JP6807270B2 - エリスリトールと多孔性無機物の複合体粒子及びそれを含む錠剤 - Google Patents

エリスリトールと多孔性無機物の複合体粒子及びそれを含む錠剤 Download PDF

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本発明は、エリスリトールと多孔性無機物の複合体粒子及びその利用に関する。
高齢者や小児など嚥下能力の低下した患者が水なしで手軽に服用できる口腔内速崩壊性固形製剤が多数提供されている。そして口腔内崩壊性を錠剤に付与するために糖類、糖アルコール、水溶性高分子物質を配合することがしばしば行われている。
特許文献1には、固形製剤の水に対する親和性を高めるために、エリスリトール、トレハロース、キシリトール、マルトースなどの水親和性の高い糖類と低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの水膨潤性崩壊剤を併用する製剤が提案されている。なかでもエリスリトールが優れていることが記載されている。
特許文献2には、水媒体、リン酸水素カルシウムおよび糖類からなる懸濁液を噴霧乾燥して得られる粉末状のリン酸水素カルシウム・糖類含有組成物が開示されており、この組成物を錠剤等固形製剤とすると口腔内崩壊性に優れていることが記載されている。特に糖類としてエリスリトールを配合すると崩壊性に優れた錠剤となることが記載されている。
また、特許文献3には、ケイ酸カルシウムとエリスリトールなどの糖類と発泡成分を配合すると服用したとき、口腔内での速やかな崩壊と好ましい崩壊感を与えることが記載されている。特許文献4には、適度な硬度及び速やかな崩壊を有し、且つ、製剤の安定性にも優れた水なしで服用可能な固形製剤として、医薬有効成分を含有する粉末を、二酸化ケイ素を分散させた溶液で噴霧造粒した造粒物と、糖アルコールを含有させることで、水なしで服用可能な固形製剤となることが記載されている。これらの先行技術以外にも、様々な構成の口腔内速崩壊錠が提案されている。
しかし、口腔内での即時崩壊性と、錠剤の圧縮成型性並びに錠剤硬度には、機能的に相反するものがある。すなわち、口腔内即時崩壊性を優先すると錠剤としての成型性や硬度に欠け、成型性や錠剤硬度を優先すると速崩壊性に劣ることが指摘されている。また、速崩壊性を意図した組成の場合、特に圧縮成型性が悪く、打錠圧を高めると、打錠に際してキャッピングが頻発して、目的とする錠剤の製造効率が悪化することが知られている。
キャッピングは錠剤成型時の打錠圧力が高くなるほど発生頻度が増す。健康食品に用いられる錠剤は飲み易さの観点から直径8〜9mmであることが多く、そのような錠剤の実生産時には打錠圧1000kgfから1500kgf程度で錠剤成型することが一般的であるが、適した打錠粉末を用いなければ、これらの打圧ではキャッピングが発生しやすいといわれている。一方、500kgf程度の低打圧であればキャッピングが発生しにくいが、得られる錠剤硬度が低くなり、製品の流通中に錠剤が破損するなどの問題が発生する。健康食品業界では、錠剤を個々に包装せずに、アルミ袋にいれて流通させることが一般的であるため、直径8〜9mmの錠剤では、経験上5kgf以上の錠剤硬度が必要となる。
国際公開第99/036097号パンフレット 国際公開第99/055373号パンフレット 特表2010−540588号公報 特開2016−020330号公報
本発明は、速崩壊性錠剤の打錠成型を容易にするために賦形剤として使用可能な複合体粒子を提供することを課題とする。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)エリスリトールの粒子表面にエリスリトールの微小粒子と多孔性無機物の微小粒子が凝集した構造を有する複合体粒子。
(2)多孔性無機物がケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウムから選択されるいずれかの物質である(1)に記載の複合体粒子。
(3)エリスリトール及び多孔性無機物の定方向最大径が0.04〜5.00μmである(1)又は(2)に記載の複合体粒子。
(4)複合体粒子中にエリスリトールを90質量%以上含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の複合体粒子。
