JP2019123685A - プロテオグリカン含有軟骨エキスと糖アルコールを含有する錠剤 - Google Patents
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Abstract
Description
近年プロテオグリカン含有軟骨エキスの臨床的効果が注目されている。
代表的な作用としては、表皮角化細胞の活性化(特許文献1)、関節機能改善作用(特許文献2)、脂質代謝改善作用(特許文献3)、変形性関節症予防・治療作用(特許文献4)などを例示できる。
しかし、プロテオグリカン含有軟骨エキスは、非常に成形性が悪く、流通に耐えうる錠剤物性(硬度、摩損度)を得るには、成形性を改善するために大量の乳糖や結晶セルロース等の希釈剤が必要であった。加えて、非常に崩壊性が悪いことから、崩壊時間を短縮させるために、大量の崩壊剤や崩壊促進剤の添加も同時に必要であった。その結果、プロテオグリカン含有軟骨エキス含有量の高い錠剤とするためには、希釈剤や崩壊剤等の賦形剤を80質量%以上と大量に配合する必要があった。このためプロテオグリカン含有軟骨エキスを含有する錠剤には、自ずと配合量に限界があった。また成形できた錠剤であっても、錠剤として必要な硬度に到達しない場合や、あるいは、経時変化による崩壊時間の遅れなどの問題が指摘されていた。
マルチトールは、酵素糖化法によって澱粉からつくられる二糖類のマルトースを原料として高圧下で接触還元して得られる。カルボニル基を持たないために褐変反応が起こらず、耐熱性に優れている。
エリスリトールは、ブドウ糖を発酵させることにより作られる非う蝕性の甘味料であり、カロリーがほとんど無いことからダイエット甘味料として利用されている。また打錠成形錠剤に配合すると、錠剤の崩壊性を促進することから、速崩壊性錠剤の原料として広く配合されている(特許文献7)。
しかしプロテオグリカン含有軟骨エキス高含有製剤に賦形剤として糖アルコールを配合すると、糖アルコールは成形性が悪いため、打錠障害が頻発したり、錠剤に成形できたとしても、適切な硬度が得られないことが指摘されている。
本発明は、プロテオグリカン含有軟骨エキスを20質量%以上と糖アルコールを含有する打錠成形錠剤を提供することを課題とする。
(1)プロテオグリカン含有軟骨エキスを20質量%以上、糖アルコールを60質量%以上含有する錠剤。
(2)糖アルコールがマルチトール及び/またはエリスリトールである(1)に記載の錠剤。
(3)プロテオグリカン含有軟骨エキスを20質量%以上、マルチトール及び/またはエリスリトールを60質量%以上含有する複合粒子からなる粉末と賦形剤の混合物を打錠成形することを特徴とするプロテオグリカン含有軟骨エキス含有錠剤の製造方法。
(4)プロテオグリカン含有軟骨エキス20質量%以上とマルチトール及び/またはエリスリトール60質量%以上を含有する複合粒子が、プロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトール及び/またはエリスリトールと物理的に結合した状態を有しているものである(3)に記載の錠剤の製造方法。
(5)プロテオグリカン含有軟骨エキス20質量%以上とマルチトール及び/またはエリスリトール60質量%以上を含有する複合粒子が、プロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトール及び/またはエリスリトールの混合物を、衝撃、圧縮、せん断の繰り返しにより複合化した粉末である(3)に記載の方法。
本発明の錠剤は、従来提供することが困難であったプロテオグリカン含有軟骨エキス20質量%以上と糖アルコール60質量%を含有する錠剤となる。
本発明で用いるプロテオグリカン含有軟骨エキスの由来に特に制限はなく、ほ乳類(ヒト、ウシ、ブタ等)、鳥類(ニワトリ等)、魚類(サメ、鮭等)、甲殻類(カニ、エビ等)等の各種動物由来の中から適宜選択することができる。魚類軟骨から抽出されたものが広く流通しており入手が容易である。プロテオグリカン含有軟骨エキスは上記原料から抽出されたエキス末を指し、プロテオグリカン複合体、プロテオグリカン、II型コラーゲンを含む。例えば、プロテオグリカン複合体80(プロテオグリカン複合体80%以上、プロテオグリカン40%以上、II型コラーゲン40%以上含有:日本薬品株式会社製)を例示することができる。
また、本発明で用いる糖アルコールは、食品または医薬品原料の基準を満たす粉末であれば良い。糖アルコールの中でも、マルチトール及び/またはエリスリトールが好ましい。
