JP2019120403A - ピストンリング - Google Patents

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大志 清水
Hiroshi Shimizu
大志 清水
哲郎 会田
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良成 渡辺
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良成 渡辺
典由 石川
Noriyoshi Ishikawa
典由 石川
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Abstract

【課題】ピストンリングがピストンに対して円周方向に回転する場合であっても、ピストンの摩耗粉の凝着を抑制できるピストンリングを提供する。【解決手段】ピストンリング1は、径方向C外側を向く外周面10と、径方向C内側を向く内周面20と、外周面10及び内周面20と連続し、軸方向Bの一方を向く上面30と、外周面10及び内周面20と連続し、軸方向Bの他方を向く下面40と、を備え、上面30及び下面40のうち少なくとも一方の面には、軸方向Bから見た平面視で、径方向Cに対して傾斜し、連続的又は断続的に、直線状に延在する延在凹部50が形成されており、延在凹部50は、内周面20及び外周面10には到達していない。【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関用のピストンリングに関し、特に、上下面の表面微細構造によりピストンの摩耗粉の凝着、並びに自己及び相手部品の摩耗、を抑制できる内燃機関用ピストンリングに関する。
内燃機関の構成部品として、ピストンリング(以下、単に「リング」ともいう。)が使用される。ピストンリングは、金属製のピストンの外周に周方向に沿って設けられたリング溝に装着される。ピストンリングは、ピストンが軸方向に往復運動するとき、シリンダ内壁との摺動抵抗によってリング溝の上下面と衝突する。これにより、ピストンのリング溝が摩耗し、ピストンリングの上下面に摩耗粉が凝着する可能性がある。摩耗粉の凝着は、ピストンの材料として、軽量化等のためにアルミ合金を用いた場合には、特に顕著となる。
このような凝着を抑制するために、例えば特許文献1及び2には、ピストンリングの下面に溝等の凹部を設けた構成が開示されている。
特開平6−159135号公報 実開平6−56565号公報
特許文献1及び2に記載のピストンリングによると、下面に形成した凹部に潤滑油を保持することで、摩耗粉の凝着を抑制すると共に、自己及び相手部品(ここではピストン)の摩耗を抑制することができる。ところで、ピストンリングは、ピストンが軸方向に往復運動するとき、ピストンに対して円周方向に回転し、ピストンリングの上面又は下面と、ピストンのリング溝の上面又は下面と、が摺動することがある。ピストンリングがピストンに対して円周方向に回転し、両者が摺動することで、凹部の形状や形成される位置によっては、ピストンのリング溝からの摩耗粉が発生し易くなる場合がある。かかる場合には、ピストンリングへの摩耗粉の凝着を十分に抑制できない可能性があった。
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、ピストンリングがピストンに対して円周方向に回転する場合であっても、ピストンの摩耗粉の凝着を抑制すると共に、自己及び相手部品の摩耗を抑制することができるピストンリングを提供することにある。
本発明のピストンリングは、径方向外側を向く外周面と、径方向内側を向く内周面と、軸方向の一方を向く上面と、軸方向の他方を向く下面と、を備え、前記上面及び前記下面のうち少なくとも一方の面には、軸方向から見た平面視で、径方向に対して傾斜し、連続的又は断続的に、直線状に延在する延在凹部が形成されており、前記延在凹部は、前記内周面及び前記外周面には到達していないことを特徴とする。
本発明は、上記構成において、前記延在凹部の延在方向は、前記平面視で、径方向に対して30°以上60°以下傾斜していることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記延在凹部が、断続的に直線状に延在しており、前記平面視での最近接距離が100μm以下となるように断続することが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記少なくとも一方の面には、前記延在凹部が複数形成されており、前記複数の延在凹部のうち、前記平面視で隣接する任意の2つの延在凹部の最近接距離が、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記延在凹部が、前記平面視で、内周縁から径方向厚さの1/10以上、外周縁側の位置に形成されていることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記延在凹部が、前記平面視で、外周縁から径方向厚さの1/10以上、内周縁側の位置に形成されていることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記少なくとも一方の面には、前記外周面に到達し、かつ、前記内周面には到達しない外凹部が更に形成されていることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記少なくとも一方の面には、前記内周面に到達し、かつ、前記外周面には到達しない内凹部が更に形成されていることが好ましい。
本発明は、上記構成において、合口部が更に形成され、前記延在凹部が、前記合口部に到達していないことが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記少なくとも一方の面における、凹部が形成されていない部分を凹部非形成部としたとき、前記平面視で、前記凹部の総面積が、前記凹部非形成部の総面積に対して、50%以上90%以下であることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記延在凹部の最大深さが、1μm以上50μm以下であることが好ましい。
