ここから,本発明の好適な実施形態を記載する。なお,以下の記載は本発明の技術的範囲を束縛するものでなく,理解を助けるために記述するものである。
本実施形態に係る糊綴じ装置1は,糊綴じの接着強度を強くでき,かつ,用紙束2の糊綴じ面を糊綴じする工程を高速化できるという課題を解決するために,用紙束2の糊綴じ面に背糊と横糊を高速で塗布できるように発案された装置である。なお,ここで,用紙束2の糊綴じ面とは,糊付けする用紙束2の端面を意味する。また,背糊とは,糊綴じ面に塗布する糊で,横糊とは,糊綴じ面の近傍両側面に塗布する糊を意味する。
図1は,本実施形態に係る糊綴じ装置1の構成を説明する図である。本実施形態に係る糊綴じ装置1は,用紙束2の糊綴じ面の少なくとも一部に背糊と横糊を塗布するための糊付ギャップを前面に形成した糊付部10と,クランプした用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップを通過するように用紙束2を搬送する糊付搬送部11を備える。
更に,本実施形態に係る糊綴じ装置1には,用紙束2を自動で紙揃えする紙揃部14が接続され,本実施形態に係る糊綴じ装置1は,紙揃部14が排出した用紙束2をクランプした状態で搬送して糊付搬送部11に引き渡しする用紙束供給部13を備える。
更に,本実施形態に係る糊綴じ装置1は,糊付搬送部11がクランプしていない用紙束2の部分が載せられ,糊付搬送部11と同期して用紙束2を搬送する第1コンベア15および第2コンベア16と,糊付部10で糊付けした用紙束2を搬送する第3コンベア17を備える。
更に,本実施形態に係る糊綴じ装置1は,糊付部10で糊付けした用紙束2に発生している紙揃え不良を検出するセンサとして,第1センサ19a,第2センサ19bおよび第3センサ19cを備える。第1センサ19aは糊付部10の上流に設置され,第2センサ19bおよび第3センサ19cは糊付部10の下流(ここでは,糊付部10で糊付けした用紙束2を搬送する第3コンベア17の上方)に設置されている。
更に,本実施形態に係る糊綴じ装置1は,紙揃え不良と判定された用紙束2である紙揃え不良品2aを排出する不良品排出部18を備え,不良品排出部18は,糊付部10で糊付けした用紙束2を搬送する第3コンベア17において第3センサ19cの下流に設置されている。
更に,本実施形態に係る糊綴じ装置1は,用紙束2の糊綴じ面に糊付けする一連の動作を制御する制御部12を備え,表示デバイス付きのタッチパネル12aが制御部12に接続されている。
ここから,本実施形態に係る糊綴じ装置1が備える各部について説明する。
本実施形態に係る糊綴じ装置1が備える紙揃部14は,上下のバイブレーションで用紙の自重を軽減して紙揃え性を向上させ,ジョガーにより用紙束2の糊綴じ面の左右になる面を揃え,突き当て動作により,用紙束2の糊綴じ面側と糊綴じ面の反対側の面を揃える装置である。
本実施形態に係る糊綴じ装置1が備える用紙束供給部13について説明する。図2は,本実施形態に係る用紙束供給部13を説明する図で,図2(a)は,用紙束供給部13の斜視図,図2(b)は,用紙束供給部13のクランプ機構130が用紙束2をクランプした状態を説明する図である。
上述したように,本実施形態に係る用紙束供給部13は,紙揃部14が紙揃えした用紙束2をクランプするクランプ機構130を有し,クランプ機構130によりクランプした状態で紙揃え後の用紙束2を糊付搬送部11に引き渡す動作を行う装置である。
用紙束供給部13が有するクランプ機構130は,紙揃え後の用紙束2のクランプに用いる凸形形状132aを設けた固定な下側クランプ板132と,下側クランプ板132と対向して配置され,紙揃え後の用紙束2のクランプに用いる凸形形状131aを設けた可動な上側クランプ板131と,上側クランプ板131を上下方向に移動させるアクチュエータ133から少なくとも構成されている。加えて,用紙束供給部13は,用紙束2を糊付搬送部11に引き渡す位置までクランプ機構130を少なくとも搬送する供給用搬送機構136を備え,本実施形態では,この供給用搬送機構136は,上側クランプ板131と連結しているアクチュエータ133と下側クランプ板132を取り付けた用紙束供給部13のベース134が搬送レール135を移動する機構になっている。
