JP2019128174A - 放射性セシウムの除去方法 - Google Patents
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放射性セシウムを除去する方法として、特許文献1には、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源と、塩素源とを調合し、調合物を加熱して前記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させ、前記調合物の加熱により生じたガスを冷却し、冷却後のガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級し、分級後の粗粉を造粒し、造粒物を前記調合物と共に加熱することを特徴とする放射性セシウムの除去方法が記載されている。
また、特許文献2には、放射性セシウムで汚染された廃棄物と、酸化カルシウム源と、塩素源とを調合し、調合物を加熱して前記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させ、前記調合物の加熱により生じたガスを冷却し、冷却後のガスに含まれるダストを粗粉と微粉とに分級し、分級後の粗粉を水洗して固液分離し、固液分離後の前記粗粉を含む固体側を前記調合物と共に加熱することを特徴とする放射性セシウムの除去方法が記載されている。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] 放射性セシウムで汚染された廃棄物とカルシウム源を混合して混合材料を得る混合工程と、上記混合材料を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程を含む放射性セシウムの除去方法であって、上記カルシウム源は、CaO源を含むものであり、上記CaO源は、100μmふるい残分量が30〜80質量%、300μmふるい残分量が15〜50質量%、及び、600μmふるい篩残分量が15質量%以下のものであることを特徴とする放射性セシウムの除去方法。
[2] 上記加熱工程において生じた、揮発した放射性セシウムを含む排ガスを冷却した後、該排ガスに含まれるダストを、粗粉と微粉に分級し、該分級によって得られた粗粉を、上記混合工程において、上記廃棄物及び上記カルシウム源と混合する前記[1]に記載の放射性セシウムの除去方法。
[3] 上記CaO源は、生石灰、消石灰及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる一種以上である前記[1]又は[2]に記載の放射性セシウムの除去方法。
[4] 上記カルシウム源は、上記CaO源に加えて、塩化カルシウムを含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の放射性セシウムの除去方法。
また、揮発した放射性セシウムを含むダストは放射性廃棄物となるが、該ダスト中の放射性セシウムの濃度が大きく、かつ、該ダストの発生量が少ないことから、放射性廃棄物として長期の管理が必要な副産物の減容化を図ることができる。
以下、詳しく説明する。
本工程は、放射性セシウムで汚染された廃棄物とカルシウム源を混合して混合材料を得る工程である。
放射性セシウムで汚染された廃棄物の例としては、土壌や、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、ごみ由来の溶融スラグ、貝殻、草木等の一般廃棄物や、下水汚泥、下水スラグ、浄水汚泥、建設汚泥等の産業廃棄物や、がれき等の災害廃棄物であって、放射性セシウムを含むもの等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、放射性セシウムをほとんど含まない部分(例えば、土壌の場合、砂、石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮されたもの(中間処理物)も、本発明における「放射性セシウムで汚染された廃棄物」の概念に含まれるものとする。
