JP2019123792A - 水性分散体及びその製造方法、塗布物 - Google Patents

水性分散体及びその製造方法、塗布物 Download PDF

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智紀 高瀬
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Abstract

【課題】高温、長時間の加熱を要することなく、高度な耐傷付き性と耐水性を発揮する塗布物を実現する水性分散体。【解決手段】ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)と、アルカノールアミン(D)と、水(E)とを含有する水性分散体(AW)であって、前記ポリオレフィン(A)の密度は0.910g/cm3〜0.960g/cm3である水性分散体。【選択図】なし

Description

本発明はポリオレフィン系の水性分散体に関する。
近年、軽量性、加工性、経済性等の利点から、プラスチック成形品が自動車車体の外板部等に多用されるようになった。これらのプラスチック成形品は無塗装のままで使用される場合もあるが、多くの場合、意匠および紫外線や薬品等の作用から素材を保護する目的で塗装が施されている。この場合、プラスチック材料は鋼板に比べて耐熱性が低く、ヤング率や破断強度も小さいので、通常の自動車塗装に用いられているアクリルメラミン樹脂塗料などのように、高い焼き付け温度が必要で、かつ硬く脆い塗膜を形成するものは使用できず、低温で硬化し柔軟性の高い塗膜を形成するポリウレタン樹脂塗料等が使われている。
ところが、ポリウレタン樹脂塗料によって形成される柔軟な塗膜は摩擦等によって傷付き易いという欠点がある。一般に自動車では、意匠を保つために洗車やワックスがけが頻繁に行われるが、それによってプラスチック成形品の塗膜表面に無数の細かな擦り傷がつき、また鋼板部分に比べて艶の低下や、色落ち等により美観が損なわれるという問題がある。
基材の表面に塗装して傷付きを防止するための高硬度の耐擦り傷性コーティング剤が、例えば特許文献1に開示されている。
特開2000−219822号公報
しかしながら、この種のコーティング剤は、十分に硬度を向上するために100℃以上の温度で長時間の加熱を必要とするため、自動車車体用のプラスチック成形品の塗装には適当ではなかった。
また、塗膜に対しては高い耐水性が必要とされる。
さらに、有機溶剤を使うことなく環境負荷を削減することも求められている。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、高温、長時間の加熱を要することなく、高度な耐傷付き性と耐水性を発揮する塗布物を実現する水性分散体を目的とする。
本発明は以下の態様を包含する。
本発明の水性分散体は、ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)と、アルカノールアミン(D)と、水(E)とを含有する水性分散体(AW)であって、
前記ポリオレフィン(A)の密度は0.910g/cm〜0.960g/cmであることを特徴とするものである。
ここで、脂肪酸(C)の炭素数は14〜22であることが望ましい。
特に、脂肪酸(C)はステアリン酸であることが望ましい。
また、上記水性分散体(AW)1〜30質量部と、塗料樹脂を含む水性分散体(F)70〜99質量部(但し、水性分散体(AW)と水性分散体(F)の合計を100質量部とする)の混合物である水性分散体が望ましい。
本発明の塗布物は、上記水性分散体を用いて形成されたものである。
本発明の水性分散体の製造方法は、ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)とを溶融混練する第1の混練工程と、
得られた混練物にアルカノールアミン(D)と水(E)を添加して混練する第2の混練工程と、
さらに水を加えて固形分量が30〜80質量%の水性分散体とする希釈工程とを有することを特徴とするものである。
さらに、前記希釈工程後の水性分散体1〜30質量部に対して、塗料樹脂を含む水性分散体70〜99質量部を混合する混合工程を有することが望ましい。
本発明の水性分散体を用いて形成された塗布物は、環境負荷が小さく、高温、長時間の加熱を要することなく、高度な耐傷付き性と耐水性を発揮する。
本発明の水性分散体は、ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)と、アルカノールアミン(D)と、水(E)とを含有する。
「ポリオレフィン(A)」
ポリオレフィン(A)は、少なくともエチレン単位を有する重合体であり、エチレン単位との共重合体成分としては特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。
ポリオレフィン(A)の密度は0.910〜0.960g/cmであり、0.920〜0.950g/cmであることが好ましい。ポリオレフィン(A)の密度が前記範囲外であると、水性分散体を含む水性分散体混合物の耐傷付き性が低下する。
ポリオレフィン(A)の融点は100〜130℃、好ましくは115〜125℃である。ポリオレフィン(A)の融点が100〜130℃であれば、水性分散体を含む水性分散体混合物の耐傷付き性が良好である。
ポリオレフィン(A)は、エチレン単位を95モル%以上含有することが好ましい。
ポリオレフィン(A)としては、例えば、高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のオレフィン重合体を用いることができる。
「酸変性ポリオレフィン(B)」
酸変性ポリオレフィン(B)は、エチレン単位と、不飽和カルボン酸単位または不飽和カルボン酸無水物単位とを必須成分とし、α−オレフィン単位を任意成分として有する重合体である。ここで、α−オレフィン単位としては、ポリオレフィン(A)と同じものを使用できる。
酸変性ポリオレフィン(B)は、不飽和カルボン酸単位または不飽和カルボン酸無水物単位を有する。不飽和カルボン酸またはその無水物としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、またはこれらの無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