(5)見かけのかさ密度が0.4〜0.7g/mLである(1)〜(4)のいずれかに記載の複合体粒子。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の複合体粒子を含む錠剤。
(7)口腔内速崩壊錠である(6)に記載の錠剤。
本発明により、エリスリトールの粒子表面に微小粒子からなるエリスリトールと微小粒子からなる多孔性無機物が精密に分散された状態で凝集した複合物が被覆した構造を有する複合体粒子が提供される。この複合体粒子は、優れた溶解性と成形性を有しているため、速崩壊性錠剤の主希釈剤として使用した場合、錠剤の崩壊を向上させるとともに、容易に打錠成形が可能である。さらに、一般的な錠剤に配合した場合、有効成分の含量を増やす、あるいは、結合剤の添加を抑えた場合でも硬質な錠剤を得ることが可能である。また、硬度を低下させることなく、崩壊性の向上を行うことも可能である。
このため容易に硬質の錠剤が得られ、コーティングを行う場合にも、コーティング工程中に錠剤の破損が発生せず、錠剤にフィルムコーティングや糖衣コーティングを施すことが容易である。
実施例1の複合体粒子の走査型電子顕微鏡観察画像である。 実施例1で使用したエリスリトール顆粒の走査型電子顕微鏡観察画像である。 比較例4の複合体粒子の走査型電子顕微鏡観察画像である。 比較例7のエリスリトール顆粒と二酸化ケイ素の物理混合物の走査型電子顕微鏡観察画像である。 実施例1の複合体表面に被覆している微小粒子の定方向最大粒子径の測定に使用した解析画像である。
本発明は、エリスリトールの粒子表面に微小粒子からなるエリスリトールと微小粒子からなる多孔性無機物が精密に分散された状態で凝集した複合物が被覆した構造を有する複合体粒子に関する。
本明細書でいう精密に分散された状態とは、エリスリトールと多孔性無機物の両粒子が、各々、マイクロレベルの微小粒子の状態で混合されている状態を言う。
また、本明細書でいう被覆した構造とは、微小粒子からなるエリスリトールと多孔性無機物が精密に分散された状態で凝集した複合物が、エリスリトール表面に付着している状態を言う。
より具体的には、本発明の複合体粒子は、エリスリトールの結晶又はエリスリトールの粉末の凝集物である顆粒表面に、定方向最大径0.04〜4.50μmの微小粒子からなるエリスリトールと多孔性無機物が精密に分散された状態で被覆した構造を有する複合体粒子である。エリスリトールは、通常ぶどう糖を原料として酵母による発酵法により生産される。結晶の粒度が50メッシュ以下のものが広く用いられる。このようなエリスリトールは、市販品(三菱化学フーズ)として入手することができる。また公知の水をバインダーとする造粒操作により顆粒としてもよい。
なお、本発明でいう複合体粒子とは、複数の粒子が物理的な力で結合した状態を呈しているものを言う。
本発明の原料として用いるエリスリトールの結晶又は造粒物は50μm以上であることが好ましい。50μm未満の場合、本発明の効果を得ることは難しい。
本発明で使用する多孔性無機物としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素、二酸化ケイ素)、リン酸カルシウムなどの微細粒や珪灰石、ゼオライト等の天然無機物、人工ゼオライト等の人工無機物が挙げられる。これら多孔性無機物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。本発明においては、歴史的に製剤原料として多用されているシリカ、リン酸カルシウムの微細粒が好ましく、特に好ましくは食品添加物として利用される非結晶性のシリカ末である。シリカは、「無水ケイ酸」あるいは「二酸化ケイ素」とも呼ばれ、不溶性で、体内で消化吸収されず排出されるため身体に害はない。
なお、本発明においては、シリカの微細粒子であって、製剤用に用いられる場合の用語である「酸化ケイ素、又は、二酸化ケイ素」をシリカと同義で用いる。
本発明の原料として用いる多孔性無機物は、その平均粒子径10μm以下であることが好ましい。
本発明の複合体粒子は、上記したエリスリトールの結晶又はエリスリトールの粉末の凝集物である顆粒と多孔性無機物の混合物に圧縮、せん断、衝撃の力を繰り返し作用させて、エリスリトール及び多孔性無機物を微小粒子に粉砕するとともに、エリスリトールの結晶又は粒子の表面に微小粒子に粉砕されたエリスリトール及び多孔性無機物を精密混合した状態で凝集(複合化)させる。エリスリトールと多孔性無機物はエリスリトール90〜99.5質量%、多孔性無機物10〜0.5質量%の比率とし、予め混合する。