図2(a)では,下側クランプ板132は見えない状態になっているが,下側クランプ板132にも,上側クランプ板131と同様に,用紙束2のクランプに用いる凸形形状132aが設けられている。上側クランプ板131に設けられた凸形形状131aの数と,下側クランプ板132に設けられた凸形形状132aの数はそれぞれ,紙揃部14が一度に排出する用紙束2の数になり,ここでは3つである。図2(b)で図示したように,下側クランプ板132は固定された状態で用紙束供給部13のベース134に取り付けられているが,上側クランプ板131はアクチュエータ133と連結しており,クランプ機構130により用紙束2をクランプする際,アクチュエータ133が上側クランプ板131を下方向に移動させることで,用紙束2は,上側クランプ板131の凸形形状131aと下側クランプ板132の凸形形状132aの間に挟まれた格好になる。
図3は,用紙束供給部13のクランプ機構130が有する光学コードリーダ1310を説明する図である。図3で図示したように,本実施形態では,用紙束2の表面になる用紙に,用紙束2の仕様を示す用紙束情報をエンコードした光学コード20を印刷している。用紙束情報をエンコードした光学コード20を用紙束2に印刷する位置は,クランプ機構130の上側クランプ板131に設けられた凸形形状131aがクランプする位置で,クランプ機構130の上側クランプ板131に設けられた凸形形状131aそれぞれに,用紙束2の表面になる用紙に印刷した光学コード20を読み取る光学コードリーダ1310を設けている。
用紙束情報に対応する束厚を制御部12に記憶させておけば,このような構成にすることにより,紙揃部14から排出された用紙束2の仕様が変更になっても,光学コードリーダ1310が認識した光学コード20にエンコードされている用紙束情報から得られる束厚に基づいて,制御部12が糊付部10の設定を自動で調整できる。
次に,本実施形態に係る糊綴じ装置1が備える糊付搬送部11について説明する。図4は,本実施形態に係る糊付搬送部11を説明する図で,図4(a)は,糊付搬送部11の斜視図,図4(b)は,糊付搬送部11のクランプ機構110が用紙束2をクランプした状態を説明する図である。
本実施形態に係る糊付搬送部11は,クランプ機構110によりクランプした用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップの中心を通過するように用紙束2を搬送する動作を行う装置である。
糊付搬送部11が有するクランプ機構110は,用紙束供給部13のクランプ機構130が有する上側クランプ板131に設けられた凸形形状131aと嵌合する凹形形状111aが加工された上側クランプ板111と,用紙束供給部13のクランプ機構130が有する下側クランプ板132に設けられた凸形形状132aと嵌合する凹形形状112aが加工された下側クランプ板112と,上側クランプ板111を上下方向に移動させるアクチュエータ113と,そして,下側クランプ板112を上下方向に移動させるアクチュエータ114から少なくとも構成されている。
加えて,糊付搬送部11は,用紙束供給部13から用紙束2が供給される位置から,クランプ機構110によりクランプした用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップの中心を通過するように用紙束2を搬送する糊付用搬送機構117を備え,本実施形態では,この糊付用搬送機構117は,上側クランプ板111と連結しているアクチュエータ113などを取り付けた糊付搬送部11のベース115が搬送レール116を移動する機構になっている。
図4(a)では,下側クランプ板112は見えない状態になっているが,下側クランプ板112にも,上側クランプ板111と同様に,用紙束供給部13のクランプ機構130が有する下側クランプ板132に設けられた凸形形状132aと嵌合する凹形形状112aが加工されている。上側クランプ板111に設けられた凹形形状111aの数と,下側クランプ板112に設けられた凹形形状112aの数それぞれは,用紙束供給部13から一度に供給される用紙束2の数になり,ここでは3つである。図4(b)で図示したように,上側クランプ板111はアクチュエータ113と連結し,下側クランプ板112はアクチュエータ114と連結しており,クランプ機構110により用紙束2をクランプする際,アクチュエータ113が上側クランプ板111を下方向に移動させ,アクチュエータ114が下側クランプ板112を上方向に移動させることで,用紙束2は,上側クランプ板111と下側クランプ板112の間に挟まれた格好になる。
