JP2019132925A - 液晶調光装置およびその駆動方法 - Google Patents

液晶調光装置およびその駆動方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造コストを抑え、電源装置によって液晶調光フィルムの透過率制御を十分に行う。【解決手段】液晶調光装置を、液晶調光フィルムとこれを駆動する電源装置によって構成する。液晶調光フィルムは、液晶層を一対の透明電極層で挟んだ構造を有し、窓ガラスなどの広い透明部材に張り付けて用いられる。電源装置は、焼き付きが発生しない下限周波数fL〜上限周波数fH(0.1Hz)の範囲の特定周波数帯域の周波数をもつ矩形波交流電圧を両透明電極層間に印加する。当該特定周波数帯域は、液晶調光フィルムに不快なちらつき(フリッカ)が発生する低周波域よりも更に低い帯域であり、かつ、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する直流近傍域よりも高い帯域であるため、不快なちらつきも焼き付きも抑制することができる。また、低周波域よりも更に低い帯域であるため、面積の大きな液晶調光フィルムに対しても、十分な電力供給が可能になる。【選択図】図7

Description

本発明は、液晶調光装置およびその駆動方法に関し、特に、建物や自動車の窓など、広い面積をもった透明部材に張り付けて用いる液晶調光フィルムと、これを駆動するための電源装置を備えた液晶調光装置およびその駆動方法に関する。
液晶は、その光学的な特性を電気的に制御できる性質を有しており、ディスプレイ装置をはじめとして様々な技術分野に利用されている。液晶調光セルも、そのような製品の1つであり、液晶の透過率を電気的に制御することにより、光の透過状態を変えることができる。最近は、この液晶調光セルの面積を広げてフィルム状に加工することにより、液晶調光フィルムと呼ばれる製品も提案されており、透明状態から遮光状態に段階的に切り替えることができる電子シェードとして実用化されている。
たとえば、下記の特許文献1には、液晶層の両面に設けられた電極層の間に抵抗値を可変とする抵抗部材を設けることにより、場所によって透過率を変化させ、グラデーション表現を行うことが可能な液晶調光フィルムが開示されている。また、特許文献2には、液晶層の厚みを保持するスペーサーを設けることにより、透過率の低下を回避する液晶調光フィルムが開示されており、特許文献3には、液晶層を挟む配光膜上にシール材の一部を浸透させることにより、シール剤を強固に接着する技術が開示されている。
特許第6128269号公報 特開2017−097339公報 特許第6120196号公報
液晶調光フィルムを駆動するためには、電源装置から電力供給を行う必要があり、液晶調光フィルムとこれを駆動するための電源装置とを組み合わせた液晶調光装置として提供する必要がある。一般に、小型の液晶調光セルは、直流抵抗が大きく、電気容量が小さいため、比較的小さな電流によって駆動することが可能である。また、液晶調光セルは、液晶層を挟んで一対の透明電極が数μm程度の間隔で配置されるため、短絡事故が生じた場合を考慮して、電源装置に対する保護対策が必要になる。このため、一般的には、小型の液晶調光セルに用いる電源装置の出力インピーダンス|Z0|は高めに設定され、通常、|Z0|=数kΩ〜100kΩであることが多い。
ところが、液晶調光セルの直流抵抗はセルの面積が増大すると、これに反比例して減少し、電気容量はセルの面積に比例して増加する。したがって、液晶調光セルの面積を広げてフィルム状にした構造を有する液晶調光フィルムの場合、小型の液晶調光セルに比べて、直流抵抗は小さく、電気容量は大きくなる。このため、一般的な小型の液晶調光セル用の電源装置を、そのまま液晶調光フィルムの駆動用電源として利用すると、通常の電圧を印加しても、液晶層に十分な電力が供給されない事態が生じやすい。
特に、建物の外装もしくは内装に用いられる窓、乗り物の窓、またはショーケース用のガラスなど、比較的面積の大きな透明部材に張り付けて用いる液晶調光フィルムの場合、従来の一般的な小型液晶調光セル用の電源装置によって駆動を行うと、透過率の制御を十分に行うことができない。そこで、従来は、大型の液晶調光フィルムを支障なく駆動するために、電源装置の電圧を高める工夫や、液晶調光フィルムに電圧を印加するための端子を多数箇所に設けるなどの対策を施していた。ただ、そのような対策を施すと、製造コストが増大するという問題が生じることになる。
従来の液晶調光装置では、30〜200Hzの周波数をもった交流信号で駆動を行うのが一般的である。この駆動信号の周波数を下げれば、面積の大きな液晶調光フィルムに対しても、十分な電力供給を行うことが可能になるが、駆動信号の周波数を30Hz未満に下げると、液晶調光フィルム面にいわゆる「フリッカ」と呼ばれているちらつき現象が生じることになり好ましくない。もちろん、交流信号で駆動する代わりに直流信号で駆動すれば、このようなフリッカの問題は生じないが、直流駆動では、液晶の焼き付きという別な問題が生じることになる。
そこで本発明は、製造コストの高騰を抑えつつ、電源装置によって液晶調光フィルムの透過率の制御を十分に行うことが可能な液晶調光装置を提供することを目的とし、また、そのような液晶調光装置の製造方法を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、液晶の透過率を変化させて調光を行う液晶調光装置において、
液晶調光フィルムとこれを駆動するための電源装置とを設け、
液晶調光フィルムは、液晶層と、液晶層の一方の面に配置された第1透明電極層と、液晶層の他方の面に配置された第2透明電極層と、第1透明電極層の所定位置に設けられたフィルム側第1接続端子と、第2透明電極層の所定位置に設けられたフィルム側第2接続端子と、を有し、
電源装置は、フィルム側第1接続端子とフィルム側第2接続端子との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行い、
所定の駆動周波数として、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る液晶調光装置において、
液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、下限周波数fLから上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、電源装置が、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給するようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る液晶調光装置において、
液晶調光フィルムに、最小透過率と最大透過率とを定め、電源装置が電圧供給を行わない場合には、液晶調光フィルムは、最小透過率および最大透過率のいずれか一方の透過率を示し、電源装置がピーク電圧Vpをもった交流電圧の供給を行っている場合には、液晶調光フィルムは、最小透過率および最大透過率の他方の透過率を示すようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係る液晶調光装置において、
電源装置が、
第2透明電極層側を基準電位として、第1透明電極層側に正の電圧を印加する前半周期と、第1透明電極層側に負の電圧を印加する後半周期と、を1周期とする交流電圧を供給し、
前半周期には、前半初頭期間と前半後続期間とを設定し、後半周期には、後半初頭期間と後半後続期間とを設定し、
前半初頭期間には、第1透明電極層側に正のピーク電圧+Vpよりも高い前半初頭電圧+Vppを供給し、前半後続期間には、第1透明電極層側に正のピーク電圧+Vpを供給し、後半初頭期間には、第1透明電極層側に負のピーク電圧−Vpよりも低い後半初頭電圧−Vppを供給し、後半後続期間には、第1透明電極層側に負のピーク電圧−Vpを供給するようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る液晶調光装置において、
電源装置が、
第2透明電極層側を基準電位として、第1透明電極層側に正の電圧を印加する前半周期と、第1透明電極層側に負の電圧を印加する後半周期と、を1周期とする交流電圧を供給し、
液晶調光フィルムの液晶層が、前半周期から後半周期に切り替わった直後および後半周期から前半周期に切り替わった直後に、観察者に認識しうるちらつきが発生しないような応答性を有するようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る液晶調光装置において、
電源装置が、第2透明電極層側を基準電位として、第1透明電極層側に正の電圧を印加する前半周期と、第1透明電極層側に負の電圧を印加する後半周期と、を1周期とする交流電圧を供給し、前半周期の長さと後半周期の長さとの比を示すデューティー比を、1:1もしくは1:1以外に設定するようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係る液晶調光装置において、
電源装置が、所定の周波数範囲内の複数通りの周波数を切り替えて、時間的に変動する駆動周波数をもった交流電圧を供給して駆動を行うようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第7の態様に係る液晶調光装置において、
フィルム側第1接続端子が液晶調光フィルムの縁部の所定箇所に設けられており、フィルム側第2接続端子が液晶調光フィルムの所定箇所に対向する位置に設けられているようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る液晶調光装置において、
液晶調光フィルムが、建物の外装もしくは内装に用いられる窓、乗り物の窓、またはショーケース用のガラスに張り付けて用いるのに適した面積を有するようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る液晶調光装置において、
液晶調光フィルムが、0.1平方m以上の面積を有するようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第10の態様に係る液晶調光装置において、
液晶層を、電界効果型の液晶分子を含む層によって構成し、第1透明電極層および第2透明電極層を、ITOからなる層によって構成したものである。
(12) 本発明の第12の態様は、液晶の透過率を変化させて調光を行うために、液晶層と、液晶層の一方の面に配置された第1透明電極層と、液晶層の他方の面に配置された第2透明電極層と、を有する液晶調光フィルムを駆動するための電源装置において、
