画素値) …(1)
ここで、画素値とは、スクリーン110、111に描画される画像の各画素位置における映像信号の輝度の階調値のことである。
図4(b)は、上記式(1)のスケール値(Iscale)の設定方法を説明するための図である。ここでは、レーザ光源101aの温度が45℃であることが想定されている。
図4(b)において、Pm1は、輝度レベル1で画像を表示する場合の映像信号の最高輝度に対応する光出力の値(最大光出力値)を示している。また、Pm2は、輝度レベル1よりも暗い輝度レベル2で画像を表示する場合の映像信号の最高輝度に対応する光出力の値(最大光出力値)を示している。上記のように、画像の輝度レベルは、車外が明るい場合は高められ、車外が暗い場合は低下される。輝度レベルは、たとえば、10段階程度に設定され得る。
ここで、輝度レベル1では、最大光出力Pm1を輝度の階調数(たとえば256階調)で除した値が、1階調あたりの光出力値の変化量となる。また、輝度レベル1では、最大光出力Pm1に対応する出力特性上の電流値Im1と発光閾値の電流値(Ith)(以下、「閾値電流値(Ith)」という)との差分ΔI1を輝度の階調数(たとえば256階調)で除した値が、1階調あたりの電流値の変化量となる。この1階調あたりの電流値の変化量が、当該輝度レベル1かつ光源温度45℃における上記式(1)のスケール値(Iscale)である。つまり、スケール値(Iscale)は、出力特性の特性グラフを直線近似した場合の傾きを反映する値である。
同様に、輝度レベル2では、最大光出力Pm2に対応する出力特性上の電流値Im2と発光閾値の電流値(Ith)との差分ΔI2を輝度の階調数(たとえば256階調)で除した値が、1階調あたりの電流値の変化量となる。この1階調あたりの電流値の変化量が、当該輝度レベル2かつ光源温度45℃における上記式(1)のスケール値(Iscale)である。輝度レベル2における電流値の差分ΔI2は、輝度レベル1における電流値の差分ΔI1よりも小さいため、輝度レベル2におけるスケール値(Iscale)は、輝度レベル1におけるスケール値(Iscale)よりも小さくなる。つまり、輝度レベルが小さくなるほど、スケール値(Iscale)が小さくなる。
このようにスケール値(Iscale)を設定することにより、上記式(1)の演算によって、画素値(階調値)に対応する目標光量でレーザ光源101aを発光させるためのレーザ光源101aの電流値を取得することができる。上記のように、スケール値(Iscale)は、輝度レベルが低いほど小さくなる。また、図4(a)に示すように、レーザ光源101aの温度変化に伴い、出力特性の傾きが変化する。このため、スケール値(Iscale)は、レーザ光源101aの温度変化に伴い変化する。また、レーザ光源101aの温度変化に伴い、出力特性の閾値電流値(Ith)も変化する。
図2に示した画像制御回路201は、上記式(1)の演算によりレーザ光源101aの電流値を求めるために、閾値電流値(Ith)およびスケール値(Iscale)を、レーザ光源101aの温度および画像の輝度レベルに対応付けたルックアップテーブルを予め保持している。
図5は、閾値電流値(Ith)およびスケール値(Iscale)を設定するためのルックアップテーブルの構成を示す図である。図5においても、レーザ光源101aの温度として、レーザ光源101a付近の環境温度が用いられている。
画像制御回路201は、光検出器130からの検出信号(車外の明るさ)に基づいて画像の輝度レベルを設定し、さらに、温度センサ121からの検出信号に基づいてレーザ光源101aの環境温度を取得する。そして、画像制御回路201は、設定した輝度レベルと取得した環境温度とに対応する閾値電流値(Ith)およびスケール値(Iscale)を、図5に示したルックアップテーブルからそれぞれ取得し、取得した閾値電流値(Ith)とスケール値(Iscale)を、上記式(1)の各パラメータに設定する。環境温度がルックアップテーブルに規定された温度の間にある場合、環境温度に最も近いルックアップテーブル上の温度に対応付けられた閾値電流値(Ith)とスケール値(Iscale)が取得される。
その後、画像制御回路201は、映像信号の画素値(階調値)を上記式(1)に代入して、画素ごとの電流値Iを演算により取得する。そして、画像制御回路201は、取得した電流値Iを各画素位置におけるレーザ光源101aの駆動電流値として、レーザ駆動回路202を制御する。
なお、青色および緑色のレーザ光をそれぞれ出力するレーザ光源101b、101cについても、図5と同様の構成のルックアップテーブルが画像制御回路201に保持されている。これらのルックアップテーブルには、それぞれ、レーザ光源101b、101cの基準の出力特性に基づいて取得された閾値電流値(Ith)およびスケール値(Iscale)が、温度および輝度レベルに対応づけて保持されている。