本発明は、上記構成において、前記少なくとも一方の面には、硬質被膜層又は樹脂製の被膜層が設けられていることが好ましい。
本発明によれば、ピストンリングがピストンに対して円周方向に回転する場合であっても、ピストンの摩耗粉の凝着を抑制すると共に、自己及び相手部品の摩耗を抑制することができるピストンリングを提供することができる。
本発明の一実施形態としてのピストンリングの平面図である。 ピストンに装着され、シリンダ内に挿入された状態の、図1に示すピストンリングを示す断面図である。 図1に示すピストンリングに形成された延在凹部の第1の態様を示す平面図である。 図1に示すピストンリングに形成された延在凹部の第2の態様を示す平面図である。 図4に示す第2の態様としての延在凹部を構成する複数の構成凹部それぞれの変形例を示す図である。 図1に示すピストンリングに形成された延在凹部の第3の態様を示す平面図である。 図1に示すピストンリングに形成された延在凹部の第4の態様を示す平面図である。 アルミ凝着試験の概要を示す図である。 アルミ凝着試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通の構成には、同一の符号を付している。
図1は、本発明の一実施形態としてのピストンリング1の平面図である。図2は、ピストン100に装着され、シリンダ200内に挿入された状態のピストンリング1を示す断面図である。以下、ピストンリング1の中心軸をOとし、ピストンリング1の円周方向をAとし、中心軸Oに沿う軸方向をBとし、ピストンリング1の径方向をCとする。
図1及び図2に示すように、ピストンリング1は、径方向Cの外側を向く外周面10と、径方向Cの内側を向く内周面20と、軸方向Bの一方側(図1の紙面手前側、図2の上側)を向く上面30と、軸方向Bの他方側(図1の紙面奥側、図2の下側)を向く下面40と、を有する。本実施形態の上面30は、外周面10及び内周面20と連続する。また、本実施形態の下面40は、外周面10及び内周面20と連続する。図1に示すように、ピストンリング1は、合口部6が形成された割りリング形状に形成されている。
図2に示すように、ピストンリング1の外周面10は、軸方向Bの中心位置に頂点を有する、凸状の湾曲面(バレルフェイス)形状に形成されている。ピストンリング1の内周面20は、軸方向Bに平行な円筒面形状に形成されている。ピストンリング1の上面30及び下面40は、それぞれ径方向Cに平行な平坦面に形成されている。上面30及び下面40の少なくともいずれか一方の面には、延在凹部50(図3〜図7参照)が形成されている。なお、延在凹部50の詳細については後述する。ここで、延在凹部50が形成された面における、延在凹部50を含むいかなる凹部も形成されていない部分を、凹部非形成部60a〜60d(図3〜図7参照)とする。
ピストンリング1は、例えば自動車等のエンジン(内燃機関)のピストン100にトップリング(第1圧力リング)として装着して使用される。具体的に、図2に示すように、ピストンリング1は、ピストン100の外周で周方向に沿って形成されたリング溝110に装着される。より詳細には、図2に示すように、リング溝110に装着された状態のピストンリング1は、内周面20全体を含む径方向Cの内側の一部分がリング溝110の内部に位置し、外周面10全体を含む径方向Cの外側の他の部分がリング溝110の外部に位置する。図2に示すように、リング溝110に装着された状態のピストンリング1は、ピストン100が軸方向Bに往復運動するとき、外周面10を摺動面として、シリンダ200の内壁210(以下、単に「シリンダ内壁210」ともいう。)と摺動しながら、軸方向Bに沿って往復運動する。また、ピストンリング1は、軸方向Bに沿って往復運動する際、ピストン100に対して円周方向A(図1参照)に回転することがある。
図2に示すように、ピストンリング1の上面30と下面40との間の幅は、リング溝110の上面111と下面112との間の幅よりも小さい。そのため、ピストンリング1がリング溝110に装着された状態で軸方向Bに沿って往復運動すると、ピストンリング1の上面30の一部及びリング溝110の上面111の一部が接触しつつピストンリング1の下面40及びリング溝110の下面112が離れた状態と、ピストンリング1の下面40の一部及びリング溝110の下面112の一部が接触しつつピストンリング1の上面30及びリング溝110の上面111が離れた状態と、が繰り返される。このとき、ピストンリング1の上面30は、外周面10の最大外径部11から内周面20側に向かって、径方向厚さDの1/10より手前の位置から内周面20側の全範囲に亘って、リング溝110の上面111と接触する。同様に、ピストンリング1の下面40は、外周面10の最大外径部11から内周面20側に向かって、径方向厚さDの1/10より手前の位置から内周面20側の全範囲に亘って、リング溝110の下面112と接触する。ここで、径方向厚さDは、ピストンリング1の内周面20の最小内径部21から外周面10の最大外径部11までの径方向Cにおける厚さである。最大外径部11は、外周面10の最も外径の大きい位置であり、図2に示す例では、外周面10の軸方向Bの中心位置である。最小内径部21は、内周面20の最も内径の小さい位置であり、図2に示す例では、内周面20が軸方向Bに平行であるため、内周面20の任意の位置である。
以下、図3〜7を参照して、ピストンリング1の上面30及び下面40の少なくともいずれか一方の面に形成された延在凹部50の各態様を例示して説明する。詳細は後述するが、図3〜図7に示す延在凹部50は、いずれも、軸方向Bから見た平面視(図1参照)で、径方向Cに対して傾斜し、連続的又は断続的に、直線状に延在している。また、図3〜図7に示す延在凹部50は、いずれも、内周面20及び外周面10には到達していない。換言すれば、図3〜図7に示す延在凹部50は、いずれも、軸方向Bから見た平面視で、内周縁及び外周縁には到達していない。