圧縮、せん断、衝撃の繰り返しによって微小粒子を調製しながら同時に複合化する装置は、乾式複合化装置の名称で市販されており、この装置を使用することができる。乾式複合化装置としては、ホソカワミクロン株式会社製の「ノビルタNOB(製品名)」を例示することができる。ノビルタNOBは、混合容器内でローターが高速回転しながら、原料に圧縮、せん断、衝撃の力を作用させ、原料を微細化し、この微細化粒子の表面形状を加工しながら自動的に複合粒子を製造する装置である(特開2010−180099号公報参照)。
エリスリトールの結晶またはエリスリトールの造粒物と多孔性無機物の複合体粒子は、微小粒子からなるエリスリトール及び微小粒子からなる多孔性無機物の精密混合物が、エリスリトールの粒子表面に被覆した構造を有する複合体粒子である。複合体表面に凝集したエリスリトール及び多孔性無機物(例えば二酸化ケイ素)両粒子は、その粒子の径が0.04〜4.49μmであり、この粒子が物理的な力でエリスリトールの粒子表面に結合している。複合体粒子を走査型電子顕微鏡で観察すると、この構造を確認することができる。
本発明の複合体粒子は、上記した乾式複合化装置により調製され、これを篩い分けすることによって所望の粒径を有する粉末あるいは顆粒として得ることができる。
また、通常の造粒法により再度造粒して用いることもできる。
打錠法による製剤の原料とするためには、粒径が10〜700μmになるように篩い分けして分級し、薬効成分とその他の成分を添加混合し、打錠して速崩壊錠を得ることができる。本発明の複合体粒子は、粒径が10〜700μmであることが好ましい。
本発明の複合体粒子を賦形剤として、速崩壊性錠剤を製造する場合は、必要に応じてセルロースやステアリン酸カルシウムなどの賦形剤や滑沢剤、その他の有効成分(生理活性成分)を添加することもできる。あるいは市販の複合賦形剤、例えば富士化学工業株式会社製「エフメルト」を配合することもできる。エフメルトはワキシー澱粉及び結晶セルロース、リン酸カルシウムから調製された流動性の良い顆粒状の紛体であり、質量比で、澱粉:結晶セルロース:リン酸カルシウム=82:15:3の比率で構成される。主に崩壊剤の用途で使用される。
打錠は、錠剤の製造に用いるロータリー式打錠機など一般的な成型打錠装置であれば良い。なお直径8〜9mmの錠剤の場合、打錠する際の打錠圧は、1500kgf以下が望ましい。特に好ましくは600kgfである。なお、本発明の複合体粒子を賦形剤として用いると、生産時にキャッピング等の打錠障害が発生しない。
以下、本発明を実施例、比較例によりさらに具体的に説明する。
<エリスリトールの表面に、微小粒子からなるエリスリトール及び微小粒子からなる多孔性無機物が結合した構造を有する複合体粒子の製造例>
1.複合体粒子の製造例−1
実施例1
使用原料
エリスリトール顆粒;エリスリトール顆粒100 平均粒径(メジアン径)451μm(マイクロフーズジャパン株式会社)
酸化ケイ素(二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸);サイロページ720 平均粒径(メジアン径)4.2μm(富士シリシア化学株式会社)
使用装置
ノビルタNOB−MINI(実験用装置)
方法
エリスリトール顆粒98質量部、酸化ケイ素2質量部を粉混合し、この混合物を複合体製造装置に20g投入し、エリスリトール顆粒表面に、微小粒子からなるエリスリトール及び多孔性無機物の精密混合物を凝集させた複合体粒子を製造した。なお、製造装置としてホソカワミクロン株式会社製乾式複合化装置「ノビルタNOB−MINI」を使用した。「ノビルタNOB−MINI」は、水平円筒状の混合容器内で、ブレードを有するロータが周速40m/s以上の高速で回転して、圧縮・せん断・衝撃の力が粒子個々に均一に作用するように設計されている。回転数と運転時間の調節により、微粒子化と複合化を同時に進行させることが可能な装置である。本体ケーシングは水冷ジャケット構造になっており、高いエネルギーを加えても品温の上昇を抑制できる。装置の使用マニュアルに従い、水冷ジャケット温度15℃、0.05kWの出力条件で2分間運転し、圧縮・せん断・衝撃を繰り返し、複合体粒子を調製した。原料に加えられた負荷量は0.5kW・min/gであった。負荷量とは、処理装置に投入された原料1gに加えられたエネルギー量、又は、電力量(W・min)を示す。