画像制御回路201は、これらのルックアップテーブルを参照して、上記と同様の処理により、レーザ光源101b、101cの各画素位置における電流値Iを取得し、取得した電流値Iにより、レーザ光源101b、101cを駆動させる。こうして、レーザ光源101a〜101cが駆動されることにより、設定された輝度レベルで画像が表示される。
ところが、レーザ光源101a〜101cの製造誤差や経年劣化等の要因により、実際の出力特性が、ルックアップテーブルに対応する基準の出力特性からずれることが起こり得る。この場合、上記と同様の処理によりレーザ光源101a〜101cの電流値が設定されると、レーザ光源101a〜101cの出射光量と、各画素値に対応する目標光量との間に差異が生じ、画像の明るさや色味に不具合が起こり得る。
そこで、本実施形態では、以下の処理により、閾値電流値(Ith)およびスケール値(Iscale)が随時補正される。
図6(a)は、レーザ光源101aの基準の出力特性と実測に基づく出力特性のずれを示す図である。
図6(a)において、G0は、レーザ光源101aの基準の出力特性(以下、「基準特性」という)を示している。図6(a)の基準特性G0は、所定の輝度レベルかつ所定の環境温度におけるレーザ光源101aの出力特性を示している。補正においては、まず、基準特性G0に、2つの光出力値(Psv1、Psv2)と、2つの電流値(I1、I2)が設定される。電流値(I1)は、低レベル側の光出力値(Psv1)に対する基準特性G0上の電流値であり、電流値(I2)は、高レベル側の光出力値(Psv2)に対する基準特性G0上の電流値である。
次に、設定された2つの電流値(I1、I2)でレーザ光源101aをパルス発光させる。そして、各パルス発光において光検出器107から出力される検出信号に基づいて、2つの電流値(I1、I2)でレーザ光源101aをパルス発光させた場合に実際に生じる光出力値(Ppv1、Ppv2)が取得される。こうして取得された光出力値(Ppv1、Ppv2)と2つの電流値(I1、I2)とからなるプロットを通る直線が、実際の出力から推測されるレーザ光源101aの特性(以下、「推測特性」という)G1となる。ここでは、推測特性G1と基準特性G0との間にずれが生じている。このため、このずれが解消されるように、上記ルックアップテーブルから取得された閾値電流値(Ith)およびスケール値(Iscale)を補正する必要がある。
そこで、まず、スケール値(Iscale)を補正するために、推測特性G1の傾きと基準特性G0の傾きの比を、スケール値(Iscale)の補正乗数αとして求める。基準特性G0の傾きと、推測特性の傾きは、それぞれ、以下の式で求められ得る。
基準特性G0の傾き=(Psv2-Psv1)/(I2-I1) …(2)
推測特性G1の傾き=(Ppv2-Ppv1)/(I2-I1) …(3)
補正乗数αは、(基準特性G0の傾き)/(推測特性G1の傾き)であるから、以下の式により求められ得る。
α=(Psv2-Psv1)/(Ppv2-Ppv1) …(4)
次に、閾値電流値(Ith)を補正するために、推測特性G1の傾きを基準特性G0の傾きに整合させて、仮想特性G2を求める。
図6(b)は、図6(a)のグラフに仮想特性G2を重ねて示す図である。ここで、光出力値(Ppv1’、Ppv2’)は、電流値(I1、I2)に対応する仮想特性G2上の光出力値である。光出力値(Ppv1’、Ppv2’)は、以下の式により求められ得る。
Ppv1’={(Psv2-Psv1)/(Ppv2-Ppv1)}×Ppv1 …(5)
Ppv2’={(Psv2-Psv1)/(Ppv2-Ppv1)}×Ppv2 …(6)
推測特性G1における閾値電流値と基準特性G0における閾値電流値との差異は、仮想特性G2における閾値電流値(Ith2)と基準特性G0における閾値電流値(Ith0)との差分(ΔIth)により求められ得る。ここで、差分(ΔIth)は、図6(c)に示すように、光出力値(Psv1)と光出力値(Ppv1’)との差分を基準特性G0の傾きで除した値となる。したがって、差分(ΔIth)は、以下の式で求められ得る。
ΔIth={(I2-I1)×(Psv1-Ppv1’)}/(Psv2-Psv1) …(7)
図2に示した画像制御回路201は、図5のルックアップテーブルから取得したスケール値(Iscale)に、式(4)の演算により求めた補正乗数αを乗じて、補正後のスケール値(Iscale’)を取得する。また、画像制御回路201は、図5のルックアップテーブルから取得した閾値電流値(Ith)に、式(7)の演算により求めた差分(ΔIth)を加算して、補正後の閾値電流値(Ith’)を取得する。そして、画像制御回路201は、補正後のスケール値(Iscale’)および補正後の閾値電流値(Ith’)を上記式(1)の各パラメータ(Ith、Iscale)に適用して、画素値に対応する目標光量を出力させるための電流値Iを取得する。これにより、レーザ光源101aの実際の出力特性に整合した電流値Iを設定することができる。他のレーザ光源101b、101cにも同様の処理が行われる。