なお、本発明でいう複合粒子または複合体とは、複数のプロテオグリカン含有軟骨エキスと糖アルコールの粒子が物理的な力で結合した状態を呈しているものを言う。
また、衝撃、圧縮、せん断の繰り返しによって微小粒子を調製しながら同時に複合化する装置は、乾式複合化装置の名称で市販されており、この装置を使用することができる。乾式複合化装置としては、ホソカワミクロン株式会社製の「ノビルタNOB(製品名)」を例示することができる。ノビルタNOBは、混合容器内でロータが高速回転しながら、原料に衝撃、圧縮、せん断の力を作用させ、原料を微細化し、この微細化粒子の表面形状を加工しながら自動的に複合粒子を製造する装置である(特開2010−180099号公報参照)。
また、通常の造粒法により再度造粒して用いることもできる。
打錠法による製剤の原料とするためには、粒径が10〜750μmになるように篩い分けして分級し、薬効成分とその他の成分を添加・混合し、打錠して必要な硬度を有する錠剤を得ることができる。
打錠は、錠剤の製造に用いるロータリー式打錠機など一般的な打錠成形装置であれば良い。なお直径8〜9mmの錠剤の場合、打錠する際の打錠圧は、1000kgf以下が望ましく、このような条件で製造された錠剤は、6.5kgf以上の錠剤硬度を示す。さらに、本発明の複合粉末を配合した錠剤は、生産時にキャッピング等の打錠障害が発生しない。
<製剤原末の製造例:プロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトールまたはエリスリトールの複合粒子の製造>
1.使用原料
プロテオグリカン含有軟骨エキス:プロテオグリカン複合体80 平均粒径(メジアン径D50)145μm(日本薬品株式会社)
マルチトール:アマルティMR−50 平均粒径(メジアン径D50)99μm(三菱商事フードテック株式会社)
エリスリトール:エリスリトール顆粒100 平均粒径(メジアン径D50)318μm(マイクロフーズジャパン株式会社)
ノビルタNOB−MINI(ホソカワミクロン株式会社)(実験用装置)
方法
プロテオグリカン含有軟骨エキスと糖アルコールを下記表1の配合比(%)で粉混合し、この混合物を乾式複合化装置で処理することで、プロテオグリカン含有軟骨エキス粒子表面に、微小粒子からなるプロテオグリカン含有軟骨エキス及び微小粒子からなる糖アルコールが凝集した複合粒子を製造した。
なお、製造装置としてホソカワミクロン株式会社製乾式複合化装置「ノビルタNOB−MINI」を使用した。「ノビルタNOB−MINI」は、水平円筒状の混合容器内で、ブレードを有するロータが周速40m/s以上の高速で回転して、衝撃、圧縮、せん断の力が粒子個々に均一に作用するように設計されている。回転数と運転時間の調節により、微粒子化と複合化を同時に進行させることが可能な装置である。本体ケーシングは水冷ジャケット構造になっており、高いエネルギーを加えても品温の上昇を抑制できる。この装置の使用マニュアルに従い、ジャケット温度15℃、負荷量16W・min/gの処理条件で、衝撃、圧縮、せん断を繰り返し、複合粒子を調製した。負荷量とは、処理装置に投入された原料1gに加えられたエネルギー量、又は、電力量(W・min)を示す。
なお、ここでいう負荷量は、原料にどの程度エネルギーをかけたかの指標となる。
<走査型電子顕微鏡による構造観察>
上記で得られた複合粒子(試料1)を走査型電子顕微鏡S−3400(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察し、その構造を観察した。図1に試料1のプロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトールの複合粒子の50倍、500倍、5000倍の観察画像を示す。また、構造を評価するために、図2に使用したプロテオグリカン含有軟骨エキスおよびマルチトールの50倍、500倍、5000倍の観察画像を示す。
図1、図2を対比すれば理解できるように、本発明の複合粒子は、微小粒子からなる凝集物の粉末及び微小粒子が相互に粒子表面に結合した構造を有している。一方原料としたプロテオグリカン含有軟骨エキスの粒子は、表面が平滑な状態を呈していた。