不飽和カルボン酸単位または不飽和カルボン酸無水物単位を有する場合の酸価は特に限定されるものではないが、10〜65mgKOH/gであることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン(B)の質量平均分子量は、水性分散体の貯蔵安定性の点から、1,000〜10,000であることが好ましく、2,000〜4,000であることがより好ましい。
酸変性ポリオレフィン(B)の含有量は、水性分散体の貯蔵安定性の点から、ポリオレフィン(A)100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましく、7〜18質量部であることがより好ましい。
「脂肪酸(C)」
脂肪酸(C)は、塗布物の耐水性や水性分散体の安定性を向上する。特に、炭素数14〜22のものがこれらの点に優れているので好ましい。このような脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。これらの中でも、特にステアリン酸が好ましい。
脂肪酸(C)の含有量は、ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.1〜10.0質量部であることが好ましく、1.0〜8.0質量部であることがより好ましい。脂肪酸(C)の含有量が0.1質量部以上であれば、未乳化物量の増加を抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、脂肪酸(C)の含有量が10.0質量部以下であれば、塗膜の耐水性の低下を抑制できる。
「アルカノールアミン(D)」
アルカノールアミン(D)は、詳しくは後述するが、水性分散体を調製する際に、未中和の酸変性ポリオレフィン(B)および脂肪酸(C)を中和させる塩基性物質の役割を果たす。
アルカノールアミン(D)としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N−エチルイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン、N−イソプロピルイソプロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルイソプロパノールアミン、モノn−プロパノールアミン、ジn−プロパノールアミン、トリn−プロパノールアミン、N−メチルn−プロパノールアミン、N,N−ジメチルn−プロパノールアミン、N−エチルn−プロパノールアミン、N,N−ジエチルn−プロパノールアミン、N−イソプロピルn−プロパノールアミン、N,N−ジイソプロピルn−プロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、トリブタノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N−イソプロピルブタノールアミン、N,N−ジイソプロピルブタノールアミン等が挙げられる。
これらの中でも、塗膜の耐水性が向上する点から、ジエタノールアミンが好ましい。
なお、酸変性ポリオレフィン(B)および脂肪酸(C)の中和に用いる塩基性物質がアルカノールアミン(D)以外の塩基性物質、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン等の有機アミン;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の弱塩基等である場合、塗膜の耐水性が低下する。
アルカノールアミン(D)は、沸点が150〜350℃であることが好ましく、200〜300℃であることがより好ましい。沸点が上記範囲内であれば、塗膜の耐水性が向上する。
アルカノールアミン(D)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍であることが好ましい。アルカノールアミン(D)の含有量が上記範囲内であれば、水性分散体の貯蔵安定性がより向上する。
「水(E)」
水性分散体の製造に際しては、その転相時に水が必要となる。この時に必要な水は、ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.5〜7.0質量部であり、1.5〜5.5質量部であることが好ましい。水(E)の含有量が0.5質量部以上であれば、未乳化物量の増加を抑制し、安定して水性分散体を得ることができる。一方、水(E)の含有量が7.0質量部以下であれば、水性分散体の安定性の低下を抑制できる。
「粒子径」
水性分散体の体積平均粒子径は、貯蔵安定性の点から0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。この粒子径は酸変性ポリオレフィン、脂肪酸、アルカノールアミンの含有量等を変更することによって調整できる。
「他の成分」
水性分散体(AW)は、必要に応じて、副資材を含んでもよい。
副資材としては、例えば、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝固剤、ゲル化剤、老化防止剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付香剤、粘着防止剤、離型剤等が挙げられる。
上述した水性分散体(AW)は、さらに塗料樹脂等を含む水性分散体(F)を加えた混合物とすることで実用的な塗料として利用し易い水性分散体とすることができる。