なお、上記補正において、基準特性G0に設定される低出力側の光出力値(Isv1)および電流値(I1)と高出力側の光出力値(Isv2)および電流値(I2)は、輝度レベルごと、温度ごとに変更されることが好ましい。
図7(a)は、所定の輝度レベルにおける各温度の出力特性に低出力側の設定値(Psv1、I1)と高出力側の設定値(Psv2、I2)とをそれぞれプロットした図である。図7(a)において、低出力側の設定値は黒丸のプロットで示され、高出力側の設定値は白丸のプロットで示されている。
図7(a)に示すように、レーザ光源101aの基準特性は、電流値が閾値電流値より大きい範囲において、やや湾曲した曲線となっている。これに対し、上記式(1)は、この範囲の基準特性を直線近似して電流値Iを求める式となっている。したがって、低出力側の設定値(Psv1、I1)と高出力側の設定値(Psv2、I2)は、上記式(1)において近似された直線になるべく近づくように、基準特性上の直線性が高い範囲に設定されることが好ましい。このような観点から、図7(a)の例では、特に、高出力側の設定値が、温度ごとに大きく変化している。
また、図4(b)を参照して説明したとおり、光出力の最大値(Pm1、Pm2)および電流値の最大値(Im1、Im2)が輝度レベルごとに相違している。したがって、高出力側の設定値(Psv2、I2)は、少なくとも、各輝度レベルにおける光出力値の最大値および電流値の最大値を超えないように設定されることが好ましい。
このように、上記補正における低出力側の設定値と高出力側の設定値は、温度および輝度レベルに応じて適正な値に調整されることが好ましい。そこで、本実施形態では、低出力側の設定値と高出力側の設定値をレーザ光源101a〜101cの環境温度および輝度レベルに対応付けたルックアップテーブルが、画像制御回路201に保持されている。
図7(b)は、環境温度ごとに設定された高出力側の設定値と低出力側の設定値を各輝度レベルについて規定したルックアップテーブルの構成を示す図である。このルックアップテーブルは、たとえば、レーザ光源101aに対するものである。その他のレーザ光源101b、101cについても同様の構成のルックアップテーブルが、画像制御回路201に保持されている。
画像制御回路201は、光検出器130からの検出信号(車外の明るさ)に基づいて画像の輝度レベルを設定し、さらに、温度センサ121からの検出信号に基づいてレーザ光源101aの環境温度を取得する。そして、画像制御回路201は、設定した輝度レベルと取得した環境温度とに対応する低出力側の設定値および高出力側の設定値を、図7(b)に示したルックアップテーブルからそれぞれ取得し、取得した低出力側の設定値および高出力側の設定値を用いて上述の補正処理を行う。検出された環境温度がルックアップテーブルに規定された温度の間にある場合、環境温度に最も近いルックアップテーブル上の温度に対応付けられた低出力側の設定値および高出力側の設定値が取得される。他のレーザ光源101b、101cについても、同様の処理が行われる。
図8は、レーザ光源101aの電流値の補正処理を示すフローチャートである。その他のレーザ光源101b、101cについても同様の処理が行われる。
画像制御回路201は、温度センサ121の検出信号に基づいて、レーザ光源101a付近の環境温度を取得し(S101)、さらに、光検出器130の検出信号(車外の明るさ)に基づいて、画像の輝度レベルを設定する(S102)。次に、画像制御回路201は、取得した環境温度および輝度レベルに対応する低出力側の設定値および高出力側の設定値を図7(b)に示したルックアップテーブルから取得する(S103)。
その後、画像制御回路201は、走査位置がスクリーン110、111の境界BR1付近の走査ライン上にあるタイミングにおいて、低出力側の設定値(I1)によりレーザ光源101aをパルス発光させて低出力側の測定を行い(S104)、さらに、高出力側の設定値(I2)によりレーザ光源101aをパルス発光させて高出力側の測定を行う(S105)。具体的には、画像制御回路201は、各パルス発光の間に光検出器107から出力される検出信号に基づいて、レーザ光源101aの光出力値をパルス発光ごとに取得する。
