本明細書における教示による組成物は、高い全視感透過率(例えば、約80%以上、好ましくは約85%以上、より好ましくは約90%以上)を有し、低いヘイズ(例えば、約4%以下、好ましくは約2%以下、さらにより好ましくは約1%以下)、ならびに良好な難燃性(例えば、(i)2.5mmでUL−94 5VB、(ii)2.5mmでUL−94 5VA、もしくは好ましくは(iii)1.0mmでUL−94 V0、2.5mmでUL−94 5VB、及び2.5mmでUL−94 5VAの要件を満たすまたは超える;を有する透明な難燃性ポリカーボネート組成物に関する必要性の1以上を満たし得る。
本明細書における教示による組成物は、高い全視感透過率(例えば、約47%以上、好ましくは約50%以上、より好ましくは約53%以上)を有し、高いヘイズ(例えば、約70%以上、好ましくは約80%以上、さらにより好ましくは約90%以上)、ならびに良好な難燃性(例えば、(i)2.5mmでUL−94 5VB、(ii)2.5mmでUL−94 5VA、もしくは好ましくは(iii)1.0mmでUL−94 V−0、UL−94 5VB、及びUL−94 5VAの要件を満たすまたは超える;を有する光拡散難燃性ポリカーボネート組成物に関する必要性の1以上を満たし得る。
組成物は、難燃剤と高濃度のポリカーボネートとの組み合わせを用いることで、加工性を維持しつつも、i)高い透明度及びii)高いレベルの難燃性の予想外の組み合わせを達成する。
ポリカーボネート
本明細書における教示による組成物は、1以上のポリカーボネートを含む。ポリカーボネートは、2以上のポリマー(例えば、異なるメルトフローレートをそれぞれ有する2以上のポリカーボネート)の組み合わせを含んでいてよい。ポリカーボネートは、1以上の分岐状ポリマー、1以上の直鎖ポリマー、またはこれらの両方を含んでいてよい。
本明細書における教示による難燃性組成物において用いられ得るポリカーボネートの例として、芳香族カーボネートポリマー、例えば、米国特許第3,036,036号;同第3,036,037号;同第3,036,038号及び同第3,036,039号に記載されているトリチルジオールカーボネート;例えば米国特許第2,999,835号;同第3,028,365号及び同第3,334,154号に開示されている、芳香族及び脂肪族置換された誘導体を含めたビス(アリールヒドロキシフェニル(arhydroxyphenyl))−アルキリデン(ビスフェノール−A型ジオールとも呼ばれる)のポリカーボネート;ならびに例えば米国特許第3,169,121号に記載されている他の芳香族ジオールから誘導されるカーボネートポリマーが挙げられる。ポリカーボネートは、ホモポリマーよりもむしろカーボネートコポリマーまたはインターポリマーが望ましい事象において、(1)2以上の異なる二価フェノール、あるいは(2)二価フェノール及びグリコールまたはヒドロキシ−もしくは酸−末端ポリエステルまたは二塩基酸から誘導され得る。1以上のポリカーボネートは、上記カーボネートポリマーの1以上を含むまたはこれらからなるブレンドを含んでいてよい。本明細書における教示による難燃性組成物において用いられ得るポリカーボネートのさらなる例として、エステル/カーボネートコポリマー、例えば米国特許第3,169,121号;同第4,105,633号;同第4,156,069号;同第4,225,556号;同第4,260,731号;同第4,287,787号;同第4,330,662号;同第4,355,150号;同第4,360,656号;同第4,374,973号;及び同第4,388,455号に記載されているものが挙げられる。好ましいポリカーボネートとして、ビスフェノール−Aのポリカーボネート、及びビスフェノール−Aのコポリカーボネートを含む誘導体が挙げられる。さらなる例証として、ポリカーボネートの例は、参照により本明細書に組み込まれるEP0496258B1に記載されている。ポリカーボネートは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,904,673号に記載されているカーボネートポリマーを含んでいてよい。例えば、ポリカーボネートは、分岐状ポリカーボネートと直鎖ポリカーボネートとのブレンドを含んでいてよい。カーボネートポリマーを調製するための方法は周知であり、例えば、いくつかの好適な方法は、全体が参照により本明細書に組み込まれる上記特許に開示されている。
