JP2019122345A - きのこ栽培用成長促進剤およびきのこ栽培用培養基 - Google Patents

きのこ栽培用成長促進剤およびきのこ栽培用培養基 Download PDF

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甫 中村
茂男 宮田
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Abstract

【課題】安全性が高く、少量の添加で収穫量を増加させることができ、かつ収穫したきのこに含まれる必須ミネラル成分を増強できる、きのこ栽培用成長促進剤、およびそれを配合したきのこ栽培用培養基を提供する。【解決手段】下記(式1)で表される複合金属水酸化物を有効成分とする、きのこ栽培用成長促進剤を提供する。Ca1−x−yMgxM2+y(OH)2−nz(An−)z(式1)(ただし、式中、M2+はFe、Mn、ZnおよびCuから選ばれる少なくとも1種以上の2価金属を示し、An−はB、Mo、PおよびSeの酸素酸イオンから選ばれる少なくとも1種以上のn価のアニオンを示し、x、y、zおよびnの範囲は、0≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z≦1、1≦n≦6、0≦nz≦1である。)【選択図】図1

Description

本発明は、水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムを主成分とし、Fe、Mn、ZnおよびCu等の元素を含む複合金属水酸化物を有効成分とする、きのこ栽培用成長促進剤およびそれを配合したきのこ栽培用培養基に関する。
近年、ブナシメジ、シイタケ、マイタケ等のきのこの栽培において、軽作業で安定した収益が得られるという利点から、人工培養基が広く用いられている。その培養基としては、基材となる鋸屑やコーンコブに米糠、フスマ等の栄養剤を配合し、加水混合、充填成型、滅菌処理工程を経て、きのこの種菌を接種して培養したものが用いられる。
培養基できのこを培養する工程では、きのこ菌糸の生長に伴い、きのこの菌糸生長にとって、様々な弊害が生じてくる。具体的には、きのこ菌糸の呼吸に伴う培養基内の酸素の欠乏、きのこ菌糸の発熱に伴う培養温度の上昇、培地成分の分解に伴う培養基pHの低下等が挙げられる。これらの不良要因によって、きのこの菌糸生長が阻害され、培養中あるいは栽培中の培養基の不良品の発生やきのこの品質の低下及び収量の低下を招くことがしばしば見られる。
これらを解決する手段として、種々の提案がなされてきた。例えば、特許文献1では、培養中のきのこ培養基のpH低下を抑制し、培養中の培養基のpHをきのこの培養に適したpHに維持する効果を有するものとして、リン酸カルシウムや炭酸カルシウム等の難溶解性のカルシウム化合物を含有することを特徴とするキノコ培養用補強剤が開示されている。この発明の作用は、培養中のきのこ菌糸の培養基成分の分解に伴って生ずる、シュウ酸等の有機酸と培養基中に溶出したカルシウムとの反応により、カルシウム塩を生成させ、培養基のpHの低下を抑制しようとするものである。
特許文献2では、きのこ培養基の培養時の不良率が低減を目的とし、リン酸二水素カルシウムを含有することを特徴とするきのこ培養基、リン酸二水素カルシウムの添加量が、培養基全量に対して0.01〜5重量%である、該きのこ培養基、きのこ培養基にリン酸二水素カルシウムを添加することを特徴とするきのこの培養法が開示されている。
特許文献3では、きのこ栽培用培養基の添加剤として、天然品または合成品の炭酸カルシウム・マグネシウムが提案されている。該添加剤の効果により、きのこ栽培用培養基のpHが適切な数値に保たれ、高いきのこ収量が安定して得られるとされている。
また特許文献4では、Caおよび/またはMgを主成分とするハイドロタルサイト類、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムのいずれかの結晶の固溶体からなる農作物のミネラル補給剤が提案されている。該ミネラル補給剤は、Fe、Cu、Zn、Mn等の植物の必須ミネラル成分が、水酸化カルシウムおよび/または水酸化マグネシウムの結晶中に均一に固溶しており、Caおよび/またはMgを含む全ての必須ミネラルが、同じ速度で徐々に水に溶解するとされている。
特開昭63−196210号 特開2000−245256号 特開2006−149257号 特開2005−89237号
本発明の課題は、安全性が高く、少量の添加で収穫量を増加させることができ、かつ収穫したきのこに含まれる必須ミネラル成分を増強できる、きのこ栽培用成長促進剤を提供することである。
本発明者は、鋭意研究の結果、上記特許文献4に開示されている水酸化カルシウム系固溶体をきのこ栽培用培養基に少量添加することにより、きのこの収穫量が飛躍的に向上し、収穫後のきのこに含まれる必須ミネラル成分が増加することを見出し、本発明に至った。
本発明では、上記課題を解決したきのこ栽培用成長促進剤、該きのこ栽培用成長促進剤を含有するきのこ栽培用培養基を提供する。
より具体的には、本発明は以下のきのこ栽培用成長促進剤およびきのこ栽培用培養基を提供する。
1.下記(式1)で表される複合金属水酸化物を有効成分とするきのこ栽培用成長促進剤。
Ca1−x−yMg2+ (OH)2−nz(An− (式1)