ここで追加される塗料樹脂等としては、公知の種々の成分を使用目的に応じて適用され、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびポリエステルからなる群から選ばれる1種以上を含むものが挙げられる。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を公知の重合方法により重合して得た重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体以外に水酸基含有重合性不飽和単量体単量体が共重合されていてもよい。ここで、水酸基含有重合性不飽和単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。また、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体および水酸基含有重合性不飽和単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」という。)が共重合されていてもよい。その他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂は、公知の方法により得られたものが使用される。ウレタン樹脂は、具体的には、多官能イソシアネート化合物と、活性水素基を1分子中に2個以上有する活性水素化合物とを反応させることで得られる。多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、含硫脂肪族イソシアネート、芳香族スルフィド系イソシアネート、脂肪族ジスルフィド系イソシアネート、芳香族スルホン系イソシアネート、スルホン酸エステル系イソシアネート、芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート、含硫複素環化合物などが挙げられる。
(ポリエステル)
ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとのエステルを有する重合体であり、例えば、多塩基酸と多価アルコールとをエステル化反応させることによって合成することができる。ポリエステルの質量平均分子量については、特に制限されない。ポリエステルとして、ポリエステル中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により付加させて高分子量化した、いわゆるウレタン変性ポリエステルを使用してもよい。
(その他の樹脂、硬化剤)
また、塗料樹脂(G)は、硬化剤との反応性を有する極性基含有樹脂と、硬化剤(例えば、イソシアネート、メラミン樹脂、アミノ樹脂、アミン化合物等)とを含有してもよい。
混合物としては、上述した水性分散体(AW)が1〜30質量部、塗料樹脂を含む水性分散体(F)が70〜99質量部となるようにすることが望ましい(但し、水性分散体(AW)と塗料樹脂を含む水性分散体(F)との合計を100質量部に換算した場合)。水性分散体(AW)が1質量部以上であることにより、耐傷付き性と耐水性を有効に改善できる。他方、水性分散体(AW)が30質量部を超えても耐傷付き性と耐水性は劣る傾向にある。
上記ポリオレフィン(A)を含む本発明の水性分散体は、これを用いて形成された塗布物に対して高度な耐傷付き性と耐水性を発現させる。また、水性分散体(AW)は、有機溶剤を含有しないため、環境への負荷が小さい。
「水性分散体の(AW)の製造方法」
本発明の水性分散体は、例えば、次のような工程を経ることで製造される。
ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)とを溶融混練する第1の混練工程。
混練工程で得られた混練物にアルカノールアミン(D)と水(E)を添加して混練する第2の混練工程。
さらに水を加えて固形分量が10〜60質量%の水性分散体とする希釈工程。
第1の混練工程では、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などを用いて溶融混練する方法が好ましい。
第1の混練工程での脂肪酸(C)の添加量は、ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.1〜10.0質量部であることが好ましく、1.0〜5.0質量部であることが水性分散体の貯蔵安定性の点からより好ましい。
第2の混練工程でも、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などを用いて溶融混練する方法が好ましい。
第2の混練工程でのアルカノールアミン(D)の添加量は、水性分散体中のアルカノールアミン(D)の含有量と同様に、酸変性ポリオレフィン(B)と脂肪酸(C)に由来する酸の合計に対して、モル換算で0.8〜2.0倍が好ましい。
第2の混練工程で添加する水(E)は、転相に必要な水である。
第2の混練工程での水(E)の添加量は、水性分散体中の水(E)の含有量と同様に、ポリオレフィン(A)100質量部に対して0.5〜7.0質量部であり、1.5〜4.5質量部であることが好ましい。
アルカノールアミン(D)と水(E)は、添加するタイミングとして同時でも別々でもかまわない。同時に添加する場合、アルカノールアミン(D)を水(E)で希釈し、希釈液として添加してもよい。特に、水性分散体の未乳化物量を削減しやすい点で、希釈液として添加するのが好ましい。
水(E)の添加量が前記範囲である水性分散体(AW)の固形分濃度は80質量%以上であり、実質的に固体またはペースト状である。そのため、水性分散体(AW)に、塗料樹脂などからなる水性分散体(F)を混合する際には、混合性を高めるために、希釈水を添加して希釈する希釈工程を有することが好ましい。希釈工程では、固形分濃度が30〜80質量%にすることが好ましい。
こうして製造された水性分散体は、さらに上述の塗料樹脂等を含む水性分散体を加える混合工程を経ることで実用的な塗料として利用され得る水性分散体混合物(G)が製造される。
混合に際しては、希釈工程後の水性分散体(AW)1〜30質量部に対して、塗料樹脂を含む水性分散体(F)70〜99質量部を混合することが望ましい。
上記の水性分散体(AW)の製造方法によれば、有機溶剤を使用せず、製造時のVOCの排出を抑制できるため、環境への負荷が小さい。
本発明の水性分散体は、既知の手段により、塗布され、乾燥されて塗布物となる。
塗布する対象としては、種々のプラスチックからなる成形体が挙げられる。そのプラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、ABS樹脂等が挙げられる。
この塗布物であれば高い耐傷付き性と耐水性を発現する。
以下、本発明を製造例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」のことを意味する。