本明細書における教示による難燃性組成物に使用される好ましい分岐状ポリカーボネートポリマーは、いずれの好適なプロセスによって調製されてもよい。例えば、これらは、三価及び/または四価フェノールの存在下、二価フェノールをホスゲンと反応させることによって作製されてよい。米国特許第3,544,514号は、上記プロセスの詳細を開示しており、該特許は、参照により本明細書に組み込まれる。ブロー成形可能な樹脂及びこれらの所望の特性は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,652,602号及び同第4,474,999号において教示されている。いずれも参照により組み込まれる米国特許第6,613,869号;同第5,597,887号;及び同第5,198,527号も参照されたい。米国特許第6,613,869号は、例えば、三官能性分岐剤(例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール;または両方))と共に、溶融エステル交換プロセスが用いられることによる、分岐状ポリカーボネートの調製に可能なアプローチを記載している。
ポリカーボネートは、上記組成物が1以上の概して良好な光学特性、1以上の概して良好な機械的特性、及び/または1以上の概して良好な加工特性、例えば、ポリカーボネートのものと類似の特性を有するように十分な濃度で存在していてよい。ポリカーボネートは、組成物の全重量を基準にして、約90重量%以上、好ましくは約92重量%以上、より好ましくは約94重量%以上、最も好ましくは約96重量%以上の量で存在していてよい。ポリカーボネートは、組成物の全重量を基準にして、好ましくは約99.5重量%以下、より好ましくは約99.2重量%以下、さらにより好ましくは約99.0重量%以下、最も好ましくは約98.9重量%以下の量で存在する。
本明細書における教示による高い透過率及び低いヘイズを有する難燃性組成物において用いられるとき、ポリカーボネートは、全視感透過率が約80%以上、約84%以上、約88%以上、約89%以上、または約90%以上(1mmにおいてASTM D1004に従って測定されるとき)であるように、好ましくは、十分に高い濃度で存在する。かかる組成物について、ポリカーボネートは、好ましくは約95重量%以上、より好ましくは約97重量%以上、さらにより好ましくは約97.6重量%以上、さらにより好ましくは約98.0重量%以上、最も好ましくは約98.1重量%以上の濃度で存在する。
光拡散難燃性組成物において用いられるとき、ポリカーボネートは、該組成物が、本明細書における教示により、概して高いヘイズ、例えばヘイズレベルを有するように十分に少ない量で存在していてよい。例えば、ポリカーボネートの濃度は、約98.9重量%以下、好ましくは約98.7重量%以下、より好ましくは約98.5重量%以下、最も好ましくは約98.3重量%以下であってよい。
好ましいポリカーボネートは、300℃/1.2kgでISO1133に従って測定されるとき、約0.3g/10分以上、より好ましくは約0.8g/10分以上、さらにより好ましくは約1.0g/10分以上、最も好ましくは約1.5g/10分以上のメルトフローレートを有する。好ましいポリカーボネートは、約19g/10分以下、より好ましくは約10g/10分以下、さらにより好ましくは約7g/10分以下、最も好ましくは約5g/10分以下のメルトフローレートを有する。
ポリカーボネートは、上記組成物が良好な難燃性能を有するように十分に高い分子量を好ましくは有する。好ましくは、ポリカーボネートは、約25,000a.m.u(すなわち、原子質量単位)以上、より好ましくは約28,000a.m.u.以上、最も好ましくは約30,000a.m.u.以上の重量平均分子量を有する。ポリカーボネートは、良好な難燃性能、良好な視感透過率、及び良好なヘイズが加工後に維持され得るように十分に低い分子量を好ましくは有する。ポリカーボネートは、約120,000a.m.u.以下、より好ましくは約90,000a.m.u.以下、さらにより好ましくは約60,000a.m.u.以下、さらにより好ましくは約44,000a.m.u.以下、最も好ましくは約42,000a.m.u.以下の重量平均分子量(Mw)を示し得る。ポリカーボネートは、射出成形、ブロー成形、押出またはこれらのいずれかの組み合わせが可能あるように十分に低い分子量を好ましくは有する。良好な加工可能性を必要とする組成物に関して、ポリカーボネートは、約40,000a.m.u.以下、より好ましくは約38,000a.m.u.以下、最も好ましくは約37,000a.m.u.以下の重量平均分子量を好ましくは有する。「重量平均分子量」は、本明細書において用いられるとき、0.02グラムのサンプルが、10mlのクロロホルムと少なくとも8時間にわたって該サンプルを混合することによって調製される液体クロマトグラフィ法によって求められる。