図3は、ピストンリング1に形成された延在凹部50の第1の態様としての延在凹部50aを示す平面図である。ここで、ピストンリング1の平面視において、実際には円周方向Aは湾曲しているが、図3では、説明の便宜上、円周方向Aを直線状に示している。このことは、以下で参照する図4、図6及び図7においても同様である。
図3に示すように、軸方向Bから見た平面視(以下、単に「平面視」ともいう。)で、延在凹部50aは、径方向Cに対して傾斜し、連続的に、かつ直線状に延在する。図3に示す例では、複数の延在凹部50aが、円周方向Aに等間隔に、かつ互いに平行に延在するように形成されている。また、図3に示すように、複数の延在凹部50aそれぞれは、内周面20及び外周面10には到達していない。
ピストンリング1は、上記したように、軸方向B(図2参照)に沿って往復運動する際、ピストン100(図2参照)に対して円周方向Aに回転し、ピストンリング1の上面30又は下面40と、図2に示すピストン100のリング溝110の上面111又は下面112と、が摺動することがある。ここで、仮に、ピストンリング1の上面30又は下面40に、径方向Cに延在する延在凹部が形成されている場合、ピストンリング1がピストン100に対して円周方向Aに回転する際に、延在凹部の幅方向の端部により、ピストン100のリング溝110の上面111又は下面112が削られ易く、ピストン100の摩耗粉(以下、単に「摩耗粉」ともいう。)が発生し易い。ピストンリング1に、径方向Cに対して傾斜した方向に直線状に延在する延在凹部50aを形成すれば、上述のような径方向Cに延在する延在凹部を形成する場合と比較して、幅方向の端部によりリング溝110の上面111又は下面112が削られることが抑制できる。よって、延在凹部50aを形成することで、摩耗粉の発生を抑制できる。
また、ピストンリング1がピストン100に対して円周方向Aの一方に回転し、ピストンリング1の上面30又は下面40と、図2に示すピストン100のリング溝110の上面111又は下面112と、が摺動する際に、上面30又は下面40に形成された凹部内の潤滑油は、円周方向Aの他方に向かって排出され易い。ここで、仮に、ピストンリング1の上面30又は下面40に、円周方向Aに延在する延在凹部が形成されている場合、延在凹部内の潤滑油は、径方向Cの一部の幅のみで、円周方向Aに向かって排出される。ピストンリング1に、径方向Cに対して傾斜した方向に直線状に延在する延在凹部50aを形成すれば、上述のような円周方向Aに延在する延在凹部を形成する場合と比較して、円周方向Aに向かって排出される潤滑油の径方向Cの排出幅が拡がり易くなる。よって、延在凹部50aを形成することで、ピストンリング1及びピストン100の摺動面に対して、径方向Cの広い範囲に亘って潤滑油を供給でき、摩耗粉の発生を抑制し、凝着を抑制できる。
また、上記したように、図3に示す延在凹部50aは、内周面20及び外周面10には到達していない。すなわち、延在凹部50aがピストンリング1の上面30に形成されている場合には、上面30とリング溝110(図2参照)の上面111(図2参照)とが接触するとき、延在凹部50aは、上面30の延在凹部50aの径方向Cの内側及び外側に位置する凹部非形成部60aとリング溝110の上面111とが接触する領域によって、径方向Cの内側及び外側が閉じられた凹部となり得る。同様に、延在凹部50aがピストンリング1の下面40に形成されている場合には、下面40とリング溝110の下面112(図2参照)とが接触するとき、延在凹部50aは、下面40の凹部50aの径方向Cの内側及び外側に位置する凹部非形成部60aとリング溝110の下面112とが接触する領域によって、径方向Cの内側及び外側が閉じた凹部となり得る。つまり、延在凹部50aは、径方向Cの内側及び両側が閉じられた凹部となり得る。これにより、延在凹部50a内の潤滑油が内周面20側及び外周面10側から排出されることが抑制され、潤滑油を延在凹部50a内に保持し易くなる。延在凹部50a内に保持された潤滑油は、動圧効果によって延在凹部50aの周囲の凹部非形成部60aの表面に油膜を形成するため、ピストンリング1とリング溝110との接触応力が緩和される。よって、ピストン100のリング溝110のフレッティングによる摩耗が抑制されて摩耗粉が減少するため、リング溝110からの摩耗粉のピストンリング1への凝着を抑制することができる。
上記のように、ピストンリング1は、延在凹部50aを形成することで、ピストンリング1がピストン100に対して円周方向Aに回転する場合であっても、ピストン100の摩耗粉の凝着を抑制できる。
図3に示すように、複数の延在凹部50aそれぞれの延在方向E1が平面視で径方向Cに対して傾斜する傾斜角θ1は、30°以上60°以下であることが好ましく、35°以上55°以下であることがより好ましく、45°であることが特に好ましい。傾斜角θ1が上記下限値以上であれば、延在凹部50aの幅方向の端部によりリング溝110の上面111又は下面112が削られることがより抑制でき、摩耗粉の発生をより抑制できる。また、傾斜角θ1が上記上限値以下であれば、延在凹部50aから円周方向Aに向かって排出される潤滑油の径方向Cの排出幅がより拡がり易くなり、ピストンリング1及びピストン100の摺動面に対して、径方向Cのより広い範囲に亘って潤滑油を供給できる。
図3に示すように、複数の延在凹部50aのうち、平面視で隣接する任意の2つの延在凹部50aの最近接距離F1は、10μm以上100μm以下であることが好ましい。ここで、本明細書において、任意の2つの凹部の最近接距離は、平面視で、2つの凹部それぞれが最も近接する位置同士を結ぶ直線の距離である。最近接距離F1が上記下限値以上であれば、隣接する2つの延在凹部50a間に位置する凹部非形成部60aが幅狭な凸部を形成して図2に示すピストン100のリング溝110の上面111又は下面112を削ることを抑制し、摩耗粉の発生を抑制することができる。また、最近接距離F1が上記上限値以下であれば、隣接する2つの延在凹部50a間に位置する凹部非形成部60aの全域に油膜を形成し易くすることができる。