ポリオレフィン(A)および酸変性ポリオレフィン(B)の特性(密度、質量平均分子量、融点、酸価)は、下記のようにして測定した。
[密度]:ポリオレフィン(A)の密度は、ASTM D 792に準拠して測定した。
[質量平均分子量]:ウォーターズ社製、アライアンスGPC V2000型(標準物質;ポリスチレン, 溶媒;オルトジクロロベンゼン, 測定温度;140℃, 溶媒流速;1mL/分)により測定した。
[融点]:セイコーインスツルメンツ製、DSC200、示差走査熱量計(DSC)を使用して、以下の方法で求めた。試料(約5〜10mg)を160℃で3分間融解後、10℃/分の速度で−20℃まで降温し、−20℃で2分間保持した後、10℃/分で160℃まで昇温することにより融解曲線を得、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求めた。
[酸価]:酸変性ポリオレフィン(B)200mgとクロロホルム4800mgを10mlのサンプル瓶に入れて50℃で30分加熱し完全に溶解させた。NaCl、光路長0.5mmの液体セルにクロロホルムを入れ、バックグラウンドとした。次に溶解した酸変性プロピレン系重合体溶液をセルに入れ、FT−IR(日本分光社製)を用いて、積算回数32回にて赤外吸収スペクトルを測定した。無水マレイン酸のグラフト率は、無水マレイン酸をクロロホルムに溶解した溶液を測定し、検量線を作成したものを用いて計算した。カルボニル基の吸収ピーク(1780cm−1付近の極大ピーク、1750〜1813cm−1)の面積から、別途作成した検量線に基づき、重合体中の酸成分含有量を算出した。算出した酸成分含有量/(100−酸成分含有量)×1/97(グラフトされた無水マレイン酸1分子当りの分子量)×2当量(グラフトされた1分子の無水マレイン酸が中和された時のカルボン酸基数)×57(KOH分子量)×1000から酸価を算出した。
以下の実施例、比較例において、(A)成分として、下記の(A−1)〜(A−5)を用いた。
・ポリオレフィン(A−1):
(株)プライムポリマー製「直鎖状低密度ポリエチレン エボリューSP2540」、密度0.924g/cm、融点120℃、デュロメータD硬さ56。
・ポリオレフィン(A−2):
(株)プライムポリマー製「直鎖状低密度ポリエチレン エボリューSP1540」、密度0.913g/cm、融点113℃、デュロメータD硬さ54。
・ポリオレフィン(A−3):
東ソー(株)製「高密度ポリエチレン ニポロンハード2000」、密度0.960g/cm、融点131℃、デュロメータD硬さ70。
・ポリオレフィン(A−4):
(株)プライムポリマー製「直鎖状低密度ポリエチレン エボリューSP0540」、密度0.903g/cm、融点98℃、デュロメータD硬さ49。
・ポリオレフィン(A−5):
東ソー(株)製「高密度ポリエチレン ニポロンハード1000」、密度0.964g/cm、融点131℃、デュロメータD硬さ71。
酸変性ポリオレフィン(B)としては、下記(B−1)を用いた。
・(B−1):無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」)、質量平均分子量:2,700、酸価:30mgKOH/g、融点107℃)。
脂肪酸(C)としては、下記の脂肪酸(C−1)〜(C−5)を用いた。
・C−1:ステアリン酸(花王(株)製「ルナックS−98」、炭素数:18)
・C−2:ミリスチン酸(花王(株)製「ルナックMY−98」、炭素数:14)
・C−3:ベヘン酸(花王(株)製「ルナックBA」、炭素数:22)
・C−4:ラウリン酸(花王(株)製「ルナックL−98」、炭素数:12)
・C−5:モンタン酸(クラリアント(株)製「リコワックスS」、炭素数:28)
アルカノールアミン(D)としては、下記のアルカノールアミン(D−1)〜(D−2)、他の塩基性物質として水酸化カリウム(D−3)を用いた。
・D−1:ジエタノールアミン(日本触媒(株)製「ジエタノールアミン−90」、ジエタノールアミン90%、水10%)
・D−2:トリエタノールアミン(日本触媒(株)製「トリエタノールアミン−90」、トリエタノールアミン87%、ジエタノールアミン4%、水9%)
・D−3:水酸化カリウム
(製造例1)水性分散体(AW−1)
ポリオレフィン(A−1)と、ポリオレフィン(A−1)100部に対して20.0部の酸変性ポリオレフィン(B−1)と、ポリオレフィン100部に対して5部の炭素数が18である脂肪酸(C−1)を混合した。
次いで、この混合物を二軸押出機(スクリュー径;30mm、L/D;40、バレル温度;210℃)にその投入口から4kg/時間で供給して溶融混練した。
また、該二軸押出機のベント部に設けた供給口より、ポリオレフィン(A−1)と酸変性ポリオレフィン(B−1)と脂肪酸(C−1)の総質量に対して、アルカノールアミン水溶液の形態で、5.3部のアルカノールアミン(D−1)と3.5部の水(E)を連続的に供給しながら、加熱して溶融混練し、得られた水性分散体を押し出した。
引き続き、水性分散体を同押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した見掛け上固体の微細分散粒子を80℃の温水中に投入し、連続的に165質量部の温水中で分散させて、固形分濃度が40%で、アルカノールアミン(D)の塩基当量1.5倍、平均粒子径0.50μmの水性分散液を得た。
得られた水性分散体について、二軸押出機内での配合組成、アルカノールアミンの塩基当量、体積平均粒子径の測定結果、貯蔵安定性の評価結果を表1に示す。
[アルカノールアミンの塩基当量]
(B)成分と(C)成分に由来する酸の合計に対する、(D)成分の塩基当量(倍)は以下のようにしてモル換算して求めた。
塩基当量(倍)=W×M×M/(M×W×H×M×2+M×W×M
ここで、式中の略号は以下のとおりである。
:成分(B)の変性量、3.82質量%
:成分(B)のモル質量、98.06g/mol
:成分(C)のモル質量、
(C−1)284.5g/mol
(C−2)228.4g/mol
(C−3)340.6g/mol
(C−4)200.3g/mol
(C−5)396.7g/mol
:成分(D)のモル質量、
(D−1)105.14g/mol
(D−2)149.19g/mol
(D−3)56.11g/mol