図5は,用紙束供給部13が糊付搬送部11に用紙束2を供給する動作を説明する図である。図5(a)で図示したように,用紙束供給部13のクランプ機構130が用紙束2をクランプした状態で用紙束2の引き渡し位置まで移動すると,糊付搬送部11のクランプ機構110も用紙束2の引き渡し位置に移動する。このとき,糊付搬送部11のクランプ機構110が有する上側クランプ板111は上方に,糊付搬送部11のクランプ機構110が有する下側クランプ板112は下方にそれぞれ退避した状態になっている。
図5(b)で図示したように,用紙束供給部13のクランプ機構130と糊付搬送部11のクランプ機構110が用紙束2の引き渡し位置までそれぞれ移動すると,糊付搬送部11は,クランプ機構110の上側クランプ板111を下方向に移動させ,更に,クランプ機構110の下側クランプ板112を上方向に移動させて,クランプ機構110により用紙束2をクランプする。
図5(c)で図示したように,糊付搬送部11のクランプ機構110が用紙束2をクランプすると,用紙束供給部13は,クランプ機構130の上側クランプ板131を上方向に退避させた後,用紙束供給部13が,図5(c)の矢印の方向になる退避位置へ移動することで,糊付搬送部11が用紙束2を搬送できる状態になる。
次に,糊綴じ装置1が備える糊付部10について説明する。図6は,糊綴じ装置1が備える糊付部10の斜視図である。糊綴じ装置1が備える糊付部10は,糊付ギャップ100を形成するための上側ギャッププレート101および下側ギャッププレート102と,糊付ギャップ100を通過する用紙束2の糊綴じ面側から糊を吐出するスリット状の吐出口1030が形成されたスリットノズル103と,スリットノズル103,上側ギャッププレート101および下側ギャッププレート102を少なくとも取り付けた糊付部10のベース107を,糊付けが行える糊付位置とそこから退避した退避位置の間で進退させる移動機構108を有している。
図7は,糊付部10が有するスリットノズル103を説明する図である。用紙束2の束厚に応じてスリットノズル103の開度(吐出口1030の高さ方向の幅になる)は変わるため,糊付部10が有するスリットノズル103には,スリットノズル103の開度を遠隔操作で調整できる機能として,スリットノズル103の吐出口1030の少なくとも一部を塞ぐ板状の封止部材104と,封止部材104を上下方向に移動させる封止部材移動機構105が設けられている。また,スリットノズル103には,糊を供給するホース109が接続している。
図8は,糊付部10の断面図である。本実施形態に係るスリットノズル103には,スリットノズル103の上面から吐出口1030に糊を供給する空間1032まで延びるスリット1031が形成されており,封止部材104は,スリット1031を利用して,スリットノズル103の上面から空間1032まで挿入されている。封止部材104の長さは,スリットノズル103の開度を最小にした状態で,封止部材104の一部がスリットノズル103の上面から突出する長さになっている。封止部材104の上部にはギア歯104aが複数形成されており,封止部材移動機構105は,封止部材104のギア歯104aと噛み合う円盤状のギア105aを回動させることで,封止部材104を上下方向に移動させる機構になっている。なお,吐出口1030に糊を供給する空間1032には,糊を供給するホース109から糊が送り込まれる。
上側に配置された上側ギャッププレート101は,側面形状がクランク状をなしている板状の部材で,糊付ギャップ100を形成する上側ギャッププレート101の下端側の厚さはほぼ横糊の塗布幅に合わせられている。
上側ギャッププレート101は,スライドレール106aとスライダ106bとからなるスライド機構106を利用して上下方向にスライド自在に糊付部10のベース107に取り付けられており,上側ギャッププレート101の水平になる箇所には,上側ギャッププレート101の自重を増すための重量部材101aが取り付けられている。自重により上側ギャッププレート101は下方向にスライドするが,上側ギャッププレート101の水平になる箇所の下方向には,スリットノズル103に設けられた封止部材104の一部が突出しているため,上側ギャッププレート101が停止する位置は,重量部材101aの下面が封止部材104の上面と当接する位置になる。