混合物は、次いで、0.2μシリンジフィルタを通してろ過され、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって分析される。結果は、既知の分子量を有する参照材料に対して分析される。サンプルは、紫外線検出器(例えば、クロマトグラフ用吸光度検出器、例えば、Applied Biosystemsから入手可能なモデル757)を備えた2つの混床式イオン交換塔(例えばVarian,Inc.から入手可能)を使用して特性決定される。カラム温度は約35℃に保たれる。サンプルの流量は約1ml/分である。テトラヒドロフラン溶出液が用いられて約15μlごとにサンプルサイズを付与する。分子量の測定単位は、典型的にはダルトンである。
本明細書における使用のためのポリカーボネートの好ましい特性及び特徴は、少なくとも:ASTM D790−07についての曲げ弾性率(正接)が約1800MPa以上(より好ましくは約2200MPa以上);曲げ弾性率が約3000MPa以下(より好ましくは約2700MPa以下);ASTM D648−07についての荷重(1.81MPa)撓み温度(DTUL)が約105℃以上(より好ましくは約125℃以上、最も好ましくは約130℃以上);ASTM D638−03(ISO527−1)についての破断点引張伸びが約80%以上(より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約100%以上);破断点引張伸びが約300%以下(例えば、約200%以下);ISO180/Aについてのノッチ付きアイゾッド衝撃強さ(23℃)が約20kJ/m2以上(より好ましくは約45kJ/m2以上、最も好ましくは約75kJ/m2以上);もしくはノッチ付きアイゾッド衝撃強さが約180kJ/m2以下(例えば、約130kJ/m2以下);のうち1つまたはいずれかの組み合わせを典型的には含む。
市販のポリカーボネートの例として、表記CALIBRE(登録商標)、例えば、200−3及び600−3で、Styron LLCまたはその関連会社から入手可能であるものが挙げられる。
炭化塩難燃剤
本明細書における教示によるポリカーボネート組成物は、1以上の炭化塩難燃剤を好ましくは含む。炭化塩難燃剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または両方を好ましくは含む。例えば、炭化塩難燃剤として、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、またはこれらのあらゆる組み合わせが挙げられ得る。最も好ましくは、炭化塩難燃剤が、1以上のカリウム塩を含むまたはこれから本質的になる。好ましい炭化塩難燃剤は、1以上の硫黄原子を含む塩である。より好ましくは、炭化塩難燃剤が、スルホネートを含むまたはこれから本質的になる。硫黄含有塩(例えば、スルホネート)は、1以上の炭素含有基を好ましくは含む。炭化塩における炭素原子数は、好ましくは約11以下、より好ましくは約7以下、最も好ましくは約5以下である。炭化塩難燃剤における炭素原子数は、1以上、2以上、3以上、または4以上であってよい。炭素含有基は、好ましくは非環式である。炭素含有基は、1以上のハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素またはこれらのあらゆる組み合わせ)を好ましくは含む。例として、炭素含有基は、1以上のフッ素原子を有するフルオロアルカン(例えば、パーフルオロアルカン、例えば、パーフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロプロパン、またはパーフルオロオクタン)を含んでいてよい。特に好ましい炭化塩難燃剤は、1以上のパーフルオロアルカンスルホン酸カリウム、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムを含むまたはこれから本質的になる。好ましくは、炭化塩難燃剤は、炭化塩難燃剤の全重量を基準にして約55重量%以上、より好ましくは約65重量%以上、さらにより好ましくは約75重量%以上、最も好ましくは約95重量%以上の濃度でパーフルオロブタンスルホン酸カリウムを含む。
炭化塩難燃剤は、周囲条件でポリカーボネートに好ましくは可溶である。例えば、炭化塩難燃剤は、粒子(例えば、約0.2μm以上の直径を有する粒子)を形成する溶液から好ましくは析出しない。炭化塩難燃剤は、ポリカーボネート中、約168時間以上、約500時間以上、約2,000時間以上、または約10,000時間以上の間、好ましくは安定(すなちわ、可溶)である。