(ただし、式中、M2+はFe、Mn、ZnおよびCuから選ばれる少なくとも1種以上の2価金属を示し、An−はB、Mo、PおよびSeの酸素酸イオンから選ばれる少なくとも1種以上のn価のアニオンを示し、x、y、zおよびnの範囲は、0≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z≦1、1≦n≦6、0≦nz≦1である。)
2.前記1に記載の(式1)において、M2+がFe、Mn、ZnおよびCuであり、かつxおよびyの範囲が0≦x<0.4、0<y≦0.3、0.1<x+y<0.5である、前記1に記載のきのこ栽培用成長促進剤。
3.前記1に記載の(式1)において、M2+がFe0.005〜0.1Mn0.005〜0.1Zn0.001〜0.1Cu0.001〜0.05の組成で表され、xおよびyの範囲がそれぞれ0.01<x<0.4、0.01<y≦0.2、0.1<x+y<0.5であり、An−がBおよびMoの酸素酸イオンである、前記1に記載のきのこ栽培用成長促進剤。
4.前記1に記載のきのこ栽培用成長促進剤を0.01〜5重量%含む、きのこ栽培用培養基。
本発明によれば、安全性が高く、少量の添加で収穫量を増加させることができ、かつ収穫したきのこに含まれる必須ミネラル成分を増強できる、きのこ栽培用成長促進剤を提供できる。
実施例2における収穫時のブナシメジの写真である。 実施例3における収穫時のブナシメジの写真である。 比較例1における収穫時のブナシメジの写真である。 比較例1における収穫時のブナシメジの写真である。
以下、本発明のきのこ栽培用成長促進剤およびきのこ栽培用培養基について具体的に説明する。
<きのこ栽培用成長促進剤>
本発明のきのこ栽培用成長促進剤は、有効成分として、以下で説明する複合金属水酸化物を含有する。
(複合金属水酸化物)
本発明のきのこ栽培用成長促進剤の有効成分である複合金属水酸化物の化学式、金属の種類、An−の種類、xの範囲、yの範囲、x+yの範囲、zの範囲、nの範囲、nzの範囲、製造方法については以下の通りである。
(化学式)
本発明の複合金属水酸化物は、下記(式1)で表される。
Ca1−x−yMg2+ (OH)2−nz(An− (式1)
(ただし、式中、M2+はFe、Mn、ZnおよびCuから選ばれる少なくとも1種以上の2価金属を示し、An−はB、Mo、PおよびSeの酸素酸イオンから選ばれる少なくとも1種以上のn価のアニオンを示し、x、y、zおよびnの範囲は、0≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z≦1、1≦n≦6、0≦nz≦1である。)
(金属の種類)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、M2+はZn、Fe、MnおよびCuの少なくとも1種以上の2価金属である。これら以外の金属として、Cr3+および/またはNi2+を含有していてもよい。好ましいM2+はZn、Fe、MnおよびCuである。さらに好ましいM2+は、Fe0.005〜0.1Mn0.005〜0.1Zn0.001〜0.1Cu0.001〜0.05の範囲の組成である。
(An−の種類)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、An−はB、Mo、PおよびSeの酸素酸イオンから選ばれる少なくとも1種以上のn価のアニオンである。B、Mo、PおよびSeの酸素酸イオンとしては、例えばHBO 2−、BO 3−、B 2−、MoO 2−、Mo 2−、HPO ,HPO 2−,PO 3−,SeO 2−,SeO 2−等が挙げられるが、この限りではない。
(xの範囲)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、xの範囲は0≦x<1であり、好ましくは0≦x<0.4、より好ましくは0.01<x<0.4である。
(yの範囲)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、yの範囲は0<y≦0.5であり、好ましくは0<y≦0.3、より好ましくは0.01<y≦0.2である。
(x+yの範囲)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、x+yの範囲は0<x+y≦1であり、好ましくは0.1<x+y<0.5である。
(zの範囲)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、zの範囲は0≦z≦1であり、好ましくは0≦z≦0.5である。
(nの範囲)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、nの範囲は1≦n≦6である。
(nzの範囲)
(式1)で表される本発明の複合金属水酸化物において、nzの範囲は0≦nz≦1であり、好ましくは0≦nz≦0.5である。
(製造方法)
本発明のきのこ栽培用成長促進剤の有効成分である複合金属水酸化物は、Ca、MgおよびM2+の水溶性塩、例えば硫酸塩、塩化物、硝酸塩等を水に溶解し、この水溶液と当量、もしくは当量以上のアルカリ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、の水溶液と共沈させることにより製造することができる。共沈反応の好ましいpHと温度はそれぞれ、pH10〜14、温度20〜50℃である。共沈反応後、ろ過、水洗浄、脱水、乾燥、粉砕する。モリブデン酸塩、リン酸塩およびセレン酸塩を加える場合は、共沈反応後、ろ過前に添加し、攪拌する。ホウ酸塩を加える場合は、水洗浄、脱水後のケーキに添加し、混合する。乾燥雰囲気は大気雰囲気でもよいが、好ましくは非酸化雰囲気である。非酸化雰囲気で乾燥させることにより、FeやMnの酸化を減少できる。