このように構成することで,上側ギャッププレート101は,封止部材104と従動して上下方向に移動し,上側ギャッププレート101の下端側の位置をスリットノズル103の開度に合うようにしておけば,封止部材移動機構105を作動させることで,スリットノズル103の開度に加えて,上側ギャッププレート101の位置,すなわち,糊付ギャップ100の間隔も用紙束2の束厚に応じて調整できる。
糊付ギャップ100を形成する下側ギャッププレート102の上側の厚みは,横糊の塗布幅にほぼ合わせられている。下側ギャッププレート102も糊付部10のベース107に取り付けられるが,下側に配置される下側ギャッププレート102はベース107に固着している。
図9は,糊付部10に形成された糊付ギャップ100の拡大図である。糊付部10に形成された糊付ギャップ100の隙間は,用紙束2の入口が広くなっているテーパ部100aと,平行になっている平行部100bを有しており,上側ギャッププレート101の下側端面および下側ギャッププレート102の上側端面は,糊付ギャップ100の隙間がテーパ部100aと平行部100bを有する形状になるようにそれぞれ加工されている。
図10は,用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップ100を通過する位置を説明する図である。糊付搬送部11が搬送する用紙束2の糊綴じ面が糊付ギャップ100の間を通過する位置と,糊付搬送部11が搬送する用紙束2の下面が糊付ギャップ100の間を通過する位置は機械的に固定になっている。
糊付部10のスリットノズル103に形成された吐出口1030と用紙束2の糊綴じ面の隙間t1は,用紙束2の糊綴じ面に塗布する背糊の塗布厚と相関があるため,隙間t1は,背糊の塗布厚が所定値になるように予め調整されている。また,糊付ギャップ100が有する平行部100bと用紙束2の隙間t2は,用紙束2の糊綴じ面の近傍両側面に塗布する横糊の塗布厚と相関があるため,糊付ギャップ100が有する平行部100bの間隔は,用紙束2の束厚と糊綴じ面の近傍両側面に塗布する横糊の塗布厚を加算した値にほぼなる。
図11は,糊付部10の糊付ギャップ100で糊付けする仕組みを説明する図である。用紙束2の糊綴じ面が,スリットノズル103が設置されている糊付ギャップ100の箇所を通過するとき,スリットノズル103と用紙束2の糊綴じ面の隙間t1に吐出口1030から糊1033が吐出されることで,用紙束2の糊綴じ面に背糊が付けられる。
糊付ギャップ100を形成する上側ギャッププレート101は,用紙束2の表面側に横糊を塗布するための部材になる。スリットノズル103の吐出口1030は糊付ギャップ100の平行部100bの手前に配置されるため,スリットノズル103が設置されている糊付ギャップ100の箇所において,上側ギャッププレート101の下側端面と用紙束2の表面の隙間は上述の隙間t2よりも広くなり,上側ギャッププレート101の下側端面と用紙束2の表面の隙間にも,スリットノズル103の吐出口1030から糊1033が吐出される。スリットノズル103の吐出口1030から吐出されたこの糊1033は用紙束2と共に糊付ギャップ100の出口の方向に移動し,糊付ギャップ100の出口を通過する際に,糊付ギャップ100の平行部100bに該当する上側ギャッププレート101の箇所で平らにならされて,用紙束2の表面に横糊が塗布される。
糊付ギャップ100を形成する下側ギャッププレート102は,用紙束2の裏面に横糊を塗布するための部材になる。スリットノズル103は糊付ギャップ100の平行部100bの手前に配置されるため,スリットノズル103が設置されている糊付ギャップ100の箇所において,下側ギャッププレート102の上側端面と用紙束2の裏面の隙間は上述の隙間t2よりも広くなり,下側ギャッププレート102の上側端面と用紙束2の裏面の隙間にも,スリットノズル103の吐出口1030から糊1033が吐出される。スリットノズル103の吐出口1030から吐出されたこの糊1033は用紙束2と共に糊付ギャップ100の出口の方向に移動し,糊付ギャップ100の出口を通過する際に,糊付ギャップ100の平行部100bに該当する下側ギャッププレート102の箇所で平らにならされて,用紙束2の裏面に横糊が塗布される。