炭化塩難燃剤は、上記組成物が高いレベルの難燃性(すなわち、UL−94 V−0、UL−94 5VA、UL−94 5VB、またはこれらのあらゆる組み合わせの要件を満たす)を有するように十分に高い濃度で存在すべきである。好ましくは、炭化塩難燃剤(例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)は、約0.040重量%以上、より好ましくは約0.045重量%以上、さらにより好ましくは約0.050重量%以上、最も好ましくは約0.055重量%以上の濃度で存在する。
本明細書における教示による高い透過率及び低いヘイズを有する難燃性組成物において用いられるとき、炭化塩難燃剤は、全視感透過率が(1mmにおいてASTM D1004に従って測定されるとき)約80%以上、約84%以上、約88%以上、約89%以上、または約90%以上であるように十分に低い濃度で好ましくは存在する。例として、炭化塩難燃剤(例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)は、組成物の全重量を基準にして約0.120重量%以下、より好ましくは約0.095重量%以下、さらにより好ましくは約0.090重量%以下、最も好ましくは約0.085重量%以下の濃度で存在してよい。
高いレベルの光散乱を有しかつ光拡散剤を含む難燃性組成物において用いられるとき、(高い全視感透過率及び低いヘイズを有する組成物と比較して)より高濃度の炭化塩難燃剤(例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)が用いられてよい。しかし、高濃度の炭化塩難燃剤において、上記組成物は、以下の難燃性の閾値:UL−94 V−0;UL−94 5VA;またはUL−94 5VB;の1以上を満たさなくてもよいことが驚くべきことに見出された。高いレベルの光散乱を有しかつ光拡散剤を含む難燃性組成物において用いられるとき、炭化塩難燃剤(例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム)は、組成物の全重量を基準にして好ましくは約0.300重量%以下、より好ましくは約0.270重量%以下、さらにより好ましくは約0.250重量%以下、最も好ましくは約0.200重量%以下(例えば、約0.100重量%以下、または約0.090重量%以下)である。
低分子量シリコーン化合物
ポリマー組成物は、1以上の低分子量シリコーン化合物を好ましくは含む。理論によって拘束されないが、低分子量シリコーン化合物は、難燃剤として作用し、及び/または組成物の1以上の他の成分の難燃有効性を改良すると考えられる。低分子量シリコーン化合物は、1以上のSi−H基を含む好ましくはオリゴマーである。低分子量シリコーン化合物は、分子中のモノマー単位の平均(例えば、重量平均)数を表す重合度nによって特徴付けられ得る。重合度は、低い分子量が概して低い揮発性を有するように好ましくは十分に高い。本明細書において使用されているとき、シリコーン化合物が低い揮発性を有するということは、該化合物が、ポリカーボネート組成物に典型的な加工温度の際にアウトガスする及び/またはプレートアウトすることを意味する。好ましい低分子量シリコーン化合物は、約2以上、より好ましくは約3以上、最も好ましくは約4以上の重合度(例えば、平均重合度)を有する。低分子量シリコーン化合物は、上記組成物が高い全視感透過率、低いヘイズ、または両方を有するように十分な重合度を好ましくは有する。重合度が高い(例えば、9を超える)とき、低分子量シリコーン化合物は、上記組成物に高いヘイズ及び低い透過率を有させ得る。理論によって拘束されないが、9を超える平均重合度を有する化合物は、結果として、ポリカーボネートマトリクスと部分または完全相溶すると考えられる。低分子量シリコーン化合物の重合度は、好ましくは約9以下、より好ましくは約8以下、さらにより好ましくは約7以下、最も好ましくは約6以下である。低分子量シリコーン化合物は、約60℃以下の溶融温度(例えば、ピーク溶融温度)を好ましくは有し、最も好ましくは、25℃で液体である。
低分子量シリコーン化合物は、1以上のSi−H基を好ましくは含む。低分子量シリコーン化合物中のSi−H基の量は、低分子量シリコーン化合物の全重量を基準にして好ましくは100g当たり約0.05モル以上、より好ましくは100g当たり約0.10モル以上、さらにより好ましくは100g当たり0.15モル以上、さらにより好ましくは100g当たり約0.20モル以上、最も好ましくは100g当たり約0.25モル以上である。Si−H基の量は、低分子量シリコーン化合物の全重量を基準にして好ましくは100g当たり約1.2モル以下、より好ましくは100g当たり約1.0モル以下、さらにより好ましくは100g当たり約0.90モル以下、最も好ましくは100g当たり約0.80モル以下である。