第1透明電極層と第2透明電極層との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行う機能をもたせ、
所定の駆動周波数として、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにしたものである。
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第12の態様に係る電源装置において、
液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、下限周波数fLから上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給するようにしたものである。
(14) 本発明の第14の態様は、液晶の透過率を変化させて調光を行うために、液晶層と、液晶層の一方の面に配置された第1透明電極層と、液晶層の他方の面に配置された第2透明電極層と、を有する液晶調光フィルムを駆動するための駆動方法において、
第1透明電極層と第2透明電極層との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行い、
所定の駆動周波数として、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにしたものである。
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係る液晶調光フィルムの駆動方法において、
液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、下限周波数fLから上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給するようにしたものである。
本発明に係る液晶調光装置は、液晶調光フィルムとこれを駆動するための電源装置とを備えており、電源装置から液晶調光フィルムに対して、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行う。ここで、所定の駆動周波数としては、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにしている。具体的には、液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限である下限周波数fLと、上限周波数fH=0.1Hz(観察者にとって不快なちらつきが発生しない周波数の上限値)と、を定め、下限周波数fLから上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域とし、電源装置が、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給するようにするのが好ましい。
上述したとおり、従来の液晶調光装置では、30〜200Hzの周波数(ちらつきが発生する周波数より高い周波数)をもった交流信号で駆動を行うのが一般的であるが、本発明では、この一般的な駆動周波数よりもはるかに低い周波数で駆動を行うため、面積の大きな液晶調光フィルムに対しても、十分な電力供給を行うことができるようになり、透過率の制御を十分に行うことが可能になる。また、本発明における駆動周波数は、観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数に設定されているため、不快なちらつきの発生を抑えることができる。しかも、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数よりも高い周波数で駆動を行うため、液晶調光フィルムに焼き付きが生じることも防ぐことができる。
このように、本発明では、上記特定周波数帯域内の周波数をもつ交流信号によって液晶調光フィルムを駆動するようにしたため、製造コストの高騰を抑えつつ、電源装置によって液晶調光フィルムの透過率の制御を十分に行うことが可能になる。
本発明を含む一般的な液晶調光装置100の基本構成を示すブロック図および斜視図である。 図1に示す液晶調光フィルム120の側断面図(図(a) )およびその等価回路を示す回路図(図(b) )である。 10mm角の液晶調光フィルムの交流駆動特性を示すグラフである。 1m角の液晶調光フィルムの交流駆動特性を示すグラフである。 図1に示す液晶調光フィルム120の「透過率−電圧特性」を示すグラフである。 本発明に係る液晶調光装置100に用いられる矩形波交流信号の波形図である。 液晶調光フィルムを駆動するために用いる交流信号の各周波数帯域の特徴を示すグラフである。 駆動周波数によるちらつき発生の影響度合を示す影響測定装置の正面図である。 図8に示す影響測定装置を用いた具体的な測定方法を示す側面図(一部は側断面図)である。 ちらつき感覚テストの結果を示すグラフである。 焼付状態テストの結果を示す透過率−周波数特性を示すグラフである。 駆動用交流信号の極性反転時に生じる透過率変動を示すグラフである。 図12に示す透過率変動を抑制させるため、極性反転時にピーク電圧Vpよりも大きな初頭電圧Vppを供給する変形例を示すグラフである。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1. 一般的な液晶調光装置の基本構成 >>>
まず、この§1では、一般的な液晶調光装置の基本構成を簡単に説明する。本発明に係る液晶調光装置も、ここで述べる基本構成を有している。図1は、本発明を含む一般的な液晶調光装置100の基本構成を示すブロック図および斜視図である。この液晶調光装置100は、液晶の透過率を変化させて調光を行う機能を有し、図示のとおり、電源装置110(ブロック図で示す)と液晶調光フィルム120(斜視図で示す)とを有している。
液晶調光フィルム120は、上から下に向かって、第1透明電極121、液晶層122、第2透明電極123を有している。第1透明電極層121は、液晶層122の一方の面(図の場合は上面)に配置されており、第2透明電極層123は、液晶層122の他方の面(図の場合は下面)に配置されている。また、第1透明電極層121の所定位置(図の場合は、上面の左側縁部)にはフィルム側第1接続端子aが設けられ、第2透明電極層123の所定位置(図の場合は、下面の左側縁部)にはフィルム側第2接続端子bが設けられている。
液晶層122は、たとえば、電界効果型の液晶分子を含む層によって構成され、第1透明電極層121および第2透明電極層123は、たとえば、ITO(Indium Tin Oxcide)からなる層によって構成されている。なお、実際には、これら3層の他に、保護層として機能する透明フィルムの層やフィルタ層などが用いられることもあるが、本願では、これらの付加層についての説明は省略する。
一方、電源装置110は、この液晶調光フィルム120を駆動するための構成要素であり、フィルム側第1接続端子aに接続された電源側第1接続端子Aと、フィルム側第2接続端子bに接続された電源側第2接続端子Bと、の間に所定の交流電圧を供給する機能を有する。図には、この電源装置110の概念的な内部構成を、理想電源111と出力インピーダンス112との組み合わせとして示している。理想電源111は、理想的な交流信号(矩形波や正弦波)を発生させる理論上の信号源であり、出力インピーダンス112は、この電源装置110を構成する回路内部の抵抗要素である。出力インピーダンス112は、電源自体がもっている本来のインピーダンスと、過電流による破損、発熱、発火等から電源や接続回路を保護するために意図的に付加するインピーダンスと、の合計になる。図1では、この電源装置110の出力インピーダンス112の値を、記号|Z0|で示している。
このように、液晶調光フィルム120側の接続端子a,b間には、電源装置110から交流信号が供給され、第1透明電極層121と第2透明電極層123とに挟まれた液晶層122には、その厚み方向に交流電圧が印加される。液晶層122は、電界によって配向性を変化させる液晶分子を含んでおり、電圧の印加により透光性が変化する。なお、本願における「液晶調光フィルム」という文言は、「液晶調光セル」と基本的には同義のものであるが、以下の実施例では、各構成層の面積が比較的大きいシート状をなし、建物や自動車の窓など、広い面積をもった透明部材にフィルム状に張り付けて用いるものを指している。
液晶調光フィルム120は、液晶層122を構成する液晶分子の種類により、ノーマリーダークとノーマリークリアという2つのタイプの製品に分類される。ノーマリーダークのタイプの製品は、電圧を印加しない状態では、液晶層122の光の透過率が低く、観察者には「不透明」なフィルムとして観察されるが、電圧を印加した状態では、液晶層122の光の透過率が高くなり、観察者には「透明」なフィルムとして観察される。これに対して、ノーマリークリアのタイプの製品は、電圧を印加しない状態では、液晶層122の光の透過率が高く、観察者には「透明」なフィルムとして観察されるが、電圧を印加した状態では、液晶層122の光の透過率が低くなり、観察者には「不透明」なフィルムとして観察される。本発明は、いずれのタイプの製品にも適用可能である。
図2(a) は、図1に示す液晶調光フィルム120の側断面図である。上述したとおり、液晶層122は、第1透明電極層121と第2透明電極層123との間に挟まれた層であり、通常、厚みは数μm程度である。上述したとおり、フィルム側第1接続端子aとフィルム側第2接続端子bとの間には、電源装置110が発生した交流電圧が印加される。第1透明電極層121と第2透明電極層123は、たとえば、ITO(Indium Tin Oxcide)などの透明かつ導電性を有する材料から構成されており、液晶層122の全体に交流電圧が印加される。したがって、液晶層122が透明であれば、液晶調光フィルム120全体が透明になり、液晶層122が不透明であれば、液晶調光フィルム120全体が不透明になる。
ここでは、図の右側に示すとおり、フィルム側第1遠方点cおよびフィルム側第2遠方点dを定義する。これら遠方点c,dは、説明の便宜上、定義した点であり、物理的に何らかの構造物が存在するわけではない。フィルム側第1遠方点cは第1透明電極層121の上面に定義された点であり、フィルム側第2遠方点dは第2透明電極層123の下面に定義された点である。
フィルム側第1接続端子aおよびフィルム側第2接続端子bには、電源装置110からの電気信号が直接供給されるが、フィルム側第1遠方点cおよびフィルム側第2遠方点dには、電源装置110からの電気信号が、それぞれ第1透明電極層121および第2透明電極層123を介して間接的に供給される。第1透明電極層121および第2透明電極層123には、若干の電気抵抗が存在するため、接続端子a,b間に印加される電圧に比べて、遠方点c,d間に印加される電圧は若干低下する。