本発明における除去対象物である放射性セシウムは、事故を起こした原子力発電所から、ヨウ化セシウム等の形態で放射性ヨウ素と共に外部の環境中に放出され、上空から地表面に降下したものである。ヨウ化セシウムは、沸点が1200℃以上であり、沸点が700℃程度であるセシウム単体に比べて、揮発し難い性質を有する。そのうえ、地表面に降下した放射性セシウムは、土壌に含まれる粘土鉱物中に閉じ込められて、土壌から離れにくい状態となり、また、形態が変化する場合もある。また、がれき等の災害廃棄物に付着したり、地表面に降下した放射性セシウムが雨によって流され、下水処理の過程で濃縮されることで高濃度に放射性セシウムを含む下水汚泥等が生じる。さらに、土壌に含まれる放射性セシウムを吸収することで草木が放射能汚染され、これら放射能に汚染された草木を含むものを焼却して生じた焼却灰においては、ガラスなどに放射性セシウムが閉じ込められていることもある。本発明では、これらの処理し難い状態になっている放射性セシウム化合物を分離し回収しようとするものである。
CaO源の例としては、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)2)、及び炭酸カルシウム(CaCO3)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書中、「炭酸カルシウム」の語は、工業的に生産された炭酸カルシウム、及び、天然の石灰石を含むものとする。
本発明で用いられるCaO源の100μmふるい残分量は、30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%、より好ましくは50〜60質量%、特に好ましくは52〜68質量%である。上記残分量が30質量%未満であると、放射性セシウムを除去する際に発生する放射性廃棄物の量が多くなる。上記残分量が80質量%を超えると、放射性セシウムの揮発量が小さくなる。
また、CaO源の300μmふるい残分量は、15〜50質量%、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは25〜〜35質量%、特に好ましくは28〜32質量%である。上記残分量が15質量%未満であると、放射性セシウムを除去する際に発生する放射性廃棄物の量が多くなる。上記残分量が50質量%を超えると、放射性セシウムの揮発量が小さくなる。
また、CaO源の600μmふるい篩残分量は、15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは9質量%である。上記残分量が15質量%を超えると、放射性セシウムの揮発量が小さくなる。
また、CaO源の1.18mmふるい残分量は、好ましくは0質量%である。
上述した粒度分布を有するCaO源を用いることで、放射性セシウムで汚染された廃棄物から、より多くの放射性セシウムを揮発させて、放射性セシウムの濃度が小さい焼成物を得ることができる。
また、内燃式のロータリーキルン等の加熱装置を用いる場合において、放射性セシウムの除去において発生する放射性廃棄物の量をより少なくすることができる。
なお、本明細書中、「平均粒径」とは、レーザー回折式測定装置(例えば、マイクロトラック社製、「MT3300EXII」)を用いて粒子の粒径を測定し、その測定された粒子の粒径に基づいて得られた体積累積分布50%における粒径(メディアン径;d50)をいう。
なお、体積累積分布とは、全粒子を体積順に小さい側から積算して累積していった分布をいい、体積累積分布50%における粒径(メディアン径;d50)とは、体積累積分布値において50%の累積比率に対する粒子の直径をいう。
該質量比が、1.0以上であれば、放射性セシウムの揮発量をより多くすることができる。該質量比が、3.7以下であれば、得られる焼成物に含まれるフリーライムの量が少なくなり、かつ、該焼成物が粉状化しないため、該焼成物を土木資材として使用可能なものにすることができる。また、該質量比が、2.7以下であれば、混合材料に含まれるカリウムやナトリウムの揮発量をより少なくして、放射性セシウムの除去おいて発生する放射性廃棄物の量をより少なくすることができる。
塩化カルシウムは、混合材料中の塩素とカリウムとのモル比(Cl/k)が、好ましくは1.4以下、より好ましくは0.01〜1.3、特に好ましくは0.1〜1.2になる量を用いることが好ましい。該モル比が1.4以下であると、カリウムやナトリウムが揮発せずに放射性セシウムがより多く揮発するため、放射性セシウムの除去において発生する放射性廃棄物の量をより少なくすることができる。
なお、混合材料中の塩素とカリウムとのモル比(Cl/k)を上記数値範囲にする目的で、塩化カリウムや塩化ナトリウム等の塩化物を用いてもよい。
また、後述するロータリーキルンを用いて焼成する場合、ロータリーキルン内で各材料が回転混合されるので、各材料の全部または一部を、そのままロータリーキルンの窯尻に投入してもよい。
また、各材料を混合する順序は、特に限定されず、放射性セシウムで汚染された廃棄物、CaO源、及び他の材料(塩化カルシウム、粗粉(後述)等)を同時に混合してもよく、放射性セシウムで汚染された廃棄物とCaO源を混合して混合物を得た後、該混合物と他の材料(塩化カルシウム、粗粉(後述)等)を混合してもよい。