なお,用紙束2に塗布する糊は任意に選択可能である。糊付けの高速化を重要視する場合には速乾性の糊を用いることになり,例えば,EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂)系ホットメルト接着材を利用すると糊付けの高速化を図れる。また,糊付けの接着強度を重要視する場合には接着力の強い糊を用いることになり,例えば,PUR(ポリウレタン)系接着材を利用すると,EVA(系ホットメルト接着材を利用するときよりも,糊付けの接着強度を高めることができる。
次に,糊綴じ装置1が備える制御部12について説明する。糊綴じ装置1が備える制御部12は,用紙束2の糊綴じ面を糊付けする一連の動作を制御する装置で,糊綴じ装置1が備える制御部12として利用するコンピュータ機器には,用紙束2の糊綴じ面を糊付けする一連の動作を行うコンピュータプログラムが実装される。
本実施形態に係る制御部12は,用紙束2の糊綴じ面を糊付けする一連の動作として,糊付部10のスリットノズル103に設けられた封止部材移動機構105を制御して,糊付けする用紙束2の束厚に応じて,スリットノズル103の開度と,上下方向にスライド自在になっている上側ギャッププレート101の位置を調整する。
糊付けする用紙束2の束厚に応じて,スリットノズル103の開度と上側ギャッププレート101の位置を調整できるように,制御部12は,上述している用紙束情報に関連付けて,封止部材104のプリセット位置を少なくとも記憶したプリセットテーブルを有する。なお,用紙束情報に関連付けて記憶する封止部材104のプリセット位置は,スリットノズル103の開度が用紙束情報で示される束厚に応じた値になるように予め決められている。
制御部12は,用紙束情報が入力されると,プリセットテーブルを参照して,制御部12にされた封止部材104のプリセット位置を取得し,プリセットテーブルから取得した封止部材104のプリセット位置になるように,封止部材移動機構105を作動させて封止部材104の上下位置を調整することで,スリットノズル103の開度と上側ギャッププレート101の位置を用紙束2の束厚に応じた値にする。用紙束情報の入力には,制御部12と接続しているタッチパネル12aを利用することができるが,用紙束供給部13が有する光学コードリーダ1310を用紙束情報の入力に用いると,紙揃部14が紙揃えした用紙束2ごとに,スリットノズル103の開度と上側ギャッププレート101の位置を調整できる。
更に,本実施形態に係る制御部12は,用紙束2の糊綴じ面を糊付けする一連の動作として,スリットノズル103に形成された吐出口1030から吐出する糊を制御する。制御部12は,スリットノズル103に形成された吐出口1030から吐出する糊を制御するために,プリセットテーブルには,用紙束情報に関連付けて,スリットノズル103の吐出口1030から吐出する糊の吐出パターンを示す吐出制御情報(糊綴じ面において糊を付ける開始位置および長さや,糊の吐出量など)を記憶させている。制御部12は,用紙束情報を取得すると,用紙束情報に対応する吐出制御情報をプリセットテーブルから取得し,吐出制御情報に基づき, スリットノズル103に形成された吐出口1030からの糊の吐出を制御する。
更に,本実施形態に係る制御部12は,用紙束2の糊綴じ面を糊付けする一連の動作として,第3コンベア17の上方に設けられた第1センサ19a,第2センサ19bおよび第3センサ19cを利用して,糊付部10で糊付けした用紙束2の紙揃え不良を検出し,紙揃え不良となった用紙束2を不良品排出部18により排出する。