なお、ここでいう負荷量とは 原料にどの程度エネルギーをかけたかの指標である。
実施例2
実施例1と同様の原料と装置を用いて、「ノビルタNOB−MINI」を0.1kWの出力で2分間運転し、圧縮・せん断・衝撃を繰り返し、複合体粒子を調製した。
原料に加えられた負荷量は1.0kW・min/gであった。
2.比較例の複合体の製造
実施例1、実施例2で使用した原料(エリスリトール顆粒、酸化ケイ素)の粒子径の効果、及び複合体化の効果について、相互の組み合わせの適否を検討するため、下記の表1の条件で物理混合した混合物又は複合体を調製した。なお、比較例には、平均粒子径(メジアン径)17.4μmのエリスリトール微粉を使用した。複合体化の方法は、実施例2と同様の条件で「ノビルタNOB−MINI」を運転した。
3.見かけのかさ密度
実施例1、実施例2、比較例1〜7の複合体粒子、粉末又は顆粒の見かけのかさ密度を測定した。測定結果を表2に示す。
エリスリトール顆粒と二酸化ケイ素を混合後、複合化処理を行った実施例1及び実施例2は、処理前(比較例7)と比較して、みかけのかさ密度は低下した。複合化処理に伴い、エリスリトール顆粒と二酸化ケイ素粒子が粉砕されたためであると考えられる。一方、エリスリトール微粉を使用して、複合化処理を行った比較例3及び5は、処理前後でみかけのかさ密度の変化は確認されなかった。また、エリスリトール顆粒を使用した場合においても、二酸化ケイ素を添加しないで複合化処理を行った比較例4は処理前後でみかけのかさ密度に変化は確認されなかった。
4.打錠試験
実施例1、実施例2、比較例1〜7の複合体粒子、粉末又は顆粒を用いて打錠適性試験を行った。
打錠するためのその他の賦形剤としてセルロース、エフメルト及び滑沢剤を添加した組成として、下記の表3の成分を物理混合により調製して試験した。なおデンプンは予め球状に造粒された市販の崩壊剤「エフメルト(富士化学工業株式会社)」を用いた。
打錠は、打錠圧力システムN−30E(岡田精工株式会社製)を用いて、直径9mm、300mgの錠剤とし、打圧は600kgf、900kgf、1200kgfの3水準とした。得られた錠剤はニュースピードチェッカーTS−75N(岡田精工株式会社製)を用いて錠剤硬度を測定した。崩壊時間は、硬度7kgfの錠剤について、口腔内崩壊錠用崩壊試験機トリコープテスタ(岡田精工株式会社製)を用いて崩壊時間を測定した。トリコープテスタは口中に含んだとき、速やかな崩壊を示す口腔内速崩壊錠の崩壊性を評価する目的で開発された崩壊試験機であり、トリコープテスタの試験条件を次に示した。
<トリコープテスタ試験条件>
試験液 :水
試験液温度:37℃
荷重 :20g
滴下間隔 :1.27秒
滴下速度 :3.0mL/min
滴下高さ :7cm
5.結果
打錠試験の結果を下記の表4に示す。
実施例1、実施例2の複合体粒子を配合した場合、得られる錠剤は必要な錠剤硬度と崩壊性を有していた。しかし、比較例1〜7の粉末又は顆粒は打錠による製剤適性を有さないことが確認された。すなわち好ましい打錠適性を有する粉末又は顆粒を得るためには、エリスリトール顆粒と微粒二酸化ケイ素を用いて複合体化することが必須であることがわかった。
6.複合体粒子の製造例−2
実施例1、2の打錠適性試験に基づき、エリスリトール顆粒と微粒二酸化ケイ素の混合比率を変えた複合体粒子を調製した。
一回あたりの複合体製造処理量を300g、使用装置として、ノビルタNOB−130(実生産機)を用い、水冷ジャケット温度15℃、0.5kWの出力条件で4分間運転し、圧縮・せん断・衝撃を繰り返し、複合体粒子を調製した。
原料に加えられた負荷量は0.67kW・min/gであった。
エリスリトール顆粒と微粒二酸化ケイ素の混合比率は、実施例3 99.5:0.5、実施例4 98:2、実施例5 95:5、実施例6 90:10とした。また同じ比率で物理混合したものを調製し、これを比較例8〜11とした。以上の実施例3〜6及び比較例8〜11の配合原料と処理操作の一覧を下記の表5に示す。
7.見かけのかさ密度
実施例3〜6、比較例8〜11の複合体粒子、粉末又は顆粒の見かけのかさ密度を測定した。測定結果を表6に示す。
実施例3〜6は、処理前(比較例8〜11)と比較して、みかけのかさ密度は上昇した。複合化処理に伴い、エリスリトール顆粒と二酸化ケイ素粒子が粉砕されたためであると考えられる。