図3に示すように、複数の延在凹部50aのうち、任意の隣り合う延在凹部50aは、径方向Cに沿って重なる部分を有するように形成されている。換言すれば、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50aが形成された面は、径方向Cに沿って2つ以上の延在凹部50aが形成された領域を有する。これにより、円周方向Aにおいて延在凹部50aが形成されない領域がなくなる。そのため、潤滑油の円周方向Aにおける形成ムラが抑制される。
図3に示すように、複数の延在凹部50aそれぞれは、平面視で、内周縁から径方向厚さDの1/10以上、外周縁側の位置に形成されている。なお、図3、並びに以下で参照する図4、図6、及び図7の平面視における外周縁は、外周面10の最大外径部11により構成されている。また、図3、並びに以下で参照する図4、図6、及び図7の平面視における内周縁は、内周面20の最小内径部21により構成されている。これにより、延在凹部50aから内周面20側を通じて潤滑油及び燃焼ガスが漏れ出ることをより確実に抑制することができる。
図3に示すように、複数の延在凹部50aそれぞれは、平面視で、外周縁を構成する、外周面10の最大外形部11から径方向厚さDの1/10以上、内周縁を構成する、内周面20の最小内径部21側の位置に形成されている。ここで、上述の通り、ピストンリング1の上面30は、外周面10の最大外径部11から内周面20側に向かって、径方向厚さDの1/10より手前の位置から内周面20側の全範囲に亘って、リング溝110(図2参照)の上面111(図2参照)と接触する。従って、延在凹部50aがピストンリング1の上面30に形成されている場合には、上面30とリング溝110の上面111とが接触するとき、延在凹部50aの径方向Cの外側の位置で、上面30とリング溝110の上面111とが接触する領域が存在する。つまり、延在凹部50aは、上面30の延在凹部50aよりも径方向Cの外側に位置する凹部非形成部60aとリング溝110の上面111とが接触する領域によって、外周面10側が確実に封鎖される。
また、上述の通り、ピストンリング1の下面40は、外周面10の最大外径部11から内周面20側に向かって、径方向厚さDの1/10より手前の位置から内周面20側の全範囲に亘って、リング溝110(図2参照)の下面112(図2参照)と接触する。従って、延在凹部50aがピストンリング1の下面40に形成されている場合には、下面40とリング溝110の下面112とが接触するとき、延在凹部50aの径方向Cの外側の位置で、下面40とリング溝110の下面112とが接触する領域が存在する。つまり、延在凹部50aは、下面40の延在凹部50aよりも径方向Cの外側に位置する凹部非形成部60aとリング溝110の下面112とが接触する領域によって、外周面10側が確実に封鎖される。
従って、ピストンリング1の上面30又は下面40の凹部非形成部60aと、リング溝110の上面111又は下面112との接触によって、延在凹部50aから外周面10側へ通じる流路が封鎖されるので、延在凹部50aを通じて潤滑油及び燃焼ガスが外周面10側に漏れ出ることが抑制される。
複数の延在凹部50aは、いずれも合口部6(図1参照)には到達していないことが好ましい。これにより、ピストンリング1の上面30又は下面40の凹部非形成部60aと、リング溝110(図2参照)の上面111(図2参照)又は下面112(図2参照)との接触によって、延在凹部50aから合口部6を通じて潤滑油及び燃焼ガスが漏れ出ることが抑制される。よって、潤滑油及び燃焼ガスのシール性をより向上させることができる。なお、上述したように、複数の延在凹部50aは、いずれも内周面20及び外周面10にも到達していないため、径方向Cの内側及び外側も閉じられている。つまり、複数の延在凹部50aそれぞれは、円周方向Aの両側、並びに、径方向Cの内側及び外側、が閉じられた凹部(以下、「閉凹部」ともいう。)となる。
延在凹部50aの最大深さは、表面粗さRz以上である必要があり、1μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。延在凹部50aの最大深さが上記下限値以上であれば、延在凹部50aを形成することによる上述の効果を得ることができる。また、延在凹部50aの最大深さは、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。延在凹部50aの最大深さが上記上限値以下であれば、延在凹部50a内に潤滑油が流れ込むことによる凹部非形成部60aの表面の油膜切れを抑制し、リング溝110の摩耗を抑制することができる。
ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50aが形成された面には、外周面10に到達し、かつ、内周面20には到達しない外凹部が更に形成されていてもよい。この場合、外凹部は、外周面10側で潤滑油の経路を形成するため、外周面10から外凹部への潤滑油の導入と、外凹部から外周面10への潤滑油の排出とが円滑に行われる。これにより、ピストンリング1とリング溝110との接触面の熱が、外凹部内の潤滑油を媒介して外周面10からシリンダ200へ逃げるので、ピストンリング1とリング溝110との接触面の温度の上昇が抑制される。よって、リング溝110の摩耗が抑制されて、摩耗粉のピストンリング1への凝着を抑制することができる。
外凹部と延在凹部50aとの最近接距離は、10μm以上100μm以下であることが好ましい。外凹部と延在凹部50aとの最近接距離が上記下限値以上であれば、外凹部と延在凹部50aとの間に位置する凹部非形成部60aが幅狭な凸部を形成して図2に示すピストン100のリング溝110の上面111又は下面112を削ることを抑制し、摩耗粉の発生を抑制することができる。また、外凹部と延在凹部50aとの最近接距離が上記上限値以下であれば、延在凹部50a内の潤滑油が、外凹部と延在凹部50aとの間に位置する凹部非形成部60aに形成された油膜を通じて、外凹部内の潤滑油と循環するので、延在凹部50a内の余分な潤滑油及び摩耗粉を、外凹部を経て外周面10側から排出することができる。
ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50aが形成された面には、内周面20に到達し、かつ、外周面10には到達しない内凹部が更に形成されていてもよい。この場合、内凹部は、内周面20側で潤滑油の経路を形成するため、内周面20から内凹部への潤滑油の導入と、内凹部から内周面20への潤滑油の排出とが円滑に行われる。内凹部内に保持された潤滑油は、動圧効果によって内凹部の周囲の凹部非形成部60aの表面に油膜を形成するため、ピストンリング1とリング溝110(図2参照)との接触応力が緩和される。よって、ピストン100のリング溝110のフレッティングによる摩耗が抑制されて摩耗粉が減少するため、リング溝110からの摩耗粉のピストンリング1への凝着を抑制することができる。
内凹部と延在凹部50aとの最近接距離は、10μm以上100μm以下であることが好ましい。内凹部と延在凹部50aとの最近接距離が上記下限値以上であれば、内凹部と延在凹部50aとの間に位置する凹部非形成部60aが幅狭な凸部を形成して図2に示すピストン100のリング溝110の上面111又は下面112を削ることを抑制し、摩耗粉の発生を抑制することができる。また、内凹部と延在凹部50aとの最近接距離が上記上限値以下であれば、延在凹部50a内の潤滑油が、内凹部と延在凹部50aとの間に位置する凹部非形成部60aに形成された油膜を通じて、内凹部内の潤滑油と循環するので、延在凹部50a内の余分な潤滑油及び摩耗粉を、内凹部を経て内周面20側から排出することができる。
上記した外凹部及び内凹部は、いずれも合口部6(図1参照)には到達していないことが好ましい。これにより、ピストンリング1の上面30又は下面40の凹部非形成部60aと、リング溝110(図2参照)の上面111(図2参照)又は下面112(図2参照)との接触によって、外凹部または内凹部から合口部6を通じて潤滑油及び燃焼ガスが漏れ出ることが抑制される。
上記した外凹部及び内凹部それぞれの最大深さは、表面粗さRz以上である必要があり、1μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることが特に好ましい。外凹部及び内凹部それぞれの最大深さが上記下限値以上であれば、外凹部及び内凹部それぞれを形成することによる上述の効果を得ることができる。また外凹部及び内凹部それぞれの最大深さは、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。外凹部及び内凹部それぞれの最大深さが上記上限値以下であれば、リング溝110の摩耗を抑制することができる。
図3に示すように、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50aが形成された面における、延在凹部50aを含む凹部の総面積は、凹部非形成部60aの総面積に対して、50%以上90%以下であることが好ましい。ここで、延在凹部50aを含む凹部は、延在凹部50aの他に、上記した外凹部及び内凹部を含む。延在凹部50aを含む凹部の総面積を上記範囲内とすることで、ピストンリング1とリング溝110との接触応力をより一層緩和できるため、リング溝110からの摩耗粉のピストンリング1への凝着をより一層抑制することができる。
なお、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50aが形成された面には、外周面10及び内周面20の両方に到達する連通凹部は、形成されていないことが好ましい。連通凹部を形成しないことで、延在凹部50aが形成された面では、凹部非形成部60aが、合口部6以外の位置で円周方向Aに亘って切れ目なく連続する。これにより、延在凹部50aが形成された面で、外周面10側と内周面20側とを相互に通じて潤滑油及び燃焼ガスが漏れ出ることを抑制することができる。
図4は、ピストンリング1に形成された延在凹部50の第2の態様に係る延在凹部50bを示す平面図である。図4に示すように、平面視で、延在凹部50bは、径方向Cに対して傾斜し、断続的に、かつ直線状に延在する。換言すれば、延在凹部50bは、平面視で、径方向Cに対して傾斜した延在方向E2に沿って、互いに離れて配置された複数の構成凹部51bで構成されている。複数の構成凹部51bそれぞれは、図4に示す例では平面視で矩形状に形成されている。また、図4に示す例では、複数の延在凹部50bが、円周方向Aに等間隔に、かつ互いに平行に延在するように形成されている。また、図4に示すように、複数の延在凹部50bそれぞれは、内周面20及び外周面10には到達していない。
図4に示すように、延在凹部50bは、上述の通り断続的に直線状に延在しており、平面視での最近接距離Gが100μm以下となるように断続している。換言すれば、最近接距離Gは、延在凹部50bを構成する複数の構成凹部51b同士の平面視での最近接距離である。最近接距離Gが上記上限値以下であれば、延在凹部50bを構成する複数の構成凹部51b同士が十分に近接するため、構成凹部51b間で潤滑油及び摩耗粉が移動可能となる。従って、断続する延在凹部50bを形成することで、連続する延在凹部50a(図3参照)を形成したことによる上記効果と同様の効果を得ることができる。すなわち、ピストンリング1は、延在凹部50aを形成することで、ピストンリング1がピストン100に対して円周方向Aに回転する場合であっても、ピストン100の摩耗粉の凝着を抑制できる。
図4に示すように、複数の延在凹部50bそれぞれの延在方向E2が平面視で径方向Cに対して傾斜する傾斜角θ2は、図3に示す複数の延在凹部50aそれぞれの延在方向E1が平面視で径方向Cに対して傾斜する傾斜角θ1と同様に、30°以上60°以下であることが好ましく、35°以上55°以下であることがより好ましく、45°であることが特に好ましい。傾斜角θ2が上記範囲内であれば、延在方向E1が上記範囲内であることによる効果と同様の効果が得られる。