:成分(B)の部数、表1、2中に記載
:成分(C)の部数、表1、2中に記載
:成分(D)の部数、表1、2中に記載
[体積平均粒子径]:日機装社製のマイクロトラック(ナノトラック150)(測定溶媒;純水)を用いて体積基準の平均粒子径を測定した。
[貯蔵安定性]
水性分散体について、貯蔵安定性の評価を行った。
まず、水性分散体を1000mLのポリ容器中に入れ、常温(23℃)にて3ヶ月間静置した。その後の水性分散体の外観について目視にて観察し、下記評価基準に従って貯蔵安定性の評価を行った。
×:粘度上昇および/または未乳化物の発生が見られる。
△:僅かに粘度上昇が見られる。
○:変化が見られない。
(製造例2)水性分散体(AW−2)
酸変性ポリオレフィン(B−1)を、ポリオレフィン100部に対して5.5部添加およびアルカノールアミン(D−1)3.5部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.68μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例3)水性分散体(AW−3)
酸変性ポリオレフィン(B−1)を、ポリオレフィン100部に対して28部添加およびアルカノールアミン(D−1)6.2部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.67μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例4)水性分散体(AW−4)
脂肪酸(C−1)を、ポリオレフィン100部に対して0.15部添加およびアルカノールアミン(D−1)3.6部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.70μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例5)水性分散体(AW−5)
脂肪酸(C−1)を、ポリオレフィン100部に対して8部添加およびアルカノールアミン(D−1)6.9部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.42μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例6)水性分散体(AW−6)
アルカノールアミン(D−1)をポリオレフィン100部に対して3.2部添加およびアルカノールアミン(D)の塩基当量0.9倍に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.62μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例7)水性分散体(AW−7)
アルカノールアミン(D−1)を、ポリオレフィン100部に対して6.3部添加およびアルカノールアミン(D)の塩基当量1.8倍に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.49μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例8)水性分散体(AW−8)
水(E)を、ポリオレフィン100部に対して0.55部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.75μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例9)水性分散体(AW−9)
水(E)を、ポリオレフィン100部に対して6.5部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.62μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例10)水性分散体(AW−10)
脂肪酸(C−1)を脂肪酸(C−2)に変更およびアルカノールアミン(D−1)をポリオレフィン100部に対して5.9部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.50μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例11)水性分散体(AW−11)
脂肪酸(C−1)を脂肪酸(C−3)に変更およびアルカノールアミン(D−1)をポリオレフィン100部に対して4.8部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.50μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例12)水性分散体(AW−12)
アルカノールアミン(D−1)をアルカノールアミン(D−2)に変更およびポリオレフィン100部に対して7.4部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.72μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例13)水性分散体(AW−13)
ポリオレフィン(A−1)をポリオレフィン(A−2)に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.52μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例14)水性分散体(AW−14)
ポリオレフィン(A−1)をポリオレフィン(A−3)に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.56μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表1に示す。
(製造例15)水性分散体(AW−15)
ポリオレフィン(A−1)をポリオレフィン(A−4)に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.49μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例16)水性分散体(AW−16)