低分子量シリコーン化合物は、1以上のフェニル基を含む。低分子量シリコーン化合物中のフェニル基の量は、低分子量シリコーン化合物の全重量を基準にして好ましくは約30重量%以上、より好ましくは約35重量%以上、最も好ましくは約40重量%以上である。低分子量シリコーン化合物中のフェニル基の量は、低分子量シリコーン化合物の全重量を基準にして好ましくは約75重量%以下、さらにより好ましくは約70重量%以下、最も好ましくは約65重量%以下である。
低分子量シリコーン化合物は、ポリマー組成物が良好な難燃性(すなわち、1mmでUL−94 V−0、2.5mmでUL−94 5VA、2.5mmでUL−94 5VB、またはこれらのあらゆる組み合わせを満たすまたは超える)を有するのに十分な量で好ましくは存在する。好ましくは、低分子量シリコーン化合物の濃度は、ポリマー組成物の全重量を基準にして約1.1重量%以上、より好ましくは約1.2重量%以上、最も好ましくは約1.25重量%以上である。低分子量難燃剤の濃度が1.9重量%より上であると、ポリマー組成物の難燃性特徴が劣る場合がある。好ましくは、低分子量シリコーン化合物の濃度は、ポリマー組成物の全重量を基準にして約1.9重量%以下、より好ましくは約1.8重量%以下、最も好ましくは約1.75重量%以下である。
特に好ましい低分子量シリコーン化合物は、Shin Etsuから入手可能なKR−2710である。KR−2710は、25℃で約1.52の屈折率を有するフェニル−シリコーン難燃剤である。KR−2710は、25℃で約50mm2/sの粘度及び約1.07の比重を有する無色透明な液体である。KR−2710は、Si−H基を有するフェニルメチルポリシロキサンである。
より高分子量のシリコーン化合物、例えば、Shin Etsuから入手可能なX−40−9800)は、あまり有効でなく、本明細書における教示による性能要件の1以上を達成しない場合がある。X−40−9800は、メチル及びフェニル置換基を有する分岐状シリコーンである。X−40−9800は、のSi−H基を概して含まない。X−40−9800は、25℃で粉末であり、約10超の重合度を有する。
本明細書における教示による透明な難燃性ポリカーボネート組成物は、i)衝撃改質剤(例えば、スチレン性ブロックコポリマー)、ii)フルオロポリマー、iii)ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、もしくは両方)、またはiv)これらのあらゆる組み合わせを好ましくは実質的に含まない、あるいは全く含まない。例えば、透明な難燃性ポリカーボネート組成物は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(すなわち、ABS)を実質的に含まない(もしくは全く含まない)でよく、透明な難燃性組成物は、メタクリレート−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(すなわち、MBS)を実質的に含まない(もしくは全く含まない)でよく、またはその両方であってよい。存在する場合、衝撃改質剤、例えば、スチレン性ブロックコポリマーの濃度(例えば、いずれかのABSの濃度、いずれかのMBSの濃度、またはABS及びMBSの合計濃度)は、組成物の全重量を基準にして、約0.3重量%以下、好ましくは約0.2重量%以下、さらにより好ましくは約0.1重量%以下、最も好ましくは約0.05重量%以下であってよい。存在する場合、いずれかのポリエステルの濃度(例えば、いずれかのPETの濃度、いずれかのPBTの濃度、またはPET及びPBTの合計濃度)は、組成物の全重量を基準にして約0.3重量%以下、好ましくは約0.2重量%以下、さらにより好ましくは約0.1重量%以下、最も好ましくは約0.05重量%以下であってよい。存在する場合、いずれかのフルオロポリマーの濃度(例えば、いずれかのポリフルオロアルカン、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoretheylene)の濃度)は、組成物の全重量を基準にして約0.3重量%以下、好ましくは約0.2重量%以下、さらにより好ましくは約0.1重量%以下、最も好ましくは約0.05重量%以下であってよい。
光拡散