図2(b) は、図2(a) に示す液晶調光フィルム120の等価回路を示す回路図である。図において、点aから点cに至る線は第1透明電極層121に対応し、第1電極層抵抗R1は、この第1透明電極層121の点a,c間の抵抗である。同様に、点bから点dに至る線は第2透明電極層123に対応し、第2電極層抵抗R2は、この第2透明電極層123の点b,d間の抵抗である。電源装置110と各接続端子a,bとの間の配線についての抵抗も考慮する場合は、抵抗R1,R2にこれらの配線抵抗も含めればよい。一方、図において並列接続されているRLおよびCLは、それぞれ液晶層122の抵抗(配光膜が介在する場合は、その抵抗も含む)および電気容量(配光膜が介在する場合は、その容量も含む)である。
接続端子a,b間に電圧Vinが供給されると、たとえば、接続端子a側が正の場合、図の矢印に沿った経路に電流が流れる。RFは、このような経路に沿った接続端子a,b間の直流抵抗であり、ここでは、液晶調光フィルムの直流抵抗と呼ぶ。このRFの値は、図の下方に記載したとおり、
RF=R1+R2+RL
なる式で表される。
このように、第1透明電極層121および第2透明電極層123には、抵抗R1およびR2が存在するため、上述したとおり、接続端子a,b間に印加される電圧Vinに比べて、遠方点c,d間に印加される電圧Vendは若干低下する。小型の液晶調光セルの場合、この電圧低下はわずかであるため、動作上、大きな問題は生じないが、広い面積をもった液晶調光フィルムの場合、この電圧低下は、光の透過度に有意な差を生じさせる要因になる。
また、液晶調光フィルム120の面積が大きくなると、2点a,c間の距離や2点b,d間の距離は大きくなるので、第1電極層抵抗R1および第2電極層抵抗R2の値は大きくなるが、液晶層抵抗RLは逆に小さくなる。もっとも、抵抗R1,R2の値は、抵抗RLの値に比べれば小さいので、液晶調光フィルムの直流抵抗RFの値は、抵抗RLの値によって大きく支配され、液晶調光フィルム120の面積が大きくなると、抵抗RFの値は小さくなる。また、抵抗RLと容量CLは並列接続されているので、液晶調光フィルム120の面積が大きくなって抵抗RLの値が小さくなると、電流は抵抗RLの方により多く流れるようになり、容量CLに供給される電荷が減少し、液晶を駆動するために容量CLに供給される本来の電力は減少してしまう。このため、液晶調光フィルム120の面積が大きくなればなるほど、電源装置110から大きな電力を供給する必要が生じる。
<<< §2. 液晶調光フィルムの交流駆動特性 >>>
液晶調光フィルム120は、直流駆動を行うことも可能であり、図2に示す接続端子a,b間に直流電圧を印加することにより、液晶層122の光の透過率を制御することが可能である。しかしながら、直流駆動を行った場合、液晶分子の配向が常に同一方向に偏った状態に固定されるため、いわゆる「液晶の焼き付き」が生じ、電圧供給を中止しても、本来の状態に戻らなくなる問題が発生する。このため、通常は、交流駆動(一般的には、30〜200Hzの周波数をもつ交流信号による駆動)を行うことが多い。
本発明に係る液晶調光装置100も、液晶調光フィルム120を交流駆動することを前提とした装置であり、電源装置110は、交流電力を供給する機能を有している。ただ、本発明では、従来の一般的な駆動周波数の帯域である30〜200Hzに比べて、遥かに低い周波数をもつ矩形波交流信号による駆動が行われる。この点については、§3において詳述する。
ここでは、§1で述べた液晶調光フィルム120の交流駆動特性を説明する。図3は、10mm角の液晶調光フィルム120の交流駆動特性を示すグラフである。この液晶調光フィルム120は、図2(a) に示す2点a,c間の距離が、たかだか10mm程度であり、「液晶調光フィルム」と呼ぶよりは、むしろ「液晶調光セル」と呼ぶべきものであるが、ここでは、比較の便宜上、「液晶調光フィルム」と呼ぶことにする。
図3(a) は、従来の一般的な液晶調光セルに利用されている60Hzの矩形波を発生する電源装置110を用いた場合の接続端子供給電圧Vin(図2(a) の2点a,b間電圧:実線グラフ)と遠方端子供給電圧Vend(図2(a) の2点c,d間電圧:破線グラフ)とをオシロスコープで測定した結果を示すグラフである。図には、実線グラフVinしか現れていないが、破線グラフVendは実線グラフVinに重なるグラフになる。図3(b) は、60Hzの正弦波を発生する電源装置110を用いた場合の同様のグラフであり、やはり、破線グラフVendは実線グラフVinに重なるグラフになる。結局、矩形波を用いた場合も、正弦波を用いた場合も、交流電圧Vinの波形と交流電圧Vendの波形とは完全に一致し、図2(a) に示す液晶調光フィルム120の各部において、厚み方向に均一の電圧が印加されることになる。
この図3に示すグラフは、上述したとおり、10mm角の液晶調光フィルム120(液晶調光セル)を、従来の一般的な液晶調光セル用電源で駆動した場合のグラフである。このグラフによれば、液晶調光フィルム120の全面にわたって、ほぼ均一の電圧が印加されていることがわかる。すなわち、電源装置110が発生させるピーク電圧(交流信号の瞬時ピーク電圧)をVpとすれば、液晶調光フィルム120の全面にわたって、ピーク電圧Vpとほぼ同じピーク電圧が印加されることになり、液晶調光フィルム120の全面にわたって、ほぼ均一な光の透過率が得られていることが推定できる。したがって、この程度の大きさの液晶調光フィルム120(液晶調光セル)の場合は、従来の一般的な液晶調光セル駆動用の電源装置110を用いて駆動しても何ら支障は生じない。
これに対して、図4は、1m角の液晶調光フィルム120の交流駆動特性を示すグラフである。この液晶調光フィルム120は、1辺が1mの正方形状のフィルムであり、建物や自動車の窓など、広い面積をもった透明部材に張り付けて用いられる。このため、図2(a) に示す2点a,c間の距離は1m程度に及び、第1電極層抵抗R1および第2電極層抵抗R2の値は無視できない値になる。また、液晶層抵抗RLの値は逆に小さくなり、抵抗RL側に流れる電流の割合が増加し、液晶を駆動するために容量CLに供給される本来の電力は低下してしまう。
図4(a) ,(b) は、それぞれ図3(a) ,(b) に示すグラフを得たときに用いた電源装置と同一の電源装置110(従来の一般的な液晶調光セルに利用されている電源装置)を用いた場合の接続端子供給電圧Vin(実線グラフ)と遠方端子供給電圧Vend(破線グラフ)とを示すグラフである。実線グラフで示す供給電圧Vinの波形は、理想電源111が発生させる本来の矩形波や正弦波に近いものになっているのに対して、破線グラフで示す供給電圧Vendの波形は、本来のピーク電圧Vpがかなり低下し、波形もなまったものになっている。
すなわち、図2(b) に示す2点a,b間の供給電圧Vin(実線グラフ)に比べて、2点c,d間の供給電圧Vend(破線グラフ)は低下し、液晶調光フィルム120の各部における印加電圧に差が生じ、光の透過率にムラが生じることになる。もちろん、場合によっては、2点a,b間の供給電圧も、電源装置110が本来供給できる電圧よりも低下することもあり、液晶調光フィルム120が全体として、本来の調光機能を果たせない状態になる。すなわち、ノーマリーダークのタイプの製品の場合、ピーク電圧Vpをもつ交流信号を供給して駆動しても、本来の全面透明状態にはならずに濁りを生じた状態になる。また、ノーマリークリアのタイプの製品の場合、ピーク電圧Vpをもつ交流信号を供給して駆動しても、本来の全面不透明状態にはならずに半透明の部分を有する状態になる。
このように、10mm角の液晶調光フィルムを駆動するために設計された電源装置は、当該液晶調光フィルムを正常に駆動することはできても、1m角の液晶調光フィルムを正常に駆動することはできない。本発明は、建物の外装もしくは内装に用いられる窓、乗り物の窓、またはショーケース用のガラスに張り付けて用いるのに適した面積をもった液晶調光フィルムを有する液晶調光装置を主眼とするものであり、たとえば、電子シェードとして利用される装置に係るものである。そのような液晶調光装置に用いる電源装置は、広い面積をもった液晶調光フィルムを駆動するのに適した機能を備えている必要がある。
本願発明者が行った実験によると、10mm角程度の液晶調光セルを駆動するために設計された一般的な電源装置では、面積が0.1平方m以上の面積を有する大型の液晶調光フィルムを正常に駆動することができなかった。具体的には、上記一般的な電源装置を用いて、液晶調光フィルムの縁部の一箇所に60Hzの交流電圧を印加して駆動した場合、液晶調光フィルムの面積が0.1平方m以上になると、液晶調光フィルムに印加される実電圧が低下する現象が現れ始めた。本発明は、0.1平方m以上の面積をもった大型の液晶調光フィルムを有する液晶調光装置を主たる対象としてなされたものであり、そのような大型の液晶調光フィルムを正常に駆動することができる電源装置に最適な駆動周波数を提案するものである。
<<< §3. 本発明に係る液晶調光装置の特徴 >>>
大型の液晶調光フィルム120に対して、これを支障なく駆動するための十分な電力供給を行うための方法としては、電源装置110の電圧を高める方法がある。図5は、図1に示す液晶調光フィルム120の「透過率−電圧特性」を示すグラフである。このグラフは、液晶調光フィルム120の両接続端子a,b間に、60Hzの矩形波交流信号を加えるという前提において、当該矩形波交流信号のピーク電圧(単位V:以下、単に印加電圧という)と、その時点での液晶調光フィルム120の光の透過率(単位%:全面についての平均値)を示している。
図5のグラフに示す「透過率−電圧特性」の測定対象として用いた液晶調光フィルム120は、ノーマリーダークのタイプの液晶層122を用いており、印加電圧が0Vのときは透過率0%の完全遮光状態を維持しているが、印加電圧が3V程度を超えると透過率が徐々に上昇してゆき、印加電圧が10Vになると、透過率は33%程度になり、曇りガラスのような半透明状態になる。
このように、図5に示す例は、透過率を0%〜33%の範囲で制御する調光を行う機能をもった液晶調光装置100の例であり、印加電圧を0〜10Vの範囲で調整することにより、透過率を0%〜33%の範囲で制御することができる。ただ、この特性を見ると、印加電圧が4〜5Vのあたりで透過率が急激に変化する特性を有しており、印加電圧0〜3Vの区間や、6〜10Vの区間では、透過率にそれほど大きな変化は生じていない。すなわち、印加電圧が中間値をとる領域で透過率が急激に変化する特性を有しており、印加電圧が低い部分や高い部分では、透過率の変化は緩慢になる。