図4に示すように、複数の延在凹部50bのうち、平面視で隣接する任意の2つの延在凹部50bの最近接距離F2は、10μm以上100μm以下であることが好ましい。最近接距離F2が上記範囲内であれば、上述の最近接距離F1(図3参照)が上記範囲内であることによる効果と同様の効果を得ることができる。
図4に示すように、複数の延在凹部50bのうち、任意の隣り合う延在凹部50bは、径方向Cに沿って重なる部分を有するように形成されている。換言すれば、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50bが形成された面は、径方向Cに沿って2つ以上の延在凹部50bが形成された領域を有する。これにより、円周方向Aにおいて延在凹部50bが形成されない領域がなくなる。そのため、潤滑油の円周方向Aにおける形成ムラが抑制される。
図4に示すように、複数の延在凹部50bそれぞれは、平面視で、内周縁を構成する、内周面20の最小内径部21から径方向厚さDの1/10以上、外周縁を構成する、外周面10の最大外形部11側の位置に形成されている。これにより、延在凹部50bから内周面20側を通じて潤滑油及び燃焼ガスが漏れ出ることをより確実に抑制することができる。
図4に示すように、複数の延在凹部50bそれぞれは、図3に示す延在凹部50aと同様に、平面視で、外周縁を構成する、外周面10の最大外形部11から径方向厚さDの1/10以上、内周縁を構成する、内周面20の最小内径部21側の位置に形成されている。従って、延在凹部50bは、図3に示す延在凹部50aと同様に、上面30の延在凹部50bよりも径方向Cの外側に位置する凹部非形成部60bとリング溝110の上面111とが接触する領域によって、外周面10側が確実に封鎖される。
従って、ピストンリング1の上面30又は下面40の凹部非形成部60bと、リング溝110の上面111又は下面112との接触によって、延在凹部50bから外周面10側へ通じる流路が封鎖されるので、延在凹部50bを通じて潤滑油及び燃焼ガスが外周面10側に漏れ出ることが抑制される。
複数の延在凹部50bは、いずれも合口部6(図1参照)には到達していないことが好ましい。これにより、ピストンリング1の上面30又は下面40の凹部非形成部60bと、リング溝110(図2参照)の上面111(図2参照)又は下面112(図2参照)との接触によって、延在凹部50bから合口部6を通じて潤滑油及び燃焼ガスが漏れ出ることが抑制される。よって、潤滑油及び燃焼ガスのシール性をより向上させることができる。なお、上述したように、複数の延在凹部50bは、いずれも内周面20及び外周面10にも到達していないため、径方向Cの内側及び外側も閉じられている。つまり、複数の延在凹部50bそれぞれは、円周方向Aの両側、並びに、径方向Cの内側及び外側、が閉じられた凹部(以下、「閉凹部」ともいう。)となる。
延在凹部50bの最大深さの好適範囲は、延在凹部50a(図3参照)の最大深さの好適範囲と同じであり、それにより得られる効果も同様である。また、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50bが形成された面には、延在凹部50a(図3参照)が形成された面と同様に、外凹部が形成されていてもよく、それにより得られる効果も同様である。また、外凹部と延在凹部50bとの最近接距離の好適範囲は、外凹部と延在凹部50aとの最近接距離の好適範囲と同じであり、それにより得られる効果も同様である。また、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50bが形成された面には、延在凹部50aが形成された面と同様に、内凹部が形成されていてもよく、それにより得られる効果も同様である。また、内凹部と延在凹部50bとの最近接距離の好適範囲は、内凹部と延在凹部50aとの最近接距離の好適範囲と同じであり、それにより得られる効果も同様である。また、延在凹部50bが形成された面に形成される外凹部及び内凹部は、延在凹部50aが形成された面に形成される外凹部及び内凹部と同様に、いずれも合口部6(図1参照)には到達していないのが好ましく、それにより得られる効果も同様である。また、延在凹部50bが形成された面に形成される外凹部及び内凹部それぞれの最大深さの好適範囲は、延在凹部50aが形成された面に形成される外凹部及び内凹部と同じであり、それにより得られる効果も同様である。
図4に示すように、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50bが形成された面における、延在凹部50bを含む凹部の総面積は、凹部非形成部60bの総面積に対して、50%以上90%以下であることが好ましい。延在凹部50bを含む凹部の総面積を上記範囲内とすれば、延在凹部50a(図3参照)を含む凹部の総面積を上記範囲内としたのと同様の効果が得られる。
なお、ピストンリング1の上面30及び下面40のうち、延在凹部50bが形成された面には、外周面10及び内周面20の両方に到達する連通凹部は、形成されていないことが好ましい。延在凹部50bが形成された面に連通凹部を形成しないことで、延在凹部50a(図3参照)が形成された面に連通凹部を形成しないことによる効果と同様の効果が得られる。
図5は、図4に示す延在凹部50bを構成する複数の構成凹部51bそれぞれの変形例を示す図である。図5に示すように、構成凹部51bの形状は、平面視で図4に示すような矩形状には限定されずに任意の形状であってよく、例えば平面視で構成凹部51b1〜51b13のいずれか1つの形状に形成されていてもよい。具体的に、構成凹部51b1及び構成凹部51b4は、それぞれ図4に示す構成凹部51bとは異なる形状の矩形状である。構成凹部51b2は、平行四辺形状である。構成凹部51b3、構成凹部51b5、構成凹部51b8及び構成凹部51b9は、それぞれ台形状である。構成凹部51b6は、ひし形状である。構成凹部51b7及び構成凹部51b11は、それぞれ六角形状である。構成凹部51b10は、矩形の対向する2辺が一方向に凸となる半円で置換されてなる形状である。構成凹部51b12は、円形状である。構成凹部51b13は、楕円形状である。