上記以外の反応方法では、アルカリおよびCaの供給源としての両機能を持つ水酸化カルシウムと、MgおよびM2+の混合水溶液とを反応させる方法も用いることができる。
<きのこ栽培用培養基>
本発明のきのこ栽培用培養基に用いられる培地は、きのこ栽培に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば鋸屑やコーンコブのようなリグニン・セルロースを主成分とした基材と、米糠、フスマ、コーンブラン、乾燥おからといった栄養源を含有するもの等が一般的に用いられる。
本発明のきのこ栽培用培養基は、本発明のきのこ栽培用成長促進剤を、培地全重量に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%含有する。0.01%以上添加すれば、混合時にきのこ栽培用成長促進剤が培養基全体に分散され、菌糸生長促進効果が十分に発現される。5%より多く添加すると、きのこ培養基内のpH値が上昇し過ぎ、菌糸生長の成長が阻害される。
きのこ栽培促進剤の培養基への添加は、培地全体に分散されるように行なうことが好ましく、鋸屑、米糠、フスマといった粉体と同時に添加しても良いし、加水した後に添加してもよい。しかし、植菌時に同時に培養基に注入してもよく、また、菌糸蔓延の完了までの間であれば、植菌直後や培養途中に、注入・添加することもできる。
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸第1鉄、硝酸マンガンおよび硝酸第2銅の混合水溶液(Ca2+=0.616mol/L、Mg2+=0.25mol/L、Fe2+=0.06mol/L、Mn2+=0.045mol/L、Zn2+=0.025mol/L、Cu2+=0.004mol/L)と4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、計量ポンプを用いてそれぞれ、100ml/分、約50ml/分の流速で、容量2.5リットルのオーバーフロー付き反応槽に、ケミスターラーで攪拌しつつ、反応槽のpHを約13、温度を約40℃に保ち、約30分間連続的に共沈反応を行った。オーバーフローして得られた懸濁液中に含まれる固形分1molに対し、0.0064mol分モリブデン酸ナトリウム2水和物を加え、10分攪拌保持した。その後、減圧濾過、水洗浄し、ケーキを得た。ケーキ中に含まれる固形分1molに対し、0.026mol分のホウ酸を加え、混合した。ケーキを熱風乾燥機に入れ、約100℃で6時間乾燥した。約40℃まで冷えた後、乾燥機から取り出しアトマイザーで粉砕し、本発明のきのこ栽培用成長促進剤Aを得た。得られた粉末のX線回析パターンを測定した結果、ほぼ水酸化カルシウムのみの回析パターンであった。この粉末の化学組成は、ICPで分析した結果次の通りであった。
Ca0.616Mg0.25Fe0.06Mn0.045Zn0.025Cu0.004(OH)1.9352(HBO 2−0.026(MoO 2−0.0064
市販のスギ粉62g、米ヌカ60g、コーンコブ30g、オカラ20g、フスマ20gにイオン交換水358gを加え、よく混合し、合計550gの培地を作製した。この培地に対し、実施例1で作製したきのこ栽培用成長促進剤Aを0.63g添加した。培地の配合を表1に示す。
上記の培地を5セット用意し、ポリプロピレン製のビン5本にそれぞれに入れ、オートクレーブで滅菌を行った。滅菌完了後、オートクレーブから取り出し、クリーンベンチ内で常温になるまで冷却した。その後、予め冷蔵保管しておいた市販のブナシメジ菌種を接種し、温度22℃、湿度70%に設定し、83日間培養を行った。
83日間の培養後、ビンの蓋を開け、まんじゅう掻き法による菌掻きを行った。菌掻きを行ったビンに菌床上部が完全に浸かるように滅菌水を加えた。注水が完了したビンを3時間静置させ、その後、ビンを転倒させ余剰の水分を除去した。菌かきおよび注水が完了したビン上部のキャップを開けて、有孔ポリシートを被せた後、温度14℃、湿度95〜99%に設定し、12日間培養を行った。
12日間の培養終了後、温度14℃、湿度95〜99%、照度300Luxに設定し、さらに26日間培養を行った。培養が完了したビンからブナシメジの子実体部分を収穫し、5本のビンにおける平均収量およびミネラル成分の平均値を測定した。ミネラル成分はICPにて分析した。分析結果を表1に、収穫時のブナシメジの写真を図1に示す。
実施例2において、培養開始前の培地に対し、実施例1で作製したきのこ栽培用成長促進剤Aを1.25g添加した以外は同様にして培養し、ブナシメジの子実体部分を収穫した。培地の配合を表1に、分析結果を表2に、収穫時のブナシメジの写真を図2に示す。
(比較例1)
実施例2において、きのこ栽培用成長促進剤の添加を省いた以外は同様にして培養し、ブナシメジの子実体部分を収穫した。培地の配合を表1に、分析結果を表2に、収穫時のブナシメジの写真を図3および図4に示す。
表1より、本発明のきのこ栽培用成長促進剤を培地に添加した実施例2および3は、比較例1に比べ、子実体部分の平均収量が増加し、Ca、Mg、Mn、Fe、ZnおよびKのいずれのミネラル含有量も増加していることが分かる。
本発明によれば、安全性が高く、少量の添加で収穫量を増加させることができ、かつ収穫したきのこに含まれる必須ミネラル成分を増強できる、きのこ栽培用成長促進剤を提供できる。