図5は、ノーマリーダークのタイプの液晶層についてのグラフであるが、ノーマリークリアのタイプの液晶層についてのグラフは、透過率の大小を逆転させた形になり、印加電圧を増加させてゆくと、透過率が徐々に低下してゆくグラフになる。このグラフでも、やはり印加電圧が中間値をとる領域で透過率が急激に変化する特性を有しており、印加電圧が低い部分や高い部分では、透過率の変化は緩慢になる。
図3および図4に示す交流駆動信号の電圧Vpは、電源装置110が出力する交流信号のピーク電圧であり、電力供給の対象となる液晶調光フィルム120についての図5に示すような特性を考慮して、所定の電圧値がピーク電圧Vpとして設定される。
たとえば、図5に示すようなノーマリーダークの特性を有する液晶調光フィルム120を用いて、その用途上、透過率を0%〜33%の範囲で制御する調光を行う場合、最小透過率が0%、最大透過率が33%と定められる。この場合、電源装置110が電圧供給を行わない場合には、液晶調光フィルム120は、最小透過率0%を示し、電源装置110がピーク電圧Vp=10Vをもった交流電圧の供給を行っている場合には、液晶調光フィルム120は、最大透過率33%を示すことになる。よって、この場合、ピーク電圧Vp=10Vに設定すればよい。ノーマリークリアの特性を有する液晶調光フィルム120を用いた場合は、供給電圧の大小関係と、最小透過率と最大透過率との関係が逆転するが、同様の方法でピーク電圧Vpを設定することができる。
要するに、液晶調光フィルム120には、その用途上、最小透過率と最大透過率とが定められており、電源装置110が電圧供給を行わない場合には、液晶調光フィルム120は、最小透過率および最大透過率のいずれか一方の透過率を示し、電源装置110がピーク電圧Vpをもった交流電圧の供給を行っている場合には、液晶調光フィルム120は、最小透過率および最大透過率の他方の透過率を示すことになる。
したがって、大型の液晶調光フィルム120を支障なく駆動するための十分な電力供給を行う方法の1つは、電源装置110の電圧を高める方法である。たとえば、図5のグラフに示す「透過率−電圧特性」をもった液晶調光フィルムを駆動するには、基本的には、ピーク電圧Vp=10Vをもった交流電圧を供給すればよいが、図4の破線グラフに示すとおり、交流波形がなまって実際に液晶調光フィルム120に印加される電圧が低下してしまう場合には、余裕をみて、たとえばピーク電圧Vp=15Vをもった交流電圧を供給できる機能をもった電源装置110を用意すればよい。そうすれば、実際の印加電圧が多少低下しても、予め設定した目的の透過率を得ることができる。しかしながら、電源装置110の出力電圧を高めるとコストが高騰するという問題が生じる。
大型の液晶調光フィルム120を支障なく駆動するための十分な電力供給を行う別な方法としては、液晶調光フィルム120に電圧を印加するための接続端子を多数箇所に設けるという方法もあるが、この方法もコストが高騰するという問題が生じる。たとえば、図1に示す例の場合、液晶調光フィルム120の左縁部にフィルム側接続端子a,bが設けられているが、この接続端子を、液晶調光フィルム120の縁部に沿って多数箇所に設ければ、部分的な電圧低下を抑止することができる。しかしながら、電源装置110との電気的な接続箇所が多数箇所に増えるため、製造コストは高騰せざるを得ない。
製造コストを抑えるためには、図1に示す例のように、フィルム側第1接続端子aを液晶調光フィルム120の縁部の所定箇所(図示の例の場合は、左縁部)に設け、フィルム側第2接続端子bを液晶調光フィルム120の上記所定箇所に対向する位置に設けるようにし、電源装置110からの配線を、1箇所のみにするのが好ましい。
一方、十分な電力供給を行う更に別な方法として、一対の透明電極層として、低抵抗透明電極を用いる方法も考えられるが、低抵抗透明電極は、透光率が低く、外観が悪くなるため、建物の外装もしくは内装に用いられる窓、乗り物の窓、またはショーケース用のガラスに張り付けて用いる大型の液晶調光装置には不適当である。
そこで、本願発明者は、製造コストの高騰を抑えつつ、電源装置110によって液晶調光フィルム120の透過率の制御を十分に行うために、電源装置110から供給する交流駆動信号の周波数を特定の値に設定することに着眼した。前述したように、従来の液晶調光装置では、30〜200Hzの周波数をもった交流信号で駆動を行うのが一般的である。これは、一般に、200Hzを超える高周波域で駆動した場合、図4の破線グラフで示すような波形のなまりにより印加電圧の低下が激しくなり、十分な電荷供給ができなくなり、30Hz未満の低周波域で駆動した場合、液晶調光フィルム面にフリッカと呼ばれるちらつき現象が生じるためである。
このように、液晶調光フィルム120の駆動周波数として、従来は、30〜200Hzの中周波域の周波数を用いることが常識であった。本発明の特徴は、この常識に反して、フリッカが生じる低周波域よりも更に低い駆動周波数を用いる点にある。図6は、本発明に係る液晶調光装置100に用いられる矩形波交流信号の波形図である。たとえば、この矩形波交流信号の周波数を0.01Hzという非常に低い周波数に設定したとすると、その周期Tは100sec という非常に長い時間になる。図6には、この矩形波交流信号の半周期T/2の区間の波形が描かれているが、周波数を0.01Hzに設定した場合、半周期T/2=50sec という長い時間になる。
前述したとおり、電源装置110から接続端子a,b間に電圧Vin(実線グラフ)を供給しても、遠方点c,d間に印加される電圧Vend (破線グラフ)は、若干の波形なまりを生じることになる。しかしながら、半周期T/2を50sec という長い時間に設定すれば、半周期ごとの極性反転直後には、波形なまりの影響により電圧の低下が見られることになるが、その後、電圧はピーク電圧Vpに達して安定する。すなわち、周期Tをこの程度の長さに設定すれば、図6に示す破線グラフと直線グラフとの相違は、半周期ごとの極性反転直後のわずかな期間のみとなる。したがって、液晶調光フィルム120全体には、ほぼ全時間帯にわたってピーク電圧Vpが供給されることになり、大型の液晶調光フィルム120に対しても、これを支障なく駆動するための十分な電力供給を行うことができるようになる。
ただ、周期Tを長く設定すればするほど、駆動信号は直流に近いものになるため、液晶の焼き付きという別な問題が生じることになる。この液晶の焼き付き現象は、直流電圧の印加を長時間続けると、液晶分子の配向が常に同一方向に偏った状態に固定され、電圧供給を中止しても、本来の状態に戻らなくなる問題であり、この焼き付き現象を避けるため、従来の一般的な液晶調光装置では、直流信号による駆動ではなく、交流信号による駆動を行っている。したがって、本発明を実施する上では、この焼き付き現象を避けるため、駆動周波数に下限値を設定している。
図7は、液晶調光フィルム120を駆動するために用いる交流信号の各周波数帯域の特徴を示すグラフである。図7(a) は、横軸に電源装置110から液晶調光フィルム120に供給する交流電圧の周波数をとり、個々の周波数帯域についての特徴を示したものである。前述したとおり、200Hzを超える高周波域では、波形なまりによる電圧低下が激しくなり、十分な電荷供給ができなくなる。特に、液晶調光セルが大型化した液晶調光フィルムでは、この高周波域で十分な電荷供給を行うことは困難である。
一方、30Hz未満の低周波域では、フリッカの発生により、観察者から見ると不快なちらつきが気になるようになる。このため、従来は、30〜200Hzの中周波域内の周波数をもつ交流電圧によって駆動するのが一般的であった。ただ、この中周波域内の周波数であっても、液晶調光セルが大型化すると、やはり十分な電荷供給ができなくなる可能性がある。
本願発明者は、30Hz以下の周波数域であっても、周波数を更に下げてゆくと、フリッカによる不快なちらつきが気にならなくなることを見出した。すなわち、図7(a) の周波数軸に示す上限周波数fH以下になると、たとえフリッカが発生しても、そのちらつきを不快に感じることがなくなることが判明した。したがって、「30Hz以下の周波数域は、フリッカが生じるため利用することができない」というこれまでの技術常識に反して、この低周波域よりも更に低い周波数帯を利用することが可能であることがわかった。
その一方で、周波数0Hz(すなわち、直流)では、上述した液晶の焼き付きの問題が生じる。また、周波数0Hzに近い直流近傍域においても、同様に焼き付きの問題が生じる。そこで、図示のとおり、焼き付きの問題が生じることがない最低周波数として下限周波数fLを設定し、この下限周波数fL以上、上限周波数fH以下の範囲を特定周波数帯域と定め、本発明では、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流信号を液晶調光フィルムの駆動に利用することにした。
図7(b) は、この本発明の駆動域となる特定周波数帯域近傍の拡大図である。図示のとおり、上限周波数fHを超えると、不快なちらつきが発生する低周波域に入るため、好ましくない。上限周波数fH以下の周波数であれば、たとえフリッカが発生しても、そのちらつきを不快に感じることはなくなる。この上限周波数fHの値は、観察者にとって不快なちらつきが発生しない周波数の上限値を意味し、§4で述べるように、fH=0.1Hz(周期TH=10sec)であることが確認できた。
たとえば、図6に示す例において、矩形波交流信号の周波数を0.1Hz(上限周波数fH)に設定すると、周期Tは10sec になり、半周期T/2=5sec ごとに極性が反転する。この極性反転時には、一瞬ちらつき(本願では、このような「ちらつき」も便宜上、「フリッカ」と呼ぶことにする)が生じるようになるが、このような「ちらつき」は、20Hz程度の周波数で駆動したときに生じるような不快な「ちらつき」にはならない。このように、上限周波数fH=0.1Hz以下の周波数であれば、不快な「ちらつき」が発生することはない。
一方、図7(b) に示すとおり、駆動用交流信号の周波数が、下限周波数fL未満になると、焼き付きが発生する直流近傍域に入るため、好ましくない。この下限周波数fLの値は、用いる液晶層122の構成等によって異なるが、§4で述べる実験に用いた特定の液晶調光フィルム120の場合、fL=1.9×10−6Hz(周期TL=6日)であることが確認できた。別言すれば、当該実験に用いた特定の液晶調光フィルム120の場合、半周期TL/2=3日(72時間)の期間だけ、同一極性の電圧を印加しても、焼き付きは生じないことになる。