図6は、ピストンリング1に形成された延在凹部50の第3の態様に係る延在凹部50cを示す平面図である。図6に示すように、延在凹部50cは、図3に示す延在凹部50aに対して、径方向Cに延在する直線を対称軸とする線対称な凹部である。ピストンリング1に形成された延在凹部50cのその他の構成、及びそれにより得られる効果は、ピストンリング1に形成された延在凹部50aの構成、及びそれにより得られる効果と同様である。例えば、図6に示すように、複数の延在凹部50cそれぞれの延在方向E3が平面視で径方向Cに対して傾斜する傾斜角θ3は、30°以上60°以下であることが好ましく、35°以上55°以下であることがより好ましく、45°であることが特に好ましい。
図7は、ピストンリング1に形成された延在凹部50の第4の態様に係る延在凹部50dを示す平面図である。図7に示すように、延在凹部50dは、図4に示す延在凹部50bに対して、径方向Cに延在する直線を対称軸とする線対称な凹部である。ピストンリング1に形成された延在凹部50dのその他の構成、及びそれにより得られる効果は、ピストンリング1に形成された延在凹部50bの構成、及びそれにより得られる効果と同様である。例えば、図7に示すように、複数の延在凹部50dそれぞれの延在方向E4が平面視で径方向Cに対して傾斜する傾斜角θ4は、30°以上60°以下であることが好ましく、35°以上55°以下であることがより好ましく、45°であることが特に好ましい。また、延在凹部50dを構成する構成凹部51dの形状は、平面視で図7に示すような矩形状には限定されずに任意の形状であってよく、例えば平面視で構成凹部51b1〜51b13(図5参照)のいずれか1つの形状に形成されていてもよい。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、ピストンリング1の外周面10は、バレルフェイス形状であるとして説明したが、バレルフェイス形状には限定されず、例えば、プレーン形状、テーパーフェイス形状等、他の任意の形状であってもよい。また、ピストンリング1の内周面20、上面30、及び下面40の各形状は、上記した各形状には限定されない。
また、上面30及び下面40のうち、少なくとも延在凹部50が形成された面には、硬質被膜層又は樹脂製の被膜層が設けられていてもよい。硬質皮膜層としては、例えば、窒化処理層、PVD処理層、硬質クロムめっき処理層およびDLC層のうち少なくともいずれか1つの層を備えた構成を採用することができる。このような硬質被膜層を設けることにより、上面30又は下面40の摩耗による延在凹部50の消失を長期間に亘って防止して、凝着、並びに自己及び相手部品の摩耗、を抑制することができる。なお、「PVD処理層」とは「物理気相成長(Physical Vapor Deposition)により形成された層」を意味し、「DLC(Diamond Like Carbon)層」とは主として炭化水素や炭素の同素体から成る非晶質の硬質炭素膜を意味する。
被膜層は、延在凹部50が形成された後で、表面処理によって設けられてもよい。或いは、被膜層は、延在凹部50が形成される前に表面処理によって設けられ、その後、延在凹部50が形成されてもよい。
次に、本発明に係るピストンリングの実施例について説明する。
[実施例1〜8]
弁ばね用シリコンクロム鋼オイルテンパー線(SWOSC−V)から呼称径73mm、幅2.5mm、厚さ3.8mmの矩形断面で、外周面をバレルフェイス形状とし、その外周面にCrN系のイオンプレーティング皮膜を成膜したピストンリングを作製した。上記「厚さ」とは、径方向の最大厚さを意味する。さらに、リングの下面のみに、径方向に対して傾斜し、連続的又は断続的に、直線状に延在する延在凹部を形成し、リングの上面及び下面を含む表面にリン酸塩化成処理を行った。このように作製された実施例1〜8としてのピストンリングを用いて、アルミ凝着試験を行った。
実施例1〜8のピストンリングは、凹部の形状、凹部深さ、凹部幅寸法、非凹部寸法、凹部角度において異なるが、その他の構成は共通する。「凹部の形状」とは、延在凹部の形状を意味し、ここでは斜めに連続的に延在する形状か、斜めに断続的に延在する形状か、を意味している。「凹部深さ」とは、延在凹部の深さ寸法の最大値を意味し、「凹部幅寸法」とは、延在凹部の幅寸法の最大値を意味する。また、「非凹部寸法」とは、平面視で隣接する任意の2つの延在凹部の最近接距離を意味する。「凹部角度」とは、径方向に対する延在凹部の延在方向の傾斜角度を意味する。
[比較例1]
上述の実施例1〜8とは別に、リング側面に延在凹部が形成されていない比較例1としてのピストンリングを作製した。この比較例1としてのピストンリングは、リング側面に延凹部が形成されていないことを除けば、上記実施例1〜8のピストンリングと同じ仕様である。
アルミ凝着試験は、図8に示す装置(例えば、株式会社リケン製のトライボリックIV)を用い、リング(圧力リング)を低速で回転する軸上に同軸に載置し、所定の温度に調節したピストン材(AC8A材)を一定の周期で軸方向に往復動させ、リングとピストン材とに面圧荷重を周期的に発生させて、アルミ凝着が発生するまで継続する試験である。アルミ凝着が発生すれば回転軸のトルクが変動し、また温度も上昇する。その時の負荷サイクル数で寿命を評価する。試験条件としては、試験温度240℃、面圧負荷振れ幅0〜1.1MPa、面圧負荷サイクル数3.3Hz、リング回転速度3.3m/sec(一方向回転)とし、さらに潤滑剤として無添加ベースオイルSAE30をリング表面に0.08cc塗布した。その結果を[表1]及び図9に示す。耐アルミ凝着性能を示す指標となるアルミ凝着発生までのサイクル数は、実施例1〜6の延在凹部を有する場合、延在凹部を有しない比較例1に比べて最大90%、実施例7及び8の断続する延在凹部を有する場合は、最大124%向上した。これは、凹部を大きくすることによって、ピストン溝の摩耗分がリングの延在凹部に流れ込み、接触部である非凹部へのアルミの付着が抑制されたためと考えられる。