ポリオレフィン(A−1)をポリオレフィン(A−5)に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.66μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例17)水性分散体(AW−17)
酸変性ポリオレフィン(B−1)を、ポリオレフィン100部に対して4.5部添加およびアルカノールアミン(D−1)3.3部添加に変更した以外は製造例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、水性分散体を得ることができなかった。
(製造例18)水性分散体(AW−18)
酸変性ポリオレフィン(B−1)を、ポリオレフィン100部に対して32部添加およびアルカノールアミン(D−1)6.7部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.95μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例19)水性分散体(AW−19)
脂肪酸(C−1)を、ポリオレフィン100部に対して0.05部添加およびアルカノールアミン(D−1)2.5部添加に変更した以外は製造例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、水性分散体を得ることができなかった。
(製造例20)水性分散体(AW−20)
脂肪酸(C−1)を、ポリオレフィン100部に対して12部添加およびアルカノールアミン(D−1)9.1部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径1.20μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例21)水性分散体(AW−21)
脂肪酸(C−1)を脂肪酸(C−4)に変更およびアルカノールアミン(D−1)をポリオレフィン100部に対して6.4部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.55μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例22)水性分散体(AW−22)
脂肪酸(C−1)を脂肪酸(C−5)に変更およびアルカノールアミン(D−1)をポリオレフィン100部に対して4.5部添加に変更した以外は製造例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、水性分散体を得ることができなかった。
(製造例23)水性分散体(AW−23)
アルカノールアミン(D−1)を、ポリオレフィン100部に対して2.4部添加およびアルカノールアミン(D)の塩基当量を0.7倍に変更した以外は製造例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、水性分散体を得ることができなかった。
(製造例24)水性分散体(AW−24)
アルカノールアミン(D−1)を、ポリオレフィン100部に対して7.7部添加およびアルカノールアミン(D)の塩基当量を2.2倍に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.55μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例25)水性分散体(AW−25)
水(E)を、ポリオレフィン100部に対して0.45部添加に変更した以外は製造例1と同様にして水性分散体を得ようとしたが、水性分散体を得ることができなかった。
(製造例26)水性分散体(AW−26)
水(E)を、ポリオレフィン100部に対して7.5部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.90μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例27)水性分散体(AW−27)
アルカノールアミン(D−1)を水酸化カリウム(D−3)に変更およびポリオレフィン100部に対して2.8部添加に変更した以外は製造例1と同様にして、平均粒子径0.52μmの水性分散体を得た。そして、製造例1と同様にして水性分散体の貯蔵安定性を評価した。その結果を表2に示す。
(製造例28)水性分散体(AW−28)
攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブ内に、ポリオレフィン(A−1)100部と酸変性ポリオレフィン(B−1)20.0部とトルエン500部を仕込み、125℃で1時間攪拌して溶解した後、90℃に冷却した。
また、これとは別に、攪拌機を備えた内容積2Lのオートクレーブ内で、炭素数が18である脂肪酸(C−1)5.0部と水600部を含む水溶液を90℃に加熱し、その中に、前記ポリオレフィン(A−1)100部と、酸変性ポリオレフィン(B−1)20.0部のトルエン溶液、およびアルカノールアミン(D−1)5.3部、(E)成分として水(E−1)3.5部を攪拌継続下で添加した。2時間攪拌して分散した後、高速ホモジナイザー(エスエムテー社(製)「HG−92型」)を用いて、10000rpmで10分間分散した。
次いで、攪拌翼による攪拌を継続したまま、凝縮水を還流させながら、2時間水蒸気蒸留してトルエンを留去したが、トルエンを留去するにつれて凝集物が発生し、トルエンの全量を留去する前に凝集物が99部に達し、水性分散体を得ることができなかった。
Figure 2019123792
Figure 2019123792
(F)成分としては、下記の(F−1)を用いた。
<水性分散体(F−1)の製造>
エチレン−1−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製「エンゲージ8842」:密度0.857g/cm)100部と、酸変性ポリオレフィン(B−1)18.0部と、炭素数が18である脂肪酸(花王(株)製「ルナックS−98」)5.0部とを混合した。