画像制御回路201は、低出力側の設定値に基づき取得した光出力値と、高出力側の設定値に基づき取得した光出力値とに基づいて、上記式(4)の演算により、スケール値(Iscale)の補正乗数αを算出し(S106)、さらに、上記式(7)の演算により、閾値電流値(Ith)の補正値(差分ΔIth)を算出する(S107)。そして、画像制御回路201は、取得した補正乗数αおよび補正値(差分ΔIth)を用いて、図5のルックアップテーブルから取得したスケール値(Iscale)および閾値電流値(Ith)を補正する(S108)。具体的には、画像制御回路201は、スケール値(Iscale)に補正乗数αを乗じて補正後のスケール値(Iscale)を算出し、閾値電流値(Ith)に補正値(差分ΔIth)を加算して補正後の閾値電流値(Ith)を算出する。
その後、画像制御回路201は、補正の適否の確認のために、補正後のスケール値(Iscale)および補正後の閾値電流値(Ith)を上記式(1)に適用して、光出力値の測定を行う(S109)。この場合、画像制御回路201は、たとえば、高出力側の設定値(Psv2)に対応する画素値(階調)を上記式(1)に適用して電流値を取得し、取得した電流値で、レーザ光源101aをパルス発光させる。このパルス発光も、スクリーン110、111の境界BR1付近の走査ライン上において行われる。
そして、画像制御回路201は、当該パルス発光の間に光検出器107から出力される検出信号に基づいて、レーザ光源101aの光出力値を取得し、取得した光出力値と高出力側の設定値(Psv2)との間の差分が、予め設定された許容範囲内にあるか否かを判定する(S110)。
差分が許容範囲内にある場合(S110:YES)、画像制御回路201は、ステップS106、S107で求めた補正乗数αおよび補正値(ΔIth)が適正であるとして、当該補正処理を終了する。この場合、ステップS106、S107で求めた補正乗数αおよび補正値(ΔIth)が確定され、ステップS108の補正も確定される。その後、次の補正まで、ステップS108で確定された補正後の式(1)に基づいて、レーザ光源101aに電流値が設定される。
他方、差分が許容範囲内にない場合(S110:NO)、画像制御回路201は、ステップS106、S107で求めた補正乗数αおよび補正値(ΔIth)が適正でないとして、処理をステップS101に戻す。この場合、ステップS106、S107で求めた補正乗数αおよび補正値(ΔIth)はキャンセルされ、ステップS108の補正もキャンセルされる。その後、画像制御回路201は、ステップS110の判定がYESとなるまで、ステップS101〜S109の処理を繰り返す。
こうして、ステップS110の判定がYESとなると、画像制御回路201は、当該補正処理を終了する。これにより、補正乗数αおよび補正値(ΔIth)が確定され、補正後のスケール値(Iscale)および閾値電流値(Ith)を用いて、式(1)の演算により、レーザ光源101aの電流値が設定される。他のレーザ光源101b、101cに対しても、同様の処理が行われる。
図8の補正処理は、予め設定されたタイミングで行われる。たとえば、図8の補正処理が、1フレームごとに行われてもよく、あるいは、数フレームごとに行われてもよい。
次に、上記補正処理においてパルス発光されるレーザ光(以下、「出力値調整用のレーザ光」という)を遮光するための構成について説明する。
本実施形態では、出力値調整用のレーザ光を遮光するための構成が、スクリーン110、111を保持するホルダに設けられている。ここで、ホルダは、図1に示した駆動部300によって、スクリーン110、111とともにZ軸方向(レーザ光の進行方向に並行な方向)に駆動される。以下では、駆動部300の構成とともに、出力値調整用のレーザ光を遮光するための構成を説明する。
図9(a)は、駆動部300の構成を示す斜視図、図9(b)は、磁気カバー308およびホルダ301を取り外した状態の駆動部300の構成を示す斜視図である。
なお、図9(a)、(b)には、駆動部300が支持ベース306および固定ベース310に支持された状態が示されている。支持ベース306および固定ベース310には、各色のレーザ光をZ軸方向に通過させるための開口が設けられている。この開口を介して、各色のレーザ光は、Z軸負側からスクリーン110、111に照射される。
図9(a)に示すように、スクリーン110、111は、互いに同じ方向に傾くようにホルダ301に一体的に支持されている。2つのスクリーン110、111は、レーザ光の進行方向(Z軸方向)に垂直な方向(Y軸方向)に並び、且つ、レーザ光の進行方向(Z軸方向)に所定の距離だけ互いにずれた位置に設置されている。ホルダ301の上面に、遮光部材302a、302bが設置されている。遮光部材302a、302bは、図1(c)の光学系を逆行する外光が駆動部300の内部に侵入することを防ぐためのものである。