一態様において、組成物は、本明細書における教示による光拡散組成物である。光拡散組成物は、1以上の光拡散剤を含んでいてよい。光拡散剤は、25℃で固体粒子の形態であってよい。好ましい光拡散剤は、ポリカーボネート組成物の加工の際、依然として固体粒子として存在する。例えば、光拡散剤は、約220℃、約250℃、約275℃、約300℃、または約325℃の温度で固体であってよい。光拡散剤の平均粒径は、粒子が光を拡散できるように十分に高くあるべきである。例えば、光拡散剤は、約0.1μm以上、好ましくは約0.3μm以上、さらにより好ましくは約0.5μm以上、さらにより好ましくは約0.7μm以上、最も好ましくは約0.8μm以上の平均粒径を有していてよい。光拡散剤の平均粒径は、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約80μm以下、さらにより好ましくは約40μm以下、さらにより好ましくは約20μm以下、最も好ましくは約10μm以下である。
光拡散剤の屈折率対ポリカーボネートの屈折率の比は、好ましくは約0.8以上、より好ましくは約0.85以上、さらにより好ましくは約0.90以上、最も好ましくは約0.92以上である。光拡散剤の屈折率対ポリカーボネートの屈折率の比は、好ましくは約1.4以下、より好ましくは約1.25以下、さらにより好ましくは約1.15以下、最も好ましくは約1.10以下である。
特に好ましい光拡散剤は、シリコーン系拡散剤である。これらは、概して球形であってよく、または、非球形の幾何学形状を有していてよい。光拡散剤は、概して平滑な表面を有してよく、またはテクスチャ状であるもしくは他の場合には概して平滑でない表面を有してよい。
限定されることなく、光拡散剤の例として、TOSPEARL型、GANZPEARL型、シリコーンエラストマー粉末(例えば、メタクリルオキシ(methacyloxy)官能性を有し、DOW CORNING30−424ADDITIVEとしてDOW CORNING CORPORATIONから現在市販されている、例えば、DOW CORNING(登録商標)EP−2720型シリコーン)、及びポリシルセスキオキサン粉末(例えば、ポリメチルシルセスキオキサン球形粉末、例えばE+508及びE+520などを含めたE+粉末として例えばABS NANOTECH CO.,LTD.から市販されている)が挙げられる。
好ましい組成物は、フッ素官能基を有するポリマー滴下防止剤を実質的に含まない、または全く含まない。例えば、ポリカーボネート組成物は、PTFE滴下防止剤を実質的に含まなくてよく、または全く含まなくてよい。
本明細書における教示による光拡散組成物は、1.0mmの厚さでASTM D1003に従って測定されるとき、約47%以上、好ましくは約50%以上、最も好ましくは約54%以上の全光透過度を好ましくは有する。光拡散組成物は、1.0mmの厚さでASTM E2387に従って測定されるとき、約50%以上、より好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上、最も好ましくは約80%以上のヘイズを有していてよい。
試験方法
難燃性
難燃性を、約125mmの長さ、約13mmの幅、ならびに(UL94 V−0では)約1.0mmまたは(UL94 5VB及びUL−94 5VAでは)2.5mmの厚さを有する試料において試験する。第1セットの5試料を23℃及び50%の相対湿度で48時間コンディショニングする。第2セットの5試料を70℃で7日間コンディショニングする。試料をその長さで垂直方向に取り付け、試料の頂部で支持する。UL94 V−0法では、試料の下端がバーナー管の上方約10mmにあり、高さ20mmの垂直の青炎を試料の上縁の中心に10秒間適用し、次いで除去する。燃焼が30秒以内に終了したら、該炎をさらに10秒間適用する。UL94 5VA及び5VBでは、該炎は、さらにより強く、また、バーナー管から約40mm、全炎長が約125mmで延在する青錐体を有しており、青錐体の端を、垂直方向に対する(すなわち、試験試料に対する)バーナーの角度が20°で試料の底端に適用する。
UL94 V−0:試料が、試験炎のいずれの適用後にも10秒を超えて火炎燃焼によって燃焼しない場合があり;セットの5試料の合計燃焼時間が50秒を超えない場合があり;試料が、保持クランプに至るまで火炎または白熱燃焼によって燃焼しない場合があり;試料が、試験試料の下方300mmに配置された乾燥した吸収性脱脂綿を着火する燃焼粒子を滴下しない場合があり;試料が、試験炎の第2の除去後に30秒を超えて持続する白熱燃焼を有さない場合がある。
UL94 5VA及び5VB
垂直試験(5VA、5VB)