次いで、この混合物を二軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製「PCM−30型」L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、アルカノールアミン(日本触媒(株)製「ジエタノールアミン−90」)4.2部を水2.5部で希釈した希釈液を連続的に供給しながら、200℃に加熱して溶融混練し、得られた溶融混練物を押出した。
引き続き、溶融混練物を同押出機先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した見掛け上固体の微細分散粒子を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度が30%で、体積平均粒子径0.50μmの水性分散体(F−1)を得た。
(実施例1)
水性分散体(F−1)90部と水性分散体(AW−1)10部とを混合して、水性分散体混合物(G−1)を得た。
下記プラスチックのシート(100mm×100mm、2mm厚)に、バーコーターにより乾燥膜厚が20μmになるように水性分散体混合物(G−1)を塗工し、90℃、30分間乾燥して、塗布物を得た。
プラスチック:ゴム含有芳香族ビニル系グラフト共重合体(ポリブタジエン成分55%、アクリロニトリル単位10%、スチレン成分35%)20部と、アクリロニトリル−スチレン共重合体からなる硬質重合体(アクリロニトリル単位23%、スチレン単位77%)30部と、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンS−2000R」)50部とを含有する組成物。
この塗布物の耐傷付き性および塗膜耐水性を以下のように評価した。評価結果を表3に示す。
[耐傷付き性」
塗工物の評価面に、ガーゼを8枚重ねた積層シートを荷重1kg、速度90mm/秒にて100回往復させ、往復後の傷付き程度を下記の基準に従って目視で評価した。
5: 外観変化なし
4: 塗膜に一部傷が入っているが、傷は下地に到達していない
3: 塗膜の大部分に傷が入っているが、傷は下地に到達していない
2: 塗膜の大部分に傷が入り、一部剥離し、傷は下地に到達している
1: 塗膜の大部分が剥離し、下地にも傷が入っている
[耐水性」
90℃での乾燥後さらに3日間室内放置した後に塗膜を40℃の温水に10日間浸漬し塗膜の状態を下記の基準で目視評価した。
◎: 透明性に変化なし。膨潤や剥離はなし。
○: わずかに白化が観察されるが、膨潤や剥離はなし。
△: わずかに白化や剥離が観察される。
×: 全面的に白化し、膨潤や剥離が観察される。
(実施例2)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−2)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−2)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例3)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−3)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−2)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例4)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−4)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−4)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例5)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−5)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−5)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例6)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−6)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−6)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例7)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−7)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−7)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例8)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−8)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−8)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例9)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−9)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−9)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例10)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−10)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−10)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例11)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−11)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−11)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例