スクリーン110、111が設置されたホルダ301が、図9(b)に示す支持部材303の内枠部303aに設置される。支持部材303は、4つのサスペンション304によって、Z軸方向に移動可能に、Y軸方向に並ぶ2つの支持ユニット305に支持されている。支持ユニット305は、支持ベース306に設置されている。支持ユニット305は、X軸正側とX軸負側にそれぞれゲルカバー305aを備え、これらゲルカバー305a内にダンピングのためのゲルが充填されている。
こうして、スクリーン110、111は、ホルダ301、支持部材303、サスペンション304および支持ユニット305を介して、Z軸方向に移動可能に支持ベース306に支持される。
支持ベース306には、さらに、磁気回路307が設置されている。磁気回路307は、支持部材303に装着されたコイル311(図10(a)参照)に磁界を付与するためのものである。コイル311に駆動信号(電流)を印加することにより、コイル311にZ軸方向の電磁力が励起される。これにより、コイル311と共に支持部材303がZ軸方向に駆動される。こうして、スクリーン110、111が、Z軸方向に移動する。
磁気回路307の上面に、磁気カバー308が載せられる。磁気カバー308は、磁性材料からなっており、磁気回路307のヨークとして機能する。磁気回路307の上面に磁気カバー308が載せられると、磁気カバー308が磁気回路307に吸着される。これにより、磁気カバー308が駆動部300に設置される。図9(a)に示すように、磁気カバー308には、ホルダ301を通すための開口308aと、支持部材303の梁部303c(図10(a)参照)を通すためのスリット308bが設けられている。
支持ベース306は、ダンパーユニット309を介して、固定ベース310に設置されている。ダンパーユニット309は、固定ベース310に対して支持ベース306をZ軸正方向に浮かせた状態で、支持ベース306を支持する。ダンパーユニット309は、支持部材303の駆動により生じた振動が支持ベース306から固定ベース310に伝搬する前に、振動を吸収する。
固定ベース310には、さらに、位置検出ユニット400が設置されている。位置検出ユニット400は、支持部材303のX軸正側の側面に対向するプリント基板401を備える。このプリント基板401のX軸負側の面にエンコーダ(図示せず)が配置されている。このエンコーダによって、支持部材303のZ軸方向の位置が検出される。
図10(a)は、支持部材303とサスペンション304とを組み立てた状態の構成を示す斜視図である。
図10(a)に示すように、支持部材303は、枠状の形状を有する。支持部材303は、軽量かつ剛性の高い材料により形成される。支持部材303は、それぞれ平面視において略長方形の内枠部303aと外枠部303bとを備える。平面視において内枠部303aの中心と外枠部303bの中心が互いに一致するように、4つの梁部303cによって、内枠部303aと外枠部303bが連結されている。内枠部303aは、外枠部303bに対して上方(Z軸正方向)にシフトした位置に持ち上げられている。
内枠部303aの上面に、ホルダ301が設置される。また、外枠部303bの下面に、コイル311が装着される。コイル311は、外枠部303bの下面に沿うように、長方形の角が丸められた形状に周回している。
外枠部303bの四隅に、放射状に延びる連結部303dが形成されている。これら連結部303dは、上端および下端にそれぞれ鍔部を有する。連結部303dの上側の鍔部の上面に上側のサスペンション304の端部が固定具303eにより固着される。また、連結部303dの下側の鍔部の下面に下側のサスペンション304の端部が固定具303eにより固着される。こうして、サスペンション304が、支持部材303に装着される。
さらに、支持部材303は、Y軸方向に隣り合う連結部303dを繋ぐ橋部303fを備える。橋部303fは、Y軸方向の両端を除く部分がY軸方向に平行に延びており、この部分の中央に、Y−Z平面に平行な設置面303gを有する。支持部材303のX軸正側の橋部303fの設置面303gに、スケールが設置される。このスケールが、図9(a)、(b)に示した位置検出ユニット400のエンコーダに対向する。こうして、エンコーダによって、支持部材303のZ軸方向の位置が検出される。
サスペンション304は、X軸方向の中央位置に、3つの孔304aを有する。また、サスペンション304は、3つの孔304aの両側に、クランク形状の伸縮構造304bを有する。Y軸正側の2つのサスペンション304と、Y軸負側の2つのサスペンション304が、それぞれ、3つの孔304aを介して、図9(a)、(b)に示すように、支持ユニット305に装着される。
図10(b)は、磁気回路307の構成を示す斜視図である。図10(b)には、磁気回路307が、支持ベース306の上面に設置された状態が示されている。