なお、混合材料は、放射性セシウムをより多く揮発させる観点から、5mm程度の粒状物よりも小さいことが好ましい。また、5mmを超える大きさの石等は、放射性セシウムが多くは含まれないことから、予め水洗等を行いながら取り除いてもよい。
本工程は、混合工程で得られた混合材料を加熱して、該混合材料に含まれる、放射性セシウムで汚染された廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる工程である。
混合材料の加熱温度は、好ましくは1,200〜1,550℃、より好ましくは1,240〜1,450℃、さらに好ましくは1,260〜1,350℃、特に好ましくは1,280〜1,340℃である。
加熱温度が1,200℃以上であれば、放射性セシウムの揮発量をより多くすることができる。加熱温度が1,550℃以下であれば、液相が形成されることで、該液相に放射性セシウムが取り込まれることを防ぐことができる。
加熱時間は、放射性セシウムの十分な揮発量を得る観点から、好ましくは15分間以上、より好ましくは30分間以上である。加熱時間の上限は特に限定されないが、好ましくは180分間以下、より好ましくは120分間以下である。加熱時間が180分間を超えると混合材料中の放射性セシウムと共に、カリウムやナトリウムの揮発量が多くなる。
ロータリーキルン等、原料が転動する場合には、ガスと放射性セシウムとの接触率が大きくなり、熱伝導率も良くなるため、静置した条件よりも短い焼成時間で、高い揮発率を得ることができる。
連続式の加熱手段の例としては、ロータリーキルン等が挙げられる。
バッチ式の加熱手段の例としては、焼却炉、電気炉、マイクロ波加熱装置等が挙げられる。
中でも、連続式の加熱手段は、処理の効率を高める観点から、本発明で好ましく用いられる。また、ロータリーキルンは、放射性セシウムの揮発に適する加熱温度及び廃棄物の滞留時間を容易に与えることができる観点から好適である。
ここで、粗粉とは、加熱によって飛散した材料を多く含む、比較的粒度の大きいダストという。粗粉は、微粉と比較して、カルシウムやシリカ成分の量が多く、かつ、放射性セシウムの量が少ないものである。粗粉の粒度は、分級手段(例えば、サイクロン)の能力によっても異なるが、通常、0.005mm以上、好ましくは0.3〜1.0mm、特に好ましくは0.5〜0.5mmである。該粒度が0.005mm以上であれば、粗粒に含まれる放射性セシウムの量をより少なくし、かつ、放射性廃棄物の量を少なくすることができる。
また、微粉とは、分級によって粗粉を除去した後に回収される、高濃度の放射性セシウムを多く含むダストをいう。
なお、上記粒度の値は、ふるいの目開き寸法に対応する値である。
より具体的には、内燃式のロータリーキルンにおいて、ロータリーキルンから排出される排ガスを、冷却塔において冷却した後、サイクロン等を用いて分級を行い、次いで、捕集された粗粉を、ブレンダー等において他の材料を混合する、あるいは、ロータリーキルンの窯尻から上記粗粉を投入して、他の材料と一緒に再度加熱することで、最終的に発生する放射性廃棄物の量をより少なくすることができる。
[使用材料]
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)廃棄物A;流動床式炉から回収された飛灰(焼却灰)、放射性セシウム濃度:27,215Bq/kg(セシウム137:23,476Bq/kg、セシウム134:3,739Bq/kg)、化学組成は表1に示す
(2)廃棄物B;放射性セシウム濃度が38,800Bq/kg、水分の含有率が15質量%である、流動床式炉から回収された飛灰(焼却灰)を、乾燥機を用いて、水分の含有率が2質量%以下になるまで乾燥させた後、粉砕機を用いて100μmふるい残分量が20質量%程度となるように粉砕したもの
(3)生石灰粉末A〜B(表2〜4中、生石灰A〜Bと示す。);レーザー回折式粒子径分布測定装置(マイクロトラック社製 MT3300EXII)を用いて測定した各生石灰粉末の粒度分布および平均粒径を表2に示す
(4)塩化カルシウム粉末:試薬
(5)珪石粉末
廃棄物A299gと生石灰粉末A389gと塩化カルシウム粉末12.2gを、ポリエチレン製の袋内に投入した後、手を用いて1分間混合して混合材料を得た。得られた混合材料中のCaOとSiO2の質量比(CaO/SiO2)は2.5であり、ClとKのモル比(Cl/K)は1.1であり、SiO2と、Al2O3及びFe2O3の合計の質量比(SiO2/(Al2O3+Fe2O3))は2.3であった。