12)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−12)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−12)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例13)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−13)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−13)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例14)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−14)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−14)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例15)
水性分散体(F−1)99部と水性分散体(AW−1)1部とを混合した以外は、実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−15)を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
(実施例16)
水性分散体(F−1)71部と水性分散体(AW−1)29部とを混合した以外は、実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−16)を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 2019123792
(比較例1)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−15)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−17)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表4に示す。
(比較例2)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−16)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−18)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表4に示す。
(比較例3)
水性分散体(AW−1)の代わりに水性分散体(AW−27)を用いた以外は実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−19)を得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表4に示す。
(比較例4)
水性分散体(F−1)を100部とし水性分散体混合物(G−20)とした。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表4に示す。
(比較例5)
水性分散体(F−1)69部と水性分散体(AW−1)31部とを混合した以外は、実施例1と同様にして水性分散体混合物(G−21)を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表4に示す。
Figure 2019123792
実施例1〜16の水性分散体混合物は、耐傷付き性および耐水性に優れていた。また、実施例1〜16の水性分散体混合物は、水を分散媒としているため、塗料中の有機溶剤量が少なく、環境への負荷が小さい。
水性分散体(AW)中のエチレン系重合体の密度が範囲外の比較例1、比較例2は耐傷付き性が劣っていた。
水性分散体(AW)中のアルカノールアミン(D)の代わりに水酸化カリウムを用いた比較例3は塗膜の耐水性が劣っていた。
水性分散体(AW)を含まない比較例4の水性塗料組成物では、耐傷付き性が劣っていた。
水性分散体(AW)は塗料の耐傷付き性を向上するものであるが、使用に際して過剰に配合すると却って耐傷付き性は低下する傾向にあることを参考例として示した(比較例5)。
本発明の水性分散体を用いることによってその塗布物の耐傷付き性と耐水性を向上することができる。特に、傷が付きやすい状況で使用されることの多い部品、例えば自動車用途において有用なものである。

Claims (7)

  1. ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)と、アルカノールアミン(D)と、水(E)とを含有する水性分散体(AW)であって、
    前記ポリオレフィン(A)の密度は0.910g/cm〜0.960g/cmであることを特徴とする水性分散体。
  2. 前記脂肪酸(C)の炭素数が14〜22である請求項1に記載の水性分散体。
  3. 前記脂肪酸(C)がステアリン酸である請求項1又は2に記載の水性分散体。
  4. 請求項1〜3に記載の水性分散体(AW)1〜30質量部と、塗料樹脂を含む水性分散体(F)70〜99質量部(但し、水性分散体(AW)と水性分散体(F)の合計を100質量部とする)の混合物である水性分散体。
  5. 請求項4に記載の水性分散体を用いて形成された塗布物。
  6. ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィン(B)と、脂肪酸(C)とを溶融混練する第1の混練工程と、
    得られた混練物にアルカノールアミン(D)と水(E)を添加して混練する第2の混練工程と、
    さらに水を加えて固形分量が30〜80質量%の水性分散体とする希釈工程とを有することを特徴とする水性分散体の製造方法。
  7. 前記希釈工程後の水性分散体1〜30質量部に対して、塗料樹脂を含む水性分散体70〜99質量部を混合する混合工程を有する請求項6に記載の水性分散体の製造方法。
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