磁気回路307は、Y軸方向に並ぶように配置された2つのヨーク321を備える。X軸方向に見たときのヨーク321の形状はU字状である。2つのヨーク321は、それぞれ、内側の壁部321bが2つに分かれている。各ヨーク321の外側の壁部321aの内側に磁石322が設置される。また、各ヨーク321の内側の2つの壁部321bの外側に、それぞれ、磁石322に対向するように磁石323が設置される。互いに対向する磁石322と磁石323との間には、上述のコイル311が挿入される隙間が生じている。
さらに、磁気回路307は、X軸方向に並ぶように配置された2つのヨーク324を備える。Y軸方向に見たときのヨーク324の形状はU字状である。2つのヨーク324は、それぞれ、外側の壁部324aが2つに分かれており、内側の壁部324bも2つに分かれている。各ヨーク324の外側の2つの壁部324aの内側にそれぞれ磁石325が設置される。また、各ヨーク324の内側の2つの壁部324bの外側に、それぞれ、磁石325に対向するように磁石326が設置される。互いに対向する磁石325と磁石326との間には、上述のコイル311が挿入される隙間が生じている。磁石326のY軸方向の端部は、隣り合うヨーク321の内側の壁部321bに側面に重なっている。
図11(a)、(b)は、それぞれ、ホルダ301の構成を示す斜視図である。図11(a)は、ホルダ301を上側から見た斜視図、図11(b)はホルダ301を下側から見た斜視図である。
ホルダ301は、枠状の部材からなっている。ホルダ301は、剛性が高く、軽量の材料で形成される。ホルダ301は、表面反射が抑制されるよう構成されることが好ましい。これにより、出力値調整用のレーザ光がホルダ301で反射して迷光となることを抑制できる。また、ホルダ301の表面は、光の吸収率が高まるように、黒色であることが好ましい。本実施形態では、ホルダ301がマグネシウム合金で一体形成され、さらに、ホルダ301の表面に黒色酸化処理が施されている。ホルダ301の表面にシボ加工が施されることにより、表面反射が抑制されてもよい。ホルダ301が、アルミニウム等、マグネシウム以外の材料で形成されてもよい。ホルダ301は、X軸方向に対称な形状である。
ホルダ301は、スクリーン110を支持するための下枠部301aと、スクリーン111を支持するための上枠部301bとを有する。
下枠部301aは、平面視において長方形の開口301cを有する。また、下枠部301a上面のY軸正側の縁部分に上方に突出する3つの壁301dが設けられ、下枠部301a上面のX軸正負側の縁部分にも、それぞれ、壁301dが設けられている。さらに、これらの壁301dと開口301cとの間に、上方に突出する突起301eが設けられている。突起301eは、開口301cの周縁に沿うようにして連続的に形成されている。突起301eの高さは、壁301dの高さよりも低い。下枠部301aの上面には、壁301dの外側の位置に、Z軸方向に突出する4つの鉤部301fが設けられている。
上枠部301bは、平面視において長方形の開口301gを有する。また、上枠部301b上面のY軸負側の縁部分に上方に突出する3つの壁301hが設けられ、上枠部301b上面のX軸正負側の縁部分にも、それぞれ、壁301hが設けられている。さらに、これらの壁301hと開口301gとの間に、上方に突出する突起301iが設けられている。突起301iは、開口301gの周縁に沿うようにして連続的に形成されている。突起301iの高さは、壁301hの高さよりも低い。上枠部301bの上面には、壁301hの外側の位置に、Z軸方向に突出する4つの鉤部301jが設けられている。
下枠部301aと上枠部301bとの間の段差は、壁部301kで塞がれている。壁部301kの上面は、下方(Z軸負方向)に掘り下げられて、一段低くなっている。壁部301kの下面には、X軸方向に延びる窪み(溝)301k1が形成されている。Y−Z平面に平行な平面で切断したときの窪み301k1の断面はV字状である。窪み301k1は、壁部301kの全長に亘って形成されている。
また、図11(b)に示すように、ホルダ301の下面には、下面内側から下方に突出する10個の突片301lが設けられている。ホルダ301の下面の輪郭は、図10(a)に示した支持部材303の内枠部303aの輪郭と同一である。ホルダ301を内枠部303aに載せると、ホルダ301の10個の突片301lが、内枠部303aの内側に嵌まり込む。これにより、ホルダ301が支持部材303に位置決めされる。