結局、本発明の特徴は、電源装置110から液晶調光フィルム120に対して、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行うようにし、この所定の駆動周波数として、液晶調光フィルム120に焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルム120に観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにした点にある。具体的には、§4で詳述するとおり、液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、下限周波数fLから上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、電源装置110が、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給するようにすればよい。
このように、本発明に係る液晶調光装置では、従来の一般的な駆動用周波数帯域である30〜200Hzの範囲より遥かに低い周波数帯域の周波数をもった矩形波交流信号によって液晶調光フィルムを駆動するようにしたため、面積の大きな液晶調光フィルムに対しても、十分な電力供給を行うことができるようになり、透過率の制御を十分に行うことが可能になる。また、本発明における駆動周波数は、観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数に設定されているため、不快なちらつきの発生を抑えることができる。しかも、液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数よりも高い周波数で駆動を行うため、液晶調光フィルムに焼き付きが生じることも防ぐことができる。
このように、本発明では、上記特定周波数帯域内の周波数をもつ交流信号によって液晶調光フィルムを駆動するようにしたため、電源装置110の供給電圧を高めたり、液晶調光フィルム120に電圧を印加するための接続端子を多数箇所に設けたりする方法を採用する必要はなく、その結果、製造コストが高騰するという問題が発生することもない。よって、本発明によれば、製造コストの高騰を抑えつつ、電源装置によって液晶調光フィルムの透過率の制御を十分に行うことが可能になる。
<<< §4. 上限周波数fHおよび下限周波数fLを決定するための実験 >>>
ここでは、図7に示す上限周波数fHおよび下限周波数fLを決定するために行った実験およびその結果を説明する。
まず、上限周波数fHを決定するために行った実験を説明する。上限周波数fHは、図7に示すとおり、不快なちらつきが発生する低周波域と、そのようなちらつきが発生しない本発明の駆動域(特定周波数帯域)と、の境界を示す周波数である。そこで、本願発明者は、駆動周波数によるちらつき発生の影響度合を示す影響測定装置を用いて、駆動周波数とちらつき発生との関係を調べてみた。
図8は、この影響測定装置200の正面図である。この影響測定装置200は、図示のとおり、矩形状のA4判サイズの黒画用紙210の中央に矩形状の開口部211を開け、裏側に液晶調光装置220(図8では、一点鎖線でその輪郭を示す)を取り付けたものである。実際には、この液晶調光装置220の裏側にバックライト230が配置されている。なお、図8における斜線ハッチングは、黒画用紙210の表面領域を示すものであり、断面を示すものではない。
黒画用紙210に設けられた開口部211は、一辺が50mmの正方形であり、液晶調光装置220の液晶調光フィルムの表面部分を露出させる役割を果たす。液晶調光装置220は、図5に示す「透過率−電圧特性」をもったノーマリーダークタイプの液晶調光フィルムを備えた装置であり、電圧を印加しない状態では光の透過率(背面に設置されたバックライト230からの光の透過率)を0%とする遮光性を有している。液晶調光フィルムへの印加電圧を増加させてゆくと、図5のグラフに示すように、徐々に透過率が増加してゆき、印加電圧が10Vになった時点で、透過率は33%に達する。
液晶調光装置220に用いられている液晶調光フィルム(液晶調光セル)は、開口部211の面積とほぼ同程度の面積(50mm角程度)を有するものであり、本発明が主たる適用対象とする大型のフィルムではない。したがって、基本的には、電源装置から供給された接続端子供給電圧Vinが液晶調光セル全面にそのまま印加され、電圧低下が生じることはない。ここで行う実験は、従来の小型の液晶調光セルを用いて駆動周波数を変化させ、その影響により、観察者にとって不快なちらつきが認識されるか否かを判定することを目的としている。
液晶調光フィルムの背面からの照明を行うバックライト230(図8には示されていない)は、LEDと樹脂拡散板とを備えた照明装置であり、2000cd/mの輝度をもった白色に近い照明光で照明する機能を有する。したがって、観察者が、この影響測定装置200を正面から観察すると、開口部211内に液晶調光装置220の液晶調光フィルムを認識することができ、この液晶調光フィルムへの印加電圧を増加させてゆくと、開口部211の内部から白色照明光が透過してくる様子を認識できる。
図9は、図8に示す影響測定装置200を用いた具体的な測定方法を示す側面図(黒画用紙210の部分は側断面図)である。上述したように、黒画用紙210には、開口部211が開けられており、その裏側に液晶調光装置220が取り付けられている。そして、液晶調光装置220の背面には、バックライト230が配置されている。
以下の実験は、この影響測定装置200を、内部に白色の壁紙を張り付けた部屋内に設置し、図示のとおり、影響測定装置200の正面から3m離れた位置に被験者400を座らせる環境で行われた。なお、影響測定装置200および被験者400は、部屋の天井に設置された昼光色蛍光灯300によって、1000lxの照度で照らされている。また、被験者400から観察した場合、液晶調光装置220の液晶調光フィルム面には、蛍光灯300が映り込まないように調整されている。
この影響測定装置200を用いた実験(以下、ちらつき感覚テストと呼ぶ)は、次のような手順で行われた。まず、影響測定装置200の液晶調光装置220を、ピーク電圧Vp=10V、駆動周波数100Hz(図7(a) に示す中周波域の周波数)の矩形波交流電圧を用いて駆動し、被験者400に対して、次の2つの質問をする。
質問1:開口部内の表示にちらつきを感じましたか?
質問2:ちらつきを感じた場合、ちらつきを不快に感じましたか?
そして、駆動周波数を100Hzから所定のステップで徐々に減少させてゆきながら、同様の質問を繰り返してゆく作業を、駆動周波数が0.01Hzに達するまで行った。このようなちらつき感覚テストを、10人の被験者400に対して行い、2つの質問について、肯定的な回答が得られた人数を集計した。
図10は、このちらつき感覚テストの結果を示すグラフである。グラフの横軸は、対数尺度の駆動周波数(Hz)であり、グラフの縦軸は、液晶調光装置220を各駆動周波数で駆動した場合の上記2つの質問における肯定的な回答を行った被験者の人数(人)である。黒四角のプロットは、上記質問1で肯定的な回答を行った被験者の人数(すなわち、ちらつきを感じた人数)であり、白丸のプロットは、上記質問2で肯定的な回答を行った被験者の人数(すなわち、ちらつきを不快に感じた人数)である(一部の周波数区間では、黒四角と白丸とが重複している)。
結局、図10において、一点鎖線で示す黒四角のプロットを結ぶグラフは、ちらつきを感じた人数の周波数に対する変化を示しており、破線で示す白丸のプロットを結ぶグラフは、ちらつきを不快に感じた人数の周波数に対する変化を示している。図示のとおり、30Hz以上の周波数域では、ちらつきを感じた人数はほぼ0であり、ちらつきを不快に感じた人数も0である。周波数が30Hz未満になると、ちらつきを感じた人数も、それを不快に感じた人数も、急激に上昇する。従来、一般的な液晶調光セルの駆動周波数の下限を30Hzとしていたのは、30Hz未満の周波数で駆動すると、人間にとって不快なちらつきが生じるためである。
図10のグラフに示すとおり、周波数を10Hz以下にすると、10人の被験者全員がちらつきを不快に感じていることがわかる。ところが、周波数が0.1Hzに達すると、多くの被験者がちらつきを感じているものの、それを不快に感じる人数は極端に減少することがわかる。周波数を更に下げてゆき、0.01Hzに達すると、ちらつきを感じた人数は大幅に減少し、ちらつきを不快に感じた人数は0になる。
電子シェードなどの一般的な用途では、ちらつきが感じられたとしても、そのちらつきが不快に感じるものでなければ、実用上、支障は生じない。したがって、駆動周波数の上限値fHの値は、図10に破線で示すグラフに基づいて決定すればよい。具体的には、図示のとおり、周波数が0.1Hz以下になれば、ちらつきを不快に感じる人数が急激に減少することがわかる。すなわち、0.1Hzという駆動周波数は、臨界的な意義をもつ数値になり、不快なちらつきが発生しない駆動周波数の上限値ということになる。
このちらつき感覚テストの結果から、図7(b) に示す上限周波数は、fH=0.1Hzに設定すればよいことがわかる。なお、このちらつき感覚テストの結果は、液晶調光装置220の表示面に生じたちらつき(明度の急激な変化)が人間に与える生理的影響を示すものであり、明度変化に対する人間の感覚特性を示すものである。したがって、影響測定装置200に用いる液晶調光装置220がどのようなものであっても、また、開口部211の面積がどのようなものであっても、上限周波数fH=0.1Hz以下の駆動周波数で液晶調光セル(液晶調光フィルム)を駆動すれば、人間の感覚として、不快なちらつきが認識されることがないことを示している。
別言すれば、0.1Hzなる臨界値は、人間という生物がもつ固有の感覚特性において、不快なちらつきが認識されない上限周波数fHとして普遍性をもつ値であり、§1で述べた構成を有する一般的な液晶調光セル(液晶調光フィルム)に広く適用可能な周波数値ということができる。
続いて、下限周波数fLを決定するために行った実験を説明する。下限周波数fLは、図7に示すとおり、焼き付きが発生する直流近傍域と、焼き付きが発生しない本発明の駆動域(特定周波数帯域)と、の境界を示す周波数である。そこで、本願発明者は、様々な周波数の矩形波交流電圧を用いて液晶調光セルを駆動して、駆動周波数と焼き付き発生との関係を実験により調べてみた。ここでは、この実験を、焼付状態テストと呼ぶことにする。この焼付状態テストは、次のような手順で行われた。