試験を棒状試料及びプラーク試料において行う。棒状試料を垂直位置に支持し、火炎を20°の角度で試料の下方隅部の1つに適用する。火炎を5秒間適用し、5秒間除去する。火炎の適用及び除去を5回繰り返す。プラークについての手順は、プラーク試料を水平方向に取り付け、火炎をプラークの下面の中央に適用することを除いて棒状のものと同じである。5VA及び5VB規格のための火炎源は、V−0規格試験のための火炎源と比較しておよそ5倍さらに厳しい。試料は、約2.5mmの厚さを有する。
材料がUL−94 5VA要件を満たすためには、(i)試料が、5回の火炎適用後60秒を超えていずれの燃焼または白熱燃焼も有してはならず;(ii)試料が、綿を着火する燃焼粒子を滴下してはならず;かつ(iii)プラーク試料が、溶け落ち(穴)を示してはならない。
材料がUL−94 5VB要件を満たすためには、(i)試料が、5回の火炎適用後60秒を超えていずれの燃焼または白熱燃焼も有してはならず;(ii)試料が、綿を着火する燃焼粒子を滴下してはならず;かつ(iii)試料が、溶け落ち(穴)を示してもよい。
UL−94 5VA及びUL−94 5VB試験は、より厳しい火炎源を用いており、また、いずれの燃焼粒子の滴下も許容しないため、これらの試験は、UL−94 V−0と比較して合格することが一般により難しい。典型的には、これらのより厳しい難燃性試験に合格するには、高い投入量の難燃剤を用いて、概して低い全視感透過率を有する組成物を結果として生じさせていた。
透明度
本明細書における教示に従って、一態様において、ポリマー組成物は、高い透明度を有する。透明度は、ASTM D1003に従って測定される全視感透過率によって求められ得る。例えば、ポリマー組成物は、約1mmの厚さでASTM D1003に従って測定されるとき、約80%以上、好ましくは約84%以上、より好ましくは約88%以上、さらにより好ましくは約89%以上、最も好ましくは約90%以上の全視感透過率(すなわち、透過率)を有していてよい。全視感透過率は、約1mmの厚さでASTM D1003に従って測定されるとき、約100%以下、約98%以下、約96%以下、または約94%以下であってよい。
ヘイズは、ヘイズが約30%以下であるとき、ASTM D1003(透明なプラスチックのヘイズ及び視感透過率に関する標準試験法)に従って測定されてよい。ヘイズが30%を超えると、プラクティスE2387(測角光散乱測定に関するASTM E2387標準プラクティス)に従って試験されるべきである。
ポリマー組成物の2以上の構成要素が反応して1以上の反応生成物を結果として生じさせ得ることが認識される。ポリマー組成物の記載は、かかる反応生成物を含む。例えば、組成物が、1部の構成要素Aと1部の構成要素Bとの組み合わせの結果である2部の反応生成物Cを含むとき、1部の構成要素Aと1部の構成要素Bとを有する上記の組成物は、2部の反応生成物Cを有する組成物も記載している。
本明細書における教示によるポリマー組成物は、ポリカーボネートと共に典型的に使用される加工装置を使用して好ましくはパーツとなることが可能である。例えば、ポリマー組成物は、成形機(例えば、射出成形機、圧縮成形機、プレス成形機、または射出成形機);押出機(例えば、シート押出機、プロファイル押出機など)、またはパリソンを形成し、次いでパリソンをパリソン内への吹き込み(例えば、空気、不活性ガス、もしくは他のガス)によって膨張させる装置(例えばブロー成形装置)を使用して形成されてよい。好ましい組成物は、射出成形、押出、またはブロー成形によって加工され得る。
本明細書における教示による組成物は、良好な難燃性特徴及び/または良好な光学特性を必要とする用途において使用されてよい。例えば、組成物は、照明用途において用いられてよい。組成物は、照明源を有する照明適用デバイスのためのハウジング構成要素において特に有利な用途を見出し得、ここで、ハウジング構成要素は、照明源を部分的または全体に覆っている。例えば、組成物は、照明源からの光の実質的に全てがハウジング構成要素を通過するように高い全視感透過率を必要とするデバイスにおいて使用されてよい。一態様において、組成物は、非常に低いレベルのヘイズを必要とするハウジング構成要素において使用されてよい。別の態様において、組成物は、ハウジングが光を拡散することを必要とする、したがって、高いレベルのヘイズを必要とするハウジング構成要素において使用されてよい。