スクリーン110は、下枠部301aの突起301eに載せられて、ホルダ301に支持される。このとき、スクリーン110のY軸負側の端部が、壁部301kの下側に入り込む。突起301eは、スクリーン110が載せられた状態において、スクリーン110の3辺に沿って連続するように形成されている。この状態で、スクリーン110は、5つの壁301dの内側に収まり、スクリーン110の外周と壁301dとの間に僅かな隙間が存在する。
スクリーン111は、上枠部301bの突起301iに載せられて、ホルダ301に支持される。このとき、スクリーン111のY軸正側の端部が、壁部301kの上側に重なる。突起301iは、スクリーン111が載せられた状態において、スクリーン111の3辺に沿って連続するように形成されている。この状態で、スクリーン111は、5つの壁301hの内側に収まり、スクリーン111の外周と壁301hとの間に僅かな隙間が存在する。
こうして、スクリーン110、111がそれぞれ、下枠部301aおよび上枠部301bに設置された後、図1に示した遮光部材302a、302bが、それぞれ、下枠部301aおよび上枠部301bに設置される。このとき、下枠部301aに設けられた4つの鉤部301fが遮光部材302aの4つの孔にそれぞれ嵌まり込み、上枠部301bに設けられた4つの鉤部301jが遮光部材302bの4つの孔にそれぞれ嵌まり込む。また、スクリーン110、111と遮光部材302a、302bとの間に、耐熱性の部材(耐熱パッキン)が介挿される。
図12(a)は、スクリーン110、111が設置された状態のホルダ301をY−Z平面に平行な平面で切断した断面図である。図12(a)では、便宜上、遮光部材302a、302bの図示が省略されている。
上記のように、レーザ光源101a〜101bの出力値を調整する際には、スクリーン110、111のY軸方向の境界位置において、出力値調整用のレーザ光LT1が、レーザ光源101a〜101bから出射される。この場合、図12(a)に示すように、スクリーン110、111のY軸方向の境界位置には、壁部301kが設けられているため、出力値調整用のレーザ光LT1は、この壁部301kによって遮光される。すなわち、ホルダ301に形成された壁部301kが遮光部となる。これにより、出力値調整用のレーザ光が、図1(c)のミラー22へと進んで迷光となることが抑止される。
なお、発明者らの検討によると、壁部301kの下面が平坦な平面に設計された場合、壁部301kの下面に入射した出力値調整用のレーザ光の一部がミラー22へと進んで、表示画像が全体的にやや白っぽく表示されることが確認された。
このような問題を解消するため、本実施形態では、壁部301kの下面に窪み301k1が設けられている。これにより、図12(b)に示すように、壁部301kの下面に入射した出力値調整用のレーザ光LT1は、窪み301k1に取り込まれ、反射光LT2として補正レンズ109側へと戻される。これにより、出力値調整用のレーザ光LT1がより確実に遮光され得る。よって、出力値調整用のレーザ光の一部がミラー22へと進んで、表示画像が全体的にやや白っぽく表示されることがより確実に抑制される。
なお、窪み301k1の形状は、必ずしも、V字状でなくてもよく、たとえば、図12(c)に示すようにU字状であってもよく、あるいは、矩形に窪んだ形状であってもよい。窪み301k1の形状は、出力値調整用のレーザ光の一部がミラー22へと進むことを抑止できる形状であればよい。
<実施形態の効果>
以上、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
1フレームの表示画像を表示するための表示画角の範囲内の所定位置(本実施形態では、スクリーン110、111の境界位置)において、出力値調整用のレーザ光が出射されるため、表示画像の歪み補正のためにスクリーン上の画像描画領域が変化しても、出力値調整用のレーザ光の出射位置を調整する必要がない。よって、表示画像の歪み補正に拘わらず、レーザ光源101a〜101cの出力を円滑に調整することができる。
ここで、「表示画角」とは、1フレーム分の画像を表示するためのレーザ光の振り角のことである。すなわち、各色のレーザ光は、図2に示した走査部108におけるミラー108aの可動範囲内において、2次元方向に振られ得る。これに対し、1フレーム分の画像は、ミラー108aの可動範囲よりも狭い振り角の範囲において表示される。すなわち、ミラー108aの可動範囲よりも狭い所定の振り角の範囲において、映像信号に基づきレーザ光源101a〜101cが駆動され、各色のレーザ光によりスクリーン110、111が走査される。このように、1フレーム分の画像を表示するためのレーザ光の2次元方向の振り角のことを、「表示画角」と称する。