まず、実験に用いる液晶調光装置100を用意した。この液晶調光装置100は、図1に示す構成を有する装置であり、この装置に用いられている液晶調光フィルム120は、図5に示す透過率−電圧特性を有している(ノーマリーダークの特性)。具体的には、この液晶調光フィルム120は、液晶層122が、電界効果型の液晶分子(ゲスト・ホスト型)を含む厚み7μmの層によって構成され、第1透明電極層121および第2透明電極層123が、ITOからなる厚み30nmの層によって構成されている。直流抵抗RFの値は、800kΩである。また、電源装置110との接続は、図1に示す例のように、縁部に設けられたフィルム側第1接続端子aおよびフィルム側第1接続端子bに対して行っている。
まず、この実験用の液晶調光装置100を、ピーク電圧Vp=10V、駆動周波数3×10−3Hz(図7(b) に示す特定周波数帯域の周波数)の矩形波交流電圧を用いて2000時間(約83日)だけ連続駆動する。そして、この2000時間の連続駆動期間中、液晶調光フィルム120の透過率を適宜測定する。2000時間の連続駆動期間が終了したら、続いて、液晶調光フィルム120に対する供給電圧を0Vとする駆動休止期間を1分間設けた後、液晶調光フィルム120の透過率を再度測定する。
要するに、液晶調光フィルム120に対して、ピーク電圧Vp=10V、3×10−3Hzの矩形波交流電圧を供給して2000時間の連続駆動を行いながら透過率を測定した後、電圧供給を止めて1分間放置してから、透過率を再度測定する実験を行うことになる。焼付状態テストは、上記実験を、駆動周波数を3×10−3Hz(周期:約5分)から所定のステップで徐々に減少させながら、駆動周波数が3×10−7Hz(周期:約926時間)に達するまで繰り返し行ったものである。
図11は、この焼付状態テストの結果を示すものであり、各グラフG1,G2の横軸は、対数尺度の駆動周波数(Hz)であり、縦軸は、液晶調光フィルム120の透過率である。ここで、図11のグラフG1(黒四角のプロットを一点鎖線で結んだグラフ)は、2000時間の連続駆動期間中の平均透過率を示すグラフであり、グラフG2(白丸のプロットを破線で結んだグラフ)は、2000時間の連続駆動期間が終了した後、電源供給を中止して1分後に測定した透過率を示すグラフである。
グラフG1は、ピーク電圧Vpをもった矩形波交流電圧を印加したときの2000時間の連続駆動期間中の平均透過率であるので、ほぼ、設計上の最大透過率を示している。ただ、駆動周波数が3×10−6Hz以下になると透過率が若干低下してくる。その理由は、液晶中のイオン性不純物が透明電極に付着し、液晶にかかる電圧が低下するためと推定される。
一方、グラフG2は、電圧供給を中止してから1分後の透過率を示しており、ノーマリーダークの特性をもつ液晶調光フィルム120に対して、何ら電圧を印加していない状態における透過率ということになるので、本来であれば、透過率は0%になるべきである。しかしながら、駆動周波数が3×10−5Hzより下がると、透過率がわずかながら上昇し、駆動周波数が1.9×10−6Hzよりも低くなると、透過率が急激に上昇することがわかる。具体的な測定値を見てみると、駆動周波数が1.9×10−6Hzの場合の透過率が4%であるのに対して、駆動周波数が1.8×10−6Hzの場合の透過率は13%と急増している。
特に、図11のグラフの左端に示すように、駆動周波数が3×10−7Hzの場合に至っては、透過率は20%を超える状態になり、白丸のプロット値(電圧を印加していない状態)が黒四角のプロット値(ピーク電圧Vpを印加している状態)と大差のない値まで上昇している。これは、液晶調光フィルム120が完全に焼き付き状態になっていることを示している。
このように、駆動周波数が1.9×10−6Hz以上の場合の透過率はたかだか4%以下であるので、一般的な観察者が焼き付き現象の発生を認識することはなく、実用上、焼き付き現象は問題にならない。ところが、駆動周波数が1.9×10−6Hz未満になると、透過率は10%を超える値に急増することになり、焼き付き現象の発生が目立つようになる。したがって、1.9×10−6Hzという駆動周波数(周期:約6日)は、臨界的な意義をもつ数値になり、焼き付き(一般的な観察者に認識される程の焼き付き)が発生しない駆動周波数の下限値ということになる。
この焼付状態テストの結果から、当該実験に用いた液晶調光フィルム120に対して、当該実験に用いた駆動条件で電圧を印加した場合、図7(b) に示す下限周波数fLの値を、fL=1.9×10−6Hzに設定すればよいことがわかる。もっとも、この焼き付き状態テストの結果は、上述したとおり、液晶層122が、所定の厚みをもった電界効果型の液晶分子(ゲスト・ホスト型)を含む層によって構成され、第1透明電極層121および第2透明電極層123が、所定の厚みをもったITOからなる層によって構成されている特定の液晶調光セル120を、ピーク電圧Vp=10Vの駆動電圧で駆動した場合に得られる固有の測定結果である。したがって、fL=1.9×10−6Hzという下限周波数値は、任意の液晶調光セル120を任意の駆動電圧で駆動した場合に共通して用いられる普遍的な値ではない。
上述したように、上限周波数fHは、人間という生物がもつ固有の感覚特性おいて、不快なちらつきが認識されない上限値としての普遍的な意義をもつ値であるのに対して、下限周波数fLは、特定の液晶調光フィルムを特定の条件で駆動した場合において、焼き付きが発生しない駆動周波数の下限値ということになるので、個々の液晶調光フィルムおよび個々の駆動条件ごとに、それぞれ固有の値を設定する必要がある。別言すれば、下限周波数fLの値は、用いる液晶調光フィルム120についての各部の寸法、液晶層122を構成する液晶やこれに含まれる不純物の種類、駆動用信号のピーク電圧等に応じて、それぞれ異なってくる。
したがって、特定の液晶調光フィルム120を特定の条件で駆動する場合の下限周波数fLの値を、厳密に定めるためには、個別の焼付状態テストを実施する必要がある。もっとも、本願発明者が、この焼付状態テストを、各部の寸法、液晶や不純物の種類、駆動信号のピーク電圧等を変えたいくつかの例について実施したところ、下限周波数fLは、概ね、fL=1.1×10−6Hz(周期TL=10日)〜2.8×10−5Hz(周期TL=10時間)の範囲内に収まることが確認できた。したがって、下限周波数fLを、fL=2.8×10−5Hz(周期TL=10時間)に設定しておけば、任意の構成をもった液晶調光フィルム120を、任意の駆動条件で駆動する場合でも、焼き付きを防止することが可能である。
結局、本発明を実施するにあたっては、人間に不快なちらつきが認識されない駆動周波数の上限値fHとして、fH=0.1Hzという普遍値を設定し、焼き付きが発生しない駆動周波数の下限値fLとして、実際に用いる液晶調光フィルム120に応じて、fL=1.1×10−6Hz(周期TL=10日)〜2.8×10−5Hz(周期TL=10時間)の範囲内の適正値を設定し、下限値fL〜上限値fHの範囲を特定周波数帯域と定め、電源装置110が液晶調光フィルム120に対して、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給するようにすればよい。上述したとおり、当該上限値fHや下限値fLを境界として、不快なちらつき現象や焼き付き現象の程度に急激な変化が生じるため、これらの数値はいずれも臨界的な意義をもつ普遍的な数値ということができる。
このように、本発明に係る液晶調光装置100の特徴は、電源装置110から液晶調光フィルム120に対して供給する駆動信号の周波数を、特定周波数帯域内の周波数とした点にある。すなわち、本発明に係る電源装置110は、液晶の透過率を変化させて調光を行うために、液晶層122と、この液晶層122の一方の面に配置された第1透明電極層121と、この液晶層122の他方の面に配置された第2透明電極層123と、を有する液晶調光フィルム120を駆動するための装置であり、第1透明電極層121と第2透明電極層123との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行う機能を有し、この所定の駆動周波数として、液晶調光フィルム120に焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルム120に観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにした点に特徴がある。
そして、上述したちらつき感覚テストおよび焼付状態テストの結果から、電源装置110が供給する駆動信号の周波数の範囲を示す特定周波数帯域としては、液晶調光フィルム120に焼き付きが発生しない周波数の下限である下限周波数fL(上例の場合は、fL=1.9×10−6Hz)以上、0.1Hz以下の範囲が好ましいことが判明したことになる。
<<< §5. 本発明の変形例 >>>
これまで本発明を基本的な実施形態について説明したが、ここでは、本発明のいくつかの変形例を述べる。
<5.1 極性反転時に初頭電圧Vppを印加する変形例>
本発明に係る液晶調光装置100では、液晶調光フィルム120に対して、0.1Hz以下の矩形波交流電圧(不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数をもった交流信号)を供給して駆動を行うため、上述したとおり、観察者がちらつきを認識したとしても、それを不快に感じることはない。しかしながら、不快な感じを与えないとしても、ちらつきの発生はできるだけ低減させた方が好ましい。そこで、ここでは、ちらつきの発生をより低減させる工夫を施した変形例を述べる。
図12は、電源装置110から供給される駆動用交流信号の極性反転時に、液晶調光フィルム120に生じる透過率変動を示すグラフである。ここで、図12(b) は、液晶調光フィルム120に印加される矩形波交流電圧の波形(周期T)を示し、横軸は時間t、縦軸は印加電圧(単位V)を示している。図12(b) に実線で示されたグラフVinは、図2(a) に示すフィルム側第1接続端子aおよびフィルム側第2接続端子b間に印加される電圧波形を示し、図12(b) に破線で示されたグラフVend は、図2(a) に示すフィルム側第1遠方点cおよびフィルム側第2遠方点d間に印加される電圧波形を示している。図12(a) は、セルの光学応答(透過率)を示すグラフであり、横軸は図12(b) の時間軸tに同期している。
図12(b) に実線グラフで示す電圧波形Vinは、電源装置110が発生した矩形波交流電圧にほぼ等しい矩形波になるが、破線グラフで示す電圧波形Vend は、透明電極層121,123の抵抗R1,R2等の影響により波形になまりが生じる。これは既に、§2で説明したとおりである。液晶調光フィルム120を全体的に見れば、フィルム側接続端子a,bから離れれば離れるほど、波形のなまりが激しくなる。また、図3および図4のグラフを比較すればわかるとおり、この波形のなまりは、液晶調光セル(液晶調光フィルム)が大型になればなるほど顕著になる。