Figure 2019120403
また、[表1]に示す結果から、非凹部寸法(平面視で隣接する任意の2つの延在凹部の最近接距離)を100μm以下に小さくすることで、付着アルミの成長を阻害し、アルミ凝着を抑制できることが分かる。更に、非凹部寸法は50μm以下にすることで、更に耐アルミ凝着性能が改善されることが分かる。非凹部寸法を50μm以下にした場合においても、延在凹部の幅寸法は50μm以上が好ましく、250μm以上にすることで、更に耐アルミ凝着性能は改善されることが分かる。
更に、上記[表1]には、エンジン試験におけるアルミ凝着の発生時間についても併せて示している。このエンジン試験では、実施例2、実施例3、比較例1のピストンリングそれぞれをトップリングとして使用した。また、このエンジン試験は、1.5Lの4気筒水冷4サイクルエンジンを用いて、所定の運転条件(回転数5500rpm、全負荷(WOT:Wide Open Throttle))で100hr行った。なお、セカンドリング及びオイルリングは、当該エンジン用の既存のリングを使用した。このエンジン試験では、トップリングのリング側面にアルミ凝着が発生するまで試験を行った。その結果、実施例2のピストンリングでは、100hrの運転においてアルミ凝着が発生しなかった。また、実施例3のピストンリングでは、試験開始から75hrが経過するまでアルミ凝着が発生しなかった。これに対して、比較例1のピストンリングでは、試験開始から20hrでアルミ凝着が発生した。
本発明は、内燃機関用のピストンリングに関する。
1:ピストンリング
6:合口部
10:外周面
11:最大外径部(外周縁)
20:内周面
21:最小内径部(内周縁)
30:上面
40:下面
50、50a〜50d:延在凹部
51b、51d、50b1〜50b13:構成凹部
60a〜60d:凹部非形成部
100:ピストン
110:リング溝
111:リング溝の上面
112:リング溝の下面
200:シリンダ
210:シリンダ内壁
A:円周方向
B:軸方向
C:径方向
D:径方向厚さ
E1〜E4:延在凹部の延在方向
F1、F2:2つの延在凹部の最近接距離
G:断続する延在凹部の最近接距離
O:中心軸
θ1〜θ4:延在凹部の延在方向の径方向に対する傾斜角

Claims (12)

  1. 径方向外側を向く外周面と、
    径方向内側を向く内周面と、
    軸方向の一方を向く上面と、
    軸方向の他方を向く下面と、を備え、
    前記上面及び前記下面のうち少なくとも一方の面には、軸方向から見た平面視で、径方向に対して傾斜し、連続的又は断続的に、直線状に延在する延在凹部が形成されており、
    前記延在凹部は、前記内周面及び前記外周面には到達していないことを特徴とする、ピストンリング。
  2. 前記延在凹部の延在方向は、前記平面視で、径方向に対して30°以上60°以下傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記延在凹部は、断続的に直線状に延在しており、前記平面視での最近接距離が100μm以下となるように断続することを特徴とする、請求項1又は2に記載のピストンリング。
  4. 前記少なくとも一方の面には、前記延在凹部が複数形成されており、
    前記複数の延在凹部のうち、前記平面視で隣接する任意の2つの延在凹部の最近接距離は、10μm以上100μm以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のピストンリング。
  5. 前記延在凹部は、前記平面視で、内周縁から径方向厚さの1/10以上、外周縁側の位置に形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のピストンリング。
  6. 前記延在凹部は、前記平面視で、外周縁から径方向厚さの1/10以上、内周縁側の位置に形成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のピストンリング。
  7. 前記少なくとも一方の面には、前記外周面に到達し、かつ、前記内周面には到達しない外凹部が更に形成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のピストンリング。
  8. 前記少なくとも一方の面には、前記内周面に到達し、かつ、前記外周面には到達しない内凹部が更に形成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のピストンリング。
  9. 合口部が更に形成され、
    前記延在凹部は、前記合口部に到達していないことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のピストンリング。
  10. 前記少なくとも一方の面における、凹部が形成されていない部分を凹部非形成部としたとき、前記平面視で、前記凹部の総面積は、前記凹部非形成部の総面積に対して、50%以上90%以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のピストンリング。
  11. 前記延在凹部の最大深さは、1μm以上50μm以下であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のピストンリング。
  12. 前記少なくとも一方の面には、硬質被膜層又は樹脂製の被膜層が設けられていることを特徴とする、請求項1から11のいずれ一項に記載のピストンリング。
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