図12は,用紙束2に発生する紙揃え不良を説明する図である。図12(a)は,第1センサaが検出する紙揃え不良を説明する図で,第1センサ19aは,用紙束の糊綴じ面側に一部の用紙がはみ出す紙揃え不良を検出する。図12(b)は,第2センサ19bが検出する紙揃え不良を説明する図で,第2センサ19bは,用紙束の糊綴じ面の左右の面に一部の用紙がはみ出す紙揃え不良を検出する。図12(c)は,第3センサ19cが検出する紙揃え不良を説明する図で,第3センサ19cは,用紙束2の糊綴じ面の反対面に一部の用紙がはみ出す紙揃え不良を検出する。第1センサ19a,第2センサ19bおよび第3センサ19cとしては,レーザセンサや画像センサなどを利用できる。制御部12は,第1センサ19a,第2センサ19bおよび第3センサ19cの少なくとも一つが紙揃え不良を検出すると,不良品排出部18を作動させて,紙揃え不良となった用紙束2を排出する動作を実行する。なお,本実施形態において,第1センサ19aを糊付部10の上流に設置しているのは,用紙束2の糊綴じ面に糊を付けると,用紙束の糊綴じ面側に一部の用紙がはみ出す紙揃え不良を検出しづらくなるからである。
糊綴じ装置1の制御部12には,糊付部10,糊付搬送部11などの装置と信号をやりとりするための入力出力ポートを有し,糊付部10,糊付搬送部11などの装置から入力された信号に従い,糊付部10,糊付搬送部11などの装置の動作を制御する。
図13は,糊綴じ装置1の制御部12が実行する一連の動作を説明する図である。糊綴じ装置1の用紙束供給部13と接続している紙揃部14から,紙揃えが終了したことを示す信号が糊綴じ装置1の制御部12に入力されると,糊綴じ装置1の制御部12は,用紙束2の引き渡し動作を行う信号を用紙束供給部13に出力する(S1)。
糊綴じ装置1の用紙束供給部13は,用紙束2の引き渡し動作を行う信号が入力されると,用紙束2の引き渡し位置まで用紙束2を搬送する(S2)。このとき,糊綴じ装置1の用紙束供給部13は,用紙束供給部13の供給用搬送機構136を作動させて,用紙束供給部13のクランプ機構130を紙揃部14の排出口まで移動させた後,用紙束供給部13のクランプ機構130が有する上側クランプ板131を下方向に移動させて,紙揃部14が排出した用紙束2をクランプ機構130によりクランプし,用紙束供給部13の供給用搬送機構136を作動させて,用紙束2の引き渡し位置まで用紙束2をクランプしているクランプ機構130を移動させる。なお,本実施形態では,クランプ機構130の上側クランプ板131に設けられた凸形形状131aそれぞれに,用紙束2の表用紙に印刷された光学コード20を読み取る光学コードリーダ1310を設けているので,クランプ機構130が用紙束2をクランプする直前で,光学コードリーダ1310が光学コード20を読み取り,光学コード20にエンコードされていた用紙束情報を制御部12に出力する。
糊綴じ装置1の用紙束供給部13は,用紙束2の引き渡し位置まで用紙束2をクランプしているクランプ機構130を移動させると,用紙束2の引き渡し準備ができたことを示す信号を糊綴じ装置1の制御部12に出力し,用紙束2の引き渡し準備ができたことが糊綴じ装置1の用紙束供給部13から入力されると,制御部12は,光学コード20にエンコードされていた用紙束情報に関付けられた封止部材104のプリセット位置と吐出制御情報をプリセットテーブルから取得し,プリセットテーブルから取得した封止部材104のプリセット位置になるよう,封止部材移動機構105を作動させて封止部材104の上下位置を調整した後,用紙束2の搬送動作を行う信号を糊綴じ装置1の糊付搬送部11に出力する(S3)。
糊綴じ装置1の糊付搬送部11は,用紙束2の引き取り動作を行う信号が入力されると,用紙束供給部13が引き渡し位置まで搬送した用紙束2を引き取る動作を行う(S4)。このとき,糊綴じ装置1の糊付搬送部11は,糊付搬送部11の糊付用搬送機構117を作動させ,用紙束2の引き渡し位置まで糊付搬送部11のクランプ機構110を移動させた後,アクチュエータ113を作動させて,糊付搬送部11のクランプ機構110が有する上側クランプ板111を下方向に移動させ,更に,アクチュエータ114を作動させて,糊付搬送部11のクランプ機構110が有する下側クランプ板112を上方向に移動させることで,用紙束供給部13のクランプ機構130がクランプしている用紙束2を糊付搬送部11のクランプ機構110によりクランプする。なお,用紙束供給部13のクランプ機構130の下側クランプ板132の位置は固定であるため,用紙束2の厚みにかかわらず,糊付搬送部11のクランプ機構110がクランプした用紙束2の裏面の位置は固定である。