図12(b) に実線グラフで示す電圧波形Vinの場合、駆動用交流信号の極性反転時に、供給電圧はピーク電圧−Vpから+Vpへと、あるいは、+Vpから−Vpへと、瞬時に切り替わることになるので、供給電圧の絶対値は、ほぼピーク電圧Vpに維持されたままになり、ちらつきはほとんど生じない。ところが、図12(b) に破線グラフで示す電圧波形Vend の場合、駆動用交流信号の極性反転時に、供給電圧はピーク電圧−Vpから+Vpへと、あるいは、+Vpから−Vpへと、なだらかに変化することになるので、供給電圧の絶対値はピーク電圧Vpから低下し、ちらつきが生じるようになる。
たとえば、図12(b) に示すように、電圧波形Vend の絶対値がピーク電圧Vpから低下すると、図12(a) に示すように、若干のタイムラグが経過した時刻t1において(タイムラグの長さは、液晶層122に用いられている液晶の応答性に応じて決まる)、セルの光学応答(透過率)が若干低下し始める(ノーマリーダークの特性をもつ液晶調光フィルムの場合)。やがて時刻t2になると、電圧波形Vend の絶対値がある程度回復するので、セルの光学応答は上昇に転じる。このため、時刻t2の前後では、透過率が若干低下する現象が生じ、これがちらつき(フリッカ)として観察されることになる。
同様に、時刻t3において、電圧波形Vend の絶対値がピーク電圧Vpからある程度低下すると、図12(a) に示すように、セルの光学応答(透過率)が影響を受けて若干低下し始め、やがて時刻t4になると、電圧波形Vend の絶対値がある程度回復するので、セルの光学応答は上昇に転じる。このため、時刻t4の前後では、透過率が若干低下する現象が生じ、これがちらつき(フリッカ)として観察されることになる。
結局、駆動用交流信号に極性反転が生じる半周期Ta,Tbごとに、セルの透過率変動H1,H2,H3が発生することになり、この透過率変動H1,H2,H3が、ちらつきとして観察されることになる。
本願発明者は、このような透過率変動H1,H2,H3をより低減させる方法として、極性反転が生じる各半周期Ta,Tbの初頭部分において、絶対値がピーク電圧Vpよりも高い初頭電圧Vppを供給することに想到した。図13は、図12に示す透過率変動H1,H2,H3を抑制させるため、極性反転時にピーク電圧Vpよりも大きな初頭電圧Vppを供給する変形例を示すグラフである。
ここで、図13(b) は、液晶調光フィルム120に印加される矩形波交流電圧の波形を示し、横軸は時間t、縦軸は印加電圧(単位V)を示している。図13(b) に実線で示されたグラフVinは、図12(b) の実線グラフVinと同様に、フィルム側第1接続端子aおよびフィルム側第2接続端子b間に印加される電圧波形を示す。ただ、図13(b) の実線グラフVinでは、負から正への極性反転が生じた直後の前半初頭期間P1において、正のピーク電圧+Vpよりも高い前半初頭電圧+Vppが供給され、続く前半後続期間P2に、正のピーク電圧+Vpが供給される。また、正から負への極性反転が生じた直後の後半初頭期間P3において、負のピーク電圧−Vpよりも低い後半初頭電圧−Vppが供給され、続く後半後続期間P4に、負のピーク電圧−Vpが供給される。
図13(b) に一点鎖線で示されたグラフVend は、図12(b) の破線グラフVend と同様に、フィルム側第1遠方点cおよびフィルム側第2遠方点d間に印加される電圧波形を示している。なお、図13(b) に破線で示されたグラフVend ′は、図12(b) の破線グラフVend と同一波形のグラフを比較参照のために描いたものである。
図13(b) の破線グラフVend ′(図12(b) の破線グラフVend と同じグラフ)が、図12(b) の実線グラフVinで示されている矩形波交流電圧を端子a,b間に印加したときに端子c,d間に生じる電位差を示しているのに対して、図13(b) の一点鎖線グラフVendは、図13(b) の実線グラフVinで示されている矩形波交流電圧を端子a,b間に印加したときに端子c,d間に生じる電位差を示している。
このように、図13(b) の破線グラフVend ′と実線グラフVend との間に生じた差は、図12(b) の実線グラフVinと図13(b) の実線グラフVinとの差に起因している。すなわち、前半初頭期間P1および後半初頭期間P3において、印加電圧の絶対値をVpからVppに増加させたことにより、図13(b) の一点鎖線グラフVend は、より急峻な立ち上がりもしくは立ち下がりを見せていることになる。その結果、図13(a) に示すように、透過率変動H1,H2,H3をより低減させる効果が得られている。
図13(a) の実線グラフは、図13(b) の実線グラフVinを供給した場合のセルの光学応答(透過率)を示すグラフであり、横軸は図13(b) の時間軸tに同期している。図13(a) の破線グラフは、図12(a) の実線グラフと同一波形のグラフを比較参照のために描いたものである。この図13(a) の実線グラフでは、やはり駆動用交流信号に極性反転が生じた後に、セルの透過率変動H1,H2,H3が発生することになるが、破線グラフと比較すると、その変動量は大分低減されていることがわかる。これは、前半初頭期間P1および後半初頭期間P3において、全体値がピーク電圧Vpよりも大きな初頭電圧Vppを印加するようにしたためである。
要するに、ここで述べる変形例では、電源装置110が、第2透明電極層123側を基準電位として、第1透明電極層121側に正の電圧を印加する前半周期Taと、第1透明電極層121側に負の電圧を印加する後半周期Taと、を1周期Tとする交流電圧を供給する場合において、前半周期Taに、前半初頭期間P1と前半後続期間P2とを設定し、後半周期Tbに、後半初頭期間P3と後半後続期間P4とを設定し、前半初頭期間P1には、第1透明電極層121側に正のピーク電圧+Vpよりも高い前半初頭電圧+Vppを供給し、前半後続期間P2には、第1透明電極層121側に正のピーク電圧+Vpを供給し、後半初頭期間P3には、第1透明電極層121側に負のピーク電圧−Vpよりも低い後半初頭電圧−Vppを供給し、後半後続期間P4には、第1透明電極層121側に負のピーク電圧−Vpを供給すればよい。
このような固有の特徴をもつ矩形波交流電圧を用いて駆動を行えば、図13(a) の実線グラフに示すとおり、透過率変動H1,H2,H3の変動量を低減させることができ、この透過率変動H1,H2,H3が、ちらつきとして観察されることを抑制することが可能になる。なお、ここに示す実施例の場合、半周期Ta=Tb=500secに対して、P1=P2=0.05secに設定しているが、初頭期間P1,P3の長さは、透過率変動量低減の効果を見ながら、適宜設定すればよい。
<5.2 液晶の応答性を調整する変形例>
上述したとおり、図12(a) の実線グラフに示す透過率変動H1,H2,H3は、液晶に対する印加電圧が一時的に低下することによりもたらされる。そこで、この透過率変動H1,H2,H3を低減させる別なアプローチとして、液晶の応答性(印加電圧に応じて液晶分子の配向性が変化する際の応答性)を調整する方法も有効である。具体的には、液晶層122を、比較的応答性の遅い液晶(たとえば、粘度が高い液晶)によって構成するような対策を施せば、図12(a) に示すセルの光学応答はより緩慢になるので、透過率変動H1,H2,H3を低減することができる。
結局、上記アプローチを採用するのであれば、電源装置110が、第2透明電極層123側を基準電位として、第1透明電極層121側に正の電圧を印加する前半周期Taと、第1透明電極層121側に負の電圧を印加する後半周期Tbと、を1周期Tとする交流電圧を供給することを前提として、前半周期Taから後半周期Tbに切り替わった直後、および後半周期Tbから前半周期Taに切り替わった直後に、観察者に認識しうるちらつきが発生しないような応答性を有する液晶層122(たとえば、観察者に認識しうるちらつきが発生しないような遅い応答性を示すのに十分な粘度を有する液晶からなる液晶層)を用いて液晶調光フィルム120を構成すればよい。
<5.3 交流駆動信号のデューティー比等に関する変形例>
本発明に係る液晶調光装置100に用いる電源装置110は、図12(b) の実線グラフに示す矩形波交流信号Vinや、図13(b) の実線グラフに示す矩形波交流信号Vinのような交流駆動信号を液晶調光フィルム120に供給する機能を有している。これらの実施例では、前半周期Taと後半周期Tbとの長さの比(デューティー比)が1:1である例を示した。
しかしながら、本発明を実施する上で、矩形波交流信号のデューティー比は、必ずしも1:1である必要はなく、2:1や、3:1というように、1:1以外に設定してもかまわない。すなわち、電源装置110は、第2透明電極層123側を基準電位として、第1透明電極層121側に正の電圧を印加する前半周期Taと、第1透明電極層121側に負の電圧を印加する後半周期Taと、を1周期Tとする交流電圧を供給することになるが、前半周期Taの長さと後半周期Tbの長さとの比を示すデューティー比は、1:1に設定してもよいし、1:1以外に設定してもよい。
ただ、矩形波交流信号の周期Tは、§4で述べた特定周波数帯域の駆動周波数に対応する値になっている必要があるので、半周期Ta,Tbに関しても、特定周波数帯域の駆動周波数に対応する半周期の値になっている必要がある。また、焼き付きを抑えるためには、できるだけ、印加電圧の積分値が0になるように、「正電圧×印加時間」と「負電圧×印加時間」とが同じになるようにするのが好ましい。このような点を考慮すると、デューティー比は、必ずしも1:1に設定しなくてもかまわないが、焼き付きが起こらないようにする観点から、デューティー比をあまり大きく設定するのは好ましくない。
また、これまで述べてきた実施例は、交流駆動信号の周波数(周期)を特定の値に固定して駆動する例であったが、交流駆動信号の周波数は、§4で述べた特定周波数帯域内の周波数であれば、時間的に変動させてもかまわない。すなわち、電源装置110が、特定周波数帯域内の複数通りの周波数を切り替えて、時間的に変動する駆動周波数をもった交流電圧を供給して駆動を行うようにしてもかまわない。
<5.4 液晶調光フィルムの駆動方法としての把握>
これまで、本発明を液晶の透過率を変化させて調光を行う液晶調光装置およびこれに用いる電源装置の発明として説明を行ってきたが、本発明は、液晶調光フィルムの駆動方法として把握することも可能である。