アルミナ製のるつぼに、得られた混合材料50gを投入した後、予め表3に示す温度に加熱した箱型の電気炉内に入れて、温度を表3に示す温度に保ちながら1時間加熱を行った。
加熱後、ただちにるつぼを取り出して、焼成物(加熱後の混合材料)の放射性セシウムの濃度を、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。
[比較例1]
生石灰粉末Aの代わりに生石灰粉末Bを使用する以外は、実施例1と同様にして焼成物を得た後、該焼成物の放射性セシウムの濃度を測定した。なお、生石灰粉末Bは、一般的に市販されているものである。
それぞれの結果を表3に示す。
廃棄物Bをブレンディングタンクに投入し、かつ、廃棄物Bとは異なるルートで、生石灰粉末A、塩化カルシウム粉末、及び珪石粉末を投入して、ブレンダー内で各原料を混合して混合材料を得た。
原料の混合は、混合材料中のCaOとSiO2の質量比(CaO/SiO2)が3.2であり、SiO2と、Al2O3及びFe2O3の合計の質量比(SiO2/(Al2O3+Fe2O3))が3.0であり、ClとKとのモル比(Cl/K)が1.1となるように各原料の配合量を定めて行った。
得られた混合材料を、内径φ1.0m(煉瓦の厚さ150mm)×長さ15m、傾斜3°である回転炉(資源化炉)内に投入し、重油バーナーを用いて加熱を行った。
加熱は、混合材料の回転炉への送入量:290kg/h、回転炉の回転数:90rph、重油の量:78〜82リットル/h、焼成温度:1,250〜1,300℃の条件で行った。
また、バグフィルターにおいて捕集した副産物(微粉)の放射性セシウムの濃度を、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。また、副産物中のCa濃度を、XRFオーダー分析によって測定した。
さらに、上記加熱を連続して行った場合における、一日あたりの副産物の発生量を算出した。
生石灰粉末Aの代わりに、生石灰粉末Bを用いる以外は、実施例2と同様にして加熱を行い、焼成物を得た。
得られた焼成物の放射性セシウムの濃度の測定等を実施例2と同様にして行った。なお、放射性セシウムの濃度の算出において、全バッチ数は325バッチであった。
結果を表4に示す。
また、生石灰粉末Aを用いた場合(実施例2)における副産物の放射性セシウム濃度(462,000Bq/kg)は、生石灰粉末Bを用いた場合(比較例2)における副産物の放射性セシウム濃度(402,000Bq/kg)よりも大きいことがわかる。
このことから、本発明の放射性セシウムの除去方法によれば、放射性セシウムで汚染された廃棄物から、放射性セシウムをより多く除去しうることがわかる。
また、生石灰粉末Aを用いた場合(実施例2)における副産物発生量(169kg/日)は、生石灰粉末Bを用いた場合(比較例2)における副産物発生量(182kg/日)よりも小さいことがわかる。
このことから、本発明の放射性セシウムの除去方法によれば、放射性セシウムの除去において発生する放射性廃棄物の量をより少なくしうることがわかる。
Claims (4)
- 放射性セシウムで汚染された廃棄物とカルシウム源を混合して混合材料を得る混合工程と、
上記混合材料を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程を含む放射性セシウムの除去方法であって、
上記カルシウム源は、CaO源を含むものであり、上記CaO源は、100μmふるい残分量が30〜80質量%、300μmふるい残分量が15〜50質量%、及び、600μmふるい篩残分量が15質量%以下のものであることを特徴とする放射性セシウムの除去方法。 - 上記加熱工程において生じた、揮発した放射性セシウムを含む排ガスを冷却した後、該排ガスに含まれるダストを、粗粉と微粉に分級し、該分級によって得られた粗粉を、上記混合工程において、上記廃棄物及び上記カルシウム源と混合する請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。
- 上記CaO源は、生石灰、消石灰及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる一種以上である請求項1又は2に記載の放射性セシウムの除去方法。
- 上記カルシウム源は、上記CaO源に加えて、塩化カルシウムを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射性セシウムの除去方法。
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