重量部は、本明細書において使用されているとき、具体的に参照されている組成物の100重量部を称する。上記適用において列挙されているいずれの数値も、1単位の増分における下限値から上限値までの全ての値を含み、ただし、いずれかの下限値といずれかの上限値との間で少なくとも2単位の分離があることとする。例として、構成要素の量、またはプロセス可変値、例えば、温度、圧力、時間などの値が、例えば、1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると記述されているとき、例えば、15〜85、22〜68、43〜51、30〜32などの値が本明細書において明確に列挙されることが意図される。1未満である値では、1つの単位が、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。これらは、具体的に意図されているものの単なる例であり、列挙されている最低値と最高値との間の数値の全ての起こり得る組み合わせが、同様に本出願において明確に記述されているとみなされるべきである。別途記述されていない限り、全ての範囲が、両方の終点及び該終点間の全ての数を含む。範囲に関連する「約」または「およそ」の使用は、該範囲の両端に適用される。そのため、「約20〜30」は、少なくとも、特定された終点を含めて、「約20〜約30」をカバーすることが意図される。組成物または組み合わせを記載するための用語「consisting essentially of(本質的になる)」及び「consisting substantially of(実質的になる)」は、同定された要素、成分、構成要素またはステップ、及び該組み合わせの基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないかかる他の要素、成分、構成要素またはステップを含んでいる。要素、成分、構成要素またはステップの組み合わせを記載するための用語「comprising(含む)」または「including(含む)」の使用は、本明細書において、要素、成分、構成要素またはステップから本質的になる実施形態も企図している。複数の要素、成分、構成要素またはステップは、単一の一体化された要素、成分、構成要素またはステップによって提供され得る。代替的には、単一の一体化された要素、成分、構成要素またはステップは、別個の複数の要素、成分、構成要素またはステップに分割されてよい。1つの要素、成分、構成要素またはステップを記載するための「a」または「one」の開示は、さらなる要素、成分、構成要素またはステップを除外することを意図していない。
本明細書における教示による組成物を、ポリカーボネートを組成物の他の構成要素(例えば、炭化塩難燃剤、低分子量シリコーン化合物)と溶融ブレンドすることによって調製する。光拡散組成物を調製するときには、光拡散剤が該組成物に含まれる。
種々の組成物において用いられる材料の簡単な説明を表1に列挙する。
組成物を溶融ブレンドした後、約1mm及び約2.5mmの厚さを有する試験試料を準備する。全視感透過率については、組成物を、約1mmの試料厚を使用してASTM D1003に従って試験する。ヘイズについては、組成物を、約1mmの試料厚を使用して(必要に応じてヘイズ値を基準にして)ASTM D1003及び/またはASTM E2387に従って試験する。UL−94 V−0については、組成物を、約1mmの試料厚を使用して試験する。UL−94 5VA及びUL−94 5VBについては、約2.5mmの試料厚を使用して組成物を試験する。種々の組成物の配合及び試験結果を表2〜10に列挙する。
表2を参照すると、ポリカーボネート組成物が高い全視感透過率(例えば、約89%以上、または約90%以上)を有するとき、優れた難燃性及び低いヘイズを、少なくとも97重量%のポリカーボネート、炭化塩難燃剤(例えば、C4)、及び低分子量シリコーン化合物を使用して達成することができることが分かる。ポリカーボネートの分子量を低減すると(例えば、実施例3を参照)、組成物の難燃性が許容されない場合がある。表2〜10を参照すると、組成物の性能が、炭化塩難燃剤の濃度の変化、炭化塩難燃剤の化学構造の変化、ポリカーボネートの分子量の変化、低分子量シリコーン化合物の重合度の変化、低濃度のPTFEの添加、スチレンブロックコポリマーの添加、低分子量シリコーン化合物の濃度、光拡散剤の濃度などよって大幅に影響され得ることが分かる。
表4〜10を参照すると、本明細書における教示による組成物を使用して、良好な難燃性、高い全視感透過率(例えば、約50%以上)及び高いヘイズを有する光拡散組成物を得ることができることが分かる。しかし、難燃性及び/または光拡散/透過率の可能性が、光拡散剤の選択、光拡散剤の濃度、炭化塩難燃剤の濃度の変化、炭化塩難燃剤の化学構造の変化、ポリカーボネートの分子量の変化、低分子量シリコーン化合物の重合度の変化、低濃度のPTFEの添加、スチレンブロックコポリマーの添加、低分子量シリコーン化合物の濃度、光拡散剤の濃度などによって負に影響される場合がある。