試料1の粒子は、プロテオグリカン含有軟骨エキス粒子表面に微小粒子が被覆していることが観察されるが、微小粒子は、複合粒子化処理によって微細に粉砕されたプロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトールであることが確認される。プロテオグリカン含有軟骨エキスの微小粒子の粒子径は1μm程度であることから、マイクロレベルで結合していることが予想される。
試料1〜6の粒子及び混合1〜6の混合粉末を用いて錠剤を調製した。
<錠剤加工適性の評価>
各試料99質量%に、滑沢剤としてステアリン酸カルシウムを1質量%添加して、粉混合した後、単発打錠機N−30E(岡田精工株式会社製)で打錠成形した。錠剤形状はφ8mm、10R、200mg/錠、打錠圧力は1000kgfとした。
得られた錠剤の硬度、崩壊時間及び錠剤の摩損度を測定した。硬度の測定はニュースピードチェッカーTS−75N(岡田精工株式会社製)を使用した。崩壊時間は、日本薬局方「崩壊試験方法」に記載された方法に従い、水中における崩壊時間を測定した。また崩壊時間の測定は、製造直後(Ini.)、60℃で1週間保存後(60℃1W)の2回測定した。摩損度は、日本薬局方記載の摩損度試験器を使用し、錠剤20粒について、毎分25回転で、10分間試験を行った。結果を下記表3、表4に示す。
また、崩壊時間はプロテオグリカン含有軟骨エキスの比率が増大すると(試料3〜5:50〜80質量%)崩壊時間が60分を超える錠剤になることが判明した。
一方、混合1〜6を用いて打錠成形した場合は、混合1以外は成形できなかった。また混合1を用いて成形した錠剤は、成形は可能であったが、摩損度が非常に高く、品質に問題のある錠剤であった。以上の試験から、プロテオグリカン含有軟骨エキスと糖アルコールの複合化粉末は、従来成形困難であったプロテオグリカン含有軟骨エキス高含有錠剤を打錠成形で調製できる物性を有していることがわかった。
また、60℃1週間の保存後の崩壊試験の結果を考慮すると、打錠適性に加えて好ましい崩壊特性を有するプロテオグリカン含有軟骨エキスの配合量は、40質量%以下であることが判明した。
従来の技術により製造した、プロテオグリカン含有軟骨エキス20質量%含有錠剤の配合組成と、錠剤の評価試験を示す。
表5に配合組成を示す。配合組成中の結晶セルロース、部分α化デンプンは、それぞれ希釈剤と崩壊剤の目的で使用を行った。ソルビトール及びエリスリトールは、水溶性が高いため、錠剤中に水を引き込むための崩壊促進剤の目的で使用した。錠剤1は希釈剤と崩壊剤、錠剤2は希釈剤と崩壊促進剤、錠剤3は希釈剤と崩壊剤、崩壊促進剤を主とした配合処方とした。
Claims (5)
- プロテオグリカン含有軟骨エキスを20質量%以上、糖アルコールを60質量%以上含有する錠剤。
- 糖アルコールがマルチトール及び/またはエリスリトールである請求項1に記載の錠剤。
- プロテオグリカン含有軟骨エキスを20質量%以上、マルチトール及び/またはエリスリトールを60質量%以上含有する複合粒子からなる粉末と賦形剤の混合物を打錠成形することを特徴とするプロテオグリカン含有軟骨エキス含有錠剤の製造方法。
- プロテオグリカン含有軟骨エキス20質量%以上とマルチトール及び/またはエリスリトール60質量%以上を含有する複合粒子が、プロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトール及び/またはエリスリトールと物理的に結合した状態を有しているものである請求項3に記載の錠剤の製造方法。
- プロテオグリカン含有軟骨エキス20質量%以上とマルチトール及び/またはエリスリトール60質量%以上を含有する複合粒子が、プロテオグリカン含有軟骨エキスとマルチトール及び/またはエリスリトールの混合物を、衝撃、圧縮、せん断の繰り返しにより複合化した粉末である請求項3に記載の方法。
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井上 義之: "OD錠製造のための乾式粒子複合化技術", 製剤機械技術研究会誌, vol. 第20巻, 第3号, JPN6021029687, 2011, pages 239 - 244, ISSN: 0004563801 * |
岩田 基数: "口腔内崩壊錠の設計と外部滑沢打錠法の活用", 製剤の達人による製剤技術の伝承 上巻 経口投与製剤の製剤設計と製造法, JPN6021029689, 20 May 2013 (2013-05-20), pages 273 - 284, ISSN: 0004563800 * |
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