Claims (4)

  1. 下記(式1)で表される複合金属水酸化物を有効成分とするきのこ栽培用成長促進剤。
    Ca1−x−yMg2+ (OH)2−nz(An− (式1)
    (ただし、式中、M2+はFe、Mn、ZnおよびCuから選ばれる少なくとも1種以上の2価金属を示し、An−はB、Mo、PおよびSeの酸素酸イオンから選ばれる少なくとも1種以上のn価のアニオンを示し、x、y、zおよびnの範囲は、0≦x<1、0<y≦0.5、0<x+y≦1、0≦z≦1、1≦n≦6、0≦nz≦1である。)
  2. 請求項1に記載の(式1)において、M2+がFe、Mn、ZnおよびCuであり、かつxおよびyの範囲が0≦x<0.4、0<y≦0.3、0.1<x+y<0.5である、請求項1に記載のきのこ栽培用成長促進剤。
  3. 請求項1に記載の(式1)において、M2+がFe0.005〜0.1Mn0.005〜0.1Zn0.001〜0.1Cu0.001〜0.05の組成で表され、xおよびyの範囲がそれぞれ0.01<x<0.4、0.01<y≦0.2、0.1<x+y<0.5であり、An−がBおよびMoの酸素酸イオンである、請求項1に記載のきのこ栽培用成長促進剤。
  4. 請求項1に記載のきのこ栽培用成長促進剤を0.01〜5重量%含む、きのこ栽培用培養基。
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CN110301299A (zh) * 2019-08-05 2019-10-08 武汉岁岁丰农业科技开发有限公司 一种制备富硒酵母和利用富硒酵母生产液体菌种种植富硒食用菌的方法

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