すなわち、本発明は、液晶の透過率を変化させて調光を行うために、液晶層122と、この液晶層122の一方の面に配置された第1透明電極層121と、この液晶層122の他方の面に配置された第2透明電極層123と、を有する液晶調光フィルム120を駆動するための液晶調光フィルムの駆動方法として把握することが可能である。この駆動方法では、第1透明電極層121と第2透明電極層123との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行い、当該所定の駆動周波数として、液晶調光フィルム120に焼き付きが発生する周波数より高く、液晶調光フィルム120に観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いるようにすればよい。
より具体的には、上記液晶調光フィルムの駆動方法において、液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限である下限周波数fLと、上限周波数fH=0.1Hzと、を定め、下限周波数fLから上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域とし、この特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給して駆動するようにすればよい。
100:液晶調光装置
110:電源装置
111:理想電源
112:出力インピーダンス
120:液晶調光フィルム
121:第1透明電極層
122:液晶層
123:第2透明電極層
200:影響測定装置
210:黒画用紙
211:開口部
220:液晶調光装置
230:バックライト
300:蛍光灯
400:被験者
A:電源側第1接続端子
a:フィルム側第1接続端子
B:電源側第2接続端子
b:フィルム側第2接続端子
CL:液晶層容量
c:フィルム側第1遠方点
d:フィルム側第2遠方点
fH:特定周波数帯域の上限周波数(0.1H)
fL:特定周波数帯域の下限周波数(たとえば、1.9×10−6Hz)
G1:連続駆動時の透過率を示すグラフ
G2:焼き付きの度合いを示すグラフ
H1,H2,H3:透過率変動
P1:前半初頭期間
P2:前半後続期間
P3:後半初頭期間
P4:後半後続期間
R1:第1電極層抵抗
R2:第2電極層抵抗
RL:液晶層抵抗
RF:液晶調光フィルムの直流抵抗
t:時間
t1〜t4:時刻
T:駆動用交流信号の周期
Ta:前半周期
Tb:後半周期
TH:上限周波数fHに対応する周期(10sec)
TL:下限周波数fLに対応する周期(3days)
Vend ,Vend′:遠方端子供給電圧
Vin:接続端子供給電圧
Vp:ピーク電圧
Vpp:初頭電圧

Claims (15)

  1. 液晶の透過率を変化させて調光を行う液晶調光装置であって、
    液晶調光フィルムとこれを駆動するための電源装置とを備え、
    前記液晶調光フィルムは、液晶層と、前記液晶層の一方の面に配置された第1透明電極層と、前記液晶層の他方の面に配置された第2透明電極層と、前記第1透明電極層の所定位置に設けられたフィルム側第1接続端子と、前記第2透明電極層の所定位置に設けられたフィルム側第2接続端子と、を有し、
    前記電源装置は、前記フィルム側第1接続端子と前記フィルム側第2接続端子との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行い、
    前記所定の駆動周波数として、前記液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、前記液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いることを特徴とする液晶調光装置。
  2. 請求項1に記載の液晶調光装置において、
    液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、前記下限周波数fLから前記上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、電源装置が、前記特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給することを特徴とする液晶調光装置。
  3. 請求項1または2に記載の液晶調光装置において、
    液晶調光フィルムには、最小透過率と最大透過率とが定められており、電源装置が電圧供給を行わない場合には、前記液晶調光フィルムは、前記最小透過率および前記最大透過率のいずれか一方の透過率を示し、電源装置がピーク電圧Vpをもった交流電圧の供給を行っている場合には、前記液晶調光フィルムは、前記最小透過率および前記最大透過率の他方の透過率を示すことを特徴とする液晶調光装置。
  4. 請求項3に記載の液晶調光装置において、
    電源装置が、
    第2透明電極層側を基準電位として、第1透明電極層側に正の電圧を印加する前半周期と、第1透明電極層側に負の電圧を印加する後半周期と、を1周期とする交流電圧を供給し、
    前記前半周期は、前半初頭期間と前半後続期間とを有し、前記後半周期は、後半初頭期間と後半後続期間とを有し、
    前記前半初頭期間には、第1透明電極層側に正のピーク電圧+Vpよりも高い前半初頭電圧+Vppを供給し、前記前半後続期間には、第1透明電極層側に正のピーク電圧+Vpを供給し、前記後半初頭期間には、第1透明電極層側に負のピーク電圧−Vpよりも低い後半初頭電圧−Vppを供給し、前記後半後続期間には、第1透明電極層側に負のピーク電圧−Vpを供給することを特徴とする液晶調光装置。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    電源装置が、
    第2透明電極層側を基準電位として、第1透明電極層側に正の電圧を印加する前半周期と、第1透明電極層側に負の電圧を印加する後半周期と、を1周期とする交流電圧を供給し、
    液晶調光フィルムの液晶層が、前記前半周期から前記後半周期に切り替わった直後および前記後半周期から前記前半周期に切り替わった直後に、観察者に認識しうるちらつきが発生しないような応答性を有することを特徴とする液晶調光装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    電源装置が、第2透明電極層側を基準電位として、第1透明電極層側に正の電圧を印加する前半周期と、第1透明電極層側に負の電圧を印加する後半周期と、を1周期とする交流電圧を供給し、前記前半周期の長さと前記後半周期の長さとの比を示すデューティー比が、1:1もしくは1:1以外に設定されていることを特徴とする液晶調光装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    電源装置が、所定の周波数範囲内の複数通りの周波数を切り替えて、時間的に変動する駆動周波数をもった交流電圧を供給して駆動を行うことを特徴とする液晶調光装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    フィルム側第1接続端子が液晶調光フィルムの縁部の所定箇所に設けられており、フィルム側第2接続端子が前記液晶調光フィルムの前記所定箇所に対向する位置に設けられていることを特徴とする液晶調光装置。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    液晶調光フィルムが、建物の外装もしくは内装に用いられる窓、乗り物の窓、またはショーケース用のガラスに張り付けて用いるのに適した面積を有することを特徴とする液晶調光装置。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    液晶調光フィルムが、0.1平方m以上の面積を有することを特徴とする液晶調光装置。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の液晶調光装置において、
    液晶層が、電界効果型の液晶分子を含む層によって構成され、第1透明電極層および第2透明電極層が、ITOからなる層によって構成されていることを特徴とする液晶調光装置。
  12. 液晶の透過率を変化させて調光を行うために、液晶層と、前記液晶層の一方の面に配置された第1透明電極層と、前記液晶層の他方の面に配置された第2透明電極層と、を有する液晶調光フィルムを駆動するための電源装置であって、
    前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行う機能を有し、
    前記所定の駆動周波数として、前記液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、前記液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いることを特徴とする液晶調光フィルム駆動用の電源装置。
  13. 請求項12に記載の電源装置において、
    液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、前記下限周波数fLから前記上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、前記特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給することを特徴とする液晶調光フィルム駆動用の電源装置。
  14. 液晶の透過率を変化させて調光を行うために、液晶層と、前記液晶層の一方の面に配置された第1透明電極層と、前記液晶層の他方の面に配置された第2透明電極層と、を有する液晶調光フィルムを駆動するための駆動方法であって、
    前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に、所定の駆動周波数をもった矩形波交流電圧を供給して駆動を行い、
    前記所定の駆動周波数として、前記液晶調光フィルムに焼き付きが発生する周波数より高く、前記液晶調光フィルムに観察者にとって不快なちらつきが発生する周波数より低い周波数を用いることを特徴とする液晶調光フィルムの駆動方法。
  15. 請求項14に記載の駆動方法において、
    液晶調光フィルムに焼き付きが発生しない周波数の下限を下限周波数fLとし、0.1Hzを上限周波数fHとし、前記下限周波数fLから前記上限周波数fHに至る範囲を特定周波数帯域と定義したときに、前記特定周波数帯域内の周波数をもつ矩形波交流電圧を供給することを特徴とする液晶調光フィルムの駆動方法。
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