糊綴じ装置1の用紙束供給部13のクランプ機構130がクランプしている用紙束2を糊付搬送部11のクランプ機構110がクランプすると,糊綴じ装置1の糊付搬送部11は,用紙束2の引き取りが完了したことを示す信号を制御部12に出力し,糊綴じ装置1の制御部12は,用紙束2の引き取りが完了したことを示す信号が入力されると,糊綴じ装置1の制御部12は,退避を示す信号を用紙束供給部13に出力する(S5)。
糊綴じ装置の用紙束供給部13は,退避を示す信号を入力されると,アクチュエータ133を作動させて,用紙束供給部13のクランプ機構130が有する上側クランプ板131を上方向に退避させた後,供給用搬送機構136を作動させて,用紙束供給部13のクランプ機構130を退避位置まで退避させる(S6)。
用紙束供給部13のクランプ機構130が退避位置まで退避すると,用紙束供給部13は,退避完了を示す信号を糊綴じ装置1の制御部12へ入力し,糊綴じ装置1の制御部12は,用紙束供給部13のクランプ機構130の退避完了を示す信号が入力されると,用紙束2の搬送動作を行う信号を糊付搬送部11および第1コンベア15および第2コンベア16に出力し(S7),糊綴じ装置1の糊付搬送部11は,用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップを通過するように,用紙束2をクランプしている糊付搬送部11のクランプ機構110を移動させる(S8)。
糊綴じ装置1の制御部12は,用紙束2の搬送動作を行う信号を糊付搬送部11に出力すると,糊付部10の移動機構108を作動させて,退避位置から糊付位置までスリットノズル103等を移動させた後,糊綴じ装置1の糊付搬送部11が搬送している用紙束2が糊付部10を通過するタイミングに合わせ,プリセットテーブルから取得した吐出制御情報に基づいて,糊付部10のスリットノズル103に形成された吐出口1030からの糊の吐出を少なくとも制御する(S9)。
糊付搬送部11が搬送している用紙束2,すなわち,糊付搬送部11のクランプ機構110がクランプしている用紙束2の全てが糊付部10を通過した位置で,糊付搬送部11が用紙束2を搬送する動作は終了し,糊付搬送部11は,アクチュエータ113を作動させて,糊付搬送部11のクランプ機構110が有する上側クランプ板111を上方向に移動させ,更に,アクチュエータ114を作動させて,糊付搬送部11のクランプ機構110が有する下側クランプ板112を下方向に移動させて,用紙束2のクランプを解除(S10)し,糊付けした用紙束2が,糊綴じ装置1の排出口まで第3コンベア17により搬送される(S11)。なお,糊綴じ装置1の制御部12は,糊付搬送部11のクランプ機構110が用紙束2のクランプを解除すると,第1コンベア15および第2コンベア16を停止させる。
制御部12は,糊綴じ装置1の排出口まで第3コンベア17により搬送されている間,第1センサ19a,第2センサ19bおよび第3センサ19cからの出力を監視し,1センサ,第2センサ19bおよび第3センサ19cの少なくとも一つから紙揃え不良の検出が出力されると,不良品排出部18を作動させて,紙揃え不良となった用紙束2である紙揃え不良品2aを排出する処理を実行して(S12),図13の手順は終了する。
本実施形態では,一つの用紙束2が糊付ギャップ100を通過している間に吐出する糊のパターンを変更することで,用紙束2の糊綴じ面に付ける糊のパターンを変更できる。
図14は,用紙束2の糊綴じ面に付ける糊の吐出パターンを説明する図である。用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップ100を通過する間で,糊付部10が有するスリットノズル103の吐出口1030から糊を吐出させれば,図14(a)で図示したように,用紙束2の糊綴じ面の全てにおいて背糊と横糊を付けることができる。また,用紙束2の糊綴じ面の中央部が糊付部10の糊付ギャップ100を通過する間で,糊付部10が有するスリットノズル103の吐出口1030から糊を吐出させれば,図14(b)で図示したように,用紙束2の糊綴じ面の中央部にのみ背糊と横糊を付けることができる。更に,用紙束2の糊綴じ面が糊付部10の糊付ギャップ100を通過する間で,糊付部10が有するスリットノズル103の吐出口1030から糊を断続的に吐出させれば,図14(c)で図示したように,用紙束2の糊綴じ面の全てにおいて断続的に背糊と横糊を付けることができる。