8.打錠試験
上記の2の打錠適性試験と同条件、同組成で打錠して錠剤の打錠適性試験を行い、成型して得られた錠剤の硬度を測定して、成形性を評価した。結果を下記の表7に示す。
実施例5及び6においては打錠圧1200kgfではキャッピングが発生したが、同じ配合比率に対応する実施例及び比較例を比較した場合、実施例の錠剤は、高い硬度を示した。本発明の複合体粒子は成形性の向上が確認された。
以上の試験のとおり、実施例3〜6の複合体粒子は、好ましい打錠適性を有していることが確認された。
9.走査型電子顕微鏡による構造観察
本発明の複合体粒子を走査型電子顕微鏡S−3400(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)で観察し、その構造を評価した。図1に実施例のエリスリトールと二酸化ケイ素の複合体の観察画像を示す。また、構造を評価するために、図2に実施例で使用したエリスリトール顆粒、図3にエリスリトールのみの複合体粒子(比較例4)、図4に実施例で使用したエリスリトール顆粒と二酸化ケイ素の物理混合物(比較例7)の観察画像を示す。図1より、本発明の複合体粒子は微小粒子からなる凝集物の粉末と微小粒子が表面に被覆した粒状の顆粒であることが確認された。図2より、粒状の顆粒はエリスリトールであると確認される。また、図3より、エリスリトールのみの複合体粒子においても、エリスリトール顆粒表面に微小粒子が被覆している様子が観察され、図4のエリスリトール顆粒と二酸化ケイ素の物理混合末では、エリスリトール顆粒表面に二酸化ケイ素と推察される微小粒子が付着している様子が確認された。このことから、本発明の複合体粒子に観察される微小粒子は、複合化処理によって微細に粉砕されたエリスリトールと二酸化ケイ素であることが確認される。さらに、図3に観察されるエリスリトールの微小粒子の粒子径は1μm程度であることから、本発明の複合体粒子に観察される微小粒子は、マイクロレベルで混合されていることが確認された。
従って、本発明の複合体粒子は、エリスリトールの粒子表面に微小粒子からなるエリスリトールと微小粒子からなる多孔性無機物が精密に分散された状態で凝集した複合物が被覆した構造を有していることが確認された。
10.微小粒子の粒子径評価
本発明の複合体粒子にみられる微小粒子の粒子径を定方向最大径により測定した。測定に使用した画像を図5に示し、測定結果を表8に示した。尚、測定は図5で観察される任意の粒子300個について、画像解析ソフトウェアWinROOF(三谷商事株式会社製)を使用して解析を行った。
表8より、本発明の複合体粒子に観察される微小粒子の定方向径は0.04〜4.49μmであることが確認された。
以上により、本発明により、エリスリトール及び多孔性無機物両者の微小粒子は定方向径が0.04〜4.49μmであり、それらの粒子は精密混合された状態で、エリスリトールの粒子表面へ凝集(被覆)した構造を有する複合体粒子が提供される。この複合体粒子は、優れた溶解性と成形性を有しているため、速崩壊性錠剤の主希釈剤として使用した場合、錠剤の崩壊を向上させるとともに、容易に打錠成形が可能である。さらに、一般的な錠剤に配合した場合、有効成分の含量を増やす、あるいは、結合剤の添加を抑えた場合でも硬質な錠剤を得ることが可能である。また、硬度を低下させることなく、崩壊性の向上を行うことも可能である。

Claims (5)

  1. エリスリトールの粒子表面にエリスリトールの微小粒子とケイ素、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウムから選択されるいずれかの多孔性無機物の微小粒子が凝集した構造を有する複合体粒子であって、エリスリトールを90質量%以上含有する複合体粒子
  2. エリスリトール及び多孔性無機物の定方向最大径が0.04〜5.00μmである請求項1に記載の複合体粒子。
  3. 見かけのかさ密度が0.4〜0.7g/mLである請求項1又は2に記載の複合体粒子。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の複合体粒子を含む錠剤。
  5. 口腔内速崩壊錠である請求項に記載の錠剤。
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