本実施形態では、この表示画角の範囲内において、スクリーン110に対する描画と、スクリーン111に対する描画が行われる。すなわち、表示画角の範囲内において、2つの画像が、それぞれ、スクリーン110、111に表示される。また、表示画角の範囲内には、これら2つの画像の間に、画像が描画されない範囲が生じる。この範囲は、図3(b)に示した境界BR1の範囲に対応する。図13において、A11、A12は、スクリーン110、111において画像が描画される領域を模式的に示している。
本実施形態では、このように、表示画角の範囲内の、これら2つの画像の描画範囲の境界となる位置、すなわち、スクリーン110、111の境界BR1において、出力値調整用のレーザ光が出射される。このため、視距離が異なる2つの画像をスクリーン110、111によって表示させつつ、出力値調整用のレーザ光によってレーザ光源101a〜101cの出力値を調整することができる。また、表示画角の範囲内において出力値調整用のレーザ光が出射されるため、上記のように、表示画像の歪み補正に拘わらず、レーザ光源101a〜101cの出力を円滑に調整することができる。
また、本実施形態では、図12(a)に示したように、2つのスクリーン110、111の境界に壁部301k(遮光部)が設けられ、出力値調整用のレーザ光は、この壁部301k(遮光部)の位置に照射される。このため、出力調整用のレーザ光LT1が表示画像に紛れ込むことを抑制でき、表示画像の品質を高く維持できる。
また、図12(a)、(b)に示したように、壁部301k(遮光部)の下面に窪み301k1が設けられているため、出力調整用のレーザ光LT1が表示画像に紛れ込むことをより確実に抑制できる。これにより、表示画像の品質をより高く維持することができる。
また、本実施形態では、壁部301kと窪み301k1がホルダ301に一体的に形成されているため、別途、出力値調整用のレーザ光を遮光する部材を配置せずともよい。よって、画像表示装置20の構成を簡素化することができる。
なお、本実施形態では、壁部301kの全長に亘って窪み301k1が設けられたが、窪み301k1は、少なくとも出力値調整用のレーザ光が照射される位置に設けられればよい。
<変更例>
上記実施形態では、2つのスクリーン110、111が配置されたが、スクリーンの数はこれに限られるものではなく、1つのスクリーンのみが配置されてもよい。この場合、1つのスクリーンに2つの画像が描画されてもよく、これら2つの画像の境界において、出力値調整用のレーザ光が出射され、レーザ光源101a〜101cの出力が調整されてもよい。出力値調整用のレーザ光の出射位置は、表示画角内の画像が表示されない範囲に設定されればよい。
また、レーザ光源101a〜101cの出力の調整方法は、必ずしも、上記実施形態に記載された方法に限られるものではなく、出力値調整用のレーザ光を用いる限りにおいて、他の方法であってもよい。
また、上記実施形態では、ホルダ301に設けられた壁部301kにより出力値調整用のレーザ光が遮光されたが、出力値調整用のレーザ光を遮光するための構成はこれに限られるものではない。たとえば、スクリーン110、111上の、出力調整用のレーザ光が通過する領域にマスクを設けて、出力調整用のレーザ光を遮光するようにしてもよい。また、壁部301kの下面の幅が、出力値調整用のレーザ光を略完全に遮光可能な程度に広い場合は、必ずしも、壁部301kの下面に窪み301k1が設けられなくてもよい。
また、スクリーンは、必ずしもZ軸方向に移動しなくてもよく、所定の位置に固定されてもよい。この場合、奥行き方向に視差のない画像のみが表示される。
また、上記実施形態では、1つの光検出器107によって、3つのレーザ光源101a〜101cの光出力値が検出されたが、3つのレーザ光源101a〜101cの光出力値を、それぞれ、別々の光検出器107で検出するようにしてもよい。たとえば、ミラー104およびダイクロイックミラー105a、105bを、それぞれ、レーザ光源101a〜101cからのレーザ光を数パーセント透過させるように構成し、透過した各色のレーザ光をそれぞれ個別に光検出器で検出するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、本発明を乗用車1に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用した例を示したが、本発明は、車載用に限らず、他の種類の画像表示装置にも適用可能である。
また、画像表示装置20および照射光生成部21の構成は、図1(c)および図2に記載された構成に限られるものではなく、適宜、変更可能である。さらに、第1のレンズ部110aや第2のレンズ部110bは、スクリーン110に一体形成されてもよく、あるいは、これらレンズ部を有する透明なシートをスクリーン110の基材に貼りつける構成であってもよい。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。